IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特開2023-1768ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体、及び粘着テープ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001768
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体、及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20221226BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20221226BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C09J7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102692
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 梨絵
【テーマコード(参考)】
4F074
4J004
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AA20
4F074AA21A
4F074AA98
4F074AB05
4F074AD10
4F074AG04
4F074AG06
4F074AG11
4F074BA13
4F074BB25
4F074CA29
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA47
4F074DA54
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB04
4J004CC02
4J004EA05
4J004FA07
(57)【要約】
【課題】環境貢献度を高くしつつも外観不良が発生しない、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂系架橋発泡体であって、石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量が、発泡体に含有されるポリオレフィン樹脂全量に対して、20質量%以下であり、最大径10mm以上の粗大気泡が1m×10m中に5個未満である、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂系架橋発泡体であって、
石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量が、発泡体に含有されるポリオレフィン樹脂全量に対して、20質量%以下であり、
最大径10mm以上の粗大気泡が1m×10m中に5個未満である、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項2】
滑剤を樹脂100質量部に対して、1.8質量部以上含有する請求項1に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項3】
前記滑剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びオレフィン系ワックスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項4】
石油由来ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂を含み、該ポリオレフィン樹脂が、バイオ由来ポリオレフィン樹脂、及びリサイクルポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項5】
バイオ由来フィラーを含む請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項6】
厚みが0.1~6mmである請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項7】
発泡倍率が1.5~50倍である請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項8】
熱成形され、又は打ち抜き加工されてなる、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項9】
電気機器、車載部材、及び建築物のいずれかにおいて、これらの一部を構成する部材として、または、緩衝材として使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体と、前記ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体の片面又は両面に設けられる粘着材とを備える、粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体に関し、例えば、バイオ由来又はリサイクルポリオレフィン樹脂などの非石油系ポリオレフィン樹脂を含有するポリオレフィン樹脂系架橋発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体は、車載用途、電子機器用途、民生機器、住宅建材などの様々な分野で使用されている。これら分野では、地球環境に配慮した製品が求められており、従来、特許文献1に開示されるように、ポリオレフィン樹脂にバイオポリエチレンを使用して、バイオマス度を25%以上とした発泡体が知られている。また、特許文献2に開示されるように、天然由来エチレン成分を含む低密度ポリエチレン樹脂を20~100質量%含有し、バイオマス度が25%以上であり、ゲル分率が5~60%である発泡体も知られている。
【0003】
近年、環境保護の観点から、製品の環境貢献度をより高くすることが求められており、バイオ系ポリオレフィン樹脂を使用する場合、その含有量をできる限り高くすることが求められている。また、製品の環境貢献度を高くするために、バイオ系ポリオレフィン樹脂以外にも、ケミカルリサイクル、メカニカルリサイクルなどにより製造されたリサイクルポリオレフィン樹脂を使用することも検討されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-155225号公報
