(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176891
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20231206BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20231206BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20231206BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231206BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20231206BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20231206BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B24B55/02 A
B24B5/04
B24B49/16
B24B49/10
B23Q17/09 H
B23Q11/10 E
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089455
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C034
3C043
3C047
5H307
【Fターム(参考)】
3C011EE02
3C011EE08
3C029CC07
3C034AA01
3C034BB74
3C034BB92
3C034CA16
3C034CA24
3C034CB11
3C034CB14
3C034CB20
3C034DD09
3C043AA01
3C043CC03
3C043CC13
3C043DD01
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C047FF01
3C047FF11
3C047GG01
3C047GG19
5H307BB05
5H307DD01
5H307EE02
5H307EE06
5H307HH04
(57)【要約】
【課題】研削抵抗に応じて研削液の流量を調整する弁を備える研削装置を提供する。
【解決手段】研削装置は、ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、ワークを研削する砥石と、砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、砥石がワークを研削する研削点の近傍に研削液を供給する、研削液供給装置と、研削液供給装置が研削点に供給する研削液の量を制御する、流量制御部と、を備え、研削液供給装置は、研削液が流れる流路部と、流路部に接続されたシリンダ部と、シリンダ部から流路部内までの可動範囲の任意の位置に移動可能なピストン状の弁体と、弁体の位置を変更する流量制御モータと、を有し、流量制御部は、研削抵抗に応じて研削液の流量を決定し、流量制御モータを制御して、決定した流量に応じた位置に、弁体を移動させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削装置であって、
ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、
前記ワークを研削する砥石と、
前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、
前記砥石が前記ワークを研削する研削点の近傍に研削液を供給する、研削液供給装置と、
前記研削液供給装置が前記研削点に供給する前記研削液の量を制御する、流量制御部と、を備え、
前記研削液供給装置は、
前記研削液が流れる流路部と、
前記流路部に接続されたシリンダ部と、
前記シリンダ部から前記流路部内までの可動範囲の任意の位置に移動可能なピストン状の弁体と、
前記弁体の位置を変更する流量制御モータと、を有し、
前記流量制御部は、
前記研削抵抗に応じて前記研削液の流量を決定し、
前記流量制御モータを制御して、決定した前記流量に応じた位置に、前記弁体を移動させる、
