(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176916
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】原子力発電プラント
(51)【国際特許分類】
G21D 1/00 20060101AFI20231206BHJP
G21C 17/032 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G21D1/00 B
G21D1/00 K
G21C17/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089496
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】グランジャン ギヨーム ローラン
(72)【発明者】
【氏名】木藤 和明
(72)【発明者】
【氏名】内藤 樹
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075BA03
2G075CA40
2G075DA05
2G075DA18
2G075EA01
(57)【要約】
【課題】隔離弁を全閉するまでの原子炉圧力容器内の冷却材量の減少抑制、及び原子炉格納容器内圧力の上昇抑制を、簡単な構成で実現する。
【解決手段】原子力発電プラント100は、原子炉格納容器2の内部に、原子炉圧力容器1と隔離弁3,4と拡大レデューサー7とが設けられている。原子炉圧力容器と隔離弁は、溶接以外の手段で接続されている。隔離弁の内径又は流路断面積は、原子炉圧力容器内で発生した蒸気を流す配管(主蒸気配管5)の原子炉格納容器を貫通する貫通部6の内径又は流路断面積より小さく、拡大レデューサーの周囲には、拡大レデューサーの小径部と大径部との間で蒸気の流量を計測する蒸気流量計測機構8が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の内部に、原子炉圧力容器と隔離弁と拡大レデューサーとが設けられ、
前記原子炉圧力容器と前記隔離弁は、溶接以外の手段で接続され、
前記隔離弁の内径又は流路断面積は、前記原子炉圧力容器内で発生した蒸気を流す配管の前記原子炉格納容器を貫通する貫通部の内径又は流路断面積より小さく、
前記拡大レデューサーの周囲には、前記拡大レデューサーの小径部と大径部との間で前記蒸気の流量を計測する蒸気流量計測機構が配置されている
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の原子力発電プラントにおいて、
前記拡大レデューサーの小径部は、前記隔離弁から前記隔離弁の内径の3.5倍以上離れた位置に設置され、
前記拡大レデューサーの拡大角度は、15度から35度の範囲である
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項3】
請求項1に記載の原子力発電プラントにおいて、
前記拡大レデューサーの上流には、配管曲がり部が設けられており、
前記拡大レデューサーの小径部は、前記配管曲がり部から前記配管曲がり部の内径の3.0倍以上離れた位置に設置され、
前記拡大レデューサーの拡大角度は、15度から35度の範囲である
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項4】
請求項1に記載の原子力発電プラントにおいて、
前記隔離弁の内径は、前記配管の前記貫通部の内径よりも、少なくとも25%以上小さい
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項5】
請求項1に記載の原子力発電プラントにおいて、
前記隔離弁の流路断面積は、前記配管の前記貫通部の流路断面積よりも44%以上小さい
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントを安全かつ確実に運用するためには、原子力発電プラントから外部環境への放射性物質の放出を許容される範囲内に、かつ、可能な限り低いレベルに維持管理することが望まれる。この目的のため、原子力発電プラントは、大量の放射性物質を内包している原子炉炉心を原子炉圧力容器(RPV;Reactor Pressure Vessel,)内に設置している。さらに、原子炉圧力容器を鉄鋼製および/または、鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器(PCV;Primary Containment Vessel)内に設置している。これにより原子力発電プラントに何らかの異常が生じた場合であっても、原子炉炉心に存在する放射性物質の外部環境への放出量を許容される範囲内にかつ可能な限り低いレベルに抑制して維持することを高い信頼性をもって実現している。
