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特開2023-176923射出成形システムの成形条件の生成方法、射出成形システム、および射出成形システムの成形条件生成支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176923
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】射出成形システムの成形条件の生成方法、射出成形システム、および射出成形システムの成形条件生成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20231206BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20231206BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/56
B29C45/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089510
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM19
4F206AM23
4F206AR00
4F206JA03
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP17
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】 射出圧縮成形時またはコアバック成形時の成形条件を従来よりも比較的容易に生成することができる射出成形システムの成形条件の生成方法、射出成形システム、および射出成形システムの成形条件生成支援プログラムを提供する。
【解決手段】固定金型15と可動金型17の間にキャビティCが形成される成形金型41と、前記成形金型41が取付けられる型締装置13と前記キャビティCに射出を行う射出装置14とを有する射出成形機11が備えられ、少なくとも前記射出成形機11に関する情報と前記成形金型41に関する情報と前記射出装置14に供給される樹脂材料に関する情報から、射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルが射出圧縮成形またはコアバック成形に関する成形条件を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機を備えた射出成形システムの成形条件の生成方法であって、
固定金型と可動金型の間にキャビティが形成される成形金型と、
前記成形金型が取付けられる型締装置と前記キャビティに射出を行う射出装置とを有する射出成形機が備えられ、
少なくとも前記射出成形機に関する情報と前記成形金型に関する情報と前記射出装置に供給される樹脂材料に関する情報から、
射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルが射出圧縮成形またはコアバック成形に関する成形条件を生成する、射出成形システムの成形条件の生成方法。
【請求項2】
前記学習モデルを用いて射出圧縮成形またはコアバック成形を行って成形品を成形し、
前記成形品に関する情報を得て前記射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルを修正する、請求項1に記載の射出成形システムの成形条件の生成方法。
【請求項3】
可動金型を射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機を備えた射出成形システムにおいて、
固定金型と可動金型の間にキャビティが形成される成形金型と、
前記成形金型が取付けられる型締装置と前記キャビティに射出を行う射出装置とを有する射出成形機と、
成形条件を記憶する記憶装置と、
少なくとも前記射出成形機に関する情報と前記成形金型に関する情報と前記射出装置に供給される樹脂材料に関する情報から射出圧縮成形またはコアバック成形に関する成形条件を生成する学習モデルを有する学習装置と、が備えられた射出成形システム。
【請求項4】
前記射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルを用いて射出圧縮成形またはコアバック成形を行って成形した成形品の状態を検出する検出装置と、
前記検出装置から送られる情報により前記射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルが修正される学習装置と、が備えられた請求項3に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルを用いて射出圧縮成形またはコアバック成形を行って成形した成形品の状態を作業者が入力する入力装置と、
前記入力装置から送られる情報により前記射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルが修正される学習装置と、が備えられた請求項3に記載の射出成形システム。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5の少なくとも1項の射出成形システムに搭載される射出成形システムの成形条件生成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機を備えた射出成形システムの成形条件の生成方法、射出成形システム、および射出成形システムの成形条件生成支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出圧縮成形の成形条件の設定に関するものとしては特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1は、型締圧を除去した時の金型位置が基準点に対して設定された任意の設定値からはずれた場合に射出圧縮成形の射出充填量の補正することが記載されている。また特許文献1においては前記基準点を製品形状などよりあらかじめ決めておくことが記載されている。また特許文献2は、試験射出の段階で溶融樹脂の射出速度と金型のキャビティ容積増加方向の速度との間で良品を成形できる良品成形条件を求めておき、上記良品成形条件に適合する条件で成形を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-174616号公報