研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接線研削抵抗の変化を検出し、その変化に応じて流量調整弁の開度を変化させることで、研削液の供給量を調整する、研削液供給方法および研削加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、研削抵抗に応じて研削液の流量を精度良く調整可能な弁については、これまで具体的に検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、研削装置が提供される。この研削装置は、ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、前記ワークを研削する砥石と、前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、前記砥石が前記ワークを研削する研削点の近傍に研削液を供給する、研削液供給装置と、前記研削液供給装置が前記研削点に供給する前記研削液の量を制御する、流量制御部と、を備え、前記研削液供給装置は、前記研削液が流れる流路部と、前記流路部に接続されたシリンダ部と、前記シリンダ部から前記流路部内までの可動範囲の任意の位置に移動可能なピストン状の弁体と、前記弁体の位置を変更する流量制御モータと、を有し、前記流量制御部は、前記研削抵抗に応じて前記研削液の流量を決定し、前記流量制御モータを制御して、決定した前記流量に応じた位置に、前記弁体を移動させる。
この形態の研削装置によれば、弁体の位置を、流量制御モータによって研削液の流量に応じた位置に変更できるので、研削抵抗に応じて研削液の流量を精度良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】研削抵抗と研削液の流量の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、研削装置100の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するZ軸およびX軸が表されている。Z軸およびX軸は、水平面に沿った軸である。
【0009】
研削装置100は、研削対象物としてのワークWに対して砥石31を接触させると共に、ワークWと砥石31とを相対的に移動させることでワークWの表面を研削加工する、工作機械である。本実施形態では、研削装置100は円筒研削盤である。ワークWは、円筒形状であり、例えば、金属やセラミックから形成される。なお、ワークWの形状および材料は、これに限られるものではない。
【0010】
研削装置100は、ベッド10と、ワーク支持部20と、砥石台30と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、研削液供給装置60と、制御装置70と、を備える。
【0011】
ベッド10は、ワーク支持部20と、砥石台30と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、を支持する。ベッド10は、例えば、鋳鉄により形成される。ベッド10の上面には、ワーク支持部20がZ軸方向に沿って移動するための摺動面と、砥石台30がX軸方向に沿って移動するための摺動面が形成されている。
【0012】
ベッド10の上面には、研削液受け11と、排出口12と、が設けられている。研削液受け11は、上述した2つの摺動面の周囲に設けられた溝である。研削液受け11には、砥石31がワークWを研削する際に、砥石31がワークWを研削する点の近傍に供給された研削液が流れる。研削液は、例えば、クーラントである。排出口12は、研削液受け11の底面に形成された穴である。排出口12は、研削液受け11を流れる研削液をベッド10の外部に排出する。以下では、砥石31がワークWを研削する点を、研削点と呼ぶ。
【0013】
ワーク支持部20は、ワークWがワーク回転軸O1回りに回転可能となるように、ワークWのZ軸方向の両端を支持する。ワーク回転軸O1は、ワークWの軸線であり、その方向はZ軸と平行な方向である。ワーク支持部20は、テーブル21と、主軸台22と、心押台23と、を備える。
【0014】
テーブル21は、ベッド10の上面に配置されている。テーブル21の上面には、主軸台22と心押台23が取り付けられている。
【0015】
主軸台22は、主軸24と、チャック25と、主軸回転駆動装置26と、を備える。ワークWは、そのZ軸方向の一端をチャック25に把持されることによって、主軸24に装着されている。主軸回転駆動装置26は、主軸24を回転駆動させる。主軸24の軸線は、ワーク回転軸O1と等しい。そのため、主軸24が回転することにより、チャック25を介してワークWがワーク回転軸O1回りに回転する。ワークWの回転速度は、主軸回転駆動装置26のモータの回転数により制御される。
【0016】
