(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176864
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】スクリューレス端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H01R4/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089395
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(57)【要約】
【課題】端子台への電気配線の挿入によるラッチ解除を小さな力で行えるスクリューレス端子台を提供する。
【解決手段】スクリューレス端子台30は、板バネ部材120が、回動部材150およびテール部材140を介して、摺動部材130をラッチ部材160と係合する方向に付勢する力F3と、摺動部材130とラッチ部材160との係合によってF3の反力として生じる力F4との釣り合いによってラッチ状態を取りうる。ラッチ解除は、電気配線20の挿入によって解放部材170を介してラッチ部材160を回動させ、ラッチ部材160と摺動部材130との係合を解除する(力F4の作用を無くす)ことで行う。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ端子を含む接点端子間に電気配線を挟持して結線されるスクリューレス端子台であって、
前記バネ端子を有する板バネ部材と、
ユーザの操作を受けてスライド移動可能な摺動部材と、
前記摺動部材に対して回転自在に取り付けられ、前記摺動部材のスライド移動に伴って前記摺動部材に対して回動する回転子と、
前記板バネ部材によるバネ力を受けると共に、前記回転子の回動位置に応じての回動移動が可能である回動部材と、
前記摺動部材のスライド移動の過程で、変形する前記板バネ部材の当接によって回動移動し、当該回動移動の最後に前記摺動部材と係合するラッチ部材と、
前記電気配線の結線時に、挿入される前記電気配線によって回動し、その回動を前記ラッチ部材に伝えて、前記ラッチ部材と前記回転子との係合を解除させる解放部材とを備え、
前記接点端子間が離間した状態で、前記板バネ部材が、前記回動部材および前記回転子を介して、前記摺動部材を前記ラッチ部材と係合する方向に付勢すると共に、前記ラッチ部材と係合した前記ラッチ部材が前記摺動部材の付勢方向へのスライド方向を阻害することによってラッチ状態を取りうることを特徴とするスクリューレス端子台。
【請求項2】
バネ端子を含む接点端子間に電気配線を挟持して結線されるスクリューレス端子台であって、
前記バネ端子を有する板バネ部材と、
ユーザの操作を受けて回動移動する際に前記板バネ部材に変形を与え、前記接点端子間を離間させる操作部材と、
前記操作部材の回動移動の過程で、前記操作部材の当接によってスライド移動する摺動部材と、
前記摺動部材に対して回転自在に取り付けられ、前記摺動部材のスライド移動に伴って前記摺動部材に対して回動する回転子と、
前記操作部材の回動移動の過程で、変形する前記板バネ部材の当接によって回動移動し、当該回動移動の最後に前記回転子と接触するラッチ部材と、
前記電気配線の結線時に、挿入される前記電気配線によって回動し、その回動を前記ラッチ部材に伝えて、前記ラッチ部材と前記回転子との接触を解除させる解放部材とを備え、
前記接点端子間が離間した状態で、前記板バネ部材が前記操作部材に与える第1の回転トルクと、前記摺動部材が前記操作部材に押し当てられることで、前記第1の回転トルクの反作用トルクとして生じる第2の回転トルクと、前記ラッチ部材が前記回転子を介して前記操作部材に与える第3の回転トルクとが釣り合ったラッチ状態を取りうることを特徴とするスクリューレス端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線の結線時にバネ端子のラッチ機能を有するスクリューレス端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板への電気配線の接続にスクリューレス端子台が使用されており、スクリューレス端子台では、被覆をむいた電気配線の結線・解除作業がワンタッチで行える。スクリューレス端子台は、挿入される電気配線を二つの接点端子で狭持するようになっているが、電気配線の狭持にバネ力を利用することで(接点端子の一方をバネ端子とすることで)電気配線の結線にねじが不要となっている。
【0003】
スクリューレス端子台に電気配線を結線するときには、接点端子の一方を形成するバネ端子を開き、接点端子間に電気配線を挿入するための隙間を形成する。この隙間に電気配線を挿入した後、バネ端子を閉じて電気配線を挟持する。
【0004】
特許文献1には、上記の結線動作を容易に行えるラッチ機能付きのスクリューレス端子台が開示されている。特許文献1のスクリューレス端子台では、ユーザがプッシャーを押すことでバネ端子が開くが、ユーザがプッシャーから手を離してもラッチ機能によってバネ端子の開いた状態が維持される。そしてバネ端子の開いた状態で電気配線を端子台に挿入し、挿入された電気配線が端子台内部の解放要素を押し込むと、ラッチが解除され、バネ端子が閉じて電気配線を接点端子間に挟持できる(結線が行える)ようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたスクリューレス端子台では、ラッチ解除のために電気配線が解放要素を押し込む必要があるが、この押し込み動作はバネ端子を形成する板バネのバネ力に抗して行われる。このため、解放要素の押し込みには比較的大きな力が必要となり、端子台に結線される電気配線として細い配線を使用すると、電気配線に座屈が生じて解放要素を押し込めず、ラッチ解除不能となることが起こりうる。すなわち、特許文献1のスクリューレス端子台では、ある程度の太さがある(座屈が生じにくい)電気配線の使用が必要であり、細い電気配線の使用が困難といった問題がある。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、端子台への電気配線の挿入によるラッチ解除を小さな力で行えるスクリューレス端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様であるスクリューレス端子台は、バネ端子を含む接点端子間に電気配線を挟持して結線されるスクリューレス端子台であって、前記バネ端子を有する板バネ部材と、ユーザの操作を受けてスライド移動可能な摺動部材と、前記摺動部材に対して回転自在に取り付けられ、前記摺動部材のスライド移動に伴って前記摺動部材に対して回動する回転子と、前記板バネ部材によるバネ力を受けると共に、前記回転子の回動位置に応じての回動移動が可能である回動部材と、前記摺動部材のスライド移動の過程で、変形する前記板バネ部材の当接によって回動移動し、当該回動移
