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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176876
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】支持体、装具、及び関節装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20231206BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20231206BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20231206BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A61F5/01 N
A41D13/06
A41D13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089422
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】玉田 真規
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA10
3B011AA11
3B011AA13
3B011AA14
3B011AB09
3B211AA10
3B211AA11
3B211AA13
3B211AA14
3B211AB09
4C098AA01
4C098BB12
4C098BC02
4C098BC03
4C098BC13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固定材の固定力及びフィット性を向上させる支持体、装具、及び関節装具を提供する。
【解決手段】本発明は、関節部位に装着されるシート状の支持体1であって、第1方向へ伸縮するとき、第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、支持体1を提供する。また、本発明は、関節部位を含む患部に装着される装具10であって、患部を固定する固定材を収容する本体部2と、患部に本体部2を取り付ける少なくとも一つの取り付け部4と、患部に装着されるシート状の支持体1と、を備えており、支持体1は、装着時、関節部位を被覆し、第1方向へ伸縮するとき、第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、装具を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部位に装着されるシート状の支持体であって、
第1方向へ伸縮するとき、
前記第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、支持体。
【請求項2】
前記第2方向に伸びる複数のプリーツ線を有する、請求項1に記載の支持体。
【請求項3】
前記支持体は、非伸縮性素材で作られる、請求項1または2に記載の支持体。
【請求項4】
関節部位を含む患部に装着される装具であって、
前記患部を固定する固定材を収容する本体部と、
前記患部に前記本体部を取り付ける少なくとも一つの取り付け部と、
前記患部に装着されるシート状の支持体と、を備えており、
前記支持体は、装着時、前記関節部位を被覆し、第1方向へ伸縮するとき、前記第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、装具。
【請求項5】
請求項4に記載の装具と、該装具に収容可能な前記固定材と、を少なくとも含む関節装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体、装具、及び関節装具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば整形外科領域の医療現場などにおいて、患者の患部に沿った形状に形成したキャストステーなどの固定材を患部に取り付けて、患部を固定する処置が行われている。
【0003】
このような処置に使用する装具として、例えば、特許文献1には、キャストステーが収納されるステー収納ポケットを含む関節装具が開示されている。特許文献1のキャストステーは、足の内側及び外側の踝を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-154430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、三次元曲面を有する関節部位が患部であるとき、関節部位の形状に固定材が追従できないおそれがある。これにより、固定材の固定力及びフィット性が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、固定材の固定力及びフィット性を向上させる支持体、装具、及び関節装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、関節部位に装着されるシート状の支持体であって、第1方向へ伸縮するとき、前記第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、支持体を提供する。
前記支持体は、前記第2方向に伸びる複数のプリーツ線を有してよい。
前記支持体は、非伸縮性素材で作られてよい。
