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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176874
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】固定材、及び関節装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20231206BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A61F5/01 N
A61F13/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089413
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】玉田 真規
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098BB12
4C098BC02
4C098BC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用時には迅速かつ確実に患部に追従させることができ、硬化後は、強固で位置ずれを起こし難い固定材、及び関節装具を提供する。
【解決手段】本発明は、関節部位に装着されるシート状の固定材1であって、固定材1は、所定位置に形成された折り返し部2で折り畳まれた形態を備え、折り返し部2の少なくとも一端には、対向する固定材同士が結合することにより形成された結合部を備える固定材1を提供する。固定材1は、使用時には折り畳み形態を開くと、固定材1が内側に湾曲変形しながら関節収容部を形成する。また、本発明は、固定材1と、固定材1を収容可能な装具と、を少なくとも含む関節装具を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部位に装着されるシート状の固定材であって、
前記固定材は、所定位置に形成された折り返し部で折り畳まれた形態を備え、
前記折り返し部の少なくとも一端には、対向する前記固定材同士が結合することにより形成された結合部を備える、固定材。
【請求項2】
前記固定材は、硬化性を有するシートと該シートを被覆する被覆材とから構成され、
前記結合部は、対向する前記被覆材同士が結合することにより形成されている、請求項1に記載の固定材。
【請求項3】
折り畳まれた状態の前記固定材を、前記折り返し部を基軸として開く際に、前記固定材が内側に湾曲変形しながら関節収容部を形成する、請求項1または2に記載の固定材。
【請求項4】
前記折り返し部の両端に位置する角部をそれぞれ折り畳むことによって形成される角折り畳み部によって、前記関節収容部が外側から支持されている、請求項3に記載の固定材。
【請求項5】
前記角折り畳み部は、前記固定材にあらかじめ付された折り目に沿って折り畳まれる、請求項4に記載の固定材。
【請求項6】
前記固定剤または前記シートが水硬化性樹脂により形成されている、請求項1または2に記載の固定材。
【請求項7】
前記被覆材が不織布で形成されている、請求項1または2に記載の固定材。
【請求項8】
請求項1または2に記載の固定材と、該固定材を収容可能な装具と、を少なくとも含む関節装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、スポーツ分野などにおいて、治療又は保護の目的で患部を固定又は指示するスプリント、キャスト、ステーなどを形成するための固定材、及び関節装具に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科領域の医療現場において、患者の患部に沿った形状に形成した固定材を、関節装具に備え付け、患部が適切な位置に維持されるよう固定する処置が行われている。
【0003】
このような処置に使用する固定材として、例えば、特許文献1では、ダブルラッセル編機を用いて製織された伸縮織物に水硬化性樹脂が塗布された中間素材と、該中間素材の上部及び下部の表面に形成され、伸縮性を有する不織布および水硬化性樹脂の遮断膜を含む上下部表皮層と、を有する固定材が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の固定材は、関節部位の屈曲部に適用される箇所に折り目を発生させることなく、該屈曲部の曲面に追従させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-170819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような固定材、特にシート状の固定材は、三次元曲面を有する関節部位が患部である場合、該関節部位の立体的な側面に対して十分に追従できないおそれがある。特に、足関節や肘等、屈曲部を有する関節部位に関しては、患部が適切な位置に維持されるようにするために、処置時間がかかる上、患者に対しても精神的な負担が伴う。