動の最後に前記摺動部材と係合するラッチ部材と、前記電気配線の結線時に、挿入される前記電気配線によって回動し、その回動を前記ラッチ部材に伝えて、前記ラッチ部材と前記回転子との係合を解除させる解放部材とを備え、前記接点端子間が離間した状態で、前記板バネ部材が、前記回動部材および前記回転子を介して、前記摺動部材を前記ラッチ部材と係合する方向に付勢すると共に、前記ラッチ部材と係合した前記ラッチ部材が前記摺動部材の付勢方向へのスライド方向を阻害することによってラッチ状態を取りうることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、ユーザが摺動部材をスライド操作することで、回転子および回動部材を介して板バネ部材に変形を与えて接点端子間を離間させることができ、この接点端子間の隙間に電気配線を挿入する結線作業が行える。結線作業を行う間は、板バネ部材が摺動部材をラッチ部材と係合する方向に付勢する力と、摺動部材とラッチ部材との係合によって生じる反力とを釣り合わせたラッチ状態とすることで、結線作業を行いやすくなる。このラッチ状態は、結線作業における電気配線の挿入によって、解放部材を介してラッチ部材を回動させ、ラッチ部材と摺動部材との係合を解除することでラッチ解除が行える。その結果、ラッチ解除時の動作、すなわち電気配線による解放部材の回動動作を、より小さな力で行うことが可能となり、スクリューレス端子台において電線径の細い電気配線の使用が可能となる。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の第2の形態に係るスクリューレス端子台は、バネ端子を含む接点端子間に電気配線を挟持して結線されるスクリューレス端子台であって、前記バネ端子を有する板バネ部材と、ユーザの操作を受けて回動移動する際に前記板バネ部材に変形を与え、前記接点端子間を離間させる操作部材と、前記操作部材の回動移動の過程で、前記操作部材の当接によってスライド移動する摺動部材と、前記摺動部材に対して回転自在に取り付けられ、前記摺動部材のスライド移動に伴って前記摺動部材に対して回動する回転子と、前記操作部材の回動移動の過程で、変形する前記板バネ部材の当接によって回動移動し、当該回動移動の最後に前記回転子と接触するラッチ部材と、前記電気配線の結線時に、挿入される前記電気配線によって回動し、その回動を前記ラッチ部材に伝えて、前記ラッチ部材と前記回転子との接触を解除させる解放部材とを備え、前記接点端子間が離間した状態で、前記板バネ部材が前記操作部材に与える第1の回転トルクと、前記摺動部材が前記操作部材に押し当てられることで、前記第1の回転トルクの反作用トルクとして生じる第2の回転トルクと、前記ラッチ部材が前記回転子を介して前記操作部材に与える第3の回転トルクとが釣り合ったラッチ状態を取りうることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、ユーザが操作部材を操作することで、板バネ部材に変形を与えて接点端子間を離間させることで、この接点端子間の隙間に電気配線を挿入する結線作業が行える。結線作業を行う間は、操作部材において第1ないし第3の回転トルクを釣り合わせたラッチ状態とすることで、結線作業を行いやすくなる。このラッチ状態は、第1の回転トルクに対して、2つに分解された第2および第3の回転トルクを作用させて維持されるものであり、そのラッチ解除は、結線作業における電気配線の挿入によって解放部材を回動させ、ラッチ部材と回転子との接触を解除する(第3の回転トルクの作用を無くす)ことでラッチ解除が行える。その結果、ラッチ解除時の動作、すなわち電気配線による解放部材の回動動作を、より小さな力で行うことが可能となり、スクリューレス端子台において電線径の細い電気配線の使用が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクリューレス端子台は、ラッチ解除動作が板バネ部材のバネ力に抗して行われる必要がなくなり、ラッチ解除時の動作をより小さな力で行うことできるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態を示すものであり、実施の形態1に係るスクリューレス端子台の斜視図である。
【
図2】
図1のスクリューレス端子台の平面図である。
【
図5】摺動部材およびテール部材の拡大斜視図である。
【
図7】ラッチ部材および解放部材の拡大斜視図であり、(a)はラッチ部材単体、(b)は解放部材単体、(c)はラッチ部材および解放部材の組み合わせ構造を示している。
【
図8】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図9】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図10】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図11】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図12】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図13】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図14】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図15】ラッチ状態のスクリューレス端子台において作用する力を示す説明図である。
【
図16】本発明の他の実施形態を示すものであり、実施の形態2に係るスクリューレス端子台の斜視図である。
【
図21】摺動部材およびテール部材の拡大斜視図である。
【
図22】ラッチ部材および解放部材の拡大斜視図であり、(a)はラッチ部材単体、(b)は解放部材単体、(c)はラッチ部材および解放部材の組み合わせ構造を示している。
【