また、本発明は、関節部位を含む患部に装着される装具であって、前記患部を固定する固定材を収容する本体部と、前記患部に前記本体部を取り付ける少なくとも一つの取り付け部と、前記患部に装着されるシート状の支持体と、を備えており、前記支持体は、装着時、前記関節部位を被覆し、第1方向へ伸縮するとき、前記第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、装具を提供する。
また、本発明は、前記装具と、該装具に収容可能な前記固定材と、を少なくとも含む関節装具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定材の固定力及びフィット性を向上させる支持体、装具、及び関節装具を提供できる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す簡略断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る装具10の構成例を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る装具10の構成例を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る装具10の構成例を示す背面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る関節装具100の構成例を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係る支持体1が装着される位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲がこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【0011】
以下の実施形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った用語で構成を説明することがある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、完全に平行な状態から例えば数%程度ずれた状態を含むことも意味する。他の「略」を伴った用語についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0012】
特に断りがない限り、図面において、「上」とは図中の上方向又は上側を意味し、「下」とは、図中の下方向又は下側を意味し、「左」とは図中の左方向又は左側を意味し、「右」とは図中の右方向又は右側を意味する。また、図面については、同一又は同等の要素又は部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<1.第1の実施形態(支持体の例1)>
従来、例えば整形外科領域の医療現場などにおいて、患者の患部に沿った形状に形成したキャストステーなどの固定材を患部に取り付けて、患部を固定する処置が行われている。
【0014】
しかし、三次元曲面を有する関節部位を含む患部を処置する場合、関節部位の形状に固定材が追従できないおそれがある。これにより、固定材と皮膚表面との間に隙間が生じることがある。この隙間により、固定材の固定力が低下したり、固定材の位置ずれなどが生じたりすることがある。また、この隙間により、固定材にしわが生じることもある。さらに、このしわに応力集中が生じることにより、固定材の強度が低下することもある。
【0015】
そこで、本発明は、関節部位に装着されるシート状の支持体であって、第1方向へ伸縮するとき、前記第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、支持体を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る支持体は、関節部位に装着される支持体である。支持体1が装着される関節部位には、例えば、足関節、肘、及び膝などが含まれるが、これらの関節部位に限られず、三次元曲面を有する関節部位であればよい。例えば足関節又は肘に装着されるとき、支持体1は、固定材を80~100度の角度で屈曲させて支持できる。例えば膝に装着されるとき、支持体1は、固定材を150~170度の角度で屈曲させて支持できる。例えば足関節に装着されるときの、支持体1が装着される位置について図9を参照しつつ説明する。図9は、本発明の一実施形態に係る支持体1が装着される位置の例を示す図である。図9に示されるとおり、支持体1は、アキレス腱付着部または下腿最小周径の近傍から踵の近傍までを覆う位置Aに装着される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る支持体について図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す斜視図である。図1に示されるとおり、引張応力のかかる方向D1を第1方向とし、第1方向D1に直交する方向を第2方向D2とする。第1方向D1は、装具10の長手方向でありうる。第2方向D2は、装具10の短手方向又は周径方向でありうる。
【0018】
支持体1は、装具10に装着されることができる。この構成例では、支持体1の第1方向の一方の端部12は、装具10が備える本体部2に固定されている。支持体1及び本体部2は、互いに縫い付けられていてもよいし、接着剤により接着されていてもよいし、一体成型されていてもよい。
【0019】
支持体1の第1方向の他方の端部13は、本体部2に固定されていなくてよい。これにより、この端部13から固定材を挿入することができる。
【0020】
支持体1は、第2方向D2に伸びる複数のプリーツ線11を有していることが好ましい。プリーツ線とは、規則的または不規則な間隔で形成されている折り目をいう。なお、本発明においては、ギャザーもプリーツ線に含まれる。