【特許文献2】特開2018-65898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオ系ポリオレフィン樹脂の含有量を多くしたり、リサイクルポリオレフィン樹脂を使用したりすると、発泡体における石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量が少なくなり、環境貢献度が高くなる。しかし、石油由来ポリオレフィン樹脂が少なくなると、原料の不安定さが要因となって、外観不良である粗大フィッシュアイが発生し、製品外観が悪化するという不具合が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、環境貢献度を高くしつつも外観不良が発生しない、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[10]を要旨とする。
[1]ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂系架橋発泡体であって、
石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量が、発泡体に含有されるポリオレフィン樹脂全量に対して、20質量%以下であり、
最大径10mm以上の粗大気泡が1m×10m中に5個未満である、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[2]滑剤を樹脂100質量部に対して、1.8質量部以上含有する上記[1]に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[3]前記滑剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びオレフィン系ワックスからなる群から選択される少なくとも1種である上記[2]に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[4]石油由来ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂を含み、該ポリオレフィン樹脂が、バイオ由来ポリオレフィン樹脂、及びリサイクルポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[5]バイオ由来フィラーを含む上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[6]厚みが0.1~6mmである上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[7]発泡倍率が1.5~50倍である上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[8]熱成形され、又は打ち抜き加工されてなる、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[9]電気機器、車載部材、及び建築物のいずれかにおいて、これらの一部を構成する部材として、または、緩衝材として使用される、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体と、前記ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体の片面又は両面に設けられる粘着材とを備える、粘着テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環境貢献度を高くしつつも外観不良が発生しない、ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体>
本発明のポリオレフィン樹脂系架橋発泡体(以下、単に「発泡体」ということがある)は、ポリオレフィン樹脂を含む発泡体であり、石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量が、発泡体に含有されるポリオレフィン樹脂全量に対して、20質量%以下となるものである。本発明では、石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量を20質量%以下とすることで、製品の環境貢献度を高くしている。
【0010】
[粗大気泡]
本発明の発泡体は、最大径10mm以上の粗大気泡が1m×10m中に5個未満となるものである。最大径10mm以上の粗大気泡は、フィッシュアイとも呼ばれるもので、1m×10mの大きさで5個以上となると、発泡体の外観が悪化する。
外観をより良好にする観点から、1m×10m中の粗大気泡の数は、4個未満であることが好ましく、3個未満であることがより好ましい。粗大気泡の数は、少なければ少ないほどよく、0個以上であれば特に限定されない。
なお、上記粗大気泡の数は、発泡体を一面側から目視で観察して、粗大気泡の数を数えることで測定できる。発泡体を一面側から観察する際には、発泡体の上記一面とは反対側の裏面側から照明光を照射するとよい。
【0011】
[非石油系ポリオレフィン樹脂]
ポリオレフィン樹脂系架橋発泡体は、ポリオレフィン樹脂として、石油由来ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(以下、「非石油系ポリオレフィン樹脂」ともいう)を含む。非石油系ポリオレフィン樹脂としては、バイオ由来ポリオレフィン樹脂、リサイクルポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これら中では、原料の品質の安定性などの観点から、バイオ由来ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0012】
〔バイオ由来ポリオレフィン樹脂〕
バイオ由来ポリオレフィン樹脂は、バイオ由来のオレフィンを含む原料から重合されたポリオレフィン樹脂である。具体的なバイオ由来ポリオレフィン樹脂としては、バイオポリプロピレン樹脂、バイオポリエチレン樹脂、バイオ-エチレン-酢酸ビニル共重合体(バイオEVA)、バイオ-エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(バイオEPDM)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、バイオポリプロピレン樹脂、バイオポリエチレン樹脂が好ましい。また、柔軟性、衝撃吸収性などの観点、さらには、入手が容易である点から、バイオポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0013】
(バイオポリプロピレン樹脂)