図23】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図24】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図25】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図26】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図27】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図28】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図29】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図30】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図31】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図32】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図33】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図34】スクリューレス端子台に対する電気配線の結線動作および結線された電気配線の抜き取り動作の手順を示す説明図である。
【
図35】ラッチ状態のスクリューレス端子台において、板バネ部材、操作部材、摺動部材、テール部材およびラッチ部材間の力のバランスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施の形態1〕
以下、本開示の一側面に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態1に係るラッチ機能付きのスクリューレス端子台10の斜視図である。
図2は、スクリューレス端子台10の平面図である。尚、
図1および
図2では、スクリューレス端子台10の筐体100の一部を省略し、スクリューレス端子台10の内部構成が視認できるように図示している。また、スクリューレス端子台10は、ピンコンタクトを有するプラグ部材(図示せず)と共にコネクタを構成するコネクタ式スクリューレス端子台として例示されている。以降の説明では、便宜上、
図2における上側、下側、左側および右側を、それぞれ上、下、左、右として説明する。尚、ここでの上下左右の方向は、説明の便宜上の呼称であり、スクリューレス端子台10の使用時の向きを限定するものではない。
【0015】
スクリューレス端子台10は、その一端にソケットコンタクト11を有しており、他端に結線部12を有している。ソケットコンタクト11はプラグ部材のピンコンタクトと接続される。結線部12には後述する電気配線20(
図12~
図14参照)が結線される。筐体100のソケットコンタクト11側の端部には、プラグ部材を差し込むための第1開口101が設けられている。また、筐体100の結線部12側の端部には、電気配線20を差し込むための第2開口102が設けられている。
【0016】
スクリューレス端子台10は、
図1および
図2に示すように、筐体100、接点部材110、板バネ部材120、摺動部材130、テール部材(回転子)140、回動部材150、ラッチ部材160および解放部材170を具備して構成されている。
図3は、接点部材110の拡大斜視図である。
図4は、板バネ部材120の拡大斜視図である。
図5は、摺動部材130およびテール部材140の拡大斜視図である。
図6は、回動部材150の拡大斜視図である。
図7は、ラッチ部材160および解放部材170の拡大斜視図であり、(a)はラッチ部材160単体、(b)は解放部材170単体、(c)はラッチ部材160および解放部材170の組み合わせ構造を示している。
【0017】
接点部材110は、金属板を折り曲げて立体的に形成された部材であり、
図3に示すように、その一端にソケットコンタクト11における第1接点端子111および第2接点端子112を有しており、他端に結線部12における第3接点端子113を有している。また、接点部材110には、後述する摺動部材130のスライド移動をガイドするための摺動台部114も設けられている。尚、接点部材110には、バネ性を有すると共に、高い電気伝導性を有するバネ用銅材(例えば、リン青銅)を使用することが好ましい。
【0018】
板バネ部材120は、バネ性の強い材料(例えばSUS)にて形成されており、
図4に示すように、その一部に略U字形状のバネ部121を有している。バネ部121を挟んでの一方側は、板バネ部材120を接点部材110に取り付けるための固定部122となっており、他方側は第4接点端子(バネ端子)123となっている。また、板バネ部材120には、後述する回動部材150の回動動作との干渉を避けるための長孔部124も設けられている。
【0019】
ソケットコンタクト11では、接点部材110の第1接点端子111および第2接点端子112が対向配置されている。コネクタの接続を行う際(すなわち、プラグ部材をソケット部材であるスクリューレス端子台10に接続する際)、第1接点端子111と第2接点端子112との間でプラグ部材のピンコンタクトが狭持される。
【0020】
結線部12では、接点部材110の第3接点端子113と板バネ部材120の第4接点端子123とが対向配置される。また、第4接点端子123は、バネ部121の弾性力により第3接点端子113に圧接するように付勢される。すなわち、結線部12では、筐体100の第2開口102から挿入される電気配線20を、第3接点端子113および第4接点端子123の接点端子間で狭持することで結線できるようになっている。
【0021】
摺動部材130は、スクリューレス端子台10に電気配線20を結線するとき(あるいは結線された電気配線20を引き抜くとき)に、ユーザによってスライド操作される部材である。摺動部材130は、
図5に示すように、スライド移動方向(
図2および
図5における矢印A方向)を長手方向とする略平板状の本体部131と、本体部131の一方の主面(下面)から突出して設けられる突起部132とを有している。
【0022】
本体部131は長手方向の一端を操作部131aとしており、操作部131aは筐体100に設けられた第3開口103(
図1,2参照)より筐体100の外部に露出している。ユーザは、操作部131aを持って、摺動部材130をスライド移動させる操作を行うことができる。突起部132は、本体部131における下面において、長手方向の中央付近から下方に突出し、さらに左側(摺動部材130のスライド移動方向の押込み側)に延伸した略L字形状を有している。
【0023】
摺動部材130の本体部131と突起部132との間には、接点部材110の摺動台部114と板バネ部材120の固定部122とが挟み込まれ、これによって摺動部材130のスライド移動がガイドされるようになっている。
【0024】
テール部材140は、
図5に示すように、摺動部材130の左端部において、摺動部材130に対して回転自在に取り付けられる。このとき、テール部材140の回転軸は、テール部材140の長手軸方向の一端側に設けられる。テール部材140は、摺動台部114の左端部と接触しながら回動することにより摺動部材130のスライド移動に作用を及ぼす、あるいは、摺動部材130のスライド移動による作用を受けて回動移動する。テール部材140の作用については後述する。