【特許文献2】特開平4-246523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記特許文献1および特許文献2の射出圧縮成形の成形条件の設定に際しては樹脂材料の種類は全く考慮されていない。実際の射出圧縮成形では、樹脂材料の種類によって加熱シリンダの温度は相違するし、その結果、キャビティ内によける溶融樹脂材料の流動性などの挙動も相違してくる。そのため射出圧縮成形の成形条件は一概に定められない。また特許文献1には製品形状を成形条件に反映させることを示唆するような記載はあるが、実際の射出圧縮成形の成形条件の設定に際しては、製品形状の他の金型の情報も必要となる場合が殆どであるので、仮に製品形状を反映させて成形条件を設定したとしても射出圧縮成形の成形条件は一概に定められない。そのため射出圧縮成形の成形条件の設定に際しては依然として熟練した操作者により試行錯誤を繰り返しながら行われているのが実情である。またコアバック成形についても同様に依然として熟練した操作者により試行錯誤を繰り返しながら行われているのが実情である。
【0005】
そこで本発明では、射出圧縮成形時またはコアバック成形時の成形条件を従来よりも比較的容易に生成することができる射出成形システムの成形条件の生成方法、射出成形システム、および射出成形システムの成形条件生成支援プログラムを提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の射出成形システムの成形条件の生成方法は、射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機を備えた射出成形システムの成形条件の生成方法であって、射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機を備えた射出成形システムの成形条件の生成方法であって、固定金型と可動金型の間にキャビティが形成される成形金型と、前記成形金型が取付けられる型締装置と前記キャビティに射出を行う射出装置とを有する射出成形機が備えられ、少なくとも前記射出成形機に関する情報と、前記成形金型に関する情報と、前記射出装置に供給される樹脂材料に関する情報から、射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルが射出圧縮成形またはコアバック成形に関する成形条件を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の射出成形システムの成形条件の生成方法は、射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機を備えた射出成形システムの成形条件の生成方法であって、固定金型と可動金型の間にキャビティが形成される成形金型と、前記成形金型が取付けられる型締装置と前記キャビティに射出を行う射出装置とを有する射出成形機が備えられ、少なくとも前記射出成形機に関する情報と、前記成形金型に関する情報と、前記射出装置に供給される樹脂材料に関する情報から、射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルが射出圧縮成形またはコアバック成形に関する成形条件を生成するので、射出圧縮成形時またはコアバック成形時の成形条件を従来よりも比較的容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の射出成形システムの射出成形機の概略説明図である。
図2】本実施形態の射出成形機の型締装置と成形金型の要部拡大図であって型開状態を示す図である。
図3】本実施形態の射出成形機の型締装置と成形金型の要部拡大図であって射出圧縮成形開始時の状態を示す図である。
図4】本実施形態の射出成形機の型締装置と成形金型の要部拡大図であって射出圧縮成形終了時の状態を示す図である。
図5図2のA-A線の矢視図である。
図6】本実施形態の射出成形システムの機械学習装置のブロック図である。
図7】本実施形態の射出成形システムの射出成形機の入力装置に関し成形金型に関する情報を入力する画面の概略図である。
図8】本実施形態の射出成形システムの射出成形機の入力装置に関し成形不良に関する情報を入力する画面の概略図である。
図9】本実施形態の射出成形システムの機械学習装置の学習モデルのニューラルネットワークを示す図である。
図10】本実施形態の射出成形システムの機械学習装置の学習モデルを用いた成形条件の生成と学習モデルの修正に関するフローチャート図である。
【0009】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0010】
<射出成形機>
本実施形態の射出成形機11を備えた射出成形システム1について図1ないし図5を参照して説明する。最初に射出圧縮成形時またはコアバック成形時に固定金型に対して可動金型を移動させる射出成形機11について図1を参照して説明する。射出成形機11は、ベッド12上に型締装置13と射出装置14を備えている。型締装置13について先に説明すると、型締装置13は、固定金型15が取り付けられる固定盤16に対して可動金型17が取り付けられる可動盤18を移動させる2基の型開閉機構19と固定金型15と可動金型17の型締を行う4基の型締機構20の型締シリンダ21を備えたものである(ただし図1では手前側の型開閉機構19と型締機構20のみを記載)。
【0011】
ベッド12上に固定される固定盤16の反金型取付面側の中央部には前記射出装置14のノズル22を挿入するためのすり鉢部23が設けられ、すり鉢部23の中央には固定金型15に前記ノズル22が接続されるため孔が設けられている。また固定盤16内部の四隅近傍には型締機構20の型締シリンダ21がそれぞれ設けられている。型締シリンダ21はピストン24の前進側のロッドがタイバ25を構成している。型締シリンダ21は、ピストン24の前進側に型締油室を備え、ピストン24の後退側に型開油室を備えた復動シリンダである。また型締シリンダ21はバルブ、センサ、ポンプ、タンク等を備えた油圧装置26に接続されている。なお本発明において型締シリンダ21は、サーボバルブや流量制御弁等のクローズドループ制御可能なバルブにより制御される。
【0012】
前記各タイバ25の外周の先端側近傍位置には、係合溝25aが型開閉方向の所定の長さにわたって複数形成されている。そして各タイバ25は、可動盤18の四隅近傍に設けられた挿通孔29にそれぞれ挿通されている。可動盤18における反金型取付面における挿通孔29の近傍には、係合機構であるハーフナット30が配設されている。ハーフナット30は、シリンダ等の駆動機構28により係合歯31がタイバ25の係合溝25aに向けて進退可能となっている。そしてハーフナット30は、係合歯31の前進時に可動盤18をタイバ25に対して係合可能となっている。また可動盤18は図示しないエジェクタ機構等を備える。
【0013】
ベッド2上には、固定盤16に対して可動盤18を近接・離間移動させる型開閉機構19が2基配設されている。型開閉機構19はサーボモータ27とボールねじ機構32が用いられている。前記サーボモータ27の図示しないロータリエンコーダにより固定盤16に対する可動盤18の距離(固定金型15に対する可動金型17の距離)が測定される。なお固定盤16に対する可動盤18の距離は、前記ロータリエンコーダ以外のリニアスケールなどの位置検出機構により測定されるものでもよい。
【0014】
