(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176873
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】集光器、ソーラークッカー及びソーラークッカー製作用シート
(51)【国際特許分類】
F24S 20/30 20180101AFI20231206BHJP
F24S 23/75 20180101ALI20231206BHJP
【FI】
F24S20/30
F24S23/75
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089412
(22)【出願日】2022-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】522217876
【氏名又は名称】加茂 徹
(71)【出願人】
【識別番号】522217887
【氏名又は名称】加茂 遼太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100169753
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】加茂 徹
(72)【発明者】
【氏名】加茂 卓子
(72)【発明者】
【氏名】加茂 遼太郎
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、高効率で集光できる集光器、ソーラークッカー及びソーラークッカー製作用シートを提供する。
【解決手段】ソーラークッカー1は、錐体100の頂点の周囲を斜めに切断した形状を有し、錐体100の底面部分が開口され、錐体100の内側面に、光反射面103が設けられた集光器からなる。錐体100の開口部101から入射した光が光反射面103で反射され、斜めに切断した切断面104に配置する対象物200に集光される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錐体の頂点の周囲を斜めに切断した形状を有し、
前記錐体の底面部分は開口され、
前記錐体の内側面に、光反射面が設けられた集光器であって、
開口された前記底面部分から入射した光が、前記光反射面で反射され、前記斜めに切断した切断面に配置する対象物に集光される、
集光器。
【請求項2】
前記切断面は、前記錐体の中心軸に対して太陽の仰角と同じ角度で切断され、
前記切断面を鉛直下方に向け、前記錐体の中心軸を太陽に向けて配置される、
請求項1に記載の集光器。
【請求項3】
前記錐体は、円錐体、楕円錐体及び角錐体のいずれか1つであって、
前記切断面は、前記錐体の形状に応じて、楕円形及び角形のいずれか1つの形状を有する、
請求項1に記載の集光器。
【請求項4】
前記錐体の頂角が、20度以上40度以下であって、
前記錐体の母線に沿った長さが、集光目標である集光面の弦長の最小値に対して、3倍以上15倍以下である、
請求項1に記載の集光器。
【請求項5】
前記切断面に、前記対象物を載置する載置部を、更に有し、
前記載置部には光反射面が設けられている、
請求項1に記載の集光器。
【請求項6】
前記錐体の側面を鉛直下方から支持する支持材を、更に有する、
請求項1に記載の集光器。
【請求項7】
前記錐体の内周を支持する支持リングを、更に有する、
請求項1に記載の集光器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の集光器を有し、集光された光により前記対象物を加熱するソーラークッカー。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の集光器を有するソーラークッカーを製作するためのシートであって、
少なくとも一面に光反射面が設けられた扇状のシートであり、
中心角が60度以上120度以下であり、
前記中心角を挟む2辺を互いに接合するための接合手段が設けられ、
前記中心角を切り取った切り取り線が、前記切断面を形成する、
ソーラークッカー製作用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を集光する集光器、ソーラークッカー及びソーラークッカー製作用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光で食材を加熱するソーラークッカーは、燃料等の化石資源を使用しないために地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させない自然環境に配慮した調理器具である。また、ソーラークッカーは自然エネルギーを用いるため、電気等のインフラが災害時に途絶えた場合にも使用でき、防災用品としても関心が高まっている。