【0003】
また、原子力発電プラントでは、原子炉から発電に必要なエネルギーを取り出すために、原子炉を循環する流体を原子炉圧力容器の外部に導く配管設備が設けられている。また、炉心を冷却する流体が循環する配管設備に破損等の異常が発生した場合であっても、原子炉格納容器内で異常事象が収束するように安全設備が設けられている。
【0004】
ところで、近年開発された高経済性小型軽水炉では、万一、原子炉圧力容器と接続する配管の破断が生じた場合であっても、原子炉圧力容器に直付けした二重化した隔離弁(以下、「RPV一体型隔離弁」と呼ぶ場合がある)の全閉により冷却材を喪失する事態(LOCA;Loss Of Coolant Accident)を短時間で収束させ、その影響を緩和できる。このような高経済性小型軽水炉は、RPV一体型隔離弁の設置によってLOCAの影響を緩和できるため、旧来の沸騰水型軽水炉(BWR;Boiling Water Reactor)に設けられていたLOCAに対応するための安全設備(非常時炉心冷却設備等)の種類、及び原子炉格納容器の容量を低減できる。
【0005】
しかしながら、その高経済性小型軽水炉においても、原子炉圧力容器と接続されている主蒸気配管の破断によってLOCAが生じた場合に、RPV一体型隔離弁を全閉するまでの原子炉圧力容器内の冷却材量の減少、及び原子炉格納容器内圧力の上昇を許容される範囲内に維持するために、流出する蒸気量を可能な限り制限することが望まれる。この目的のため、高経済性小型軽水炉や旧来の沸騰水型軽水炉には、例えば、特許文献1に記載された流量制限機構が設けられている。特許文献1に記載された流量制限機構は、配管の破断部よりも上流側の原子炉圧力容器の主蒸気ノズルに口径の絞り部を設けたものである。口径の絞り部は、重要な計測項目である蒸気流量の計測にも使われる。
【0006】
原子力発電プラントの中には、配管の破損等の何らかの異常が生じた場合に流出する蒸気量を可能な限り制限するために、流量制限器を原子炉圧力容器と一体に設け、流量計器機構で原子炉圧力容器から流量制限器を通って外部に流出する蒸気(流体)の流量を計測する構成になっているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の原子力発電プラントは、主蒸気配管の圧力損失及び蒸気流速を許容範囲に収めるために原子炉圧力容器の主蒸気ノズルの下流側の配管口径を拡大すると、これに伴って隔離弁が大型化するため、隔離弁のコストが増加する、という課題がある。また、この場合に、隔離弁の重量が増加してしまい、耐震性を確保するためのサポート機構を設けなければならないため、サポート機構の設置コストも増加する、という課題がある。
【0009】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、コストの増加を抑制する原子力発電プラントを提供することを主な目的とする。その他の課題解決の目的は、発明を実施するための形態において適宜説明する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、原子力発電プラントであって、原子炉格納容器の内部に、原子炉圧力容器と隔離弁と拡大レデューサーとが設けられ、前記原子炉圧力容器と前記隔離弁は、溶接以外の手段で接続され、前記隔離弁の内径又は流路断面積は、前記原子炉圧力容器内で発生した蒸気を流す配管の前記原子炉格納容器を貫通する貫通部の内径又は流路断面積より小さく、前記拡大レデューサーの周囲には、前記拡大レデューサーの小径部と大径部との間で前記蒸気の流量を計測する蒸気流量計測機構が配置されている構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る原子力発電プラントの構成図である。
【
図2】実施形態2に係る原子力発電プラントの構成図である。
【
図3】比較例の原子力発電プラントの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
なお、特許文献1に記載された流量制限機構やその他の流量制限機構を有する原子力発電プラントには、以下のような課題があり、本実施形態は、それらの課題を解決できる流量制限機能を有する原子力発電プラントを提供することも意図している。
【0015】
