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特開2023-176908エアバッグおよびエアバッグの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176908
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】エアバッグおよびエアバッグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20231206BHJP
【FI】
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089482
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井下 雅貴
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC11
3D054CC27
3D054CC30
3D054CC34
3D054CC42
3D054FF13
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】テザーを容易に形成しつつ、収容時の容積増加を抑えることが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】二枚の織布のうちの一方30は、一方向(長手方向)に分割され、一方側の一重織部から繋がる第1織布部40と、他方側の一重織部から繋がる第2織布部42と、を含み、第1織布部40の先端40a1が、二枚の織布のうちの自身に対向する織布32の内面に接合され、第2織布部42の先端42aが、第1織布部40の外面に対して前記一方向における中間40bに接合されていることで、第1織布部40の基端側の部分40dと第2織布部42とによって、織布パネル26が形成され、第1織布部40の先端側の部分40aが、テザー24として機能する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合う一対の織布パネルを有して前記織布パネル同士が互いに離れるように膨張可能な袋体と、前記袋体の内部で前記織布パネル同士を繋ぐとともに前記袋体の膨張時に前記一対の織布パネルの間の距離を規制するテザーと、を備えたエアバッグであって、
一方向における両側の端部の各々が、一重織によって形成された一重織部とされ、それら両側の前記一重織部の間が、二枚の織布が重ねられた二重織部とされた織布基材からなり、
前記二枚の織布のうちの少なくとも一方は、
前記一方向に分割され、一方側の前記一重織部から繋がる前記織布である第1織布部と、他方側の前記一重織部から繋がる前記織布である第2織布部と、を含み、
前記第1織布部の先端が、前記二枚の織布のうちの自身に対向するものの内面に接合され、前記第2織布部の先端が、前記第1織布部の外面に対して前記一方向における中間に接合されていることで、前記第1織布部の基端側の部分と前記第2織布部とによって、前記織布パネルが形成され、前記第1織布部の先端側の部分が、前記テザーとして機能するエアバッグ。
【請求項2】
前記第1織布部の中間には、外側に向かって立ち上げられた立ち上がり部が形成され、前記立ち上がり部に、前記第2織布部の先端が縫製されている請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記二枚の織布の一方は、前記一方向における一方側に前記第1織布部が、他方側に前記第2織布部が形成されたものとされ、
前記二枚の織布の他方は、前記一方向における他方側に前記第1織布部が、一方側に前記第2織布部が形成されたものとされ、
前記二枚の織布の各々は、前記第1織布部の先端が、前記二枚の織布のうちの自身に対向するものの内面に接合され、前記第2織布部の先端が、前記第1織布部の外面に対して前記一方向における中間に接合されることで、前記二枚の織布の一方の前記第1織布部の基端側の部分と前記第2織布部とによって、前記織布パネルの一方が形成され、前記二枚の織布の他方の前記第1織布部の基端側の部分と前記第2織布部とによって、前記織布パネルの他方が形成され、前記二枚の織布の各々の前記第1織布部の先端側の部分が、前記テザーとして機能する請求項1または請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
互いに向かい合う一対の織布パネルを有して前記織布パネル同士が互いに離れるように膨張可能な袋体と、前記袋体の内部で前記織布パネル同士を繋ぐとともに前記袋体の膨張時に前記一対の織布パネルの間の距離を規制するテザーと、を備えたエアバッグの製造方法であって、
