(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017690
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】排ガス処理設備、及び排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20230131BHJP
B01D 53/40 20060101ALI20230131BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B01D53/62
B01D53/40 ZAB
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059306
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2021121838の分割
【原出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤川 宗治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜生
(72)【発明者】
【氏名】釼持 恭平
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
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4D002AB01
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4D002GB05
4D002GB20
4D002HA01
(57)【要約】
【課題】排液が生じることなく、排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、排ガスを減温することができ、これによって排ガス中の二酸化炭素を効率よく分離回収することができる排ガス処理設備を提供する。
【解決手段】燃焼によって発生した排ガスを処理する排ガス処理設備30Aであって、排ガスに含まれる酸性ガス成分を乾式処理により除去する酸性ガス除去装置31と、酸性ガス除去装置31によって酸性ガスが除去された排ガスを非湿式処理により減温する減温装置33と、減温装置33によって減温された排ガスから二酸化炭素を分離回収するCO
2分離回収装置35とを備えるものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼によって発生した排ガスを処理する排ガス処理設備であって、
排ガスに含まれる酸性ガス成分を乾式処理により除去する酸性ガス除去装置と、
前記酸性ガス除去装置によって酸性ガス成分が除去された排ガスを非湿式処理により減温する減温装置と、
前記減温装置によって減温された排ガスから二酸化炭素を分離回収するCO2分離回収装置と、
を備える排ガス処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼によって発生した排ガスを処理する排ガス処理設備、及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭火力発電施設や廃棄物燃焼処理施設、バイオマス発電施設等において、二酸化炭素を分離回収する場合、燃焼によって発生した排ガスに含まれる酸性ガス成分(HCl、SOx等)は、許容される濃度となるまで除去する必要がある。排ガス中の酸性ガス成分は、二酸化炭素の吸収性能及び吸収操作を阻害する可能性があるため、二酸化炭素の分離回収前に除去する必要がある。排ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収する際には、二酸化炭素が吸収又は吸着され易いように排ガスを減温処理する必要がある。
【0003】
