(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176791
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】蓄電素子の評価方法、蓄電素子の評価装置及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231206BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231206BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20231206BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/058
H01G11/84
H01G13/00 381
H01G13/00 371C
H01G13/00 361D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089272
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 通弘
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AA15
5E078AB02
5E078AB06
5E078AB13
5E078BA12
5E078BA13
5E078BA18
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA47
5E078BA52
5E078BA53
5E078BA54
5E078BA55
5E078BA56
5E078BA59
5E078BA60
5E078CA02
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA08
5E078CA09
5E078CA10
5E078DA04
5E078DA06
5E078DA11
5E078DA12
5E078DA14
5E078FA02
5E078FA12
5E078FA13
5E078HA03
5E078HA04
5E078HA05
5E082AA11
5E082AB04
5E082AB09
5E082BC01
5E082EE27
5E082MM35
5E082PP01
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM07
5H030AA06
5H030BB02
5H030BB03
5H030FF42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】短絡電流を適切に評価する蓄電素子の評価方法、蓄電素子の評価装置及び蓄電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、電極体及び非水電解質を収容する容器3、とを有する蓄電素子1の評価装置100であって、蓄電素子に、直流電源から正極と電気的に接続されている正極端子4及び負極と電気的に接続されている負極端子5を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給する直流電源60と、直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で電流を供給しながら、電極体を短絡させることが可能な短絡発生トリガー部70と、電極体を短絡させながら、直流電源から蓄電素子に供給される電流量を測定する電流測定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極及びセパレータを含む電極体と、
非水電解質と、
上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器と
を有する蓄電素子の評価方法であって、
上記蓄電素子に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することと、
上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることと、
上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することと
を備える蓄電素子の評価方法。
【請求項2】
上記電極体を短絡させることにおいては、上記電流の電流量が0.1C又は1Aのうちのいずれか小さい値以下である請求項1に記載の蓄電素子の評価方法。
【請求項3】
上記電極体を短絡させることにおいては、上記蓄電素子と別部材とを接触させることにより上記電極体を物理的に短絡させる請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子の評価方法。
【請求項4】
上記電極体を短絡させることにおいては、上記蓄電素子を加熱することにより上記電極体を短絡させる請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子の評価方法。
【請求項5】
正極、負極及びセパレータを含む電極体と、
非水電解質と、
上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器と
を有する蓄電素子の評価装置であって、
上記蓄電素子に上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電するように電流を供給することが可能な直流電源部と、
上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることが可能な短絡発生トリガー部と、
上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することが可能な電流測定部と
を備える蓄電素子の評価装置。
【請求項6】
正極、負極及びセパレータを含む電極体と、
非水電解質と、
上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器と
を有する蓄電素子の製造方法であって、
複数の上記容器にそれぞれ上記電極体及び上記非水電解質を収容することと、
上記複数の容器をそれぞれ密封することにより複数の密封体を形成することと、
上記複数の密封体から少なくとも一の密封体を評価用の試料として抜き取ることと、
上記評価用の試料を評価することと
を備え、
上記評価用の試料を評価することが、
上記評価用の試料に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することと、
上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることと、
上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記評価用の試料に供給される電流量を測定することと
を有する蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電素子の評価方法、蓄電素子の評価装置及び蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に用いられている。
【0003】
上記二次電池は、通常予見し得ない使用形態や極めて過酷な使用環境において短絡が発生する場合がある。このため、このような短絡を評価すべく、上記二次電池に短絡評価用の金属製等の棒状部材(例えば釘等)を刺して安全性を評価する釘刺し試験といった各種試験が行われている。
【0004】
例えば、二次電池を供試体とし、この供試体に電子供給用の他の二次電池を接続して釘刺し試験を行うことが提案されている(特開2019-186008号公報参照)。
【0005】
例えば、電極とセパレータを含む積層体の電極間に外部電源から電圧を印加し、電極間に導体を貫通して短絡させるリチウムイオン二次電池の評価方法であって、上記外部電源としてリチウムイオン二次電池を使用することが提案されている。この評価方法によれば、電極間に電圧を印加したときの積層体の短絡電流と、積層体と電極との間における電圧とを測定することができ、上記短絡電流と上記電圧とから、短絡によって生じた熱量を評価することができる(特開2017-59343号公報参照)。
【0006】
例えば、電極とセパレータを含む積層体の電極間に外部電源から電圧を印加し、電極間に導体を貫通して短絡させるリチウムイオン二次電池の評価方法であって、上記積層体が、電解質を含まず、電解液溶媒を含むことが提案されている(特開2017-59464号公報参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-186008号公報
【特許文献2】特開2017-59343号公報
【特許文献3】特開2017-59464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、二次電池の短絡時に発生する短絡電流を適切に測定することができれば、二次電池の安全性をより詳細に評価することが可能になるため、望ましい。
【0009】
しかし、上記特許文献1及び2の評価方法では、二次電池の短絡電流を適切に測定することができるとはいい難い。また、上記特許文献3の評価方法では、実際には電解質塩を含有する電解質を含む二次電池の実際の短絡電流を適切に測定することができるとはいい難い。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、短絡電流を適切に評価することが可能な蓄電素子の評価方法、蓄電素子の評価装置、及び短絡電流が適切に評価された蓄電素子を製造することが可能な蓄電素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る蓄電素子の評価方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価方法であって、上記蓄電素子に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することと、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることと、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することとを備える。