型締装置13は、型締シリンダ21とは別にタイバ25を一定距離移動させるタイバ移動機構33をタイバ25の本数に対応して4基備えている(ただし図1では2基のみ記載されている)。タイバ移動機構33は、1本のタイバ25につき2基の油圧シリンダ34を備え、油圧シリンダ34のロッドと、型締シリンダ21のピストン24から反金型取付面側に向けて突出したロッド35は連結板36により連結されている。油圧シリンダ34は油圧装置26に設けられたクローズドループ制御可能なバルブ37により制御される。また固定盤16にはタイバ25の移動位置を検出するための位置検出機構38が取付られている。なおタイバ移動機構33は、サーボモータにより作動されるものでよい。
【0015】
なお型締装置は、図1に示されるものに限定されず、トグル機構を用いたものなどでもよい。トグル機構を用いたものについては図示を省略するが、可動盤の背面に受圧盤が設けられ、可動盤と受圧盤を連結してトグル機構の各トグルリンクが設けられている。また受圧盤の背面側にはサーボモータなどの型締機構が設けられ、受圧盤に軸支されたボールねじを回転駆動可能となっている。また前記ボールねじは、ボールねじナットに挿通され、ボールねじナットはクロスヘッドに固定されている。そしてクロスヘッドにトグルリンクが回動可能に取付られている。このようなトグル機構においては、クロスヘッドの移動量に対して型閉完了近傍における可動盤の移動量は小さなものとなっており、サーボモータによる可動盤の移動制御が高精度に行える。
【0016】
次に型締装置13に取付られる成形金型41について図2ないし図5を参照して説明する。成形金型41は、射出圧縮成形に使用されるものであって、固定金型15と可動金型17の間にキャビティCが形成されるものである。固定金型15はキャビ型であって凹部からなるキャビティ面42と後述する可動金型17との摺動面43を備えている。また前記摺動面43の外側周囲には可動金型17と対向するパーティング面44となっている。また固定金型15は、射出(射出充填)の際に溶融樹脂が流通する流路45が形成され、前記キャビティ面42の部分にゲート46が形成されている。前記流路45はホットランナでもよくコールドランナでもよい。また前記固定金型15は、その内部に温調媒体が流通する温調用流路47が備えられている。
【0017】
可動金型17はコア型であって凸部の先端面がキャビティ面48となっている。また凸部の側面は固定金型15の摺動面43と、型閉時にごく僅かな間隔を隔てて対向する摺動面49となっている。また摺動面49の外側周囲の固定金型15と対向する面はパーティング面50となっている。ただし成形完了時に固定金型15のパーティング面44と可動金型17のパーティング面50は当接するとは限らない。また可動金型17は、その内部に温調媒体が流通する温調用流路51と成形品Pを突き出すエジェクタ52が備えられている。図2のA-A線の矢視である図5は、可動金型17のキャビティ面48等を示したものである。前記キャビティ面48の面積に応じて射出時の射出圧が可動金型17や可動盤18に及ぼされる。
【0018】
前記成形金型41は、構造上インロー金型とも呼ばれる。図3は、成形金型41が射出圧縮成形開始時の状態を示している。また図4は成形金型41が射出圧縮成形終了時の状態を示している。図3図4からも判るように、前記成形金型41は固定金型15に対して可動金型17を型閉方向に移動させるとキャビティCの容積が減少されて内部の溶融樹脂が圧縮されるものである。また成形金型41が射出圧縮成形用金型とコアバック成形用金型を兼用することはまず無いが、成形金型がコアバック成形用金型の場合も基本的な構造は同じである。即ちコアバック成形金型の場合は、図4の状態で射出開始され、キャビティ内の溶融樹脂が発泡することによりキャビティの容積が拡大して図3の状態で成形が完了する。
【0019】
次に射出装置14について説明する。射出装置14は加熱シリンダ54の内部に図示しないスクリュ等を備えているとともに、加熱シリンダ54の前部にはノズル22が取付けられている。また射出装置14は後部側に駆動機構55を備えており、前記スクリュの回転と加熱シリンダ54の軸方向への前後進移動が行われる。更に射出装置14の加熱シリンダ54が取り付けれる図示しないブロックまたはプレートにはホッパ等を備えた材料供給機構53が備えられている。射出装置14は、図示しないノズルタッチ装置により全体が前後進移動可能であり、前進した場合にはノズル22の先端が固定金型15にタッチする。なお射出装置14の構造や数については特に限定されない。
【0020】
<制御装置と検査装置等の周辺装置>
次に本実施形態の制御装置61について図6のブロック図を中心に説明する。射出成形機11は制御装置61を備えている。制御装置61は射出成形機11の制御を行うものであり、図示しない演算部、記憶部、入力部、出力部などを備えている。制御装置61は射出成形機11の油圧装置26、型開閉機構19のサーボモータ27のサーボアンプ62、射出装置14の図示しない射出用サーボモータや計量用サーボモータのサーボアンプ63、入力装置64に接続されている。更に制御装置61は、射出成形機11の各センサ等にも接続されている。更に制御装置61は、温調装置65の制御装置や、検査装置66、成形品取出装置67、材料供給機構53に接続される図示しない材料供給装置の制御装置などの周辺機器やその制御装置とも接続されている。
【0021】
検査装置66は、CCDカメラ等のカメラ68を備えており、成形品Pの情報が読み取れるものである。ここでは成形品取出装置67のカメラ68が成形品Pを読み取る位置は、成形品取出装置67に保持された状態でもコンベア等の別の位置でもよい。また検査装置66は、成形品Pの重量を測定する重量計測器、成形品の表面の状態を測定する色彩計測器、成形品の強度を測定する張力計測器、荷重計測器などであってもよい。また保圧完了時のスクリュの位置を検出するための位置センサや、射出圧縮成形の冷却終了時の可動盤18または可動金型17の位置を検出するための位置センサなども補完的な検査装置66として用いられる。
【0022】
<機械学習装置>
また本実施形態の射出成形システム1では、成形条件生成支援プログラムを構成する機械学習装置70を搭載した制御装置71が射出成形機11の制御装置61とは別に設けられている。制御装置71は、工場の中央制御装置として複数の射出成形機11に接続されるものでもよく、工場外の同じ会社内の別の構造物や、射出成形機メーカーや管理会社に設けられたものでもよい。これらにおいて射出成形機11と制御装置71は、有線または無線のいずれにより接続されたものでもよい。なお、成形条件生成支援プログラムである機械学習装置70は、射出成形機11の制御装置61内に設けられたものでもよい。
【0023】
複数の射出成形機11を統括する制御装置71は、入力部72を備えている。前記入力部72は射出成形機11の制御装置61や検査装置66等に接続されている。そして射出成形機11や検査装置66の情報が入力されるようになっている。また制御装置71は機械学習装置70を備えている。機械学習装置70は、学習モデル部73を備えている。学習モデル部73には、推定部74と学習モデル生成・修正部75と学習モデル記憶部76が含まれる。推定部74はニューラルネットワークを用いて射出圧縮成形における成形条件の生成を行う。また学習モデル生成・修正部75は、生成された成形条件による成形品が最適でなく成形条件が補正された際に、バックプロパゲーション等により学習モデルの修正を行う。また学習モデル記憶部76は、生成または修正された成形条件が格納される。