排ガス中の酸性ガスを除去すると共に排ガスを減温処理する手段として、湿式法によるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1にて開示された湿式法は、集塵器で煤塵が除去された排ガスを排ガス洗浄装置(湿式スクラバー)に導入し、この排ガス洗浄装置で噴霧・循環される洗浄水によって洗浄し、大量の洗浄水に酸性ガス成分を吸収させ、酸性ガス成分を吸収した洗浄水に苛性ソーダ等のアルカリ剤を添加して中和することにより、排ガスから酸性ガス成分を除去すると共に排ガスを減温処理するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような湿式法では、排ガス洗浄装置において、酸性ガスと洗浄水とが接触するため、装置の構成材として耐腐食材料を用いる必要があり、高価な装置となってしまう。また、洗浄水を大量に使用することとなり、しかも洗浄水には、排ガス中の酸性ガス成分と苛性ソーダ等との反応によって生じた中和塩が含まれており、排水クローズドシステムにできない場合、放流可能な状態に希釈処理した後、下水や河川等に放流することになる。従って、排液処理設備が別途に必要になり、排液処理設備の設置費用やランニングコストが嵩んでしまう。なお、排水クローズドシステムとすることができる場合であっても、例えば、中和塩を含んだ洗浄水を燃焼炉内や排ガス減温塔等に吹き込むといった処理が行われることとなり、燃焼炉での燃焼効率の低下を招き、その結果、燃焼炉に発電装置が併設されている施設では、発電効率の低下を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、排液が生じることなく、排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、排ガスを減温することができ、これによって排ガス中の二酸化炭素を効率よく分離回収することができる排ガス処理設備、及び排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る排ガス処理設備の特徴構成は、
燃焼によって発生した排ガスを処理する排ガス処理設備であって、
排ガスに含まれる酸性ガス成分を乾式処理により除去する酸性ガス除去装置と、
前記酸性ガス除去装置によって酸性ガスが除去された排ガスを非湿式処理により減温する減温装置と、
前記減温装置によって減温された排ガスから二酸化炭素を分離回収するCO2分離回収装置と、
を備えることにある。
【0009】
本構成の排ガス処理設備によれば、排ガスに含まれる酸性ガス成分が酸性ガス除去装置によって乾式処理により除去されるとともに、酸性ガスが除去された排ガスが減温装置によって非湿式処理により減温される。ここで、乾式処理による酸性ガス成分の除去、及び非湿式処理による減温は何れも、水等の液体を用いない処理であるため、排液が生じることがなく、従来の湿式スクラバーを採用した場合に必要となる排液処理設備が不要である。従って、排液の放流が困難な山中等に立地されることがある、例えば、バイオマス発電施設等における排ガスの処理の用途に適用可能となる。また、本構成の排ガス処理設備によれば、二酸化炭素の吸収の阻害要因となる酸性ガス成分が排ガスから除去されるとともに、二酸化炭素が吸収又は吸着され易いように排ガスが減温されるので、排ガス中の二酸化炭素を効率よくCO2分離回収装置によって分離回収することができる。
【0010】
本発明に係る排ガス処理設備において、
前記酸性ガス除去装置は、前記酸性ガス成分の他に、排ガスに含まれる煤塵、及び/又は有害物質を乾式処理により除去するように構成されていることが好ましい。
【0011】
本構成の排ガス処理設備によれば、酸性ガス成分の他に、二酸化炭素の吸収性能及び吸収操作を阻害する可能性がある煤塵、及び/又は吸収した二酸化炭素を活用する上で障害となる可能性がある有害物質を除去することができる。
【0012】
本発明に係る排ガス処理設備において、
前記減温装置は、
前記酸性ガス除去装置によって酸性ガス成分が除去された排ガスの熱を熱媒体に間接的に伝えて回収する熱交換器と、
前記熱交換器によって熱が回収された排ガスに空気を添加する空気添加手段と、
を備えることが好ましい。
【0013】
本構成の排ガス処理設備によれば、熱交換器において、排ガスの熱が熱媒体に間接的に伝えられて回収され、排ガスが減温される。減温された排ガスには、空気添加手段により空気が添加されて更に減温される。こうして、水等の液体を用いない非湿式処理により排ガスを確実に減温することができる。
【0014】
本発明に係る排ガス処理設備において、
前記熱交換器は、排ガス中の水分が凝縮しない温度域で排ガスを減温し、
前記空気添加手段は、前記熱交換器によって減温された排ガスに空気を添加して凝縮を阻止しながら減温するように構成されることが好ましい。
【0015】
本構成の排ガス処理設備によれば、排ガス中の水分が凝縮しない温度域において排ガスが熱交換器によって減温される。減温された排ガスには、空気添加手段によって空気が添加される。これにより、凝縮を阻止しながら排ガスを更に減温することができる。こうして、二酸化炭素がより吸収又は吸着され易いようになり、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る排ガス処理設備において、