【0012】
本発明の他の一態様に係る蓄電素子の評価装置は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価装置であって、上記蓄電素子に、上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電するように電流を供給することが可能な直流電源部と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることが可能な短絡発生トリガー部と、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することが可能な電流測定部とを備える。
【0013】
本発明の他の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の製造方法であって、複数の上記容器にそれぞれ上記電極体及び上記非水電解質を収容することと、上記複数の容器をそれぞれ密封することにより複数の密封体を形成することと、上記複数の密封体から少なくとも一の密封体を評価用の試料として抜き取ることと、上記評価用の試料を評価することとを備え、上記評価用の試料を評価することが、上記評価用の試料に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することと、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることと、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記評価用の試料に供給される電流量を測定することとを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る蓄電素子の評価方法によれば、短絡電流を適切に評価することができる。
【0015】
本発明の他の一態様に係る蓄電素子の評価装置によれば、短絡電流を適切に評価することができる。
【0016】
本発明の他の一態様に係る蓄電素子の製造方法によれば、短絡電流が適切に評価された蓄電素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、蓄電素子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、蓄電素子の評価装置の一実施形態の装置構成を模式的に示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の蓄電素子の評価方法における短絡時に発生する電流を模式的に示す概略図である。
【
図5】
図5は、従来の蓄電素子の評価方法における短絡時に発生する電流を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
初めに、本明細書によって開示される蓄電素子の評価方法、蓄電素子の評価装置及び蓄電素子の製造方法の概要について説明する。
【0019】
本発明の一態様に係る蓄電素子の評価方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価方法であって、上記蓄電素子に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することと、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることと、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することとを備える。なお、以下、「電極体を短絡させる」ことを、「蓄電素子を短絡させる」ともいう。
【0020】
例えば上記蓄電素子に釘等の棒状部材を刺すこと等によって上記蓄電素子を短絡させながら電圧を印加して電流を供給する際、電流の供給源として上記直流電源を用いると、
図4に示すような回路構成が得られる。
図4に示すように、電流の供給源として上記直流電源を用いる場合には、上記蓄電素子に対して定電流定電圧充電(CC制御及びCV制御)を行うことができる。定電流定電圧充電とは、蓄電素子の電圧が所定値となるまで定電流で充電し、その後、蓄電素子を定電圧で充電する充電方法をいう。上記蓄電素子を定電流定電圧充電する際は、上記蓄電素子を定電流充電するように、上記蓄電素子に上記直流電源から電流を供給し、上記蓄電素子の電圧が所定値に達した後、上記直流電源の動作が定電圧充電に切り替わる。定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で電流を供給しながら、上記蓄電素子を短絡させると、継続的なCV制御により、上記蓄電素子を上記棒状部材の突き刺し等によって短絡させている間、上記蓄電素子に加えられる起電力が上記直流電源における定電圧充電の設定電圧と等しくなり、かつこの設定電圧で一定に保たれる(制御される)。これにより、上記直流電源から供給される電流(供給電流)Ifは、上記蓄電素子内を流れる充電電流Icと、短絡経路(ここでは上記棒状部材内)を流れる電流(短絡電流)Idzとに分岐される。
【0021】
このように、上記蓄電素子を短絡させている間、上記直流電源から供給電流Ifが上記蓄電素子内を流れる充電電流Icと短絡電流Idzとに分岐される結果、上記棒状部材に流れる短絡電流Idzは、上記直流電源からの供給電流Ifから充電電流Icを差し引いた値と等しくなる(Idz=If-Ic)。また、充電電流Icは、上記蓄電素子を短絡させずに定電圧充電した場合における、充電電流を測定することで、容易に推測することができる。従って、供給電流Ifを測定すること、及び充電電流Icを推測することで、短絡電流Idzを算出することが可能になる。
【0022】
これに対し、電流の供給源として上記直流電源に代えて上述した特許文献1、2に示すような二次電池を用いる場合には、
図5に示すような回路構成が得られる。
図5に示すように、電流の供給源として上記二次電池を用いる場合には、上記蓄電素子に対して定電圧充電(CV制御)を行うことができない。このため、上記蓄電素子を短絡させている間、上記二次電池の起電力が上記蓄電素子の定電圧充電に必要な一定電圧を維持することができず(SOC(State Of Charge)を維持することができず)、上記蓄電素子が放電する。その結果、上記蓄電素子から放電電流Idが流れる。
【0023】
このように、蓄電素子を短絡させている間の蓄電素子の端子間電圧が上記二次電池の起電力よりも小さくなる結果、放電電流Idは、上記棒状部材に向かって流れる。このため、上記棒状部材に流れる短絡電流Idzは、上記二次電池からの供給電流Ifと、上記放電電流Idとの和に等しくなる(Idz=If+Id)。放電電流Idは測定すること及び推測することが困難である。したがって、供給電流Ifの測定を基に短絡電流Idzを算出することが困難であるため、電流の供給源として上記二次電池を用いる場合、上記短絡電流Idzの適切な評価が困難になる。
【0024】
上記の通り、電流の供給源として上記二次電池を用いる従来技術では、上記短絡時に発生する短絡電流を適切に評価することが困難であるのに対し、当該評価方法によれば、上記短絡電流を適切に評価することができる。
【0025】
ここで、上記電極体を短絡させることにおいては、上記電流(充電電流Ic)の電流量が0.1C又は1Aのうちのいずれか小さい値以下であることが好ましい。一般に、定電流定電圧充電において、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、充電電流Icは減少していく。充電電流Icが上記上限値以下にまで低減された状態で上記電極体を短絡させることによって、供給電流Ifから充電電流Icを差し引いた値である短絡電流Idzをより高精度に測定することができる。なお、単位「C」は、満充電状態の上記蓄電素子を放電する際に1時間で上記蓄電素子が完全に放電される電流を1Cとする電流の単位である。
【0026】
ここで、上記蓄電素子を短絡させることにおいては、上記蓄電素子と別部材とを接触させることにより物理的に短絡させてもよい。このように上記蓄電素子を物理的に短絡させることで、通常の使用形態では予見されない異物混入や物理的な衝撃に起因して発生することがある短絡を模擬して短絡時の短絡電流を適切に評価することができるという利点がある。
【0027】
ここで、上記蓄電素子を短絡させることにおいては、上記蓄電素子を加熱することにより短絡させてもよい。このように上記蓄電素子を加熱によって短絡させることで、通常の使用形態では予見されない火災や他の熱源との接触に起因して発生することがある短絡を模擬して短絡時の短絡電流を適切に評価することができるという利点がある。
【0028】
本発明の他の一態様に係る蓄電素子の評価装置は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価装置であって、上記蓄電素子に、上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電するように電流を供給することが可能な直流電源部と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることが可能な短絡発生トリガー部と、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することが可能な電流測定部とを備える。
【0029】
この当該蓄電素子の評価装置によれば、上記と同様、上記直流電源部からの供給電流を測定すること、及び上記充電電流を推測することで、上記短絡電流を算出することができる。従って、上記短絡時に発生する短絡電流を適切に評価することができる。
【0030】
本発明の他の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の製造方法であって、複数の上記容器にそれぞれ上記電極体及び上記非水電解質を収容することと、上記複数の容器をそれぞれ密封することにより複数の密封体を形成することと、上記複数の密封体から少なくとも一の密封体を評価用の試料として抜き取ることと、上記評価用の試料を評価することとを備え、上記評価用の試料を評価することが、上記評価用の試料に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することと、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることと、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記評価用の試料に供給される電流量を測定することとを有する。
