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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176798
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】アスファルトフィニッシャ
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089279
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匠
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AB01
2D052BD03
2D052BD05
2D052BD07
2D052BD11
(57)【要約】
【課題】カーブしている道路の舗装の品質を高めること。
【解決手段】アスファルトフィニッシャ100は、トラクタ1と、トラクタ1の前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパ2と、ホッパ2に受け入れられた舗装材をトラクタ1の後側へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材をトラクタ1の後側で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材をスクリュSCの後側で敷き均すスクリード3と、コントローラ50と、を備える。コントローラ50は、スクリード3によって敷き均される路面の面積を左右で二等分する線に基づいて目標軌道を生成し、且つ、アスファルトフィニッシャ100の所定点がその目標軌道を辿るようにトラクタ1を駆動させるように構成されている。そして、上記路面は、施工対象の道路のカーブ部分の路面を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、
前記ホッパに受け入れられた前記舗装材を前記トラクタの後側へ給送するコンベアと、
前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、
制御装置と、を備えるアスファルトフィニッシャであって、
前記制御装置は、前記スクリードによって敷き均される路面の面積を左右で二等分する線に基づいて目標軌道を生成し、且つ、当該アスファルトフィニッシャの所定点が前記目標軌道を辿るように前記トラクタの動きを制御するように構成されており、
前記路面は、施工対象の道路のカーブ部分の路面を含む、
アスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
前記所定点は、上面視で前記トラクタの前後軸上にある、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項3】
前記所定点は、前記スクリードよりも前方に設定される、
請求項2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項4】
前記道路における右にカーブする部分に対応する前記目標軌道は、前記道路を左右に二等分する線よりも左側に設定され、
前記道路における左にカーブする部分に対応する前記目標軌道は、前記道路を左右に二等分する線よりも右側に設定される、
請求項1~請求項3の何れかに記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項5】
前記道路の前記カーブ部分を通過するときに前記道路の幅に合わせて前記スクリードを左右に伸縮させる、
請求項1~請求項3の何れかに記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項6】
前記道路の前記カーブ部分を通過するときに前記スクリードの左端及び右端のうちの一方を伸張させ且つ他方を収縮させる、
請求項5に記載のアスファルトフィニッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アスファルトフィニッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタと、トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、ホッパ内の舗装材をトラクタの後側へ給送するコンベアと、コンベアにより給送された舗装材をトラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、スクリュにより敷き拡げられた舗装材をスクリュの後側で敷き均すスクリードとを備えたアスファルトフィニッシャが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
アスファルトフィニッシャは、通常、施工対象の道路の中心とスクリードの中心とが一致した状態で前進するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-160636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、施工対象の道路がカーブしている場合、アスファルトフィニッシャは、舗装の品質を低下させてしまうおそれがある。カーブしている道路の中心とスクリードの中心とが一致した状態でアスファルトフィニッシャが前進すると、左後側スクリードによって敷き均される単位時間当たりの道路の表面積と右後側スクリードによって敷き均される単位時間当たりの道路の表面積との間に差が生じるためである。そして、左後側スクリードが抱える舗装材の量(左抱え込み量)と右後側スクリードが抱える舗装材の量(右抱え込み量)との間にも差が生じるためである。
【0006】
そこで、カーブしている道路の舗装の品質を高められるアスファルトフィニッシャを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャは、トラクタと、前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパに受け入れられた前記舗装材を前記トラクタの後側へ給送するコンベアと、前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、制御装置と、を備えるアスファルトフィニッシャであって、前記制御装置は、前記スクリードによって敷き均される路面の面積を左右で二等分する線に基づいて目標軌道を生成し、且つ、当該アスファルトフィニッシャの所定点が前記目標軌道を辿るように前記トラクタの動きを制御するように構成されており、前記路面は、施工対象の道路のカーブ部分の路面を含む。