特許文献1に記載された流量制限機構を有する原子力発電プラントでは、圧力損失の増加を抑制するために、原子炉圧力容器内で発生した蒸気を原子炉圧力容器からタービンまで導く主蒸気配管に設けられるRPV一体型隔離弁の口径は、主蒸気配管の口径と同じとなる。このような構成の原子力発電プラントでは、RPV一体型隔離弁の下流で主蒸気配管の破断が生じた場合の対策として、RPV一体型隔離弁を全閉するまでの原子炉圧力容器内の冷却材量の減少、及び原子炉格納容器内圧力の上昇を許容される範囲内に維持するために、何らかの異常が生じた場合に流出する蒸気量を制限するための専用の流量制限器を設けている。そのため、流量制限器の分だけコストが増大する、という課題がある。本実施形態は、専用の流量制限器を設けずに、主蒸気ラインで流量制限機能を実現する原子力発電プラントを提供することも意図している。
【0016】
また、他の流量制限機構を有する原子力発電プラントとして、専用の流量制限器を設けなくてもよくするために、RPV一体型隔離弁の口径とその下流の配管を小さくしたものがある。この構成の原子力発電プラントは、隔離弁を小型化でき、耐震性を向上できる。しかしながら、この構成の原子力発電プラントは、小型化したRPV一体型隔離弁の下流に拡大レデューサーを設けることで主蒸気配管の圧力損失が増大し、プラントの熱効率が低下する、という課題がある。本実施形態は、主蒸気配管の圧力損失を低減し、プラントの熱効率を向上させる原子力発電プラントを提供することも意図している。
【0017】
[実施形態1]
<原子力発電プラントの構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態1に係る原子力発電プラント100の構成について説明する。
図1は、原子力発電プラント100の構成図である。
【0018】
図1は、原子炉格納容器2の内部に配置された原子炉圧力容器1と原子炉格納容器2の外部に配置された図示せぬタービン施設とを結ぶ主蒸気ラインL1上に設置された流量制限機能付き蒸気流量計測機構101の構成を示している。なお、
図1では、隔離弁3,4と拡大レデューサー7と主蒸気配管5とで主蒸気ラインL1を構成しており、その主蒸気ラインL1が直線状になっているが、実際の原子力発電プラントでは主蒸気ラインL1の構成及び形状が異なる可能性がある。また、実際の原子力発電プラントでは複数の主蒸気ラインが配置されている場合があるが、本発明は少なくともその内の1つの系統に適用する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態1に係る原子力発電プラント100は、核燃料が装架された炉心を内包する原子炉圧力容器1と、内部で原子炉圧力容器1を保持する原子炉格納容器2と、を備えている。原子炉圧力容器1は、炉心21や図示せぬ制御棒等を内包している。炉心21や図示せぬ制御棒は、炉水22に漬け込まれている。なお、
図1では省略しているが、原子炉格納容器2の外部には図示せぬタービン施設が設けられている。
【0020】
原子炉格納容器2の内部には、原子炉圧力容器1と2つの隔離弁3,4と拡大レデューサー7とが順番に設けられている。隔離弁3は、RPV一体型隔離弁である。隔離弁4は、蒸気(流体)の遮断機能を多重化するために、隔離弁3の下流側(出口側)に配置された隔離弁である。隔離弁3,4は、配管の破断等の何らかの異常が生じた場合に、主蒸気ラインL1を遮断して原子炉圧力容器1の内部で発生した蒸気(流体)の外部への流出を防止する。ここでは、隔離弁3が上流側(原子炉圧力容器1側)に配置され、隔離弁4が下流側(図示せぬタービン施設側)に配置されているものとして説明する。拡大レデューサー7には、主蒸気配管5が接続されている。主蒸気配管5は、原子炉格納容器2の隔壁を貫通するように配置されている。これにより、主蒸気配管5は、原子炉格納容器2の内部から外部に引き出されて、原子炉圧力容器1の内部で発生した蒸気を原子炉格納容器2の外部の図示せぬタービン施設に導く。主蒸気配管5は、複数の配管を連結して構成され、図示せぬタービン施設に接続されている。主蒸気ラインL1以外にも、給水配管等の各種配管が原子炉圧力容器1に接続されている。
【0021】
隔離弁3,4は、溶接線無しに原子炉圧力容器1に接続されている。ここで、「溶接線無し」とは、直付け、フランジ接続、又は、その他の溶接以外の手段で接続された状態を意味している。原子力発電プラント100は、隔離弁4に接続された主蒸気配管5で破断が生じた場合に、流出する蒸気量を制限するために、流量制限機能付き蒸気流量計測機構101を備えている。
【0022】