【0031】
この蓄電素子の製造方法によれば、密封体を形成した後、評価用の試料を抜き取り、上記評価用の試料について、上述と同様に上記短絡電流を適切に評価した上で、蓄電素子を製造することができる。従って、当該製造方法によれば、短絡時に発生する短絡電流が適切に評価された蓄電素子を製造することができる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の評価装置、蓄電素子の評価方法、これら評価装置及び評価方法に用いられる蓄電素子の構成、蓄電素子の製造方法並びにその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0033】
[評価対象の蓄電素子の概略]
本実施形態の評価装置及び評価方法における評価対象である蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。評価対象の蓄電素子には、蓄電装置に備えられた複数の蓄電素子も含まれる。
図1に角型電池の一例としての蓄電素子1(非水電解質蓄電素子)を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角型の容器3に収納される。正極は正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極は負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。なお、例えばコイン型電池等のように、正極端子4及び負極端子5のいずれか一方又は双方が、容器3の一部を兼ねる場合、この容器3の一部を正極端子4又は負極端子5とみなす。
図2に複数の蓄電素子1を備える蓄電装置30を示す。蓄電素子1が蓄電装置30に備えられる場合、蓄電素子1は、蓄電装置30から取り外された後、評価される。
なお、蓄電素子の詳細については、後述する。
【0034】
[蓄電素子の評価装置及び評価方法]
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の評価装置(以下、「評価装置」ともいう。)は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価装置である。当該評価装置は、上記蓄電素子に、上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電するように電流を供給することが可能な直流電源部と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させることが可能な短絡発生トリガー部と、上記電極体を短絡させながら、この直流電源部から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することが可能な電流測定部とを備える。
【0035】
当該蓄電素子の評価装置としては、例えば、上記短絡発生トリガー部として上記蓄電素子と接触可能な別部材(すなわち、上記蓄電素子以外の別部材)を有し、上記蓄電素子と上記別部材とを接触させることにより上記蓄電素子を物理的に短絡させる(すなわち、物理的な短絡を発生させる)ように構成された第1短絡発生トリガー部を備える評価装置、及び上記短絡発生トリガー部として上記蓄電素子を加熱可能な加熱部を有し、上記加熱部が上記蓄電素子を加熱することにより上記蓄電素子を短絡させるように構成された第2短絡発生トリガー部を備える評価装置が挙げられる。これら評価装置について、前者を第1実施形態の評価装置、後者を第2実施形態の評価装置として、以下、順に説明し、併せて各評価装置を用いる蓄電素子の評価方法(以下、「評価方法」ともいう。)についても説明する。
【0036】
<第1実施形態の評価装置>
本実施形態の評価装置は、上記の通り、上記第1短絡発生トリガー部が、上記蓄電素子と接触可能な別部材を有し、上記蓄電素子と上記別部材とを接触させることにより上記蓄電素子を物理的に短絡させるように構成されている。このような物理的な短絡としては、釘刺し試験、圧壊試験、振動試験、衝撃試験、落下試験、内部短絡模擬試験(強制内部短絡試験:Forced Internal Short Circuit(FISC)試験)等による短絡等が挙げられる。これらの試験は、通常予見される使用形態ではない使用を模擬している。具体的には、本実施形態の評価装置としては、直流電源部によって上記蓄電素子に定電流定電圧充電するように電流を供給し、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で直流電流を供給しながら、上記第1短絡発生トリガー部によって上記各試験のいずれかを行い、上記各試験のいずれかによって上記蓄電素子の電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定するように構成される。
【0037】
上記第1短絡発生トリガー部が釘刺し試験を行うように構成される場合、上記第1短絡発生トリガー部が、上記別部材として上記蓄電素子を突き刺すことが可能な部材(典型的には釘等の棒状部材)を有し、この突き刺すことが可能な部材を突き刺すことによって上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第1短絡発生トリガー部が釘刺し試験を行うように構成される場合には、短絡電流(及びそれに伴う短絡抵抗、ジュール発熱)を取得することができる。また、短絡抵抗の減少速度、短絡箇所での積算発熱量等を推定することが可能となる。これにより、短絡電流等を適切に評価することができ、複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。
【0038】
上記第1短絡発生トリガー部が圧壊試験を行うように構成される場合には、上記第1短絡発生トリガー部が、上記別部材として上記蓄電素子を圧壊することが可能なハンマー等の重量物を有し、この重量物を蓄電素子に衝突させることで上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第1短絡発生トリガー部が圧壊試験を行うように構成される場合には、圧壊による蓄電素子の変形量に応じて発生する内部短絡の大きさを、短絡電流から推定することができるため、耐変形性を複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。また、特定の変形量で生じる短絡の大きさを推定することで、上記蓄電素子の構造上の短絡原因を考察するためのヒントが得られる。なお、圧壊試験において、試験条件はJIS-C-8714(2007年)に準拠する。
【0039】
上記第1短絡発生トリガー部が振動試験を行うように構成される場合には、上記第1短絡発生トリガー部が、上記別部材として上記蓄電素子を振動させることが可能な振動装置を有し、この振動装置によって上記蓄電素子を振動させることで上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第1短絡発生トリガー部が振動試験を行うように構成される場合には、上記蓄電素子を振動させることで短絡が生じた場合における短絡電流から耐振動性を推定することができるため、耐振動性を複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。また、振動で生じた蓄電素子内部の導電性の部材同士の機械的な短絡の発生、摩擦熱等に起因してセパレータが欠損した場合、このセパレータの欠損に伴う短絡の発生を確認することができるため、これによっても耐振動性を複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。さらに、特定の加速度や周波数によって生じる短絡の大きさを複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。加えて、短絡の程度を確認することによって、開弁等に至る前に振動試験を途中で停止することも可能となる。なお、振動試験において、試験条件はIEC-62660-2(2011)に準拠する。
【0040】
上記第1短絡発生トリガー部が衝撃試験を行うように構成される場合には、上記第1短絡発生トリガー部が、上記別部材として上記蓄電素子に衝撃を付与することが可能な衝撃付与装置を有し、この衝撃付与装置によって上記蓄電素子に衝撃を付与することで上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第1短絡発生トリガー部が衝撃試験を行うように構成される場合には、上記蓄電素子に衝撃を付与している間、及び衝撃を付与した後に局所的に生じた短絡電流を複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。また、特定の衝撃加速度、衝撃時間等によって生じる短絡の大きさを複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。なお、衝撃試験において、試験条件はIEC-62660-2(2011)に準拠する。
【0041】
上記第1短絡発生トリガー部が落下試験を行うように構成される場合、上記第1短絡発生トリガー部が、上記別部材として上記蓄電素子が落下されたときに衝突させることが可能な床等の固体物を有し、この固体物に上記蓄電素子を落下させることで上記蓄電素子を短絡させる。このように、上記第1短絡発生トリガー部が落下試験を行うように構成される場合には、落下による上記固体物との衝突によって上記蓄電素子に衝撃が発生するため、上記衝撃試験と同様、上記蓄電素子に衝撃を付与している間、及び衝撃を付与した後に局所的に生じた短絡電流を複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。また、特定の衝撃加速度、衝撃時間等によって生じる短絡の大きさを複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。なお、落下試験において、試験条件はJIS-C-8714(2007年)に準拠する。