【0024】
また機械学習装置70の学習モデル部73は、成形条件記憶部77、射出成形機情報記憶部78、成形金型情報記憶部79、樹脂材料情報記憶部80に接続されている。成形条件記憶部77には、機械出荷時または制御装置取付時から射出圧縮成形またはコアバック成形に用いる基本パターンの成形条件が保存されている。また成形金型41に応じて新しく生成した成形条件も記憶されている。射出成形機情報記憶部78は、制御装置71に接続される全ての射出成形機11について、成形条件を生成するために必要な情報が記憶されている。具体的には型締装置13の型締機構の情報(スペック情報)、射出装置14の射出用サーボモータを含む射出機構や計量用サーボモータを含む計量機構の駆動部の情報(スペック情報)、射出装置14のスクリュの情報(スペック情報)や加熱シリンダ54のヒータやシリンダ内径の情報(スペック情報)などである。また成形金型情報記憶部79は、前記射出成形機11に搭載される各成形金型41の情報が記憶されている。更に樹脂材料情報記憶部80には基本的な樹脂材料に関する情報や、過去に射出成形機11で使用された樹脂材料に関する情報が記憶されている。
【0025】
また機械学習装置70には成形条件確認・修正部81が設けられ、成形条件確認・修正部81は、前記学習モデル部73と成形条件記憶部77に接続されている。そして機械学習装置70の成形条件確認・修正部81では成形結果に基づいてオペレータが不良種別ボタン124を押すと成形条件が修正される。またはオペレータが直接、学習モデル部73の推定部74によって生成した成形条件の項目のうちの少なくとも一つを手入力等により修正してもよい。また機械学習装置70は出力部82に接続されている。出力部82は、射出成形機11の制御装置61に接続されている。
【0026】
<入力装置と入力画面>
次に射出成形機11の設定等を行う入力装置64とその入力画面91について図7図8を参照して説明する。射出成形機11の固定盤16の側面等に設けられる入力装置64は、オペレータが成形条件を設定入力したり、射出成形機11の作動状態を表示するものであり、タッチパネル等から構成される。入力装置64は、射出成形機11に関する成形条件の設定値を各ページを切替えて入力可能なものであり、射出成形機11の成形時の実測値や生産情報も表示可能となっている。なお射出成形システム1ではオペレータが手持ちして射出成形機11の周囲で使用するハンディタイプの入力装置を、射出成形機11に固設された入力装置64とは別に設けることも考えられ、それらも本発明の入力装置に含まれる。
【0027】
入力装置64には、上記したような各種の成形条件を設定入力する一般的な画面(図示せず)の他、図7に示されるように成形金型41に関する情報や射出装置14に供給される樹脂材料に関する情報を入力する入力画面91が設けられている。入力画面91について説明すると、成形品Pを含めた成形金型41の情報として、キャビティ投影面積(図5におけるキャビティ面48)の入力部92,成形終了時のキャビティ容積の入力部93、キャビティ最長流動長さ(ゲートから最も遠い端部までの流動長さ)の入力部94、成形品重量の入力部95、成形品体積の入力部96、成形品の種別を入力する入力部97、成形品の個数(取り数)を入力する入力部98、射出時キャビティ内合流(キャビティ内に射出された樹脂の流れが途中で合流するかを示すものであってウエルド対策に必要)の有無の入力部99がまとめて表示されている。
【0028】
更に入力画面91は、キャビティCと成形品Pに関連して、図7に示される成形品平均板厚Aの入力部100、成形品厚肉部板厚の入力部101、成形品形状を選択して入力する入力部102、射出圧縮成形時の圧縮ストロークBの入力部103を備えている。また射出された溶融樹脂がキャビティに送られるランナ部分に関しては、ランナRの長さの入力部104、ランナRの断面積(最狭部)の入力部105、ランナRの種別(ホットランナかコールドランナか)の入力部106、ゲートGの数の入力部107、ゲートGの位置(中央か端部か中央と端部の中間か)を選択して入力する入力部108、ゲートGの断面積を入力する入力部109を備えている。更にまた入力画面91は、金型重量を入力する入力部110、金型種別(射出圧縮成形用のインロー金型や、図11に示されるような射出圧縮成形用の平当金型といった種別や加熱冷却金型などを入力する入力部111、冷却想定時間を入力する入力部112を備えている。
【0029】
そして本実施形態では入力画面91は、射出装置に供給される樹脂材料に関する情報を入力するためのポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル(PMMA)などの樹脂種別を選択して入力する入力部113、樹脂材料のグレード(同じ樹脂材料でも更に細分化して入力する必要がある場合)を選択して入力する入力部114、ガラス繊維や炭素繊維などの複合材料を入力する入力部115、複合材料の比率(重量%)を入力する入力部116等を備えている。また樹脂材料のグレードの部分に樹脂メーカーの射出時または金型の推奨温度がある場合は入力できるようにしてもよい。
【0030】
入力画面91から入力される前記成形金型41に関する情報としては、キャビティ投影面積または成形品面積のいずれか、キャビティ容積または成形品重量か成形品体積のいずれか、成形品個数が2個以上の場合の成形品個数は必須の入力項目となっている。また樹脂の種別についても必須の入力項目となっている。
【0031】
なお図7では成形品Pを含めた成形金型41に関する情報の入力部と射出装置14に供給される樹脂材料に関する情報の入力部は例示であって図示以外に項目の増減があってもよい。更にこれらの入力部は全ての入力部の項目を入力しないで空欄のままでも成形条件の生成が可能なものである。また図7の入力画面91では、成形品を含めた成形金型に関する情報と射出装置に供給される樹脂材料に関する情報は同じ入力画面91から入力されるが、それぞれ別の入力画面としてもよい。また成形金型41に関する情報または樹脂材料に関する情報は、有線または無線の通信手段や、QRコード(登録商標)やバーコードなどにより読み込まれるものでもよい。その際の成形品を含めた成形金型41に関する情報や樹脂材料に関する情報の項目は、前記入力画面91から入力される情報と一致していてもよいし項目も増減することもできる。
【0032】
本実施形態では射出成形機11に関する情報は、射出成形機11から制御装置71の射出成形機情報記憶部78に送られて記憶されている。しかし成形金型41に応じて射出成形機11の使用する射出装置14やその他の機構が変更される場合は、入力画面91から射出成形機11に関する情報を入力するものでもよい。
