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  • 特開-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176883
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A63B37/00 314
A63B37/00 316
A63B37/00 328
A63B37/00 326
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089434
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山邊 将大
(72)【発明者】
【氏名】林 伸治
(72)【発明者】
【氏名】西野 裕一
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する少なくとも1層のカバーを具備するゴルフボールにおいて、上記カバーの少なくとも1層は、下記(A)~(C)成分
(A)ポリウレタン又はポリウレア
(B)メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体
(C)脂肪酸アミド
を含有した樹脂組成物により形成されることを特徴とするゴルフボールを提供する。
【効果】本発明のゴルフボールによれば、ポリウレタン樹脂製のカバーを有するゴルフボールにおいて、アプローチショット時のスピン量、耐擦過傷性及び塗膜耐久性の諸特性を良好に維持しつつ、カバー成形時の離型性に優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する少なくとも1層のカバーを具備するゴルフボールにおいて、上記カバーの少なくとも1層は、下記(A)~(C)成分
(A)ポリウレタン又はポリウレア
(B)メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体
(C)脂肪酸アミド
を含有した樹脂組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記(B)成分のメタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して1.5質量部以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記(C)成分の脂肪酸アミドの配合量は、上記(A)成分100質量部に対して1.0質量部以下である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記カバーを構成する樹脂組成物の材料硬度がショアD硬度で65以下である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記カバーを構成する樹脂組成物の反発弾性率がJIS-K 6255規格の測定で65以下である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記カバーを構成する樹脂組成物の反発弾性率を材料硬度(ショアD硬度)の値で除した値が0.5以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層のコアと、少なくとも1層のカバーを有するゴルフボールに関する。更に詳述すれば、カバー成形時の金型離型性に優れたポリウレタン材料をカバーに用いたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリウレタン材料を用いたゴルフボールカバーは、成形時の金型離型性が良くないという課題があった。このため、滑材成分や分散剤としてステアリン酸金属塩やポリエチレンワックスを使用することがある。しかしながら、ステアリン酸金属塩は金型離型性を向上させるメリットはあるものの、金属塩は熱可塑性ポリウレタン材料の分解触媒として働くためか、分散剤としてステアリン酸金属塩を用いた場合は熱可塑性ポリウレタン材料の耐熱性を低下させるデメリットが確認された。また、ポリエチレンワックスはポリウレタン材料との相溶性が良くないために、分散剤としてポリエチレンワックスを用いた場合は顔料の分散性が悪くなる傾向が見られた。
【0003】
そこで、ポリウレタン樹脂をベース樹脂とするカバー樹脂組成物の配合について、特開2002-336382号公報(特許文献1)には、熱可塑性ポリウレタン材料を主成分とし、かつ分散剤として脂肪酸アミドやモンタン系ワックスを配合したカバー材により形成したゴルフボールが提案されている。また、特開2014-171895号公報(特許文献2)には、熱可塑性ポリウレタン材料を主成分とし、モンタン酸エステルを主成分とする滑剤を含むカバー材により形成したゴルフボールが提案されている。しかしながら、これらは、滑剤又は金型離型剤として脂肪酸アミドなどをカバー樹脂材料に配合することが提案されているものの、特に、硬度が軟らかいウレタン樹脂材料を用いてカバーを成形する際には依然として離型性が十分ではないという課題があった。
【0004】
また、金型の離型剤を使用する際、カバー樹脂組成物の諸機能が悪化するおそれがあるので、その種類や配合量に留意する必要がある。近年、プロや上級者向きのゴルフボールとして、カバー材として、アイオノマー樹脂材料に代わり軟質なウレタン樹脂材料を採用するものが主流となっており、飛び性能のほか、アプローチショット時の高いスピン量や優れた耐擦過傷性が得られる。これらの諸特性を良好に維持しつつ、金型の離型性を向上させて生産性の良好なゴルフボールの製造が求められている。
【0005】
そのほか、本発明に関連する文献としては、特開2019-107401号公報に記載されたカバー樹脂組成物が挙げられる。このカバー樹脂組成物は、ポリウレタン及びメタクリル樹脂を含有する樹脂組成物ではあるが、脂肪酸アミド等の離形剤を配合することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-336382号公報