【0042】
上記第1短絡発生トリガー部が内部短絡模擬試験を行うように構成される場合には、上記第1短絡発生トリガー部が、上記別部材として上記電極体の正極及び負極間に挿入される金属板と、上記正極及び負極間に金属板が挿入された状態で上記電極体を加圧する加圧装置とを有し、上記正極及び負極に上記金属板が挿入されている状態で上記加圧装置によって上記蓄電素子(すなわち電極体)を加圧することで上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記短絡発生トリガー部が内部短絡模擬試験を行うように構成される場合には、内部短絡が発生する際の加圧力に対する短絡電流(に基づくジュール発熱)を取得することでき、その値から実使用の際の加圧条件での耐異物短絡性能を複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。なお、内部短絡模擬試験において、試験条件はJIS-C-8714(2007年)に準拠する。
【0043】
以下、本実施形態の評価装置について、上記第1短絡発生トリガー部が釘差し試験を行うように構成された評価装置を例に挙げて、さらに詳細に説明する。
【0044】
図3に示すように、評価装置100は、上記蓄電素子1に、上記正極端子4及び上記負極端子5を介して定電流定電圧充電するように電流を供給することが可能な直流電源部60と、蓄電素子1に物理的な短絡を発生させる第1短絡発生トリガー部70と、第1短絡発生トリガー部70によって蓄電素子1に物理的な短絡を発生させながら、上記直流電源部60から上記蓄電素子1に供給される電流量を測定することが可能な電流測定部(ここでは直流電源60)とを備える。評価装置100は、直流電源部60と蓄電素子1の正極端子4及び負極端子5とにそれぞれ電気的に接続された各配線61をさらに備える。
【0045】
(直流電源部)
直流電源部60は、蓄電素子1に定電流定電圧充電するように電流を供給することが可能であるように構成されている。直流電源部60は、このように蓄電素子1に定電流で(一定電流を保った状態で)電流を供給した後に定電圧で(一定電圧を保った状態で)電流を供給することで、蓄電素子1に対して定電流定電圧制御(CC-CV制御)が可能であるように構成されている。直流電源部60は、上記のように定電流定電圧制御を可能にすべく、蓄電素子1に印加する電流及び電圧を変更することができるように構成されている。直流電源60は、蓄電素子1に供給される電流量を測定することができるように構成されている。このような直流電源部60として、従来公知の直流電源装置を用いることができる。
【0046】
例えば直流電源部60は、定電流充電で蓄電素子1に電流を供給し、蓄電素子1の未充電に近い状態(例えばSOCが0%超10%以下)で定電圧充電に切り替え、蓄電素子1に一定電圧で電流を供給してもよい。この場合において、直流電源部60は、蓄電素子1を充電する(SOCを増加させる)こともできる。
【0047】
例えば直流電源部60は、定電流充電で蓄電素子1に電流を供給し、蓄電素子1の所定の充電状態(SOCが10%超100%未満の所定値)で定電圧充電に切り替え、蓄電素子1に、少なくとも上記充電状態が維持されるように(SOCが上記所定値以上となるように)一定電圧で電流を供給してもよい。このように、直流電源部60は、SOCを上記所定値で維持するように蓄電素子1を充電することも、SOCを上記所定値よりも増加させるように蓄電素子1を充電することもできる。
【0048】
例えば直流電源部60は、定電流充電で蓄電素子1に電流を供給し、蓄電素子1の満充電状態(SOCが100%)で定電圧充電に切り替え、蓄電素子1に、上記満充電状態を維持しながら(SOCが100%である状態を維持しながら)一定電圧で電流を供給してもよい。
【0049】
上記に例示されるように直流電源部60から蓄電素子1に一定電圧で電流を供給しながら、蓄電素子1が釘刺し部70の棒状部材71によって突き刺される。
【0050】
(配線)
2本の配線61のうち、一方の配線61は直流電源部60の正極端子(図示せず)と蓄電素子1の正極端子4とに電気的に接続されている。他方の配線61は直流電源部60の負極端子(図示せず)と蓄電素子1の負極端子5とに電気的に接続されている。これら配線61を介して直流電源部60から蓄電素子1に定電流定電圧充電するように電流を供給して、蓄電素子1を充電することができる。
【0051】
(第1短絡発生トリガー部)
第1短絡発生トリガー部70は、蓄電素子1を物理的に短絡させるものである。本実施形態では、第1短絡発生トリガー部70が、蓄電素子1に上記電流を供給しながら、蓄電素子1(この際に上記電極体2)を貫通するように上記蓄電素子1に短絡用の金属製等の棒状部材71を突き刺すことが可能な釘刺し部である。棒状部材71は、蓄電素子1に突き刺したとき、この蓄電素子1全体を貫通することができるように構成されていてもよい。棒状部材71としては、先端に突起部を有する金属製等の棒状部材が挙げられ、このような棒状部材としては、上述した釘等が挙げられる。棒状部材71の形状、長さ、直径等は特に限定されず、蓄電素子1を短絡させることができるように適宜設定され得る。第1短絡発生トリガー部70は、棒状部材71を保持し、保持した棒状部材71を上下に移動させることで、この棒状部材71を蓄電素子1の突き刺し位置Rに突き刺して貫通させるように構成されている。第1短絡発生トリガー部70は、棒状部材71の移動速度を調整することができるように構成されている。このような第1短絡発生トリガー部70としては、従来公知の釘刺し試験装置と同様に構成された装置が挙げられる。突き刺し位置Rは、特に限定されず、棒状部材71が少なくとも電極体2を構成する正極、負極及びセパレータを貫通するように適宜設定され得る。
【0052】
本実施形態では、上述したように直流電源部60から蓄電素子1に電流を供給しながら、蓄電素子1が第1短絡発生トリガー部70の棒状部材71によって突き刺され、これによって蓄電素子1を短絡させる。
【0053】
(電流測定部)
本実施形態では、直流電源部60が電流測定部としての機能を有する。よって、直流電源部60が、蓄電素子1に供給される電流量を測定する。直流電源部60は、蓄電素子1が第1短絡発生トリガー部70の棒状部材71によって突き刺され、棒状部材71が蓄電素子1の電極体2を貫通することで発生する短絡電流を、蓄電素子1への供給電流として測定する。このように直流電源部60が電流測定部としての機能を有することによって、回路構成を簡素化することができる。
【0054】
(評価装置の動作の概略)
評価装置100における第1短絡発生トリガー部70の棒状部材71の下方に蓄電素子1が配置され、蓄電素子1の正極端子4及び負極端子5と直流電源部60とが各配線61によって電気的に接続され、上述したように直流電源部60から蓄電素子1に定電流定電圧充電するように電流が供給される。このとき、蓄電素子1に供給される電流量が直流電源部60によって測定される。そして、直流電源部60の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で電流を供給しながら、第1短絡発生トリガー部70の棒状部材71が下方に移動し、蓄電素子1の突き刺し位置Rを突き刺し、この蓄電素子1の電極体2を貫通する。この棒状部材71の貫通により、蓄電素子1に短絡が発生し、発生した短絡電流が電流測定部(直流電源部60)によって測定される。
【0055】
評価対象としては、上述したように、未充電状態に近い状態の蓄電素子1、満充電未満の所定の充電状態の蓄電素子1、又は満充電状態の蓄電素子1を用いることができる。これらのうち、未充電状態に近い状態の蓄電素子1、又は満充電未満の所定の充電状態の蓄電素子1を用いる場合には、上述したように、当該評価装置100が、直流電源部60によって蓄電素子1にそのSOCが増加するように(すなわち、充電するように)電流を供給することもできる。このように電流を供給することで、充電、釘刺し、及び短絡電流の測定を1つの装置で行うことができるため、簡便に蓄電素子を評価することができる。
【0056】
なお、第1実施形態の評価装置が、上記釘刺し試験以外の上述した各種試験を行うように構成された第1短絡発生トリガー部を備える場合には、この第1短絡発生トリガー部が上記各試験用の別部材を有し、この別部材によって上記各試験を行うこと以外は上記と同様にして、直流電源部からの供給電流を測定すること、及び充電電流を推測することによって短絡電流を算出するように当該評価装置を構成すればよい。
【0057】
当該評価装置を用いた蓄電素子の評価の詳細については、以下、本実施形態の蓄電素子の評価方法にて説明する。
【0058】
<第1実施形態の評価方法>
本実施形態の評価方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価方法であって、上記蓄電素子に、直流電源(ここでは上記直流電源部)から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給すること(第1電流供給工程)と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させること(第1短絡発生工程)と、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定すること(第1電流量測定工程)とを備える。本実施形態では、第1短絡発生工程において、電極体を物理的に短絡させる。電極体を物理的に短絡させる方法としては、上述したような釘刺し試験、圧壊試験、振動試験、衝撃試験、落下試験、内部短絡模擬試験等を行うことが挙げられる。上記各試験を行うことによる利点は上述した通りである。以下、第1短絡発生工程にて釘刺し試験を行う場合を例に挙げて本実施形態の評価方法について説明する。
【0059】
当該評価方法には、上述した第1実施形態の評価装置100を用いる。
【0060】
(評価対象の蓄電素子)
当該評価方法による評価対象の蓄電素子としては、上述した当該評価装置による評価対象の蓄電素子1と同様のものを用いることができる。
【0061】
(第1電流供給工程)