【0021】
支持体1にプリーツ線11が設けられていることにより、支持体1が三次元形状になることができる。これにより、支持体1は、三次元曲面を有する関節部位に沿うように固定材を支持できる。支持体1は、固定材が有する三次元曲面に対して略均一に圧力をかけることができる。つまり、支持体1は、固定材を関節部位の形状に追従させることができる。これにより、支持体1は、固定材と皮膚表面との間に生じる隙間を抑制でき、固定材の位置ずれを抑制できる。その結果、支持体1は、固定材の固定力及びフィット性を向上させることができる。
【0022】
また、支持体1が固定材を関節部位の形状に追従させることができるため、固定材にしわが生じることを抑制できる。これにより、しわに応力集中が生じることが抑制できる。その結果、固定材の強度が向上する。
【0023】
さらに、支持体1が固定材を被覆するため、固定材が露出しにくくなる。これにより、外観の美しさが増すとともに、固定材が破損しにくくなる。
【0024】
これらの効果は、後述する他の実施形態においても同様に生じる。よって、他の実施形態に係る説明においては、再度の記載を省略することがある。
【0025】
支持体1は、所定の伸び率を有することが好ましい。伸び率について図2を参照しつつ説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す模式図である。図2に示されるとおり、プリーツ線11を広げていないときの、支持体1の第1方向(Z軸方向)の幅をW1とする。プリーツ線11を広げたときの、支持体1の第1方向の略中央の幅をW2とする。このとき、支持体1が有する伸び率Eは、次の式(1)より算出できる。
【0026】
E=W2/W1 ・・・(1)
【0027】
支持体1は、第1方向へ伸縮するとき、第1方向に直交する第2方向(X軸方向)における両端域A2の伸び率よりも、中央領域A1の伸び率が高いことが好ましい。具体的には、中央領域A1は、両端域A2の略2倍~7倍の第1方向の伸び率を有することが好ましい。より好ましくは、中央領域A1は、両端域A2の略3倍~5倍の第1方向の伸び率を有するとよい。これにより、上述したように、固定材の固定力及びフィット性を向上させることができる。
【0028】
支持体1が有する伸び率は、プリーツ線11間の幅、プリーツ線11の数、又は折り方などにより変化する。このことについて図3を参照しつつ説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す簡略断面図である。
【0029】
図3Aは、略3倍の伸び率を有する支持体1の構成例を示している。支持体1の厚み方向に2つのプリーツ線11が形成されている。それぞれのプリーツ線11間の幅Wは略同一となっている。この支持体1が第1方向に広げられると、折り畳まれているプリーツが開かれる。これにより、支持体1の第1方向の略中央の幅は、プリーツを広げていないときの第1方向の幅の略3倍となる。
【0030】
図3Bは、略5倍の伸び率を有する支持体1の構成例を示している。支持体1の厚み方向に4つのプリーツ線11が形成されている。それぞれのプリーツ線11間の幅Wは略同一となっている。この支持体1が第1方向に広げられると、折り畳まれているプリーツが開かれる。これにより、支持体1の第1方向の略中央の幅は、プリーツを広げていないときの第1方向の幅の略5倍となる。
【0031】
図3Cは、略7倍の伸び率を有する支持体1の構成例を示している。支持体1の厚み方向に6つのプリーツ線11が形成されている。それぞれのプリーツ線11間の幅Wは略同一となっている。この支持体1が第1方向に広げられると、折り畳まれているプリーツが開かれる。これにより、支持体1の第1方向の略中央の幅は、プリーツを広げていないときの第1方向の幅の略7倍となる。
【0032】
図3Dは、略3~5倍の伸び率を有する支持体1の構成例を示している。支持体1の厚み方向及び第1方向に4つのプリーツ線11が形成されている。この支持体1が第1方向に広げられると、折り畳まれているプリーツが開かれる。これにより、支持体1の第1方向の略中央の幅は、プリーツを広げていないときの第1方向の幅の略3~5倍となる。プリーツ線11が第1方向にずれて形成されているため、図3Bに示されるような第1方向にずれていない構成例よりも伸び率が小さくなることがある。
【0033】
図3A~Cに示されるとおり、それぞれのプリーツ線11間の幅Wが略同一となっており、プリーツ線11が第1方向にずれずに形成されているとき、支持体1は、プリーツ線11の数に比例した伸び率を有する。図3Dに示されるとおり、プリーツ線11が第1方向にずれて折り畳まれているとき、支持体1は、所定の範囲の伸び率を有する。プリーツ線11間の幅、プリーツ線11の数、又は折り方などを調整することにより、所望の伸び率を有する支持体1を製造できる。
【0034】
支持体1が有するプリーツ線11の数は、2以上が好ましい。より好ましくは、支持体1が有するプリーツ線11の数は、3以上であるとよい。これにより、上述したように、固定材の固定力及びフィット性を向上させることができる。
【0035】
プリーツ線11間の幅Wは、略5~20mmの範囲であることが好ましい。プリーツ線11の幅Wがこの範囲より小さい場合、加工が困難になるおそれがある。プリーツ線11間の幅Wがこの範囲より大きい場合、固定材の固定力及びフィット性が低下するおそれがある。
【0036】
支持体1の設計例について図4を参照しつつ説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例を示す模式図である。