【特許文献2】特開2014-171895号公報
【特許文献3】特開2019-107401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリウレタン樹脂製のカバーを有するゴルフボールにおいて、アプローチショット時のスピン量、耐擦過傷性及び塗膜耐久性などの諸特性を良好に維持しつつ、カバー成形時の離型性に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、ゴルフボールのカバーの樹脂組成物として、軟硬度のポリウレタン樹脂に、メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体及び脂肪酸アミドを含有した樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物の成型物をカバーとするゴルフボールを作製したところ、このゴルフボールは、カバー成形時の離型性に優れており、且つ、アプローチショット時のスピン量、耐擦過傷性及び塗膜耐久性の特性を良好に維持できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する少なくとも1層のカバーを具備するゴルフボールにおいて、上記カバーの少なくとも1層は、下記(A)~(C)成分
(A)ポリウレタン又はポリウレア
(B)メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体
(C)脂肪酸アミド
を含有した樹脂組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
2.上記(B)成分のメタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して1.5質量部以下である上記1記載のゴルフボール。
3.上記(C)成分の脂肪酸アミドの配合量は、上記(A)成分100質量部に対して1.0質量部以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記カバーを構成する樹脂組成物の材料硬度がショアD硬度で65以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
5.上記カバーを構成する樹脂組成物の反発弾性率がJIS-K 6255規格の測定で65以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
6.上記カバーを構成する樹脂組成物の反発弾性率を材料硬度(ショアD硬度)の値で除した値が0.5以上である上記1又は2記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールによれば、ポリウレタン樹脂製のカバーを有するゴルフボールにおいて、アプローチショット時のスピン量、耐擦過傷性及び塗膜耐久性の諸特性を良好に維持しつつ、カバー成形時の離型性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施態様であるゴルフボールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、少なくとも1層からなるコアに、少なくとも1層のカバー、即ち、単層又は複数層のカバーが被覆されるゴルフボールである。
【0013】
上記コアは、公知のゴム材料を基材として形成することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。
【0014】
また、ポリブタジエンは、Nd触媒の希土類元素系触媒,コバルト触媒及びニッケル触媒等の金属触媒により合成することができる。
【0015】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤,ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0016】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成形し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0017】
本発明のゴルフボールは、コアに単層又は複数層のカバーが被覆される。このようなゴルフボールの態様としては、例えば、コアに単層のカバーを有するゴルフボールや、コアと、該コアを被覆する中間層と、該中間層を被覆する最外層を有するゴルフボールが挙げられる。例えば、図1では、コア1と、該コア1を被覆する中間層2と、該中間層を被覆する最外層3を有する3層構造のゴルフボールGが挙げられる。なお、最外層3は、塗膜層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。最外層3の表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。また、最外層3の表面には、通常、塗膜層が形成されるが図1では図示していない。
【0018】
本発明では、上記カバーの少なくとも1層の樹脂材料として、下記(A)~(C)成分 (A)ポリウレタン又はポリウレア
(B)メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体
(C)脂肪酸アミド
を含有した樹脂組成物により形成される。
【0019】
(A)ポリウレタンまたはポリウレア
ポリウレタンまたはポリウレアは、上記カバー材料(樹脂組成物)の主材またはベース樹脂となり得るものである。この成分であるポリウレタン(A-1)またはポリウレア(A-2)の詳細は以下のとおりである。
【0020】
(A-1)ポリウレタン
ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオールからなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤及びポリイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、従来からポリウレタン材料に関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではない。例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブタジエンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等のアジペート系ポリオールやポリカプロラクトンポリオール等のラクトン系ポリオールを採用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記高分子ポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオールを用いることが好適である。
【0022】
上記の長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量を有する長鎖ポリオールを使用することにより、上記した反発性や生産性などの種々の特性に優れたポリウレタン組成物からなるゴルフボールを確実に得ることができる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,500~4,000の範囲内であることがより好ましく、1,700~3,500の範囲内であることが更に好ましい。
【0023】
なお、上記の数平均分子量とは、JIS-K1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である(以下、同様。)。
【0024】
鎖延長剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が2,000以下である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。
【0025】
ポリイソシアネートとしては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。
【0026】
また、上記ポリウレタン形成反応における活性水素原子:イソシアネート基の配合比は適宜好ましい範囲にて調整することができる。具体的には、上記の長鎖ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤を反応させてポリウレタンを製造するに当たり、長鎖ポリオールと鎖延長剤とが有する活性水素原子1モルに対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が0.95~1.05モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。
【0027】
ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、長鎖ポリオール、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
【0028】
上述したポリウレタンとしては、熱可塑性ポリウレタン材料を用いることが好ましく、特にエーテル系熱可塑性ポリウレタン材料であることが好適である。熱可塑性ポリウレタン材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えば、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」や、大日精化工業社製の商品名「レザミン」などを挙げることができる。
【0029】
(A-2)ポリウレア
ポリウレアは、(i)イソシアネートと(ii)アミン末端化合物との反応により生成するウレア結合を主体にした樹脂組成物である。この樹脂組成物について以下に詳述する。
【0030】
(i)イソシアネート
イソシアネートは、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はなく、上記ポリウレタン材料で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0031】
(ii)アミン末端化合物
アミン末端化合物は、分子鎖の末端にアミノ基を有する化合物であり、本発明では、以下に示す長鎖ポリアミン及び/又はアミン系硬化剤を用いることができる。
【0032】
長鎖ポリアミンは、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000~5,000であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は1,500~4,000であり、更に好ましくは1,900~3,000である。上記長鎖ポリアミンの具体例としては、アミン末端を持つ炭化水素、アミン末端を持つポリエーテル、アミン末端を持つポリエステル、アミン末端を持つポリカーボネート、アミン末端を持つポリカプロラクトン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの長鎖ポリアミンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