【0025】
回動部材150は、
図6に示すように、回転軸穴151、バネ当接部152、および爪部153を有している。回動部材150は、筐体100に設けられた支持軸104(
図1,2参照)を回転軸穴151に通すことで、支持軸104周りの回動動作が可能となっている。
【0026】
また、回動部材150は、バネ当接部152を板バネ部材120に当接させることで、板バネ部材120からバネ力(回転付勢力)を受けたり、回動部材150自身の回動より
板バネ部材120に変形を与えたりすることができる。爪部153は、テール部材140に当接することでテール部材140から回動力を受けたり、テール部材140に係合することでスクリューレス端子台10を後述するラッチ状態とする。
【0027】
ラッチ部材160は、
図7(a)に示すように、スライド移動規制部161、第1軸部162および第2軸部163を有している。スライド移動規制部161は、後述するラッチ状態時に摺動部材130の突起部132と係合し、摺動部材130のスライド移動を規制する。第1軸部162および第2軸部163は同じ回転軸上に並んで形成された円筒形状の回転軸部であるが、第1軸部162は円筒側面が全周において存在するのに対し、第2軸部163は円筒側面の一部が切欠きされている。
【0028】
解放部材170は、
図7(b)に示すように、配線当接部171、第3軸部172および第4軸部173を有している。配線当接部171は、スクリューレス端子台10に電気配線20を結線するとき、挿入される電気配線20に当接して押し込まれ、解放部材170に回動を生じさせる。第3軸部172および第4軸部173は同じ回転軸上に並んで形成された円柱形状の回転軸部であるが、第3軸部172が円柱部分のみで存在するのに対し、第4軸部173は円柱部分の周囲に一部が切欠きされた円筒側面の一部が存在する。
【0029】
ラッチ部材160および解放部材170は、
図7(c)に示すように、互いに組み合わされて使用される。具体的には、ラッチ部材160の第1軸部162の軸穴に解放部材170の第3軸部172を差し込むようにしてラッチ部材160と解放部材170とが結合される。このとき、ラッチ部材160の第2軸部163と解放部材170の第4軸部173とが互いに対向するが、第2軸部163の円筒側面の端面と第4軸部173の円筒側面の端面との間には隙間(遊び)が存在しており、ラッチ部材160および解放部材170は、所定の角度範囲内での相対的な回動が可能となっている。また、ラッチ部材160は、第1軸部162を接点部材110に設けられた軸穴115(
図3参照)に嵌合させることで、接点部材110に対して回動可能に保持される。
【0030】
続いて、スクリューレス端子台10に対する電気配線20の結線動作および結線された電気配線20の抜き取り動作の手順を
図8~
図14を参照して説明する。
【0031】
図8は、スクリューレス端子台10において、電気配線20の結線前の初期状態(デフォルト状態)を示している。スクリューレス端子台10の初期状態では、板バネ部材120のバネ力により、第4接点端子123が第3接点端子113に押し付けられている。また、摺動部材130、テール部材140および回動部材150のそれぞれはデフォルト位置にある。
【0032】
回動部材150のデフォルト位置は、バネ当接部152が筐体100の内壁面と板バネ部材120とに挟まれた位置に存在することにより決定する(遊びの範囲内での僅かな回動は可能)。摺動部材130およびテール部材140のデフォルト位置は、テール部材140の長手軸が回動部材150の長手軸に対してほぼ直交し、これによって摺動部材130が左側に移動した位置となる。また、摺動部材130およびテール部材140のデフォルト位置は、テール部材140が回動部材150の爪部153と接点部材110の摺動台部114とに挟まれた位置に存在することにより決定する(遊びの範囲内での僅かな移動は可能)。尚、スクリューレス端子台10の初期状態において、ラッチ部材160および解放部材170の位置は特に決定されるものではない。但し、ラッチ部材160および解放部材170は、他の部材との干渉によってその移動範囲はさほど大きくはならず、概ね
図8に示す位置となる。
【0033】
図8の初期状態からユーザによって摺動部材130が引き抜き方向(図中の矢印A1方
向)にスライド操作(引き抜き操作)されると、これに伴って、テール部材140が摺動台部114との当接による作用を受け、時計回り方向(テール部材140の長手軸が回動部材150の長手軸に対して平行に近づく方向)に回動する(
図9参照)。回動するテール部材140は、回動部材150の爪部153に当接し、回動部材150を反時計回り方向に回動させる。回動する回動部材150は、バネ当接部152が板バネ部材120の第4接点端子123を持ち上げ、第4接点端子123を第3接点端子113から離間させる。尚、回動部材150の爪部153は、板バネ部材120の長孔部124内で移動するため、板バネ部材120が爪部153の移動に干渉することはない。
【0034】
図9の状態から摺動部材130がさらに引き抜き操作されると、持ち上げられた第4接点端子123がラッチ部材160に当接し、ラッチ部材160を時計回り方向に回動させる(摺動部材130に向けて持ち上げる)(
図10参照)。回動したラッチ部材160は、スライド移動規制部161が摺動部材130の突起部132の下面に当接した時点で回動を一旦停止するが、その後も第4接点端子123はラッチ部材160を摺動部材130に対して押し続けるため、板バネ部材120はラッチ部材160から反力を受けることになる。
【0035】
図11は、摺動部材130が引き抜き方向の限界位置まで引き出された状態を示している。このとき、摺動部材130の限界位置までの移動により、突起部132の先端部(左端部)が、ラッチ部材160のスライド移動規制部161よりも右側に移動する。その結果、反力を受けていた板バネ部材120がスプリングバックしてラッチ部材160を素早く持ち上げ、スライド移動規制部161が突起部132の先端部よりも左側に入り込む。これにより、ラッチ部材160のスライド移動規制部161が、摺動部材130の突起部132に係合する。すなわち、スライド移動規制部161が、摺動部材130の戻り(引き込み方向へのスライド移動)を規制するように突起部132の先端に対して当接する。これにより、ラッチ部材160のスライド移動規制部161が、摺動部材130の突起部132に係合可能となる。このとき、板バネ部材120は、スプリングバックによって保有していた弾性エネルギが大きく減少する。その結果、板バネ部材120は、ラッチ部材160を持ち上げる力を殆ど作用させなくなる。
