IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワインレッドの特許一覧

<>
  • 特開-臓器モデル 図1
  • 特開-臓器モデル 図2
  • 特開-臓器モデル 図3
  • 特開-臓器モデル 図4
  • 特開-臓器モデル 図5
  • 特開-臓器モデル 図6
  • 特開-臓器モデル 図7
  • 特開-臓器モデル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176790
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】臓器モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G09B23/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089271
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】509345073
【氏名又は名称】株式会社ワインレッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳朗
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
【課題】 現実の臓器に極めて近く、又、現実の内視鏡による検査、治療又は手術等の訓練を十分に達成することができる臓器モデルを提供する。
【解決手段】 臓器モデル10は、臓器モデル本体11に篏合孔部14を形成して、この篏合孔部14に篏合壁片21を篏合、固着すると共に、この篏合孔部14の周囲内面と篏合壁片21の内面とを面一としてある。臓器モデル本体11は、ポリビニルアルコール(PVA)を溶融し、臓器の形状に成形したものである。篏合壁片21は、内側面から疑似粘膜層21a、疑似粘膜下層21b及び疑似固有筋層21cを積層して成るシートを篏合孔部14と同一形状に裁断したものである。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器モデル本体に篏合孔部を形成して、この篏合孔部に篏合壁片を篏合、固着すると共に、前記篏合孔部の周囲内面と前記篏合壁片の内面とを面一としたことを特徴とする臓器モデル。
【請求項2】
前記臓器モデル本体は、ポリビニルアルコール(PVA)を溶融し、臓器の形状に成形したものであることを特徴とする請求項1に記載の臓器モデル。
【請求項3】
前記篏合壁片は、内側面から疑似粘膜層、疑似粘膜下層及び疑似固有筋層を積層して構成されるシートを前記篏合孔部と同一形状に裁断したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の臓器モデル。
【請求項4】
前記疑似粘膜層は繊維状アルギン酸ゲル、疑似粘膜下層はグルコマンナン、疑似固有筋層はポリビニルアルコール(PVA)から成ることを特徴とする請求項3に記載の臓器モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いた臓器内壁の検査、治療及び手術の訓練をするのに好適な食道、胃、大腸等の臓器モデルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食道、胃、大腸等の消化器官の臓器内壁の検査、治療及び手術において、腹部等を切開することなく、比較的簡易かつ短時間で実施できる方法として、内視鏡を使用する方法が一般的になってきている。
【0003】
内視鏡によって胃内壁の検査、治療及び手術を実施する場合には、図1に示すように、口腔から内視鏡100の先端部101を挿入させ、操作部を適宜操作して、先端部101を食道300を通過させ、胃200の内部へと到達させる。
【0004】
尚、大腸内壁の場合は、肛門から内視鏡100の先端部101を挿入させ、操作部を適宜操作して、先端部101を直腸を通過させ、大腸の内部へと到達させる。
【0005】
そして、内視鏡100の先端部101が胃200又は大腸の内部に到達したら、操作部を操作して、胃200又は大腸の内壁を撮影して検査を実施したり、内壁の適宜部位をナイフ又はスネア等の処置具によって処理、切除等して治療又は手術を実施する。
【0006】
このような内視鏡100による検査、治療又は手術においては、実際の検査、治療又は手術の状況に近い訓練を実施する必要があるが、人間の食道、胃、大腸等の臓器を現実に使用する検査、治療又は手術は容易には実施できないため、動物の臓器を使用することが一般的であった。
【0007】
しかし、動物の臓器を使用する場合であっても、動物の臓器自体を入手するのも簡単なことではない。
【0008】