一方向における両側の端部の各々が、一重織によって形成された一重織部とされ、それら両側の前記一重織部の間が、二枚の織布が重ねられた二重織部とされた織布基材を製織する製織工程と、
前記二重織部における前記二枚の織布の一方に対して、概してコの字形状の切れ目を入れ、前記一方向に交差する方向に延びる軸線に沿って折れ曲がることが可能な片部を形成する片部形成工程と、
前記片部の先端を、前記二枚の織布の他方の内面に接合することで、前記テザーを形成するテザー形成工程と、
前記二枚の織布の前記一方に対して、前記切れ目によって形成された開口の開口縁部のうち前記片部の先端に対向していた部分を、前記片部の基端に接合することで、前記開口を塞ぎつつ、前記織布パネルを形成する織布パネル形成工程と、
を含んで構成されているエアバッグの製造方法。
【請求項5】
前記片部形成工程の後に行われ、前記一方向から見て前記片部の両脇の部分を、外側に引っ張り出すようにして山折り形状に折り曲げた折り曲げ部を形成し、前記折り曲げ部の基端を縫製する折り曲げ部縫製工程と、
前記折り曲げ部の縫製箇所より先端側を裁断する折り曲げ部裁断工程と、を含む請求項4に記載のエアバッグの製造方法。
【請求項6】
前記製織工程は、前記織布基材に対して、外周に袋体の内部にガスを供給するインフレータを挿入するための取付孔を形成し、
前記織布パネル形成工程は、前記折り曲げ部縫製工程における前記折り曲げ部の基端の縫製と同時に、前記片部の先端に対向していた部分を前記片部の基端に縫製によって接合し、
前記テザー形成工程は、それら前記折り曲げ部縫製工程と前記織布パネル形成工程との後に、前記取付孔を利用して、前記片部の先端を、前記二枚の織布の他方の内面に接合する請求項5に記載のエアバッグの製造方法。
【請求項7】
前記片部形成工程は、前記二枚の織布の他方に対しても、前記片部を形成し、
前記テザー形成工程は、前記二枚の織布の前記一方の前記片部を、前記二枚の織布の前記他方の内面に接合するとともに、前記二枚の織布の前記他方の前記片部を、前記二枚の織布の前記一方の内面に接合し、
前記織布パネル形成工程は、前記二枚の織布の両者に対して、前記切れ目によって形成された開口の開口縁部のうち前記片部の先端に対向していた部分を、前記片部の基端に接合することで、前記開口を塞ぎつつ、前記一対の織布パネルを形成する請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のエアバッグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグに関し、また、エアバッグの製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物用の安全装置として、エアバッグ装置が広く用いられている。エアバッグ装置は、乗物に対して外部から所定値以上の衝撃が加えられた際に、小さく折り畳まれていた袋体が膨張展開して乗員を衝撃から保護する装置である。この種の装置で利用される袋体は、織布を縫製により袋状に加工したものや、ワンピースウーブン(One Piece Woven:OPW)方式によって一体的に袋織りされたもの等からなる。また、このような袋体の内部には、例えば、下記特許文献1,2のように、膨張時の厚みを規制するためのテザーが設けられている。テザーは、例えば、織布が帯状に加工されたものからなり、袋体を構成する互いに向かい合った一対の織布パネル同士を繋ぐように設けられている。
【0003】
なお、下記特許文献1に記載のエアバッグにおいては、テザーの両端部が、一対の織布パネルに対して縫製を利用してそれぞれ固定されている。また、下記特許文献2に記載のエアバッグは、一枚の織布からなる一重織部と、この一重織部から継ぎ目が無い状態で互いに逆向きにそれぞれ二枚の織布が重なった状態で延びる二組の二重織部とを有するOPW方式で製造された織布基材からなり、二組の二重織部が袋体を形成し、一重織部がテザーを形成する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-213234号公報
【特許文献2】特開2019-98800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に記載されたエアバッグは、一対の織布パネルの外周を縫製等によって接合するため、折り畳んだ際の容積の増加、つまり、収容時における容積の増加が問題となる。一方で、テザーをOPW方式で形成する方法もあるが、製織時に糸の本数が増加するとともに、織組織図が複雑化してその作成に時間を要する等の問題がある。