【発明の効果】
【0008】
上述のアスファルトフィニッシャは、カーブしている道路の舗装の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャの側面図である。
図2図1のアスファルトフィニッシャの上面図である。
図3】自動操舵システムの構成例を示す図である。
図4】施工現場の上面図である。
図5】施工現場の上面図である。
図6】施工現場の上面図である。
図7】施工現場の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の側面図である。図2はアスファルトフィニッシャ100の上面図である。図示例では、アスファルトフィニッシャ100は、ホイール式アスファルトフィニッシャであり、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード3で構成されている。以下では、トラクタ1から見たホッパ2の方向(+X方向)を前方とし、トラクタ1から見たスクリード3の方向(-X方向)を後方とする。
【0011】
トラクタ1は、アスファルトフィニッシャ100を移動させるための機構である。図示例では、トラクタ1は、後輪走行用油圧モータを用いて後輪5を回転させ、且つ、前輪走行用油圧モータを用いて前輪6を回転させてアスファルトフィニッシャ100を移動させる。後輪走行用油圧モータ及び前輪走行用油圧モータは油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する。但し、前輪6は従動輪であってもよい。
【0012】
アスファルトフィニッシャ100は、クローラ式アスファルトフィニッシャであってもよい。この場合、後輪5及び前輪6の組み合わせは左クローラ及び右クローラの組み合わせで置き換えられる。
【0013】
コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100を制御する制御装置である。図示例では、コントローラ50は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を含むマイクロコンピュータで構成され、トラクタ1に搭載されている。コントローラ50の各機能は、不揮発性記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで実現される。但し、コントローラ50の各機能は、ソフトウェアによって実現されるばかりでなく、ハードウェアによって実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0014】
ホッパ2は、舗装材を受け入れるための機構である。図示例では、ホッパ2は、トラクタ1の前側に設置され、ホッパシリンダによって車幅方向(Y軸方向)に開閉できるように構成されている。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2が全開状態のときにダンプトラックの荷台から舗装材(例えばアスファルト混合物である。)を受け入れる。ダンプトラックは、舗装材を運搬する運搬車両の一例である。図1及び図2はホッパ2が全開状態であることを示す。ホッパ2内の舗装材が減少するとホッパ2が閉じられ、ホッパ2の内壁付近にあった舗装材がホッパ2の中央部に集められる。ホッパ2の中央部にあるコンベアCVがトラクタ1の後側に舗装材を給送できるようにするためである。トラクタ1の後側に給送された舗装材は、スクリュSCによってトラクタ1の後側且つスクリード3の前側で車幅方向に敷き拡げられる。図示例では、スクリュSCは、エクステンションスクリュが左右に連結された状態にある。図1及び図2は、明瞭化のため、ホッパ2内にある舗装材の図示を省略し、スクリュSCによって敷き拡げられた舗装材PVを粗いドットパターンで示し、スクリード3によって敷き均された新設舗装体NPを細かいドットパターンで示している。
【0015】
スクリード3は、舗装材PVを敷き均すための機構である。図示例では、スクリード3は、前側スクリード30及び後側スクリード31を含む。前側スクリード30は、左前側スクリード30L及び右前側スクリード30Rを含む。後側スクリード31は、車幅方向に伸縮可能なスクリードであり、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを含む。図示例では、後側スクリード31は、スクリード伸縮シリンダ26によって車幅方向に伸縮される。具体的には、左後側スクリード31Lは左スクリード伸縮シリンダ26Lを用いて車幅方向に伸縮され、右後側スクリード31Rは右スクリード伸縮シリンダ26Rを用いて車幅方向に伸縮される。また、スクリード3は、トラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3Aを介してトラクタ1に連結されている。レベリングアーム3Aは、トラクタ1の左側に配置される左レベリングアーム3ALと、トラクタ1の右側に配置される右レベリングアーム3ARとを含む。
【0016】
スクリード3の前部にはモールドボード43が取り付けられている。モールドボード43は、スクリード3の前方に滞留する舗装材PVの量を調整できるように構成されている。舗装材PVは、モールドボード43の下端と路盤BSとの間の隙間を通ってスクリード3の下に至る。
【0017】
図示例では、トラクタ1には、情報取得装置51、車載表示装置52、操舵装置53、及びスクリード伸縮装置54が取り付けられている。
【0018】
情報取得装置51は、施工対象の道路に関する情報を取得し、取得した情報をコントローラ50に対して出力できるように構成されている。施工対象の道路に関する情報は、例えば、道路の幅、緩和区間(クロソイド区間)における曲率の変化、及び円弧区間における曲率等を含む。図示例では、情報取得装置51は、前方監視装置51F、後方監視装置51B、走行速度センサ51S、測位装置51P、及び通信装置51Tを含む。
【0019】
前方監視装置51Fは、アスファルトフィニッシャ100の前方を監視できるように構成されている。図示例では、前方監視装置51Fは、トラクタ1の前方にある監視範囲RFを監視するLIDARであり、トラクタ1の中央部に取り付けられている。トラクタ1の中央部は、例えば、ホッパ2の後側にあるエンジン室を覆うカバーの前端中央部である。但し、前方監視装置51Fは、アスファルトフィニッシャ100の他の部位に取り付けられていてもよく、複数のLIDARで構成されていてもよい。複数のLIDARで構成される場合、前方監視装置51Fは、互いに重複しない複数の監視範囲を同時に監視できる。この場合、複数のLIDARは、トラクタ1の前端右側部に取り付けられた右前LIDARと、トラクタ1の前端左側部に取り付けられた左前LIDARとを含んでいてもよい。また、LIDARは、ブラケット又はポール等を介してトラクタ1に取り付けられていてもよい。
