(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176890
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】暖機動作プログラム作成方法および暖機動作プログラム作成装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089454
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】平松 翔太
(72)【発明者】
【氏名】元▲吉▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】滝川 淳一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707LS14
3C707LS20
3C707LV12
3C707LV20
3C707LW03
(57)【要約】
【課題】正確かつ迅速に暖機動作を行うことができる暖機動作プログラム作成方法および暖機動作プログラム作成装置を提供すること。
【解決手段】第2ステップで作成される暖機動作プログラムにおいて、ロボットアームの暖機動作は、第1ステップで取得した作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、ロボットアームが暖機目標温度で安定するのに要する時間は、暖機動作として作業動作と同じ動作を行った際に暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業動作プログラムに基づいて所定の作業を行うロボットアームを有するロボットが、前記作業の開始前に前記ロボットアームの暖機動作を行うための暖機動作プログラムを作成する暖機動作プログラム作成方法であって、
前記作業動作プログラムを取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記作業動作プログラムにおける前記ロボットアームの速度、前記ロボットアームの加速度および前記ロボットアームの待機時間のうちの少なくとも1つを変更することで、前記暖機動作プログラムを作成する第2ステップと、を有し、
前記第2ステップで作成される前記暖機動作プログラムにおいて、
前記ロボットアームの前記暖機動作は、前記第1ステップで取得した前記作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、
前記ロボットアームが暖機目標温度で安定するのに要する時間は、前記暖機動作として前記作業動作と同じ動作を行った際に前記暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短いことを特徴とする暖機動作プログラム作成方法。
【請求項2】
前記第2ステップでは、前記ロボットアームの温度が前記暖機目標温度で安定するために必要な前記暖機動作のサイクル数n(nは自然数)を算出する請求項1に記載の暖機動作プログラム作成方法。
【請求項3】
前記第2ステップでは、前記暖機動作の後に行う作業動作の1サイクル回で前記暖機目標温度に達する場合、前記暖機動作プログラムで実行される前記暖機動作のサイクル数をn-1(nは2以上の自然数)とする請求項2に記載の暖機動作プログラム作成方法。
【請求項4】
前記第2ステップに先立って、前記暖機動作の開始前の前記ロボットアームの環境温度を取得し、
前記第2ステップでは、前記環境温度の情報を利用して、前記暖機動作プログラムを作成する請求項1に記載の暖機動作プログラム作成方法。
【請求項5】
前記第2ステップでは、前記ロボットアームの速度、前記ロボットアームの加速度および前記ロボットアームの待機時間のうち、前記ロボットアームの待機時間の短縮または削除を優先的に行う請求項1に記載の暖機動作プログラム作成方法。
【請求項6】
作業動作プログラムに基づいて所定の作業を行うロボットアームを有するロボットが、前記作業の開始前に前記ロボットアームの暖機動作を行うための暖機動作プログラムを作成する暖機動作プログラム作成装置であって、
前記作業動作プログラムを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記作業動作プログラムにおける前記ロボットアームの速度、前記ロボットアームの加速度および前記ロボットアームの待機時間のうちの少なくとも1つを変更することで、前記暖機動作プログラムを作成する作成部と、を有し、
前記作成部によって作成される前記暖機動作プログラムにおいて、
前記ロボットアームの前記暖機動作は、前記取得部が取得した前記作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、
前記ロボットアームが暖機目標温度で安定するのに要する時間は、前記暖機動作として前記作業動作と同じ動作を行った際に前記暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短いことを特徴とする暖機動作プログラム作成装置。
【請求項7】
前記暖機動作プログラムの前記暖機動作により、前記ロボットアームが前記暖機目標温度で安定するのに要する時間および前記暖機動作のサイクル数nのうちの少なくとも1つを表示する表示部を備える請求項6に記載の暖機動作プログラム作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖機動作プログラム作成方法および暖機動作プログラム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場では人件費の高騰や人材不足により、ロボットアームを有するロボットを用いて製造、加工、組み立て等の作業が行われるようになり、人手で行われてきた作業の自動化が加速している。
【0003】