【0037】
図4に示されるとおり、固定材20の第2方向(X軸方向)の幅をW4とする。支持体1のうちプリーツ線11が形成されている部分の第2方向の幅をW5とする。支持体1の第2方向の幅をW6とする。
【0038】
一般成人男性に装着されるときの支持体1の寸法の例を表1に示す。図5に示す寸法は例示であり、装着される人の体格により寸法が異なっていてよい。
【表1】
【0039】
この表1からわかるように、W5はW4よりも略40mm大きく、W6はW5よりも略20~30mm大きいことが好ましい。支持体1が膝に装着されるとき、W4は略180mmであることが好ましい。このとき、W5は略220mmであり、W6は略250mmであることが好ましい。
【0040】
支持体1が足関節に装着されるとき、W4は略125mmであることが好ましい。このとき、W5は略165mmであり、W6は185mmであることが好ましい。また、W4は略100mmであってもよい。このとき、W5は略140mmであり、W6は160mmであることが好ましい。
【0041】
支持体1が肘に装着されるとき、W4は略75mmであることが好ましい。このとき、W5は略115mmであり、W6は135mmであることが好ましい。また、W4は略50mmであってもよい。このとき、W5は略90mmであり、W6は110mmであることが好ましい。
【0042】
なお、本実施形態ではプリーツ線11が第2方向(X軸方向)に伸びて形成されているが、プリーツ線11が第1方向(Z軸方向)に伸びて形成されていてもよい。支持体1が例えば膝などに装着されるとき、プリーツ線11が第1方向に伸びて形成されることがある。
【0043】
本実施形態では、支持体1が装具10に取り付けられて、関節部位に装着されることができるが、実施形態はこれに限られない。支持体1は、例えば包帯やバンドなどにより関節部位に装着されてもよい。
【0044】
本発明の第1の実施形態に係る支持体について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0045】
<2.第2の実施形態(支持体の例2)>
本発明の一実施形態に係る支持体1の構成例について、再び図1を参照しつつ説明する。支持体1の第2方向(X軸方向)は、第1方向(Z軸方向)より伸び率が高いことが好ましい。支持体1は、第2方向(X軸方向)は伸縮性を有しており、第1方向(Z軸方向)は非伸縮性を有する素材を含むことが好ましい。これにより、第2方向に張力がかかると固定材に圧力が略均一に加わる。その結果、固定材の固定力及びフィット性を向上させることができる。
【0046】
さらに、プリーツ線11が形成されていることにより、支持体1が三次元形状になり、支持体1の第1方向の端部12,13に隙間が生じることを抑制できる。
【0047】
支持体1が有する第2方向の伸長力は略3~5Nであることが好ましい。このとき、支持体1が有する第1方向の伸長力は略70Nであってよい。第2方向の伸長力とは、支持体1の初期状態における引張伸度を0%とした場合、支持体1を第2方向に引張り、引張伸度が20%になった際に支持体1に作用している応力である。第1方向の伸長力とは、支持体1の初期状態における引張伸度を0%とした場合、支持体1を第1方向に引張り、引張伸度が20%になった際に支持体1に作用している応力である。引張伸度とは、支持体1が第2方向又は第1方向に伸長する長さの割合である。
【0048】
伸長力の測定には、定速伸長形引張試験機(島津製作所製“オートグラフ(登録商標)”AG-20KNI、1kNロードセル)を用いることができる。支持体1を所定の長さに切断して試験片を作成し、当該試験片の試験片幅を25mm、チャック間隔を100mmとして、定速伸長形引張試験機に取り付ける。そして、引張伸度が毎分100%で増加する速度で試験片を引張伸度20%まで伸ばし、その際の応力を伸長力(N)として測定できる。なお、当該測定方法は一例であって、伸長力の測定方法は特に限定されるものではない。伸長力は、公知の方法により測定することができる。
【0049】
支持体1を構成する素材としては、伸長力が上記の範囲内に設定されるのであれば特に限定されない。支持体1を構成する素材は、天然繊維、化学繊維のいずれでもよく、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維(綿、レーヨン、ポリノジック、リヨセル等)、ポリウレタン系繊維、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アセテート系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、毛(羊毛、獣毛等)などを単独で用いた糸、又はこれら繊維を混用した糸を用いることができる。糸の種類としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、撚糸、カバードヤーン、コアヤーン等が利用でき、伸縮加工や嵩高加工等を施したものを利用してもよい。
【0050】
支持体1の編成としては、経編又は緯編の各種編組織が利用できる。例えば、ダブルラッセル生地、平編生地、ゴム編(リブ編)生地、パール編生地、タック編生地、丸編生地、横編生地、トリコット生地、ラッセル生地、パイル編生地、添え糸編生地等が利用できる。これらの中で、伸長力を上記範囲内とすることができ、且つ、通気性を確保して装着感を向上させることができる生地が好ましく、ダブルラッセル生地とすることが好ましい。
【0051】