【0033】
発泡成形の際に可動金型が後退するコアバック成形の際の入力画面は、図示は省略するが別の画面を設けてもよい。その場合、図7において圧縮ストロークBの入力部95となっている部分がコアバック量(発泡膨張ストローク)の入力部となる。また化学発泡か物理発泡かの種別を入力する入力部が設けられる。またそして化学発泡の場合は、複合材料の入力部107の部分が、発泡剤の種別と発泡剤の比率(重量%)の入力部となる。また物理発泡の場合は、発泡用のガス等を射出装置の加熱シリンダまたは金型のキャビティに供給する際のガス供給部の位置、ガス種別、ガス圧力などの入力部が設けられる。
【0034】
また入力装置には、射出圧縮成形により成形された成形品Pに関する情報を入力する成形品状態の入力画面121を備えている。図8は、成形品状態の入力画面121の一例であり、成形品Pが良品の場合はオペレータが良品ボタン122を押し次に確定ボタン123を押すことにより良品であることが入力可能となっている。また成形品Pに不良がある場合は、オペレータがそれぞれの成形品Pの不良の種別を示す不良種別ボタン124を押し次に確定ボタン123を押すことにより不良であることとその種別が入力可能となっている。成形品状態の入力画面121の不良種別ボタン124は、ショートショット(重量不足)、オーバーパック(重量オーバー)、重量バラツキ、バリ、ヒケ、変形(反りを含む)、焼け、フローマーク、ボイド、シルバーストリーク、クラック、ウエルド、その他表面不良、コンタミ、ゲート不良、エジェクタ痕、その他表面不良、などの入力ボタンが設けられている。
【0035】
従ってオペレータは、成形品Pが良品であると判断した場合は、良品ボタン122と確定ボタン123を順に押せば成形品Pが良品であるという情報を入力することができる。またオペレータは、成形品Pにショートショットがあると判断した場合は、不良種別ボタン124であるショートショットのボタンと確定ボタン123順に押せば成形品Pがショートショットであるという情報を入力することができる。また成形品Pに2種類以上の不良がある場合は、複数の不良種別ボタン124を押した後に確定ボタン123を押す。更に不良の程度については、ショートショット等の不良の種別ボタン(同じボタン)を複数回押すことにより、前記不良種別ボタン124の色が変色されていき、その後に確定ボタン123を押すことにより、不良の程度が入力されるようになっている。
【0036】
なお不良の程度は、別途に設けた数値ボタンなどから入力するようにしてもよい。更には不良発生頻度の高い不良種別であるショートショット(重量不足)、オーバーパック(重量オーバー)、重量バラツキ、バリ、ヒケ、変形(反りを含む)等は、ボタンの大きさを大きくしてもよく、逆に不良発生頻度の低い不良種別は、「その他」ボタンを押すことにより別画面の不良発生頻度の低い不良種別の入力画面に移動するようにしてもよい。また押した頻度の高い不良種別ボタン124から順に入力画面121に整列表示されるようにしてもよい。そして成形品Pを見たオペレータが前記成形品状態の入力画面121のいずれかの不良種別ボタン124と確定ボタン123を順に押すことにより、機械学習装置70の成形条件確認・修正部81に成形品Pの不良の種別の情報を送信することができるようになっている。
【0037】
<射出成形システムの成形条件生成支援プログラム>
本実施形態では射出成形機11とは離隔した外部の制御装置71に射出成形システムの成形条件の生成支援プログラムが格納されている。より具体的には、制御装置71は機械学習装置70を備えており、機械学習装置70の学習モデル部73に射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデル(生成支援プログラム)が保存されている。図9に示されるように本実施形態の学習モデルは、中間層133(隠れ層)を1層以上設けたニューラルネットワーク131を用いたものである。学習モデルのニューラルネットワーク131は、入力層132から、少なくとも射出成形機11の情報と、成形金型41に関する情報と、射出装置14に供給される樹脂材料に関する情報が入力されると、それぞれ重みwが付与された関数式等を用いて中間層133において必要に応じてバイアスbを付加し、出力層134に出力yとして成形条件を得るものである。なお図9では中間層133は模式的に記載されたものであり、実際はもっと複雑な関数式や重みw、バイアスbが用いられる。また図9では中間層133は一層だけ記載されているが、中間層133を2層以上設けたディープラーニングを行うものでもよい。更にニューラルネットワーク131は、その少なくとも一部に畳み込みニューラルネットワークを用いたものでもよい。
【0038】
最初の機械学習装置70の学習モデル部73への学習モデルの保存の仕方は、インターネット回線を通じてのダウンロードや移動媒体によるインストールしたものなどでもよい。本実施形態では最初の射出圧縮成形に関する学習モデルは、射出成形機メーカーによって作成されたものである。また成形条件記憶部77には、過去データの特定の射出成形機情報と、特定の成形金型に関する情報と、特定の樹脂材料に関する情報の組み合わせに紐づけされて良品が成形された成形条件が多数格納されている。更に射出成形機情報記憶部78には射出成形機11の情報が予め記憶されており、成形金型情報記憶部79にはる成形金型41の情報が予め記憶されており、樹脂材料情報記憶部80には樹脂材料に関する情報が予め記憶されている。なお前記射出成形機11の情報や成形金型41の情報は、射出成形機11の制御装置61に格納されており、中央演算装置の制御装置71において学習モデルを用いて成形条件の生成を行う際に通信により送られるものでもよい。
【0039】
<射出圧縮成形に関する学習モデルを用いた成形条件の生成または修正>
射出成形システム1の機械学習装置70の学習モデルを用いた成形条件の生成について図10のフローチャート図を用いて説明する。図10のフローチャート図は制御装置61,71の制御のみを示すものではなく、オペレータが行う作業も含むものである。前記射出成形機11の情報については当初から制御装置71の射出成形機情報記憶部78に格納されている。そして最初に制御装置61に接続される入力装置64または制御装置71に接続される図示しない入力装置から射出圧縮成形に使用する成形金型41の情報と樹脂材料に関する情報を入力する(s1)。
【0040】
次に成形条件記憶部77に最初から射出圧縮成形に関する成形条件が保存されているかどうかを判断し(s2)、成形条件が保存されている場合(s2=Y)は、学習モデル部73の推定部74において、記憶されている成形条件に前記射出成形機11の情報と、前記の成形金型41に関する情報と、射出装置に供給される樹脂材料に関する情報を機械学習装置70の学習モデル部73の学習モデル記憶部76に記憶されているニューラルネットワーク131の入力層132から入力し、重みw1ないしw12とバイアスb1,b2を付与した関数式をそれぞれ用いて中間層133を介して出力層134に出力値y1、y2を出力して成形条件を生成する(s3)。