【0007】
また、処置に時間がかかると、患部が適切な位置で固定されないまま上記固定材が硬化してしまい、十分な固定効果が得られないおそれがある。また、固定材の硬化後に患部を動かすと、固定材が取り付け位置からずれてしまったり、固定材と患部に摩擦が生じたりするおそれがある。
【0008】
そこで、本発明では、迅速かつ確実に患部に追従させることができ、上記固定材が硬化した後は、強固で位置ずれを起こし難い固定材、及び関節装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、関節部位に装着されるシート状の固定材であって、該固定材は、所定位置に形成された折り返し部で折り畳まれた形態を備え、該折り返し部の少なくとも一端には、対向する固定材同士が結合することにより形成された結合部を備える固定材を提供する。
また、本発明に係る固定材は、硬化性を有するシートと該シートを被覆する被覆材とを更に備えることができる。この場合、上記結合部は、対向する被覆材同士が結合することにより形成されていてもよい。また、本発明に係る固定材は、折り畳まれた状態の固定材を、上記折り返し部を基軸として開く際に、固定材が内側に湾曲変形することによって形成される、関節収容部をさらに備えることができる。また、本発明に係る固定材は、折り返し部の両端に位置する角部をそれぞれ折り畳むことによって形成される、角折り畳み部をさらに備えることができる。この場合、角折り畳み部は、上記関節収容部が外側から支持することができる。また、この角折り畳み部は、固定材にあらかじめ付された折り目を更に備えることができる。また、上記固定材または上記シートは水硬化性樹脂により形成されていてもよい。また、上記被覆材は不織布で形成されていてもよい。また、本発明、上記固定材と、該固定材を収容可能な装具と、を少なくとも含む関節装具を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る固定材、及び関節装具によれば、患部に対して、迅速かつ確実に追従させることができ、固定材が硬化した後は、強固で患部から位置ずれを起こし難い。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る固定材1の折りたたまれた状態の外観を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る固定材1の材料構成を示す模式断面図である。
図3】本発明の別の一実施形態に係る固定材1の材料構成を示す模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る固定材1の結合部3を示す模式断面図である。
図5】本発明の一使用形態に係る固定材1の外観を示す模式図である。
図6】本発明の別の一使用形態に係る固定材1の外観を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る固定材1の角折り畳み部6の模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る固定材1の結合部3を示す展開図である。
図9】本発明の一実施形態に係る固定材1と該固定材1を収容可能な装具9とを有する関節装具100を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。また、本発明は、下記の実施形態及びその変形例のいずれかを組み合わせることも可能である。
【0013】
<(1)固定材の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る固定材1の折りたたまれた状態の外観を示す模式図である。本実施形態に係る固定材1は、シート状の固定材であって、所定位置に形成された折り返し部2と、該折り返し部2の少なくとも一端に結合部3を有し、所定位置にて折り畳まれた形態を備えることを特徴とする。該結合部3は、固定材1同士が結合することにより形成されている。固定材1の折り畳み構造を、折り返し部2を基軸として開くこと(以下、単に「開く」という)によって、立体的な空間(関節収容部4、図5参照)を形成することができる。また、固定材1は、折り返し部2の両端に位置する角部5を有する。更に、角部5を、折り目7に沿って、それぞれ折りたたむことによって形成される角折り畳み部6を有する。