ダブルラッセル生地は、一本の糸から編目を作りながらループと呼ばれる輪をつなぎ合わせて作られる。ダブルラッセル生地は、ループが有する弾力性で伸長力に寄与することができ、このループから空気を透過させる事ができる。このため、ダブルラッセル生地を用いることにより、通気性を確保することができる。伸長力は、これらの編組織を構成する糸にポリウレタン系繊維のカバードヤーンやゴム糸等の弾性糸を挿入したり、これらの弾性糸の挿入本数を調節したりすることで、調節することが可能である。ポリアミド系糸等の地糸にポリウレタン糸やゴム糸等の弾性糸を挿入した筒状のゴム編物(リブ編物)として、丸編み機や靴下編み機により好適に編成され得る。
【0052】
本発明の第2の実施形態に係る支持体について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0053】
<3.第3の実施形態(支持体の例3)>
支持体1は、非伸縮性素材で作られてよい。支持体1の少なくとも第1方向は非伸縮性を有することが好ましいが、支持体1の第2方向は伸縮性を有していてもよいし、非伸縮性を有していてもよい。支持体1の第2方向が伸縮性を有している方がより好ましい。これにより、固定材の固定力及びフィット性を向上させることができる。
【0054】
さらに、プリーツ線11が形成されていることにより、支持体1が三次元形状になり、支持体1の第1方向の端部12,13に隙間が生じにくくなる。
【0055】
本発明の第3の実施形態に係る支持体について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0056】
<4.第4の実施形態(装具の例)>
本発明は、関節部位を含む患部に装着される装具であって、患部を固定する固定材を収容する本体部と、患部に本体部を取り付ける少なくとも一つの取り付け部と、患部に装着されるシート状の支持体と、を備えており、支持体は、装着時、関節部位を被覆し、第1方向へ伸縮するとき、第1方向に直交する第2方向における両端域の伸び率よりも、中央領域の伸び率が高い、装具を提供する。
【0057】
本発明の一実施形態に係る装具の構成例について図1を参照しつつ説明する。図1に示されるとおり、装具10は、患部に装着されるシート状の支持体1を少なくとも備える。引張応力のかかる方向D1を第1方向とし、第1方向D1に直交する方向を第2方向D2とする。このとき、支持体1は、第2方向D2に伸びる複数のプリーツ線11を有していることが好ましい。
【0058】
装具10は、患部を固定する固定材を収容する本体部2と、本体部2を患部に固定する少なくとも一つの取り付け部4と、をさらに備える。本体部2の形状は、固定材を収容できれば特に限られない。本実施形態では、本体部2は、関節部位を固定する固定材を収容するポケット部3を有する。
【0059】
本体部2は、例えば、編布、織布、又は不織布などの繊維材料を、適宜編成、縫製、及び/又は積層して構成することができる。本体部2は、伸縮性や弾性を持たせてよい。具体的には、本体部2は、例えば、ダブルラッセル生地、平編生地、ゴム編(リブ編)生地、パール編生地、タック編生地、丸編生地、横編生地、トリコット生地、ラッセル生地、パイル編生地、又は添え糸編生地等で作製される。本体部2を構成する編布、織布、又は不織布等の繊維素材は、天然繊維、化学繊維、及び/又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。また、固定材として水硬化性樹脂を用いる場合、本体部2の素材は、例えばナイロンあるいはポリエステル等の撥水加工された素材であることが好ましい。これにより、硬化のために水硬化性樹脂に含ませた水分が、本体部2を介して関節部位に伝わることを低減できる。その結果、患者の不快感を低減できる。
【0060】
ポケット部3の寸法は、その内部に固定材を収容できるように、固定材の寸法に合わせて設定される。本体部2の寸法は、関節部位の一部又は全部を覆うように設定される。ポケット部3と本体部2との間に、固定材が取り外し可能に収容される。
【0061】
ポケット部3には、支持体1が装着されている。支持体1が、固定材の一部を覆うように装着されている。これにより、上述したように、固定材の固定力及びフィット性を向上させることができる。また、固定材の強度が向上する。さらに、外観の美しさが増し、固定材が破損しにくくなる。
【0062】
さらに図5を参照しつつ装具10について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る装具10の構成例を示す斜視図である。図5に示されるとおり、装具10は、本体部2と、本体部2を患部に固定する少なくとも一つの取り付け部4と、を備える。取り付け部4は、第1取り付け部41と、第2取り付け部42と、第3取り付け部43を含む。第1取り付け部41は、関節部位よりも近位において本体部2を固定する。第2取り付け部42は、関節部位の近傍において本体部2を固定する。第3取り付け部43は、関節部位よりも遠位において本体部2を固定する。なお、取り付け部の数は特に限られない。
【0063】
取り付け部4の形状は、本体部2を関節部位に固定できれば特に限定されない。本実施形態では、取り付け部4の一例としてベルト状の部材が用いられている。取り付け部4の自由端は、例えば面ファスナー、フック、またはボタンなどが形成されている。取り付け部4の他端は、例えば縫い付けや接着等により本体部2に固定されている。取り付け部4の自由端は、例えばベルトループなどを通り、本体部2に着脱可能になっている。取り付け部4は、ベルトループなどを介することにより、関節部位の周囲サイズ(太さ)に適合できる。
【0064】
図示を省略するが、取り付け部4の形状は、例えば紐状であってもよい。紐状の取り付け部4の自由端には何も形成されていなくてよい。取り付け部4の他端は、例えば縫い付けや接着等により本体部2に固定されている。取り付け部4の自由端同士を結ぶことにより、本体部2を関節部位に固定できる。