前記空気添加手段によって空気が添加された排ガスを加熱する再加熱器をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本構成の排ガス処理設備によれば、空気添加手段によって空気が添加された排ガスが再加熱器によって加熱されるので、排ガス中の水分が凝縮するのを確実に防ぐことができる。
【0018】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る排ガス処理方法の特徴構成は、
燃焼によって発生した排ガスを処理する排ガス処理方法であって、
排ガスに含まれる酸性ガス成分を乾式処理により除去する酸性ガス除去工程と、
前記酸性ガス除去工程によって酸性ガス成分が除去された排ガスを非湿式処理により減温する減温工程と、
前記減温工程によって減温された排ガスから二酸化炭素を分離回収するCO2分離回収工程と、
を包含することにある。
【0019】
本構成の排ガス処理方法によれば、排ガスに含まれる酸性ガス成分が酸性ガス除去工程によって乾式処理により除去されるとともに、酸性ガスが除去された排ガスが減温工程によって非湿式処理により減温される。ここで、乾式処理による酸性ガス成分の除去、及び非湿式処理による減温は何れも、水等の液体を用いない処理であるため、排液が生じることがなく、従来の湿式スクラバーを採用した場合に必要となる排液処理設備が不要である。従って、排液の放流が困難な山中等に立地されることがある、例えば、バイオマス発電施設等における排ガスの処理の用途に適用可能となる。また、本構成の排ガス処理方法によれば、二酸化炭素の吸収の阻害要因となる酸性ガス成分が排ガスから除去されるとともに、二酸化炭素が吸収又は吸着され易いように排ガスが減温されるので、排ガス中の二酸化炭素を効率よくCO2分離回収工程によって分離回収することができる。
【0020】
本発明に係る排ガス処理方法において、
前記酸性ガス除去工程において、前記酸性ガス成分の他に、排ガスに含まれる煤塵、及び/又は有害物質を乾式処理により除去することが好ましい。
【0021】
本構成の排ガス処理方法によれば、酸性ガス成分の他に、二酸化炭素の吸収性能及び吸収操作を阻害する可能性がある煤塵、及び/又は吸収した二酸化炭素を活用する上で障害となる可能性がある有害物質を除去することができる。
【0022】
本発明に係る排ガス処理方法において、
前記減温工程は、
前記酸性ガス除去工程によって酸性ガス成分が除去された排ガスの熱を熱媒体に間接的に伝えて回収する熱回収工程と、
前記熱回収工程によって熱が回収された排ガスに空気を添加する空気添加工程と、
を包含することが好ましい。
【0023】
本構成の排ガス処理方法によれば、熱回収工程において、排ガスの熱が熱媒体に間接的に伝えられて回収され、排ガスが減温される。減温された排ガスには、空気添加工程において空気が添加されて更に減温される。こうして、水等の液体を用いない非湿式処理により排ガスを確実に減温することができる。
【0024】
本発明に係る排ガス処理方法において、
前記熱回収工程においては、排ガス中の水分が凝縮しない温度域で排ガスを減温し、
前記空気添加工程においては、減温された排ガスに空気を添加して凝縮を阻止しながら減温することが好ましい。
【0025】
本構成の排ガス処理方法によれば、熱回収工程においては、排ガス中の水分が凝縮しない温度域で排ガスが減温される。空気添加工程においては、減温された排ガスに空気を添加される。これにより、凝縮を阻止しながら排ガスを更に減温することができる。こうして、二酸化炭素がより吸収又は吸着され易いようになり、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0026】
本発明に係る排ガス処理方法において、
前記空気添加工程によって空気が添加された排ガスを加熱する再加熱工程をさらに包含することが好ましい。
【0027】