心押台23は、Z軸方向において、ワークWを挟んで主軸台22と対向するように設けられている。心押台23は、センタ27を備える。センタ27は、ワークWがワーク回転軸O1回りに回転可能なように、ワークWのZ軸方向の他端を支持する。すなわち、ワークWは、チャック25とセンタ27によって、ワーク回転軸O1回りに回転可能に支持されている。
【0017】
砥石台30は、ベッド10の上面に配置されている。砥石台30は、砥石31と、砥石カバー32と、砥石軸33と、砥石駆動モータ34と、研削抵抗測定装置35と、を備える。
【0018】
砥石31は、ワークWの表面を研削加工する。砥石31は、コアと砥石層から構成される。コアは、円盤状であり、鉄等の金属によって形成されている。コアは、ボルト等により砥石軸33に対して着脱可能に連結される。砥石層は、コアの外周に円盤状に設けられている。砥石層は、砥粒と結合材を混合して焼き固めることによって形成される。砥粒としては、例えば、CBN(Cubic Boron Nitride:立方晶窒化ホウ素)や、ダイヤモンドが使用される。砥石層がワークWと接触することにより、ワークWの外周が研削される。
【0019】
砥石カバー32は、砥石31の外周の一部を覆うように設けられている。砥石カバー32は、砥石31がワークWを研削する際に、研削点の近傍に供給された研削液が飛散することを抑制する。
【0020】
砥石軸33は、砥石31をその軸線回りに回転可能に支持する。砥石軸33は、図示しない軸受を介して砥石台30に回転可能に支持されている。砥石軸33の軸線は、砥石31の軸線である砥石回転軸O2と一致する。本実施形態において、砥石回転軸O2の方向は、Z軸と平行な方向である。
【0021】
砥石駆動モータ34は、砥石軸33と同軸に砥石台30に内蔵されている。砥石駆動モータ34は、砥石軸33を砥石回転軸O2回りに回転駆動させる。砥石軸33が回転駆動することにより、砥石31は砥石回転軸O2回りに回転駆動される。砥石駆動モータ34は、三相誘電電動機であり、定格回転数を有する。
【0022】
研削抵抗測定装置35は、砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗を測定する。本実施形態では、研削抵抗測定装置35は、砥石31を回転させるモータの電流値を測定する電流計であり、砥石31を回転させるモータの電流値を、砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗を表す値として測定する。研削抵抗が大きくなるほど、砥石31を回転させるモータの電流値は大きくなる。なぜなら、研削抵抗が大きくなると砥石31の回転数が減少し、砥石31を回転させるモータが、砥石31の回転数を維持しようとすることにより、砥石31を回転させるモータの電流値が大きくなるためである。
【0023】
Z軸送り装置40は、Z軸モータ41を有する。Z軸モータ41は、Z軸送り装置40に駆動力を与える。Z軸送り装置40は、テーブル21に接続されており、テーブル21をZ軸方向に沿って移動させる。Z軸方向を、送り方向とも呼ぶ。
【0024】
X軸送り装置50は、X軸モータ51を有する。X軸モータ51は、X軸送り装置50に駆動力を与える。X軸送り装置50は、砥石台30に接続されており、砥石台30をX軸方向に沿って移動させる。X軸方向を、砥石31の切込方向とも呼ぶ。
【0025】
研削液供給装置60は、研削液貯留槽61と、ポンプ62と、弁部63と、ノズル64と、を備える。研削液貯留槽61と、ポンプ62と、弁部63と、ノズル64は、上述した順で配管によって接続されている。
【0026】
研削液貯留槽61は、ベッド10の傍に設置されている。研削液貯留槽61は、排出口12からベッド10の外部に排出された研削液を貯留する。排出口12から排出された研削液には、ワークWの研削加工中に発生した切屑が含まれている。研削液貯留槽61は、上述した切屑を除去するための図示しないフィルタを有している。
【0027】
ポンプ62は、研削液貯留槽61に貯留されている研削液を弁部63に圧送する。
【0028】
弁部63は、ポンプ62によって圧送された研削液の流量を調整し、流量を調整した研削液をノズル64に供給する。弁部63の構造については後述する。
【0029】
ノズル64は、砥石カバー32に取り付けられている。ノズル64は、弁部63で流量を調整された研削液を、研削点の近傍に供給する。研削液は、ノズル64の先端から、研削点の近傍に向けて吹きかけられる。
【0030】
図2は、弁部63の構造を説明する図である。
図3は、