流量制限機能付き蒸気流量計測機構101は、隔離弁3,4と、主蒸気配管5と、拡大レデューサー7と、蒸気流量計測機構8と、を有している。拡大レデューサー7は、口径(内径)が拡大する拡大部7aを有している。拡大レデューサー7は、拡大部7aの小径部7aaが隔離弁3,4側となり、拡大部7aの大径部7abが主蒸気配管5側となるように配置されている。蒸気流量計測機構8は、拡大レデューサー7の拡大部7aの小径部7aaと大径部7abとの間で蒸気の流量を計測する。
【0023】
流量制限機能付き蒸気流量計測機構101は、原子炉圧力容器1から図示せぬタービン施設までの主蒸気ラインL1全体の圧力損失が許容範囲以上に上昇しないように、隔離弁4と主蒸気配管5との間に拡大レデューサー7を有している。
【0024】
拡大レデューサー7の小径部7aaは、下流側の隔離弁4から、隔離弁4の内径A1の3.5倍以上離れた距離B1の位置に設置されている。また、拡大レデューサー7の拡大角度は、15度から35度の範囲になっている。ここで、「拡大レデューサー7の拡大角度」とは、拡大レデューサー7の小径部7aaから大径部7abに向かうにつれて拡大する内径の角度を意味する。蒸気流量計測機構8は、蒸気の流量を計測する際に圧力損失が発生するが、拡大レデューサー7をこのような構成にすることで、圧力損失を規定で定められた範囲内に収めることができる。そのため、蒸気流量計測機構8は、良好な蒸気の流量測定を維持できる。
【0025】
隔離弁3,4の口径(内径または流路断面積)は、主蒸気配管5の原子炉格納容器2の隔壁を貫通する貫通部6での口径(内径または流路断面積)よりも少なくとも25%(内径)または44%(流路断面積)小さくするとよい。
【0026】
流量制限機能付き蒸気流量計測機構101は、拡大レデューサー7を通る蒸気の流量を蒸気流量計測機構8で測ることで、拡大レデューサー7の内径の拡大による圧力損失を間接的に計測する。流量計測を適切に行える圧力損失を発生させるために、拡大レデューサー7の拡大角度は、15度から35度の範囲とするとよい。また、蒸気流量計測機構8の圧力取出しタップ9,10は、拡大レデューサー7の小径部7aaと大径部7abに設置されている。また、流量制限機能付き蒸気流量計測機構101は、隔離弁4と拡大レデューサー7の小径部7aaとの間に、隔離弁4の内径A1の3.5倍以上の直管長さである距離B1を確保することで、隔離弁4の下流に生じる乱流による流量計測干渉を回避している。
【0027】
本実施形態に係る原子力発電プラント100は、原子炉圧力容器1に溶接線無しに接続される隔離弁3、4の口径を、貫通部6の主蒸気配管5の口径よりも小さくしている。また、隔離弁3、4と原子炉格納容器2の間の一ヶ所には、流量計測用の機器を備えた拡大レデューサー7を設置することで、主蒸気ラインL1上に流量制限機能及び流量計測機能を持つ原子炉一体型隔離弁機構を有する、流量制限機能付き蒸気流量計測機構101を実現している。
【0028】
<比較例の原子力発電プラントと実施形態1に係る原子力発電プラントとの比較>
ここで、本実施形態に係る原子力発電プラント100における流量制限機能付き蒸気流量計測機構101の作用効果を説明するために、
図3を参照して比較例の原子力発電プラント1000の構成について説明する。
図3は、比較例の原子力発電プラント1000の構成図である。比較例の原子力発電プラント1000は、従来の原子力発電プラントに相当する。
【0029】
図3に示すように、比較例の原子力発電プラント1000は、本実施形態に係る原子力発電プラント100(
図1参照)と比較すると、原子炉圧力容器1に一体に構成されたノズル1007と隔離弁1003,1004と主蒸気配管1005とで主蒸気ラインL3を構成している点、及び、蒸気流量計測機構8の圧力取出しタップが原子炉圧力容器1とノズル1007に設置されている点で相違する。ノズル1007は、何らかの異常が生じた場合に流出する蒸気量を制限する流量制限器として機能する。ノズル1007は、口径(内径)が拡大する構成になっており、大径部側に隔離弁1003が配置されている。主蒸気ラインL3は貫通部1006での隔壁を貫通している。隔離弁1003は、配管の破断等の何らかの異常が生じた場合に、主蒸気ラインL3を遮断して原子炉圧力容器1の内部で発生した蒸気(流体)の外部への流出を防止する。
【0030】
