(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176899
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20231206BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231206BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231206BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231206BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L29/78 655C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655B
H01L29/78 653C
H01L29/78 655G
H01L29/78 655F
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/78 658H
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/06 301F
H01L29/91 D
H01L29/91 L
H01L29/91 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089469
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森塚 翼
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山住 宰豪
(72)【発明者】
【氏名】三好 智之
(57)【要約】
【課題】
ゲート共通配線領域やゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域におけるキャリア集中を抑制してターンオフ耐量を確保することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】
複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子のゲートに共通に接続されたゲート共通配線1と、ゲート共通配線1に給電をするゲートパッドとを有する半導体装置において、ゲート共通配線1に重なるゲート共通配線領域6と、ゲートパッドに重なるゲートパッド領域とに、キャリア注入抑制領域18を有することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子のゲートに共通に接続されたゲート共通配線と、前記ゲート共通配線に給電をするゲートパッドとを有する半導体装置において、
前記ゲート共通配線に重なるゲート共通配線領域と、ゲートパッドに重なるゲートパッド領域とに、キャリア注入抑制領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のスイッチング素子を有するアクティブ領域を有し、
前記ゲート共通配線領域は、前記アクティブ領域を分割する部分を有し、
前記キャリア注入抑制領域は、分割された前記アクティブ領域に挟まれた前記ゲート共通配線領域に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
ターミネーション領域を有し、
前記ターミネーション領域にも前記キャリア注入抑制領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
裏面側に設けられたコレクタ層を有し、
前記キャリア注入抑制領域は、前記コレクタ層と同じ導電型で前記コレクタ層より低濃度の層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
裏面側に設けられたコレクタ層と、前記コレクタ層に接続されたコレクタ電極とを有し、
前記キャリア注入抑制領域は、前記コレクタ層が無く、前記コレクタ層とは導電型の異なる層が前記コレクタ電極と直接接する領域であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記キャリア注入抑制領域は、軽イオン照射による低ライフタイム領域であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記キャリア注入抑制領域はホール注入抑制領域であることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTなどのパワー半導体では、ターンオフ耐量(RBSOA(Reverse Bias Safe Operating Area)耐量)を十分に確保する必要がある。
【0003】
IGBTのターンオフ時の遮断能力を向上する技術としては、例えば特許文献1がある。特許文献1の段落0120~0123、
図32A、
図32Bに示す構造は、IGBTの中間領域(2)からエッジターミネーション領域(5)のコレクタ側からのキャリアの注入を抑制する構造となっており、
図32Aには、アクティブセル領域(1)ではコレクタ層(16)とメタル(29)が接し、中間領域(2)とエッジターミネーション領域(5)ではnバッファ層(15)がメタル(29)に接するIGBTが示されており、
