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特開2023-176929吸収性物品の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176929
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A61F13/15 310
A61F13/15 351A
A61F13/15 355A
A61F13/15 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089519
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200CA02
3B200EA21
3B200EA23
3B200EA27
(57)【要約】
【課題】吸収性物品の製造歩留まりを向上させる。
【解決手段】吸収性物品の製造装置であって、シート状の連続体を第1の速度で搬送する第1搬送部と、前記シート状の連続体に貼り合わせる部材を、第2の速度で搬送する第2搬送部と、前記シート状の連続体と当接しつつ、その外周面で第2搬送部から供給される前記部材を吸着搬送し、前記部材が貼り合わせ位置に到達していない状態では前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置に到達すると前記第1の速度と等速の表面速度で回転して前記部材と前記シート状の連続体とを当接させて接着し、貼り合わせ位置を過ぎると前記第2の速度と等速の表面速度に戻るサクションロールと、を、備える、吸収性物品の製造装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品の製造装置であって、
シート状の連続体を第1の速度で搬送する第1搬送部と、
前記シート状の連続体に貼り合わせる部材を、第2の速度で搬送する第2搬送部と、
前記シート状の連続体と当接しつつ、その外周面で第2搬送部から供給される前記部材を吸着搬送し、前記部材が貼り合わせ位置に到達していない状態では前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置に到達すると前記第1の速度と等速の表面速度で回転して前記部材と前記シート状の連続体とを当接させて接着し、貼り合わせ位置を過ぎると前記第2の速度と等速の表面速度に戻るサクションロールと、
を、備える、
吸収性物品の製造装置。
【請求項2】
前記第1の速度は、前記第2の速度よりも高速である、
請求項1に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項3】
前記サクションロールと同一方向に回転軸を有し、前記サクションロールと対向配置されたハンマーロールを更に備え、
前記サクションロールと前記ハンマーロールは、互いに逆方向に回転し、
前記ハンマーロールは、表面速度が第1の速度と等速であって、外周の一部に前記サクションロールの外周面と当接し得る所定面積の突起部を有し、
前記サクションロールは、外周面が前記ハンマーロールの前記突起部と当接している間、前記第1の速度で回転する、
請求項1または2に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項4】
前記第2搬送部での搬送開始時に連続している前記部材を、搬送中に切断加工するカッターロールを更に有する、
請求項1または2に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項5】
前記部材は、機械送り方向前方に凸部を有し、
前記サクションロールは、前記凸部が外周面に乗って吸着されるまでの間、前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、前記凸部を外周面に吸着し終わったタイミングで、前記第1の速度と等速の表面速度で回転する、
請求項1または2に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項6】
前記部材の前記凸部は、前記部材の幅方向中央部に形成されており、
前記第2搬送部の機械送り方向後方における前記部材の幅方向中央部は、凹部である、
請求項5に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項7】
吸収性物品の製造方法であって、
シート状の連続体を、第1搬送部で第1の速度で搬送する第1搬送工程と、
前記連続体に貼り合わせる部材を、第2搬送部で第2の速度で搬送する第2搬送工程と、
前記連続体と当接しつつ、その外周面で前記第2搬送部から供給される前記部材を吸着搬送し、貼り合わせ位置に到達していない状態では前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置に到達すると前記第1の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置を過ぎると前記第2の速度と等速の表面速度に戻るサクションロールで、前記部材と前記連続体とを当接させて接着をする貼付工程と、
を、含む、
吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ型の吸収性物品(おむつ)が知られている(特許文献1)。テープ型の吸収性物品である使い捨ておむつにおいて、着用者の背中側の領域である後身頃領域には止着テープが設けられ、着用者の腹部側の領域である前身頃領域には、止着テープを止め付けるフロントパッチが設けられている。装着者が後身頃領域から止着テープを取り出し、前身頃領域のフロントパッチに貼り付けることで、被装着者の身体におむつを装着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-046731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、おむつなどの吸収性物品の製造工程には、連続体に部材を貼り合わせる工程が含まれる。例えば、テープ型の使い捨ておむつの製造工程には、連続体にフロントパッチを貼り合わせる工程が含まれる。