このようなロボットは、ロボットアームの各所に設置されたモーターの駆動による発熱によって、ロボットアームの温度が上昇してロボットアームが熱膨張し、ロボットアームの長さが変化する。そのため、作業者は、ロボットを用いて作業を行うに際して、作業開始前にロボットアームに暖機動作を行わせて所定の目標温度に到達させる。そして、ロボットアームが所定の目標温度に到達したときの寸法で最適な動作を行うよう、ロボットアームの動作設定を行う。これにより、作業動作における作業精度を高めることができる。
【0004】
このような暖機動作を行うための動作プログラムは、例えば、特許文献1に記載されているような暖機運転計画装置を用いて作成される。特許文献1に記載されている暖機運転計画装置では、予め記憶されている複数の暖機運転プログラムの中から選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている暖機運転計画装置では、予め記憶されている複数の暖機運転プログラムの中に、適正な暖機運転プログラムが存在するとは限らない。適正ではない暖機運転プログラムを用いて暖機運転を行うと、暖機運転にかかる時間が過剰に長くなってしまうおそれがあり、迅速に作業に移行することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の適用例にかかる暖機動作プログラム作成方法は、作業動作プログラムに基づいて所定の作業を行うロボットアームを有するロボットが、前記作業の開始前に前記ロボットアームの暖機動作を行うための暖機動作プログラムを作成する暖機動作プログラム作成方法であって、
前記作業動作プログラムを取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記作業動作プログラムにおける前記ロボットアームの速度、前記ロボットアームの加速度および前記ロボットアームの待機時間のうちの少なくとも1つを変更することで、前記暖機動作プログラムを作成する第2ステップと、を有し、
前記第2ステップで作成される前記暖機動作プログラムにおいて、
前記ロボットアームの前記暖機動作は、前記第1ステップで取得した前記作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、
前記ロボットアームが暖機目標温度で安定するのに要する時間は、前記暖機動作として前記作業動作と同じ動作を行った際に前記暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短いことを特徴とする。
【0008】
本発明の適用例にかかる暖機動作プログラム作成装置は、作業動作プログラムに基づいて所定の作業を行うロボットアームを有するロボットが、前記作業の開始前に前記ロボットアームの暖機動作を行うための暖機動作プログラムを作成する暖機動作プログラム作成装置であって、
前記作業動作プログラムを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記作業動作プログラムにおける前記ロボットアームの速度、前記ロボットアームの加速度および前記ロボットアームの待機時間のうちの少なくとも1つを変更することで、前記暖機動作プログラムを作成する作成部と、を有し、
前記作成部によって作成される前記暖機動作プログラムにおいて、
前記ロボットアームの前記暖機動作は、前記取得部が取得した前記作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、
前記ロボットアームが暖機目標温度で安定するのに要する時間は、前記暖機動作として前記作業動作と同じ動作を行った際に前記暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短いことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の暖機動作プログラム作成方法を実行する暖機動作プログラム作成装置の第1実施形態を備えるロボットシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すロボットシステムのブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す暖機動作プログラム作成装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、暖機動作において、作業動作と同じ動作を行った場合のロボットアームの速度および温度の経時的な変化の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】
図5は、暖機動作において、暖機動作プログラムを用いた場合のロボットアームの速度および温度の経時的な変化の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、暖機動作プログラムの作成の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の暖機動作プログラム作成方法および暖機動作プログラム作成装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の暖機動作プログラム作成方法を実行する暖機動作プログラム作成装置の第1実施形態を備えるロボットシステムの全体構成を示す図である。
図2は、
図1に示すロボットシステムのブロック図である。
図3は、
図2に示す暖機動作プログラム作成装置のブロック図である。
図4は、暖機動作において、作業動作と同じ動作を行った場合のロボットアームの速度および温度の経時的な変化の一例を示すタイムチャートである。
図5は、暖機動作において、暖機動作プログラムを用いた場合のロボットアームの速度および温度の経時的な変化の一例を示すタイムチャートである。
図6は、暖機動作プログラムの作成の一例を示すフローチャートである。
【0012】
なお、以下では、説明の便宜上、ロボットアームについては、
図1中の基台11側を「基端」、その反対側、すなわち、エンドエフェクター20側を「先端」とも言う。
【0013】
図1に示すように、ロボットシステム100は、ロボット1と、ロボット1の各部の作動を制御する制御装置3と、本発明の暖機動作プログラム作成装置4と、を備える。
