IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図1
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図2
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図3
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図4
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図5
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図6
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図7
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図8
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図9
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図10
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図11
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図12
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図13
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図14
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図15
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図16
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図17
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図18
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図19
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図20
  • 特開-動態画像解析装置及びプログラム 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176825
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】動態画像解析装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231206BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61B6/00 330A
A61B6/00 350B
A61B6/00 350A
A61B5/026 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089320
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野地 翔
【テーマコード(参考)】
4C017
4C093
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC11
4C017FF05
4C017FF15
4C093AA01
4C093DA03
4C093FF16
4C093FF19
4C093FF20
4C093FF23
(57)【要約】
【課題】胸部の動態画像から、主血管を除いた肺血流量に関する特徴量を精度良く算出する。
【解決手段】診断用コンソール3の制御部31は、放射線による動態撮影により得られた胸部の動態画像を取得し、取得した動態画像から肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域から血流量に関する特徴量(フレーム間差分値)を算出する。そして、算出した血流量に関する特徴量の値の上限値を決定し、血流量に関する特徴量の値の上限値により制限を加える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線による動態撮影により得られた胸部の動態画像を取得する取得部と、
前記動態画像から肺野領域を抽出する抽出部と、
前記肺野領域から血流量に関する特徴量を算出する血流量特徴量算出部と、
前記算出された血流量に関する特徴量の値に制限を加える制限部と、
を備える動態画像解析装置。
【請求項2】
前記制限部は、少なくとも前記動態画像の撮影条件及び前記血流量に関する特徴量の算出対象となる血管の情報に基づいて、前記血流量に関する特徴量の上限値を決定し、前記上限値に基づいて、前記算出された血流量に関する特徴量の値に制限を加える、請求項1に記載の動態画像解析装置。
【請求項3】
前記制限部は、さらに、前記動態画像の被検者の身体的情報、撮影体位、前記肺野領域における前記血流量に関する特徴量を算出する対象領域の位置、前記血流量に関する特徴量を算出する肺野の面積又は体積、のいずれか一つ以上の情報に基づいて、前記血流量に関する特徴量の上限値を決定し、前記上限値に基づいて、前記算出された血流量に関する特徴量の値に制限を加える、請求項2に記載の動態画像解析装置。
【請求項4】
前記肺野領域に解析領域を設定する解析領域設定部と、
前記解析領域において算出された前記血流量に関する特徴量に基づいて解析を行う解析部と、
を備える請求項1に記載の動態画像解析装置。
【請求項5】
前記解析領域は、前記肺野領域から肺以外に流れる血流と重なる領域を除去した領域である、請求項4に記載の動態画像解析装置。
【請求項6】
前記解析領域が除去する領域は、腕頭動脈と鎖骨下動脈のいずれか一つ以上による濃度変化の影響が及ぼされる領域である、請求項5に記載の動態画像解析装置。
【請求項7】
前記血流量特徴量算出部は、前記肺野領域の小領域ごとに前記血流量に関する特徴量を算出し、
前記解析領域設定部は、前記肺野領域に複数の小領域を含む解析領域を設定し、
前記解析部は、前記解析領域を複数の小領域を含む複数の領域に分割し、分割された複数の領域のそれぞれにおいて、当該領域で算出された前記血流量に関する特徴量の代表値を算出し、算出した前記複数の領域の代表値の比率を前記複数の領域の血流比として算出するものであって、前記比率を他の臓器と重なっている肺野領域の血流量を考慮した比率に補正するための補正値を取得し、取得した補正値に基づいて前記比率を補正する、請求項4に記載の動態画像解析装置。
【請求項8】
前記補正値は、前記動態画像の撮影時の放射線照射方向において他の臓器と重なる肺野領域の体積又は面積に基づき算出された値である、請求項7に記載の動態画像解析装置。
【請求項9】
コンピューターを、
放射線による動態撮影により得られた胸部の動態画像を取得する取得部、