【0020】
後方監視装置51Bは、アスファルトフィニッシャ100の後方を監視できるように構成されている。図示例では、後方監視装置51Bは、スクリード3の後方にある監視範囲RBを監視するLIDARであり、手摺りとして機能するガイドレール1Gに取り付けられている。但し、後方監視装置51Bは、運転席1Sの下部に取り付けられていてもよく、アスファルトフィニッシャ100の他の部位に取り付けられていてもよい。また、後方監視装置51Bは、複数のLIDARで構成されていてもよい。複数のLIDARで構成される場合、後方監視装置51Bは、互いに重複しない複数の監視範囲を同時に監視できる。この場合、複数のLIDARは、トラクタ1の後端右側部に取り付けられた右後LIDARと、トラクタ1の後端左側部に取り付けられた左後LIDARとを含んでいてもよい。また、LIDARは、ブラケット又はポール等を介してトラクタ1に取り付けられていてもよい。
【0021】
情報取得装置51は、アスファルトフィニッシャ100の側方を監視できるように構成される側方監視装置を含んでいてもよい。この場合、側方監視装置は、左側方監視装置及び右側方監視装置を含んでいてもよい。左側方監視装置は、例えば、トラクタ1の左方にある監視範囲を監視するLIDARとして、後輪5よりも前側でトラクタ1の上面の左端部に取り付けられてもよい。右側方監視装置は、例えば、トラクタ1の右方にある監視範囲を監視するLIDARとして、後輪5よりも前側でトラクタ1の上面の右端部に取り付けられてもよい。
【0022】
LIDARは、例えば、監視範囲内にある多数の点とLIDARとの間の距離を測定できるように構成されている。但し、前方監視装置51F及び後方監視装置51Bの少なくとも一方は、単眼カメラ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダ、レーザスキャナ、距離画像カメラ、又はレーザレンジファインダ等であってもよい。側方監視装置についても同様である。以下では、LIDAR、単眼カメラ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダ、レーザスキャナ、距離画像カメラ、又はレーザレンジファインダ等は、LIDAR等と称される。
【0023】
前方監視装置51Fの監視範囲RFは、望ましくは、路盤BSと路盤BSの外側にある地物APとを含む。施工対象の道路の幅に関する情報を取得できるようにするためである。側方監視装置の監視範囲についても同様である。図示例では、監視範囲RFは、路盤BSの幅より大きい幅を有する。地物APはL形側溝ブロックである。地物APは、舗装用型枠、縁石ブロック、又は既設舗装体等であってもよい。
【0024】
後方監視装置51Bの監視範囲RBは、望ましくは、新設舗装体NPと新設舗装体NPの外側にある地物APとを含む。新設舗装体NPの幅に関する情報を取得できるようにするためである。図示例では、監視範囲RBは、新設舗装体NPの幅より大きい幅を有する。
【0025】
走行速度センサ51Sは、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を検出できるように構成されている。図示例では、走行速度センサ51Sは、車輪速センサであり、後輪5の回転角速度及び回転角度、ひいては、アスファルトフィニッシャ100の走行速度及び走行距離を検出できるように構成されている。
【0026】
測位装置51Pは、アスファルトフィニッシャ100の位置を計測できるように構成されている。図示例では、測位装置51Pは、GNSSコンパスであり、アスファルトフィニッシャ100の位置及び姿勢を計測できるように構成されている。測位装置51PとしてのGNSSコンパスは、図1及び図2に示すように、左レベリングアーム3ALの後端部から鉛直上方に延びるポールPLの上端に取り付けられた左GNSS受信機51PLと、右レベリングアーム3ARの後端部から鉛直上方に延びるポールPL(不可視)の上端に取り付けられた右GNSS受信機51PRとを含む。
【0027】
但し、測位装置51Pは、トータルステーションであってもよい。この場合、ポールPLの先端には、トータルステーションのターゲットとなる反射プリズムが取り付けられる。アスファルトフィニッシャ100の周囲に設置されているトータルステーションの本体は、無線通信を介してコントローラ50に接続される。すなわち、トータルステーションの本体は、導き出したターゲットの位置に関する情報をコントローラ50に送信する。
【0028】
通信装置51Tは、アスファルトフィニッシャ100とアスファルトフィニッシャ100の外部にある機器との間の通信を実現できるように構成されている。図示例では、通信装置51Tは、運転席1Sの前方に設置され、移動体通信網、近距離無線通信網、又は衛星通信網等を介した通信を制御できるように構成されている。
【0029】
情報取得装置51は、アスファルトフィニッシャ100の操舵角を検出できるように構成された操舵角センサ、及び、後側スクリード31の伸縮量を検出して舗装幅を算出できるように構成された舗装幅センサ等を含んでいてもよい。
【0030】
また、情報取得装置51は、施工現場に設置された監視装置、又は、アスファルトフィニッシャ100の上空を飛行する飛行体に取り付けられた監視装置を含んでいてもよい。施工現場に設置された監視装置は、例えば、施工対象の道路に沿って設置されたポールの先端に取り付けられたLIDAR等である。飛行体に取り付けられた監視装置は、例えば、マルチコプタ(ドローン)又は飛行船等に取り付けられたLIDAR等である。
【0031】
車載表示装置52は、アスファルトフィニッシャ100に関する情報を表示できるように構成されている。図示例では、車載表示装置52は、運転席1Sの前方に設置されている液晶ディスプレイである。但し、車載表示装置52は、スクリード3の左端部及び右端部の少なくとも一方に設置されていてもよい。
【0032】