図2に示した、弁体630の軸線O3に垂直な断面であるIII-III断面の断面図である。弁部63は、流路部610と、シリンダ部620と、弁体630と、モータ部640と、を備える。
【0031】
流路部610は、その内部に研削液が流れる空間を有する部材である。
図2には、流路部610内を研削液が流れる方向が矢印で示されている。流路部610には、シリンダ部620が接続されている。流路部610は、接続部611と、配管部612と、を備える。
【0032】
接続部611は、流路部610とシリンダ部620が接続される部分に設けられている。接続部611は、後述する弁体630が有するリング631が接する面である弁座613を有する。弁座613は、略円環状である。リング631が弁座613に接していない場合、弁座613の表面を研削液が流れる。
【0033】
配管部612は、接続部611およびシリンダ部620の両側に設けられている。配管部612の形状は、円筒形状である。配管部612は、別の配管が接続される部分である。
【0034】
シリンダ部620は、略円筒形状の部材であり、流路部610に対して斜め方向に接続されている。具体的には、シリンダ部620は、シリンダ部620の内部に設けられた弁体630の軸線O3と流路部610内を研削液が流れる方向とのなす角が、流路部610の下流側において鋭角となるように、流路部610に接続されている。シリンダ部620の軸線は、弁体630の軸線O3と一致する。
【0035】
弁体630は、シリンダ部620の内部に設けられている。弁体630の形状は、略円柱形状のピストン状である。弁体630は、リング631と、キー632と、を有する。リング631は、環状の弾性体であり、弁体630の先端部の外周に形成された環状の溝に嵌め込まれている。本明細書では、先端とは、流路部610側の端部を意味し、後端とは、流路部610側とは反対側の端部を意味する。キー632は、その一部が弁体630から突出するように、弁体630の後端側の外周面に形成された図示しないキー溝に設けられている。弁体630は、弁体630の軸線O3に沿った方向にのみ往復するように移動可能となるように設けられている。弁体630は、流路部610内においても、シリンダ部620内と同様に、弁体630の軸線O3に沿った方向にのみ往復するように移動可能である。弁体630は、シリンダ部620から、流路部610内までの可動範囲の任意の位置に移動可能に設けられている。流路部610を流れる研削液の流量は、弁座613に対して弁体630が接近離間することで変化する。弁体630が弁座613に最も接近したとき、リング631が弁座613に当接して流路部610を閉塞させる。
【0036】
モータ部640は、弁体630をその軸線O3に沿った方向に移動させる。モータ部640は、流量制御モータ641と、弁ハウジング643と、カップリング645と、ねじ軸646と、を備える。
【0037】
流量制御モータ641は、例えば、エンコーダを有するサーボモータである。
【0038】
弁ハウジング643は、内部に空間を有する部材である。弁ハウジング643の内部には、カップリング645とねじ軸646が設けられている。弁ハウジング643の後端側には、流量制御モータ641が取り付けられている。弁ハウジング643は、その先端部がシリンダ部620と弁体630の間に位置するように、シリンダ部620に嵌め込まれている。弁ハウジング643の先端側の内部には、弁体630のキー632が嵌入するキー溝644が、弁体630の軸線O3に沿った方向に形成されている。キー632がキー溝644に嵌入することにより、弁体630の軸線O3回りの、弁体630の回転が抑制される。
【0039】
ねじ軸646は、その外周にねじ山が形成された略円柱形状の部材である。ねじ軸646は、その先端部が弁体630の後端部に形成されたねじ穴633に螺合している。
【0040】
カップリング645は、流量制御モータ641の出力軸である出力軸642と、ねじ軸646を連結している。カップリング645は、出力軸642の回転をねじ軸646に伝達する。
【0041】
以上で説明したように、弁体630は、ねじ軸646とカップリング645を介して、流量制御モータ641に接続されている。流量制御モータ641の出力軸642の回転運動は、ねじ軸646、弁体630のねじ穴633、および、キー632によって、弁体630の軸線O3に沿った方向の、弁体630の直線運動に変換される。したがって、弁体630は、流量制御モータ641の駆動力によって、弁体630の軸線O3に沿った方向に移動される。流量制御モータ641は、弁体630が弁座613と当接して流路部610を塞ぐ全閉位置と、弁体630の全体が流路部610の外にある全開位置との間で、弁体630を任意の位置に位置決めすることができ、弁体630の位置を保持することが可能である。