前記動態画像から肺野領域を抽出する抽出部、
前記肺野領域から血流量に関する特徴量を算出する血流量特徴量算出部、
前記算出された血流量に関する特徴量の値に制限を加える制限部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動態画像解析装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胸部の動態画像に基づいて肺血流を解析する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、胸部の動態画像の複数のフレーム画像にワーピング処理(位置合わせ処理)を実施することで複数のフレーム画像の肺野領域の形状(血管を含む)を一致させた後に、血管領域を抽出し、血管領域から複数のフレーム画像間における濃度変化量算出することで、血流特徴量を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5136562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、血管は3次元的に動くため、2次元の胸部の動態画像では正確に位置合わせを行うことは難しく、精度よく血流特徴量を算出することは困難である。
【0005】
また、一般的に、肺血流の左右比(左右の肺の血流比)を評価するモダリティとして肺血流シンチグラフィ(肺血流シンチ)が知られている。肺血流シンチでは、左右の肺の末梢血管の血流比を評価している。胸部の動態画像で肺血流シンチと同等の評価をする場合には、例えば、特定の血管(主血管)部の領域を除外した領域の肺血流に関する特徴量に基づいて肺血流の左右比を算出する方法が用いられている。しかし、末梢血管は主血管の裏にも重なって存在するため、主血管部の領域を評価領域から除外すると、正確な評価が行えなくなってしまう。
【0006】
本発明の課題は、胸部の動態画像から、主血管を除いた肺血流量に関する特徴量を精度良く算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の動態画像解析装置は、
放射線による動態撮影により得られた胸部の動態画像を取得する取得部と、
前記動態画像から肺野領域を抽出する抽出部と、
前記肺野領域から血流量に関する特徴量を算出する血流量特徴量算出部と、
前記算出された血流量に関する特徴量の値に制限を加える制限部と、
を備える。
【0008】
また、本発明のプログラムは、
コンピューターを、
放射線による動態撮影により得られた胸部の動態画像を取得する取得部、
前記動態画像から肺野領域を抽出する抽出部、
前記肺野領域から血流量に関する特徴量を算出する血流量特徴量算出部、
前記算出された血流量に関する特徴量の値に制限を加える制限部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、胸部の動態画像から、主血管を除いた肺血流量に関する特徴量を精度良く算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における動態画像解析システムの全体構成を示す図である。
図2図1の撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
図3図1の診断用コンソールの制御部により実行される肺血流解析処理を示すフローチャートである。
図4】胸部の動態画像における心臓の拍出に伴う信号変化のシミュレーションの前提条件について説明するための図である。
図5】肺野の中心から離れるほど上限値を低く設定する例について説明するための図である。
図6】胸部の放射線画像における腕頭動脈と鎖骨下動脈を示す図である。
図7】ディープラーニングを用いた血流比用肺野マスクの生成方法の一例を説明するための図である。
図8】ディープラーニングを用いた血流比用肺野マスクの生成方法の一例を説明するための図である。
図9】ディープラーニングを用いた血流比用肺野マスクの生成方法の一例を説明するための図である。
図10】ディープラーニングを用いた血流比用肺野マスクの生成方法の一例を説明するための図である。
図11】ディープラーニングを用いた血流比用肺野マスクの生成方法の一例を説明するための図である。
図12】肺野領域の濃度情報に基づく解析領域の設定を説明するための図である。
図13】肺野領域のフレーム間差分値に基づく解析領域の設定を説明するための図である。
図14】CT画像を用いて、肺野領域と他の臓器と重なる肺野領域の体積の算出手法を説明するための図である。
図15】臓器裏補正係数の算出するために用いる領域を説明するための図である。
図16】肺血流の左右比を表示した解析結果画面の一例を示す図である。
図17】臓器裏の領域を区別せずに血流比用肺野マスクのみを表示する例を示す図である。
図18】ユーザー操作により上限値が変更された場合の解析結果画面の変化を示す図である。
図19】ユーザー操作により血流比用肺野マスクの生成が自動から手動に変更された場合の解析結果画面の変化を示す図である。
図20】ユーザー操作により臓器裏補正係数の適用がありからなしに変更された場合の解析結果画面の変化を示す図である。
図21】肺血流の左右比の想定誤差を記載した解析結果画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0012】
〔動態画像解析システム100の構成〕
まず、本実施形態の構成を説明する。
図1に、本実施形態における動態画像解析システム100の全体構成例を示す。
図1に示すように、動態画像解析システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。動態画像解析システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0013】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ胸部の動態を撮影する撮影手段である。動態撮影は、被写体に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、被写体の動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
ここで、動態撮影には動画撮影が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影するものは含まれない。また、動態画像には動画が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影して得られた画像は含まれない。
【0014】
撮影装置1は、図1に示すように、放射線源11、放射線照射制御装置12、放射線検出部13、読取制御装置14等を備えて構成されている。
【0015】
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、連続照射時のパルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、連続撮影において、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0016】
