IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-半導体装置の製造方法 図2
  • 特開-半導体装置の製造方法 図3
  • 特開-半導体装置の製造方法 図4
  • 特開-半導体装置の製造方法 図5
  • 特開-半導体装置の製造方法 図6
  • 特開-半導体装置の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176902
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20231206BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L29/78 658H
H01L21/265 F
H01L21/265 Z
H01L21/265 602A
H01L21/265 Q
H01L21/265 601A
H01L21/265 601Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 658A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655A
H01L29/78 657D
H01L29/91 J
H01L29/91 F
H01L29/91 A
H01L29/91 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089473
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀樹
(57)【要約】
【課題】 好適に化合物半導体基板の反りを抑制する。
【解決手段】 半導体装置(10)の製造方法であって、第1注入工程と第2注入工程を有する。前記第1注入工程では、第1表面側から前記化合物半導体基板の厚み方向における中央部(50)よりも前記第1表面側にドーパントの密度のピーク(P1)が形成されるように前記ドーパントを注入する。前記第2注入工程では、前記化合物半導体基板に対して前記第1表面側から不活性不純物を注入する。第2注入工程では、前記化合物半導体基板の前記中央部よりも前記第2表面側に前記結晶欠陥の密度のピーク(P2)が形成される。前記第1表面が凸となる反りを正の値として前記化合物半導体基板の反り量を定義したときに、前記第1注入工程において前記反り量が増加し、前記第2注入工程において前記反り量が減少する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(10)の製造方法であって、
第1表面(12a)と前記第1表面の裏側に位置する第2表面(12b)とを有する化合物半導体基板(12)に対して前記第1表面側からn型またはp型のドーパントを注入する第1注入工程であって、前記化合物半導体基板の厚み方向における中央部(50)よりも前記第1表面側に前記ドーパントの密度のピーク(P1)が形成されるように前記ドーパントを注入する第1注入工程と、
前記化合物半導体基板に対して前記第1表面側から不活性不純物を注入することによって前記化合物半導体基板内に結晶欠陥を形成する第2注入工程であって、前記化合物半導体基板の前記中央部よりも前記第2表面側に前記結晶欠陥の密度のピーク(P2)が形成されるように前記不活性不純物を注入する第2注入工程、
を有し、
前記第1表面が凸となる反りを正の値として前記化合物半導体基板の反り量を定義したときに、前記第1注入工程において前記反り量が増加し、前記第2注入工程において前記反り量が減少する、
製造方法。
【請求項2】
前記第1注入工程の実施後に前記第2注入工程を実施する、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
化合物半導体基板にドーパントを注入すると、ドーパント注入範囲に結晶欠陥が形成される。すると、ドーパント注入範囲内で結晶格子が歪み、化合物半導体基板に反りが生じる。反った状態の化合物半導体基板を取り扱うと、化合物半導体基板に対する加工時に露光装置のピントが合わないという問題や、搬送時に化合物半導体基板が破損するという問題等が生じる。
【0003】
特許文献1には、化合物半導体基板の表面に、化合物半導体基板とは異なる材料(例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、白金等)からなる変形抑制層を形成することで、化合物半導体基板の反りを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-183730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の反り抑制技術では、化合物半導体基板の表面に化合物半導体基板とは異なる材料からなる変形抑制層を形成する必要がある。したがって、製造する半導体装置の構造によっては、変形抑制層を形成することができない場合がある。また、化合物半導体基板や半導体製造装置に対する金属汚染の問題により、変形抑制層を形成できない場合がある。