本工程では、
図3に示すように、直流電源部60から蓄電素子1の正極端子4及び負極端子5に各配線61を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給する。具体的には、まず、評価装置100における第1短絡発生トリガー部70の棒状部材71の下方に蓄電素子1を配置し、直流電源部60と蓄電素子1の正極端子4及び負極端子5とを、それぞれ配線61を介して電気的に接続する。次いで、直流電源部60から蓄電素子1に一定電流で電流を供給し、蓄電素子1の電圧が所定値に達した後、直流電源部60の動作が一定電圧で電流を供給するように切り替わる。
【0062】
直流電源部60による蓄電素子1の定電流定電圧充電においては、蓄電素子1の電圧が所定値に達した直後に、直流電源部60の動作が定電流充電から定電圧充電へ切り替わることが好ましい。この蓄電素子1の電圧の所定値は、蓄電素子1を評価したい充電状態(SOC)に応じて決定される。
【0063】
上述したように、このように一定電圧で電流を供給される蓄電素子1は、未充電に近い状態(例えばSOCが0%超10%以下)であっても、満充電未満の所定の充電状態に充電された状態(SOCが10%超100%未満の所定値)であっても、満充電された状態(SOCが100%)であってもよい。上述したように、棒状部材71の突き刺し中に蓄電素子1の放電が発生すると、短絡電流を算出することが困難になる。よって、上記いずれの状態であっても、蓄電素子1を評価したい充電状態(SOC)に応じた所定の電圧となるよう、定電圧で充電をすることが好ましい。
【0064】
直流電源部60から蓄電素子1に電流が供給されている間、この供給される電流量を直流電源部60によって測定する。
【0065】
(第1短絡発生工程)
本工程では、上記第1電流供給工程での直流電源部60の動作が一定電圧で電流を供給するように切り替わった後に、一定電圧での電流の供給を行いながら、蓄電素子1を物理的に短絡させる。本実施形態では、蓄電素子1を物理的に短絡させることとして、釘刺し試験を行う。具体的には、上記第1電流供給工程での直流電源部60の動作が一定電圧で電流を供給するように切り替わった後に、電流の一定電圧での供給を行いながら、蓄電素子1の突き刺し位置Rに棒状部材71を突き刺し、これにより、蓄電素子1を短絡させる釘刺し試験を行う。本工程を行うタイミングは、上述したように直流電源部60から蓄電素子1に一定電圧で電流が供給されている状態である。
【0066】
本工程で蓄電素子1を短絡させるタイミングにおいて、上記電流の電流量の上限としては0.1Cが好ましく、0.05Cがより好ましく、0.01Cがさらに好ましい。また、上記電流の電流量の上限としては1Aが好ましく、0.5Aがより好ましく、0.1Aがさらに好ましい。また、上記電流の電流量の上限としては0.1C又は1Aのうちのいずれか小さい値であると好ましく、0.05C又は0.5Aのうちいずれか小さい値であるとより好ましく、0.01C又は0.1Aのうちいずれか小さい値であるとさらに好ましい。本工程で上記電流の電流量が上記上限以下であると、短絡電流をより高精度に測定することができる。一方、本工程で上記電流の電流量の下限は、例えば0C(すなわち0A)とすることができる。
【0067】
(第1電流量測定工程)
本工程では、蓄電素子1を物理的に短絡させながら、具体的には上記第1短絡発生工程で蓄電素子1に棒状部材71を突き刺しながら、直流電源部60から蓄電素子1に供給される電流量を直流電源部60によって測定する。
【0068】
上述した通り、上記直流電源部60を用い、蓄電素子1に棒状部材71を突き刺しながら直流電源部60から定電流定電圧充電すべく電流を供給する場合、
図4に示すような回路構成が得られる。なお、
図4はあくまで回路構成を模式的に示すものである。
【0069】
この
図4に示すように、直流電源部60により、蓄電素子1に対して継続的な定電圧制御(CV制御)を行うことができる。この継続的なCV制御により、短絡発生(ここでは釘刺し)が行われている間、蓄電素子1に加えられる起電力が直流電源部60における定電圧充電の設定電圧と等しくなり、かつこの設定電圧で一定に保たれる(制御される)。このCV制御により、直流電源部60から供給される供給電流Ifは、蓄電素子1内を流れる充電電流Icと、棒状部材71内を流れる短絡電流Idzとに分岐される。このように、上記蓄電素子1を短絡させている間、上記直流電源部60からの供給電流Ifが上記蓄電素子1内を流れる充電電流Icと短絡電流Idzとに分岐される結果、棒状部材71に流れる短絡電流Idzは、直流電源部60からの供給電流Ifから充電電流Icを差し引いた値と等しくなる(Idz=If-Ic)。また、充電電流Icは、上述したように上記蓄電素子を短絡させずに定電圧充電した場合における、充電電流を測定することで容易に推測することができる。従って、供給電流Ifを測定すること、及び充電電流Icを推測することで、短絡電流Idzを算出することが可能になる。
【0070】
これに対し、上述したように、直流電源部60に代えて上述した特許文献1、2に示すような二次電池80を用いる場合には、
図5に示すような回路構成が得られる。
【0071】
この
図5に示すように、電流の供給源として二次電池80を用いる場合には、上記蓄電素子1に対して定電圧制御(CV制御)を行うことができない。このため、棒状部材71を突き刺すことが行われている間、上記二次電池80の起電力が上記蓄電素子1の定電圧充電に必要な一定電圧を維持することができず(SOCを維持することができず)、上記蓄電素子1が放電する。このため、上記蓄電素子1から放電電流Idが流れる。このように、棒状部材71の突き刺し中の蓄電素子1の端子間電圧が上記二次電池80の起電力よりも小さくなる結果、放電電流Idは、棒状部材71に向かって流れる。その結果、上記棒状部材71に流れる短絡電流Idzは、上記二次電池80からの電流Ifと、上記放電電流Idとの和に等しくなる(Idz=If+Id)。放電電流Idは測定すること及び推測することが困難であるため、電流の供給源として上記二次電池80を用いる場合、上記短絡電流Idzの適切な評価が困難になる。
【0072】
なお、第1実施形態の評価方法が上記第1短絡発生工程として上記釘刺し試験以外の上述した各試験を行う場合には、この第1短絡発生工程として上記各試験用の手順を行うこと以外は上記と同様にして、直流電源部からの供給電流を測定すること、及び充電電流を推測することによって短絡電流を算出すればよい。
【0073】
上記の通り、電流の供給源として上記二次電池を用いる従来技術では、上記短絡時に発生する短絡電流を適切に評価することが困難であるのに対し、当該評価方法によれば、上記短絡電流を適切に評価することができる。
【0074】
<第2実施形態の評価装置>
本実施形態の評価装置は、第2短絡発生トリガー部が、上記蓄電素子を加熱可能な加熱部を有し、上記加熱部が上記蓄電素子を加熱することにより短絡させるように構成されている。このような加熱による短絡としては、熱連鎖試験、オーブン試験、燃焼試験による短絡等が挙げられる。これらの試験は、通常予見される使用形態ではない使用を模擬している。具体的には、本実施形態の評価装置としては、直流電源部によって上記蓄電素子に定電流定電圧充電するように電流を供給し、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で直流電流を供給しながら上記第2短絡発生トリガー部によって上記各試験のいずれかを行い、上記各試験のいずれかによって上記蓄電素子の電極体を短絡させながら、上記直流電源部から上記蓄電素子に供給される電流量を測定するように構成される。
【0075】
上記第2短絡発生トリガー部が熱連鎖試験を行うように構成される場合には、上記第2短絡発生トリガー部が、上記加熱部として上記蓄電素子を加熱することが可能なトリガーセル(発熱の起点となる別の蓄電素子)を有する。上記トリガーセルは例えば上記蓄電素子に近接して配置される。上記トリガーセルに対して上述した釘刺し試験を行うこと等によって上記トリガーセルが発熱すると、上記蓄電素子も加熱することができる。すなわち、熱連鎖試験を行う場合の評価装置は、上記トリガーセルを起点として上記蓄電素子(又は複数の上記蓄電素子)を連鎖的に加熱することによって上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第2短絡発生トリガー部が熱連鎖試験を行うように構成される場合には、熱連鎖試験を行っている間、隣接して配置された蓄電素子を上記のように定電圧(CV)充電状態にしておくことにより、トリガーセルからの熱影響によって他の蓄電素子に熱連鎖が生じて短絡が発生するタイミング、その大きさ等を推定することができる。これにより、蓄電素子、及び複数の蓄電素子のモジュール構成に対する耐熱連鎖性を相対的に比較することが可能となる。
【0076】
上記第2短絡発生トリガー部がオーブン試験を行うように構成される場合には、上記第2短絡発生トリガー部が、上記加熱部として上記蓄電素子を加熱することが可能なオーブン(恒温器)を有し、このオーブンによって上記蓄電素子を加熱することで上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第2短絡発生トリガー部がオーブン試験を行うように構成される場合には、蓄電素子内の全体が均一に温度上昇した際に発生した内部短絡の短絡電流(及びそれに基づくジュール発熱)を取得することできるため、これにより、短絡電流等を適切に評価することができ、複数の蓄電素子間で相対的に比較することが可能となる。また、固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface(SEI))の分解、正極及び負極と電解液との間での反応等で消費される電流量を取得することができるため、蓄電素子の処方に起因する熱安定性を複数の処方間で相対的に比較して考察することができる。
【0077】