バイオポリプロピレン樹脂は、バイオマスを原料として製造されたポリプロピレン樹脂であれば特に限定されない。例えば、発酵生産されたプロパノールを脱水して製造したバイオプロピレンを用いて製造されたバイオポリプロピレン樹脂でもよい。また、バイオエチレンの合成反応の際に生成したバイオプロピレンを用いて製造されたバイオポリプロピレン樹脂でもよい。さらにバイオエタノールから合成したバイオプロピレンを用いて製造されたバイオポリプロピレン樹脂でもよい。
バイオポリプロピレン樹脂における、ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、及びプロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられ、これらの中ではプロピレンと他のオレフィンとの共重合体が好ましい。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよいが、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)であることが好ましい。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体において、プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンが挙げられ、これらの中ではエチレンが特に好ましい。すなわち、ポリプロピレン樹脂としてはエチレン-プロピレンランダム共重合体が好ましい。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、通常、プロピレンが90~99.5重量%、プロピレン以外のα-オレフィンが0.5~10質量%であるが、プロピレンが95~99重量%、プロピレン以外のα-オレフィンが1~5質量%であることが好ましい。
市販されているバイオポリプロピレン樹脂には、例えば、「Moplen HP456J」(Basell社製)、「Moplen HP501H」(Basell社製)等が挙げられる。
【0014】
(バイオポリエチレン樹脂)
バイオポリエチレン樹脂は、バイオマスを原料として製造されたポリエチレンであれば特に限定されない。例えば、バイオエタノールを脱水して製造したバイオエチレンを用いて製造されたバイオポリエチレン樹脂でもよい。バイオエタノールは、例えば、天然原料であるサトウキビから得られる糖質を、発酵剤である酵母サッカロマイセス・セレビシエを用いて発酵させることで得られる。
バイオ由来ポリオレフィン樹脂を製造する方法としては、トール油、パーム油を分解して得たエチレンなどのモノマーを得て、そのモノマーからポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂を合成する方法が挙げられる。
【0015】
バイオポリエチレン樹脂における、ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.942g/cm以上)、中密度ポリエチレン(MDPE:0.93g/cm以上0.942g/cm未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.930g/cm未満)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
市販されているバイオポリエチレン樹脂には、例えば、「SLL118」(LLDPE、BRASKEM社製)、「SLL218」(LLDPE、BRASKEM社製)、「SEB853」(LDPE、BRASKEM社製)、「2004CX3」シリーズ(Sabic社製、トールオイル由来のLDPE、マスバランス方式認証品)、「PG7004」(Dow社製、トールオイル由来、マスバランス認証)等が挙げられる。
【0016】
また、バイオポリエチレン樹脂における、ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを使用することが好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、例えば0.930g/cm未満である。また、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンのそれぞれの密度は、特に限定されないが、例えば0.890g/cm以上であり、好ましくは0.900g/cm以上ある。低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、発泡体に柔軟性を付与しやすくなる。低密度ポリエチレンは、一般的に高圧法により製造される高圧法低密度ポリエチレンである。
直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン(例えば、全モノマー量に対して75質量%以上、好ましくは90質量%以上)と必要に応じて少量のα-オレフィンとを共重合することにより得られるものがより好ましい。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
【0017】
ポリエチレン樹脂のメルトインデックスは、1.0~10g/10分がより好ましく、1.5~7.0g/10分が更に好ましく、2.0~5.0g/10分がより更に好ましい。
なお、本明細書においてメルトインデックスは、ASTM D1238に従い、190℃、2.16kg荷重の条件で測定するとよい。
【0018】
(バイオ-エチレン-酢酸ビニル共重合体(バイオEVA))
バイオEVAは、バイオマスを原料として製造されたEVAであれば特に限定されない。例えば、原料のエチレンの一部もしくは全部として上述のバイオエチレンを用いて製造したEVAでもよい。
例えば、バイオEVAに使用される、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の酢酸ビニルの含有量(VA量)は、好ましくは5~40質量%である。EVA中の酢酸ビニルの含有量が上記範囲内であると、柔軟性に優れて成形性が良好な発泡体を得ることができる。
市販されているバイオEVAには、例えば、「TN2005」(酢酸ビニル含有量13.5質量%、BRASKEM社製)、「TN2006」(酢酸ビニル含有量18質量%、BRASKEM社製)、「TN2020」(酢酸ビニル含有量8.5質量%、BRASKEM社製)等が挙げられる。
【0019】
(バイオ-エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(バイオEPDM))