【0003】
ソーラークッカー等の集光器には、例えば、放物面からなる反射鏡で太陽光を反射させて集光するパラボラ式がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のソーラークッカーは、パラソル型の反射面で反射した光を、パラソルの中棒の先端に装着した焦点プレートに集光させる構成を有する。
【0004】
また他のタイプの集光器として、錐体の内側面に設けた反射面で太陽光を反射させ、頂点近傍で集光させるものもある(例えば、特許文献2,3)。特許文献2に記載の集光器は、入射面と出射面の間に対向間隔が狭まるようなテーパが形成され、テーパ角β、入射面と出射面との距離l、入射面の幅i、出射面の幅oで表されるα=2l・tanβ/(i+o)を0.7~1.3とすることにより、効率的な集光ができると説明されている。
【0005】
特許文献3に記載の集光器は、鉛直上方に開口した上が広く下が狭い幾何構造の容器壁を有し、光反射材料からなる内壁により内側及び下側に太陽光を反射させ、底部で吸光及び吸熱している。この構造により、太陽光の採光面積を拡大し、太陽エネルギー装置の設置面積を減少させ、吸光及び吸熱の効率を向上させることができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-65864号公報
【特許文献2】特開2000-216732号公報
【特許文献3】特開2009-535599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示すようなパラボラ式は、大きく広げた反射面の保持や、反射面より高い位置に固定する集光部分の保持が困難であり、また、放物面の工作が難しく、収納性や携帯性にも劣っていた。
【0008】
一方、特許文献2,3に示すような錐体型の集光器は、パラボラ式と比較して、効率良く特定位置に集光させるのが困難であった。具体的には、特許文献2に記載の集光器は、光が直接又は1回の反射のみで集光位置に達することが想定されているために集光率が低く、十分な温度を得ることが困難であった。
【0009】
また、特許文献3に記載の集光器は、鉛直上方に開口しているために錐体の長さ、開口幅及び光の入射角によっては、入射光が内面での多数回の反射により集光位置まで達することなく外部に放射され、集光効率が低くなるという問題があった。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、高効率で集光できる集光器、ソーラークッカー及びソーラークッカー製作用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る集光器は、
錐体の頂点の周囲を斜めに切断した形状を有し、
前記錐体の底面部分は開口され、
前記錐体の内側面に、光反射面が設けられた集光器であって、
開口された前記底面部分から入射した光が、前記光反射面で反射され、前記斜めに切断した切断面に配置する対象物に集光されることを特徴とする。
【0012】
前記切断面は、前記錐体の中心軸に対して太陽の仰角と同じ角度で切断され、
前記切断面を鉛直下方に向け、前記錐体の中心軸を太陽に向けて配置されてもよい。
【0013】
前記錐体は、円錐体、楕円錐体及び角錐体のいずれか1つであって、
前記切断面は、前記錐体の形状に応じて、楕円形及び角形のいずれか1つの形状を有してもよい。
【0014】
前記錐体の頂角が、20度以上40度以下であって、
前記錐体の母線に沿った長さが、集光目標である集光面の弦長の最小値に対して、3倍以上15倍以下であってもよい。
【0015】
前記切断面に、前記対象物を載置する載置部を、更に有し、
前記載置部には光反射面が設けられてもよい。
【0016】
前記錐体の側面を鉛直下方から支持する支持材を、更に有してもよい。
【0017】
前記錐体の内周を支持する支持リングを、更に有してもよい。
【0018】
また、本発明の第2の観点に係るソーラークッカーは、
第1の観点に係る集光器を有し、集光された光により前記対象物を加熱することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第3の観点に係るソーラークッカー製作用シートは、