【0041】
具体的には成形条件記憶部77に射出成形機11の情報、成形金型41の情報、樹脂材料に関する情報と紐付けされて射出成形機11により射出圧縮成形を行う際の成形条件が記憶されている。ここにおいて成形条件とは、射出成形機11を用いて射出圧縮成形を行って良好な成形品を得るための各種設定値のことである。そして前記したように射出成形機11の情報、成形金型41の情報、樹脂材料に関する情報が類似する過去の成形条件が保存されている場合は、前記過去の成形条件も入力層から入力する。過去の類似の成形条件については、先順位を付けた項目に従って類似の成形条件を複数抽出してもよく、機械学習装置がクラスタリング等や教師あり学習等の手法により類似の成形条件を抽出してもよい。また過去の類似の成形条件を用いない場合は、射出成形機情報記憶部78に記憶されている射出成形機11の情報、成形金型情報記憶部79に記憶されている成形金型41の情報または入力装置64から入力された成形金型41の情報、樹脂材料情報記憶部80に記憶されている樹脂材料に関する情報かまたは入力装置64の入力画面91から入力された樹脂材料に関する情報を用いて射出圧縮成形時の成形条件の生成を行う。
【0042】
この段階で機械学習装置70の学習モデル部73の推定部74で用いられる学習モデルがどういう関数式と重み付けにより入力層132から中間層133への演算と中間層133から出力層134への演算を行っているかは外部からは容易に判別不可能である。しかし以下に大まかな基準を示す。まず成形品重量または成形品体積(キャビティ容積)と成形品個数、ランナ(流路45がコールドランナの場合はランナの長さや断面積から大まかな射出量が定まる。そして射出成形機11の情報であるスクリュ径(または加熱シリンダ内径)から射出ストローク(計量完了位置(射出開始位置)から保圧完了位置、または射出開始位置から保圧切換位置)が決定される。次に成形品形状(キャビティ形状)、ランナ形状、ゲート形状、使用される樹脂材料から射出速度と射出圧力が決定される。使用される樹脂材料については、樹脂材料によって加熱シリンダ54の温度が相違し、その結果、溶融樹脂のレオロジー特性も異なり、焼けが発生する射出速度等も個なるので、射出速度や射出圧力に大きな影響を与える。また成形品形状(キャビティ形状)が薄肉である場合や樹脂材料の溶融時の流動性が悪い場合、そのことが射出圧縮成形を採用する原因となっているケースもあり、射出速度や射出圧力に影響を与える。
【0043】
そして樹脂材料や射出速度と射出圧力が決定されれば、それに対向して型締装置による射出時の可動金型の保持力や可動盤(可動金型)の位置、射出後に行われる圧縮成形の圧力(力)または圧縮速度(可動金型の移動速度)が定められる。成形品形状(キャビティ形状)が薄肉である場合や樹脂材料の溶融時の流動性が悪い場合は、圧縮開始時の固定盤16(または固定金型15)に対する可動盤18(または可動金型17)の位置を実際の成形品Pの板厚よりも厚く、所定の位置へ後退させておくなどの設定が行われる。即ち射出プレスと呼ばれる成形終了時のキャビティ容積に対して成形開始時のキャビティ容積のほうが大きい成形が行われる。上記のように射出圧縮成形の場合、型締装置13側の成形条件と射出装置14側の成形条件に因果関係があり、一方の設定値を変更すると他方の設定値も変更が必要となる場合が多い。そのためオペレータによる成形条件生成は、熟練が必要となり、熟練者でも時間がかかる。前記問題を解消するためには過去の成形条件の良否を記憶していて反映することが可能な機械学習装置70およびその学習モデルを用いることが有用である。射出圧縮成形の学習モデルは相互の因果関係が複雑であるので、一例として数理計画法など相互関係の調整を行う学習モデルが組み込まれることもある。
【0044】
また型締装置13側の成形条件と射出装置14側の成形条件は緊密な関係にあるので、オペレータが入力または選択した型締装置13側の成形条件に対して、学習モデルが射出装置14側の成形条件を設定したり修正するものでもよい。またはオペレータが入力または選択した射出装置14側の成形条件に対して学習モデルが型締装置13側の成形条件を設定したり修正するものでもよい。一例としてレンズ成形等の厚肉部を備えた光学成形品の場合は、焼け等の樹脂材料の劣化を防止するために射出速度または射出圧力は比較的低く設定される。それに対して型締装置13側ではキャビティC内の溶融樹脂を所定以上の速度で圧縮してキャビティC内に溶融樹脂を延展する。冷却想定時間については、成形金型の温度(温調媒体温度)との関係で設定される。成形金型の温度(温調媒体温度)は、樹脂材料の種類によって対応する温度がある程度決まるが、金型形状やキャビティ形状によっても影響を受ける。冷却温度については冷却想定温度の形で最初に入力しておくことも考えられるが、金型形状やキャビティ形状、樹脂材料の種類から冷却時間を成形条件の一部として生成(推定)するものでもよい。
【0045】
また本発明においては成形条件が全く保存されていない場合でも初期の成形条件を生成することができる。ただし初期の成形条件で射出圧縮成形等の成形を行って良品が成形されることは少ないと言える。即ち成形条件が保存されていない場合は、学習モデル部73の推定部74において射出成形機情報記憶部78に保存されている射出成形機情報と、入力された成形金型に関する情報と樹脂材料に関する情報のみを用いて学習モデルが成形条件を生成する(s4)。一例としてはキャビティ投影面積、キャビティ容積(成形品体積)または成形品重量等の少なくとも一つの成形金型に関する情報と樹脂材料に関する情報が入力画面91から入力されると学習モデルを用いて初期の成形条件が生成(推定)される。
【0046】
<射出圧縮成形に関する学習モデルの修正>
次に射出成形機11を作動させてり実際に射出圧縮成形を行って成形品Pに関する情報を得て射出圧縮成形またはコアバック成形に関するする学習モデルを修正する部分について説明する。図10のフローチャート図に沿って続きを説明すると、学習モデル部73の推定部74において、成形条件が保存されていて成形条件が生成された場合(s3)も、成形条件が保存されておらずに成形条件が生成された場合(s4)も、次に射出成形機11を手動または半自動(連続した自動成形以外)で作動させて成形品Pの成形が行われる(s5)。射出圧縮成形では、成形時に射出装置14からキャビティCに溶融樹脂を射出後に、固定金型15に対して可動金型17を移動させてキャビティC内で前記溶融樹脂を圧縮する成形が行われる。この際、前記設定された成形条件における射出量に対して、更に射出量の少ない成形条件が自動的に生成され、前記射出量の少ない成形条件でショートショットによる成形が行われる。そしてオペレータは実際に成形された成形品Pをエジェクタ52で突き出して可動金型17等から取出し自ら視認して確認し、ショートショットであった場合は入力画面において「ショートショット(重量不足)」の不良種別ボタン124を押し更に確定ボタン123を押すと、成形条件が変更され射出量が増加される。この際に射出量の増加は、一律に一定量増加されるのではなく、前回射出量や成形品重量等に対して所定の比率で増加量が定められる。