本構成の排ガス処理方法によれば、空気添加工程において空気が添加された排ガスが再加熱工程において加熱されるので、排ガス中の水分が凝縮するのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る排ガス処理設備を備えたバイオマス発電施設の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二実施形態に係る排ガス処理設備を備えたバイオマス発電施設の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、酸性ガス除去装置の別態様例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、バイオマス発電施設における排ガス処理設備を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、バイオマス発電設備において燃焼させるバイオマス燃料とは、化石燃料以外の植物や農産物等の自然界の有機性資源から抽出した生物由来の燃料である。具体的には、バイオマス燃料として、例えば、廃棄木材、間伐材、枝葉、樹皮、流木、草類、生活廃棄物、汚泥、家畜の糞尿、エネルギー作物(農作物副産物)、これらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)等が挙げられる。
【0030】
〔第一実施形態〕
<全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る排ガス処理設備30Aを備えたバイオマス発電施設1Aの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すバイオマス発電施設1Aは、バイオマス発電設備10と、排ガス処理設備30Aとを備えている。
【0031】
<バイオマス発電設備>
バイオマス発電設備10は、バイオマス燃料を燃焼する燃焼炉11と、燃焼炉11での燃焼によって発生した排ガスの流路に沿って上流側から下流側に順に配される蒸気発生器13、節炭器15、及び空気予熱器17と、蒸気発生器13で発生させた蒸気を利用して発電する発電装置19とを備えている。
【0032】
[燃焼炉]
燃焼炉11としては、バイオマス燃料を燃焼することができれば炉の形式は限定されるものではないが、例えば、ストーカ式燃焼炉や流動床式燃焼炉等を挙げることができる。
【0033】
ストーカ式燃焼炉は、炉内に配置されたストーカを動かし、ストーカ下部より燃焼空気を送り、バイオマス燃料を乾燥・燃焼・後燃焼させる形式の燃焼炉である。ここで、ストーカとしては、例えば、階段式ストーカとトラベリングストーカとがある。階段式ストーカは、可動火格子と固定火格子とが交互に階段状に配列されたものであり、乾燥段を形成する乾燥ストーカ、燃焼段を形成する燃焼ストーカ、及び後燃焼段を形成する後燃焼ストーカが、バイオマス燃料送り方向の上流側から下流側に向けて順に区分けされている。一方、トラベリングストーカは、炉内においてバイオマス燃料を移動させる方向に所定間隔を存して配される駆動輪及び従動輪に、複数の火格子を互いに回動自在に環状に連結してなる環状火格子体を巻き掛け装着して構成されている。トラベリングストーカにおいては、環状火格子体が周回運動するように駆動され、環状火格子体で受け止めた燃料投入機からのバイオマス燃料を移動させながら環状火格子体上で燃焼させるように構成されている。流動床式燃焼炉は、けい砂等の粒子層の下部から加圧された空気を分散供給して、蓄熱したけい砂等を流動させながら、その中でバイオマス燃料を燃焼させる形式の燃焼炉である。
【0034】
[蒸気発生器]
蒸気発生器13は、燃焼炉11から排出される排ガスが導入されるケーシング内に、熱交換用の多数の伝熱管が配設されてなるものであり、伝熱管内を流通する水と、伝熱管の外側を流れる排ガスとの間での熱交換により、水蒸気を発生させるように構成されている。発生させた水蒸気は、発電装置19に導入されて発電に利用される。
【0035】
[節炭器]
節炭器15は、蒸気発生器13から排出される排ガスが導入されるケーシング内に、熱交換用の多数の伝熱管が配設されてなるものであり、伝熱管内を流通する蒸気発生器13への供給水と、伝熱管の外側を流れる排ガスとの間での熱交換により、蒸気発生器13への供給水を加熱するように構成されている。
【0036】
[空気予熱器]
空気予熱器17は、節炭器15から排出される排ガスが導入されるケーシング内に、熱交換用の多数の伝熱管が配設されてなるものであり、伝熱管内を流通する図示されないごみピットからの空気と、伝熱管の外側を流れる排ガスとの間での熱交換により、ごみピットからの空気を加熱し、加熱したごみピットからの空気を燃焼炉11の一次燃焼用空気として供給するように構成されている。
【0037】
<排ガス処理設備>