【0006】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、テザーを容易に形成しつつ、収容時の容積増加を抑えることが可能なエアバッグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエアバッグは、
互いに向かい合う一対の織布パネルを有して前記織布パネル同士が互いに離れるように膨張可能な袋体と、前記袋体の内部で前記織布パネル同士を繋ぐとともに前記袋体の膨張時に前記一対の織布パネルの間の距離を規制するテザーと、を備えたエアバッグであって、
一方向における両側の端部の各々が、一重織によって形成された一重織部とされ、それら両側の前記一重織部の間が、二枚の織布が重ねられた二重織部とされた織布基材からなり、
前記二枚の織布のうちの少なくとも一方は、
前記一方向に分割され、一方側の前記一重織部から繋がる前記織布である第1織布部と、他方側の前記一重織部から繋がる前記織布である第2織布部と、を含み、
前記第1織布部の先端が、前記二枚の織布のうちの自身に対向するものの内面に接合され、前記第2織布部の先端が、前記第1織布部の外面に対して前記一方向における中間に接合されていることで、前記第1織布部の基端側の部分と前記第2織布部とによって、前記織布パネルが形成され、前記第1織布部の先端側の部分が、前記テザーとして機能することを特徴とする。
【0008】
本願に開示のエアバッグは、外周の少なくとも一部が一重織で形成されて閉塞され、かつ、二重織で形成された部分に入れられた切れ目によって分割された部分を接合することで、テザーおよび織布パネルが形成されたものとなっている。このような構成により、本願に開示のエアバッグは、織布の一部を接合してテザーを形成するため比較的容易にテザーを形成することができるとともに、外周の接合箇所が減らされて収容時における容積を抑えることができるものとなる。なお、本願に開示のエアバッグにおいて、接合とは、縫製に限定されず、例えば、レーザー溶着、接着剤や両面テープを用いた接着等も含まれる。
【0009】
上記構成において、前記第1織布部の中間には、外側に向かって立ち上げられた立ち上がり部が形成され、前記立ち上がり部に、前記第2織布部の先端が縫製されている構成とすることができる。
【0010】
この構成のエアバッグは、第1織布部と第2織布部との間が縫製によって接合された構成とされている。例えば、本エアバッグの製造段階において、第1織布部を山折り状態にして、その山折り部分に第2織布部の先端を合わせることで、二枚の織布が二重織になっていても、二枚の織布の一方のみに対して縫製作業を行うことができる。
【0011】
上記構成において、前記二枚の織布の一方は、前記一方向における一方側に前記第1織布部が、他方側に前記第2織布部が形成されたものとされ、
前記二枚の織布の他方は、前記一方向における他方側に前記第1織布部が、一方側に前記第2織布部が形成されたものとされ、
前記二枚の織布の各々は、前記第1織布部の先端が、前記二枚の織布のうちの自身に対向するものの内面に接合され、前記第2織布部の先端が、前記第1織布部の外面に対して前記一方向における中間に接合されることで、前記二枚の織布の一方の前記第1織布部の基端側の部分と前記第2織布部とによって、前記織布パネルの一方が形成され、前記二枚の織布の他方の前記第1織布部の基端側の部分と前記第2織布部とによって、前記織布パネルの他方が形成され、前記二枚の織布の各々の前記第1織布部の先端側の部分が、前記テザーとして機能する構成とすることができる。
【0012】
この構成のエアバッグは、袋体の内部に、テザーが2箇所設けられた構成となっている。この構成のエアバッグは、テザーが1箇所である場合に比較して、扁平な形状を確保することができ、乗員への衝撃を効果的に緩和することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明のエアバッグの製造方法は、
互いに向かい合う一対の織布パネルを有して前記織布パネル同士が互いに離れるように膨張可能な袋体と、前記袋体の内部で前記織布パネル同士を繋ぐとともに前記袋体の膨張時に前記一対の織布パネルの間の距離を規制するテザーと、を備えたエアバッグの製造方法であって、
一方向における両側の端部の各々が、一重織によって形成された一重織部とされ、それら両側の前記一重織部の間が、二枚の織布が重ねられた二重織部とされた織布基材を製織する製織工程と、
前記二重織部における前記二枚の織布の一方に対して、概してコの字形状の切れ目を入れ、前記一方向に交差する方向に延びる軸線に沿って折れ曲がることが可能な片部を形成する片部形成工程と、