【0014】
まず、ロボット1について説明する。
図1に示すロボット1は、本実施形態では単腕の6軸垂直多関節ロボットであり、基台11と、ロボットアーム10と、を有する。また、ロボットアーム10の先端部にエンドエフェクター20を装着することができる。なお、エンドエフェクター20は、ロボット1の構成要件であってもよく、ロボット1とは別部材、すなわち、ロボット1の構成要件でなくてもよい。
【0015】
なお、ロボット1は、図示の構成に限定されず、例えば、双腕型の多関節ロボットであってもよい。また、ロボット1は、水平多関節ロボットであってもよい。
【0016】
基台11は、ロボットアーム10をその基端側において、駆動可能に支持する支持体であり、例えば工場内の床に固定されている。ロボット1は、基台11が中継ケーブルを介して制御装置3と電気的に接続されている。なお、ロボット1と制御装置3との接続は、
図1に示す構成のように有線による接続に限定されず、例えば、無線による接続であってもよい。また、インターネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0017】
本実施形態では、ロボットアーム10は、第1アーム12と、第2アーム13と、第3アーム14と、第4アーム15と、第5アーム16と、第6アーム17とを有し、これらのアームが基台11側からこの順に連結されている。なお、ロボットアーム10が有するアームの数は、6つに限定されず、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは7つ以上であってもよい。また、各アームの全長等の大きさは、それぞれ、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0018】
基台11と第1アーム12とは、関節171を介して連結されている。そして、第1アーム12は、基台11に対し、鉛直軸方向に延びる第1回動軸を回動中心とし、その第1回動軸回りに回動可能となっている。このように、第1回動軸は、基台11が固定される床の床面の法線と一致しており、ロボットアーム10の全体が第1回動軸の軸回りに正方向・逆方向のいずれへも回転することができる。
【0019】
第1アーム12と第2アーム13とは、関節172を介して連結されている。そして、第2アーム13は、第1アーム12に対し、水平方向に延びる第2回動軸を回動中心として回動可能となっている。
【0020】
第2アーム13と第3アーム14とは、関節173を介して連結されている。そして、第3アーム14は、第2アーム13に対し水平方向に延びる第3回動軸を回動中心として回動可能となっている。第3回動軸は、第2回動軸と平行である。
【0021】
第3アーム14と第4アーム15とは、関節174を介して連結されている。そして、第4アーム15は、第3アーム14に対し、第3アーム14の中心軸方向と平行な第4回動軸を回動中心として回動可能となっている。第4回動軸は、第3回動軸と直交している。
【0022】
第4アーム15と第5アーム16とは、関節175を介して連結されている。そして、第5アーム16は、第4アーム15に対して第5回動軸を回動中心として回動可能となっている。第5回動軸は、第4回動軸と直交している。
【0023】
第5アーム16と第6アーム17とは、関節176を介して連結されている。そして、第6アーム17は、第5アーム16に対して第6回動軸を回動中心として回動可能となっている。第6回動軸は、第5回動軸と直交している。
【0024】
また、第6アーム17は、ロボットアーム10の中で最も先端側に位置するロボット先端部となっている。この第6アーム17は、ロボットアーム10の駆動により、エンドエフェクター20ごと変位することができる。
【0025】
図1に示すエンドエフェクター20は、ワークまたは工具を把持することができる把持部を有する構成である。第6アーム17にエンドエフェクター20を装着した状態では、エンドエフェクター20の先端部は、制御点TCPとなる。
【0026】
ロボット1は、駆動部としてのモーターM1、モーターM2、モーターM3、モーターM4、モーターM5およびモーターM6と、エンコーダーE1、エンコーダーE2、エンコーダーE3、エンコーダーE4、エンコーダーE5およびエンコーダーE6とを備える。モーターM1は、関節171に内蔵され、基台11に対し第1アーム12を前記第1回動軸回りに回転させる。モーターM2は、関節172に内蔵され、第1アーム12と第2アーム13とを前記第2回動軸回りに相対的に回転させる。モーターM3は、関節173に内蔵され、第2アーム13と第3アーム14とを前記第3回動軸回りに相対的に回転させる。モーターM4は、関節174に内蔵され、第3アーム14と第4アーム15とを前記第4回動軸回りに相対的に回転させる。モーターM5は、関節175に内蔵され、第4アーム15と第5アーム16とを前記第5回動軸回りに相対的に回転させる。モーターM6は、関節176に内蔵され、第5アーム16と第6アーム17とを前記第6回動軸回りに相対的に回転させる。
【0027】
また、エンコーダーE1は、関節171に内蔵され、モーターM1の位置を検出する。エンコーダーE2は、関節172に内蔵され、モーターM2の位置を検出する。エンコーダーE3は、関節173に内蔵され、モーターM3の位置を検出する。エンコーダーE4は、関節174に内蔵され、モーターM4の位置を検出する。エンコーダーE5は、第5アーム16に内蔵され、モーターM5の位置を検出する。エンコーダーE6は、第6アーム17に内蔵され、モーターM6の位置を検出する。なお、ここで言う「位置を検出」とは、モーターの回転角すなわち正逆を含む回転量および角速度を検出することを言い、当該検出された情報を「位置情報」と言う。
【0028】
図2に示すように、モータードライバーD1~モータードライバーD6は、それぞれ、対応するモーターM1~モーターM6に接続され、これら各モーターの駆動を制御する。モータードライバーD1~モータードライバーD6は、それぞれ、関節171、関節172、関節173、関節174、第5アーム16および第6アーム17に内蔵されている。