【0042】
図1の制御装置70は、CPU71と、記憶部72を備える。制御装置70は、主軸回転駆動装置26と、砥石駆動モータ34と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、研削抵抗測定装置35と、弁部63の流量制御モータ641にそれぞれ電気的に接続されている。制御装置70は、主軸回転駆動装置26と、砥石駆動モータ34と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、流量制御モータ641に対して制御指令を送信することで、研削装置100の動作を制御する。
【0043】
記憶部72は、ワークWの研削を実行するためのプログラムを記憶する。
【0044】
CPU71は、記憶部72に記憶されたプログラムを実行することにより、動作制御部711と、情報取得部712と、流量制御部713として機能する。これらの機能部の一部または全部は、回路によって実現されてもよい。
【0045】
動作制御部711は、ワークWの回転数と、砥石31の回転数と、ワーク支持部20の送り方向の速度と、砥石31の切込速度を制御する。具体的には、動作制御部711は、主軸回転駆動装置26のモータの回転数を制御することにより、主軸24の回転数を制御し、主軸24に装着されたワークWの回転数を制御する。また、動作制御部711は、砥石駆動モータ34の回転数を制御することにより、砥石31の回転数を制御する。また、動作制御部711は、Z軸モータ41の回転数を制御することにより、ワーク支持部20が送り方向に移動する速度を制御する。また、動作制御部711は、X軸モータ51の回転数を制御することにより、砥石台30が砥石31の切込方向に移動する速度である、砥石31の切込速度を制御する。
【0046】
情報取得部712は、研削抵抗測定装置35から砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗を取得する。
【0047】
流量制御部713は、情報取得部712によって取得された研削抵抗に応じて、研削液の流量を決定する。流量制御部713は、流量制御モータ641を制御して、決定した研削液の流量に応じた位置に弁体630を移動させる。研削抵抗に応じた研削液の流量と、研削液の流量に応じた弁体630の位置は、予め記憶部72に記憶されている。
【0048】
図4は、研削抵抗と研削液の流量の関係を説明する図である。
図4に示すグラフは、横軸が経過時間を示している。また、縦軸は、研削抵抗と、研削液の流量と、砥石31の切込位置を示している。ここで、砥石31の切込位置とは、X軸方向におけるワークWに対する砥石31の位置である。
図4には、一つのワークWの研削加工が行われる期間での、研削抵抗と、研削液の流量と、砥石31の切込位置の変化が示されている。
図4において、P1、P2、P3、P4は、それぞれ、一つのワークWの研削加工における、空研削工程、粗研削工程、仕上げ研削工程、スパークアウトの期間を示している。
図4において、砥石31の切込位置のグラフの傾きは、砥石31の切込速度を示している。
【0049】
空研削工程P1では、砥石31とワークWが接触していないため、研削抵抗はゼロである。空研削工程P1では、流量制御部713は、研削液の流量を微少な量に決定し、弁体630を全閉位置に近い位置に固定する。
【0050】
粗研削工程P2では、まず、速い切込速度で砥石31とワークWが接触することにより、研削抵抗が急激に増加する。このとき、流量制御部713は、研削抵抗が大きいほど研削液の流量が多くなるように、研削液の流量を決定する。流量制御部713は、研削液の流量が多いほど、弁体630の位置を全開位置に近づける。ワークWの加工が進み、研削抵抗が一定となると、流量制御部713は、研削液の流量を研削抵抗に応じた一定の流量とし、弁体630の位置を固定する。その後、動作制御部711が砥石31の切込速度を遅くすることによって研削抵抗が減少すると、流量制御部713は、研削抵抗が小さいほど研削液の流量が少なくなるように、研削液の流量を決定する。流量制御部713は、研削液の流量が少ないほど、弁体630の位置を全閉位置に近づける。ワークWの加工が進み再び研削抵抗が一定となると、流量制御部713は、研削液の流量を研削抵抗に応じた一定の流量とし、弁体630の位置を固定する。
【0051】