前記片部の先端を、前記二枚の織布の他方の内面に接合することで、前記テザーを形成するテザー形成工程と、
前記二枚の織布の前記一方に対して、前記切れ目によって形成された開口の開口縁部のうち前記片部の先端に対向していた部分を、前記片部の基端に接合することで、前記開口を塞ぎつつ、前記織布パネルを形成する織布パネル形成工程と、
を含んで構成されていることを特徴とする。
【0014】
本願に開示のエアバッグの製造方法によれば、外周が一重織で、テザーが接合により形成されたエアバッグを容易に製造することができる。つまり、本願に開示のエアバッグの製造方法は、先に開示したエアバッグの製造に好適である。なお、本願に開示のエアバッグの製造方法において、テザー形成工程と織布パネル形成工程とが、その順で行われる態様に限定されず、後に詳しく説明するが、織布パネル形成工程の後にテザー形成工程が行われる態様であってもよい。
【0015】
上記構成において、前記片部形成工程の後に行われ、前記一方向から見て前記片部の両脇の部分を、外側に引っ張り出すようにして山折り形状に折り曲げた折り曲げ部を形成し、前記折り曲げ部の基端を縫製する折り曲げ部縫製工程と、前記折り曲げ部の縫製箇所より先端側を裁断する折り曲げ部裁断工程と、を含む構成とすることができる。
【0016】
本願に開示のエアバッグの製造方法を用いた場合、片部が形成された箇所は、一方向における寸法が、製織工程の際の寸法より短くなる。この構成のエアバッグの製造方法は、片部の両脇の部分を、その片部が形成された箇所の寸法に合わせることが可能である。
【0017】
上記構成において、前記製織工程は、前記織布基材に対して、外周に袋体の内部にガスを供給するインフレータを挿入するための取付孔を形成し、前記織布パネル形成工程は、前記折り曲げ部縫製工程における前記折り曲げ部の基端の縫製と同時に、前記片部の先端に対向していた部分を前記片部の基端に縫製によって接合し、前記テザー形成工程は、それら前記折り曲げ部縫製工程と前記織布パネル形成工程との後に、前記取付孔を利用して、前記片部の先端を、前記二枚の織布の他方の内面に接合する構成とすることができる。
【0018】
この構成のエアバッグの製造方法は、片部の両脇の部分を山折り形状とするとともに、片部の基端を山折り形状として片部の先端を二枚の織布の内側に折り込んだ状態とすることで、折り曲げ部の基端の縫製ラインと、片部の先端に対向していた部分と片部の基端とを縫製するラインとが、直線状に並ぶため、それらを同時に縫製することが可能となり、製造工程を単純化することができる。なお、この場合には、外周が閉塞されてしまう場合があるが、インフレータの取付孔を利用して、片部の先端を縫製等によって接合することができる。
【0019】
上記構成において、前記片部形成工程は、前記二枚の織布の他方に対しても、前記片部を形成し、
前記テザー形成工程は、前記二枚の織布の前記一方の前記片部を、前記二枚の織布の前記他方の内面に接合するとともに、前記二枚の織布の前記他方の前記片部を、前記二枚の織布の前記一方の内面に接合し、
前記織布パネル形成工程は、前記二枚の織布の両者に対して、前記切れ目によって形成された開口の開口縁部のうち前記片部の先端に対向していた部分を、前記片部の基端に接合することで、前記開口を塞ぎつつ、前記一対の織布パネルを形成する構成とすることができる。
【0020】
この構成のエアバッグの製造方法によれば、袋体の内部にテザーが2箇所設けられた構成のエアバッグを容易に製造することができる。なお、二枚の織布の一方にのみ、上述した片部を設ける場合、他方に対して、一方向における寸法を、二枚の織布の一方に合わせる処理を行うと、端材が多く発生することになるが、この構成のエアバッグの製造方法によれば、織布基材の二重織部を効率的に利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、テザーを容易に形成しつつ、収容時の容積増加を抑えることが可能なエアバッグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1のエアバッグの使用状態を示す概念図
図2】実施形態1のエアバッグの平面図
図3】実施形態1のエアバッグの側面断面図(図2におけるA-A断面)
図4】実施形態1のエアバッグの側面断面図(図2におけるB-B断面)
図5】製織工程において製織された織布基材の平面図
図6】製織工程において製織された織布基材の側面断面図
図7】片部形成工程後の織布基材の平面図
図8】片部形成工程後の織布基材の側面断面図
図9】テザー形成工程後の織布基材の平面図