図32Bには、アクティブセル領域(1)ではpコレクタ層(16)がメタル(29)に接し、中間領域(2)とエッジターミネーション領域(5)ではpコレクタ層(16)より不純物濃度が低い低濃度pコレクタ層(16’)がメタル(29)と接するIGBTが示されており、その結果、ターンオフ動作時に中間領域(2)に存在する主接合pn接合部の電界強度を緩和し、局所的な電界強度の上昇を抑制しインパクトイオン化による電流集中起因の局所的な温度上昇による熱破壊を抑制する作用があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IGBTがターンオフ時に破壊する一つの要因として、ターンオフ時にターミネーション領域から大量のホールなどのキャリアが注入されるため、アクティブ領域の周辺部(特にコーナー領域)でキャリア集中が発生し、電界が集中することで、破壊に至ることが考えられる。
【0006】
特許文献1の技術によれば、ターミネーション領域からのキャリアの注入が抑制されるため、アクティブ領域の周辺部におけるターンオフ時の破壊を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、本願の発明者の検討によって、ゲートフィンガーとも呼ばれるゲート共通配線とゲートパッドの下部からもキャリアの注入が発生し、ゲート共通配線領域やゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域でキャリア集中が発生し、破壊に至ることがあることが分かった。
【0008】
特許文献1では、ゲート共通配線に相当する特許文献1の
図1の表面ゲート配線部(3)にはコレクタ側からのキャリアの注入を抑制する構造を採用しておらず、この問題を解決できていない。
【0009】
また、本願の発明者の検討によって、ターミネーション領域にキャリアの注入を抑制する構造の有無にかかわらず、例えばスイッチングスピードが速い場合にはアクティブ領域の周辺部よりも先にゲート共通配線領域やゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域でキャリア集中が発生し、破壊に至ることがあることが分かった。
【0010】
【0011】
図1は、半導体装置の平面図であり、
図2は、
図1の半導体装置のA部拡大図であり、
図10は、従来の半導体装置のB-B’断面図であり、
図11は、従来の半導体装置のD-D’断面図であり、
図12は、従来の半導体装置のB-B’断面図である。
【0012】
図10に示すように、スイッチングスピードが遅い場合は、ゲート共通配線1に重なるゲート共通配線領域6とターミネーション領域4とにおけるホール20が、アクティブ領域3に注入され、アクティブ領域3の周辺部でキャリア集中が発生する。
図11に示すように、アクティブ領域3に挟まれたゲート共通配線領域6においても、ホール20がアクティブ領域3に注入され、ゲート共通配線領域6の近傍のアクティブ領域3でキャリア集中が発生する。しかし、
図10に示すように、スイッチングスピードが遅い場合は、アクティブ領域3の周辺部の方がホール20が注入される量が多いので、アクティブ領域3の周辺部の方で破壊に至りやすい。
【0013】
一方、
図12に示すように、スイッチングスピードが速い場合は、ゲート共通配線領域6とターミネーション領域4とにおけるホール20の一部が到達する前に、
図11に示すように、アクティブ領域3に挟まれたゲート共通配線領域6からのホール20が注入される量が支配的になる場合があり、ゲート共通配線領域6の近傍のアクティブ領域3の方で破壊に至る可能性がある。また、図示しないゲートパッド領域の構造は、ゲート共通配線領域6と同様であるため、同様にゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域3の方で破壊に至る可能性がある。
【0014】
したがって、ターンオフ耐量を確保するためには、ゲート共通配線領域6やゲートパッド領域においてもキャリアの注入を抑制する構造が必要であることが分かった。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、ゲート共通配線領域やゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域におけるキャリア集中を抑制してターンオフ耐量を確保することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、例えば、複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子のゲートに共通に接続されたゲート共通配線と、前記ゲート共通配線に給電をするゲートパッドとを有する半導体装置において、前記ゲート共通配線に重なるゲート共通配線領域と、ゲートパッドに重なるゲートパッド領域とに、キャリア注入抑制領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置によれば、ゲート共通配線領域やゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域におけるキャリア集中を抑制してターンオフ耐量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0020】