第1の観点に係る集光器を有するソーラークッカーを製作するためのシートであって、
少なくとも一面に光反射面が設けられた扇状のシートであり、
中心角が60度以上120度以下であり、
前記中心角を挟む2辺を互いに接合するための接合手段が設けられ、
前記中心角を切り取った切り取り線が、前記切断面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、錐体の頂点の周囲を斜めに切断した形状からなり、底面部分の開口から入射する光を内側面で反射させて集光するため、簡易な構成で、高効率で集光することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係るソーラークッカーの構成例を示す図である。
【
図3】錐体の頂角に対する集光率の変化を表すグラフである。
【
図4】錐体の長さ(集光面直径比)に対する集光率の変化を表すグラフである。
【
図5】(a)ソーラークッカー製作用シートの例を示す図である。(b)ソーラークッカーの外形を示す図である。
【
図6】錐体の長さ(集光面直径比)に対する集光率の変化を表すグラフである。
【
図7】(a)錐体の頂角と錐体の長さ(集光面直径比)に対する集光率の変化を表すグラフである。(b)ソーラークッカー製作用シートの例を示す図である。
【
図8】ソーラークッカーの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態)
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。本実施の形態に係るソーラークッカー1は、太陽光を集光する集光器からなり、対象物を加熱調理する調理器具である。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るソーラークッカー1の構成例を示す図である。ソーラークッカー1の集光器は、
図1に示すように、錐体100の頂点の周囲を切断した形状を有する。錐体100は、円錐体、楕円錐体及び角錐体のいずれでもよいが、円錐体が、集光率及び製作性の観点から好適である。また、頂点の周囲の切断面は、錐体100の中心軸102に対して垂直又は斜めに切断した面である。
図1は、ソーラークッカー1の集光器の形状が、円錐体の頂点の周囲を斜めに切断した形状である場合を示している。
【0024】
錐体100の底面部分は開口されており、この開口部101が太陽に向いている。より好ましくは、錐体100の中心軸102が太陽に向かう方向に沿うように配置されている。
【0025】
錐体100の内側面には、光反射面103が設けられている。光反射面103は従来の任意の材質からなり任意の方法により生成され、例えば、シートにアルミ箔等の反射材を貼り付け、又は、ポリエステル等の下地にアルミを蒸着させて生成される。
【0026】
錐体100の頂点周囲の切断面104には、加熱の対象物200が配置されている。錐体100の開口部101を太陽に向けた状態で対象物200を安定に配置するためには、切断面104は、中心軸102に対して斜めが好ましいが、対象物200の形状によっては中心軸102に対して垂直でもよい。切断面104の形状は、錐体100の形状及び切断方向に合わせて、円形、楕円形及び角形のいずれかである。
【0027】
切断面104には、錐体100の側面と結合された載置部106が設けられてもよく、その場合は、対象物200が載置部106上に載置される。載置部106の対象物200側の面には光反射面が設けられている。これにより、載置部106が加熱されて高温になるのを防ぐことができる。対象物200が容器に入っている場合には、容器は黒色の鍋等、光を吸収する素材のものが好ましい。あるいは、対象物200を黒色ホイル等の光を吸収する素材の包装材で包んで載置してもよい。容器又は包装材を光吸収素材にすることにより、集光された光により効率良く対象物200を加熱することができる。
【0028】
図1に示すように、錐体100の内壁には、錐体100の形状を保つために内周を支持する支持リング107又は支持リング108が更に備えられてもよい。支持リング107,108はそれぞれ複数でもよく、また錐体100の中心軸102に対して垂直でもよく、斜めでもよい。支持リング107,108は、任意の素材からなり、例えばピアノ線等の鋼線からなる。支持リング107は、錐体100の重心近くに配置され、着脱可能であってもよい。支持リング108は切断面104に近く、中心軸102に対して斜めであり、着脱可能であってもよい。また、図示していないが、錐体100の内側の中心軸102に交差する面に、透明の板を更に備え、対象物200が存する空間を塞いでもよい。これにより、反射光により加えられた熱を当該空間に保つことができる。