排ガス処理設備30Aは、排ガスに含まれる酸性ガス成分を乾式処理により除去する酸性ガス除去装置31と、酸性ガス除去装置31によって酸性ガスが除去された排ガスを非湿式処理により減温する減温装置33と、減温装置33によって減温された排ガスを必要に応じて加熱する再加熱器34と、減温装置33での減温後に再加熱器34によって必要に応じ加熱された排ガスから二酸化炭素を分離回収するCO2分離回収装置35とを備えている。ここで、酸性ガス除去装置31に関し、「乾式処理」とは、水等の液体を使わない方式の処理であって、排ガス中の酸性ガス成分と、排ガス中に供給した中和薬剤との反応生成物(又は酸性ガス成分を吸着した吸着剤)が乾燥状態で排出されるように処理したり、排ガス中の酸性ガス成分を触媒により分解したり、充填塔(吸着塔)に充填された活性炭や活性コークス等の吸着剤に排ガス中の酸性ガス成分を吸着させて除去したりすることをいう。一方、減温装置33に関し、「非湿式処理」とは、後述する熱交換器60において、熱媒体として水等の液体を使用する場合があるが、液体の熱媒体と排ガスとは非接触であり、排ガスの含有成分が溶解した排液が生じないように処理することをいう。
【0038】
<酸性ガス除去装置>
酸性ガス除去装置31は、主として、集塵装置41、及び中和薬剤供給装置43により構成されており、排ガス中の酸性ガス成分の他に、排ガスに含まれる煤塵を乾式処理により除去することができる。
【0039】
[集塵装置]
集塵装置41は、図示による詳細説明は省略するが、ケーシングに所要のろ布が組み込まれるとともに、払落し装置が装備されて構成されている。ケーシングの内部は、ケージプレートによって上下に仕切られており、ケーシングの内部には、ケージプレートの下側にろ過処理前排ガス室が、ケージプレートの上側にろ過処理後排ガス室が、それぞれ区画形成されている。ろ過処理前排ガス室は、ダクト51を介して空気予熱器17に接続されている。ろ過処理後排ガス室は、ダクト53を介して後述する熱交換器60に接続されている。ケージプレートには、ろ布の吊り下げ用の開口部が所要個数設けられており、各開口部からは、ろ布がろ過処理前排ガス室内に配されるように吊り下げ支持されている。ろ布は、円筒状の袋体であり、閉鎖された一端側(下端側)がろ過処理前排ガス室内に差し込まれる一方で、開放された他端側(上端側)がろ過処理後排ガス室に臨ませて配され、該ろ布の内部には、その円筒形状を維持するための骨材が組み込まれている。払落し装置は、集塵装置41における排ガス流路の上流側と下流側との差圧が所定値以上となったときや、当該差圧の値に関わらず一定期間毎に、エアコンプレッサからの圧縮空気を、配管類を介して所要の噴射ノズルから払落し対象(逆洗対象)のろ布の内表面側へと噴射することにより、ろ布の外表面側に付着堆積した煤塵(ダスト)等を吹き飛ばすことができるように構成されている。なお、集塵装置41としては、上記のようなろ布を用いたバグフィルタと称される装置に限定されるものではなく、例えば、遠心力を利用したサイクロン(マルチサイクロン)式集塵装置や、粒子に作用する慣性力の差を利用して分級するルーバー型分級機を採用したり、これらとバグフィルタとを併用したりしてもよい。
【0040】
集塵装置41と空気予熱器17とを接続するダクト51は、上流側において鉛直方向に延在する上流側鉛直ダクト部51aを有している。
【0041】
<中和薬剤供給装置>
中和薬剤供給装置43は、薬剤タンク45、及びフィーダ47を備え、薬剤タンク45内に貯留されている中和薬剤(例えば、JIS特号消石灰、高反応消石灰、重曹系薬剤等)をフィーダ47によって上流側鉛直ダクト部51aへと供給することにより、中和薬剤を自然流下で上流側鉛直ダクト部51a内に送り込み、集塵装置41の上流側に中和薬剤を供給することができるように構成されている。
【0042】
酸性ガス除去装置31においては、中和薬剤供給装置43から上流側鉛直ダクト部51aに中和薬剤が供給されることにより、排ガスに含まれる酸性ガスと中和薬剤とを反応させて、反応生成物(中和塩)を集塵装置41で煤塵と共に捕集して酸性ガス成分を許容される濃度となるように除去することができる。
【0043】
<減温装置>
減温装置33は、主として、熱交換器60、及び空気添加手段70により構成されている。
【0044】
<熱交換器>
熱交換器60は、例えば、金属等の熱伝導に優れる材料からなる伝熱管の内部に空気や水等の熱媒体を流し、伝熱管の外側に排ガスを接触させることにより、排ガスの熱を、伝熱管を介して熱媒体に間接的に伝えて回収する装置である。
【0045】
<空気添加手段>