【0036】
図11の状態から摺動部材130の操作を止めると(ユーザが摺動部材130から手を離すと)、
図15に示す力F1ないしF4が以下のように作用することで、スクリューレス端子台10の結線部12が、第4接点端子123を第3接点端子113から離間させた状態でラッチされる(ラッチ状態となる)。
【0037】
(1) 板バネ部材120の復元力により、板バネ部材120が回動部材150のバネ当接
部152を押す力F1が働く。力F1は、回動部材150をデフォルト位置に戻そうとする回動力を与える。
【0038】
(2) 回動部材150の回動力により、爪部153がテール部材140を押す力F2が働
く。力F2は、テール部材140を反時計回り方向に回そうとする回動力を与える。
【0039】
(3) テール部材140の回動力により、摺動部材130を左側へ引き込む力F3が働く
。
【0040】
(4) スライド移動規制部161が突起部132に係合していることにより、摺動部材1
30の引き込みが規制され、力F3に対して反力F4が生じる。
【0041】
(5) 力F3と反力F4との釣り合いにより、回動部材150、テール部材140および
摺動部材130の移動が制限され、結線部12がラッチ状態となる。
【0042】
尚、
図11および
図12では、板バネ部材120、回動部材150、テール部材140および摺動部材130に対してほとんど変位が無いように記載されている。しかしながら実際には、摺動部材130が引き抜き方向の限界位置にある状態(
図11の状態)からラッチ状態(
図12の状態)までにはわずかな遊びがあり、この遊びによって板バネ部材120のスプリングバックが発生する。また、板バネ部材120のスプリングバックに伴って、回動部材150、テール部材140および摺動部材130も
図11の状態から僅かに変位してラッチ状態となる。
【0043】
すなわち、
図11の状態においてユーザが摺動部材130から手を離して摺動部材130の操作を止めると、板バネ部材120のスプリングバックが生じて、板バネ部材120の弾性エネルギが最小となるようにつり合いが取れる形となり、ラッチ状態となる。このラッチ状態において、板バネ部材120はラッチ部材160に対して当接していても僅かに離間していてもよいが、何れであっても板バネ部材120はラッチ部材160に対して殆ど力を作用させず、ラッチ部材160の回動を規制する作用を有しない。ラッチ状態においては、スライド移動規制部161と突起部132との接触圧によって摩擦力が発生し、この摩擦力によってラッチ部材160の回動が規制される。
【0044】
ラッチ状態のスクリューレス端子台10においては、
図12に示すように、結線部12への電気配線20の挿入が可能となる。尚、電気配線20は、挿入側先端の被覆を剥き、内部の電線を露出させた状態でスクリューレス端子台10へ挿入される。
【0045】
図13に示すように、挿入された電気配線20の先端が解放部材170の配線当接部171に当接した後、電気配線20をさらに押し込むと解放部材170がこれによって回動する。解放部材170の回動は、解放部材170の第4軸部173からラッチ部材160の第2軸部163を介してラッチ部材160に伝わり、ラッチ部材160を反時計回り方向に回動させる。このとき、板バネ部材120はラッチ部材160に対して力を作用させていないため、ラッチ部材160の回動は容易に生じる。ラッチ部材160の回動により、スライド移動規制部161は摺動部材130の突起部132との係合状態を解除するように移動する。
【0046】
スライド移動規制部161と突起部132との係合が解除されると、
図15に示す反力F4が作用しなくなるため、力F3と反力F4との釣り合いが崩れて、スクリューレス端子台10のラッチ状態が解除される。ラッチ状態が解除されると、板バネ部材120の復元力により、摺動部材130、テール部材140および回動部材150の全てがデフォルト位置まで一挙に移動する。そして、板バネ部材120は、第4接点端子123を第3接点端子113側に付勢し、第3接点端子113と第4接点端子123との間で電気配線20が挟持される。すなわち、スクリューレス端子台10の結線部12に対して電気配線20が結線される。
【0047】
結線された電気配線20をスクリューレス端子台10から引き抜く際には、ユーザが摺動部材130を引き抜き操作し、スクリューレス端子台10を再びラッチ状態とすればよい(
図14参照)。
【0048】
上述の動作から明らかなように、スクリューレス端子台10におけるラッチ解除は、挿入される電気配線20の先端が配線当接部171を押し込み、解放部材170に回動を生じさせることによって行われる。しかしながら、このときの電気配線20の先端は、被覆が?かれて電線のみとなっている。このため、配線当接部171の押し込みに大きな力が必要であれば、電気配線20の電線に座屈が生じてラッチ解除不能となることが起こりうる。スクリューレス端子台10は、ラッチ解除時に、より小さな力で配線当接部171を
押し込めることが特徴となっている。これにより、電線径の細い電気配線20の使用も可能となる。
【0049】
上述したように、スクリューレス端子台10におけるラッチ状態は、
図15に示す反力F4が摺動部材130の移動を規制することで成立する。このラッチ状態はラッチ部材160を反時計回りに回動させ、反力F4の作用を無くすことで解除される。ラッチ状態では板バネ部材120がラッチ部材160に対して力を作用させていないため、ラッチ解除のためのテール部材140の回動に対する抵抗となるのは、スライド移動規制部161と突起部132との接触圧によって生じる摩擦力のみである。すなわち、本実施の形態1に係るスクリューレス端子台10では、ラッチ解除動作が板バネ部材120のバネ力に直接的に抗して行われる必要がなくなり、スライド移動規制部161と突起部132との間に生じる摩擦力のみに抗して行われればよい。
【0050】
言いかえれば、スクリューレス端子台10におけるラッチ解除は、ラッチ部材160におけるスライド移動規制部161との当接部分を、力F3の作用方向と直交する方向に対して僅かに移動させる(ずらす)だけでよく、力F3の作用方向と平行な方向にラッチ解除の力を加える必要がない。このときのラッチ部材160の移動は、スライド移動規制部161と突起部132との間に生じる摩擦力に抗して行われるが、この摩擦力は、板バネ部材120のバネ力に比較して十分に小さな力とすることが容易である。その結果、ラッチ解除時の動作、すなわち電気配線20による配線当接部171の押し込み動作を、より小さな力で行うことが可能となり、スクリューレス端子台10において電線径の細い電気配線20の使用が可能となる。
【0051】
〔実施の形態2〕