【0029】
ソーラークッカー1により、高効率で加熱調理するためには、集光率を高くする必要がある。集光率は、錐体100の形状に依存する。集光率を向上させることのできる錐体100の形状について、以下に詳述する。
【0030】
まず、切断面104の、錐体100の中心軸に対する角度は、太陽の仰角αと同じ角度が好ましい。太陽の仰角αは季節及び時間帯により変化するため、使用する季節及び時間帯に応じて適宜選択する。設置時には、切断面104が、鉛直下方に向けられ、錐体100の中心軸が太陽に向けられる。
【0031】
錐体100の開口部101から入射した太陽光は、光反射面103で1回又は複数回反射される。このとき、反射した光は対象物200まで到達して対象物200の加熱に寄与するか、あるいは外部に放射されるが、錐体100の頂角と長さを調整することにより、対象物200まで到達する光の割合を上昇させ集光率を高めることができる。
【0032】
以下、錐体100内での光の反射について、
図2を用いて詳細に説明する。
図2は、中心軸を含む平面における錐体100の断面を表しており、錐体100の内側面での反射を示す。本実施の形態において切断面104に配置された対象物200への集光率は、切断面104に近く中心軸102に直交する集光面105への集光率で近似できる。よって、
図2では、切断面104に近い直径Tの円形の集光面105を集光目標とする。
【0033】
図2において、太陽光は錐体100の中心軸102の方向より錐体100に入射される。錐体100の頂角をβ、錐体100の母線に沿った開口部101から集光面105までの長さをLとし、錐体100の高さのうち開口部101から集光面105までの高さをHとする。
図2において(a)が集光面105に直接入射する経路、(b)が光反射面103で1回反射して集光面105に入射する経路、(c)が2回反射する経路、(d)が3回反射する経路、(e)がn回反射する経路(n=4)を示している。
【0034】
まず、頂角βは90度未満である必要がある。頂角βが90度以上の場合、直径Tの円板に直接入射する光以外は、全て錐体100の外側に放射されるからである。頂角βを有する錐体100の中心軸102に平行に入った光は、錐体100の内側の光反射面103で反射する度に進行方向がβ度増加し、β×n<90(度)である間は錐体100内で反射を繰り返し、錐体100の頂点に向かって進行する(nは反射回数)。しかし、一度、β×n≧90(度)となった後は、光の進行方向は開口部101に向かい、光は錐体100外に放射される。
【0035】
90度未満の頂角βの錐体100に太陽光が入射するとき、集光面105に直接入射する光は、
図2(a)に示すように、A
0を通過する。光反射面103で1回反射して集光面105に入射する光は、
図2(b)に示すように、A
1のドーナッツ状の領域を通過する。この領域A
1の外周の直径をI
11、反射ポイントから集光面105までの高さをH
11とすると、I
11とH
11の関係は下記の式(1),(2)で表すことができる。
【0036】
【0037】
式(1),(2)より、高さH11と直径I11は下記の式(3),(4)で求められる。
【0038】
【0039】
図2(c),(d)に示すように、光反射面103での反射の度に、光の入射方向と高さH方向のなす角はβ度増加する。
図2(e)に示すようにA
nの領域を通過し、光反射面103でn回反射した後に集光面105に達する光について、m回目に反射した反射ポイントの直径I
nmと、m回の反射ポイントからm+1回の反射ポイントまでの高さH
nmは、式(3),(4)と同様に計算でき、下記の式(5),(6)のように表される。
【0040】
【0041】
光反射面103でn回反射した光は最後に集光面105に入射されるため、m=nのとき、式Inm+1は下記の式(7)で表される。
【0042】
【0043】
頂角が90度未満の場合、錐体100内に入射した光は反射を複数回繰り返して集光面105に到達するが、集光率は頂角βが小さくなるに従い増加し、長さLが長くなるに従い増加する。一方、集光面105は、対象物200を配置するために、一定の大きさが必要であり、また、長さLが長すぎると全体の大きさが大きくなり、取り扱いづらくなる。よって、頂角β及び長さLに対する集光率の変化を考察し、最適な形状を選択する。