空気添加手段70は、熱交換器60と再加熱器34とを接続するダクト55の内部を流れる排ガスに空気を添加するものであり、主として、送風機71、空気供給管73、流量調節ダンパ75、及びダンパ制御部77により構成されている。送風機71とダクト55とは、空気供給管73によって接続されている。空気供給管73には、流量調節ダンパ75が介設されている。ダンパ制御部77は、所定の制御信号を流量調節ダンパ75に送信する。これにより、送風機71から空気供給管73を介してダクト55の内部を流れる排ガスに添加される空気の供給量が制御される。
【0046】
<再加熱器>
再加熱器34は、空気添加手段70によって空気が添加された後の排ガスを熱媒体により間接加熱するように構成されている。
【0047】
<CO2分離回収装置>
CO2分離回収装置35としては、例えば、化学吸収法、膜分離法、物理吸収法、固体吸収法等を利用した装置が挙げられる。化学吸収法によるCO2分離回収装置35は、例えば、アミン吸収液を利用したものであって、排ガス中のCO2分子をアミン吸収液のアミンと化学的に結合させて、CO2だけを分離回収するように構成されている。膜分離法によるCO2分離回収装置35は、分離機能を有する固体の薄膜を用い、その透過選択性を利用して排ガス中からCO2を分離回収するように構成されている。物理吸収法によるCO2分離回収装置35は、排ガス中のCO2を液体中に溶解させることにより分離回収するように構成されている。固体吸収法によるCO2分離回収装置35は、ゼオライトや活性炭等を物理吸着の吸着剤として用い、又はアルカリ金属やアミン類を担持した無機多孔質材料を化学吸着の吸着剤として用い、排ガス中のCO2を吸着剤に吸着させて分離回収するように構成されている。
【0048】
以上に述べたように構成されるバイオマス発電施設1Aにおいて、燃焼炉11でのバイオマス燃料の燃焼によって発生した排ガスは、蒸気発生器13、節炭器15、及び空気予熱器17に順に導入される。蒸気発生器13では、排ガスとの熱交換によって高圧の蒸気を発生させ、節炭器15では、蒸気発生器13に供給する水を排ガスの余熱を利用して加熱し、空気予熱器17では、燃焼炉11の一次燃焼用空気として供されるごみピット(図示せず)からの空気を排ガスの余熱を利用して加熱する。蒸気発生器13で発生された高圧の蒸気は、発電装置19に導入される。発電装置19においては、高圧の蒸気によって蒸気タービンが高速で回転され、蒸気タービンに連結された発電機によって発電される。
【0049】
本実施形態の排ガス処理設備30Aによれば、排ガスに含まれる酸性ガス成分が酸性ガス除去装置31によって乾式処理により除去されるとともに、酸性ガスが除去された排ガスが減温装置33によって非湿式処理により減温される。ここで、乾式処理による酸性ガス成分の除去、及び非湿式処理による減温は何れも、水等の液体を用いない処理であるため、排液が生じることがなく、従来の湿式スクラバーを採用した場合に必要となる排液処理設備が不要である。従って、排液の放流が困難な山中等に立地されることがあるバイオマス発電施設1Aにおける排ガスの処理の用途に適用可能となる。また、本実施形態の排ガス処理設備30Aによれば、二酸化炭素の吸収の阻害要因となる酸性ガス成分が排ガスから除去されるとともに、二酸化炭素が吸収又は吸着され易いように排ガスが減温されるので、排ガス中の二酸化炭素を効率よくCO2分離回収装置35によって分離回収することができる。
【0050】
次に、本発明の排ガス処理方法について説明する。本発明の排ガス処理方法は、例えば、上述の本実施形態の排ガス処理設備30Aを備えたバイオマス発電施設1Aにおいて実施されるものであり、酸性ガス除去工程と、減温工程と、再加熱工程と、CO2分離回収工程とを包含する。
【0051】
<酸性ガス除去工程>
空気予熱器17から排出される排ガスは、例えば、温度が約160℃程度で、10~20%の二酸化炭素、15~20%の水分、及び酸性ガス成分が含まれている。空気予熱器17から排出される排ガスは、ダクト51を介して集塵装置41に導入される。ダクト51における上流側鉛直ダクト部51aの内部には、中和薬剤供給装置43のフィーダ47によって供給される中和薬剤が、自然流下で送り込まれる。上流側鉛直ダクト部51aの内部に送り込まれた中和薬剤は、排ガスと混合され、排ガスと共にその流れに乗って集塵装置41の上流側に供給される。排ガスに含まれる酸性ガスと中和薬剤との反応で生成された反応生成物(中和塩)は、集塵装置41で煤塵と共に捕集される。こうして、後段のCO2分離回収装置35での二酸化炭素の分離回収工程おいて阻害要因となる酸性ガス成分が許容される濃度にまで除去される。
【0052】
<減温工程(熱回収工程)>
集塵装置41において煤塵と共に酸性ガス成分が除去された排ガスは、熱交換器60に導入され、熱交換器60において、伝熱管内を流れる水や空気等の熱媒体との熱交換により、排ガス中の水分が凝縮しない温度域で減温され、例えば、70~80℃程度にまで減温される。