【0029】
エンコーダーE1~エンコーダーE6、モーターM1~モーターM6およびモータードライバーD1~モータードライバーD6は、それぞれ、制御装置3と電気的に接続されている。エンコーダーE1~エンコーダーE6で検出されたモーターM1~モーターM6の位置情報、すなわち、回転量は、制御装置3に電気信号として送信される。そして、この位置情報に基づいて、制御装置3は、
図2に示すモータードライバーD1~モータードライバーD6に制御信号を出力し、モーターM1~モーターM6を駆動させる。すなわち、ロボットアーム10を制御するということは、モーターM1~モーターM6の駆動を制御して、ロボットアーム10に属する第1アーム12~第6アーム17の作動を制御することである。
【0030】
ロボットアーム10の先端部には、エンドエフェクター20を着脱可能に装着することができる。本実施形態では、エンドエフェクター20は、互いに接近離間可能な一対の爪部を有し、各爪部によりワークまたは工具を把持、解除するハンドで構成される。このエンドエフェクター20に装着された力検出器は、両爪部でワークを把持した際の把持力の反力の大きさや向きを検出することができる。
【0031】
なお、エンドエフェクター20としては、図示の構成に限定されず、例えば吸着部を有し、該吸着部の吸着によりワークまたは工具を把持する構成のものであってもよい。また、エンドエフェクター20としては、例えば、研磨機、研削機、切削機、スプレーガン、レーザー光照射器、ドライバー、レンチ等の工具であってもよい。
【0032】
次に、制御装置3および暖機動作プログラム作成装置4について説明する。
図1に示すように、制御装置3は、本実施形態では、ロボット1と離れた位置に設置されている。ただし、この構成に限定されず、制御装置3は、基台11に内蔵されていてもよい。また、制御装置3は、ロボット1の駆動を制御する機能を有し、前述したロボット1の各部と電気的に接続されている。制御装置3は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、を有する。これらの各部は、例えばバスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
制御部31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成され、記憶部32に記憶されている動作プログラム等の各種プログラムを読み出し、実行する。制御部31で生成された信号は、通信部33を介してロボット1の各部に送信され、ロボット1の各部からの信号は、通信部33を介して制御部31で受信される。これにより、ロボットアーム10が所定の作業を所定の条件で実行することができる。
【0034】
記憶部32は、制御部31で実行される各種プログラム等を保存する。記憶部32としては、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリー、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリー、着脱式の外部記憶装置等を有する構成のものが挙げられる。
【0035】
通信部33は、例えば有線LAN(Local Area Network)、無線LAN等の外部インターフェースを用いて制御装置3との間で信号の送受信を行う。この場合、図示しないサーバーを介して通信を行ってもよく、また、インターネット等のネットワークを介して通信を行ってもよい。
【0036】
図1、
図2および
図3に示すように、暖機動作プログラム作成装置4は、作業(作業動作)の開始前にロボットアーム10の暖機動作を行うための暖機動作プログラムを作成する装置である。
【0037】
本明細書において、作業動作とは、ロボットアーム10を所望の動作経路で駆動して、ロボットアーム10の先端部のエンドエフェクター20によりワークの製造、加工、塗装、組み立て等の各種作業を行う動作を言う。
【0038】
また、暖機動作とは、作業動作の開始前に行われる動作であって、ロボットアーム10を所望の動作経路で駆動してロボットアーム10の各部の温度を所定温度まで上昇させる動作を言う。ロボットアーム10の駆動は、モーターM1~M6の駆動によりなされるが、その際、モーターM1~M6が発熱し、ロボットアーム10の各部が昇温する。
【0039】
作業動作プログラムは、作業動作を実行するためのプログラムであり、暖機動作プログラブは、暖機動作を実行するためのプログラムである。
【0040】
暖機動作プログラム作成装置4は、表示部であるディスプレイ40と、入力操作部44と、を有し、本実施形態では、ノート型パソコンで構成される。
【0041】
なお、暖機動作プログラム作成装置4は、ロボットアーム10に対して作業動作プログラムの教示を行う教示装置を兼ねていてもよい。
【0042】
入力操作部44は、キーボードおよび図示しないマウスで構成され、ユーザーまたは作業者(以下単に「ユーザー」と言う。)がこれらを適宜操作することによって、各種情報の入力操作が行われる。ディスプレイ40は、例えば、液晶、有機EL等により構成され、各種表示画面をカラーまたはモノクロで表示することができる。なお、暖機動作プログラム作成装置4は、ノート型パソコンに限らず、デスクトップ型パソコン、タブレット型端末でもよい。なお、入力操作部44で入力した情報を取り込む端子が、取得部47を構成する。取得部47が取得する情報としては、作業動作を実行するための作業動作プログラムや、ロボット1の環境温度に関する情報等が挙げられる。このように、取得部47は、作業動作プログラム取得部とも言える。
【0043】
作業動作プログラムには、ロボットアーム10に設定される制御点TCPの位置および姿勢に関する情報や、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度および待機時間に関する情報が含まれる。制御点TCPの位置および姿勢に関する情報は、各関節171~176の経時的な回転位置に関する情報のことである。ロボットアーム10の速度に関する情報は、各関節171~176の回転速度、各関節171~176の加速度のことを言う。