放射線検出部13は、FPD等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0017】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像である。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレー
ト、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0018】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0019】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0020】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0021】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、検査対象部位に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0022】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0023】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0024】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0025】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得し、取得した動態画像に解析を施し、動態画像及び解析結果を医師の読影用に表示する動態画像解析装置である。
診断用コンソール3は、図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表
示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0026】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する肺血流解析処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。制御部31は、本発明の取得部、抽出部、血流量特徴量算出部、制限部、解析領域設定部、解析部として機能する。
【0027】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で肺血流解析処理を実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0028】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0029】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、操作部33からの入力指示やデータ等を表示する。
【0030】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0031】
〔動態画像解析システム100の動作〕
次に、上記動態画像解析システム100における動作について説明する。
【0032】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図2に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0033】
まず、撮影技師により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被検者(被写体M)の患者情報(患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)の入力が行われる(ステップS1)。
【0034】
次いで、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS2)。ここで、フレームレート(パルスレート)としては、人間の心拍周期を考慮して7.5フレーム/秒以上とすることが好ましい。また、撮影するフレーム数としては、心拍一周期以上のフレーム数とすることが好ましい。
【0035】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS3)。ここで、撮影技師等の撮影実施者は、胸部正面の撮影用のポジショニングを行って、被検者(被写体M)に息を止めるように指示する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0036】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS3;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS4)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム数は、少なくとも1心拍サイクルが撮影できる枚数である。
【0037】
撮影により取得されたフレーム画像は順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号と対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS5)、表示部24に表示される(ステップS6)。撮影技師は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0038】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS7;YES)、動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査対象部位、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号(フレーム番号)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS8)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS7;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS9)、本処理は終了する。
【0039】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3においては、通信部35を介して撮影用コンソール2から胸部の動態画像の一連のフレーム画像が受信されると、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により図3に示す肺血流解析処理が実行される。肺血流解析処理では、肺血流の左右比が算出される。
【0040】