上記第2短絡発生トリガー部が燃焼試験を行うように構成される場合には、上記第2短絡発生トリガー部が、上記加熱部として上記蓄電素子を燃焼することが可能な燃焼装置を有し、この燃焼装置によって上記蓄電素子を燃焼することで上記蓄電素子を短絡させるように構成される。このように、上記第2短絡発生トリガー部が燃焼試験を行うように構成される場合には、燃焼試験での加熱条件に対応した内部短絡の短絡電流(及びそれに基づくジュール発熱)を取得することができるため、これにより、短絡電流等を適切に評価することができ、複数の条件間で相対的に比較することが可能となる。また、SEIの分解、正極及び負極と電解液との間での反応等で消費される電流量を取得することができるため、蓄電素子の処方に起因する熱安定性を複数の処方間で相対的に比較して考察することができる。
【0078】
以下、本実施形態の評価装置について、上記第2短絡発生トリガー部が熱連鎖試験を行うように構成された評価装置を例に挙げて、さらに詳細に説明する。
【0079】
図示しないが、本実施形態の評価装置は、上記正極端子及び上記負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給することが可能な直流電源部と、上記蓄電素子を加熱することにより上記電極体を短絡させる第2短絡発生トリガー部と、上記第2短絡発生トリガー部によって上記電極体に短絡を発生させながら、上記直流電源部から上記蓄電素子に供給される電流量を測定することが可能な電流測定部とを備える。また、本実施形態の評価装置は、上記第2短絡発生トリガー部として、上記蓄電素子を加熱することにより上記蓄電素子を短絡させることが可能な加熱部を備える。本実施形態の評価装置は、第1実施形態と同様、直流電源部と蓄電素子の正極端子及び負極端子とにそれぞれ電気的に接続された各配線をさらに備える。すなわち、本実施形態の評価装置は、第1短絡発生トリガー部に代えて第2短絡発生トリガー部を備えること以外は、上述した第1実施形態の評価装置(
図3参照)と同じ構成を有する。よって、以下、直流電源部、電流測定部及び配線についての説明を省略し、第2短絡発生トリガー部についてのみ説明する。
【0080】
(第2短絡発生トリガー部)
上記第2短絡発生トリガー部は、加熱部を有する。本実施形態では、加熱部として、上記蓄電素子を加熱することが可能なものを用いる。このような加熱部としては、上記蓄電素子以外の加熱用の蓄電素子(トリガーセル)等が挙げられる。この加熱部の発熱によって、連鎖的に上記蓄電素子を加熱して短絡させる。上記加熱部を発熱させる方法として、例えばヒーターによる加熱、金属製等の棒状部材を刺すこと等によってトリガーセルを短絡させること等が挙げられる。
【0081】
(評価装置の動作の概略)
本実施形態では、蓄電素子を物理的に短絡させることに代えて加熱により短絡させること以外は上述した第1実施形態と同様に評価装置が作動する。すなわち、本実施形態の評価装置における第2短絡発生トリガー部の加熱部に近接して蓄電素子が配置され、蓄電素子の正極端子及び負極端子と直流電源部とが各配線によって電気的に接続され、上述したように直流電源部から蓄電素子に定電流定電圧充電するように電流が供給される。このとき、蓄電素子に供給される電流量が上記直流電源部によって測定される。そして、直流電源部の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で電流を供給しながら、第2短絡発生トリガー部の加熱部によって蓄電素子を加熱する。この加熱により、蓄電素子に短絡が発生し、発生した短絡電流が電流測定部(直流電源部)によって測定される。
【0082】
本実施形態の評価装置を用いた蓄電素子の評価の詳細については、以下、本実施形態の蓄電素子の評価方法にて説明する。
【0083】
<第2実施形態の評価方法>
本実施形態の評価方法は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の評価方法であって、上記蓄電素子に、直流電源(ここでは直流電源部)から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給すること(第2電流供給工程)と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させること(第2短絡発生工程)と、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記蓄電素子に供給される電流量を測定すること(第2電流量測定工程)とを備える。本実施形態では、第2短絡発生工程において、蓄電素子を加熱することによって電極体を短絡させる。加熱することによって蓄電素子に短絡を発生させる方法としては、上述したような熱連鎖試験、オーブン試験、燃焼試験等を行うことが挙げられる。上記各試験を行うことによる利点は上述した通りである。以下、第2短絡発生工程にて熱連鎖試験を行う場合を例に挙げて本実施形態の評価方法について説明する。
【0084】
当該評価方法には、上述した第2実施形態の評価装置を用いる。
【0085】
(評価対象の蓄電素子)
当該評価方法による評価対象の蓄電素子としては、上述した第1実施形態の評価装置による評価対象の蓄電素子1と同様のものを用いることができる。
【0086】
(第2電流供給工程)
本工程では、上述した第1実施形態の第1電流供給工程と同様の工程を行う。すなわち、本工程では、直流電源部から蓄電素子の正極端子及び負極端子に各配線を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給する。具体的には、まず、上記第2短絡発生トリガー部の加熱部に近接して蓄電素子を配置し、直流電源部と蓄電素子の正極端子及び負極端子とを、それぞれ配線を介して電気的に接続する。次いで、直流電源部から蓄電素子に一定電流で電流を供給し、蓄電素子1の電圧が所定値に達した後、直流電源部の動作が一定電圧で電流を供給するように切り替わる。
【0087】
上述した第1実施形態と同様、一定電圧で電流を供給される蓄電素子は、未充電に近い状態(例えばSOCが0%超10%以下)であっても、満充電未満の所定の充電状態に充電された状態(SOCが10%超100%未満の所定値)であっても、満充電された状態(SOCが100%)であってもよい。
【0088】
上述した第1実施形態と同様、直流電源部から蓄電素子に電流が供給されている間、この供給される電流量を直流電源部によって測定する。
【0089】
(第2短絡発生工程)
本工程では、上記第2電流供給工程での直流電源部の動作が一定電圧で電流を供給するように切り替わった後に、一定電圧での電流の供給を行いながら、蓄電素子を加熱することによって短絡させる。具体的には、加熱することによって短絡させることとして、第2短絡発生トリガー部の加熱部の発熱によって蓄電素子を加熱し、これによって上記蓄電素子を短絡させる熱連鎖試験を行う。本工程を行うタイミングは、上述した第1実施形態と同様、直流電源部から蓄電素子に電流が供給されている状態である。また、上述した第1実施形態と同様、本工程で上記蓄電素子を短絡させるタイミングにおいて、上記電流(充電電流)の電流量が0.1C又は1Aのうちのいずれか小さい値以下であることが好ましい。
【0090】
(第2電流量測定工程)
本工程では、上述した第1実施形態の第1電流量測定工程と同様の工程を行う。すなわち、本工程では、蓄電素子を加熱することにより短絡させながら、具体的には上記第2短絡発生工程で蓄電素子を加熱して短絡させながら、直流電源部から蓄電素子に供給される電流量を直流電源部によって測定する。より具体的には、本実施形態では、
図4の回路において、棒状部材71を介することなく負極及び正極が直接短絡(内部短絡)したような回路が形成される。
【0091】
このような回路において、上述した第1実施形態と同様、直流電源部により、蓄電素子に対して継続的な定電圧制御(CV制御)を行うことができる。この継続的なCV制御により、短絡が発生(ここでは加熱によって短絡)している間、蓄電素子に加えられる起電力が直流電源部における定電圧充電の設定電圧と等しくなり、かつこの設定電圧で一定に保たれる(制御される)。このCV制御により、直流電源部から供給される供給電流If(
図4参照)は、蓄電素子内を流れる充電電流Icと、正極及び負極間を直結して流れる短絡電流Idz(
図4において棒状部材71を介することなく正極及び負極間を直接流れる電流)とに分岐される。このように、上記蓄電素子を短絡させている間、上記直流電源部からの供給電流Ifが上記蓄電素子内を流れる充電電流Icと短絡電流Idzとに分岐される結果、正極及び負極間を直接流れる短絡電流Idzは、直流電源部からの供給電流Ifから充電電流Icを差し引いた値と等しくなる(Idz=If-Ic)。また、充電電流Icは、上述したように容易に推測することができる。従って、供給電流Ifを測定すること、及び充電電流Icを推測することで、短絡電流Idzを算出することが可能になる。
【0092】
なお、第2実施形態の評価方法が上記第2短絡発生工程として上記熱連鎖試験以外の上述した各試験を行う場合には、この第2短絡発生工程として上記各試験を行うこと以外は上記と同様にして短絡を発生させ、直流電源部からの供給電流を測定すること、及び充電電流を推測することによって短絡電流を算出すればよい。
【0093】
本実施形態の評価方法によれば、上述した第1実施形態と同様、上記短絡電流を適切に評価することができる。
【0094】
[蓄電素子の詳細な構成]
以下、本実施形態の評価装置及び評価方法で用いられる蓄電素子1に例示される蓄電素子の詳細な構成について説明する。
【0095】
上述の通り、本実施形態の評価方法及び評価装置に用いられる蓄電素子は、正極と、負極と、非水電解質とを備える。正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回された電極体を形成する。この電極体は容器に収納され、この容器内に非水電解質が充填される。非水電解質は、正極と負極との間に介在する。蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)を用いる場合について説明する。
【0096】
(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層とを有する。
【0097】
正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が107Ω・cm超であることを意味する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材の形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H-4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