【0014】
本発明者は、固定材1の、関節部位への追従性を向上させるために鋭意検討を行った結果、上記折り返し部2と、該折り返し部2の少なくとも一端に結合部3を設けることで、固定材1を開いた際に形成する湾曲と空間が、関節部位への追従性を向上させることを見出した。
【0015】
本発明において、上記折り返し部2の位置は特に限定されず、適用される関節部位に合わせて適宜選択することができる。
【0016】
<(2)固定材の材料構成>
図2は、本発明の一実施形態に係る固定材1の材料構成を示す模式断面図である。より詳しくは、図1のA-A線矢視方向の模式断面図である。図2において、本実施形態に係る固定材1は、例えば、外側被覆材12aと内側被覆材12bを含む被覆材12と、硬化性を有するシート11(以下、単に「シート」という)を備え得る。固定材1は、シート11が、外側被覆材12a及び内側被覆材12bによって、上下から挟み込まれるように層構造を形成し得る。さらに、上記固定材1において、外側被覆材12a及び内側被覆材12bがシート11を挟んで、互いに接着することによって形成した袋状構造にシート11を収容するような形態をとることができる。
【0017】
(2)-1 硬化性を有するシート
上記シート11は、患部である関節部位に追従させた後に固めるものであり、強度を出すために硬化性を有するものであってよい。シート11は、例えば、水もしくは光によって硬化する材料、又は熱により軟化し形成可能な材料で作製される。より具体的には、シート11は、繊維材料の複数の層を積層させた基布に、樹脂を保持させたものであり得る。シート11を含む固定材1を関節部位に当接させ採型した後、固定材1を硬化させることにより、関節部位を固定できる。また、シート11の厚みや材質によって固定材1の強度が調節されていてもよい。
【0018】
上記基布は、例えば、編物、織物、不織布等を使用することができる。より具体的には、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維、レーヨン繊維、綿繊維等を用いた編物、織物、不織布を用いることができ、これらを単独または任意に選択して組み合わせてもよい。
【0019】
本発明に用いられる基布は、柔軟であって、低水分率で引張強度が高く、水硬化性樹脂に非反応性でかつ濡れやすい素材であることが好ましい。本発明に用いられる基布は、患部である関節部位の形に追従しやすくし、その固定力を向上させる観点から、特に、ガラス繊維、ポリエステル繊維を用いることが好ましい。基布の厚さは、好ましくは、0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上である。また、基布の厚さは、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは5mm以下であるが、これに限定されない。
【0020】
上記樹脂としては、例えば、水硬化性樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー、触媒、及びその他の添加物からなるポリウレタンプレポリマー組成物が好適に用いられる。光硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などのアクリレート樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。本発明の固定材に用いられる樹脂としては、水硬化性樹脂が好ましい。
【0021】
(2)-2 被覆材
上記被覆材12は、上記シート11の表面の一部又は全部を覆うものであってよい。また、被覆材12は、シート11より大きい袋状構造を有し、該シート11を収容するように被覆していてもよい。被覆材12によって、上記水硬化性樹脂が外部に染み出すことを低減することができる。また、施術者が固定材1を使用する際に、水硬化性樹脂を直接触れずに操作することができる。また、被覆材12によって、使用する際に供給される水を水硬化性樹脂の表面に満遍なく保持することができるため、該水硬化性樹脂の硬化の均一性を向上させることができる。さらに、被覆材12は、固定材1を関節部位に装着する際の緩衝材の役割を果たすこともできる。
【0022】