操舵装置53は、アスファルトフィニッシャ100の操舵を制御できるように構成されている。図示例では、操舵装置53は、フロントアクスルの近くに設置された前輪操舵シリンダを伸縮させるように構成されている。具体的には、操舵装置53は、油圧ポンプから前輪操舵シリンダに流れる作動油の流量、及び、前輪操舵シリンダから排出される作動油の流量を制御する操舵用電磁制御弁を含む。操舵用電磁制御弁は、操作装置としてのステアリングホイールSH(ハンドル)の回転に応じて前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されている。また、操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの制御指令に応じ、ステアリングホイールSHの回転とは無関係に、前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されている。すなわち、コントローラ50は、操作者によるステアリングホイールSHの操作の有無とは無関係に、アスファルトフィニッシャ100の操舵を制御できる。
【0033】
アスファルトフィニッシャ100がクローラ式アスファルトフィニッシャである場合、操舵装置53は、左右一対のクローラを別々に制御できるように構成される。具体的には、操舵装置53は、油圧ポンプから左クローラを回転させるための左走行用油圧モータに流れる作動油の流量を制御する左電磁制御弁と、油圧ポンプから右クローラを回転させるための右走行用油圧モータに流れる作動油の流量を制御する右電磁制御弁とを含む。そして、左電磁制御弁は、左クローラを操作するための操作装置である左操作レバーの操作量(傾斜角)に応じて左走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、左電磁制御弁は、コントローラ50からの制御指令に応じ、操作者による左操作レバーの操作の有無とは無関係に、左走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。同様に、右電磁制御弁は、右クローラを操作するための操作装置である右操作レバーの操作量(傾斜角)に応じて右走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、右電磁制御弁は、コントローラ50からの制御指令に応じ、操作者による右操作レバーの操作の有無とは無関係に、右走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。
【0034】
スクリード伸縮装置54は、後側スクリード31を伸縮させることができるように構成されている。図示例では、スクリード伸縮装置54は、スクリード伸縮シリンダ26を伸縮させることができるように構成されている。具体的には、スクリード伸縮装置54は、油圧ポンプからスクリード伸縮シリンダ26に流れる作動油の流量、及びスクリード伸縮シリンダ26から排出される作動油の流量を制御する伸縮用電磁制御弁を含む。伸縮用電磁制御弁は、操作装置としてのスクリード伸縮スイッチ(図示せず。)の操作に応じてスクリード伸縮シリンダ26における作動油の流出入を制御できるように構成されている。また、伸縮用電磁制御弁は、コントローラ50からの制御指令に応じ、スクリード伸縮スイッチの操作とは無関係に、スクリード伸縮シリンダ26における作動油の流出入を制御できるように構成されている。すなわち、コントローラ50は、操作者によるスクリード伸縮スイッチの操作の有無とは無関係に、後側スクリード31の伸縮量を制御できる。
【0035】
図示例では、スクリード伸縮装置54は、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rのそれぞれの伸縮量を別々に制御できるように構成されている。具体的には、スクリード伸縮装置54は、油圧ポンプから左スクリード伸縮シリンダ26Lに流れる作動油の流量を制御する左電磁制御弁と、油圧ポンプから右スクリード伸縮シリンダ26Rに流れる作動油の流量を制御する右電磁制御弁とを含む。そして、左電磁制御弁は、左後側スクリード31Lを伸縮させるための操作装置である左スクリード伸縮スイッチの操作に応じて左スクリード伸縮シリンダ26Lにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、左電磁制御弁は、コントローラ50からの制御指令に応じ、操作者による左スクリード伸縮スイッチの操作の有無とは無関係に、左スクリード伸縮シリンダ26Lにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。右電磁制御弁についても同様である。
【0036】
次に、図3を参照し、アスファルトフィニッシャ100に搭載される自動操舵システムDSの構成例について説明する。図3は、自動操舵システムDSの構成例を示すブロック図である。
【0037】
自動操舵システムDSは、主に、コントローラ50、前方監視装置51F、後方監視装置51B、走行速度センサ51S、測位装置51P、通信装置51T、車載表示装置52、操舵装置53、及びスクリード伸縮装置54等で構成されている。
【0038】
図3に示す例では、コントローラ50は、機能ブロックとして目標算出部50a及び操舵制御部50bを含む。
【0039】
目標算出部50aは、操舵制御部50bによって利用される目標を算出できるように構成されている。操舵制御部50bによって利用される目標は、例えば、アスファルトフィニッシャ100上の所定点が辿るべき軌道としての目標軌道である。目標軌道は、厳密には、多数の目標位置の一次元配列である。目標位置は、アスファルトフィニッシャ100上の所定点が到達すべき地点である。或いは、操舵制御部50bによって利用される目標は、所定時間経過後にアスファルトフィニッシャ100上の所定点が到達すべき地点としての目標位置であってもよい。所定時間は、例えば、数ミリ秒、数十ミリ秒、数百ミリ秒、又は数秒である。
【0040】
所定点は、望ましくは、トラクタ1の前後軸上にある。また、所定点は、望ましくは、スクリード3よりも前方に位置するように設定される。具体的には、所定点は、例えば、トラクタ1、ホッパ2、若しくはスクリード3の中央部、前端中央部、若しくは後端中央部等に設定される。
【0041】
図示例では、目標算出部50aは、例えば、施工データ(設計データ)等の施工対象の道路に関する情報に基づき、スクリード3の中央部における所定点が辿るべき目標軌道を算出する。この場合、目標軌道は、典型的には、アスファルトフィニッシャ100の走行が開始される前に算出される。そのため、目標軌道は、アスファルトフィニッシャ100の外部にある管理センタに設置されたサーバ等で算出された後、通信を介してコントローラ50に送信されてもよい。
【0042】