図10】テザー形成工程後の織布基材の側面断面図(図9におけるC-C断面)
図11】テザー形成工程後の織布基材の側面断面図(図9におけるD-D断面)
図12】織布パネル形成工程後の織布基材の側面断面図
図13】折り曲げ部裁断工程後の織布基材の側面断面図
図14】変形例のエアバッグ製造方法における織布パネル形成工程および折り曲げ部裁断工程後の織布基材の側面断面図
図15】変形例のエアバッグ製造方法におけるテザー形成工程後の織布基材の側面断面図
図16】変形例のエアバッグ製造方法によって完成したエアバッグ装置の側面断面図
図17】実施形態2のエアバッグの平面図
図18】実施形態2のエアバッグの側面断面図
図19】実施形態2のエアバッグの製造方法における片部形成工程後の織布基材の平面図
図20】実施形態2のエアバッグの製造方法における片部形成工程後の織布基材の裏面図
図21】実施形態2のエアバッグの製造方法におけるテザー形成工程後の織布基材の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
(1)エアバッグの構成
本発明の実施形態1に係るエアバッグ10を、図1から図4を参照しつつ説明する。本実施形態のエアバッグ10は、図1に示すように、車両のフロントシート12に搭載されるエアバッグ装置13を構成するものである。このエアバッグ装置13は、図2に示すように、本実施形態のエアバッグ10と、エアバッグ10の内部にガスを供給するインフレータ14と、を含んで構成され、エアバッグ10が折り畳まれた状態で、フロントシート12のシートバッグ12aの側部に収容されている。そして、車両に大きな衝撃が加えられた場合に、インフレータ14から放出されたガスがエアバッグ10の内部に供給され、エアバッグ10が、シート12の側方から前方に向けて、つまり、シート12の側方からサイドドア16と乗員との間に向けて膨張展開するようになっている。
【0024】
本実施形態のエアバッグ10は、後に詳しく説明するが、OPW方式で製造された1つの織布基材20から形成され、図2に示すように、概して長円形状をなすものとなっている。そして、本エアバッグ10は、図3に示すように、袋体22と、袋体22の内部に設けられるテザー24と、を備えている。なお、袋体22は、互いに向かい合う一対の織布パネル26,27を有しており、それら織布パネル26,27同士が互いに離れるように膨張可能なものとなっている。テザー24は、袋体22の内部で織布パネル26,27同士を繋ぐとともに、袋体22の膨張時に一対の織布パネル26,27の間の距離を規制するものである。
【0025】
上述した織布基材20は、一重織によって形成された一重織部W1と、二重織によって形成されて二枚の織布30,32が重ねられた二重織部W2とからなる(図4および図5参照)。後に詳しく説明するが、袋体22の一対の織布パネル26,27は、二重織部W2から形成され、袋体22の周縁部34は、一重織部W1から形成されている。ただし、袋体22の周縁部34の一部は、二重織とされて、袋体22の内部に繋がる挿通孔(取付孔)34aが形成されており、その挿通孔34aにインフレータ14の端部が挿し込まれる状態で取り付けられている。
【0026】
図2,3に示すように、二枚の織布のうちの一方の織布30(図3における上側のもの)は、長軸方向(図2における左右方向である。一方向に相当する。)において分割されている。つまり、織布30は、短軸方向における中央部分が、一端側(図2における左側)の一端側織布部(第1織布部)40と、他端側の他端側織布部(第2織布部)42と、に分割されていると考えることができる。そして、一端側織布部40は、中間部分が、その両脇の部分より長くされた延出部40aとされており、その延出部40aの先端40a1が、二枚の織布のうちの他方の織布32の内面に対して、縫製によって接合されている。一方、他端側織布部42は、その先端42aが、図3に示すように、延出部40aの基端に形成された立ち上がり部40bに対して、縫製によって接合されるとともに、図4に示すように、延出部40aの両脇の一端側織布部40の先端40cと、縫製によって接合されている。なお、図2に示すように、それらの縫製箇所は、短軸方向に延びる直線状の縫製ラインL1となっている。 なお、他方の織布32は、長軸方向における中央において分割されており、それら一端側織布部44の先端44aと、他端側織布部46の先端46aとが、縫製によって接合されている。
【0027】