以下、図3を参照して肺血流解析処理の流れについて説明する。以下の説明では、胸部の動態画像が胸部正面から撮影された画像であることとして説明する。
【0041】
まず、胸部の動態画像の一連のフレーム画像が取得される(ステップS11)。
次いで、取得した動態画像に基づいて、肺血流サマライズ画像が生成される(ステップS12)。
【0042】
肺血流サマライズ画像は、胸部の動態画像における肺野領域のブロック領域(小領域)ごとの血流量に関する特徴量を示す画像である。
肺血流サマライズ画像は、例えば、以下の(1)~(8)の処理により生成される。
【0043】
(1)まず、取得した動態画像の各フレーム画像に対数変換処理を施す。
なお、対数変換処理は行うことが望ましいが、省略することもできる。
【0044】
(2)対数変換処理後の各フレーム画像から肺野領域を抽出する。
肺野領域の抽出方法は何れの方法であってもよい。例えば、フレーム画像の各画素の画素値(濃度値)のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小ブロックでエッジが最大となる点を境界に沿って抽
出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
なお、上記の手法により自動抽出された肺野領域の輪郭等が付与されたフレーム画像を表示部34に表示し、ユーザーが操作部33により手動で肺野領域を調整可能としてもよい。
【0045】
(3)各フレーム画像の抽出された肺野領域にブロック化処理を行う。
ブロック化処理では、肺野領域を、例えば、10mm×10mmの矩形のブロック領域に分割し、ブロック領域内の各画素の信号値(濃度値)をブロック領域内の信号値の代表値(平均値等)に置き換えて平滑化する。もしくは1画素毎に10mm×10mmサイズの平滑化処理を実施し、1画素をブロック領域として設定する。
【0046】
(4)心臓領域内にROI(関心領域)を設定し、血流信号以外の周波数のノイズを除去するためのバンドパスフィルターのパラメーターを決定する。
まず、各フレーム画像の心臓領域にROIを設定する。心臓領域は、例えば、テンプレートマッチングやディープラーニングを用いた手法など、公知の手法を用いて抽出することができる。
次いで、ROIの平均信号値の時間変化を示す波形(心拍周期を表す波形)を生成し、生成した波形の周波数に基づいて、バンドパスフィルターのパラメーターを決定する。
【0047】
(5)肺野領域のブロック領域ごとに、信号値の時間変化の波形を取得して、(4)で決定したパラメーターを用いて時間方向にバンドパスフィルターをかける。
これにより、血流信号以外の周波数のノイズの影響を除去することができる。
【0048】
(6)バンドパスフィルター処理後のブロック領域ごとに基準フレーム画像を設定する。
まず、ROIの平均信号値の時間変化を示す波形に基づいて、初期基準フレーム画像を選定する。例えば、ROIの平均信号値が最小となるフレーム画像を初期基準フレーム画像として設定する。
ここで、ROIの平均信号値(平均濃度値)が最小のフレーム画像は、ROIとされた領域の血液量が最大であることを意味する。臓器に血液が流入すると血液によって放射線の透過が妨げられるため、放射線画像における放射線透過量が減少し、信号値は小さくなり、放射線画像上は白っぽく(すなわち、濃度が薄く)写る。これを、心臓に流入・流出する心血流と肺野に流入・流出する肺血流との関係で見た場合には、心臓に多くの血液が流入しているときには、心臓部分では放射線の透過が妨げられるため、放射線画像上では信号値が小さく比較的白っぽく(薄い濃度で)写る。これに対して、このタイミングでは肺野に流入する血液は少なく、肺野部分では放射線の透過量が多くなり、放射線画像上では信号値が大きくなり、比較的黒っぽく(濃い濃度で)写る。すなわち、肺野に流入する血液が最も少ないフレーム画像が初期基準フレーム画像として設定される。
次いで、ブロック領域ごとに、基準フレーム画像を設定する。例えば、初期基準フレーム画像から予め設定された探索範囲(例えば15fpsの場合であれば、±0.1333秒(前後2フレーム)等)内で最も高い信号値を示したフレーム画像を、当該ブロック領域における基準フレーム画像として設定する。
【0049】
(7)各フレーム画像について、抽出された肺野領域のブロック領域ごとに、基準フレーム画像の対応するブロック領域(位置が同じブロック領域)との信号値の差分値(フレーム間差分値)を算出する。フレーム間差分値は、基準フレーム画像からの濃度変化量を表しており、フレーム画像ごとの各ブロック領域の血流量に関する特徴量となる。
なお、本実施形態では、各フレーム画像の信号値から基準フレーム画像の信号値を引くことによりフレーム間差分値を算出する。そのため、フレーム間差分値の負の値が血流量を示すものとなる。
【0050】
(8)次いで、フレーム画像ごとの各ブロック領域の血流量に関する特徴量を集約した肺血流サマライズ画像を生成する。
例えば、ブロック領域ごとに、フレーム間差分値の時間方向の代表値(積算値、平均値、最小値、最大値、中央値のいずれか)を抽出して肺血流サマライズ画像を生成する。
【0051】
肺血流サマライズ画像の生成が終了すると、肺血流サマライズ画像に上限値設定処理が実施される(ステップS13)。
【0052】
ここで、胸部の動態画像の肺野領域内において心拍と同周期の濃度変化を発生させる要因としては、血管の位置移動、血液の厚み変化(脈動などによる血管径の変化)、血液の密度変化(血中濃度(血圧)の変化)が挙げられる。このうち、血管の位置移動による濃度変化は、血流を示す濃度変化ではなくノイズであり、血液の厚み変化と血液の密度変化が血流を示す濃度変化である。血液の密度変化は、大きく見積もっても0.0001%と推定されるため、血流を示す濃度変化は、血液の厚み変化であるとみなすことができる。
【0053】
また、肺血流シンチでは末梢血管の血流を評価しており、肺血流シンチと同等の血流評価を行うためには、主血管による濃度変化(主血管の血液の厚み変化及び密度変化)を取り除き、末梢血管の血液の厚み変化(及び密度変化)を抽出する必要がある。
【0054】
すなわち、肺血流サマライズ画像の各ブロック領域の信号値であるフレーム間差分値には、血管の位置移動による濃度変化などのノイズと、主血管による濃度変化が含まれており、精度よく肺血流シンチと同様の血流による濃度変化を得るには、これらを除去する必要がある。血管の位置移動による濃度変化などのノイズと、主血管による濃度変化は、末梢血管における血流による濃度変化よりも大きい。
【0055】
そこで、ステップS13の上限値設定処理では、肺血流サマライズ画像の各ブロック領域の信号値(フレーム間差分値)に上限値(絶対値の上限値)を設定し、上限値を超える値の場合は上限値に置き換えてフレーム間差分値に制限を加えることで、フレーム間差分値から血管の位置移動による濃度変化分や主血管による濃度変化分を取り除き、肺血流量に関する特徴量を精度よく算出する。
また、上述のように、本実施形態では血流量はフレーム間差分値の負の値に対応する。そのため、正の値に関しては血流量に対する血流比の算出時にはそのまま使用すると誤差要因となってしまう。そこで正の値に関してはここで0に置き換えることとしても良い。
【0056】