【0065】
本体部2は、さらに保持部5を備えることができる。保持部5は、関節部位の内側(屈曲側)を保持する。これにより、本体部2は、関節部位を適切な角度で屈曲させて保持できる。
【0066】
さらに図6を参照しつつ装具10について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る装具10の構成例を示す斜視図である。図6は、取り付け部4の自由端を本体部2から外して、本体部2を開いた状態の図である。
【0067】
図6に示されるとおり、本体部2は、略矩形に形成されており、三次元曲面を有する関節部位に沿うように側面視において略L字に形成されている。
【0068】
さらに図7を参照しつつ装具10について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る装具10の構成例を示す背面図である。図7は、図6に示される状態の装具10を、ポケット部3が配されている側から見た図である。
【0069】
図7に示されるとおり、ポケット部3が開かれている。ポケット部3の形状は、一辺またはL字に開閉可能なポケット状であってよい。本実施形態では、ポケット部3の一部に結合部31が形成されている。結合部31により、ポケット部3が閉じられることができる。これにより、固定材が脱落しにくくなる。この結合部31は、本実施形態のようにボタンであってもよいし、例えば面ファスナー、フラップ、チャック、またはフックなどであってもよい。
【0070】
従来、固定材を患部に取り付ける際に、包帯が用いられている。しかし、三次元曲面を有する関節部位に固定材を取り付ける作業は、高度な技術を必要とする。例えば水や光などと反応することで硬化する固定材は、開封と同時に硬化が始まる。そのため、三次元曲面に沿わせて固定材を取り付ける場合、包帯を段階的に巻き付けたりするなど、複雑な作業を速やかに行うことが求められる。
【0071】
本発明によれば、固定材を収容した装具10を患部に取り付ければよい。三次元曲面に沿うように固定材を支持体1が支持する。これにより、患部への装着作業が容易になる。高度な技術を必要とせず、患部を固定できる。
【0072】
本発明の第4の実施形態に係る装具について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0073】
<5.第5の実施形態(関節装具の例)>
本発明は、第4の実施形態に係る装具と、該装具に収容可能な固定材と、を少なくとも含む関節装具を提供する。
【0074】
本発明の一実施形態に係る関節装具の構成例について図8を参照しつつ説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る関節装具100の構成例を示す斜視図である。図8に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る関節装具100は、装具10と、装具10に収容可能な固定材20と、を少なくとも含む。装具10が備えるポケット部3に固定材20が収容されている。
【0075】
固定材20は、関節部位に沿うように屈曲させて作製される。固定材20は、例えば、水もしくは光によって硬化する材料、または熱により軟化し成形可能な材料で作製される。より具体的には、固定材20は、繊維材料の複数の層を積層させた基材に、樹脂を保持させたものでありうる。固定材20を関節部位に当接させ採型した後、固定材20を硬化させることにより、関節部位を固定できる。
【0076】
基材の繊維材料としては、例えば、プラスチック繊維またはガラス繊維などの基布などを用いることができる。樹脂としては、例えば、光により硬化する光硬化性樹脂、または、含水後に乾燥させることにより硬化するポリウレタン樹脂などの水硬化性樹脂を用いることができる。あるいは、樹脂として、熱で軟化し成形可能な熱可塑性樹脂などを用いることができる。より具体的には、水硬化性樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー、触媒、及びその他の添加物からなるポリウレタンプレポリマー組成物が好適に用いられる。光硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などのアクリレート樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。さらに、固定材20は、その表面の一部又は全部が、天然繊維又は化学繊維などの繊維で作られた不織布、織布、又は編布により覆われていてもよい。この場合、これら不織布、織布、又は編布は、固定材20を関節部位に当接させて採型する際の保護膜としても機能し得る。
【0077】
このような固定材20によれば、所望の形状に変形後、固定材20の全体が硬化するようになっている。これにより、固定材20は、個体差がある装着者の関節部位の形状に適した形状へと成形されるようになっている。そのため、固定材20のずれを低減することができる。
【0078】
本発明の第5の実施形態に係る関節装具について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
10 装具
1 支持体
11 プリーツ線
2 本体部
3 ポケット部
31 結合部
4 取り付け部
41 第1取り付け部
42 第2取り付け部
43 第3取り付け部
5 保持部
20 固定材
100 関節装具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9