一方、アミン系硬化剤は、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000未満であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は800未満であり、更に好ましくは600未満である。上記アミン系硬化剤の具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン、テトラヒドロキシプロピレンエチレンジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンの誘導体、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、ジエチレングリコールジ-(アミノプロピル)エーテル、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、イミド-ビス-プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス-(2-クロロアニリン)、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,6-トルエンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン及びその誘導体、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、N,N’-ジアルキルアミノ-ジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチレンアニリン)、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチルアニリン)、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのアミン系硬化剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(iii)ポリオール
ポリウレアには、必須成分ではないが、上述した(i)成分及び(ii)成分に加えて更にポリオールを配合することができる。このポリオールとして、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はないが、具体例として、以下に示す長鎖ポリオール及び/又はポリオール系硬化剤を例示することができる。
【0035】
長鎖ポリオールとしては、従来からポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、より好ましくは1,700~3,500である。この数平均分子量の範囲であれば、反発性及び生産性等がより一層優れるものとなる。
【0037】
ポリオール系硬化剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が1000未満である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。また、上記ポリオール系硬化剤の、好ましい数平均分子量は800未満であり、より好ましくは600未満である。
【0038】
上記ポリウレアの製造方法については、公知の方法を採用し得、プレポリマー法、ワンショット法等の公知の方法を適宜選択すればよい。
【0039】
上記(A)成分の材料硬度については、ゴルフボールとして得られるスピン特性や耐擦過傷性の点から、ショアD硬度で65以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、より好ましくはショアD硬度で55以下、更に好ましくは50以下、最も好ましくは45以下である。また、その下限値としては、成型性の点からショアD硬度で35以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で38以上、更に好ましくは40以上である。
【0040】
上記(A)成分の反発弾性率は、ゴルフボール打撃時の初速性能や、耐擦過傷性、アプローチスピンなどのゴルフボール諸物性の点から、40%以上であることが好ましく、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上である。反発弾性の上限としては、70%以下であることが好ましく、より好ましくは68%以下、更に好ましくは65%以下である。上記の反発弾性率は、JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定される。
【0041】
上記(A)成分はカバーを構成する樹脂組成物の主材であり、ウレタン樹脂が有する耐擦過傷性を十分に付与する点から、樹脂組成物の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0042】
本発明では、カバーを構成する樹脂組成物には、(B)成分としてメタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体を配合する。特に、後述される(C)成分の、(A)成分であるウレタン樹脂等への分散性を向上させる役目として(B)成分が使用される。以下、(B)成分について詳述する。
【0043】
(B)成分のアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体は、アクリル酸アルキルとメタクリル酸アルキルとを共重合させたアクリル系加工助剤である。熱可塑性樹脂へ添加することにより、溶融弾性の付与および溶融張力の向上を図ることが可能である。この効果は、当該共重合体の分子鎖がマトリックス樹脂の分子と絡まることで、疑似架橋状態を作り出すことにより発現するとされている。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられ特に制限はなく、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中ではメタクリル酸メチル、メタクリル酸-n-ブチル等のエステル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられるが、特に制限はなく、これらは1種単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、エステル基の炭素数が2~4のアクリル酸アルキルエステルが好ましいが、得られる共重合体組成物が熱可塑性樹脂への相溶性が制御され、より滑性を付与できる樹脂用加工助剤となることから、アクリル酸-n-ブチルを使用することが特に好ましい。アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体の重量平均分子量としては、20万から500万が好ましく、35万から350万が更に好ましく、50万から200万が特に好ましい。市販品としては、例えば、カネカ社製の加工性加工助剤の「カネエースPAシリーズ」や、三菱ケミカル社製のアクリル系加工助剤の「メタブレンPタイプ」などが挙げられる。