【0098】
正極基材の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。正極基材の「平均厚さ」とは、所定の面積の基材を打ち抜いた際の打ち抜き質量を、基材の真密度及び打ち抜き面積で除した値をいう。負極基材に対して「平均厚さ」を用いる場合にも同様に定義される。
【0099】
中間層は、正極基材と正極活物質層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
【0100】
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、必要に応じて、導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0101】
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LixNi1-x]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγCo1-x-γ]O2(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LixCo1-x]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγMn1-x-γ]O2(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LixNiγMnβCo1-x-γ-β]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LixNiγCoβAl1-x-γ-β]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LixMn2O4,LixNiγMn2-γO4等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO4,LiMnPO4,LiNiPO4,LiCoPO4,Li3V2(PO4)3,Li2MnSiO4,Li2CoPO4F等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0102】
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
【0103】
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0104】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0105】
(任意成分)
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛、非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
【0106】
正極活物質層における導電剤の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0107】
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
【0108】
正極活物質層におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
【0109】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
【0110】
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。
【0111】
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0112】
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で例示した構成から選択することができる。
【0113】
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、炭素質材料等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材の形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0114】
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0115】
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示した材料から選択できる。
【0116】
負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0117】
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;Li4Ti5O12、LiTiO2、TiNb2O7等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0118】
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
【0119】
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
【0120】
ここで、炭素材料の「放電状態」とは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されるように放電された状態を意味する。例えば、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態である。
【0121】
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
【0122】
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
【0123】
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が例えば炭素材料、チタン含有酸化物又はポリリン酸化合物である場合、その平均粒径は1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質が、Si、Sn、Si酸化物、又は、Sn酸化物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下であってもよい。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び分級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。負極活物質が金属Li等の金属である場合、負極活物質層は、箔状であってもよい。
【0124】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0125】
(セパレータ)
「セパレータ」とは、正極と負極とを絶縁するためにこれら正極と負極との間に介在する介在物を意味する。
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形状としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの形状の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
【0126】
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、室温から800℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、チタン酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
【0127】
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
【0128】
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
【0129】
上記織布、不織布、多孔質樹脂フィルムに例示されるセパレータの他、セパレータとして、例えば無機粒子等を含み、正極(具体的には正極活物質層)及び負極(具体的には負極活物質層)の少なくとも一方の表面に形成される絶縁層を用いることもできる。この場合、正極及び負極の少なくとも一方に上記絶縁層が接着されて一体化されており、上記絶縁層を介して上記正極及び負極が接触する。すなわち、上述した織布、不織布、多孔質樹脂フィルムといった部材を介在させずに直接上記正極及び上記負極を接触させることで、上記絶縁層を介して正極及び負極が接触し、これら正極及び負極を上記絶縁層を介して積層することができる。
【0130】
セパレータは、電子伝導性を有さず、かつイオン伝導性を有する固体電解質層であってもよい。また、セパレータは、後述する非水電解質を構成する上記固体電解質層であってもよい。
【0131】
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。すなわち、非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含んでもよい。
【0132】
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
【0133】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
【0134】
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
【0135】
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
【0136】
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
