(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176810
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】曲面用刻印具
(51)【国際特許分類】
B29C 33/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B29C33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089298
(22)【出願日】2022-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月22日に、一般社団法人日本金型工業会主催による、INTERMOLD2022/金型展2022にて出品。
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】390015624
【氏名又は名称】浦谷商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 英樹
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AF01
4F202AG05
4F202AG21
4F202AR12
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD21
4F202CK27
4F202CK43
4F202CK90
4F202CS10
(57)【要約】
【課題】
曲面を有する樹脂金型成型品に対して、製造年月等の数字や文字等を記した文字を鮮明に刻印しうる曲面用刻印具を提供する。
【解決手段】
合成樹脂から成る金型成形品に表示体を刻印する、曲面の型を有してなる刻印具であって、該刻印具は、
中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸又は凹状に形成され、
前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させる
ことを特徴とする曲面用刻印具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂から成る金型成型品に表示体を刻印する、曲面の型を有してなる刻印具であって、該刻印具は、
中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸又は凹状に形成され、
前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させる
ことを特徴とする曲面用刻印具。
【請求項2】
前記曲面の型が凸状の型である、請求項1に記載の曲面用刻印具。
【請求項3】
前記曲面の型が凹状の型である、請求項1に記載の曲面用刻印具。
【請求項4】
前記曲面の曲率Rが0.0001~0.7である、請求項2または3に記載の曲面用刻印具。
【請求項5】
合成樹脂から成る金型成型品に表示体を刻印する、凸状の型と凹状の型を有してなる刻印具であって、
前記凸状の型及び凹状の型は、それぞれ中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記凸状の型は、前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸状に形成され、
前記凹状の型は、前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凹状に形成され、
前記凸状の型及び凹状の型の前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記凸状の型及び凹状の型の前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させる
ことを特徴とする曲面用刻印具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂金型成型品へ製造年月等を刻印する刻印具に関し、特に曲面を有する樹脂金型成型品に刻印可能な刻印具に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック等の合成樹脂から成る金型成型品には、外観上の美感を損なわない箇所に製造年月やロット番号、製品番号等の刻印が施されており、これらの表示により成型品に不良が発生した際の原因調査や在庫及び品質管理がなされている。
これらの表示は、成型時に使用される金型の内面側に、刻印表示部を備えた表示体を着脱自在に嵌入して金型成型を行うことで、成型品の表面に表示体の刻印内容がそのまま刻印されるようになっている。
【0003】
このような金型は、5年~10年の長期間に渡って使用するのが通例で、このような樹脂成形用金型に従来の日付等刻印具をセットした場合、刻印具も金型と同様に5年~10年の長期間に渡って使用することになる。
この表示の内容は、製品の日付、ロット番号等が変わる度に変更する必要があり、その表示内容の変更は、刻印表示具を表示内容の異なるものと、その都度交換することにより行われていた。
【0004】
したがって、製造年月が変更になる毎に刻印表示具を付け替えると、交換作業の必要性が生じて煩わしさに耐えられず、製造効率も著しく悪くなるため、現在では、日付刻印用部品を金型にセットした後、付け替えることなく、月の替りに矢印の矢先の位置を変更することによって、1年間使用できるように対応している。
【0005】
上述の状況において、特許文献1では、特に、スムーズに矢印の矢示方向の変更を行うことができ、かつ、日付刻印用金型を分解することなく、成型側から容易に矢印表示体を着脱して交換することのできるプラスチック成型金型の日付刻印用部品が開示されている。
【0006】