又、動物の臓器を使用する場合には、その臓器に種々細菌、ウイルス等が存在しているリスクがあり、これを病院内に持ち込むと、内視鏡の訓練者のみならず、病院内の医師、看護師、患者等にも感染する虞があるという問題もあった。
【0009】
そこで、このような問題点を解消するため、胃等の形状を有する模擬臓器の一部に窓部を形成し、この窓部に動物の組織を固着した固定枠を嵌め込むようにしたトレーニングモデルが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-116206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載されたトレーニングモデルは、窓部を形成した模擬臓器の部分は、固定枠を嵌め込むため、硬質材であるウレタン樹脂から形成してあると共に、窓部とその周囲との間には少なからず段差を生じざるを得ず、現実の内視鏡による検査、治療又は手術等の訓練のためには、未だ不十分なものであった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたものであって、現実の人間の臓器に極めて近く、又、現実の内視鏡による検査、治療又は手術の訓練を簡易に達成することができる臓器モデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の臓器モデルは、臓器モデル本体に篏合孔部を形成して、この篏合孔部に篏合壁片を篏合、固着すると共に、この篏合孔部の周囲内面と篏合壁片の内面とを面一としたものである。
【0014】
ここで、臓器モデル本体は、ポリビニルアルコール(PVA)を溶融し、臓器の形状に成形したものである。
【0015】
一方、篏合壁片は、内側面から疑似粘膜層、疑似粘膜下層及び疑似固有筋層を積層して構成されるシートを篏合孔部と同一形状に裁断したものである。
【0016】
ここで、疑似粘膜層は繊維状アルギン酸ゲル、疑似粘膜下層はグルコマンナン、疑似固有筋層はポリビニルアルコール(PVA)から構成してある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の臓器モデルによれば、実際の人間の臓器に極めて近いため、特に初学者の内視鏡による検査、治療又は手術の訓練を効果的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】胃の内壁を内視鏡によって検査、治療又は手術を実施する場合の胃の概略断面図である。
図2】胃壁の概略断面図である。
図3】本発明の臓器モデルである胃モデルの一実施例を示す概略断面図である。
図4】(A)は、図3の胃モデルを構成する部材である胃モデル本体を示す概略断面図、(B)は、その胃モデル本体の胃壁の概略断面図である。
図5】(A)は、図3の胃モデルを構成する部材である篏合壁片を示す概略断面図、(B)は、その篏合壁片の概略断面図である。
図6図4の胃モデル本体に篏合壁片を篏合、固着し、胃モデルを構成した場合における篏合部分近傍の概略断面図である。
図7】本発明の臓器モデルである胃モデルの他実施例を示す概略断面図である。
図8】本発明の臓器モデルである胃モデルの他実施例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、人間の臓器である胃の構造について、図面を参照して簡単に説明する。図1は、胃の概略断面図、図2は、胃壁の概略断面図である。
【0020】
図1に示すように、胃200は、上端部を食道300に接続してあり、その入口部に噴門201を形成し、下端部を十二指腸400に接続してあり、その出口部に幽門202を形成してある。
【0021】
そして、胃200の内部は、胃底部211、胃体部212及び前庭部213から構成されており、内側の湾曲部を小彎部221、外側の湾曲部を大彎部222と称し、上側の側面部を前壁部231、下側の側面部を後壁部232と称する。
【0022】
又、胃壁240の構造は、図2に示すように、内壁面から外壁面に亘って、粘膜層241、粘膜下層242、固有筋層243、漿膜下層244、漿膜層245という5層構造を形成している。
【0023】
次に、本発明の臓器モデルの構成について、以下、臓器が胃の場合に関して、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図3に示す胃モデル10は、図4に示す胃モデル本体11の前壁部13に篏合孔部14を形成してあり、この篏合孔部14に、図5に示す篏合壁片21を篏合、固着すると共に、この篏合孔部14の周囲内面と篏合壁片21の内面とを面一としたものである。
尚、胃壁の厚さは、実際と同様、3~7mm、特には5mmとしてある。
【0025】