【0137】
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
【0138】
非水電解液における電解質塩の含有量は、20℃1気圧下において、0.1mol/dm3以上2.5mol/dm3以下であると好ましく、0.3mol/dm3以上2.0mol/dm3以下であるとより好ましく、0.5mol/dm3以上1.7mol/dm3以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm3以上1.5mol/dm3以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
【0139】
非水電解液は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えばビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0140】
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
【0141】
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
【0142】
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃から25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
【0143】
硫化物固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合、例えば、Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、Li10Ge-P2S12、等が挙げられる。
【0144】
上述した通り、上記蓄電素子の形状については特に限定されるものではない。
【0145】
<蓄電装置の構成>
本実施形態の評価装置及び評価方法の評価対象である蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の蓄電素子を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載されてもよい。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図2に、電気的に接続された二以上の蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の蓄電素子1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。この場合、蓄電ユニッット20又は蓄電装置30から一以上の蓄電素子1が取り外されて、上述したように評価され得る。
【0146】
当該蓄電素子の評価装置及び当該評価方法によれば、上述の通り、直流電源からの供給電流を測定すること、及び充電電流を推測することで、蓄電素子の短絡電流を算出することができる。よって、当該評価装置及び当該評価方法によれば、上記短絡電流を適切に評価することができる。
【0147】
<蓄電素子の製造方法>
本実施形態の蓄電素子の製造方法(以下、「製造方法」ともいう。)は、正極、負極及びセパレータを含む電極体と、非水電解質と、上記電極体及び上記非水電解質を収容する容器とを有する蓄電素子の製造方法であって、複数の上記容器にそれぞれ上記電極体及び上記非水電解質を収容すること(収容工程)と、上記複数の容器をそれぞれ密封することにより複数の密封体を形成すること(密封体形成工程)と、上記複数の密封体から少なくとも一の密封体を評価用の試料として抜き取ること(抜き取り工程)と、上記評価用の試料を評価すること(評価工程)とを備える。
上記評価工程は、上記評価用の試料に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給すること(第3電流供給工程)と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させること(第3短絡発生工程)と、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記評価用の試料に供給される電流量を測定すること(第3電流量測定工程)とを有する。
【0148】
(電極体)
電極体としては、上述した「[蓄電素子の詳細な構成]」で述べた電極体と同様の電極体が挙げられる。
すなわち、正極としては、上述した「[蓄電素子の詳細な構成]」で述べた正極と同様の正極が挙げられる。
負極としては、上述した「[蓄電素子の詳細な構成]」で述べた負極と同様の負極が挙げられる。
セパレータとしては、上述した「[蓄電素子の詳細な構成]」で述べたセパレータと同様のセパレータが挙げられる。
電極体は、上記正極及び上記負極を、上記セパレータを介して積層又は巻回することによって形成することができる。
【0149】
(非水電解質)
非水電解質としては、上述した「[蓄電素子の詳細な構成]」で述べた非水電解質と同様の非水電解質が挙げられる。
【0150】
(容器)
容器の材料は公知の材料から適宜選択できる。容器の材料としては、例えば、金属、高分子、セラミック及びこれらの組み合わせが挙げられる。容器の形状は公知の形状から適宜選択できる。容器の形状としては、例えば、円筒型、角型、扁平型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。
【0151】
(収容工程)
本工程では、複数の上記容器にそれぞれ上記電極体及び上記非水電解質を収容する。例えば
図1に示すような複数の容器3にそれぞれ
図1に示すような電極体2、及び非水電解質(図示せず)を収容する。非水電解質を容器に収容することは、公知の方法から適宜選択できる。例えば、非水電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入すればよい。
【0152】
(密封体形成工程)
本工程では、上記複数の容器をそれぞれ密封することにより複数の密封体を形成する。
【0153】
(抜き取り工程)
本工程では、上記複数の密封体から少なくとも一の密封体を評価用の試料として抜き取る。抜き取り数量は、特に限定されず、当該製造方法によって製造される蓄電素子の短絡性が評価され得るような数量に適宜設定され得る。
【0154】
(評価工程)
本工程では、上記評価用の試料を評価する。1個の評価用の試料を抜き取った場合には、この1個の評価用の試料を評価する。複数個の評価用の試料を抜き取った場合には、この複数個の評価用の試料のうち1個以上の評価用の試料を評価する。
【0155】
本工程は、上記評価用の試料に、直流電源から上記正極と電気的に接続されている正極端子及び上記負極と電気的に接続されている負極端子を介して定電流定電圧充電すべく電流を供給すること(第3電流供給工程)と、上記直流電源の動作が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、一定電圧で上記電流を供給しながら、上記電極体を短絡させること(第3短絡発生工程)と、上記電極体を短絡させながら、上記直流電源から上記試料に供給される電流量を測定すること(第3電流量測定工程)とを有する。
【0156】
本工程では、上述した当該評価装置(例えば第1実施形態及び第2実施形態の評価装置等)と同様の評価装置を用い、上述した当該評価方法(例えば第1実施形態及び第2実施形態の評価方法等)と同様の方法で評価用の試料を評価することができる。すなわち、以下のようにして評価用の試料を評価することができる。
【0157】
(第3電流供給工程)
本工程では、上記評価用の試料を評価対象として、上述した「<第1実施形態の蓄電素子の評価方法>」の「(第1電流供給工程)」、又は上述した「<第2実施形態の蓄電素子の評価方法>」の「(第2電流供給工程)」と同様の工程を行う。
【0158】
(第3短絡発生工程)
本工程では、上記評価用の試料を評価対象として、上述した「<第1実施形態の蓄電素子の評価方法>」の「(第1短絡発生工程)」、又は上述した「<第2実施形態の蓄電素子の評価方法>」の「(第2短絡発生工程)」と同様の工程を行う。
【0159】
(第3電流量測定工程)
本工程では、上記評価用の試料を評価対象として、上述した「<第1蓄電素子の評価方法>」の「(第1電流量測定工程)」、又は上述した「<第2実施形態の蓄電素子の評価方法>」の「(第2電流量測定工程)」と同様の工程を行う。
【0160】
上記評価工程によれば、上述と同様、直流電源からの供給電流を測定すること、及び充電電流を推測することで、上述した当該評価方法と同様、評価用の試料の短絡電流を算出することができる。よって、上記評価工程によれば、上記評価用の試料の短絡電流を適切に評価することができる。
【0161】
このように、当該製造方法によれば、評価用の試料を抜き取り、評価用の試料に対する直流電源からの供給電流を測定すること、及び充電電流を推測することで、上述した当該評価方法と同様、評価用の試料の短絡電流を算出することができる。従って、当該製造方法によれば、上記短絡電流が適切に評価された蓄電素子を製造することができる。
【0162】
[その他の実施形態]
尚、本発明の蓄電素子の評価方法、蓄電素子の評価装置、蓄電素子の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
【0163】
上記実施形態では、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
【0164】
上記実施形態では、直流電源が供給電流を測定する機能、すなわち電流測定部としての機能を有する場合について説明したが、電流測定部として直流電源とは別途の電流計等を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等の電源として使用される蓄電素子に適用できる。
【符号の説明】
【0166】
1 蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
60 直流電源部
61 配線
70 短絡発生トリガー部(第1短絡発生トリガー部)
71 棒状部材
80 二次電池
100 評価装置
R 突き刺し位置