【0006】
また、ドーパントが注入された表面(以下、第1表面という)とは反対側の表面(以下、第2表面という)から化合物半導体基板に不純物を注入することで、化合物半導体基板の反りを抑制する技術が存在する。この技術によれば、特許文献1で生じる問題を生じさせることなく、化合物半導体基板の反りを抑制できる。しかしながら、この方法では、第2表面側からの不純物注入時に第1表面がステージ等と接触することを防止するために第1表面に保護膜を形成する必要があり、化合物半導体基板に対する加工コストが高くなる。また、保護膜の形成及び除去工程において第1表面に異物付着やキズの発生等が生じる場合がある。
【0007】
したがって、本明細書では、より好適に化合物半導体基板の反りを抑制できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、第1注入工程と第2注入工程を有する。前記第1注入工程では、第1表面と前記第1表面の裏側に位置する第2表面とを有する化合物半導体基板に対して前記第1表面側からn型またはp型のドーパントを注入する。前記第1注入工程では、前記化合物半導体基板の厚み方向における中央部よりも前記第1表面側に前記ドーパントの密度のピークが形成されるように前記ドーパントを注入する。前記第2注入工程では、前記化合物半導体基板に対して前記第1表面側から不活性不純物を注入することによって前記化合物半導体基板内に結晶欠陥を形成する。前記第2注入工程では、前記化合物半導体基板の前記中央部よりも前記第2表面側に前記結晶欠陥の密度のピークが形成されるように前記不活性不純物を注入する。前記第1表面が凸となる反りを正の値として前記化合物半導体基板の反り量を定義したときに、前記第1注入工程において前記反り量が増加し、前記第2注入工程において前記反り量が減少する。
【0009】
なお、上記製造方法においては、第1注入工程と第2注入工程のいずれを先に実施してもよい。
【0010】
この製造方法では、第1注入工程において、化合物半導体基板の厚み方向における中央部よりも第1表面側にドーパント密度のピークが形成されるので、化合物半導体基板の反り量が増加する。また、第2注入工程において、化合物半導体基板の厚み方向における中央部よりも第2表面側にドーパント密度のピークが形成されるので、化合物半導体基板の反り量が減少する。例えば、第1注入工程が第2注入工程よりも先に実施される場合には、第1注入工程において第1表面が凸となるように化合物半導体基板に反りが生じ、第2注入工程において化合物半導体基板の反りを解消するように化合物半導体基板が変形する。また、例えば、第2注入工程が第1注入工程よりも先に実施される場合には、第2注入工程において第1表面が凹となるように化合物半導体基板に反りが生じ、第1注入工程において化合物半導体基板の反りを解消するように化合物半導体基板が変形する。このように、第1注入工程で生じる反りと第2注入工程で生じる反りが相殺するので、化合物半導体基板の反りが抑制される。また、第2注入工程では、化合物半導体基板の第1表面側から化合物半導体基板に不活性不純物を注入する。すなわち、第1注入工程と第2注入工程のいずれでも、第1表面側から注入が実施される。したがって、第1注入工程及び第2注入工程において化合物半導体基板の第1表面がステージに接触することが無く、第1表面を保護膜で保護する必要がない。したがって、保護膜による加工コストの増加の問題が生じない。また、保護膜に起因して第1表面で異物付着やキズが生じることを防止することができる。また、第2注入工程で注入する不純物は不活性不純物であるので、第1表面側から化合物半導体基板の前記中央部よりも第2表面側の深さまで不活性不純物を注入しても、化合物半導体基板の特性に対する影響は小さい。したがって、好適に半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スイッチング素子の拡大断面図。
図2】第1注入工程実施前の半導体基板の拡大断面図。
図3】第1注入工程の説明図(第1注入工程における半導体基板の拡大断面図と、電界緩和領域に対して注入されたp型ドーパントの密度分布を示すグラフとを示す図。)。
図4】第1注入工程後の半導体基板の反りを示す断面図。
図5】第2注入工程の説明図(第2注入工程における半導体基板の拡大断面図と、電界緩和領域に対して注入されたp型ドーパントの密度分布を示すグラフと、不活性不純物の注入によって形成された結晶欠陥の密度分布を示すグラフとを示す図。)。
図6】第2注入工程後の半導体基板の断面図。