以下、本開示の一側面に係る他の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図16は、本実施の形態2に係るラッチ機能付きのスクリューレス端子台30の斜視図である。
図17は、スクリューレス端子台30の平面図である。尚、
図16および
図17では、スクリューレス端子台30の筐体300の一部を省略し、スクリューレス端子台30の内部構成が視認できるように図示している。また、スクリューレス端子台30は、ピンコンタクトを有するプラグ部材(図示せず)と共にコネクタを構成するコネクタ式スクリューレス端子台として例示されている。
【0052】
スクリューレス端子台30は、その一端にソケットコンタクト31を有しており、他端に結線部32を有している。ソケットコンタクト31はプラグ部材のピンコンタクトと接続される。結線部32には後述する電気配線20(
図31~
図34参照)が結線される。筐体300のソケットコンタクト31側端部には、プラグ部材を差し込むための第1開口301が設けられている。また、筐体300の結線部32側端部は、電気配線20を差し込んだり、後述する操作部材330の操作スペースを与えたりするための第2開口302とされている。
【0053】
スクリューレス端子台30は、
図16および
図17に示すように、筐体300、接点部材310、板バネ部材320、操作部材330、摺動部材340、テール部材(回転子)350、ラッチ部材360および解放部材370を具備して構成されている。
図18は、接点部材310の拡大斜視図である。
図19は、板バネ部材320の拡大斜視図である。
図20は、操作部材330の拡大斜視図である。
図21は、摺動部材340およびテール部350の拡大斜視図である。
図22は、ラッチ部材360および解放部材370の拡大斜視図であり、(a)はラッチ部材360単体、(b)は解放部材370単体、(c)はラッチ部材360および解放部材370の組み合わせ構造を示している。
【0054】
接点部材310は、金属板を折り曲げて立体的に形成された部材であり、
図18に示す
ように、その一端にソケットコンタクト31における第1接点端子311および第2接点端子312を有しており、他端に結線部32における第3接点端子313を有している。また、接点部材310には、後述する摺動部材340のスライド移動をガイドするための摺動台部314も設けられている。尚、接点部材310には、バネ性を有すると共に、高い電気伝導性を有するバネ用銅材(例えば、リン青銅)を使用することが好ましい。
【0055】
板バネ部材320は、バネ性の強い材料(例えばSUS)にて形成されており、
図19に示すように、その一端にソケットコンタクト31における第1バネ部321を有しており、他端に第2バネ部322を有している。第2バネ部322の先端は第4接点端子(バネ端子)323となっている。また、板バネ部材320には、後述する操作部材330の回動動作との干渉を避けるための長孔部324も設けられている。
【0056】
ソケットコンタクト31では、接点部材310の第1接点端子311および第2接点端子312が対向配置されている。コネクタの接続を行う際(すなわち、プラグ部材をソケット部材であるスクリューレス端子台30に接続する際)、第1接点端子311と第2接点端子312との間でプラグ部材のピンコンタクトが狭持される。
【0057】
また、板バネ部材320は、接点部材310の第2接点端子312に対して、第1接点端子311と反対側から第1バネ部321を接触させるように配置されている。すなわち、第1バネ部321は、第1接点端子311に向けて第2接点端子312を付勢する。これにより、第1接点端子311および第2接点端子312がピンコンタクトを挟持するとき、ピンコンタクトと接点部材310との間に十分な接触圧力が生じて、ピンコンタクトと接点部材310との間の適切な電気接続が得られる。
【0058】
結線部32では、接点部材310の第3接点端子313と板バネ部材320の第4接点端子323とが対向配置される。また、第4接点端子323は、第2バネ部322の弾性力により第3接点端子313に圧接するように付勢される。すなわち、結線部32では、筐体300の第2開口302から挿入される電気配線20を、第3接点端子313および第4接点端子323の接点端子間で狭持することで結線できるようになっている。
【0059】
操作部材330は、スクリューレス端子台30に電気配線20を結線するとき(あるいは結線された電気配線20を引き抜くとき)に、ユーザによって操作される部材である。操作部材330は、
図20に示すように、回転軸穴331、操作レバー部332、バネ当接部333、第1爪部334および第2爪部335を有している。操作部材330は、筐体300に設けられた支持軸303(
図27参照)を回転軸穴331に通すことで、支持軸303周りの回動動作が可能となっている。また、操作部材330の操作レバー部332は、第2開口302から筐体300の外部に突出しており、ユーザは操作レバー部332を介して操作部材330の回動動作が行えるようになっている。
【0060】
また、操作部材330において、バネ当接部333は、操作部材330の回動動作の過程で板バネ部材320に当接し、板バネ部材320に変形を与えることができる。第1爪部334は、操作部材330の回動動作の過程で摺動部材340に当接することで、摺動部材340にスライド移動を行わせる。第2爪部335は、テール部350に係合することで、スクリューレス端子台30を後述するラッチ状態とする。
【0061】
摺動部材340およびテール部350は、
図21に示すように、テール部350が摺動部材340に対して回転自在に取り付けられる。摺動部材340は、スライド移動方向(
図17および
図21における矢印A方向)における一方の端面(テール部350が取り付けられている側の端面)が、スライド移動方向に対して傾斜する傾斜面341とされている。また、摺動部材340は、スライド移動方向における他方の端部(テール部350が
取り付けられている側と反対側の端面)に移動規制部342が設けられている。移動規制部342は、摺動台部314との接面側に凸部として設けられており、摺動台部314の端部に係合することで、摺動部材340のテール部350側への移動を規制する。尚、
図21では、テール部350の回転軸方向の両側に傾斜面341が設けられているが、少なくとも操作部材330の回動動作の過程で第1爪部334と当接する面が傾斜面341とされていればよい。
【0062】
ラッチ部材360は、
図22(a)に示すように、テール回動規制部361、第1軸部362および第2軸部363を有している。テール回動規制部361は、後述するラッチ状態時にテール部350に当接し、テール部350の回動を規制する。第1軸部362および第2軸部363は同じ回転軸上に並んで形成された円筒形状の回転軸部であるが、第1軸部362は円筒側面が全周において存在するのに対し、第2軸部363は円筒側面の一部が切欠きされている。