仕上げ研削工程P3では、砥石31の切込速度が粗研削工程P2よりも遅いため、粗研削工程P2よりも研削抵抗が減少する。研削抵抗が減少した場合、流量制御部713は、粗研削工程P2と同様に、研削抵抗が小さいほど研削液の流量が少なくなるように研削液の流量を決定し、決定した研削液の流量が少ないほど弁体630の位置を全閉位置に近づける。上述した流量制御部713による研削液の流量の決定および弁体630の移動は、経過時間に対する研削抵抗の減少度合いの変化に関係なく実行される。
【0052】
スパークアウトP4では、砥石31が移動しないため、時間の経過と共に研削抵抗が減少する。このとき、流量制御部713は、仕上げ研削工程P3と同様に、研削抵抗が小さいほど研削液の流量が少なくなるように研削液の流量を決定し、決定した研削液の流量が少ないほど弁体630の位置を全閉位置に近づける。
【0053】
以上で説明した研削装置100によれば、流量制御部713は、研削抵抗測定装置35によって測定された研削抵抗に応じて研削液の流量を決定し、流量制御モータ641を制御して、決定した研削液の流量に応じた位置に弁体630を移動させる。流量制御部713は、研削抵抗が大きいほど研削液の流量が多くなるように、研削液の流量を決定し、研削液の流量が多いほど弁体630の位置を全開位置に近づける。また、流量制御部713は、研削抵抗が小さいほど研削液の流量が少なくなるように、研削液の流量を決定し、研削液の流量が少ないほど弁体630の位置を全閉位置に近づける。したがって、研削装置100は、研削抵抗に応じて研削点に供給する研削液の量を変更することができる。そのため、研削装置100は、研削抵抗が小さいときに必要以上の研削液を研削点に供給する等の研削液のロスを抑制し、研削点に研削液を効果的に供給することができる。よって、研削装置100は、研削液供給装置60の動力コストを削減することができる。また、流量制御モータ641は弁体630を全開位置と全閉位置の間の任意の位置に保持できるため、研削装置100は、研削点に供給する研削液の量を連続的に変更することができる。結果として、研削装置100は、研削抵抗に応じて研削液の流量を精度良く調整することができる。
【0054】
また、本実施形態では、ピストン状の弁体630が配置されたシリンダ部620が流路部610に対して斜めに接続されているため、弁体630と弁ハウジング643の隙間に研削液貯留槽61が有するフィルタによって取り除くことができなかった切屑が詰まり、弁体630が動きにくくなることを抑制できる。
【0055】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、砥石台30は、ワーク回転軸O1に垂直なX軸に沿った方向に移動可能に設けられている。これに対して、砥石台30は、ワーク回転軸O1に対して傾斜した方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0056】
(B-2)上記実施形態では、研削抵抗測定装置35は、砥石31を回転させるモータの電流値を測定する電流計である。これに対して、研削抵抗測定装置35は、例えば、テーブル21をZ軸に沿った方向に移動させるZ軸モータ41の電流値を測定する電流計でもよいし、砥石31によるワークWの研削時に発生するアコースティックエミッション(AE)を検出するAEセンサでもよい。
【0057】
(B-3)上記実施形態では、研削装置100は円筒研削盤である。これに対して、研削装置100は、内面研削盤や、センタレス研削盤、平面研削盤であってもよい。
【0058】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…ベッド、11…研削液受け、12…排出口、20…ワーク支持部、21…テーブル、22…主軸台、23…心押台、24…主軸、25…チャック、26…主軸回転駆動装置、27…センタ、30…砥石台、31…砥石、32…砥石カバー、33…砥石軸、34…砥石駆動モータ、35…研削抵抗測定装置、40…Z軸送り装置、41…Z軸モータ、50…X軸送り装置、51…X軸モータ、60…研削液供給装置、61…研削液貯留槽、62…ポンプ、63…弁部、64…ノズル、70…制御装置、71…CPU、72…記憶部、100…研削装置、610…流路部、611…接続部、612…配管部、613…弁座、620…シリンダ部、630…弁体、631…リング、632…キー、633…ねじ穴、640…モータ部、641…流量制御モータ、642…出力軸、643…弁ハウジング、644…キー溝、645…カップリング、646…ねじ軸、711…動作制御部、712…情報取得部、713…流量制御部、O1…ワーク回転軸、O2…砥石回転軸、O3…弁体の軸線、P1…空研削工程、P2…粗研削工程、P3…仕上げ研削工程、P4…スパークアウト、W…ワーク