ここで、フレーム間差分値の上限値は、胸部の動態画像における心臓の拍出に伴う末梢血管による信号変化をシミュレーションした結果に基づいて決定することができる。あるいは、胸部の動態画像における心臓の拍出に伴う末梢血管の信号変化をシミュレーションした結果及び複数の胸部の動態画像から主血管の信号変化を求めた結果に基づいて決定することができる。
【0057】
以下、胸部の動態画像における心臓の拍出に伴う末梢血管による信号変化のシミュレーションについて説明する。
シミュレーションの前提条件として、図4に示すように、一回拍出量に相当する血液が肺野全体に均一に拡散したと仮定する。また、拡散した血液の厚みの変化が放射線画像の信号変化となると仮定する。
【0058】
被写体Mを透過した後のX線量Iは、以下の(式1)で表すことができることが知られている。
I=I×exp[-μ×ρ×X]・・・(式1)
ここで、Iは、曝射したX線量、μは質量吸収係数[cm2/g]、ρは密度[g/cm3
、Xは被写体透過距離[cm]である。
【0059】
上記(式1)より、血液の厚み変化で生じる信号変化率は、以下の(式2)により求めることができる。
信号変化率=(I-I)/I=1-exp[-μ×ρ×X]・・・(式2)
【0060】
ここでいう被写体距離Xは、血液の厚みであり、一回拍出量をSV、肺野の大きさ(ここでは面積)をSLとすると、上記の前提条件より、
X=SV/SL[cm]
すなわち、血液の厚み変化で生じる信号変化率は、一回拍出量SV、肺野の大きさSL、質量吸収係数μ、密度ρのパラメーターの値からシミュレーションすることができる。
【0061】
一回拍出量SVは、1心拍で肺野に流れる血流量である。一回拍出量SVとしては、標準的な値を用いてもよいが、被検者ごとの拍出量情報が存在する場合(例えば、記憶部32に記憶されているか、患者情報に含まれている場合等)にはその値を使用することが好ましい。また、一回拍出量SVは、例えば、身長が高いほど高い傾向がある等、身体的特徴により変化する。そこで、身長、体重、年齢、性別の少なくとも一つの身体的な特徴と、その身体的特徴に対応する一回拍出量SV(例えば、統計等により求めた値)とを対応付けたテーブルを記憶部32に記憶しておき、被検者の患者情報から求められる身体的な特徴に対応する一回拍出量SVをテーブルを参照して求めることとしてもよい。
【0062】
肺野の大きさSLは、ここでは肺野の面積である。肺の大きさSLは、標準的な値を用いてもよいが、被検者ごとの肺の大きさの情報がある場合(例えば、記憶部32に記憶されているか、患者情報に含まれている場合等)にはその値を使用することが好ましい。また、CTなどの被検者Mの肺野体積が計測できるデータが存在する場合にはその計測データを使用して体積を求め、求めた体積から面積を求めることとしてもよい。また、例えば、肺の大きさSLは、例えば、身長が高いほど大きい傾向がある等、身体的特徴により変化する。そこで、身長、体重、年齢、性別の少なくとも一つの身体的な特徴と、その身体的特徴に対応する肺の大きさSL(例えば、統計等により求めた値)とを対応付けたテーブルを記憶部32に記憶しておき、被検者の患者情報から求められる身体的な特徴に対応する肺の大きさをテーブルを参照して求めることとしてもよい。
【0063】
質量吸収係数μは、撮影条件(管電圧、平均エネルギーなど)と、血流量に関する特徴量の算出対象となる部位(ここでは、肺の末梢血管)から文献値により決定することができる。すなわち、撮影条件と部位の組み合わせごとの質量吸収係数μを記憶部32に記憶しておき、処理対象の胸部動態画像の撮影条件及び計測対象の部位(ここでは、肺の末梢血管)に応じた質量吸収係数μを記憶部32から読み出して取得することができる。
密度ρは、血流量に関する特徴量の算出対象となる部位(ここでは、肺の末梢血管)から文献値により決定することができる。すなわち、肺の末梢血管の密度ρを記憶部32に記憶しておき、肺の末梢血管の密度ρを記憶部32から読み出して取得することができる。
【0064】
すなわち、上限値設定処理では、少なくとも胸部の動態画像の撮影条件及び血流量に関する特徴量の算出対象となる血管(肺の末梢血管)の情報に基づいて、肺の末梢血管による信号変化率を算出し、信号変化率に基づいて、血流量に関する特徴量の上限値を決定することができる。また、さらに、胸部の動態画像の被検者の身体的情報、肺野の面積又は体積のいずれか一つ以上の情報に基づいて、肺の末梢血管による信号変化率を算出し、信号変化率に基づいて、血流量に関する特徴量の上限値を決定することができる。
【0065】
例えば、正常な一回拍出量は、60~130mlであり、標準的な肺野の大きさが400cm2であ
り、撮影条件と対象部位から文献により求めた質量吸収係数が0.216cm2/g、密度が1.056g/cm3であった場合、上記(式2)の算出式より、末梢血管の血液の厚み変化による信号変化率は、3.4~7.1%と推定することができる。そこで、血液の厚み変化による信号変化率の上限値を、一回拍出量の大きさに応じて、例えば、3.4~7.1%に決定することができる。
【0066】
また、実際の胸部の動態画像の複数症例の目視評価により、肺門部の主血管の部分の厚み変化による信号変化率及び主血管の動きによる信号変化率を求めた結果、肺門部の主血管の部分の血液の厚み変化による信号変化率は大部分が7.5%以上、主血管の動きによる信号変化率は5%以上であった。そこで、信号変化率の上限値を5%に決定してもよい。この上限値は、検証の結果、肺血流シンチグラフィとの相関が高いことがわかっている。
【0067】
なお、撮影体位が臥位の場合は、上記の前提条件のように、血流が肺野内に均一に広がると考えて、信号変化率の上限値を肺野の位置によらず均一とすることができるが、立位で撮影した場合は、重力の影響により肺野の下側ほど血流量が多くなることが知られている。例えば、肺尖部と肺底部の血流比は、肺尖部:肺底部=1:10である(「人体の正常構造と機能」、総編集:坂井建雄、河原克雅、日本医事新報社、2021年1月参照)。そこで、撮影体位が立位である場合は、この血流量の分布に基づいて、肺野領域における位置(上下方向の位置)に応じて信号変化率の上限値を可変としてもよい。例えば、肺尖部の信号変化率の上限値を1とすると、肺底部の信号変化率の上限値が10となるように、肺野領域における位置に応じて信号変化率の上限値を決定してもよい。
【0068】
また、血流量は肺門付近から外側に広がっていくにしたがって低下する。そこで、この血流量の分布を反映して信号変化率の上限値を肺野領域における位置に応じて可変としてもよい。例えば、図5に示すように、肺野の中心から離れるほど上限値の値を低く設定することとしてもよい。
【0069】
ステップS13では、信号変化率の上限値が決定されると、決定した信号変化率の上限値を用いた所定の算出式により、ブロック領域ごとのフレーム間差分値の上限値が算出され、フレーム間差分値が上限値以上の値の場合は上限値に置き換えられる。
【0070】
次いで、解析領域設定処理が実施され、肺野領域から、肺以外に流れる血流を有する血管を除去した領域が肺血流比の解析領域として設定される(ステップS14)。
【0071】