更に、特許文献2には、成型時に溶融樹脂から発生するガスが刻印装置と金型との間に侵入するのを防ぐことにより、金型の腐食を防止するとともに、指標体が固まって回転しなくなることを防止可能な型内脱着式刻印装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に開示される刻印具では、刻印する面が平面であるため、曲面を有する成型品に刻印すると一部分が歪んで刻印され、鮮明な刻印字が得られず均一に刻印することが難しい現状にあった。更に、成型後金型から離型することも難しい問題点も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3215631号公報
【特許文献2】特許第5916140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、曲面を有する樹脂金型成型品に対しても、製造年月等を曲面にも均一に刻印可能な曲面用刻印具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、合成樹脂から成る金型成型品に表示体を刻印する、曲面の型を有してなる刻印具であって、該刻印具は、
中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸又は凹状に形成され、
前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させる
ことを特徴とする曲面用刻印具に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記曲面の型が凸状の型である、請求項1に記載の曲面用刻印具に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記曲面の型が凹状の型である、請求項1に記載の曲面用刻印具に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記曲面の曲率Rが0.0001~0.7である、請求項2または3に記載の曲面用刻印具に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、合成樹脂から成る金型成型品に表示体を刻印する、凸状の型と凹状の型を有してなる刻印具であって、
前記凸状の型及び凹状の型は、それぞれ中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記凸状の型は、前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸状に形成され、
前記凹状の型は、前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凹状に形成され、
前記凸状の型及び凹状の型の前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記凸状の型及び凹状の型の前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させることを特徴とする曲面用刻印具に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の曲面用刻印具によれば、合成樹脂から成る金型成型品に表示体を刻印する、曲面の型を有してなる刻印具であって、該刻印具は、
中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸又は凹状に形成され、
前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させることを特徴とすることで、曲面を有する成型品に刻印すると、曲面に均一に刻印することが容易となり、平面と比しても鮮明な文字を刻印することが可能となる。更に金型と刻印具とを嵌合させて曲面に対して成型させても、バリの発生等を防止できる効果も奏する。
【0016】
請求項2に係る発明の曲面用刻印具によれば、前記曲面の型が凸状の型であることで、凸型の曲面を有する製品にも、鮮明な文字を刻印できる効果を奏する。
【0017】
請求項3に係る発明の曲面用刻印具によれば、前記曲面の型が凹状の型であることで、 凸型と相対しうる凹型に曲面を有する製品にも、鮮明な文字を刻印できる効果を奏する。
【0018】
請求項4に係る発明の曲面用刻印具によれば、前記曲面の曲率Rが0.0001~0.7であることで、樹脂成型後に金型より離型することがより容易になり、成型時の曲面形状が更に滑らかになる効果を奏する。
【0019】
請求項5に係る発明の曲面用刻印具によれば、
合成樹脂から成る金型成型品に表示体を刻印する、凸状の型と凹状の型を有してなる刻印具であって、
前記凸状の型及び凹状の型は、それぞれ中空円柱状の表示体と、該中空円柱状の表示体に回動自在に嵌入される中実円柱状の指標体から構成され、
前記凸状の型は、前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凸状に形成され、
前記凹状の型は、前記表示体の上面に前記曲面の一部が形成され、当該曲面の一部に月暦が凹状に形成され、
前記凸状の型及び凹状の型の前記指標体の上面に前記曲面の残りの一部が形成され、当該曲面の残りの一部に矢印および年号が曲面状に形成され、
前記凸状の型及び凹状の型の前記指標体の前記矢印を回動させて、年号および製造月を曲面状の成型品表面に表示させることを特徴とすることで、複数の曲面を有する金型成型品に刻印できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る凸型に曲面を有する曲面用刻印具の断面図である。
【
図2】本発明に係る凹型に曲面を有する曲面用刻印具の断面図である。
【