このような構成により、本実施形態のエアバッグ10において、一方の織布30の一端側織布部40の基端側の部分40d(延出部40aを除いた部分)と、他端側織布部42とによって、織布パネル26が形成されるとともに、他方の織布32の一端側織布部44と他端側織布部46とによって、織布パネル27が形成されている。また、本エアバッグ10においては、一方の織布30の一端側織布部40における先端側の部分、つまり、延出部40aが、テザー24として機能するものとなっている。
【0028】
(2)エアバッグの製造方法
次に、図5図13を参照するとともに、必要に応じて図2図4をも参照しつつ、本実施形態のエアバッグの製造方法について説明する。本実施形態の製造方法においては、まず、製織工程が行われ、図5および図6に示す織布基材20が製織される。この織布基材20は、平面視で、長方形と、その長手方向(図5における左右方向)における両端の各々に一対の半円とを合わせた形状とされている。織布基材20は、周縁部の大部分が一重織部W1とされ、それ以外の部分が二重織部W2とされている。詳しく言えば、周縁部における長手方向における中央部分で、短手方向(図5における上下方向)の両端50,51は、一重織部W1ではなく、二重織部W2とされている。つまり、織布基材20は、長手方向における両端52,53が、それぞれ一重織部W1とされ、それら両側の一重織部52,53の間の部分54が、二枚の織布30,32が重ねられた二重織部W2とされ、ほぼ袋状の織物となっている。なお、片方の端部53には、短手方向における中央のみ二重織とされて、前述した挿通孔34aが形成されている。
【0029】
次いで、図7および図8に示すように、片部形成工程が行われる。この工程では、織布30に対して、コの字形状の切れ目60が入れられる。詳しく言えば、切れ目60は、織布基材20の長手方向における中央部分61における短手方向中央に、端部52を向いて開口する形のコの字形状となっている。この切れ目60によって、織布30には、四角形状の片部62が形成され、短手方向に延びる軸線L2に沿って、折れ曲がることが可能となっている。
【0030】
続いて、図9図10に示すように、テザー形成工程が行われる。この工程では、先の片部形成工程において形成された片部62の先端62aが、対向する織布32の内面の所定箇所に対して縫製よって接合される。これにより、片部62は、対向する一対の織布パネル26,27を繋ぐもの、つまり、テザーとして機能するものとなる。
【0031】
次いで、図10および図11に示すように、一対の織布30,32の両者を、長手方向における中央部分に対して、それぞれ外側に引っ張り出すようにして山折り形状に折り曲げた折り曲げ部70,72を形成する。ちなみに、この状態においては、図9に示すように、織布基材20の周縁部は、端部52と端部53とがほぼ接する状態とされ、挿通孔34aを除いて、一重織部W1で形成された状態となる。また、その際に、片部62に対しては、基端側を外側に向かって立ち上げた立ち上がり部62bを形成する。この立ち上がり部62bには、切れ目60によって形成された開口の開口縁部のうち片部62に対向していた部分である対向部74が合わさることになる。
【0032】
そして、図2に示した縫製ラインL1に沿う縫製が行われる。つまり、図12に示すように、片部62が形成された織布30に対しては、立ち上がり部62bと対向部74とが縫製されるとともに、片部62の両脇の一対の折り曲げ部70の基端が、直線状に縫製される。つまり、本実施形態の製造方法においては、織布パネル形成工程と、折り曲げ部縫製工程とが同時行われるようになっている。なお、織布32に対しては、図12および図13に示すように、折り曲げ部72の基端が縫製される。続いて、織布30の折り曲げ部70の縫製箇所より先端側の部分70aと、織布32の縫製箇所より先端側の部分72aとが、裁断される(折り曲げ部裁断工程)。以上で、前述した本実施形態のエアバッグ10が完成する。
【0033】
このように、本実施形態の製造方法によって製造されたエアバッグ10は、周縁部34が一重織で形成されて閉塞され、かつ、二重織で形成された部分に入れられた切れ目60によって分割された部分62を接合することで、テザー24および織布パネル26が形成されたものとなっている。このような構成により、本実施形態のエアバッグ10は、テザー24を接合して形成するため比較的容易にテザー24を形成することができるとともに、周縁部34の接合箇所がほぼ無くなり収容時における容積を抑えることができるものとなる。
【0034】
(3)エアバッグの製造方法の変形例