【0044】
(B)成分の配合量については、上記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以下であり、より好ましくは1.4質量部以下である。この値を超えると、耐擦過傷性が低下したり、打撃時のスピン性能が悪くなるおそれがある。上記の配合量の下限値は、上記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましく0.1質量部以上である。この値より少ないと、優れた金型離型性が得られない場合がある。
【0045】
また本発明では、カバーを形成する樹脂組成物の成形時の離型性を改善するために、(C)成分として脂肪酸アミドを配合する。本発明で用いる脂肪酸アミドは、ビスアミド系とモノアミド系とに分けられる。脂肪酸アミド系は、化学的に中性で安定した化合物であるが、分子内に長鎖のアルキル基と極性の大きいアミド基とを持っており、アミド基の水素と他分子の酸素との間に水素結合を作り、鎖状または網状のポリマーを形成して特異な物性を示す。モノアミド系としては、例えば、炭素数8~22の飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸アミド、N-メチロール脂肪酸アミドなどが挙げられる。ビスアミド系としては、例えば、炭素数8~22の飽和もしくは不飽和脂肪酸を用いたメチレンビスアミド、エチレンビスアミドなどが挙げられる。本発明では、特に限定されるものではないが、脂肪酸アミドとしては一般に市販されているものから好適に選択され、ウレタンとの相溶性の観点から、不飽和脂肪酸ビスアミドが好ましく用いられ、エチレンビスオレイン酸アミドなどが好ましい。また、エチレンビスステアリン酸アミドが性能面、価格面でのバランスの点で好ましい。エチレンビスオレイン酸アミドの市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製のスリパックスOなどが挙げられ、エチレンビスステアリン酸アミドの市販品としては、例えば、花王(株)製のカオーワックスEB-P、EB-FF、EB-G、三菱ケミカル(株)製のスリパックスEなどが挙げられる。
【0046】
(C)成分の配合量については、上記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以下であり、より好ましくは0.9質量部以下、さらに好ましくは0.8質量部以下である。この値を超えると、塗膜耐久性が低下したり、打撃時のスピン性能が悪くなるおそれがある。なお、上記の配合量の下限値は、上記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましく0.08質量部以上であることが好適である。
【0047】
上記(A)~(C)成分については、マスターバッチ(MB)を使用して樹脂組成物を調製することもできる。即ち、下記(i)及び(ii)の工程
(i)上記(B)成分及び(C)成分を含有するマスターバッチを作製する工程
(ii)上記マスターバッチを上記(A)成分に混合することにより、上記(A)~(C)成分を含有した樹脂組成物を得る工程
を備えて、樹脂組成物を調製することもできる。(A)、(B)及び(C)成分を一度に投入するよりも、上記の滑剤マスターバッチを調製し、次いで、これらの成分をベース樹脂であるウレタン樹脂に配合することにより、(C)成分の分散性がより一層高まり、離型性を向上させることができる。
【0048】
上記(A)、(B)及び(C)を含有する樹脂組成物には、上述した樹脂成分以外に、他の樹脂材料を配合してもよい。その目的は、ゴルフボール用樹脂組成物の更なる流動性の向上や反発性、割れ耐久性、耐擦過傷性、スピン性能、コントロール性能などの諸物性を高めるなどの点からである。
【0049】
他の樹脂材料としては、これに限定されるものではないが、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体又はその変性物、ポリアセタール、ポリエチレン、ナイロン樹脂、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド及びポリアミドイミドなどから選ばれ、その1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
また、上記樹脂組成物には、更に、活性のあるイソシアネート化合物を含むことができる。この活性イソシアネート化合物は、主成分であるポリウレタン又はポリウレアと反応して、樹脂組成物全体の耐擦過傷性を更に向上させることができるほか、イソシアネートの可塑化効果により流動性を向上させて成型性を向上させることができる。
【0051】
上記のイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタンに使用されているイソシアネート化合物であれば特に制限なく用いることができ、例えば芳香族イソシアネート化合物としては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート又はこれら両者の混合物、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネートなどが挙げられ、これら芳香族イソシアネート化合物の水添物、例えばジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを用いることもできる。また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。更に、末端に2個以上のイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基と活性水素を有する化合物とを反応させたブロックイソシアネート化合物や、イソシアネートの二量化によるウレチジオン体などが挙げられる。
【0052】