【0053】
<減温工程(空気添加工程)>
熱交換器において70~80℃程度にまで減温された排ガスには、排ガス中の水分を希釈することで凝縮を阻止しながら減温するために、空気添加手段70により空気が添加される。このとき、ダンパ制御部77は、空気添加後の排ガスの温度が50℃程度で、温度50℃における飽和水分率12%より小さい、例えば、7.5~10%程度の水分率となるように、所定の制御信号を流量調節ダンパ75に送信して、ダクト55の内部を流れる排ガスに添加される空気の供給量を、例えば、排ガスと添加空気とが1:1の比率となるように制御する。なお、「飽和水分率」とは、排ガス中の飽和水蒸気量の体積分率である。
【0054】
<再加熱工程>
そして、必要に応じて、空気添加工程によって空気が添加された後の排ガスを再加熱器34によって加熱する再加熱工程を実施する。これにより、排ガス中の水分が凝縮するのをより確実に防ぐことができる。
【0055】
<CO2分離回収工程>
上記のようにして、空気が添加され必要に応じ再加熱された後の排ガスは、5.0~7.5%程度のCO2を含んでおり、再加熱器34とCO2分離回収装置35とを接続するダクト58を介してCO2分離回収装置35に導入される。CO2分離回収装置35においては、例えば、化学吸収法、膜分離法、物理吸収法、固体吸収法等により、排ガスに含まれる二酸化炭素が分離回収される。
【0056】
本実施形態の排ガス処理方法によれば、排ガスに含まれる酸性ガス成分が酸性ガス除去装置31によって乾式処理により除去されるとともに、酸性ガスが除去された排ガスが減温装置33によって非湿式処理により減温される。ここで、乾式処理による酸性ガス成分の除去、及び非湿式処理による減温は何れも、水等の液体を用いない処理であるため、排液が生じることがなく、従来の湿式スクラバーを採用した場合に必要となる排液処理設備が不要である。従って、排液の放流が困難な山中等に立地されることがあるバイオマス発電施設1Aにおける排ガスの処理の用途に適用可能となる。また、本実施形態の排ガス処理方法によれば、二酸化炭素の吸収の阻害要因となる酸性ガス成分が排ガスから除去されるとともに、二酸化炭素が吸収又は吸着され易いように排ガスが減温されるので、排ガス中の二酸化炭素を効率よくCO2分離回収工程によって分離回収することができる。
【0057】
減温装置33においては、熱交換器60では、排ガスの熱が熱媒体に間接的に伝えられて回収され、排ガスが減温される。減温された排ガスには、空気添加手段70により空気が添加されて更に減温される。こうして、水等の液体を用いない非湿式処理により排ガスを確実に減温することができる。
【0058】
熱交換器60においては、排ガス中の水分が凝縮しない温度域において排ガスが減温される。減温された排ガスには、空気添加手段70によって空気が添加される。これにより、凝縮を阻止しながら排ガスを更に減温することができる。こうして、二酸化炭素がより吸収又は吸着され易いようになり、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0059】
〔第二実施形態〕
図2は、本発明の第二実施形態に係る排ガス処理設備30Bを備えたバイオマス発電施設1Bの概略構成を示すブロック図である。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0060】
図1に示す第一実施形態に係るバイオマス発電施設1Aでは、燃焼炉11からの排ガスの全量を排ガス処理設備30Aで処理し二酸化炭素を分離・回収するように構成されている。これに対し、
図2に示す第二実施形態に係るバイオマス発電施設1Bでは、燃焼炉11からの排ガスの一部を引き抜いて排ガス処理設備30Bで処理し二酸化炭素を分離・回収するように構成されている。なお、第一実施形態における排ガス処理設備30Aは、燃焼炉11からの排ガスの全量を処理するのに対し、第二実施形態における排ガス処理設備30Bは、燃焼炉11からの排ガスの一部を処理するという違いはあるが、両者は基本的に同様の構成である。
【0061】