図1は、半導体装置の平面図であり、
図2は、
図1の半導体装置のA部拡大図であり、
図3は、実施例1の半導体装置のB-B’断面図であり、
図4は、実施例1の半導体装置のC-C’断面図であり、
図5は、実施例1の半導体装置のD-D’断面図である。
【0021】
図1および
図2に示すように、半導体装置100は、複数のスイッチング素子が形成されたアクティブ領域3と、複数のスイッチング素子のゲート5に共通に接続されたゲート共通配線1と、ゲート共通配線1に給電をするゲートパッド2とを有する。ゲート共通配線1は、アクティブ領域3を分割する部分と、アクティブ領域3とターミネーション領域4との境界に形成された部分とを有する。
【0022】
なお、
図1ではゲート5の図示は省略しており、
図1および
図2では、ゲート電極13、エミッタ電極14、フィールドプレート15の図示は省略している。
【0023】
実施例1の半導体装置は、
図3に示すように、アクティブ領域3にスイッチング素子としてIGBTを有している。具体的には、実施例1の半導体装置は、第1導電型(
図3ではn型)のドリフト層7と、ドリフト層7の表面側に設けられた第2導電型(
図3ではp型)のボディ層8と、トレンチ内に形成されたゲート5およびゲート絶縁膜10と、ボディ層8の表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層9と、ドリフト層7よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層17とを有している。
【0024】
ここでは第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明しているが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。その場合、キャリアはホール20ではなく電子となる。
【0025】
また、実施例1の半導体装置は、ドリフト層7とコレクタ層17との間に設けられた第1導電型のバッファ層16と、コレクタ層17の裏面側に設けられたコレクタ電極19と、ボディ層8およびエミッタ層9の表面側に設けられた層間絶縁膜12と、層間絶縁膜12に設けられたコンタクトホールを介してエミッタ層9及びボディ層8とコンタクトするエミッタ電極14とを有する。
【0026】
実施例1の半導体装置は、ターミネーション領域4において、ドリフト層7の表面側に設けられた第2導電型のウェル層11と、層間絶縁膜12に設けられたコンタクトホールを介してウェル層11とコンタクトするフィールドプレート15とを有する。
【0027】
実施例1の半導体装置は、ゲート共通配線1に重なるゲート共通配線領域6において、ウェル層11と、ゲート共通配線1と、層間絶縁膜12に設けられたコンタクトホールを介してゲート共通配線1とコンタクトするゲート電極13とを有する。図示しないが、ゲートパッド2に重なるゲートパッド領域の構造もゲート共通配線領域6とほぼ同様の構成になっている。
【0028】
図4に示すように、ゲート共通配線1とゲート5は接続されており、ゲート共通配線1とゲート5とゲートパッド2は例えばポリシリコンで形成されている。
【0029】
ここで、実施例1の半導体装置は、
図3から
図5に示すように、ゲート共通配線領域6と、図示しないゲートパッド領域とに、キャリア注入抑制領域18を有する。これによって、ゲート共通配線領域6やゲートパッド領域の近傍のアクティブ領域3におけるキャリア集中を抑制してターンオフ耐量を確保することができる。
【0030】
図4および
図5に示すように、キャリア注入抑制領域18は、分割されたアクティブ領域3に挟まれたゲート共通配線領域6においても形成することが望ましい。これによって、分割されたアクティブ領域3に挟まれたゲート共通配線領域6の近傍のアクティブ領域3におけるキャリア集中を抑制してターンオフ耐量を確保することができる。
【0031】
また、
図3に示すように、キャリア注入抑制領域18は、ターミネーション領域4においても形成することが望ましい。これによって、アクティブ領域3の周辺部におけるキャリア集中を抑制してターンオフ耐量を確保することができる。なお、例えばスイッチングスピードが速い場合など、ターミネーション領域4からのホール注入が支配的ではない場合には、ターミネーション領域4についてはキャリア注入抑制領域18を設けないようにしてもよい。
【0032】
実施例1では、キャリア注入抑制領域18として、コレクタ層17と同じ導電型でコレクタ層17より低濃度の層を用いる例を示した。
【0033】
なお、各半導体層の不純物濃度は、例えば、ドリフト層は低濃度のn-型、エミッタ層9は高濃度のn+型、キャリア注入抑制領域18は低濃度のp-型である。
実施例2は、実施例1の変形例であり、実施例1と異なる点は、キャリア注入抑制領域18の構造である。これ以外は実施例1と同じであるため、重複する説明は省略する。
実施例2のキャリア注入抑制領域18は、コレクタ層17が無く、コレクタ層17とは導電型の異なる層(ここではバッファ層16)がコレクタ電極19と直接接する領域となっている。
実施例1と比較すると、裏面側に低濃度のp-型の層を形成する必要がないので、製造が容易であるという利点がある。それ以外は実施例1と同様の効果を得ることができる。