上記のイソシアネート化合物の配合量は、(A)成分であるポリウレタンまたはポリウレア樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、上限値としては、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。この配合量が少なすぎると、十分な架橋反応が得られず、物性の向上が認められない場合がある。一方、この配合量が多すぎると、経時、熱や紫外線による変色が大きくなり、あるいは、熱可塑性を失ってしまったり、反発の低下等の問題が生じる場合がある。
【0053】
更に、上記樹脂組成物には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、本発明のゴルフボール用材料をカバー材として用いる場合、上記成分に、充填剤(無機フィラー)、有機短繊維、補強剤、架橋剤、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0054】
上記樹脂組成物の反発弾性率については、ゴルフボール打撃時の初速性能や、耐擦過傷性、アプローチスピン量の向上のために、JIS-K 6255:2013規格の測定で40%以上が好ましく、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上であり、上限値は、好ましくは70%以下、より好ましくは68%以下、更に好ましくは65%以下である。
【0055】
また、上記樹脂組成物の材料硬度については、耐擦過傷性や適切なアプローチスピン量を付与する観点から、ショアD硬度で65以下であることが好適であり、好ましくは60以下、より好ましくは55以下、更に好ましくは50以下、最も好ましくは45以下である。その下限値としては、成型性の点から、ショアD硬度で35以上が好ましく、より好ましくは38以上、更に好ましくは40以上である。
【0056】
上記カバーの反発弾性率を材料硬度ショアD硬度の値で除した値は、例えば、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度43、反発弾性62%)の場合は1.4、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度47、反発弾性54%)の場合は1.1、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度56、反発弾性60%)の場合は0.9、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度64、反発弾性43%)の場合は0.7となり、よりアプローチスピンなどのゴルフボール諸物性が好ましい軟硬度のウレタンの方が高い値となる。即ち、上記カバーの反発弾性率を材料硬度ショアD硬度の値で除した値は、ゴルフボール打撃時の初速性能や、アプローチスピンなどのゴルフボール諸物性の観点から、0.5以上であることが好適であり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、最も好ましくは1.0以上である。また打感などの観点から、上限としては2.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下である。
【0057】
上記樹脂組成物の各成分の調製方法については、例えば、混練型(単軸又は)二軸押出機,バンバリー,ニーダー,ラボプラストミル等の各種の混練機を用いて混合することができ、或いは、樹脂組成物の射出成形時にドライブレンドにより各成分を混合しても良い。更に、上記の活性イソシアネート化合物を用いる場合には、各種混練機を用いて樹脂混合時に含有させてもよく、または、予め活性イソシアネート化合物やその他の成分を含有したマスターバッチを別途用意し、樹脂組成物の射出成形時にドライブレンドすることにより、各成分を混合しても良い。
【0058】
例えば、上記樹脂組成物によりカバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の樹脂組成物を供給し、コアの周囲に溶融した樹脂組成物を射出することによりカバーを成形することができる。この場合、成形温度としては、主成分である(A)ポリウレタン又はポリウレア等の種類によって異なるが、通常150~270℃の範囲である。
【0059】
カバーの厚さは、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上であり、上限として、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下であり、最も好ましくは1.0mm以下である。
【0060】
本発明のゴルフボールには、空気力学的性能の点から、最外層の表面に多数のディンプルが設けられる。上記最外層表面に形成されるディンプルの個数については、特に制限はないが、空気力学的性能を高め飛距離を増大させる点から、好ましくは250個以上、より好ましくは270個以上、さらに好ましくは290個以上、最も好ましくは300個以上であり、上限値として、好ましくは400個以下、より好ましくは380個以下、さらに好ましくは360個以下である。
【0061】
本発明では、カバー表面には塗料層が形成される。この塗料層を形成する塗料としては、2液硬化型ウレタン塗料を採用することが好適である。具体的には、この場合、上記2液硬化型ウレタン塗料は、ポリオール樹脂を主成分とする主剤と、ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤とを含むものである。
【0062】
カバー表面に上記の塗料を塗装して塗料層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、エアガン塗装法や静電塗装法等、所望の方法を用いることができる。
【0063】
塗料層の厚さについては、特に制限はないが、通常、8~22μm、好ましくは10~20μmである。
【0064】