【0063】
解放部材370は、
図22(b)に示すように、配線当接部371、第3軸部372および第4軸部373を有している。配線当接部371は、スクリューレス端子台30に電気配線20を結線するとき、挿入される電気配線20に当接して押し込まれ、解放部材370に回動を生じさせる。第3軸部372および第4軸部373は同じ回転軸上に並んで形成された円柱形状の回転軸部であるが、第3軸部372が円柱部分のみで存在するのに対し、第4軸部373は円柱部分の周囲に一部が切欠きされた円筒側面の一部が存在する。
【0064】
ラッチ部材360および解放部材370は、
図22(c)に示すように、互いに組み合わされて使用される。具体的には、ラッチ部材360の第1軸部362の軸穴に解放部材370の第3軸部372を差し込むようにしてラッチ部材360と解放部材370とが結合される。このとき、ラッチ部材360の第2軸部363と解放部材370の第4軸部373とが互いに対向するが、第2軸部363の円筒側面の端面と第4軸部373の円筒側面の端面との間には隙間(遊び)が存在しており、ラッチ部材360および解放部材370は、所定の角度範囲内での相対的な回動が可能となっている。また、ラッチ部材360は、第1軸部362を接点部材310に設けられた軸穴315(
図18参照)に嵌合させることで、接点部材310に対して回動可能に保持される。
【0065】
続いて、スクリューレス端子台30に対する電気配線20の結線動作および結線された電気配線20の抜き取り動作の手順を
図23~
図34を参照して説明する。尚、
図23~
図34では、筐体300の図示は省略している。
【0066】
図23は、スクリューレス端子台30において、電気配線20の結線前の初期状態を示している。この初期状態では、板バネ部材320の第2バネ部322のバネ力により、第4接点端子323が第3接点端子313に押し付けられている。摺動部材340は、テール部350側(図中、左側)の移動限界まで移動しており、それ以上の移動は移動規制部342が摺動台部314の端部(図中、右側端部)に係合することで規制されている。また、テール部350は、テール部350の長手軸が摺動部材340の長手軸(摺動部材340のスライド移動方向の軸)に対して90°の角度をなすように、摺動部材340に対して摺動台部314側(図中、下側)に回動している。これにより、テール部350は、摺動台部314の一方の端面(図中、左側端面)に接触した状態となっている。
【0067】
尚、初期状態においては、付勢部材(圧縮バネなど:図示せず)によって摺動部材340がテール部350側へ付勢されていることが好ましく、また、他の付勢部材(捩じりバネなど:図示せず)によってテール部350が下方向に回動付勢されていることが好ましい。
【0068】
図23の初期状態からユーザによって操作部材330が矢印B1方向に回動操作されると、操作部材330の回動の途中でバネ当接部333が板バネ部材320に当接する(
図24参照)。この状態から、さらに操作部材330が回動操作されると、バネ当接部333に押されて板バネ部材320に変形が生じ、第4接点端子323が第3接点端子313から離れていく(
図25参照)。また、
図25は、操作部材330の回動の途中で、第1爪部334が摺動部材340の傾斜面341に接触した状態を示している。尚、操作部材330の回動の過程で、第1爪部334は板バネ部材320の横を抜けるように移動し、第2爪部335は板バネ部材320の長孔部324内で移動する。このため、板バネ部材320が第1爪部334や第2爪部335の移動に干渉することはない。
【0069】
図25の状態から操作部材330がさらに回動操作されると、第1爪部334が傾斜面341を押すことで、摺動部材340が摺動台部314に沿って矢印A1方向にスライド移動を開始する(
図26参照)。また、摺動部材340のスライド移動に伴い、テール部350が摺動台部314の端部から力を受け、回動移動を開始する。このときのテール部350の回動は、テール部350の長手軸が摺動部材340の長手軸に対して平行に近づく方向(図中、時計回り方向)の回動となる。また、
図26は、板バネ部材320の変形の途中で、板バネ部材320の先端(第4接点端子323)がラッチ部材360に接触した状態を示している。
【0070】
図26の状態から操作部材330がさらに回動操作されると、摺動部材340のスライド移動およびテール部350の回動移動が進行するともに、板バネ部材320に押されてラッチ部材360の回動移動が同時に発生し、
図27の状態に至る。
図27の状態では、操作部材330の第1爪部334が傾斜面341から外れ、この時点で摺動部材340のスライド移動およびテール部350の回動移動が一旦停止する。
【0071】
図27の状態から操作部材330がさらに回動操作されると、ラッチ部材360の回動移動のみが進行し、ラッチ部材360のテール回動規制部361がテール部350に接触する(
図28参照)。また、ラッチ部材360がテール部350に接触した後も、操作部材330がさらに回動操作され、ラッチ部材360がテール部350をさらに押し上げるようにしてもよい(
図29参照)。尚、ここでは、
図29の状態が、ユーザによる操作部材330の回動操作の終点であるとする。
【0072】
図29の状態から操作部材330の操作を止めると(ユーザが操作部材330から手を離すと)、板バネ部材320のバネ力(復元力)によって、操作部材330が矢印B2方向に僅かに回動し、操作部材330の第2爪部335がテール部350に接触する(
図30参照)。また、
図30の状態では、ラッチ部材360のテール回動規制部361がテール部350に接触していることで、テール部350の回動も規制されている。
【0073】
図30の状態では、操作部材330、テール部350およびラッチ部材360の全ての回動移動が規制されたまま、第4接点端子323が第3接点端子313から離れた状態で保持されるラッチ状態となる。そして、このラッチ状態において、スクリューレス端子台30への電気配線20の挿入が可能となる(
図31参照)。尚、電気配線20は、挿入側先端の被覆を剥き、内部の電線を露出させた状態でスクリューレス端子台30へ挿入される。
【0074】
尚、
図30のラッチ状態では、テール部350との接触によってラッチ部材360が回動しないように、ラッチ部材360の回動が規制される必要がある。このときのラッチ部材360の回動規制の具体的方法としては、例えば、テール部350とテール回動規制部361との接触箇所において、テール部350側に窪みを入れることが考えられる。これ