バイオEPDMは、バイオマスを原料として製造されたEPDMであれば特に限定されない。例えば、原料のエチレンの一部もしくは全部として上述のバイオエチレンを用いて製造したEPDMでもよい。また、原料のプロピレンの一部もしくは全部として上述のバイオプロピレンを用いて製造したEPDMでもよい。さらに、原料のエチレンの一部もしくは全部として上述のバイオエチレンを用い、原料のプロピレンの一部もしくは全部として上述のバイオプロピレンを用いて製造したEPDMでもよい。
バイオEPDMに使用される、EPDMのエチレンの含有量は、EPDM全体に対して、好ましくは50~75質量%である。また、EPDMのプロピレン中の含有量は、EPDM全体に対して、好ましくは20~45質量%である。さらに、EPDM中のジエンの含有量は、好ましくは2~10質量%である。
EPDMを構成するジエン成分としては、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-n-プロピリデン-2-ノルボルネン、5-イソブチリデン-2-ノルボルネン、5-n-ブチリデン-2-ノルボルネン等のノルボルネンが挙げられる。また、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4-ヘキサジエン(HD)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン等の非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、5-エチリデン-2-ノルボルネンが特に好ましい。
なお、EPDMにおけるエチレン成分と、ジエン成分との比率(エチレン成分:ジエン成分)は、85:15~95:5であることが好ましい。
市販されているバイオEPDMには、例えば、「Keltan Eco 5470」(エチレン含有量70質量%、エチリデンノルボルネン含有量4.6質量%、ARLANXEO社製)、「Keltan Eco 8550」(エチレン含有量55質量%、エチリデンノルボルネン含有量5.5質量%、ARLANXEO社製)、「Keltan Eco 6950」(エチレン含有量44質量%、エチリデンノルボルネン含有量9.0質量%、ARLANXEO社製)等が挙げられる。
【0020】
バイオ由来ポリオレフィン樹脂のバイオ率は、40~100質量%が好ましく、40~98質量%であることがより好ましく、75~97質量%がさらに好ましく、85~96質量%がよりさらに好ましい。したがって、例えば、バイオポリエチレンにおいて、バイオエチレンに由来する構成単位の含有量は、40~98質量%であることが好ましく、75~97質量%がより好ましく、85~96質量%がさらに好ましい。
バイオ率を上記下限値以上とすると、環境貢献度がより高くなる。また、バイオ率を高くすると、各種性能が不安定になり、フィッシュアイと呼ばれる粗大気泡が生じやすくなるが、本発明では、バイオ由来ポリオレフィン樹脂のバイオ率を高くしても、粗大気泡の数を減らすことができる。一方で、バイオ率を98質量%以下とすると、発泡体が薄くなっても各種物性が良好となりやすい。
なお、バイオ率は、ASTM D6866に規定されている測定方法により測定されたバイオマス度である。
【0021】
〔リサイクルポリオレフィン樹脂〕
リサイクルポリオレフィン樹脂とは、石油、バイオマス、その他の原料から一旦製品として製造し、その製品からリサイクルしたポリオレフィン樹脂や、廃棄物からリサイクルしたポリオレフィン樹脂などが挙げられる。廃棄物とは、産業廃棄物であってもよいし、一般廃棄物であってもよい。廃棄物の具体例としては、プラスチック廃棄物、生ゴミ、廃棄タイヤ、バイオマス廃棄物、食料廃棄物、建築資材、木材、木質チップ、繊維、紙類等が挙げられる。
【0022】
また、リサイクルには、メカニカルリサイクル、ケミカルリサイクルがあり、リサイクルポリオレフィン樹脂は、いずれの方法によりリサイクルされたものでもよい。すなわち、リサイクルポリオレフィン樹脂は、ケミカルリサイクルポリオレフィン樹脂、メカニカルリサイクルポリオレフィン樹脂のいずれでもよい。また、ケミカルリサイクルとメカニカルリサイクルとを併用した得たポリオレフィン樹脂でもよい。ただし、現状の流通量の観点などから、ケミカルリサイクルポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0023】
メカニカルリサイクルは、物理的再生法とも呼ばれるものであり、化学反応を伴わずにポリオレフィン樹脂を再生するものである。具体的には、回収されたポリオレフィン樹脂製品を、選別、粉砕、洗浄、ペレット化、再結晶化などの工程を経て、発泡体の原料として使用できる形態(例えば、ポリオレフィン樹脂ペレット、ポリオレフィン樹脂粉体など)にリサイクルする方法が挙げられる。
【0024】
ケミカルリサイクルは、化学反応を伴って廃棄物などからポリオレフィン樹脂を生成する方法である。例えば、廃棄物から生成したオレフィンを含むモノマーを重合してポリオレフィン樹脂を得るとよい。
より具体的には、廃プラスチック製品、廃食用油などの廃棄物を化学的に分解してオレフィンなどのモノマーを得て、そのモノマーからポリオレフィン樹脂を合成する方法が挙げられる。
さらには、廃棄物をガス化して、一酸化炭素及び水素を含む合成ガスを得て、合成ガスから微生物触媒や金属触媒により、エタノールなどのアルコール類を得る。そして、そのエタノールなどのアルコール類をエチレンなどのオレフィンに転化して、そのオレフィンを原料としてポリオレフィン樹脂を製造する方法なども挙げられる。
なお、各方法において、ポリオレフィン樹脂を合成する際、オレフィンなどのモノマーの一部に石油由来のものやバイオマス由来のものが含まれてもよい。
なお、リサイクルポリオレフィン樹脂は、その原料となる廃棄物がバイオマスを含む場合には、バイオ由来ポリオレフィン樹脂ともいえる。
【0025】
また、近年、環境保護の意識の高まりから、バイオ由来ポリオレフィン樹脂及びリサイクルポリオレフィン樹脂については、バイオ由来であること、或いは、リサイクルポリオレフィン樹脂であることを、消費者などに知らしめるために、認証制度が確立しつつある。したがって、バイオ由来ポリオレフィン樹脂及びリサイクルポリオレフィン樹脂は、認証制度により、バイオ由来であることや、リサイクル品であることが認証されたものであることが好ましい。認証制度は、マスバランス(MB)方式、分離方式のいずれでもよい。また、具体的な認証制度としては、ISCC(International Sustainability and Carbon Certification)などが挙げられる。
【0026】
リサイクルポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA,EPDMのいずれが挙げられる。ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA,EPDMの詳細は、バイオ由来ポリオレフィン樹脂の項において説明したとおりである。
リサイクルポリオレフィン樹脂としては、上記の中では、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましく、中でも、柔軟性、衝撃吸収性などの観点、さらには、入手が容易である点から、ポリエチレン樹脂がより好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの少なくともいずれかがさらに好ましく、これらの詳細もバイオ由来ポリオレフィン樹脂の項において説明したとおりである。また、メルトインデックスもバイオ由来ポリオレフィン樹脂の項において説明したとおりである。
【0027】
リサイクルポリオレフィン樹脂の市販品としては「7318BE―C」(Sabic社製、ケミカルリサイクルLDPE、マスバランス方式認証品)、「Circulen 2420K Plus」(Lyondellbasell社製、食用油などの廃棄油由来のLDPE)などが挙げられる。
【0028】
発泡体における非石油系ポリオレフィン樹脂の含有量は、発泡体に含有されるポリオレフィン樹脂全量に対して、80質量%以上であればよい。発泡体における非石油系ポリオレフィン樹脂の含有量は、製品の環境貢献を向上させる観点から、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、また、100質量%以下であればよいが、100質量%が最も好ましい。
【0029】
〔石油由来ポリオレフィン樹脂〕
石油由来ポリオレフィン樹脂は、石油由来のポリオレフィンから合成されたポリオレフィン樹脂である。石油由来のオレフィンは、ナフサ、エタン、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、NGL(Natural Gas Liquid)、ガスオイル等の石油化学原料を熱分解することにより生産されたオレフィンである。このように、石油由来ポリオレフィン樹脂は、石油化学原料より得られたオレフィンから合成されたポリオレフィン樹脂である。したがって、本明細書では、一旦生産されたポリオレフィン樹脂製品をリサイクルしてポリオレフィン樹脂(メカニカルリサイクルポリオレフィン樹脂)とするものや、石油由来の廃棄物から原料となるオレフィンを得ているポリオレフィン樹脂などは、「石油由来ポリオレフィン樹脂」に包含されない。
【0030】
石油由来ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA,EPDMのいずれが挙げられる。ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA,EPDMの詳細は、バイオ由来ポリオレフィン樹脂の項において説明したとおりである。
石油由来ポリオレフィン樹脂としては、上記の中では、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましく、中でも、柔軟性、衝撃吸収性などの観点から、ポリエチレン樹脂がより好ましい。
また、ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの少なくともいずれかがさらに好ましく、これらの詳細もバイオ由来ポリオレフィン樹脂の項において説明したとおりである。また、メルトインデックスもバイオ由来ポリオレフィン樹脂の項において説明したとおりである。
【0031】
上記の通り、発泡体における石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量は、発泡体に含有されるポリオレフィン樹脂全量に対して、20質量%以下であるが、製品の環境貢献度の観点から、発泡体における上記石油由来ポリオレフィン樹脂の含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、また、0質量%以上であればよいが、0質量%が最も好ましい。
【0032】
発泡体は、樹脂成分としてポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有してもよい。そのような樹脂成分としては、スチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。発泡体におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、発泡体の樹脂全量に対して、例えば70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0033】
(バイオ由来フィラー)
発泡体は、植物繊維、セルロースなどのバイオ由来フィラーをさらに含んでもよい。これにより、発泡体をより環境に配慮した製品としつつ、発泡体の引張強度などの機械強度を高めやすくなる。バイオ由来フィラーは、植物繊維、植物由来セルロースなどの植物由来のフィラーが好ましいが、動物由来のフィラーであってもよい。
【0034】
[植物繊維]
植物繊維は、植物に由来する繊維である。この植物繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフが好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は特に限定されず、繊維を採取できればよく、非木質部、茎部、根部、葉部及び木質部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
この植物繊維の平均繊維長及び平均繊維径等は特に限定されないが、平均繊維長は、10mm以上が好ましく、10~150mmがより好ましく、20~100mmがさらに好ましく、30~80mmが特に好ましい。
なお、この平均繊維長は、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、伸張させずにまっすぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。
【0035】
[セルロース]
バイオ由来フィラーとして、例えば、セルロースを微細化したものを用いることができる。セルロースは、微細化材料として利用可能なものであればよく、植物由来でもよいし、動物由来でもよい。セルロースの具体例としては、パルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジック・アセテートなどの再生セルロース繊維、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが利用可能である。