【0044】
シミュレーション実行部41は、CPUやGPU等の少なくとも1つのプロセッサーで構成され、記憶部45に記憶されている、ロボットアーム10の駆動による発熱シミュレーションモデルを用いてシミュレーションを行う。シミュレーション実行部41が発熱シミュレーションモデルを用いてシミュレーションを行うことにより、所定の動作条件で動作させた場合のロボットアーム10の経時的な温度推移に関する情報を取得することができる。この情報の一例としては、
図5に示すようなタイムチャートが挙げられる。
【0045】
作成部42は、CPUやGPU等の少なくとも1つのプロセッサーで構成される演算部であり、記憶部45に記憶されているプログラムを読み出し、実行する。すなわち、後述するように、作業動作プログラムのロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度および待機時間のうちの少なくとも1つを変更して、暖機動作プログラムを作成する。このように、作成部42は、暖機動作プログラム取得部とも言える。
【0046】
表示制御部43は、ディスプレイ40の作動を制御する機能を有する。表示制御部43は、CPUやGPU等の少なくとも1つのプロセッサーで構成され、記憶部45に記憶されているプログラムを読み出し、実行する。これにより、ディスプレイ40に表示される表示情報を指定することができる。この表示情報としては、例えば、シミュレーション実行部41が実行したシミュレーションの結果や、算出した暖機動作に要する時間および暖機動作のサイクル数n等が挙げられる。
【0047】
記憶部45としては、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリー、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリー、着脱式の外部記憶装置等を有する構成のものが挙げられる。また、記憶部45には、取得部47が取得した情報、特に作業動作プログラムや、作成部42が作成した暖機動作プログラムが記憶される。
【0048】
通信部46は、例えば有線LAN(Local Area Network)、無線LAN等の外部インターフェースを用いて制御装置3との間で信号の送受信を行う。この場合、図示しないサーバーを介して通信を行ってもよく、また、インターネット等のネットワークを介して通信を行ってもよい。通信部46は、記憶部45に記憶された動作プログラムに関する情報等を制御装置3に送信する。また、通信部46は、記憶部32に記憶された情報を受信し、記憶部45に当該情報を記憶することもできる。
【0049】
ここで、ロボットアーム10は、モーターM1~モーターM6の作動に伴う発熱により、温度が上昇する。このため、ロボットアーム10の熱膨張により若干ではあるが寸法変化が生じることがある。この寸法変化が作業動作中に起こると、その影響で作業精度が低下するおそれがある。このようなことから、作業動作を行うのに先立って、ロボットアーム10に暖機動作を行わせロボットアーム10の温度を所定温度に上げておく。本実施形態においては、「所定温度」を飽和温度に設定する。飽和温度は、暖機目標温度であり、これ以上温度が上がっても、ロボットアーム10の熱膨張による寸法変化が許容できる程度の温度、または、温度上昇がある程度収束し、安定する温度のことを言う。一般的には、飽和温度は、55℃以上であり、75℃程度とされる。暖機動作の目的は、作業前にロボットアーム10を飽和温度以上で安定させることである。なお、「所定温度」は飽和温度とは異なる温度に設定してもよい。
【0050】
ロボットアーム10が暖機動作を行うことにより、作業前にロボットアーム10の温度を飽和温度で安定させ、作業動作中におけるロボットアーム10の寸法変化による影響を軽減し、作業の精度を高めることができる。暖機動作は、作業動作に先立って行われるため、作業の迅速な開始のために、暖機動作に要する時間はできるだけ短いことが好ましい。しかしながら、従来では、暖機動作について十分な検討がなされておらず、暖機動作に過剰に時間がかかってしまい、作業動作の開始が遅延するという問題があった。
【0051】
例えば、
図4に示すように、暖機動作として、その後に行う作業動作と同じ動作を行った場合、ロボットアーム10が飽和温度で安定するまでに時間Txを要する。なお、ロボットアーム10が飽和温度で安定するとは、作業動作の1サイクル終了時のロボットアーム10の温度が飽和温度以上となっている状態のことを言う。
図4は、例えば、開始位置でワークを把持し、開始位置から目標位置までワークを搬送し、リリースして待機し、再度開始位置に戻るという動作を作業動作の1サイクルとし、これを繰り返す作業を行った場合の速度および温度のタイムチャートである。このように、暖機動作として作業動作と同じプログラムを用いた場合、暖機動作の完了に時間Txを要してしまう。
【0052】
これに対し、本発明では、暖機動作を行うための暖機動作プログラムを、以下のような方法で作成し、実行することにより、暖機動作に要する時間を短縮することができ、上記従来の問題を解決することができる。
【0053】
まず、ユーザーは、入力操作部44を操作して、実際に行う作業動作の作業動作プログラムおよび環境温度を含む情報を入力する。取得部47は、これらの情報を取得し、取り込む。
【0054】
例えば、前述したように、作業動作が、開始位置と目標位置との間でワークの搬送を複数サイクル繰り返す作業である場合、作業動作プログラムは、作業動作1サイクル分の情報であり、開始位置の位置情報、開始位置におけるロボットアーム10の姿勢の情報、目標位置の位置情報、目標位置におけるロボットアーム10の姿勢の情報、目標位置での待機時間、移動中のロボットアーム10の速度、加速度、姿勢の情報を含む。
【0055】