ここで、胃モデル10の胃壁の構造としては、現実の胃壁240の構造において、漿膜下層244、漿膜層245が極めて薄い膜状であることから、又、潰瘍、腫瘍等の殆どが粘膜層241、粘膜下層242に亘って形成されることから、胃モデル10の胃壁の構造を3層構造とした。
【0026】
さらに、粘膜層241及び粘膜下層242を一体として、胃モデル10の胃壁の構造を2層構造としてもよい。
尚、他の臓器モデルについても同様である。
【0027】
胃モデル本体11は、図4(A)に示すように、ポリビニルアルコール(PVA)を溶融し、金型に溶融樹脂を流入させ、胃の形状に成形したものである。
尚、ポリビニルアルコール(PVA)は、融点が約200℃、ガラス転移点が約65~85℃である。
【0028】
よって、胃モデル本体11の壁構造は、図4(B)に示すように、弾性材料から成る基体層11aのみから構成される単層構造としてある。
【0029】
一方、篏合壁片21は、図5(A)に示すように、シート部材を篏合孔部14と同一形状に裁断して形成したものである。
【0030】
そして、篏合壁片21の壁構造は、図5(B)に示すように、内壁面から疑似粘膜層21a、疑似粘膜下層21b、疑似固有筋層21cから成る3層構造としてある。
【0031】
ここで、疑似粘膜層21aは、繊維状材料である、例えば繊維状アルギン酸ゲル、疑似粘膜下層21bは、粘弾性材料である、例えばグルコマンナン、疑似固有筋層21cは、弾性材料であるポリビニルアルコール(PVA)から構成してある。
【0032】
次に、本発明の臓器モデルの製造方法について、以下、臓器が胃の場合に関して、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
先ず、胃モデル本体11の篏合孔部14に篏合壁片21を篏合させ、胃モデル本体11及び篏合壁片21を、ガラス転移点付近の温度である40~80℃、特には50~70℃にて1~2時間加熱、保持し、胃モデル本体11の篏合孔部14に篏合壁片21を確実に篏合、接着させる。
【0034】
次に、胃モデル本体11の篏合孔部14に篏合壁片21を篏合、接着させたものを-20~-40℃にて72時間以上冷却保持して、胃モデル本体11の篏合孔部14に篏合壁片21を完全に篏合、固着させる。
【0035】
ここで、篏合孔部14の周囲内面と篏合壁片21の内面とを面一とするために、図6に示すように、アルミニウム、ステンレス等の金属から成る平板上に、胃モデル本体11の篏合孔部14近傍と篏合壁片21を載置した状態で、加熱保持及び冷却保持する。
【0036】
本発明の胃モデル10によれば、現実の胃の形態及び構造に極めて近いから、実際の内視鏡による検査、治療又は手術等の訓練を十分に実施することができる。
【0037】
すなわち、胃モデル10の胃体部12内に内視鏡100の先端部101から空気を注入すれば、実際の検査、撮影時とほぼ同じ状態で内視鏡100による検査又は撮影を実施することができる。
【0038】
一方、胃モデル10の胃体部12内から内視鏡100の先端部101より空気を流出すれば、実際の治療、手術時とほぼ同じ状態で内視鏡100による治療又は手術を実施することができる。
【0039】
図7に示す胃モデル30は、胃モデル本体31の大彎部33に篏合孔部34を形成してあり、この篏合孔部34に篏合壁片41を篏合、固着すると共に、この篏合孔部34の周囲内面と篏合壁片41の内面とを面一としたものである。
【0040】
図8に示す胃モデル50は、胃モデル本体51の小彎部53に篏合孔部54を形成してあり、この篏合孔部54に篏合壁片61を篏合、固着すると共に、この篏合孔部54の周囲内面と篏合壁片61の内面とを面一としたものである。
【0041】
上記胃モデル30,50についても、胃モデル10と同様に、現実の胃の形態に極めて近いものとしたから、内視鏡による検査、治療又は手術の訓練を十分に実施することができる。
【0042】
又、篏合壁片41,61の壁構造を、内壁面から疑似粘膜層41a、疑似粘膜下層41b、疑似固有筋層41cから成る3層構造として、現実の胃壁に極めて近いものとしたから、内視鏡による検査、治療又は手術の訓練を実際に近い状況で実施することができる。
【0043】
上記においては、本発明の臓器モデルについて、臓器が胃の場合に関して説明したが、食道、大腸、十二指腸等の他の臓器モデルに関しても、同様に構成することができ、同様の作用、効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 胃モデル
11 胃モデル本体
13 前壁部
14 篏合孔部
21 篏合壁片
21a 疑似粘膜層
21b 疑似粘膜下層
21c 疑似固有筋層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8