【0047】
そしてショートショットが解消されるとオペレータは、取出した成形品Pについて検査して良品か不良品かの判断を行う(s6)。最初から良品が成形できる可能性は低く、オペレータが取出した成形品Pについて検査して「ヒケ」、「焼け」、「フローマーク」、「シルバーストリーク」、その他の不良があると判断した場合(s6=N)は、入力装置64の入力画面91から対応する不良種別ボタン124を押し(s7)、更に確定ボタン123を押して成形条件の改善を行う。この際に不良の程度によって該当する不良種別ボタン124を複数回押すようにしてもよい。
【0048】
学習モデル記憶部76には、射出成形機に関する情報、成形金型に関する情報、樹脂材料に関する情報に応じて、いずれかの不良種別ボタン124が1回押された際にどの成形条件をどれだけ修正するかという情報が保存されている。そして具体的には「ヒケ」ボタンが押された際には、成形条件確認・修正部81において、型締装置13側の圧縮量を増加させるとともに射出装置14側の保圧時の保圧圧力を増加するなど、型締装置13側、射出装置14側のそれぞれについて成形条件の修正が行われる(s8)。また「焼け」ボタンが押された場合は射出装置14側の射出速度を低下させるなどの成形条件の修正を行う。成形条件の修正は、前記したように型締装置13側、射出装置14側の少なくとも一方の成形条件を修正するものでもよい。
【0049】
そして再度オペレータは手動または半自動で成形品Pの成形を行う。この際に学習モデルにより推定された成形条件を表示装置に一度表示させて、オペレータが確認し、良好な成形条件と判断したときに手動成形または半自動成形の成形スタートボタンを押して成形を行うことが望ましい。またオペレータが確認した結果、良好な成形条件ではないと判断した場合は、オペレータは手入力で成形条件を修正するようにしてもよい。ただし機械学習装置70の学習モデルが学習を重ね、常に良好な成形条件(微修正の範囲を含む)を生成できるようになれば、学習モデルが生成した成形条件は表示装置に表示せずにそのまま次の射出成形を開始するようにしてもよい。この作業は成形品Pが良品であるとオペレータにより確認されるまでは、(s7)、(s8)のステップを繰り返す。
【0050】
そして不良種別ボタン124を押したことにより成形条件が改善され、良品が取れるようになった場合(s6=Y)は、オペレータは良品ボタン122を押し(s9)、更に確定ボタン123を押す。このことにより機械学習装置70の成形条件確認・修正部81において成形条件が正しかったことが確認され、学習モデル生成・修正部において学習モデルの修正を行うことなく、学習モデル記憶部76にその際の成形条件が保存される。そして自動成形(連続成形)を開始するためのスタートボタンを押すと連続成形が開始される(s10)。
【0051】
また機械学習装置70においては、前記対策が良好な成形条件の修正であったとして学習モデル生成・修正部75において学習モデルの修正が行われる(s11)。なお(s10)の連続運転の開始と(s11)の学習モデルの修正は、どちらが先であっても同時であってもよい。本実施形態では学習モデルの修正は、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法または誤差逆伝搬法とも呼ばれる)により行われる。即ち図9に示されるニューラルネットワーク131の出力層134の側から中間層133、入力層132の側へ順に、出力側から入力側に向けてそれぞれの重みwやバイアスbの改善を行う。即ち学習モデルが推定した出力解を検証し、正解との誤差を減らすようにニューラルネットワークの重みwやバイアスbの調整をする。一例としては勾配降下法により、誤差関数を微分することによりニューラルネットワークの重みwの値を変更する。換言すれば誤差関数の傾きに対して重みwを増減させることにより誤差を減らしていくことができる。
【0052】
そして成形品Pが良品であった場合の成形条件を生成した学習モデルは、学習モデル部73の学習モデル生成・修正部75において該学習モデルのニューラルネットワーク131の関数式が正しかったものとして前記関数式の重みwの増加等を行う。そして修正された学習モデルのニューラルネットワーク131は、学習モデル記憶部76に保存される。このようにして当該成形金型に関する情報と樹脂材料に関する情報の際の成形条件の学習モデルを記憶するとともに、
近似した成形金型に関する情報と樹脂材料に関する情報である場合も良好な成形条件が推定される比率が高まるようにする。
【0053】
また同時に不良種別ボタン124を1回押すごとにどの成形条件がどれだけ補正されるかの修正幅(または修正比率)もまた、学習モデル部73の学習モデル生成・修正部75により修正され学習モデル記憶部76に保存される。この修正幅は当然ながら射出成形機に関する情報や成形金型に関する情報、樹脂材料に関する情報に応じて一律ではない。前記不良種別ボタン124を1回押すごとにどの成形条件の修正幅(または修正比率)が最適化されることによりオペレータは入力画面から数値入力をしないでも適切な成形条件の修正ができるようになる。一例として不良種別ボタン124を1回だけ押した場合は微修正、3回押した場合には標準的な修正、5回押した場合は大修正などの使い分けができ、1回あたりの修正の程度は、学習モデルの再学習により調整がなされる。なお修正幅が大きい場合等は、オペレータが修正後の成形条件の数値を確認してから次の成形を開始することなどは上記の通りである。なお前記成形条件の修正は全自動運転に入ってからでも行うことができる。
【0054】
<他の実施形態の学習モデルの修正方法>
なお射出圧縮成形に関する学習モデルの修正は強化学習により行ってもよい。強化学習を行う場合、不良に対して不良種別ボタン124を押して不良種別ボタン124に対応する成形条件の修正が行われ次回以降の成形で成形品Pが良品となった場合は良品ボタン122と確定ボタン123を押して、修正された成形条件(または修正した項目の数値修正幅や修正比率)に対してプラスの報酬を与え、修正前の成形条件(または修正された項目)に対してマイナスの報酬を与える。また成形品Pの不良に対して不良種別ボタン124を押しても次回以降に成形した成形品Pが良品とならなかった場合は不良種別ボタン124を押す回数を増加させるなどする。それでも成形した成形品Pが良品とならなかった場合は修正後の成形条件(または修正した項目の数値修正幅や修正比率)に対してマイナスの報酬を与える。そしてまた機械学習装置70の学習モデルのみでは良品が成形できない場合は、オペレータが直接設定入力して良品が成形できる成形条件に修正する。なお前記のオペレータが直接設定入力するケースであっても、最初から全ての成形条件をオペレータが入力する場合よりも設定入力する範囲は少なくなり、基本的な大きなミスの発生は減少するので成形条件の改善に貢献できる場合が多い。
【0055】
<コアバック成形>