上記被覆材12は、使用の際に供給された水をスムーズに透過する透水性と、適度な通気性を有するとともに、上記水硬化性樹脂と反応性を有さないことが好ましい。例えば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリ塩化ビニル繊維等の合成繊維や、レーヨン等の合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した、編物、織物、不織布を用いることができる。被覆材12は、さらに、フッ素系樹脂による撥水(撥樹脂)加工がされていてもよい。これによって、上記水硬化性樹脂が外部に染み出すことを低減することができる。また、被覆材12が撥水性を有することにより、肌面への水濡れを低減し、患者への不快感を抑制することができる。
【0023】
上記外側被覆材12aと上記内側被覆材12bの材料はそれぞれ異なるものを用いてもよい。例えば、外側被覆材12aは、折り曲げ加工などの操作性と透水性に優れる材料が用いられ、内側被覆材12bは、関節部位に対する緩衝性を有し、適度な通気性を有する材料が用いられてもよい。このような構成によって、外側被覆材12a側の表面のみを水で濡らして操作することにより、患者の肌に適用される内側被覆材12bは水濡れを低減することができ、患者への不快感を抑制することができる。
【0024】
また、上記被覆材12は、切り込み12cを備えていてもよい。切り込み12cは、使用時に上記シート11を硬化させるための水を注入し、排出するために備えることができる。切り込み12cは、例えば、被覆材12がシート11の端部と接触する領域に形成していてもよい。切り込み12cを備えることにより、シート11に含まれる樹脂が漏れることがなく、かつ硬化反応を起こした後の水を抜けやすくすることができる。また、切り込み12cは、図1に示すように、シート11の長手方向の両端部に複数形成されていてもよい。これによって、シート11全面に水を注入し、また、注入した水を効率よく排出することができる。
【0025】
(2)-3 その他構成要素
本発明に係る固定材1は、シート11と、被覆材12のほか、必要に応じてその他の構成要素を含んでいてもよい。例えば、患部である関節部位へのフィット性を向上させるためにクッション材等の緩衝材11aを有していてもよい。また、患者の皮膚への水濡れを低減するために、ウォーターブロックフィルム11bを有していてもよい。
【0026】
図3は、本発明の別の一実施形態に係る固定材1の材料構成を示す模式断面図である。より詳しくは、図1のA-A線矢視方向の模式断面図の一例を示す。本実施形態に係る固定材1は、例えば、外側被覆材12aと、シート11とを備え、さらに、緩衝材11aと、ウォーターブロックフィルム11bと、内側被覆材12bと、を備え得る。固定材1は、シート11と、緩衝材11a及びウォーターブロックフィルム11bが、外側被覆材12a及び内側被覆材12bによって、上下から挟み込まれるように層構造を形成し得る。この層構造において、重なり合う各構成同士が接着していてもよい。また、固定材1は、外側被覆材12a及び内側被覆材12bが互いに接着することによって袋状構造を形成し、シート11と、緩衝材11a及びウォーターブロックフィルム11bを収容するような形態をとることができる。
【0027】
上記緩衝材11aは、適用される関節部位に対する緩衝性を有しており、未硬化の水硬化性樹脂が浸透し難く、適度な通気性を有するものが好ましい。また、関節部位の形状に追従して変形しやすいものが好ましい。この緩衝材11aにより、固定材1の関節部位側への接触を緩和し、水硬化性樹脂が硬化する際の反応熱が関節部位へ伝わるのを低減し、さらに、皮膚への水濡れを低減することができる。本発明においては、緩衝材11aは、例えば、ウレタン系、ポリオレフィン系、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の単体や複合体の発泡体であることが好ましい。
【0028】
上記ウォーターブロックフィルム11bは、適度な防水性と通気性を有するものが好ましい。このウォーターブロックフィルム11bにより、肌への水濡れを低減することができ、また患者への快適性を維持することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態に係る固定材1の材料構成を説明したが、図2及び図3に示す材料構成は、実施形態の一例を示したものであり、これに限定されず、本発明の範囲内で適宜変更することができる。例えば、上記固定材の各構成要素は必要に応じて適宜選択することができ、積層される順番も適宜選択することができる。また、上記折り返し部2を境界として、異なる構成を有していてもよい。
【0030】