目標算出部50aは、所定時間経過後にスクリード3の中央部における所定点が到達すべき地点としての目標位置を算出してもよい。この場合、目標位置は、アスファルトフィニッシャ100の走行中に、所定の制御周期で繰り返し算出される。例えば、目標算出部50aは、アスファルトフィニッシャ100が施工対象の道路の直線部分を走行している場合には、前方監視装置51Fが取得した情報に基づき、スクリード3の中央部における所定点の現在位置よりも所定距離だけ前方に位置する施工対象の道路の幅方向の中心点を目標位置として算出してもよい。所定距離は、例えば、数センチメートル又は数十センチメートルである。この場合、目標算出部50aは、設計データを取得することなく、目標位置を算出できる。但し、目標算出部50aは、設計データと前方監視装置51Fが取得した情報とに基づき、目標位置を算出してもよい。例えば、目標算出部50aは、設計データに基づいて算出された目標位置を、前方監視装置51Fが取得した情報に基づいて補正してもよい。また、目標算出部50aは、後方監視装置51Bが取得した情報を利用して目標位置を補正してもよい。
【0043】
操舵制御部50bは、操作装置に対する操作とは無関係に、アスファルトフィニッシャ100の操舵を自動制御できるように構成されている。
【0044】
図示例では、操舵制御部50bは、目標算出部50aが算出した目標軌道を、スクリード3の中央部における所定点が辿るように、操舵装置53に対して制御指令を出力する。具体的には、操舵制御部50bは、測位装置51Pの出力に基づき、スクリード3の中央部における所定点の現在位置を導き出す。そして、所定点が目標軌道から右方向に逸脱していると判定した場合、操舵制御部50bは、アスファルトフィニッシャ100が左方に移動するように、操舵装置53に対して制御指令を出力する。同様に、所定点が目標軌道から左方向に逸脱していると判定した場合、操舵制御部50bは、アスファルトフィニッシャ100が右方に移動するように、操舵装置53に対して制御指令を出力する。
【0045】
或いは、操舵制御部50bは、目標算出部50aが算出した目標位置に、スクリード3の中央部における所定点を位置付けるように、操舵装置53に対して制御指令を出力してもよい。この場合、操舵制御部50bは、測位装置51Pの出力に基づいてスクリード3の中央部における所定点の現在位置を導き出してもよく、後方監視装置51B及び前方監視装置51Fの少なくとも一方の出力に基づいてスクリード3の中央部における所定点の現在位置を導き出してもよい。前者の場合、後方監視装置51B及び前方監視装置51Fの少なくともは省略されてもよく、後者の場合、測位装置51Pは省略されてもよい。但し、操舵制御部50bは、測位装置51Pの出力と後方監視装置51B及び前方監視装置51Fの少なくとも一方の出力とに基づいてスクリード3の中央部における所定点の現在位置を導き出してもよい。
【0046】
次に、図4を参照し、目標軌道に沿ってアスファルトフィニッシャ100を移動させる機能の構成例について説明する。図4は、施工対象の道路RDの直線部分SP1、カーブ部分LC(左カーブ)、及び直線部分SP2を通過するアスファルトフィニッシャ100を示す、施工現場の上面図である。施工対象の道路RDのカーブ部分は、道路の真っ直ぐな部分以外の部分を意味する。図4において、アスファルトフィニッシャ100aは、施工開始時である第1時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示す。アスファルトフィニッシャ100bは、第1時点から所定時間が経過した後の第2時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示す。同様に、アスファルトフィニッシャ100cは、第2時点から所定時間が経過した後の第3時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示し、アスファルトフィニッシャ100dは、第3時点から所定時間が経過した後の第4時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示し、アスファルトフィニッシャ100eは、第4時点から所定時間が経過した後の第5時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示す。なお、図4は、明瞭化のため、アスファルトフィニッシャ100のトラクタ1、前側スクリード30、左後側スクリード31L、及び右後側スクリード31Rを簡略化して示す一方で、ホッパ2の図示を省略している。
【0047】
コントローラ50の目標算出部50aは、施工開始時である第1時点において、前側スクリード30の中央部における所定点Qが辿るべき目標軌道TPSを算出する。図4に示す例では、所定点Qは、三角形で表され、目標軌道TPSは、一点鎖線で表されている。目標算出部50aは、設計データを参照し、施工対象の道路RDの左側境界線LPと右側境界線RPとに基づいて目標軌道TPSを導き出す。なお、図4に示す例では、道路RDの中心線CPは、破線で表されている。
【0048】
ここで、図5及び図6を参照し、施工対象の道路RDのカーブ部分LCにおける目標軌道TPSについて説明する。図5及び図6は、施工対象の道路RDのカーブ部分LCの上面図であり、図4の一部の拡大図に相当する。目標軌道TPSは、スクリード3によって敷き均される路面の面積を左右で二等分する線に基づいて生成される。路面の面積は、例えば、アスファルトフィニッシャ100が所定距離だけ前進したときに敷き均される路面の面積である。
【0049】
図5に示す例では、目標軌道TPSは、点R1、点R4、点R5、及び点R8を結ぶ線で囲まれた部分の面積を左右に二等分するように設定されている。すなわち、目標軌道TPSは、点R1、点R3、点R5、及び点R7を結ぶ線で囲まれた左部分LZの面積と、点R3、点R4、点R7、及び点R8を結ぶ線で囲まれた右部分RZの面積とが等しくなるように設定されている。図5では、明瞭化のため、左部分LZには粗いドットパターンが付されており、右部分RZには細かいドットパターンが付されている。
【0050】
なお、点R0は、施工対象の道路RDのカーブ部分LCの曲率円の中心点であり、点R1~点R4は、時刻t1における基準線RL(基準線RL1)上に位置する点であり、点R5~点R8は、時刻t1から所定時間が経過した後の時刻t2における基準線RL(基準線RL2)上に位置する点である。
【0051】
基準線RLは、左部分LZ及び右部分RZのそれぞれの面積を算出する際の基準となる線である。図示例では、基準線RLは、図4に示すように、上面視で左後側スクリード31Lの後縁線を含む直線である。但し、基準線RLは、上面視で左後側スクリード31Lの前縁線を含む直線、上面視で右後側スクリード31Rの前縁線若しくは後縁線を含む直線、又は、上面視で前側スクリード30の前縁若しくは後縁を通る線等であってもよい。
【0052】
具体的には、点R1及び点R5は、道路RDの左側境界線LP上の点であり、点R2及び点R6は、道路RDの中心線CP上の点であり、点R3及び点R7は、目標軌道TPS上の点であり、点R4及び点R8は、道路RDの右側境界線RP上の点である。