ここで、腕頭動脈と鎖骨下動脈は、胸部正面の2次元画像においては肺野領域と重なっているが、肺以外に血液を流す血管である。これらの動脈は、血管形状を胸部の動態画像上で視認することは困難であるが、図6に一点鎖線で囲んで示すように、一般的に認識される肺野領域の上部の内側において、濃度低下領域(白い領域)として視認され、血流による信号変化が大きく、肺血流を評価する際にノイズとしての影響が大きい血流であることが判明した。
そこで、ステップS14では、肺血流サマライズ画像における、すでに抽出されている肺野領域から、腕頭動脈と鎖骨下動脈のどちらか1つ以上による濃度変化への影響が及ぼされる領域を除いた領域を、肺血流比の解析領域として設定する。
【0072】
肺野領域から腕頭動脈と鎖骨下動脈のどちらか1つ以上による濃度変化への影響が及ぼされる領域を除いた領域を解析領域として設定する処理としては、例えば、ディープラーニング(DL処理)等の機械学習により取得された学習済みモデルを用いて行うこととしてもよいし、機械学習を用いずに画像処理により解析領域を設定することとしてもよい。
以下、ステップS14における処理の例について説明する。下記(A)~(E)がディープラーニングを用いた例、(F)~(G)が機械学習を用いずに画像処理により解析領
域を設定する例である。
なお、以下の説明では、一般的に肺野領域として抽出される、腕頭動脈と鎖骨下動脈を含んだ肺野領域(例えば、ステップS12で抽出される肺野領域)を肺野マスク、腕頭動脈と鎖骨下動脈を除いた肺野領域を血流比用肺野マスクと呼ぶ。
【0073】
(A)図7に示すように、予め、胸部の放射線画像(オリジナル画像)と、オリジナル画像において血流比用肺野マスクを医師等がアノテーションで示した画像(血流比用肺野マスクの正解画像)とのセット(複数のセット)を教師データとしてディープラーニングにより学習させることにより生成された、入力された胸部のオリジナル画像から血流比用肺野マスクを出力する学習済みモデルM1を記憶部32に記憶しておく。そして、ステップS14では、例えば、胸部の動態画像の複数のフレーム画像のうち一のフレーム画像のオリジナル画像(代表フレーム画像とよぶ)を学習済みモデルM1に入力して、血流比用肺野マスクを取得し、取得した血流比用肺野マスクの領域を解析領域として設定する。
【0074】
(B)図8に示すように、予め、胸部の放射線画像(オリジナル画像)と、オリジナル画像において肺野マスクを医師等がアノテーションで示した画像(オリジナル画像から肺野領域を自動抽出した結果でもよい)と、オリジナル画像において血流比用肺野マスクを医師等がアノテーションで示した画像(血流比用肺野マスクの正解画像)と、のセット(複数のセット)を教師データとしてディープラーニングにより学習させることにより生成された、入力された胸部のオリジナル画像及び肺野マスクから血流比用肺野マスクを出力する学習済みモデルM2を記憶部32に記憶しておく。そして、ステップS14では、代表フレーム画像及びそのフレーム画像から抽出した肺野領域(ステップS12で抽出された肺野マスク)を学習済みモデルM2に入力して血流比用肺野マスクを取得し、取得した血流比用肺野マスクの領域を解析領域として設定する。
【0075】
(C)図9に示すように、予め、胸部の放射線画像(オリジナル画像)と、オリジナル画像において、腕頭動脈と鎖骨下動脈のいずれか1つ以上の影響のある領域を医師等がアノテーションで示した画像とのセット(複数のセット)を教師データとしてディープラーニングにより学習させることにより生成された、入力された胸部のオリジナル画像から腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度マップを出力する学習済みモデルM3を記憶部32に記憶しておく。そして、ステップS14では、代表フレーム画像を学習済みモデルM3に入力して、腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度マップを取得し、後処理において、代表フレーム画像のステップS12で抽出した肺野領域(肺野マスク)から腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度が所定の閾値以上の領域を除いた領域を血流比用肺野マスクとして取得し、取得した領域を解析領域として設定する。
【0076】
(D)図10に示すように、予め、胸部の放射線画像(オリジナル画像)と、オリジナル画像において肺野マスクを医師等がアノテーションで示した画像(オリジナル画像から肺野領域を自動抽出した結果でもよい)と、オリジナル画像において、腕頭動脈と鎖骨下動脈のいずれか1つ以上の影響のある領域を医師等がアノテーションで示した画像と、のセット(複数のセット)を教師データとしてディープラーニングにより学習させることにより生成された、入力された胸部のオリジナル画像及び肺野マスクから腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度マップを出力する学習済みモデルM4を記憶部32に記憶しておく。そして、ステップS14では、代表フレーム画像及びそのフレーム画像から抽出した肺野領域(ステップS12で抽出された肺野マスク)を学習済みモデルM4に入力して、腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度マップを取得し、後処理において、ステップS12で抽出した肺野マスクから腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度が所定の閾値以上の領域を除いた領域を血流比用肺野マスクとして取得し、取得した領域を解析領域として設定する。
【0077】
(E)腕頭動脈と鎖骨下動脈は、肺野上部の内側に存在することがわかっている。そこで
図11に示すように、予め、胸部の放射線画像(オリジナル画像)及び肺野マスクから肺野上部の内側の、腕頭動脈と鎖骨下動脈を含む領域をトリミングしたものと、オリジナル画像において血流比用肺野マスクを医師等がアノテーションで示した画像と、のセット(複数のセット)を教師データとしてディープラーニングにより学習させることにより生成された、入力された胸部のオリジナル画像及び肺野マスク(トリミング済み)から血流比用肺野マスクを出力する学習済みモデルM5を記憶部32に記憶しておく。そして、ステップS14では、代表フレーム画像及びそのフレーム画像から抽出した肺野領域(ステップS12で抽出された肺野マスク)の、肺野上部の内側の腕頭動脈と鎖骨下動脈を含む領域をトリミングした領域を学習済みモデルM5に入力して、腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度マップを取得し、後処理において、ステップS12で抽出した肺野マスクから腕頭動脈と鎖骨下動脈の尤度が所定の閾値以上の領域を除いた領域を血流比用肺野マスクとして取得し、取得した領域を解析領域として設定する。
【0078】
(F)代表フレーム画像の肺野領域の濃度情報に基づいて、腕頭動脈と鎖骨下動脈の領域を判断し、肺野領域から腕頭動脈と鎖骨下動脈を除いた領域を、解析領域として設定する。
例えば、図12に示すように、代表フレーム画像から抽出した肺野領域(ステップS12において抽出された肺野領域)の上半分の内側領域において、濃度低下領域(濃度値(信号値)が予め定められた閾値以下の領域)を内側に縮小して解析領域を設定する。