また、これらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理をしたものであってもよい。
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ双方を好適に使用できる。木材パルプとしては、機械パルプと化学パルプとあり、リグニン含有量の少ない化学パルプのほうが好ましい。化学パルプにはサルファイドパルプ、クラフトパルプ、アルカリパルプなどがあるが、いずれも好適に使用できる。非木材パルプとしては、藁、バガス、ケナフ、竹、葦、楮、亜麻などいずれも利用可能である。
綿は主に衣料用繊維に用いられる植物であり、綿花、綿繊維、綿布のいずれも利用可能である。
紙はパルプから繊維を取り出し漉いたもので、新聞紙や廃牛乳パック、コピー済み用紙などの古紙も好適に利用できる。
また、微細化材料としてのセルロースとして、セルロースを破砕し一定の粒径分布を有したセルロース粉末を用いても良く、日本製紙ケミカル株式会社製のKCフロック、旭化成ケミカルズ株式会社製のセオラス、FMC社製のアビセルなどが挙げられる。
バイオ由来フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
発泡体の強度を向上させつつ、発泡体のバイオ率を高める観点から、バイオ由来フィラーの含有量は、発泡体における樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは1.5質量部以上である。また、発泡体シートの成形性の観点、及び粗大気泡を発生しにくくする観点から、バイオ由来フィラーの含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは8質量部以下であり、さらに好ましくは4質量部以下である。
【0037】
[滑剤]
本発明の発泡体は、滑剤を含有することが好ましい。滑剤の含有量は、発泡体に含有される樹脂100質量部に対して1.8質量部以上であることが好ましい。本発明の発泡体は、非石油系ポリオレフィン樹脂の比率が高く、樹脂成分による微小核が存在しやすい。そのため、フィッシュアイと呼ばれる粗大気泡が発生しやすいが、本発明では、滑剤を所定量以上含有させることで、発泡体製造時に樹脂組成物の滑性が向上して、フィッシュアイと呼ばれる粗大気泡の発生を効果的に抑制することができる。
滑剤の含有量は、発泡体に含有される樹脂100質量部に対して2.0質量部以上であることがより好ましく、2.2質量部以上であることがさらに好ましい。また、発泡体の機械強度などの各種物性を良好に維持する観点から、滑剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0038】
滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びオレフィン系ワックスなどが挙げられる。また、オレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン-酢酸ビニル共重合ワックス、酸化ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
滑剤としては、1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。2種以上併用すると、粗大気泡の発生をより効果的に抑制することができる。
2種以上併用する場合の組み合わせとしては、ステアリン酸亜鉛とステアリン酸カルシウムの組み合わせ、ステアリン酸亜鉛とオレフィン系ワックスの組み合わせ、ステアリン酸カルシウムとオレフィン系ワックスの組み合わせのいずれでもよいが、ステアリン酸亜鉛とステアリン酸カルシウムの組み合わせ、又はステアリン酸亜鉛とオレフィン系ワックスの組み合わせが好ましい。
【0039】
オレフィン系ワックスは、発泡体に使用される樹脂の種類に合わせて適宜種類を選択してもよく、例えば発泡体にポリエチレン樹脂を使用する場合にはポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスなどを使用することが好ましい。また、発泡体にポリプロピレン樹脂を使用する場合にはポリプロピレンワックスを使用することが好ましい。
上記のとおり、発泡体に使用される樹脂は、ポリエチレン樹脂が好ましいので、オレフィン系ワックスとしてもポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスなどを使用することが好ましく、中でもポリエチレンワックスがより好ましい。
【0040】
オレフィン系ワックスには、分子量が比較的低いポリオレフィンが使用されるとよい。オレフィン系ワックスの重量平均分子量は、例えば2500~40000、好ましくは3000~30000、より好ましくは3500~15000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
また、オレフィン系ワックスの滴点は、特に限定されないが、例えば95~145℃、好ましくは105~135℃、より好ましくは100~130℃である。なお、滴点は、ASTM D 3954に準拠して測定するとよい。
【0041】
[添加剤]
発泡体は、上記の滑剤、バイオ由来フィラー以外にも、発泡体に使用される公知の添加剤を使用してもよい。
発泡体は、例えば発泡助剤を含有してもよい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、尿素等が挙げられる。発泡助剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~8質量部、より好ましくは0.15~4質量部、更に好ましくは0.2~2質量部である。
【0042】
発泡体は、添加剤として酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、例えば樹脂100質量部に対して0.01~5質量部、好ましくは0.1~3質量部含有される。
また、発泡体には、添加剤として着色剤が含有されていてもよい。着色剤は、発泡体の色を調整するものとして配合される。着色剤としては、具体的には、顔料、染料等が挙げられる。着色剤は、例えば樹脂成分100質量部に対して0.1~8質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