図2のバイオマス発電施設1Bにおいて、空気予熱器17の下流側には、排ガス処理設備30Bにおける集塵装置41とは別に集塵装置21が配設され、この集塵装置21の下流側に排気筒23が配設されている。空気予熱器17と集塵装置21とはダクト25によって接続され、集塵装置21と排気筒23とはダクト27によって接続されている。そして、空気予熱器17において熱交換に供された後の排ガスは、ダクト25を介して集塵装置21に導入され、集塵装置21で除塵処理された後の排ガスがダクト27及び排気筒23を介して系外に排出される。バイオマス発電施設1Bにおいては、ダクト27から分岐するようにダクト51が接続されており、集塵装置21で除塵処理された後の排ガスの一部がダクト51を介して引き抜かれて排ガス処理設備30Bに導入されるように構成されている。
【0062】
以上、本発明の排ガス処理設備、及び排ガス処理方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0063】
(別実施形態1)
図3(a)は、別実施形態1に係る酸性ガス除去装置31Aの説明図である。
図3(a)に示す酸性ガス除去装置31Aは、ダクト51(上流側鉛直ダクト部51a)に沿って併設される中和薬剤供給装置43、及び吸着剤供給装置83と、これら供給装置43,83の下流側に配設される集塵装置41とを備えて構成されている。吸着剤供給装置83は、上流側鉛直ダクト部51aにおける中和薬剤供給装置43による中和薬剤の供給位置より下流側の位置に、例えば、ダイオキシンや重金属類等の有害物質を吸着する吸着剤(例えば、活性炭等)を供給する装置である。吸着剤供給装置83は、吸着剤タンク85、及びフィーダ87を備え、吸着剤タンク85内に貯留されている吸着剤をフィーダ87によって上流側鉛直ダクト部51aへと供給することにより、吸着剤を自然流下で上流側鉛直ダクト部51a内に送り込み、集塵装置41の上流側に吸着剤を供給することができるように構成されている。酸性ガス除去装置31Aは、酸性ガス成分の他に、排ガスに含まれる煤塵、及び有害物質を乾式処理により除去することができる。
【0064】
(別実施形態2)
図3(b)は、別実施形態2に係る酸性ガス除去装置31Bの説明図である。
図3(b)に示す酸性ガス除去装置31Bは、中和薬剤供給装置43、及び集塵装置41と、ダクト53に介設される吸着塔91とを備えて構成されている。吸着塔91は、有害物質を吸着する吸着剤(例えば、活性炭等)が塔内に充填されてなるものである。酸性ガス除去装置31Bにおいては、吸着塔91の吸着性能を可及的に長期間維持するために、吸着塔91を集塵装置41の下流側に配設し、集塵装置41において煤塵が除去された後の排ガスを吸着塔91に導入するように構成されている。酸性ガス除去装置31Bは、酸性ガス成分の他に、排ガスに含まれる煤塵、及び有害物質を乾式処理により除去することができる。
【0065】
(別実施形態3)
図3(c)は、別実施形態3に係る酸性ガス除去装置31Cの説明図である。
図3(c)に示す酸性ガス除去装置31Cは、集塵装置41の下流側においてダクト53に介設される吸着塔93それ単体により構成されている。吸着塔93は、酸性ガス成分、及び有害物質を吸着する吸着剤(例えば、活性炭等)が塔内に充填されてなるものである。酸性ガス除去装置31Cは、酸性ガス成分の他に、有害物質を乾式処理により除去することができる。
【0066】
本願発明の酸性ガス除去装置の態様としては、例えば、第一実施形態、及び第二実施形態における酸性ガス除去装置31のように、乾式処理による酸性ガス成分除去機能と、乾式処理による煤塵除去機能とを有する態様や、別実施形態1及び2における酸性ガス除去装置31A,31Bのように、乾式処理による酸性ガス成分除去機能と、乾式処理による煤塵除去機能と、乾式処理による有害物質除去機能とを有する態様、別実施形態3における酸性ガス除去装置31Cのように、乾式処理による酸性ガス成分除去機能と、乾式処理による有害物質除去機能とを有する態様が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の排ガス処理設備、及び排ガス処理方法は、例えば、火力発電施設、製鉄所、石油精製施設等において、化石燃料の燃焼によって発生した排ガスに含まれる二酸化炭素、水素製造施設において、オフガスの燃焼によって発生した排ガスに含まれる二酸化炭素、一般廃棄物燃焼施設において、廃棄物の燃焼によって発生した排ガスに含まれる二酸化炭素、バイオマス発電施設において、バイオマス燃料の燃焼によって発生した排ガスに含まれる二酸化炭素等を分離回収する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1A,1B バイオマス発電施設
10 バイオマス発電設備
30A,30B 排ガス処理設備
31 酸性ガス除去装置
33 減温装置
34 再加熱器
35 CO2分離回収装置
60 熱交換器
70 空気添加手段