【0044】
集光面105に直接入射する光、1回反射する光、2回反射する光、・・・n回反射する光が開口部101を通過する領域A0,An1,An2,・・・Anmの面積S0,Sn1,Sn2,・・・Snmは下記の式(8)~(11)で表される。
【0045】
【0046】
ここで、太陽光は錐体100の開口部101から略一様の強度で入射するため、光反射面103における反射率をfとしたときの集光率は、式(12)で表される。
【0047】
【0048】
ここで、n回の反射に必要な錐体100の高さHnは、下記の式(13)から求められ、錐体100の長さLと高さHnの関係は下記の式(14)で表される。
【0049】
【0050】
式(6)~(11)を式(12)に代入し、式(5)、(13)、(14)の関係を用いることにより、集光率λを計算することができる。
図3,4に集光率λの計算結果を示す。
【0051】
図3は、反射率fを1.0としたときの、頂角βに対する集光率λの変化を表したグラフであり、錐体100の長さLと集光面105の直径Tとの比L/Tを1~20の範囲で変えて計算したものである。
図4は、錐体100の長さLの集光面105の直径Tに対する比(L/T)を横軸としたときの集光率λの変化を表したグラフであり、頂角βを変えて計算したものである。
【0052】
図3に示すように、集光面105の直径Tと同じ長さLの錐体100を用いた場合(L/T=1)、頂角が90度から小さくなるにしたがい集光率は増加し、60度で集光率は4倍で最大となる。そして、60度より頂角を小さくすると集光率は低下する。一方、頂角を一定に保ち、錐体100の長さLを長くすると2回反射、3回反射等の多重反射光を使用することができるため、集光率は急激に増加する。しかし、n回の反射によりβ×nが90度を超えると、光は錐体100の開口部101に向かう方向に反射されるため、
図4に示すように集光率λは一定になる。
【0053】
図3,4に示した集光率の計算結果に基づき、製作性、携帯性及び機能性を鑑みて、高集光率を実現できる錐体100の長さL、集光面105の直径T、頂角βを選択する。例えば、ソーラークッカー1の加熱対象の直径が3~20cmの場合、集光面105の直径T(弦長の最小値)に対して3~15倍の長さLの円錐体が取扱いやすいが(L/T=3~15)、その場合、
図4より、錐体の頂角βが20度以上40度以下のときに、集光率λが最大に到達する。つまり、錐体の頂角βについて、20度以上40度以下がL/T=3~15の錐体100に対する適切な角度と言え、更に、L/Tが4~10の場合には、25度以上35度以下がより好ましい。
【0054】
ここで、本実施の形態では、錐体100が円錐体であるため、集光面105は円形であり、直径Tは円形の直径であるが、錐体100が楕円錐体又は角錐体の場合は、集光面105の弦長の最小値が直径Tに対応する。
【0055】
紙又はシート等の既存の材料を用いて円錐を製作する場合には、正方形の一つの直角を頂点として、その直角を挟む2辺を互いに接合させる構成が材料を最も有効に使用することができ、且つ、簡単に製作することができる。正方形の1つの直角を頂点として円錐を作った場合、頂角は28.96度となる。
【0056】
図5(a)に本実施の形態に係るソーラークッカー1製作用のシート300の一例を示す。
図5(a)は、ソーラークッカー1の錐体100が円錐体であり、頂点の周囲を斜めに切断した形状である場合の例であり、切断面104は楕円となる。シート300は、少なくとも一面に光反射面が設けられた正方形のシートである。シート300には、1つの直角を中心301とする扇形を切り取るための切り取り線302と、その直角を切り取って切断面104を形成するための切り取り線303が付されている。この切り取り線302,303で切断することにより、中心301が直角である扇状のシートが得られる。
【0057】
シート300の中心301を挟む2辺には互いに接合するための接合手段304が設けられている。接合手段304は従来の任意の手段でよく、例えば、ファスナー、マジックテープ(登録商標)、マグネット、テープ等の接着剤で2辺を接合してもよい。あるいは、2辺にそれぞれ形成された、ボタンとボタン穴、又は、突起部と挿入穴(切り込み)により2辺を接合してもよい。
【0058】
正方形のシート300の扇形を切り取ったあとの残り部分から対象物200を載置するための載置部106を切り出してもよい。この場合、扇状のシートの切り取り線303から延伸した接合手段305を設けて、載置部106の外周に接合手段305を接合することにより、切断面104に載置部106を形成することができる。