前述したエアバッグの製造方法は、テザー形成工程の後に織布パネル形成工程が行われていたが、織布パネル形成工程の後に、テザー形成工程を行うこともできる。前述した片部形成工程の後には、図14に示すように、一対の織布30,32の両者を、長手方向における中央部分に対して、それぞれ外側に引っ張り出すようにして山折り形状に折り曲げた折り曲げ部70,72を形成するともに、片部62に対して、基端側を外側に向かって立ち上げた立ち上がり部62bを形成する。そして、片部62が形成された織布30に対しては、立ち上がり部62bと対向部74とが縫製される(織布パネル形成工程)とともに、片部62の両脇の一対の折り曲げ部70の基端が、図2に示す縫製ラインに沿って直線状に縫製される(折り曲げ部縫製工程)。また、織布32に対して、折り曲げ部72の基端が縫製される。
【0035】
次いで、折り曲げ部裁断工程が行われ、織布30の折り曲げ部70の縫製箇所より先端側の部分70aと、織布32の縫製箇所より先端側の部分72aとが、裁断される。続いて、図15に示すように、片部62の先端62aが、対向する織布32の内面の所定箇所に対して縫製よって接合される。この片部62の縫製は、端部53に形成された挿通孔80を利用して行われる。そして、この挿通孔80には、図16に示すように、インフレータ14が挿入されるのであり、インフレータ14を取り付けるための取付孔として機能するものとなる。ちなみに、この場合、挿通孔80は、片部62の接合作業の作業性を考慮して、前述した図2に示した挿通孔34aより大きくされることが望ましい。
【0036】
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係るエアバッグ100を、図17図21を参照しつつ説明する。実施形態2のエアバッグ100は、実施形態1のエアバッグ10と同様に、同じ織布基材20から形成され、図17に示すように、概して長円形状をなすものとなっている。ただし、実施形態1のエアバッグ10は、袋体22の内部に設けられたテザー24が1つであったのに対して、実施形態1のエアバッグ100は、一対の織布パネル102,103を有する袋体104の内部に2つのテザー106,107を備えたものとなっている。この実施形態2のエアバッグ100については、製造方法から順に説明することとする。
【0037】
実施形態2のエアバッグ100は、上述したように、図5および図6に示した実施形態1のエアバッグ10と同じ織布基材20を用いて製造される。本実施形態における片部形成工程においては、図19に示すように、実施形態1と同様、織布30に対して、コの字形状の切れ目60が入れられるとともに、図20に示すように、織布32に対して、切れ目60と逆向きの切れ目110が入れられる。詳しく言えば、切れ目110は、織布基材20の長手方向における中央部分61における短手方向中央に、端部53を向いて開口する形のコの字形状となっている。この切れ目110によって、織布32には、四角形状の片部112が形成され、短手方向に延びる軸線L3に沿って、折れ曲がることが可能となっている。
【0038】
そして、その片部形成工程の後、テザー形成工程が行われる。図21に示すように、先の片部形成工程において形成された織布30の片部62の先端62aが、対向する織布32の内面の所定箇所に対して縫製よって接合されるともに、織布32の片部112の先端112aが、対向する織布30の内面の所定箇所に対して縫製によって接合される。これにより、片部62および片部112は、対向する一対の織布パネル102,103を繋ぐもの、つまり、テザーとして機能するものとなる。
【0039】
次いで、テザー形成工程の後には、図示は省略するが、実施形態1と同様に、片部62,112の両脇の部分に対して、それぞれ外側に引っ張り出すようにして山折り形状に折り曲げた折り曲げ部を形成するとともに、片部62,112に対しては、基端側を外側に向かって立ち上げた立ち上がり部62b,112bを形成する。この織布30の立ち上がり部62bには、切れ目60によって形成された開口の開口縁部のうち片部62に対向していた部分である対向部74が合わさることになり、織布32の立ち上がり部112bには、切れ目110によって形成された開口の開口縁部のうち片部112に対向していた部分である対向部114が合わさることになる。そして、図17に示した縫製ラインL1に沿う縫製が、織布30および織布32の両者に対して行われ、織布30,32の折り曲げ部の縫製箇所より先端側の部分が、裁断される。以上で、実施形態2のエアバッグ100が完成する。
【0040】
つまり、実施形態2のエアバッグ100は、二枚の織布30,32の両者は、長軸方向において分割されている。まず、織布30は、短軸方向における中央部分が、一端側(図2における左側)の一端側織布部(第1織布部)40と、他端側の他端側織布部(第2織布部)42と、に分割されており、一端側織布部40は、短軸方向における中間部分、つまり、上述した片部62の先端62aが、対向する織布32の内面に対して、縫製によって接合されている。一方、他端側織布部42は、その先端42aが、図18に示すように、片部62の立ち上がり部62bに対して、縫製によって接合されている。