<(3)結合部>
上記固定材1における上記結合部3は、上記折り返し部2の少なくとも一端において、対向する固定材1同士が結合することにより形成される。結合部3を有することによって、折り畳まれた状態の固定材1を、折り返し部2を基軸として開く際に、固定材1が内側に湾曲変形しながら、患部である関節部位に適用しやすいような立体空間を形成しやすくなる。本発明の固定材1において結合部3は、折り返し部2の両端において形成されていることが好ましい。これによって、固定材1が形成する立体空間は、関節部位を収容し得る袋状の形態をとることもできる。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態に係る固定材1の結合部3を示す模式断面図である。より詳しくは、図4(a)は、図2に示す構成を備える固定材1の結合部3のB-B線矢視方向の模式断面図の一例を示す。結合部3は、対向する固定材1同士が結合することにより形成されている。結合部3は、例えば、折り返し部2において対向する内側被覆材12b同士が結合することによって形成されうる。また、結合部3は、内側被覆材12b同士のみならず、積層される外側被覆材12aを含めて、結合されていてもよい。これによって、結合がより強固なものとなる。ここで、結合部3の形成方法については、当技術分野で既知の方法に基づいておこなわれてよい。例えば、結合部3は、接着剤による接着、熱溶着、又は縫製によって形成され得る。本発明の固定材1における結合部3は、特に、熱溶着、縫製によって形成されることが好ましい。
【0032】
図4(b)は、本発明の別の一実施形態に係る固定材1の結合部3のB-B線矢視方向の模式断面図である。図4(b)に示す固定材1は、図2に示す固定材1と同じ構成を有する。ここで、結合部3は、例えば、上記折り返し部2において対向する外側被覆材12a同士のみが結合することによって形成されうる。このとき、内側被覆材12bは、結合部3の内側で、対向する外側覆材12aと結合されていてもよい。
【0033】
図4(c)は、本発明のさらに別の一実施形態に係る固定材1aの結合部3のB-B線矢視方向の模式断面図である。図4(c)に示す実施形態において固定材1aは、外側被覆材12aとシート11を有する。この場合、結合部3は、外側被覆材12a同士の直接の結合によって形成され得る。
【0034】
図4(d)は、本発明のさらに別の一実施形態に係る固定材1bの結合部3のB-B線矢視方向の模式断面図を示す。図4(d)に示す実施形態において固定材1bは、シート11を有する。この場合、結合部3は、シート11同士の直接の結合により形成され得る。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係る固定材1の結合部3について説明したが、図4に示す構成は、本発明の実施形態の一例を示したものであり、これに限定されず、本発明の範囲内で適宜変更することができ、結合部3の位置、大きさ、形は限定されない。また、固定材1の層構造によって、結合に寄与する構成要素は適宜選択され得る。
【0036】
<(4)固定材の使用形態>
本発明の固定材1は通常、所定位置に形成された折り返し部2で折り畳まれた形態を備え、使用時に、該折り返し部2を基軸として開いて用いることができる。
【0037】
図5は、本発明の一使用形態に係る固定材1の外観を示す模式図である。より詳しくは、図1において、折りたたみ形態を有する固定材1を開いた状態に変化させたときの外観を示す模式図の一例を示す。固定材1が折りたたまれた形態から図5のように上記折り返し部2を基軸としてα方向に開くとき、固定材1は内向き(β方向)に湾曲変形しながらする。この湾曲変形によって、折り返し部2の内側には立体空間である、関節収容部4が生じる。この関節収容部4に関節部位を沿わせるように固定材1を適用することによって、関節部位にスムーズに固定材1を追従させることができる。更に、関節部位の屈曲部を折り返し部2の線上に適用することにより、屈曲部の立体的な構造に対しても、固定材1をスムーズに追従させることができる。
【0038】
<(5)角折り畳み部>
図6は、本発明の別の一使用形態に係る固定材1の外観を示す模式図である。より詳しくは、固定材1を開いた状態に変化させた際、上記折り返し部2の両端に位置する角部5をそれぞれ折り畳んだときの外観を示す模式図の一例を示す。角部5を折りたたんだときに形成される上記関節収容部4において、折り返し部2付近では、より深い立体空間を形成する。また、角折り畳み部6は、関節収容部4を外側から支持する。角折り畳み部6が固定材1と重なることによって、該固定材1の強度を向上することができる。また、角折り畳み部6は関節部位の屈曲部に沿うよう、あらかじめ折りたたんだ状態を保持しているため、固定材1の硬化にともなう変形を抑制することができる。このとき、角折り畳み部6の折り畳み方向は限定されず、関節部位に合わせて任意に選択することができる。