環境温度に関する情報は、例えば、ロボット1またはロボットアーム10が設置される室内の温度である。この情報は、ユーザーが温度計を見て入力してもよく、暖機動作プログラム作成装置が室内の所定箇所に設置された温度センサーから直接取得する構成であってもよい。
【0056】
取得部47が取得した作業動作プログラムに基づいて、シミュレーション実行部41が発熱シミュレーションモデルを用いてシミュレーションを行う。このシミュレーションにおいては、作業動作1サイクル分のロボットアーム10の発熱量に関する情報、具体的には、飽和温度、飽和温度に到達するまでの時間、サイクル数を求める。なお、飽和温度に関しては、予めユーザーが設定してもよい。
【0057】
また、「ロボットアーム10の温度」は、第1アーム12~第6アーム17までのうち、の少なくとも1つ、例えば、最も長いアームの温度として設定してもよく、全てのアームの平均温度として設定してもよく、全てのアームのうちの最も温度が低い部分の温度として設定してもよい。さらには、関節171~176のうちの少なくとも1つの温度として設定してもよい。
【0058】
作成部42は、暖機動作プログラムの暖機動作を行うことによってのロボットアーム10が飽和温度で安定するまでに要する時間Tyが、暖機動作として作業動作と同じ動作を行った際のロボットアーム10が飽和温度で安定するまでに要する時間Txよりも短くなるよう、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度および待機時間の少なくとも1つを変更する。例えば、作成部42は、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度および待機時間の少なくとも1つを変数とし、ロボットアーム10の温度が飽和温度で安定するまでの時間を目的関数とし、ロボットアーム10の駆動が許容速度、許容加速度、許容トルク以下であることを制約条件として、目的関数を最小化するよう適正化を実行する。また、作業動作1サイクルに要する時間をt1、暖機動作1サイクルに要する時間をt2としたとき、t1>t2を満足するよう、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度、待機時間のうちの少なくとも1つを変更すなわち適正化してもよい。好ましくは、0.85t1>t2≧0.01t1を満足し、より好ましくは、0.6t1>t2≧0.02t1を満足することである。
図5に示す例では、ロボットアーム10の速度を上昇させ、ロボットアーム10の加速度を上昇させ、待機時間を短縮させている。なお、適正化の手法としては、特に限定されず、例えば、動的計画法、ミニマックス法、遺伝的アルゴリズム等の手法が挙げられる。
【0059】
そして、シミュレーション実行部41が、上記シミュレーションを行い、何サイクルで飽和温度に達するかを算出する。すなわち、飽和温度に到達するのに必要な暖機動作のサイクル数nを算出する。そして、暖機動作プログラムにおいて実行する暖機動作のサイクル数をn(nは自然数)に設定する。
図5に示す例では、暖機動作1サイクルでロボットアーム10の温度が飽和温度に達する。
【0060】
また、暖機動作プログラムの暖機動作を終えて作業動作を行った際、作業動作の1サイクル回でロボットアーム10が飽和温度に達する場合には、暖機動作プログラムにおいて実行する暖機動作のサイクル数をn-1に設定してもよい。
【0061】
サイクル数をn-1に設定すると、暖機動作の終了時にはロボットアーム10の温度が飽和温度付近の温度に達し、次に行う作業動作によって飽和温度に達する。よって、飽和温度に達するまで暖機動作を行う場合に比べて、より迅速に作業動作に移行することができる。
【0062】
また、暖機動作プログラムにおいて実行する暖機動作のサイクル数をn+1に設定してもよい。サイクル数をn+1に設定すると、シミュレーションと実際のロボット1の周辺環境が異なるような場合でも、より確実に飽和温度に達した状態で作業を行うことができる。
【0063】
また、作成部42は、作業動作プログラムの情報において、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度、待機時間のうち、適正化したものを書き換えて暖機動作プログラムを作成し、記憶部45に記憶する。すなわち、暖機動作プログラムは、開始位置の位置情報、開始位置におけるロボットアーム10の姿勢の情報、目標位置の位置情報、目標位置におけるロボットアーム10の姿勢の情報、移動中のロボットアーム10の姿勢が、作業動作プログラムと同じで、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度、待機時間のうち、適正化した項目およびサイクル数が作業動作プログラムとは異なる。この時、作業動作プログラムで動作させたロボットアーム10の動作経路と、暖機動作プログラムで動作させたロボットアーム10の動作経路は同じである。
【0064】
また、nサイクル回の暖機動作を実行し終わったときに、ロボットアーム10の温度が飽和温度にならない場合、すなわち、nサイクル回の暖機動作の途中で飽和温度に到達する場合には、nサイクル回の暖機動作を実行し終わったときに、飽和温度となるよう達するよう、作業動作プログラムの情報において、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度、待機時間を算出し直してもよい。これにより、ロボットアーム10の速度や加速度を上げすぎることなく暖機動作を行うことができるため、ロボットアーム10への負荷トルクを減らすことができる。
【0065】
このような暖機動作プログラムを実行することにより、
図5に示すように、時間Txよりも短い時間Tyでロボットアーム10の温度を飽和温度まで上昇させることができる。すなわち、暖機動作1サイクルでの発熱量を作業動作1サイクルでの発熱量よりも多くして、暖機動作に要する時間を従来よりも短くすることができる。また、ロボットアーム10を作業動作と同じ動作経路で駆動して暖機動作を行うため、作業動作時と暖機動作時とで、ロボットアーム10の温度分布を可及的に同じにすることができる。よって、暖機動作をより適正に行うことができる。また、事前に行われる暖機動作において、ロボットアーム10が他の構造体と干渉しないことを予め確認することができ、その後の作業動作をより安全かつ確実に実行することができる。