比較例の原子力発電プラント1000では、配管の破損等の何らかの異常が生じた場合に流出する蒸気量を可能な限り制限するために、流量制限器として機能するノズル1007を原子炉圧力容器1と一体に設け、蒸気流量計測機構8で原子炉圧力容器1からノズル1007に流出する蒸気(流体)の流量を計測する構成になっている。隔離弁1003,1004は、ノズル1007の下流側(出口側)に配置されているため、隔離弁1003,1004の口径が主蒸気配管1005の口径よりも大きくなっている。このような比較例の原子力発電プラント1000は、隔離弁1003,1004が本実施形態1に係る原子力発電プラント100の隔離弁3,4(
図1参照)よりも大型化するため、隔離弁1003,1004のコストが増加する。また、この場合に、隔離弁1003,1004の重量が増加してしまい、耐震性を確保するためのサポート機構1008を設けなければならないため、サポート機構1008の設置コストも増加する。
【0031】
これに対し、本実施形態1に係る原子力発電プラント100は、流量制限機能付き蒸気流量計測機構101を備えており、主蒸気ラインL1の原子炉格納容器2の内部部分で、配管の破損等の何らかの異常が生じた場合に流出する蒸気量を可能な限り制限できる。そのため、本実施形態1に係る原子力発電プラント100は、隔離弁3,4(
図1参照)の口径を比較例の原子力発電プラント1000の隔離弁1003,1004の口径よりも小型化できる。このような本実施形態1に係る原子力発電プラント100は、隔離弁3,4(
図1参照)を比較例の原子力発電プラント1000の隔離弁1003,1004よりも小型化できるため、隔離弁3,4(
図1参照)を小型化した分だけ、コストを低減できる。なお、隔離弁3,4は、例えば、比較例の原子力発電プラント1000の隔離弁1003,1004よりも25%以上小型化できる。また、隔離弁3,4の重量を軽量化できるため、比較例の原子力発電プラント1000と異なり、耐震性を確保するためのサポート機構1008を設けなくてもよい。そのため、本実施形態1に係る原子力発電プラント100は、サポート機構1008を削除した分だけ、設置コストを低減できる。また、流量制限を行うためのノズル1007を無くすことができるため、ノズル1007を削除した分だけ、設置コストを低減できる。また、隔離弁3,4を全閉するまでの原子炉圧力容器1内の冷却材量の減少抑制、及び原子炉格納容器内圧力の上昇抑制を、簡単な構成で実現できる。また、RPV一体型隔離弁のコストの低減、隔離弁の重量の低減による耐震性の向上、LOCA時の流量制限機能の実現、蒸気流量の計測を達成でき、安全性と経済性を共に高めることができる。
【0032】
<原子力発電プラントの主な特徴>
(1)
図1に示すように、本実施形態に係る原子力発電プラント100は、原子炉格納容器2の内部に、原子炉圧力容器1と隔離弁3,4と拡大レデューサー7とが順番に設けられている。原子炉圧力容器1と隔離弁3,4は、溶接以外の手段で接続されている。ここで、「溶接以外の手段」とは、直付け、フランジ接続、又は、その他の手段を意味している。隔離弁3,4の内径又は流路断面積は、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気を流す主蒸気配管5の原子炉格納容器2を貫通する貫通部6の内径又は流路断面積より小さく、拡大レデューサー7の周囲には、拡大レデューサー7の小径部7aaと大径部7abとの間で蒸気の流量を計測する蒸気流量計測機構8が配置されている。
【0033】
このような本実施形態に係る原子力発電プラント100は、比較例の原子力発電プラント1000のノズル1007(
図3参照)のような専用の流量制限器を設けることなく、蒸気の流量を計測しつつ、何らかの異常が生じた場合に流出する蒸気量を制限できる。このような本実施形態1に係る原子力発電プラント100は、隔離弁3,4を小型化できるため、隔離弁3,4を小型化した分だけ、コストを低減できる。また、隔離弁3,4の重量を軽量化できるため、比較例の原子力発電プラント1000のような耐震性を確保するためのサポート機構1008を設けなくてもよい。そのため、サポート機構1008を削除した分だけ、設置コストを低減できる。また、流量制限を行うためのノズル1007を無くすことができるため、ノズル1007を削除した分だけ、設置コストを低減できる。
【0034】
(2)
図1に示すように、本実施形態に係る原子力発電プラント100では、拡大レデューサー7の小径部7aaは、隔離弁3,4から隔離弁3,4の内径の3.5倍以上離れた位置に設置され、拡大レデューサー7の拡大角度は、15度から35度の範囲であるとよい。
【0035】
このような本実施形態に係る原子力発電プラント100は、圧力損失を規定で定められた範囲内に収めることができるため、良好な蒸気の流量測定を維持できる。
【0036】