図3】本発明に係る曲面用刻印具の凸型に曲面を有する表示体及び指標体を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る曲面用刻印具の凹型に曲面を有する表示体及び指標体を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る曲面用刻印具の表示体及び指標体を示す上面図である。
【
図6】本発明に係る曲面用刻印具の凸型及び凹型に曲面を有する曲面用刻印具の断面図である。
【
図7】本発明に係る曲面用刻印具を示す図であって、(a)は凸型及び凹型の各指標体に工具を嵌入する作業の模式図、(b)は凸型及び凹型のそれぞれの曲面用刻印具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る曲面用刻印具の好適な実施形態について、図面を参照しながら刻印具の一例を示して詳細に説明する。
図1には、本発明に係るプラスチック等合成樹脂の成型における、金型部品に嵌合させる曲面用刻印具の第1の実施形態が示され、凸状の表面に曲面を有する曲面用刻印具1が、及び
図2には、曲面用刻印具の第2の実施形態である、凹状の表面に曲面を有する曲面用刻印具2が示される。各刻印具は、表示体3と、指標体4と、によって構成されている。
なお、プラスチック等合成樹脂の成型方法では、インジェクション成型やプレス成型等が挙げられるが、当該刻印具はどちらの成型法に対しても適用可能である。
【0022】
さらに、
図3及び4には、凸型及び凹型にそれぞれ形成される表示体に嵌合される指標体の正面図を示す。
図5は、表示体3及び指標体4の斜視図である。
【0023】
指標体4は、表示体3の中心部に収納される。指標体4が表示体3内に嵌入されたときに、指標体4の上面と表示体3の上面が面一となるように形成される。
【0024】
また、表示体3及び指標体4の表面の曲率は、曲面を持った成型品(例えば、バスタブ等の容器や、乗用車等の燃料タンク、水筒等の成型を要する成型品)の曲率と等しく又は同じとすることが好ましく、凸型の指標体41の上面の曲率r1と表示体3の上面の曲率r2は、0.0001~0.7であることが好ましく、凹型の指標体42の上面の曲率r3と表示体3の上面の曲率r4は、0.0001~0.7であることが好ましい。
以上の曲率を有すると、金型からの離型が容易になり、滑らかな曲面を備える金型成型品が得られる。
【0025】
円柱状に形成される指標体4には、表示面の中央部に年号43と、製造月を指示する矢印45が凹状または凹状に刻設されている。この刻印される矢印の深さまたは高さは、表示体3の周部31に刻印される月暦311の深さまたは高さと同一に形成されている。
【0026】
また、指標体4は、表示体3に密に嵌合するようになっており、この指標体4の他方の面の中央下方には、後述する当該刻印具を成型金型から取り出す際の空洞部5が設けられ、同空洞部の内面にはネジが切られ、ボルト等と螺合されうる構造となっている。
【0027】
表示体3は、円柱体によって構成され、この円柱体の表面に形成される表示体の周部31の表面に、月暦311を示す「1」から「12」までの月数字が等間隔に凸状または凹状に刻設され、この月暦311が製造月を表すことになり、
図3及び
図4には、製造年の「22」の文字と矢印および製造月を表す1から12までの数字が刻設されていることが例示される。
尚、本発明において、表示体3は日付等の数字に限定されるものではなく、例えば、成型金型の識別番号、ロット番号、製造ライン番号など所望の文字が刻設されていてもよく、更に文字と数字が同時に刻設されていてもよい。
【0028】
月替わりになった場合、
図7(a)に例示されるように、指標体4に形成されている矢印44に刻設された係止溝にマイナスドライバの先端を差し込み、左右いずれかに回動することによって、矢印44の矢先を表示体3の周部31に形成される「1」から「12」までの月暦311の所定の数字位置に合わせる。
例えば、矢印44を
図2に示す表示体3の周部31に刻設された「5」の文字に合わせれば、製造年「22」を用いて「5月」に製造された金型成型品であることを示す刻印を金型成型品に施すことが可能となる。
【0029】
このように、月暦311が凹状及び凹状に形成された刻印具が成型金型内に嵌入されたとき、指標体4及び周部31が金型内面に露出し、刻印された文字及び矢印が金型成型品上に刻印される。
プラスチック等の合成樹脂成型品へ刻印すると、月暦、年号43、矢印44が盛り上がった状態(浮き出し文字)または、凹みのある状態のいずれかで表示される。
【実施例0030】
本発明に係る曲面用刻印具に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
指標体4を刻印具1から一旦取り外し、指標体4を取り外した表示体3を樹脂成型側から押し込み、当該表示体3の表面を、真鍮等を当て板にしてハンマー等でたたいて金型に嵌合させる。その後、指標体4を樹脂成型側より、金型に嵌合させた表示体3に押し込むことで、刻印具自体が金型に嵌合される。
【0032】
反対に、指標体4が金型に嵌合している状態で、刻印具を成型金型から取り出すには、指標体4を樹脂成型側より取り外し、表示体3の内径に適合したボルトを空洞部5に嵌入して螺合させ、回動させて表示体3を取り外すことで刻印具を金型より取り出す。
あるいは、予め樹脂成型裏側に穴を開けておき、丸型の棒材を空洞部5に嵌入させ、ハンマー等で叩き出すことで、金型から刻印具が取り出すことができる。
【0033】
本発明は、上記実施形態以外にも、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
図6に例示されるように、凸型及び凹型に曲面を同一に有するように構成してもよく、複数の曲面を有する樹脂成型品に刻印することが可能になる。
また、本実施例では、数字や文字等の刻印を説明したが、文字以外に2次元バーコードやQRコード等を刻印してもよい。
更に、金型とは熱膨張等異なる特性を有する素材で該刻印具を構成してもよく、金型に嵌合しても離型後以降、金型より当該刻印具を取り出しやすくなり、作業効率も高まる。