図7】変形例の第2注入工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施形態の製造方法によって製造されるスイッチング素子10を示している。スイッチング素子10は、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。スイッチング素子10は、半導体基板12、ゲート絶縁膜14、ゲート電極16、層間絶縁膜18、ソース電極20、及び、ドレイン電極22を有している。半導体基板12は、いわゆる化合物半導体基板であり、炭化珪素(すなわち、SiC)によって構成されている。なお、半導体基板12は、窒化ガリウム(すなわち、GaN)、酸化ガリウム(例えば、Ga)等によって構成されていてもよい。半導体基板12は、上面12aと下面12bを有している。上面12aに、複数のトレンチ12cが設けられている。ゲート絶縁膜14は、各トレンチ12cの内面を覆っている。ゲート電極16は、各トレンチ12c内に配置されており、ゲート絶縁膜14によって半導体基板12から絶縁されている。層間絶縁膜18は、各ゲート電極16の上面を覆っている。ソース電極20は、層間絶縁膜18の上面と半導体基板12の上面12aを覆っている。ソース電極20は、層間絶縁膜18によって各ゲート電極16から絶縁されている。ドレイン電極22は、半導体基板12の下面12bを覆っている。
【0013】
半導体基板12は、ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、電界緩和層36、ドリフト層38、バッファ層40、及び、ドレイン層42を有している。ソース層30は、n型層である。各ソース層30は、対応するトレンチ12cの側面の上端部において、ゲート絶縁膜14に接している。各ソース層30は、ソース電極20にオーミック接触している。各ボディコンタクト層32は、p型層である。各ボディコンタクト層32は、ソース層30が設けられていない範囲でソース電極20にオーミック接触している。ボディ層34は、ボディコンタクト層32よりもp型不純物濃度が低いp型層である。ボディ層34は、ソース層30とボディコンタクト層32の下側に配置されている。ボディ層34は、ソース層30の下側でゲート絶縁膜14に接している。各電界緩和層36は、p型層であり、各トレンチ12cの下端に隣接する範囲に配置されている。各電界緩和層36は、対応するトレンチ12cの下端においてゲート絶縁膜14に接している。ドリフト層38は、n型層であり、ボディ層34の下側に配置されている。ドリフト層38は、各電界緩和層36の周囲を覆っている。ドリフト層38は、ボディ層34の下側でゲート絶縁膜14に接している。バッファ層40は、ドリフト層38よりもn型不純物濃度が高いn型層である。バッファ層40は、ドリフト層38の下側に配置されている。ドレイン層42は、バッファ層40よりもn型不純物濃度が高いn型層である。ドレイン層42は、バッファ層40の下側に配置されている。ドレイン層42は、ドレイン電極22にオーミック接触している。
【0014】
ゲート電極16にゲート閾値以上の電圧を印加すると、ゲート絶縁膜14に隣接する位置でボディ層34にチャネルが形成され、チャネルによってソース層30とドリフト層38が接続される。これによって、スイッチング素子10がオンする。ゲート電極16に対する印加電圧をゲート閾値未満の電圧まで低下させると、チャネルが消失し、スイッチング素子10がオフする。スイッチング素子10がオフすると、電界緩和層36からドリフト層38に空乏層が広がる。電界緩和層36から広がる空乏層によってトレンチ12cの下端部における電界集中が抑制される。
【0015】
次に、スイッチング素子10の製造方法について説明する。図2は、ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、及び、電界緩和層36が形成される前の半導体基板12を示している。スイッチング素子10は、図2に示す半導体基板12から製造される。図2に示すように、この時点では、半導体基板12の上面12aにドリフト層38が露出している。また、この時点では、ドレイン層42の厚さが図1よりも厚く、半導体基板12の厚みの半分以上がドレイン層42によって構成されている。図2の参照符号50は、半導体基板12の厚み方向における中央部を示している。ドレイン層42が厚いため、中央部50はドレイン層42内に位置している。ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、及び、電界緩和層36が形成される前においては、半導体基板12は平坦である。すなわち、ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、及び、電界緩和層36が形成される前においては、半導体基板12に反りは生じていない。この製造方法では、半導体基板12に対して第1注入工程と第2注入工程を実施する。
【0016】
(第1注入工程)