【0079】
(G)肺血流サマライズ画像と肺野マスクから腕頭動脈と鎖骨下動脈の領域を判断し、肺野領域から腕頭動脈と鎖骨下動脈を除いた領域を、解析領域として設定する。
例えば、図13に示すように、肺血流サマライズ画像における肺野領域の上半分の内側領域において、フレーム間差分値が所定の閾値以上となる領域を内側に縮小して解析領域を設定する。
ここで、上肺野の内側は肺血流量が少ない(フレーム間差分値が小さい)はずであるが、腕頭動脈や鎖骨下動脈が存在するとフレーム間差分値が肺血流量に比較して大きくなると想定されるので、フレーム間差分値が所定の閾値(肺血流量に相当する値)以上となる領域を除いた領域を解析領域として設定する。
【0080】
解析領域は、ブロック領域よりも大きく、胸部の動態画像において他の臓器と重なっている肺野領域は含まない領域となる。
【0081】
次いで、臓器裏を含む肺血流の左右比(左肺野領域と右肺野領域の肺血流の比)が算出される(ステップS15)。
【0082】
従来、胸部の動態画像を用いて血流量に関する特徴量を算出する際、他の臓器(例えば、心臓、横隔膜、胸椎、腰椎、椎体、大動脈、肺動脈、大動脈弓など)と重なる肺野領域(臓器裏の肺野領域)に対しては、そもそも解析領域から除外し無視をするか、もしくは、心臓や横隔膜のノイズが乗ることを理解しながらも肺血流に対する信号変化も抽出できると判断して、他の臓器と重なっていない肺野領域と同様に血流量に関する特徴量の算出を行っていた。
【0083】
しかし、従来の手法では、肺血流の左右比の計測時に問題があることが判明した。例えば、臓器裏の肺野領域を解析領域から除外した場合、肺野の全領域の肺血流を考慮していないため、現在普及している肺血流シンチによる肺血流の左右比の計測結果と差異が生じるという問題がある。また、臓器裏の肺野領域についても臓器と重なっていない肺野領域と同様に肺血流に関する特徴量の抽出を行って肺血流の左右比を計測した場合、臓器裏から算出された肺血流に関する特徴量のノイズが大きく、現在普及している肺血流シンチによる肺血流の左右比の計測結果と差異が生じるという問題がある。
【0084】
このような問題に対し、本願発明者は、臓器裏の肺野領域に関しては、実際に計測するのではなく、他の臓器と重なっていない肺野領域と同じ状態の肺血流が臓器裏の肺野領域に存在すると仮定して、肺血流の左右比を臓器裏の肺野領域の血流量を考慮した比率に補正するための補正値(臓器裏補正係数という)を用いて、他の臓器と重なっていない肺野領域において計測した血流量に関する特徴量を補正して左右比を算出した方が、より現在普及している肺血流シンチによる肺血流の左右比の計測結果との差異が少ないことを見出した。
そこで、ステップS15では、臓器裏補正係数を取得して、臓器裏補正係数を用いて臓器裏を含む肺血流の左右比を算出する。
【0085】
以下、臓器裏補正係数の算出方法について説明する。
胸部の動態画像においては、左肺野領域のほうが右肺野領域よりも他の臓器と重なる領域が大きいため、臓器と重なっていない肺野領域に基づいて肺血流の左右比を計測した場合、左肺野領域の血流量が右肺野領域に対して過小評価されてしまう。本実施形態では、これを補正するための補正係数を、臓器裏補正係数として算出する。
なお、以下に説明する臓器裏補正係数は、動態画像において他の臓器と重なっていない肺野領域と同じ状態の肺血流が臓器裏の肺野領域に存在することと、肺野の面積や体積と血流量が比例していることを前提として求めたものである。
【0086】
・体積を利用する場合
(a)図14に示すように、まず、胸部の動態画像の被検者の肺尖部から肺底部までのCT画像を取得し、CT画像の各スライスにて、右肺野領域と左肺野領域のそれぞれの、胸部の動態画像において(胸部の動態画像の撮影時の放射線照射方向において)他の臓器と重ならない領域と他の臓器と重なる領域(隠れ領域)の面積を計測する。
(b)各スライスの面積を足し合わせ、右肺野領域と左肺野領域のそれぞれの、胸部の動態画像において他の臓器と重ならない領域と他の臓器と重なる領域(隠れ領域)の容積(体積)を算出する。
(c)求めた体積を用いて、臓器裏補正係数を算出する。
図15に示すように、胸部の動態画像において他の臓器と重ならない右肺野の体積をA、他の臓器と重なる右肺野の体積をBとした場合、Aに対する右肺野全体の体積の比率を表す係数A´は、
A´=(A+B)/A・・・(式3)
同様に、胸部の動態画像において他の臓器と重ならない左肺野の体積をC、他の臓器と重なる左肺野の体積をDとした場合、Cに対する左肺野全体の体積の比率を表す係数C´は、
C´=(C+D)/C・・・(式4)
右肺野領域の臓器裏補正係数を1とすると、左肺野領域の臓器裏補正係数αは、
α=C´/A´・・・(式5)
【0087】
・面積を利用する場合
胸部正面画像(胸部の動態画像の一のフレーム画像でもよい)から以下の面積を計測する(図15参照)。
A:他の臓器と重なっていない右肺野領域の面積
B:他の臓器と重なっている右肺野領域の面積
C:他の臓器と重なっていない左肺野領域の面積
D:他の臓器と重なっている左肺野領域の面積
上記(式3)~(式5)により臓器裏補正係数を求める。
【0088】
例えば、上記の体積又は面積を用いた手法により、年齢、性別、身長、体重などの身体
的な特徴を区別せずに様々な身体的特徴の複数の症例データから臓器裏補正係数を算出してその平均値、もしくは中央値などの代表値を予め記憶部32に記憶しておき、ステップS15においては、記憶部32に記憶されている臓器裏補正係数(代表値)を読み出して取得する。
または、年齢、性別、身長、体重などの身体的な特徴ごと、もしくはそれらの組み合わせごとに臓器裏補正係数を算出してその平均値、もしくは中央値などの代表値を予め記憶部32に記憶しておき、ステップS15においては、記憶部32に記憶されている、被検者の身体的特徴に応じた臓器裏補正係数を読み出して取得することとしてもよい。
または、胸部の動態画像の被検者のCT画像など、胸部の動態画像において他の臓器と重なっている右肺野領域と左肺野領域、他の臓器と重なっていない右肺野領域と左肺野領域が算出できるデータが存在する場合、被検者の個別の臓器裏補正係数を算出して取得する。
【0089】
臓器裏補正係数が取得されると、解析領域を左肺野解析領域と右肺野解析領域に分割し、上限値補正済みの肺血流サマライズ画像における左右のそれぞれの解析領域内のフレーム間差分値の代表値(積算値、平均値、最小値、最大値、中央値のいずれか)を算出し、算出した代表値を臓器裏補正係数により補正する。すなわち、右肺野領域の臓器裏補正係数は右肺野解析領域の代表値に、左肺野領域の臓器裏補正係数は左肺野解析領域の代表値に乗算する。これにより、算出する肺血流の左右比を臓器裏の肺野領域の血流量を考慮した比率に補正することができる。そして、補正後の左右の解析領域の代表値の比率を、肺血流の左右比として算出する。
なお、代表値を補正することなく肺血流の左右比を算出し、算出した肺血流の左右比を臓器裏補正係数を用いて補正してもよい。
【0090】
そして、肺血流の左右比が表示された解析結果画面341が表示部34に表示され(ステップS16)、肺血流解析処理は終了する。