なお、本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさで42.80mm以下、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【実施例0065】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0066】
〔実施例1~3、比較例1~3〕
共通するコア
表1に示す配合により、全ての例に共通するコア用のゴム組成物を調製・加硫成形することにより直径38.6mmのコアを作製した。
【0067】
【表1】
【0068】
上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「cis-1,4-ポリブタジエン」JSR社製、商品名「BR01」
・「アクリル酸亜鉛」日本触媒社製
・「酸化亜鉛」堺化学工業社製
・「硫酸バリウム」堺化学工業社製
・「老化防止剤」商品名「ノクラックNS6」(大内新興化学工業社製)
・「有機過酸化物(1)」ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・「有機過酸化物(2)」1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・「ステアリン酸亜鉛」日油社製
【0069】
共通する中間層
直径38.6mmのコアの周囲に中間層用の樹脂材料を射出成形し、厚さ1.25mmの中間層を有する中間層被覆球体を作製した。この中間層用の樹脂材料は、全ての例に共通する樹脂配合であり、酸含量18質量%のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム中和物50質量部と、酸含量15質量%のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の亜鉛中和物50質量部との合計100質量部とするブレンド物である。
【0070】
カバー(最外層)
次に、中間層被覆球体の周囲に下記表2に示す最外層のカバー樹脂組成物を射出成形し、厚さ0.8mmの最外層を有する直径42.7mmのスリーピースゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成された。なお、カバーの樹脂組成物については、下記の表2に示す各成分の配合量となるように設計し、離型性評価用に用意した離型性の悪い金型を用いて、成形温度200~250℃で射出成形した。
【0071】
下記表2中の組成物中の含有成分の詳細は、以下の通りである。
・「TPU」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度「43」、反発弾性率「61%」)
・「アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体」三菱ケミカル社製の商品名「メタブレンP-501A」質量平均分子量70万
【0072】
樹脂組成物の物性
(1)ショアD硬度
樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、23±2℃の温度下にて2週間放置した。測定時には3枚のシートが重ね合わされる。ASTM D2240規格に準拠したショアD硬度計にて、樹脂の材料硬度を計測した。硬度の測定には、はショアD型硬度計を取り付けた高分子計器(株)製の自動ゴム硬度計「P2」を用いる。
(2)反発弾性率
JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定した樹脂組成物の反発弾性率を表2に示す。
【0073】
各ゴルフボールのアプローチ時のスピン量、耐擦過傷性、塗膜耐久性及び成型性(離型性)を下記の方法で評価する。その結果を表2に示す。
【0074】
アプローチ時のスピン量
ゴルフ打撃ロボットにサンドウェッジ(SW)を装着し、ヘッドスピード(HS)20m/sで打撃した直後の初速及びバックスピン量を初期条件計測装置により測定する。なお、比較例1~3においては成形性(離型性)が悪く試験可能なサンプル取得数に限りがあったため、比較例2、3のスピン量は測定しなかった。
【0075】
耐擦過傷性の評価
ボールを23℃に保温するとともに、スウィングロボットマシンを用い、クラブはピッチングウェッジ(PW)を使用して、ヘッドスピード33m/sで各ボールを各5球ずつ打撃し、打撃傷を以下の基準で目視にて評価する。
〇 ・・・ 全く傷がついていない、若しくはやや傷がついているがほとんど目立たない。
× ・・・ 大きく傷がついている。
【0076】
塗膜耐久性
成形後のゴルフボールに通常工程にて塗装処理を施し、1週間放置した後、密封された容器にボールと砂水とを入れ、回転による2時間の磨耗試験を行い、表面塗装の剥れ具合を確認し、下記基準により評価した。
〈判定基準〉
○ ・・・ 塗装の剥れが全くないか、ほとんど確認されない。
× ・・・ 塗装の剥れが数箇所に確認された。
【0077】
成型性(離型性)
カバー射出成形後の金型からの離型性を以下の基準で各例のボールを評価した。
〈判定基準〉
◎ ・・・ 離型時に成形体が金型に付着せず、ランナー切れやピン付き等の外傷が生じない。
○ ・・・ 離型時に成形体が金型にやや付着するが、ランナー切れやピン付き等の外傷が生じない。
× ・・・ 離型時に成形体が金型に付着し、ランナー切れやピン付き等の外傷が生じる。
【0078】
【表2】
【0079】
表2の結果に示されるように、本実施例1~3のゴルフボールは離型性に優れていることが分かる。また、実施例1~3は、アプローチ時のスピン量、耐擦過傷性及び塗膜耐久性が良好に維持されていることが分かる。一方、比較例1は、は、カバー材料に(B)成分及び(C)成分が含まれておらず、カバー成形時の離型性が十分ではないことが分かる。また、比較例2及び比較例3は、カバー材料に(B)成分または(C)成分のどちらか一方しか含まれておらず、カバー成形時の離型性が十分でないことが分かる。
【符号の説明】
【0080】
G ゴルフボール
1 コア
2 中間層(カバー)
3 最外層(カバー)
D ディンプル
図1