【0053】
図6に示す例では、基準線RLは、上面視で左後側スクリード31Lの後縁線と右後側スクリード31Rの後縁線とを含む折れ線である。また、図6に示す例では、時刻t1における基準線RL(基準線RL1)は太点線で表され、時刻t2における基準線RL(基準線RL2)は二点鎖線で表されている。そして、図6に示す例では、目標軌道TPSは、点R1、点R5、点R7、及び点R9を結ぶ線で囲まれた左部分LZの面積と、点R3、点R4、点R8、及び点R10を結ぶ線で囲まれた右部分RZの面積とが等しくなるように設定されている。なお、点R9及び点R10は、目標軌道TPS上の点である。
【0054】
図5及び図6は、時刻t1から時刻t2までの期間中に敷き均される路面の左部分LZの面積と右部分RZの面積とが等しい関係を示すが、この関係は、時刻t2から時刻t3(時刻t2から所定時間が経過した後の時刻)までの期間等の他の期間中に敷き均される路面の左部分LZの面積と右部分RZの面積との関係にも当てはまる。
【0055】
なお、本実施形態では、目標軌道TPSは、設計データ等の施工対象の道路RDに関する情報に基づいて施工開始前に生成されるが、施工中にリアルタイムに生成されてもよい。この場合、目標軌道TPSは、例えば、前方監視装置51Fが出力する画像データに基づいて生成されてもよい。
【0056】
図4に示す例では、道路RDの左側境界線LP、右側境界線RP、中心線CP、及び、所定点Qが辿るべき目標軌道TPSは何れも、多数の位置座標の一次元配列として導き出される。位置座標は、例えば、基準座標系における座標である。
【0057】
基準座標系は、例えば世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点と原点とを通過する軸をX軸とし、東経90度の子午線と赤道との交点と原点とを通過する軸をY軸とし、北極点と原点とを通過する軸をZ軸とする三次元直交XYZ座標系である。
【0058】
コントローラ50の操舵制御部50bは、所定点Qの実際の位置座標が、目標軌道TPSを構成する位置座標の1つと一致するように、アスファルトフィニッシャ100を動作させる。具体的には、操舵制御部50bは、測位装置51Pの出力に基づき、前側スクリード30の中央部における所定点Qの現在位置を導き出す。そして、所定点Qの位置が目標軌道TPSよりも右側に位置する場合には、操舵制御部50bは、操舵装置53を構成している操舵用電磁制御弁に対して制御指令を出力し、前輪操舵シリンダのボトム側油室に所定量の作動油を流入させる。その結果、アスファルトフィニッシャ100は前進しながら左に移動し、所定点Qの位置は目標軌道TPSに近づく。反対に、所定点Qの位置が目標軌道TPSよりも左側に位置する場合には、操舵制御部50bは、操舵装置53を構成している操舵用電磁制御弁に対して制御指令を出力し、前輪操舵シリンダのロッド側油室に所定量の作動油を流入させる。その結果、アスファルトフィニッシャ100は前進しながら右に移動し、所定点Qの位置は目標軌道TPSに近づく。なお、この例では、前輪操舵シリンダは、所定長さを上回って伸張するほど左操舵角が大きくなり、所定長さを下回って収縮するほど右操舵角が大きくなるように構成されている。
【0059】
このようにして、コントローラ50は、第1時点において点Qaの位置にあった所定点Qを、第2時点において点Qbに位置付けることができ、第3時点において点Qcに位置付けることができ、第4時点において点Qdに位置付けることができ、第5時点において点Qeに位置付けることができる。
【0060】
図4に示す例では、左後側スクリード31Lは、その左端面が道路RDの左側境界線LPと一致するように左側に伸縮され、右後側スクリード31Rは、その右端面が道路RDの右側境界線RPと一致するように右側に伸縮される。そして、左後側スクリード31Lの左端面は、左側境界線LPを辿るように移動し、右後側スクリード31Rの右端面は、右側境界線RPを辿るように移動する。そのため、コントローラ50は、前側スクリード30の中央部における所定点Qが目標軌道TPSを辿るようにトラクタ1を前進させる場合であっても、道路RDの幅と、新設舗装体NPの幅とを一致させることができる。すなわち、コントローラ50は、トラクタ1を前進させながら道路RDの幅方向に移動させる場合であっても、道路RDの幅と、新設舗装体NPの幅(スクリード3の幅)とを一致させることができる。
【0061】
図示例では、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの左端面が道路RDの左側境界線LPと一致するように、且つ、右後側スクリード31Rの右端面が道路RDの右側境界線RPと一致するように、スクリード伸縮装置54に対して制御指令を出力する。
【0062】
具体的には、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100の走行中にスクリード伸縮装置54に対して制御指令を出力し、後側スクリード31を伸縮させるように構成されている。例えば、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの左端面が左側境界線LPから道路RDの内側に逸脱するおそれがある場合、左後側スクリード31Lを左側に伸張させる。或いは、コントローラ50は、右後側スクリード31Rの右端面が右側境界線RPから道路RDの内側に逸脱するおそれがある場合、右後側スクリード31Rを右側に伸張させる。
【0063】
また、図4に示す例では、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100が道路RDのカーブ部分LCを走行しているときに、アスファルトフィニッシャ100の操舵及び後側スクリード31の伸縮を制御しているが、アスファルトフィニッシャ100が道路RDの直線部分SPを走行しているときに、アスファルトフィニッシャ100の操舵及び後側スクリード31の伸縮を制御してもよい。
【0064】
次に、図7を参照し、目標軌道に沿ってアスファルトフィニッシャ100を移動させる機能の別の構成例について説明する。図7は、施工対象の道路RDの直線部分SP1、カーブ部分LC(左カーブ)、及び直線部分SP2を通過するアスファルトフィニッシャ100を示す、施工現場の上面図であり、図4に対応している。
【0065】