発泡体には、添加剤として、必要に応じて、上記以外にも、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0043】
<発泡体の厚み>
本発明の発泡体の厚みは、0.1~6mmであることが好ましい。0.1mm以上とすることで、発泡体の機械強度、耐衝撃性、衝撃吸収性などの各種性能を良好にしやすくなる。また、6mm以下とすることで、輸送機器、電気機器、建築構造体などにおいて好適に使用することができる。これら観点から、0.2~5mmがより好ましく、1~4mmがさらに好ましい。また、発泡体は、典型的には、シート状の形状を有することが好ましい。
【0044】
<発泡倍率>
本発明の発泡体の発泡倍率は1.5~50倍が好ましい。発泡倍率を1.5倍以上とすることで、気泡割合が十分となり、柔軟性、衝撃吸収性などの発泡体としての性能が良好となる。一方で、発泡倍率を50倍以下とすることで、最大気泡径が大きくなりすぎるのを防止し、耐衝撃性等を向上させやすくなる。また、粗大気泡が発生するのを防止しやすくなる。これら観点から、発泡体の発泡倍率は2~40倍がより好ましく、10~35倍がさらに好ましい。
なお、発泡倍率とは、発泡前と発泡後の比容積(単位:cc/g)を測定し、発泡後の比容積/発泡前の比容積によって算出されたものをいう。
【0045】
<平均気泡径>
本発明の発泡体は、MD及びTDの平均気泡径のいずれもが、50~500μmであることが好ましい。平均気泡径が上記範囲であると、柔軟性、耐衝撃性、衝撃吸収性などの性能を向上させやすくなる。また、粗大気泡の発生も抑制しやすくなる。
これら観点から、MD及びTDの平均気泡径はいずれもが、100~470μmとなることがより好ましく、180~420μmとなることがさらに好ましく、200~400μmであることがよりさらに好ましい。
更に、発泡体のZDの平均気泡径は、粗大気泡の発生を抑えつつ、耐衝撃性、衝撃吸収性などを確保する観点から、20~400μmが好ましく、80~300μmがより好ましく、100~250μmが更に好ましく、120~240μmがより更に好ましい。
【0046】
なお、平均気泡径は下記の要領で測定したものをいう。
発泡体を50mm四方にカットしたものを測定用の発泡体サンプルとして用意した。これを液体窒素に1分間浸した後にカミソリ刃でMD、及びTDに沿ってそれぞれ厚み方向(ZD)に切断した。この断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD、及びTDのそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡について気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡の平均値をMD、及びTDの平均気泡径とした。また、測定したすべての気泡について、ZDの気泡径も測定し、その平均値をZDの平均気泡径とした。
なお、本発明において「MD」は、Machine Directionを意味し、発泡体の押出方向等と一致する方向を意味する。また、「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交し且つ発泡体に平行な方向を意味する。更に「ZD」は、Thickness Directionを意味し、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
【0047】
<架橋度>
本発明において、発泡体の架橋度は15質量%以上が好ましい。架橋度を前記下限値以上とすると平均気泡径を上記範囲内に調整しやすくなり、発泡体に所望の性能を付与しやすくなる。さらには、粗大気泡の発生も抑制しやすくなる。これら観点から、発泡体の架橋度は、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、30質量%以上がより更に好ましい。また、発泡体の柔軟性、耐衝撃性、衝撃吸収性などを向上させる観点から、架橋度は、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がよりさらに好ましい。
【0048】
発泡体は、上記ポリオレフィン樹脂と発泡剤を含む樹脂組成物を架橋かつ発泡してなるものである。また、発泡体には、上記の通り各種の添加剤が配合されていてもよく、したがって、発泡体は、上記樹脂と発泡剤に加えて任意の添加剤を含む樹脂組成物を発泡してなるものでもよい。
【0049】
[発泡剤]
発泡剤としては熱分解型発泡剤が好ましい。熱分解型発泡剤の具体例としては、分解温度が140℃~270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤が挙げられる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。これらの熱分解型発泡剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して1~30質量部が好ましい。このような配合量とすることで、シートの気泡が破裂せずに適切に発泡ができ、粗大気泡も発生しにくくなる。また、熱分解型発泡剤の配合量を多くすると、発泡倍率が高くなり、柔軟性などを向上させることが可能である。そのため、熱分解型発泡剤の配合量は、3~25質量部がより好ましく、5~16質量部がさらに好ましい。
【0050】
<発泡体の製造方法>
発泡体は、樹脂、発泡剤及び必要に応じてその他添加剤を配合し、混合することで得られた樹脂組成物を、架橋、かつ発泡することで製造できる。具体的には、得られた樹脂組成物を、必要に応じてシート状などに成形し、次いで電離放射線等により架橋した後、加熱炉、オーブン等の加熱装置内にて加熱して発泡させる方法により製造することが好ましい。
【0051】
上記樹脂組成物は、例えば、バンバリーミキサーや加圧ニーダ等の混練り機を用いて各種成分を混練して得ることができる。また、樹脂組成物は、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティング等により連続的に押し出すことによりシート状に成形するとよい。
樹脂組成物の架橋方法としては、電離性放射線による架橋、有機過酸化物による架橋等が挙げられるが、電離性放射線による架橋が好ましい。
電離性放射線により架橋する場合、電離性放射線としては、例えば、紫外光、γ線、電子線等が挙げられる。電離性放射線の照射量は、0.5~10Mradが好ましく、1.5~8Mradがより好ましい。電離性放射線により架橋を行った場合、気泡径が小さく均一な気泡径を有する発泡体を得ることができ、粗大気泡も発生しにくくなる。