【0039】
また、上記角折り畳み部6を形成することによって、上記固定材1の展開角度γを所望の角度に保持した状態で関節部位に適用させることができる。これにより、関節部位の屈曲部にも固定材1を追従させやすくなる。
【0040】
上記角折り畳み部6は、関節部位の側面から見た場合、例えば、折り返し部2の両端の角部5をそれぞれ一角とする略三角形に形成しうる。角折り畳み部6は、その目的によって、辺の長さや角度が限定されない略三角形の形状をとることができる。本発明の角折り畳み部6においては、折り返し部2の各角部5に同形状に形成されていることが好ましい。これによって、固定材1の中心部において関節部位を支えやすく、良好なバランスをとることができる。
【0041】
図7は、本発明の一実施形態に係る固定材1の角折り畳み部6の模式図である。より詳しくは、図1のC方向からみた固定材1の模式図の一例を示す。図7には、角折り畳み部6の形状とともに、固定材1が適用される足関節Pの足裏の形状を示す。角折り畳み部6は、折り返し部2において、各角部5から内向きに、長さXをとった各点a,aを有する。また、該点a,aから、折り返し部2方向とのなす角度をθとして、外側に向かう直線を引いたときに固定材1の端部と交差する各点b,bを有する。該点b,bから各角部5までの長さをYとする。ここで、角度θを変化させることにより、固定材1の展開角度γを調整することができる。例えば、角度θを40°、45°、50°とすることにより、展開角度γは100°、90°、80°とすることができる。
【0042】
本発明において、上記展開角度γは、例えば60°以上であり、好ましくは70°以上、より好ましくは、80°以上である。展開角度γは、例えば120°以下であり、好ましくは110°以下、より好ましくは100°以下である。このような数値範囲であると、身体の各関節部位の屈曲部の角度に対して、上記固定材1を幅広く適用することができる。
【0043】
本発明の固定材1に適用される部位は、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、屈曲部を有する関節部位、より具体的には足関節や肘に適用されることが好ましい。
【0044】
上記固定材1の形状は、必要に応じて適宜選択することができる。本発明の固定材1においては、例えば、矩形であり得る。
【0045】
また、上記固定材1の大きさは、適用される患部の範囲に合わせて適宜選択することができる。例えば、本発明の固定材1が足関節に適用される場合、図6における固定材幅Wは、例えば、50mm以上であり、好ましくは60mm以上、より好ましくは75mm以上である。固定材幅Wは、例えば150mm以下であり、好ましくは140mm以下、より好ましくは125mm以下である。固定材幅Wが50mm未満であると、患部である関節部位を覆うことができず、固定材幅Wが150mmより大きいと、患部の大きさとバランスが悪く、上記関節収容部4の形状が適用部位に合わないおそれがある。
【0046】
また、上記角折り畳み部6の大きさは、適用される関節部位の範囲に合わせて適宜選択することができる。例えば、図7において、幅Wを有する上記固定材1に対して、その中心に固定される関節部位は、幅W1を有する。
【0047】
本発明の固定材1が足関節に適用される場合、上記幅W1は、例えば、50mm以上、好ましくは58mm以上である。幅W1は、例えば、75mm以下、好ましくは72mm以下である。
【0048】
また、本発明における角折り畳み部6の長さXは、幅Wと幅W1との差の半分の幅であることが好ましい。つまり、長さXは、次式(1)によって表すことができる。
【0049】
【数1】
【0050】
また、本発明における上記角折り畳み部6の長さYは、上記長さXと展開角度γとの関係によって決定することができる。ここで、展開角度γは前述のように、80°以上100°以下が好ましく、このとき、上記角度θは40°以上50°以下である。したがって、長さYと長さXと比であるY/Xは、0.8以上1.2以下であり得る。つまり、長さYは、次式(2)で示される範囲であることが好ましい。
【0051】
【数2】
【0052】