次にコアバック成形(発泡成形)についての学習モデルを用いた成形条件の生成と修正について記載する。コアバック成形は、型締装置13を型締時に成形金型の固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティに射出装置から発泡材料または発泡ガスを含む樹脂材料を射出し、その後にキャビティ内での樹脂材料に含まれる発泡材料や発泡ガスの膨張により内部に気泡を有する成形品を成形する成形方法である。発泡成形においては成形品の膨張に対応して可動金型を適切に後退させることが重要となる。従って成形金型41のキャビティの容積が変更されつつ成形が行われるという点で、射出圧縮成形とコアバック成形には共通点がある。
【0056】
コアバック成形の際に可動金型の後退速度が早すぎると成形品の表面にヒケやスキン層の不良が発生する可能性や想定よりも成形品板厚が厚い成形品となってしまう可能性がある。また可動金型の後退速度が遅すぎると発泡膨張不足により想定よりも成形品の板厚が薄い成形品となってしまう可能性がある。そのためオペレータは発泡成形された成形品を見て、ヒケ等が発生している場合は、不良種別のヒケボタンや、コアバック成形専用の板厚オーバーのボタンを押して成形条件を補正する。具体的にはヒケボタンや、コアバック成形専用の板厚オーバーのボタンが押されると成形条件のうちの可動金型の後退速度が所定速度低下されるかまたは可動金型の後退停止位置が所定量前方(キャビティCが狭くなる方向)に変更されるなどの成形条件の修正が行われる。または別の入力画面から可動金型の後退速度や後退時のキャビティ内圧力、後退時間などの成形条件の数値を直接設定し直してもよい。また成形品の板厚が薄い場合は、コアバック成形専用の発泡膨張不足のボタンを押して成形条件の修正を行う。具体的にはコアバック成形専用の発泡膨張不足のボタンが押されると成形条件のうちの可動金型の後退速度が所定速度増速されるか、または可動金型の後退停止位置が所定量後方(キャビティCが広くなる方向)に変更されるなどの成形条件の修正が行われる。または別の画面から可動金型の後退速度や後退時のキャビティ内圧力、後退時間などの成形条件の数値を直接設定し直してもよい。
【0057】
この際に不良種別のヒケボタン、コアバック成形専用の板厚オーバーのボタン、発泡膨張不足のボタンを押して成形条件を修正し、良品が成形されるようになった場合、学習モデルをバックプロパゲーションにより出力層134の側から中間層133、入力層132の側へ順にそれぞれの重みwやバイアスbの改善を行う。または強化学習により良好となった成形条件または成形条件の修正幅に対してプラスの報酬を付与する。そのことにより次回に同様の射出成形機に関する情報、成形金型に関する情報、樹脂材料に関する情報のケースにおいて、成形条件生成部において最初から良品が成形できる成形条件が生成される確率が増加する。コアバック成形の成形条件の生成や修正についても、射出圧縮成形の学習モデルと同様に型締装置13側と射出装置14側の相互の因果関係が複雑であるので、オペレータによる調整に比較して過去の成形条件を記憶し修正が可能な学習モデルが組み込まれることが有用である。
<不良種別ボタンを使用しない場合>
【0058】
なお上記の射出圧縮成形またはコアバック成形における成形品に関する情報を得て前記射出圧縮成形またはコアバック成形に関する学習モデルを修正する方法は、手動成形または半自動成形時にオペレータが直接成形品を成形金型から取出し、成形品に不良がある場合は、射出成形機11の入力装置64の入力画面91から不良種別ボタン124を押して種別を入力していた。この方式は従来から成形を行っているオペレータにとっても使い勝手のよい方式であるし、別途の検査装置等の設備投資が不要である。また中央の制御装置71を用いないでも射出成形機11の制御装置61に機械学習装置70を搭載して成形条件の修正を行うことも可能である。
【0059】
しかしながら本発明において入力画面121の不良種別ボタン124からの成形条件の修正は必須のものではなく、入力画面121に不良種別ボタン124を設けず、検査装置も使用せず、不良品を見たオペレータが入力画面から個別の成形条件の少なくとも一つの要素を手入力により修正するだけのものでもよい。
【0060】
また射出圧縮成形およびコアバック成形における成形品に関する情報は、CCDカメラ、光電管、重量計、色彩計などの検出装置により検出するようにしてもよい。検出装置を使用する場合は、最初に成形品が良品である場合は、良品であることを機械学習装置に教師あり学習させる。また成形品に不良がある場合は、不良の形状と不良の種類を紐付けして機械学習装置に教師あり学習させる。
【0061】
そして前記検出装置が成形品を検査して特定の種類の不良があると判断した場合は、上記の不良種別ボタン124をオペレータが押す場合と同様に、バックプロパゲーションによる重み付けの変更、または強化学習による報酬の付与により学習モデルを修正する。そして最初に設定した射出成形機11の情報と、前記成形金型41に関する情報と、前記射出装置14に供給される樹脂材料に関する情報を用いて学習モデルが行う成形条件の生成の結果が変更されるようにする。なお成形条件の微修正はオペレータによる部分も残すようにすることが好ましい。従って検査装置を使用するケースは、全自動運転開始後の成形品の監視に用いてもよい。そして成形品の不良率が僅かに上昇した時点で、対策を射出成形機11の表示画面または中央の複数の射出成形機11を統括する制御装置71の表示画面にメッセージとして表示する。前記メッセージを見たオペレータは、対策が正しいと考える場合は射出成形機11の入力装置64または複数の射出成形機11を統括する入力装置から数値を微修正して成形条件を修正する。
【0062】
本発明については一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、実施形態の各記載を組み合わせしたものや当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。例えば上記の実施形態は、射出圧縮成形やコアバック成形以外の一般的な射出成形についても応用可能である。特に成形品の状態を判断したオペレータが入力装置の不良種別ボタンを選択して押すことにより、成形条件が修正され、修正された成形条件を用いて成形した成形品の不良が解消される方法は、どのような成形であっても応用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 射出成形システム
11 射出成形機
13 型締装置
14 射出装置
15 固定金型
17 可動金型
61,71 制御装置
64 入力装置
70 機械学習装置
73 学習モデル部
74 推定部
75 学習モデル生成・修正部
76 学習モデル記憶部
77 成形条件記憶部
81 成形条件確認・修正部
91,121 入力画面
131 ニューラルネットワーク
132 入力層
133 中間層
134 出力層
C キャビティ
P 成形品
b バイアス
w 重み
y 出力値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10