図7において、アスファルトフィニッシャ100aは、施工開始時である第1時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示す。アスファルトフィニッシャ100bは、第1時点から所定時間が経過した後の第2時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示す。同様に、アスファルトフィニッシャ100cは、第2時点から所定時間が経過した後の第3時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示し、アスファルトフィニッシャ100dは、第3時点から所定時間が経過した後の第4時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示し、アスファルトフィニッシャ100eは、第4時点から所定時間が経過した後の第5時点におけるアスファルトフィニッシャ100を示す。なお、図7は、明瞭化のため、アスファルトフィニッシャ100のトラクタ1、前側スクリード30、左後側スクリード31L、及び右後側スクリード31Rを簡略化して示す一方で、ホッパ2の図示を省略している。
【0066】
図7に示す例は、トラクタ1の前端中央部における所定点Pが辿るべき目標軌道TPTを算出する点で、前側スクリード30の中央部における所定点Qが辿るべき目標軌道TPSを算出する図4図6に示す例とは異なるが、その他の点で図4図6に示す例と同じである。
【0067】
コントローラ50の目標算出部50aは、施工開始時である第1時点において、トラクタ1の前端中央部における所定点Pが辿るべき目標軌道TPTを算出する。図7に示す例では、所定点Pは円形で表され、目標軌道TPTは二点鎖線で表されている。
【0068】
具体的には、目標算出部50aは、設計データを参照し、施工対象の道路RDの左側境界線LPと右側境界線RPとに基づいて目標軌道TPSを導き出す。目標軌道TPSは、図4図6に示す例で算出される所定点Qが辿るべき軌道である。なお、図7に示す例では、所定点Qは三角形で表され、目標軌道TPSは一点鎖線で表されている。その上で、目標算出部50aは、アスファルトフィニッシャ100の後輪5と前輪6との間の距離等の既知の情報と目標軌道TPSとに基づき、所定点Pが辿るべき目標軌道TPTを算出する。
【0069】
図7に示す例では、道路RDの左側境界線LP、右側境界線RP、中心線CP、所定点Pが辿るべき目標軌道TPT、及び、所定点Qが辿るべき目標軌道TPSは何れも、多数の位置座標の一次元配列として導き出される。位置座標は、例えば、基準座標系における座標である。
【0070】
コントローラ50の操舵制御部50bは、所定点Pの実際の位置座標が、目標軌道TPTを構成する位置座標の1つと一致するように、アスファルトフィニッシャ100を動作させる。具体的には、操舵制御部50bは、測位装置51Pの出力に基づき、トラクタ1の前端中央部における所定点Pの現在位置を導き出す。そして、所定点Pの位置が目標軌道TPTよりも右側に位置する場合には、操舵制御部50bは、操舵装置53を構成している操舵用電磁制御弁に対して制御指令を出力し、前輪操舵シリンダのボトム側油室に所定量の作動油を流入させる。その結果、アスファルトフィニッシャ100は前進しながら左に移動し、所定点Pの位置は目標軌道TPTに近づく。反対に、所定点Pの位置が目標軌道TPTよりも左側に位置する場合には、操舵制御部50bは、操舵装置53を構成している操舵用電磁制御弁に対して制御指令を出力し、前輪操舵シリンダのロッド側油室に所定量の作動油を流入させる。その結果、アスファルトフィニッシャ100は前進しながら右に移動し、所定点Pの位置は目標軌道TPTに近づく。
【0071】
このようにして、コントローラ50は、第1時点において点Paの位置にあった所定点Pを、第2時点において点Pbに位置付けることができ、第3時点において点Pcに位置付けることができ、第4時点において点Pdに位置付けることができ、第5時点において点Peに位置付けることができる。その結果、コントローラ50は、第1時点において点Qaの位置にあった所定点Qを、第2時点において点Qbに位置付けることができ、第3時点において点Qcに位置付けることができ、第4時点において点Qdに位置付けることができ、第5時点において点Qeに位置付けることができる。
【0072】
図7に示す例では、左後側スクリード31Lは、その左端面が道路RDの左側境界線LPと一致するように左側に伸縮され、右後側スクリード31Rは、その右端面が道路RDの右側境界線RPと一致するように右側に伸縮される。そして、左後側スクリード31Lの左端面は、左側境界線LPを辿るように移動し、右後側スクリード31Rの右端面は、右側境界線RPを辿るように移動する。そのため、コントローラ50は、トラクタ1の前端中央部における所定点Pが目標軌道TPTを辿るようにトラクタ1を前進させる場合であっても、道路RDの幅と、新設舗装体NPの幅とを一致させることができる。すなわち、コントローラ50は、トラクタ1を前進させながら道路RDの幅方向に移動させる場合であっても、道路RDの幅と、新設舗装体NPの幅(スクリード3の幅)とを一致させることができる。
【0073】
図7に示す例では、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの左端面が道路RDの左側境界線LPと一致するように、且つ、右後側スクリード31Rの右端面が道路RDの右側境界線RPと一致するように、スクリード伸縮装置54に対して制御指令を出力する。
【0074】
具体的には、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100の走行中にスクリード伸縮装置54に対して制御指令を出力し、後側スクリード31を伸縮させるように構成されている。例えば、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの左端面が左側境界線LPから道路RDの内側に逸脱するおそれがある場合、左後側スクリード31Lを左側に伸張させる。或いは、コントローラ50は、右後側スクリード31Rの右端面が右側境界線RPから道路RDの内側に逸脱するおそれがある場合、右後側スクリード31Rを右側に伸張させる。
【0075】
また、図7に示す例では、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100が道路RDのカーブ部分LCを走行しているときに、アスファルトフィニッシャ100の操舵及び後側スクリード31の伸縮を制御しているが、アスファルトフィニッシャ100が道路RDの直線部分SPを走行しているときに、アスファルトフィニッシャ100の操舵及び後側スクリード31の伸縮を制御してもよい。
【0076】