(3)本実施形態に係る原子力発電プラント100では、隔離弁3,4の内径は、主蒸気配管5の貫通部6の内径よりも、少なくとも25%以上小さいとよい。
【0037】
このような本実施形態に係る原子力発電プラント100は、何らかの異常が生じた場合に隔離弁3,4を素早く全閉させることができる。これにより冷却材を喪失する事態(LOCA)を短時間で収束させ、その影響を緩和できる。また、本実施形態に係る原子力発電プラント100は、隔離弁3,4を小型化できるため、隔離弁3,4を小型化した分だけ、コストを低減できる。また、隔離弁3,4の重量を軽量化できるため、比較例の原子力発電プラント1000のような耐震性を確保するためのサポート機構1008を設けなくてもよい。そのため、サポート機構1008を削除した分だけ、設置コストを低減できる。
【0038】
(4)本実施形態に係る原子力発電プラント100では、隔離弁3,4の流路断面積は、主蒸気配管5の貫通部6の流路断面積よりも44%以上小さいとよい。
【0039】
このような本実施形態に係る原子力発電プラント100は、何らかの異常が生じた場合に隔離弁3,4を素早く全閉させることができる。これにより冷却材を喪失する事態(LOCA)を短時間で収束させ、その影響を緩和できる。また、本実施形態に係る原子力発電プラント100は、隔離弁3,4を小型化できるため、隔離弁3,4を小型化した分だけ、コストを低減できる。また、隔離弁3,4の重量を軽量化できるため、比較例の原子力発電プラント1000のような耐震性を確保するためのサポート機構1008を設けなくてもよい。そのため、サポート機構1008を削除した分だけ、設置コストを低減できる。
【0040】
[実施形態2]
以下、
図2を参照して、原子力発電プラント100Aの構成について説明する。
図2は、原子力発電プラント100Aの構成図である。
【0041】
図2に示すように、本実施形態2に係る原子力発電プラント100Aは、前記した実施形態1に係る原子力発電プラント100(
図1参照)と比較すると、流量制限機能付き蒸気流量計測機構101の代わりに、流量制限機能付き蒸気流量計測機構101Aを有する点で相違する。
【0042】
流量制限機能付き蒸気流量計測機構101Aは、主蒸気ラインL2を有している。主蒸気ラインL2は、原子炉格納容器2の内部で、直角に2回折れ曲がった形状を呈している。係る構成において、拡大レデューサー7の上流には、90度エルボなどの配管曲がり部11が設けられている。拡大レデューサー7の拡大部7aの小径部7aaは、配管曲がり部11から配管曲がり部11の内径の3.0倍以上離れた位置に設置されている。拡大レデューサー7の拡大角度は、15度から35度の範囲になっている。
【0043】
原子力発電プラント100Aは、主蒸気配管5の熱伸びを吸収するなどの理由により、隔離弁3,4の下流に配管曲がり部11を設置している。また、配管曲がり部11による流量計測干渉を回避するために、拡大レデューサー7の小径部7aaは、配管曲がり部11から配管曲がり部11の内径の3.0倍以上離れた距離B2の位置に設置されているとよい。
【0044】
なお、
図2では、主蒸気ラインL2が直角に2回折れ曲がった形状になっているが、実際の原子力発電プラントでは主蒸気ラインL2の構成及び形状が異なる可能性がある。また、実際の原子力発電プラントでは複数の主蒸気ラインが配置されている場合があるが、本発明は少なくともその内の1つの系統に適用する。
【0045】
本実施形態に係る原子力発電プラント100Aは、原子炉格納容器2の内部で主蒸気ラインL2が折れ曲がった形状になっているため、前記した実施形態1に係る原子力発電プラント100(
図1参照)よりも原子炉格納容器2のサイズ(幅)を小型化できる。
【0046】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。さらに、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 原子炉圧力容器(RPV)
2 原子炉格納容器(PCV)
3,4,1003,1004 隔離弁
5,5A,1005 主蒸気配管(配管)
6,1006 貫通部
7 拡大レデューサー
7a 拡大部
7aa 小径部
7ab 大径部
8 蒸気流量計測機構
9,10 圧力取出しタップ
11 配管曲がり部
21 炉心
22 炉水
100,100A,1000 原子力発電プラント
101,101A 流量制限機能付き蒸気流量計測機構
1007 ノズル(流量制限機構)
1008 サポート機構
A1,A2 内径
B1,B2 距離
L1,L2,L3 主蒸気ライン