【0041】
また、織布32は、短軸方向における中央部分が、一端側(図2における左側)の一端側織布部(第2織布部)120と、他端側の他端側織布部(第2織布部)122と、に分割されており、他端側織布部122は、短軸方向における中間部分、つまり、上述した片部112の先端112aが、対向する織布30の内面に対して、縫製によって接合されている。一方、一端側織布部120は、その先端120aが、図18に示すように、片部112の立ち上がり部112bに対して、縫製によって接合されている。
【0042】
このような構成により、本実施形態のエアバッグ100において、一方の織布30の一端側織布部40の基端側の部分40d(片部62aを除いた部分)と、他端側織布部42とによって、織布パネル102が形成されるとともに、他方の織布32の他端側織布部122の基端側の部分122a(片部112を除いた部分)と、一端側織布部120とによって、織布パネル103が形成されている。また、本エアバッグ100においては、織布30の一端側織布部40における先端側の部分と、織布32の他端側織布部122における先端側の部分、つまり、片部62,112が、テザー106,107として機能するものとなっている。
【0043】
実施形態2のエアバッグ100は、実施形態1のエアバッグ10に比較して、端材となる部分が減らされるとともに、2つのテザー106,107を有することで、実施形態1のエアバッグ10に比較して、扁平な形状を確保することができ、乗員への衝撃を効果的に緩和することができる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
(1)上記実施形態のエアバッグの製造法方法は、各織布に対して、1つのみ片部62,112を設けるものとされていたが、長手方向に並んで、2つ以上の片部を設けた構成とすることもできる。また、その片部は、短手方向において中央に1つ設けられていたが、短手方向に間隔をおいて、複数の片部を設けた構成とすることもできる。
【0046】
(2)上記2つの実施形態のエアバッグは、縫製によって接合されていたが、それに限定されず、接合箇所等を考慮して、例えば、レーザー溶着、接着剤や両面テープを用いた接着等を用いて接合した構成とすることもできる。
【0047】
(3)また、実施形態のエアバッグ10,100は、長円形状のもとされていたが、それに限定されず、本発明のエアバッグおよび製造方法は、種々の形状のものに利用することができる。
【0048】
(4)本発明のエアバッグおよびエアバッグの製造方法は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、カーテンエアバッグ、サイドエアバッグ、ニーエアバッグ、運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、ITSヘッド・エアバッグ、歩行者保護エアバッグ等の車両用エアバッグに利用される。また、本発明のエアバッグおよびエアバッグの製造方法は、本発明の目的を損なわない限り、車両用以外のエアバッグに利用されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…エアバッグ(実施形態1)、13…エアバッグ装置、14…インフレータ、20…織布基材、W1…一重織部、W2…二重織部、22…袋体、24…テザー、26,27…一対の織布パネル、30…一方の織布、32…他方の織布、34…周縁部、34a…挿通孔〔取付孔〕、40…一端側織布部〔第1織布部〕、40a…延出部、40b…立ち上がり部、42…他端側織布部〔第2織布部〕、60…切れ目、62…片部、62b…立ち上がり部、70,72…折り曲げ部、80…挿通孔〔取付孔〕、100…エアバッグ(実施形態2)、102,103…一対の織布パネル、104…袋体、106,107…テザー、110…切れ目、112…片部、112b…立ち上がり部、120…一端側織布部〔第2織布部〕、122…他端側織布部〔第1織布部〕
図1
図2
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図5
図6
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図8
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