【0091】
図16は、解析結果画面341の一例を示す図である。図16に示すように、解析結果画面341には、算出された肺血流の左右比341aと、肺血流サマライズ画像341bと、適用された上限値341cと、血流比用肺野マスクが自動生成されたか手動で生成されたかを示す情報341dと、及び臓器裏補正係数の適用有無の情報341eと、適用有りの場合の臓器裏補正係数の値341fと、が表示されている。肺血流サマライズ画像としては、フレーム間差分値(すなわち、血流量に関する特徴量)に応じて色付けされた画像が表示される。また、肺血流サマライズ画像341bには、血流比用肺野マスク341gが表示される。血流比用肺野マスク341gとしては、臓器裏の肺野領域が血流比の算出に考慮されていることがわかるように、ステップS14で作成された血流比用肺野マスク341g1に対し、臓器裏まで肺野領域を拡張して表示される。その際、図16に示すように、臓器裏であるか否かがわかるように、血流比用肺野マスク341g内にステップS14で作成された血流比用肺野マスク341g1の領域を表示してもよいし、図17に示すように、臓器裏の領域を区別せずに血流比用肺野マスク341gのみを表示することとしてもよい。
【0092】
解析結果画面341においては、上限値341c、血流比用肺野マスク生成の自動/手動341d、臓器裏補正係数の適用有無341eが変更可能である。
例えば、図18に示すように、ユーザーによる操作部33の操作により上限値が変更された場合、制御部31により、上限値を入力した値に変更して肺血流サマライズ画像が作成し直されるとともに、肺血流の左右比が算出し直され、解析結果画面341上の肺血流の左右比341aの値及び肺血流サマライズ画像341bの色付けが変更される。
【0093】
また、例えば、図19に示すように、ユーザーによる操作部33の操作により血流比用
肺野マスク生成が自動から手動に変更されると、制御部31により、血流比用肺野マスク341g上に座標点(図19に黒丸で示す点)及びカーソル341iが表示される。操作部33により座標点にカーソル341iを合わせて所望の位置に移動すると、座標点の移動に合わせて左右比が再計算され、再計算結果が肺血流の左右比341aとして表示される。
【0094】
また、例えば、図20に示すように、ユーザーによる操作部33の操作により臓器裏補正係数の適用がありからなしに変更されると、制御部31により、血流比用肺野マスク341gの形状が、臓器裏が考慮されていないものに変更される。また、肺血流の左右比の再計算が行われ、再計算結果が肺血流の左右比341aとして表示される。
表示される。
【0095】
なお、臓器裏補正係数を適用した肺血流の左右比は、あくまで「他の臓器と重なっていない肺野領域と同じ状態の血流が臓器裏の肺野領域に存在すると仮定」した場合の値となるため、誤差を含んでいる可能性もある。そこで、医療従事者が診断をする際の判断に幅を持たせるために、図21に示すように、肺血流の左右比の想定誤差341hを記載することが好ましい。
想定誤差は、例えば下記の(式6)ように計算することができる。
(臓器裏補正係数適用前の左右比の右肺の値-臓器裏補正係数適用後の左右比の右肺の値)×1.5・・・(式6)
1.5は、誤差にマージンを持たせるために付与した値である。そのため、1.5倍ではない他の値を新たに設定しても良い。
【0096】
以上説明したように、診断用コンソール3の制御部31は、放射線による動態撮影により得られた胸部の動態画像を取得し、取得した動態画像から肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域から血流量に関する特徴量(フレーム間差分値)を算出する。そして、算出した血流量に関する特徴量の値の上限値を決定し、血流量に関する特徴量の値の上限値により制限を加える。
したがって、胸部の動態画像から、値の高い主血管による濃度変化を除いた血流量に関する特徴量を算出することができる。すなわち、主血管を除いた肺血流量に関する特徴量を精度良く算出することが可能となる。
【0097】
また、制御部31は、肺野領域に解析領域を設定し、設定された解析領域において算出された血流量に関する特徴量に基づいて解析を行う。
例えば、肺野領域から肺以外に流れる血流と重なる領域を除去した領域、具体的には、腕頭動脈と鎖骨下動脈のいずれか一つ以上による濃度変化の影響が及ぼされる領域を除去した領域を解析領域として設定して解析を行う。
したがって、胸部の動態画像の肺野領域から肺以外に流れる血流と重なる領域を除去した領域を解析領域として血流量に関する特徴量に基づく解析を行うので、精度よく血流量に関する解析を行うことができる。
【0098】
また、例えば、制御部31は、解析領域を複数の小領域を含む左肺野領域と右肺野領域に分割し、分割された領域ごとに、当該領域内で算出された血流量に関する特徴量の代表値を算出し、算出した代表値を、当該領域内において他の臓器と重なっている領域の血流量に関する特徴量を含む代表値に補正するための補正値に基づいて補正して、補正した代表値に基づき、左右の肺野の肺血流比を算出する。
したがって、臓器裏の肺血流を反映して、精度よく肺血流比を算出することができる。
【0099】
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る好適な動態画像解析システムの一例であり、これに限定されるものではない。
【0100】
例えば、上記実施形態では、肺血流サマライズ画像を生成してから肺血流の左右比を算出するための解析領域を設定し、解析領域内のフレーム間差分値を用いて肺血流の左右比を算出することとしたが、解析領域を設定した後に、解析領域内のフレーム間差分値を集約した肺血流サマライズ画像を生成して肺血流の左右比を算出することとしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、肺血流の左右比を算出する場合に本発明を適用した例について説明したが、これに限定されない。例えば、右上肺野、右中肺野、右下肺野、左上肺野、左中肺野、左下肺野、の6つの領域の血流比を算出することとしてもよい。この場合、臓器裏補正係数は、複数の症例データからそれぞれの領域ごとの臓器裏補正係数を算出してその平均値、もしくは中央値などの代表値を予め記憶部32に記憶しておき、それぞれの領域に対応する臓器裏補正係数を用いて補正を行う。
【0102】
また、上記実施形態では、血流量に関する特徴量として、基準フレーム画像とのフレーム間差分値を用いる場合を例にとり説明したが、これに限定されない。例えば、特開2012-239796号公報に記載されている、拍動信号波形と信号波形(ブロック領域ごとの信号波形)との相関を示す相互相関係数を血流量に関する特徴量としてもよい。
【0103】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0104】
その他、動態画像解析システム100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0105】
100 動態画像解析システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21