第1注入工程では、上面12a側から半導体基板12に対してn型ドーパント(例えば、窒素、リン等)とp型ドーパント(例えば、ホウ素、アルミニウム等)をイオン注入することによって、ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、及び、電界緩和層36を形成する。例えば、図3は、電界緩和層36に対するp型ドーパントの注入工程を示している。図3に示すように、電界緩和層36に対するp型ドーパントの注入工程では、半導体基板12の下面12bがステージ62に接するように半導体基板12をステージ62上に載置する。そして、マスク60を介して上側から半導体基板12にp型ドーパントを注入する。ここでは、ドーズ量を1×1013~1×1014cm-2に制御する。また、ここでは、半導体基板12の厚み方向に沿ってドーパント密度分布を測定したときに、電界緩和層36に対して注入されたp型ドーパントの密度のピークP1が中央部50よりも上側に位置するように注入エネルギーを制御する。より詳細には、電界緩和層36に対して注入されたp型ドーパントの注入深さD1(すなわち、上面12aからピークP1の深さまでの距離)が1μm以上(例えば、1~3μm)となるように注入エネルギーを制御する。同様にして、ソース層30、ボディコンタクト層32、及び、ボディ層34に対しても上面12a側からドーパント注入を行う。ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、及び、電界緩和層36に対するドーパント注入が完了したら、半導体基板12をアニールしてドーパントを活性化させる。
【0017】
以上に説明したように、第1注入工程では、中央部50よりも上面12a側の半導体層内にドーパントが注入される。ドーパントが注入された半導体層内には結晶欠陥が形成される。すなわち、ドーパントの注入範囲内において半導体基板12の結晶性が低下する。その結果、ドーパントが注入された半導体層(すなわち、上面12a近傍の半導体層)が膨張する。したがって、図4に示すように、上面12aが凸となるように半導体基板12が反る。特に、注入深さが深い電界緩和層36に対してアルミニウムを注入する場合に、半導体層の結晶性が低下し易く、半導体基板12で反りが生じ易い。
【0018】
なお、以下では、上面12aが凸となる反りを正の値とし、上面12aが凹となる反りを負の値として定義した半導体基板12の反り量を、反り量Xという。第1注入工程では、半導体基板12の反り量Xが増加する。
【0019】
(第2注入工程)
次に、第2注入工程を実施する。第2注入工程では、図5に示すように、上面12a側から半導体基板12に対して不活性不純物をイオン注入する。不活性不純物は、半導体基板12に対して不活性な元素である。不活性不純物として、例えば、炭素、珪素、水素、ヘリウム、アルゴン等を用いることができる。なお、水素イオン(例えば、陽子または重陽子)またはヘリウムイオンを不活性不純物としてイオン注入する場合には、イオン照射装置としてサイクロトロンを用いることができる。図5に示すように、不活性不純物の注入工程では、半導体基板12の下面12bがステージ64に接するように半導体基板12をステージ64上に載置する。そして、上側から半導体基板12の全体に不活性不純物を注入する。ここででは、上面12a側から注入された不活性不純物が、中央部50よりも下面12b側のドレイン層42内で停止するように不活性不純物を注入する。このように不活性不純物を注入すると、不活性不純物が通過した半導体層内に低密度に結晶欠陥が形成されるとともに、不活性不純物が停止した位置に高密度に結晶欠陥が形成される。したがって、図5に示すように、中央部50よりも下面12b側の半導体層内に結晶欠陥密度のピークP2が形成される。以下では、結晶欠陥密度のピークP2が形成されている領域を、結晶欠陥領域70という。例えば、第2注入工程では、結晶欠陥領域70から下面12bまでの距離D2が0.1~5.0μmとなるように不活性不純物の注入深さを制御することができる。なお、不活性不純物の照射装置と半導体基板12の間にアルミニウムの薄膜(例えば、アルミホイル)を配置した場合には、アルミニウムの薄膜の厚みを調整することで不活性不純物の注入深さを調整できる。
【0020】
以上に説明したように、第2注入工程では、中央部50よりも下面12b側の半導体層内で結晶欠陥密度のピークP2が形成される。その結果、中央部50よりも下面12b側の半導体層が膨張する。したがって、図6に示すように、第2注入工程を実施すると、半導体基板12の反りが緩和される。
【0021】
このように、第1注入工程では上面12aが凸となるように半導体基板12に反りが生じ、第2注入工程では半導体基板12の反りが緩和されるように半導体基板12が変形する。言い換えると、第1注入工程では反り量Xが増加し、第2注入工程では反り量Xが減少する。このように、第1注入工程で生じる反りと第2注入工程で生じる反りが相殺されるので、第1注入工程と第2注入工程の両方を実施した後に、半導体基板12が略平坦となる。
【0022】