【0059】
図5(b)は、シート300から製作したソーラークッカー1である。正方形のシート300を用いることで、頂角βが28.96度の円錐体を形成することができ、さらに、切り取り線303を
図5(a)に示すような曲線にすることで、楕円形の切断面104を形成することができる。
【0060】
ここで、中心301を挟む2辺近傍のシートが互いに重なって接合されてもよい。この場合、頂角βは28.96度より小さくなる。
【0061】
頂角βを28.96度としたときの集光率λを
図6に示す。
図6は、錐体100の長さLの集光面105の直径Tに対する比(L/T)を横軸としたときの集光率λの変化を表すグラフである。
図6に示すように、反射1回での集光率は、L/Tが3.5のときに最大の6.6倍となる。L/Tをさらに大きくすると、反射2回及び反射3回の光も集光面104に入射することとなり、集光率が高まる。L/Tが5.9のときに全ての反射光の合計の集光率は最大15.4倍となり、それ以上錐体100の長さを長くしても集光率は増加しない。
【0062】
このように、正方形のシート300から、1つの直角を中心301とする扇状のシートを切り出し、中心301を挟む2辺を互いに接合させることにより、簡単にソーラークッカー1を製作することが可能である。また、ソーラークッカー1は、使用しないときには、接合部分304,305を剥離させて扇状のシートに戻して、畳んで又は筒状に巻いて小さく収納することができる。
【0063】
ここで、
図5(a)には、頂角βが28.96度の円錐体を形成することのできる正方形のシート300の例を示したが、頂角βが20度以上40度以下の円錐体を形成する場合には、中心301の中心角δが60度以上120度以下の扇状のシートを形成するための長方形のシートを用いてもよい。
【0064】
図7(a)は、頂角β及び錐体100を展開した扇形の中心角δを横軸とし、錐体100の長さLの集光面105の直径Tに対する比(L/T)を縦軸としたときの、集光率λを色の濃さで表した図であり、
図7(b)は長方形のソーラークッカー製作用シートの例である。
図7(a)によればL/Tが3~15のとき、頂角βは約20~40度のときに集光率λが高くなり、そのときの扇形の中心角δは下記の式(15)で計算でき、約60~120度となる。
【0065】
【0066】
図7(a)に示す、頂角β及び中心角δと錐体100のL/Tに対する集光率の変化を参照して、錐体100の長さL及び中心角δを選択する。選択した中心角δに応じた切り取り線302,303,308で切り取ることにより、頂角βが20~40度の錐体100を製作することができる。
【0067】
このとき、中心(中心角δ)301を挟む2辺近傍のシートが互いに重なって接合されてもよい。この場合、中心角δを120度以上としてもよい。
【0068】
次に、ソーラークッカー1の使用方法について説明する。例えば、
図5に示すような扇状のシートから錐体100を形成し、対象物200を載置した載置部106を切断面104に対して固定させる。
図8はソーラークッカー1の使用状態を表した図であり、(a)~(c)は太陽の仰角が互いに異なる場合を示す。
【0069】
ソーラークッカー1の錐体100は指向性が高いため、開口部101を太陽に向けた状態で使用する必要がある。好ましくは、錐体100の中心軸102を太陽に向けて設置する。このとき、中心軸102と切断面104のなす角が太陽の仰角αに等しくなるように、切断面104は形成されている。言い換えると、使用時の太陽の仰角に合わせて錐体100製作用のシートを切断することにより切断面104を形成する。
【0070】
切断面104に対して固定した載置部106に重量のある鍋等を置く。さらに、
図8に示すように、太陽の高度に合わせて、支持材109で鉛直下方から錐体100の側面を支持してもよい。これにより、太陽に開口部101を向けて錐体100を設置することができる。支持材109は、
図8に示すような、シート又は板を三つ折りした形状でもよく、錐体100製作用のシートの余りから形成したものであってもよい。
【0071】