上述のように、本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100は、トラクタ1と、トラクタ1の前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパ2と、ホッパ2に受け入れられた舗装材をトラクタ1の後側へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材をトラクタ1の後側で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材をスクリュSCの後側で敷き均すスクリード3と、制御装置としてのコントローラ50と、を備えている。
【0077】
そして、コントローラ50は、図4に示すように、スクリード3によって敷き均される路面の面積を左右で二等分する線に基づいて目標軌道TPSを生成し、且つ、アスファルトフィニッシャ100の所定点の一例である前側スクリード30の中央部における所定点Qが目標軌道TPSを辿るようにトラクタ1の動きを制御するように構成されていてもよい。
【0078】
或いは、コントローラ50は、図7に示すように、スクリード3によって敷き均される路面の面積を左右で二等分する線に基づいて目標軌道TPTを生成し、且つ、アスファルトフィニッシャ100の所定点の別の一例であるトラクタ1の前端中央部における所定点Pが目標軌道TPTを辿るようにトラクタ1の動きを制御するように構成されていてもよい。なお、路面は、施工対象の道路RDのカーブ部分LCの路面を含む。
【0079】
この構成は、カーブしている道路RDの舗装の品質を高めることができる。アスファルトフィニッシャ100が施工対象の道路RDのカーブ部分LCを施工している場合であっても、左部分LZの表面積と右部分RZの表面積とを同じにできるためである。具体的には、左後側スクリード31Lによる左抱え込み量と右後側スクリード31Rによる右抱え込み量とを同じにでき、ひいては、左抱え込み量と右抱え込み量との差による操舵に対する影響を抑制できるためである。
【0080】
また、アスファルトフィニッシャ100の操舵を制御する際に用いられるアスファルトフィニッシャ100の所定点は、望ましくは、上面視でトラクタ1の前後軸上に位置するように設定される。
【0081】
また、アスファルトフィニッシャ100の所定点は、より望ましくは、スクリード3よりも前方に設定される。
【0082】
また、図4に示す例では、道路RDにおける左にカーブする部分(カーブ部分LC)に対応する目標軌道TPSは、道路RDを左右に二等分する線である中心線CPよりも右側に設定される。同様に、図7に示す例では、カーブ部分LCに対応する目標軌道TPTは、中心線CPよりも右側に設定される。一方で、道路RDにおける右にカーブする部分に対応する目標軌道は、中心線CPよりも左側に設定される。なお、道路RDの直線部分に対応する目標軌道は、典型的には、中心線CP上に設定される。
【0083】
また、アスファルトフィニッシャ100は、道路RDのカーブ部分LCを通過するときに道路RDの幅に合わせてスクリード3を左右に伸縮させるように構成されている。具体的には、アスファルトフィニッシャ100は、道路RDのカーブ部分LCを通過するときにスクリード3の左端及び右端のうちの一方を伸張させ且つ他方を収縮させるように構成されている。図4又は図7に示す例では、アスファルトフィニッシャ100は、道路RDのカーブ部分LCを通過するときに、左後側スクリード31Lを左方に伸張させ、且つ、右後側スクリード31Rを左方に収縮させる。
【0084】
この構成は、施工対象の道路RDのカーブ部分においてアスファルトフィニッシャ100を前進させながら道路RDの幅方向に移動させたとしてもスクリード3の幅を自動的に道路RDの幅に合わせることができる。そのため、この構成は、施工対象の道路RDのカーブ部分を舗装する際に、アスファルトフィニッシャ100の操作者の負担を軽減できるという効果をもたらす。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態が説明された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0086】
例えば、上述の実施形態では、操舵装置53は、フロントアクスルの近くに設置された前輪操舵シリンダを伸縮させるように構成されているが、前輪操舵シリンダの代わりに油圧操舵モータが採用される場合には、油圧操舵モータを回転させるように構成されていてもよい。この場合、操舵装置53は、油圧ポンプから油圧操舵モータに流れる作動油の流量を制御する操舵用電磁制御弁を含む。操舵用電磁制御弁は、操作装置としてのステアリングホイールSH(ハンドル)の回転に応じて油圧操舵モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの制御指令に応じ、ステアリングホイールSHの回転とは無関係に、油圧操舵モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。或いは、操舵装置53は、ステアリングホイールSHを自動的に回転させる電動モータを制御するように構成されていてもよい。この場合、操舵装置は、コントローラ50からの制御指令に応じ、ステアリングホイールSHを自動的に回転させることで、アスファルトフィニッシャ100の動きを自動的に制御できる。
【符号の説明】
【0087】
1・・・トラクタ 1G・・・ガイドレール 1S・・・運転席 2・・・ホッパ 3・・・スクリード 3A・・・レベリングアーム 3AL・・・左レベリングアーム 3AR・・・右レベリングアーム 5・・・後輪 6・・・前輪 26・・・スクリード伸縮シリンダ 30・・・前側スクリード 31・・・後側スクリード 43・・・モールドボード 50・・・コントローラ 50a・・・目標算出部 50b・・・操舵制御部 51・・・情報取得装置 51B・・・後方監視装置 51F・・・前方監視装置 51P・・・測位装置 51PL・・・左GNSS受信機 51PR・・・右GNSS受信機 51S・・・走行速度センサ 51T・・・通信装置 52・・・車載表示装置 53・・・操舵装置 54・・・スクリード伸縮装置 100、100a~100e・・・アスファルトフィニッシャ AP・・・地物 BS・・・路盤 CP・・・中心線 CV・・・コンベア DS・・・自動操舵システム LC・・・カーブ部分 LP・・・左側境界線 LZ・・・左部分 NP・・・新設舗装体 PL・・・ポール PV・・・舗装材 RD・・・道路 RL、RL1、RL2・・・基準線 RP・・・右側境界線 RZ・・・右部分 SC・・・スクリュ SH・・・ステアリングホイール SP、SP1、SP2・・・直線部分 TPS、TPT・・・目標軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7