【0066】
作業動作では、ロボットアーム10がワークまたはツールを把持しているため、その分慣性力が増大し、ロボットアーム10の速度、加速度を増大するのには限界がある。また、待機時間も十分に確保する必要がある。これに対し、暖機動作では、ワークまたはツールを把持しないロボットアーム10で行うことができるため、ワークまたはツールの質量分の慣性力が軽減される。このため、ロボットアーム10の速度、加速度を十分に増大させることができる。また、暖機動作では、待機時間を十分に確保する必要がないため、待機時間を短縮または削除することができる。
【0067】
以上述べたように、暖機動作プログラム作成装置4は、作業動作プログラムに基づいて所定の作業を行うロボットアーム10を有するロボット1が、作業の開始前にロボットアーム10の暖機動作を行うための暖機動作プログラムを作成するものである。また、暖機動作プログラム作成装置4は、作業動作プログラムを取得する取得部47と、ロボットアーム10が、取得部47が取得した作業動作プログラムにおけるロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度およびロボットアーム10の待機時間のうちの少なくとも1つを変更することで、暖機動作プログラムを作成する作成部42と、を有する。また、作成部42によって作成される暖機動作プログラムにおいて、ロボットアーム10の暖機動作は、取得部47が取得した作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、ロボットアーム10が暖機目標温度で安定するのに要する時間は、暖機動作として作業動作と同じ動作を行った際に暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短い。このような暖機動作プログラムを実行することにより、適正かつ迅速に暖機動作を行うことができる。よって、迅速に作業動作を開始することができる。
【0068】
また、ロボットアーム10の速度および加速度に関しては、速く設定するのに限界がある。これに対し、待機時間に関しては、速度および加速度程の制約が無いため、短縮するのが容易であり、可及的に0に近づけることもできる。特に、待機時間に関しては、長ければ長い程、待機中の放熱によりロボットアーム10の温度が低下するため、暖機動作サイクル数が増え、暖機動作に要する時間への悪影響が比較的大きい。このようなことから、ロボットアーム10の待機時間の短縮または削除を優先的に行うことが好ましい。すなわち、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度およびロボットアーム10の待機時間の各項目の変更を検討するに際し、これらの項目に重み付けをする場合、ロボットアーム10の待機時間の短縮または削除を他の項目よりも優先するのが好ましい。
【0069】
また、表示制御部43は、作成部42が算出した暖機動作に要する時間、すなわち、暖機動作の実行により、ロボットアーム10が暖機目標温度で安定するのに要する時間、を表示するようディスプレイ40の作動を制御する。これにより、ユーザーは、暖機時間に要する時間を把握することができ、いつ作業動作を開始することができるかを把握することができる。暖機動作に要する時間のディスプレイ40への表示形態は、特に限定されず、例えば、数字、図形、グラフ等が挙げられる。
【0070】
また、表示制御部43は、作成部42が算出した暖機動作のサイクル数nを表示するようディスプレイ40の作動を制御する。これにより、ユーザーは、暖機時間のサイクル数nを把握することができ、暖機動作中に、いつ作業動作を開始することができるかを把握しやすくなる。
【0071】
なお、暖機動作に要する時間および暖機動作のサイクル数nのうち、いずれか一方がディスプレイ40に表示される構成であってもよく、双方が表示される構成であってもよく、双方共表示しない構成であってもよい。
【0072】
このように、暖機動作プログラム作成装置4は、暖機動作プログラムの暖機動作により、ロボットアーム10が暖機目標温度で安定するのに要する時間および暖機動作のサイクル数nのうちの少なくとも1つを表示する表示部であるディスプレイ40を備える。これにより、ユーザーは、これらのうちの1つまたは2つの情報を把握することができ、作業動作の開始時期の把握に役立てることができる。
【0073】
次に、
図6に示すフローチャートを参照しつつ、暖機動作プログラム作成装置4を用いた暖機動作プログラムの作成方法の一例について説明する。
【0074】
まず、ステップS101において、取得部47より作業動作プログラムを取得し、ステップS102において、取得部47より環境温度の情報を取得する。ステップS101が、作業動作プログラムを取得する第1ステップである。
【0075】
取得された作業動作プログラムおよび環境温度の情報は、一旦記憶部45に記憶される。
【0076】
次いで、ステップS103において、発熱シミュレーションモデルを用いてシミュレーションを行う。このシミュレーションにおいては、作業動作1サイクル分のロボットアーム10の発熱量に関する情報、具体的には、飽和温度、飽和温度に到達するまでの時間、サイクル数を求める。
【0077】
次いで、ステップS104において、シミュレーション結果をディスプレイ40に表示する。すなわち、ステップS103で求めた情報を表示する。
【0078】
そして、ユーザーは、ディスプレイ40に表示された情報に基づいて、暖機動作プログラムの作成が必要か否かを判断し、その判断結果を、入力操作部44を用いて入力する。
【0079】
ステップS105では、暖機動作プログラムを作成するか否かを判断する。暖機動作プログラムを作成しないと判断された場合、終了する。暖機動作プログラムを作成すると判断された場合、ステップS106へ進む。