図8に示すように、錐体100の開口部101を太陽に向けた状態でソーラークッカー1を使用することにより、対象物200に太陽光が集光され、対象物200を加熱することができる。使用後は、対象物200を錐体100から取り出す。この時、錐体100のシート300の接合手段304,305を剥離して錐体100を解体してもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態に係るソーラークッカー1は、錐体100の頂点の周囲を垂直又は斜めに切断した形状を有し、錐体100の底面部分が開口され、錐体100の内側面に、光反射面103が設けられた集光器からなる。錐体100の開口部から入射した光が光反射面103で反射され、斜めに切断された切断面104に配置する対象物200に集光されることとした。これにより、簡易な構成で、高効率で集光することが可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態において、切断面104に載置部106を設け、載置部106上に加熱する対象物200を載置するとしたが、切断面104の端辺(切断面104の外周)を、対象物200の容器の外周に嵌合させて、錐体100を対象物200に対して固定させてもよい。これにより、加熱後の対象物200に対して、錐体100を容易に取り外すことができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更又は応用が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 ソーラークッカー、100 錐体、101 開口部、102 中心軸、103 光反射面、104 切断面、105 集光面、106 載置部、107,108 支持リング、109 支持材、200 対象物、300 シート、301 中心、302,303,308 切り取り線、304,305 接合手段。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る集光器は、
錐体の頂点の周囲を斜めに切断した形状を有し、
前記錐体の底面部分は開口され、
前記錐体の内側面に、光反射面が設けられた集光器であって、
開口された前記底面部分から入射した光が、前記光反射面で反射され、前記斜めに切断した切断面に配置する対象物に集光され、
前記錐体の頂角が、20度以上40度以下であって、
前記錐体の母線に沿った長さが、集光目標である集光面の弦長の最小値に対して、3倍以上15倍以下であることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
前記切断面は、前記錐体の中心軸に対して斜めに切断され、
前記切断面を鉛直下方に向け、前記錐体の中心軸を太陽に向けて配置されてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錐体の頂点の周囲を斜めに切断した形状を有し、
前記錐体の底面部分は開口され、
前記錐体の内側面に、光反射面が設けられた集光器であって、
開口された前記底面部分から入射した光が、前記光反射面で反射され、前記斜めに切断した切断面に配置する対象物に集光され、
前記錐体の頂角が、20度以上40度以下であって、
前記錐体の母線に沿った長さが、集光目標である集光面の弦長の最小値に対して、3倍以上15倍以下である、
集光器。
【請求項2】
前記切断面は、前記錐体の中心軸に対して斜めに切断され、
前記切断面を鉛直下方に向け、前記錐体の中心軸を太陽に向けて配置される、
請求項1に記載の集光器。
【請求項3】
前記錐体は、円錐体、楕円錐体及び角錐体のいずれか1つであって、
前記切断面は、前記錐体の形状に応じて、楕円形及び角形のいずれか1つの形状を有する、
請求項1に記載の集光器。
【請求項4】
前記切断面に、前記対象物を載置する載置部を、更に有し、
前記載置部には光反射面が設けられている、
請求項1に記載の集光器。
【請求項5】
前記錐体の側面を鉛直下方から支持する支持材を、更に有する、
請求項1に記載の集光器。
【請求項6】
前記錐体の内周を支持する支持リングを、更に有する、
請求項1に記載の集光器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の集光器を有し、集光された光により前記対象物を加熱するソーラークッカー。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の集光器を有するソーラークッカーを製作するためのシートであって、
少なくとも一面に光反射面が設けられた扇状のシートであり、
中心角が60度以上120度以下であり、
前記中心角を挟む2辺を互いに接合するための接合手段が設けられ、
前記中心角を切り取った切り取り線が、前記切断面を形成する、
ソーラークッカー製作用シート。