また、第1注入工程と第2注入工程のいずれでも、上面12a側から半導体基板12に不純物が注入される。したがって、第1注入工程と第2注入工程のいずれでもステージと接触するのは下面12bであり、上面12aはステージに接触しない。したがって、上面12aを保護膜で保護する必要がなく、半導体基板12を低コストで加工することができる。また、上面12aに保護膜を設ける場合には、保護膜形成工程及び保護膜除去工程において上面12aに異物が付着したりキズが生じたりする場合がある。これに対し、第1注入工程及び第2注入工程では、上面12aに保護膜を設けないので、上面12aに対する異物やキズの問題が生じない。したがって、高い歩留まりでスイッチング素子10を製造することができる。
【0023】
また、第2注入工程では、上面12a側から下面12b近傍の領域まで不活性不純物を注入する。仮に、n型またはp型のドーパントを上面12a側から下面12b近傍の領域まで注入した場合には、ドーパントが通過した範囲内の半導体層の特性に影響が生じ、意図した特性のスイッチング素子を製造することができない。これに対し、上述した第2注入工程では、不活性不純物を注入するので、上面12a側から結晶欠陥領域70まで不活性不純物を注入しても、半導体層の特性に与える影響は極めて小さい。したがって、第2注入工程を実施しても、意図した特性のスイッチング素子10を製造することが可能である。
【0024】
第2注入工程が完了したら、半導体基板12の上面12aにトレンチ12cを形成する。次に、トレンチ12c内にゲート絶縁膜14とゲート電極16を形成する。次に、層間絶縁膜18を形成する。次に、ソース電極20を形成する。半導体基板12が平坦であるので、これらの工程及びこれらの工程の間で半導体基板12を搬送する搬送工程では、半導体基板12の反りに起因する不具合の発生が抑制される。
【0025】
次に、半導体基板12の下面12bを研磨する。これによって、図1に示す厚みまでドレイン層42を薄くする。このように下面12bを研磨することによって、半導体基板12から結晶欠陥領域70が除去される。その後、下面12bにドレイン電極22を形成することで、図1のスイッチング素子10が完成する。
【0026】
なお、上述した実施形態では、第1注入工程の後に第2注入工程を実施した。しかしながら、第2注入工程の後に第1注入工程を実施してもよい。この場合、第2注入工程において下面12bが凸となるように半導体基板12に反りが生じる。すなわち、第2注入工程において反り量Xが負の値へ減少するように半導体基板12が変形する。その後の第1注入工程では、第2注入工程で生じた反りが緩和されるように半導体基板12が変形する。すなわち、第1注入工程において反り量Xが増加するように半導体基板12が変形する。その結果、半導体基板12が平坦となる。このように、第2注入工程の後に第1注入工程を実施しても、第1注入工程と第2注入工程の実施後に半導体基板12を平坦化することができる。但し、第1注入工程を先に実施すると、半導体基板12に反りが生じていない状態で第1注入工程を開始できるので、ソース層30、ボディコンタクト層32、ボディ層34、及び、電界緩和層36に対するドーパントの注入範囲及び注入深さを正確に制御し易い。
【0027】
また、上述した第2注入工程では、ドレイン層42内に結晶欠陥領域70が形成されるように不活性不純物を注入した。しかしながら、図7に示すように、ドレイン層42の厚みが薄く、中央部50がドリフト層38内に存在する場合には、結晶欠陥領域70を中央部50よりも下側のドリフト層38内に形成してもよいし、結晶欠陥領域70をバッファ層40内に形成してもよい。これらの場合、結晶欠陥領域70内に存在する結晶欠陥が、キャリアの再結合中心として機能する。このため、ボディ層34とドリフト層38の界面のpn接合によって構成されるダイオードが逆回復動作を行うときに、結晶欠陥領域70内の結晶欠陥によってドリフト層38内のホールを消滅させることができる。その結果、ダイオードで生じる逆回復電流を低減することができる。
【0028】
また、上述した実施形態では、スイッチング素子10がMOSFETであったが、スイッチング素子がIGBT(insulated gate bipolar transistor)であってもよい。この場合、ドリフト層38内(例えば、図7参照)またはバッファ層40内に結晶欠陥領域70を形成すると、IGBTのターンオフ速度を速くすることができる。
【0029】
また、上述した実施形態では、スイッチング素子10の製造方法について説明したが、他の半導体装置の製造工程において本願明細書に開示の技術を適用してもよい。
【0030】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
10:スイッチング素子、12:半導体基板、16:ゲート電極、30:ソース層、34:ボディ層、36:電界緩和層、38:ドリフト層、40:バッファ層、42:ドレイン層、70:結晶欠陥領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7