【0080】
本ステップS105における判断は、ユーザーが入力操作部44を用いて入力した情報に基づいてなされる。例えば、環境温度が飽和温度以上である場合、暖機動作プログラムを作成しないと判断される。
【0081】
ステップS106では、適正化計算を行う。すなわち、暖機動作として、作業動作と同じ動作によりロボットアーム10が暖機目標温度で安定するのに要する時間をtx、暖機動作によりロボットアーム10が暖機目標温度で安定するのに要する時間をtyとしたとき、tx>tyを満足するよう、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度、待機時間の変更すなわち適正化を行う。この際、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度および待機時間の各項目の適正化には、重み付けがなされていてもよく、特に、待機時間の適正化を優先的に行うようにすることができる。
【0082】
ステップS107では、取得されている作業動作プログラムに対し、ステップS106で適正化を行った情報を書き換えて暖機動作プログラムを作成し、記憶部45に記憶する。
【0083】
このようなステップS103、ステップS106およびステップS107が、暖機動作プログラムを作成する第2ステップである。
【0084】
次いで、ステップS108では、暖機動作プログラムに関する情報を表示する。特に、算出した暖機動作に要する時間および暖機動作のサイクル数nのうちの少なくとも1つの情報、好ましくは両方を表示する。
【0085】
以上述べたように、本発明の暖機動作プログラム作成方法は、作業動作プログラムに基づいて所定の作業を行うロボットアーム10を有するロボット1が、作業の開始前に前記ロボットアームの暖機動作を行う暖機動作プログラムを作成するための方法であって、作業動作プログラムを取得する第1ステップと、第1ステップで取得した作業動作プログラムにおけるロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度およびロボットアーム10の待機時間のうちの少なくとも1つを変更することで、暖機動作プログラムを作成する第2ステップと、を有し、第2ステップで作成される暖機動作プログラムにおいて、ロボットアーム10の暖機動作は、第1ステップで取得した作業動作プログラムでの作業動作と同じ動作経路であり、ロボットアーム10が暖機目標温度で安定するのに要する時間は、暖機動作として作業動作と同じ動作を行った際に暖機目標温度で安定するのに要する時間よりも短い。このような暖機動作プログラムを実行することにより、適正かつ迅速に暖機動作を行うことができる。よって、迅速に作業動作を開始することができる。
【0086】
また、第2ステップでは、暖機目標温度、すなわち飽和温度に到達するのに必要な暖機動作のサイクル数n(nは自然数)を算出する。これにより、暖機動作にかかる時間を算出することができる。
【0087】
また、第2ステップでは、暖機動作の後に行う作業動作の1サイクル回で暖機目標温度に到達する場合、暖機動作プログラムで実行される暖機動作のサイクル数をn-1(nは2以上の自然数)とする。これにより、暖機動作を終えて作業動作を行った際、作業動作の1サイクル目で飽和温度に達する。よって、飽和温度に達するまで暖機動作を行う場合に比べて、より迅速に作業動作に移行することができる。
【0088】
また、第2ステップに先立って、暖機動作の開始前のロボットアーム10の環境温度を取得し、第2ステップでは、環境温度の情報を利用して、暖機動作プログラムを作成する。これにより、例えば、環境温度が比較的高い場合には、ロボットアーム10に負担をかけないようにロボットアーム10の速度および加速度の上昇度合いを比較的低くしたり、環境温度が比較的低い場合には、ロボットアーム10の速度および加速度の上昇度合いを比較的高くしたりすることができる。すなわち、環境温度を考慮した適正化を行うことができる。
【0089】
また、第2ステップでは、ロボットアーム10の速度、ロボットアーム10の加速度およびロボットアームの待機時間のうち、前記ロボットアームの待機時間の短縮または削除を優先的に行う。これにより、より直接的かつ効果的に暖機動作を行うことができる。また、暖機動作に要する時間を容易かつ十分に短縮することができる。
【0090】
以上、本発明の暖機動作プログラム作成方法および暖機動作プログラム作成装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、暖機動作プログラム作成方法には、任意の工程が付加されていてもよい。また、暖機動作プログラム作成装置の各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構造物と置換することができる。また、任意の構造体が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…ロボット、3…制御装置、4…暖機動作プログラム作成装置、10…ロボットアーム、11…基台、12…第1アーム、13…第2アーム、14…第3アーム、15…第4アーム、16…第5アーム、17…第6アーム、20…エンドエフェクター、31…制御部、32…記憶部、33…通信部、40…ディスプレイ、41…シミュレーション実行部、42…作成部、43…表示制御部、44…入力操作部、45…記憶部、46…通信部、47…取得部、100…ロボットシステム、171…関節、172…関節、173…関節、174…関節、175…関節、176…関節、D1…モータードライバー、D2…モータードライバー、D3…モータードライバー、D4…モータードライバー、D5…モータードライバー、D6…モータードライバー、E1…エンコーダー、E2…エンコーダー、E3…エンコーダー、E4…エンコーダー、E5…エンコーダー、E6…エンコーダー、M1…モーター、M2…モーター、M3…モーター、M4…モーター、M5…モーター、M6…モーター、TCP…制御点