図8は、本発明の一実施形態に係る固定材1の結合部3を示す展開図である。図8(a)において、固定材1は、結合部3aを有する。結合部3aは、それぞれ図7における角折り畳み部6、つまり角部5と点a,bで囲まれる略三角形の範囲が全て接着していることによって形成される。これによって、固定材1を開いたときに、点a,bで結ばれた直線、つまりの結合部3aの境界に沿って角折り畳み部6を折り畳むことによって、上記関節収容部4が外側から支持され、固定材1が重なった部分の強度を向上させることができる。
【0053】
また、図8(b)において、固定材1は、結合部3bを有する。結合部3bは、図7における点bのみが接着することによって形成される。この場合、固定材1を開いたときに、点bを基点として、長さXと角度θを固定しない角折り畳み部6を形成することができる。つまり、適用される関節部位の形状によって、固定材1の両端に形成される角折り畳み部6同士が同じ形状であってよく、また、異なっていてもよい。
【0054】
さらに、上記角折り畳み部6は、上記固定材1にあらかじめ付された折り目7に沿って折り畳まれていてもよい。この折り目7は、例えば、角折り畳み部6の点a,bを結ぶ直線に沿って付されることが好ましい。ここで、折り目7を固定材1に付す方法については、当技術分野で既知の方法に基づいておこなわれてよい。例えば、折り目7は、印刷、シール、スタンプ、縫製、凹凸加工によって付されているのが好ましい。これによって、折り目7が視認しやすくなり、固定材1を素早く所望の上記展開角度γに開くことができる。
【0055】
<(6)固定材の使用方法>
以下、本発明の一実施形態に係る固定材1を患部である関節部位に適用する際の使用方法について説明する。より詳しくは、患部である足関節Pに適用する場合の使用方法の一例について説明する。まず、固定材1を水に含侵させ、余分な水分を除去する。次に、固定材1の折り畳み構造をα方向に開く。このとき、図5に示す固定材1に関しては、α方向への展開によって、上記関節収容部4が形成される。また、図6に示す固定材1に関しては、α方向へ展開し、上記角折り畳み部6を折りたたむことによって、関節収容部4が形成される。そして、この関節収容部4を足関節Pの踵に適用し、固定材1を足関節Pに追従させることで、採型し、硬化させる。ここで、固定材1は、当技術分野で既知の方法に基づいて、足関節Pに固定されるように取り付けられていてよい。例えば、包帯、バンド、装具に代表される固定具を用いることが好ましい。該固定具は、患部である足関節Pにおいて複数の箇所に取り付けられていてよい。また、上記包帯のように、固定材1を足関節Pに巻きつけることによって固定することがより好ましい。こうすることによって、固定材1が足関節Pに密着した状態を維持することができるため、固定材1が適切な形で硬化される。また、固定材1が硬化した後も、固定材1を適用された患者はそのまま日常生活を送ることができる。
【0056】
上記固定材1は、例えば、装具9によって上記足関節Pに固定されていてもよい。装具9は、固定材1を収容可能なものであってよい。さらに、固定材1は、該固定材1を収容可能な装具9とともに、関節装具100として用いられてもよい。図9は、本発明の一実施形態に係る固定材1と該固定材1を収容可能な装具9とを有する関節装具100を示す模式図である。装具9の形状は、固定材1を収容することができれば、特に限定されない。本実施形態における装具9は、例えば、固定材1を収容する本体部91と、関節部位が屈曲する位置に装着される支持体92と、固定部93と、を備える。さらに、本体部91は、固定材1が出し入れ可能に収容されるポケット部94を有し、支持体92は、ポケット部94に装着することができる。この構成によって、固定材1の採型と、該固定材1の硬化と、患部である関節部位の固定と、を含む一連の作業を上記一つの作業にまとめることができ、迅速かつ確実に関節部位を固定することができる。
【符号の説明】
【0057】
1(1a,1b)固定材
11 硬化性を有するシート(シート)
11a 緩衝材
11b ウォーターブロックフィルム
12 被覆材
12a 外側被覆材
12b 内側被覆材
12c 切り込み
2 折り返し部
3(3a,3b) 結合部
4 関節収容部
5 角部
6 角折り畳み部
7 折り目
9 装具
91 本体部
92 支持体
93 固定部
94 ポケット部
100 関節装具
P 足関節
W 固定材幅
W1 関節部位の幅
X 角部から点aまでの長さ
Y 角部から点bまでの長さ
a、b 固定材1上の点
α 固定材1の展開方向
β 固定材1の湾曲方向
γ 固定材1の展開角度
θ 角折り畳み部における角度





図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9