【0052】
有機過酸化物により架橋する場合、有機過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、クミルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
有機過酸化物の配合量は、樹脂100質量部に対して0.05~10質量部が好ましく、0.1~7質量部がより好ましい。
【0053】
樹脂組成物を発泡させる方法としては、オーブンのようなバッチ方式でもよい。また、樹脂組成物を長尺のシート状とし、連続的に加熱炉内を通す連続発泡方式でもよい。加熱温度は、好ましくは200~320℃、より好ましくは250~300℃である。
【0054】
樹脂組成物は、発泡させる際にMD及びTDの少なくとも一方、若しくはこれらの両方に延伸させてもよい。また、樹脂組成物は、発泡した後にMD及びTDの少なくとも一方、又はこれらの両方に延伸させてもよい。なお、樹脂組成物を発泡させた後に延伸する場合には、発泡後に冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて延伸してもよく、冷却した後、再度加熱して溶融又は軟化状態とした上で延伸してもよい。
【0055】
[粘着テープ]
本発明の発泡体は、発泡体を基材とする粘着テープに使用してもよい。粘着テープは、例えば、発泡体と、発泡体の少なくとも一方の面に設けた粘着材とを備えるものである。粘着テープは、粘着材を介して他の部材に接着することが可能になる。粘着テープは、発泡体の両面に粘着材を設けたものでもよいし、片面に粘着材を設けたものでもよい。
【0056】
粘着材は、感圧接着性を有する部材であって、少なくとも粘着剤層を備えるものであればよく、発泡体の表面に積層された粘着剤層単体であってもよいし、発泡体の表面に貼付された両面粘着シートであってもよいが、粘着剤層単体であることが好ましい。なお、両面粘着シートは、基材と、基材の両面に設けられた粘着剤層とを備えるものである。両面粘着シートは、一方の粘着剤層を発泡体に接着させるとともに、他方の粘着剤層を他の部材に接着させるために使用する。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができる。また、粘着材の上には、さらに離型紙等の剥離シートが貼り合わされてもよい。
粘着材の厚さは、5~200μmであることが好ましく、より好ましくは7~150μmであり、更に好ましくは10~100μmである。
【0057】
<用途>
本発明の発泡体又は粘着テープは、自動車、二輪車、鉄道車両などの各種車両、船舶、飛行機などの車両以外の輸送機器、AV機器、テレビ、洗濯機等の民生機器を含む電気機器、各種建築物などにおいて使用されるとよい。
例えば、これら各機器又は建築物において、各種部材に対する衝撃を緩和するための緩衝材として使用されるとよく、好ましくは電気機器において、電子部品に対する衝撃を緩和するための緩衝材などとして使用される。緩衝材は、例えば、電気機器内部において、電子部品間や、電子部品とその他部材(例えば、機器の筐体など)との間に配置され、電子部品に対する衝撃を緩和するとよい。
また、発泡体は、上記各機器、又は建築物の一部を構成する部材であってもよく、例えば輸送機器の内装材として使用されるとよく、例えば車載部材、好ましくは自動車などの各種車両の内装材として使用される。また、建築物においては、断熱材、免震材などとして使用されてもよい。
【0058】
本発明の発泡体は、熱成形して使用されてもよい。熱成形の具体的な方法としては、スタンピング成形法、真空成形法、圧縮成形法、射出成形法等が挙げられる。熱成形された発泡体は、輸送機器の内装材として使用されることが好ましい。
また、本発明の発泡体は、打ち抜き加工などして使用されてもよい。打ち抜き加工された発泡体は、各種電気機器などにおいて緩衝材として使用されることが好ましい。
【実施例0059】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
各樹脂、および添加剤を、表2に記載の配合で押出機に供給して130℃で溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を厚み0.6mmの長尺シート状に押し出して、長尺シート状の樹脂組成物の両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射してシート状の樹脂組成物を架橋した。架橋したシート状の樹脂組成物を熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで発泡させて、表2に記載の厚みの発泡体を得た。
【0061】
[実施例2~11及び比較例1~2]
押出機に供給される各成分の配合が表2に記載の通りとなるように調整して、樹脂組成物を実施例1と同様に得た。その後、発泡後の厚みが表1に記載の通りになるように、厚みを調整して樹脂組成物をシート状に押し出し、シート状の樹脂組成物に対して、加速電圧800kVの電子線を、表2に記載の照射量で照射して架橋し、その後、実施例1と同様に発泡炉内で発泡させて表2に記載の厚みを有する発泡体を得た。
【0062】
実施例、比較例において得られた発泡体を以下のように評価した。
<発泡体の厚み>
ダイヤルゲージにより発泡体の厚みを測定した。
<発泡倍率>
発泡前と発泡後の比容積(単位:cc/g)を測定し、発泡後の比容積/発泡前の比容積によって算出した。
<架橋度(ゲル分率)>
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=(B/A)×100
<平均気泡径>
発泡体の平均気泡径は、明細書記載の方法で測定した。
【0063】
<フィッシュアイ個数>
幅1m×長さ10mの発泡体を用意した。発泡体の裏側から蛍光灯を当て、最大径10mm以上の粗大気泡の数を目視により数えて、フィッシュアイ個数とした。
A:発泡体に最大径が10mm以上のフィッシュアイが3個未満
B:発泡体に最大径が10mm以上のフィッシュアイが3個以上5個未満
C:発泡体に最大径が10mm以上のフィッシュアイが5個以上
【0064】
各実施例、比較例で使用した原料を表1に示す。
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表2の結果から明らかなように、各実施例では石油由来ポリオレフィン樹脂を含有せず、又は、含有量が少なく環境貢献度が高いにもかからず、フィッシュアイの個数が少なくなり、外観が良好となった。それに対して、比較例では、フィッシュアイの個数が多くなり、外観が不良となった。