により、ラッチ状態では、テール部350側に窪みにテール回動規制部361に挟まって保持され、ラッチ部材360の回動が規制される。
【0075】
上述したラッチ部材360の回動規制方法は、弱い力でラッチ部材360の回動を規制するものとなる。但し、ラッチ状態では、摺動部材340の水平方向の移動は、第1爪部334との接触によって規制されており、このとき、第1爪部334と第2爪部335との位置関係の調整によって、ラッチ部材360にはあまり力が掛からないようにすることができる。このため、ラッチ状態において、ラッチ部材360は弱い力で回動規制することができる。
【0076】
スクリューレス端子台30へ電気配線20を挿入するとき、電気配線20の先端が解放部材370の配線当接部371に当接し、電気配線20をさらに押し込むと解放部材370がこれによって回動する(
図32参照)。解放部材370の回動は、解放部材370の第4軸部373からラッチ部材360の第2軸部363を介してラッチ部材360に伝わり、ラッチ部材360を回動させる。このときのラッチ部材360を回動は、テール回動規制部361をテール部350から離間させる方向となる。
【0077】
こうして、テール回動規制部361がテール部350から離間すると、スクリューレス端子台30のラッチ状態が解除され、板バネ部材320のバネ力(復元力)により、第3接点端子313と第4接点端子323との間で電気配線20(の電線部分)が挟持される(
図33参照)。すなわち、スクリューレス端子台30に対して電気配線20が結線される。結線された電気配線20をスクリューレス端子台30から引き抜く際には、ユーザが操作部材330を操作し、スクリューレス端子台30を再びラッチ状態とすればよい(
図34参照)。
【0078】
上述の動作から明らかなように、スクリューレス端子台30におけるラッチ解除は、挿入される電気配線20の先端が配線当接部371を押し込み、解放部材370に回動を生じさせることによって行われる。しかしながら、このときの電気配線20の先端は、被覆が?かれて電線のみとなっている。このため、配線当接部371の押し込みに大きな力が必要であれば、電気配線20の電線に座屈が生じてラッチ解除不能となることが起こりうる。本実施の形態に係るスクリューレス端子台30は、ラッチ解除時に、より小さな力で配線当接部371を押し込めることが特徴となっている。これにより、電線径の細い電気配線20の使用も可能となる。
【0079】
以下、スクリューレス端子台30のラッチ解除作用について説明する。まずは、ラッチ状態において、板バネ部材320、操作部材330、摺動部材340、テール部350およびラッチ部材360間の力のバランスを、
図35を参照して説明する。
【0080】
ラッチ状態において、操作部材330は、バネ当接部333を介して板バネ部材320から回動力F5を受けており、この回動力F5によって操作部材330には回転トルクT1(第1の回転トルク)が生じるものとする。また、
図35に示すように、ラッチ状態では摺動部材340の先端が操作部材330の第1爪部334に押し当てられており、これによって操作部材330は摺動部材340から押圧力F6を受けることになる。押圧力F6は操作部材330の回動に対する抵抗となるものであり、押圧力F6に抗して操作部材330を回転させるには回転トルクT2(第2の回転トルク)以上が必要になるものとする。さらに、第2爪部335がテール部350に係合することで、操作部材330はテール部350からの反力F7を受けることになる(テール部350はラッチ部材360からの反力を受けている)。反力F7に抗して操作部材330を回転させるには回転トルクT3(第3の回転トルク)以上が必要になるものとする。
【0081】
そして、回転トルクT1~T3が釣り合う(T1=T2+T3が成立する)ことで、操作部材330は回動が規制され、スクリューレス端子台30におけるラッチ状態を維持することができる。
【0082】
このラッチ状態は、電気配線20が解放部材370を回動させることでラッチ部材360をテール部350から離間させ、操作部材330に対する回転トルクT3の作用を無くすことで解除される。その結果、操作部材330に作用する回転トルクはT1およびT2のみとなる。そして、T1>T2であることから、操作部材330は板バネ部材320の復元力によって回動を開始し、ラッチ解除される。尚、ラッチ解除時に、操作部材330の回動初期において、摺動部材340の先端が操作部材330の第1爪部334から外れると、操作部材330に対して回転トルクT2の作用も無くなるため、操作部材330の回動はより生じやすくなる。
【0083】
以上のように、本実施の形態に係るスクリューレス端子台30では、操作部材330が板バネ部材320から受ける回転トルクT1に対して、2つに分解された回転トルクT2およびT3を作用させてラッチ状態を維持するようになっている。そして、ラッチ解除は、回転トルクT3の作用を無くすことのみによって行われる。すなわち、スクリューレス端子台30のラッチ解除は、板バネ部材320による回転トルクT1全体に抗して行われるものではなく、その一部に抗して行われるものとなる。その結果、ラッチ解除時の動作、すなわち電気配線20による配線当接部371の押し込み動作を、より小さな力で行うことが可能となり、スクリューレス端子台30において電線径の細い電気配線20の使用が可能となる。
【0084】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10,30 スクリューレス端子台
11,31 ソケットコンタクト
12,32 結線部
20 電気配線
100,300 筐体
101,301 第1開口
102,302 第2開口
103 第3開口
104,303 支持軸
110,310 接点部材
111,311 第1接点端子
112,312 第2接点端子
113,313 第3接点端子
114,314 摺動台部
115,315 軸穴
120,320 板バネ部材
121 バネ部
122 固定部
123,323 第4接点端子(バネ端子)
124,324 長孔部
321 第1バネ部
322 第2バネ部
130,340 摺動部材
131 本体部
131a 操作部
132 突起部
341 傾斜面
342 移動規制部
140,350 テール部材(回転子)
150 回動部材
330 操作部材
151,331 回転軸穴
152,333 バネ当接部
153 爪部
332 操作レバー部
334 第1爪部
335 第2爪部
160,360 ラッチ部材
161 スライド移動規制部
361 テール回動規制部
162,362 第1軸部
163,363 第2軸部
170,370 解放部材
171,371 配線当接部
172,372 第3軸部
173,373 第4軸部