【0005】
連続体に部材を貼り合わせる際に部材に皺がついてしまう不良が発生する場合がある。このような、不良は吸収性物品においては好ましくないため不良品となる。不良が発生すると、製造歩留まりが低下する。
【0006】
本発明は、吸収性物品の製造歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、部材を他の部材に接着する前に、搬送速度を変化させる。
【0008】
本発明は、具体的には、吸収性物品の製造装置であって、シート状の連続体を第1の速度で搬送する第1搬送部と、前記シート状の連続体に貼り合わせる部材を、第2の速度で搬送する第2搬送部と、前記シート状の連続体と当接しつつ、その外周面で第2搬送部から供給される前記部材を吸着搬送し、前記部材が貼り合わせ位置に到達していない状態では前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置に到達すると前記第1の速度と等速の表面速度で回転して前記部材と前記シート状の連続体とを当接させて接着し、貼り合わせ位置を経過すると前記第2の速度と等速の表面速度に戻るサクションロールと、を、備える、吸収性物品の製造装置である。
【0009】
前記第1の速度は、前記第2の速度よりも高速であってよい。
【0010】
前記サクションロールと同一方向に回転軸を有し、前記サクションロールと対向配置されたハンマーロールを更に備え、前記サクションロールと前記ハンマーロールは互いに逆方向に回転し、前記ハンマーロールは、表面速度が第1の速度と等速であって、外周の一部に前記サクションロールの外周面と当接し得る所定面積の突起部を有し、前記サクションロールは、外周面が前記ハンマーロールの前記突起部と当接している間、前記第1の速度で回転してよい。
【0011】
前記第2搬送部での搬送開始時に連続している前記部材を、搬送中に切断加工するカッターロールを更に有してよい。
【0012】
前記部材は、機械送り方向前方に凸部を有し、前記サクションロールは、前記凸部が外周面に乗って吸着されるまでの間、前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、前記凸部を外周面に吸着し終わったタイミングで、前記第1の速度と等速の表面速度で回転してよい。
【0013】
前記部材の前記凸部は、前記部材の幅方向中央部に形成されており、前記第2搬送部の機械送り方向後方における前記部材の幅方向中央部は、凹部であってよい。
【0014】
更に、本発明を製造方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、吸収性物品の製造方法であって、シート状の連続体を、第1搬送部で第1の速度で搬送する第1搬送工程と、前記連続体に貼り合わせる部材を、第2搬送部で第2の速度で搬送する第2搬送工程と、前記連続体と当接しつつ、その外周面で前記第2搬送部から供給される前記部材を吸着搬送し、貼り合わせ位置に到達していない状態では前記第2の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置に到達すると前記第1の速度と等速の表面速度で回転し、貼り合わせ位置を経過すると前記第2の速度と等速の表面速度に戻るサクションロールで、前記部材と前記連続体とを当接させて接着をする貼付工程と、を、含む、吸収性物品の製造方法であってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着前に搬送速度を変化させることにより部材の皺が伸びるため、吸収性物品の製造歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
図4図4は、フロントパッチの製造工程について示した図である。
図5図5は、フロントパッチの組み込み工程を、フロントパッチに着目して示した流れ図である。
図6図6は、フロントパッチの接着工程について示した図である。
図7図7は、フロントパッチの皺を伸ばす工程を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品の製造方法について説明をする。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、被装着者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、被装着者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが被装着者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、被装着者の肌に向かう側(装着状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直
交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつは、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、被装着者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ装着状態において被装着者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ装着状態において被装着者の左右に一致する方向を意味する。
【0019】
<おむつの主な構成>
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。本開示では、おむつを実際に装着する者を被装着者とし、当該被装着者におむつを装着させる者を装着者とする。本開示に係るおむつが成人用である場合、被装着者は被介護者であり、装着者は介護者である。おむつが乳幼児用である場合、被装着者は乳幼児であり、装着者は保護者等である。おむつ1は、装着状態において被装着者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、被装着者の腹部の腰回りに対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、被装着者の背部の腰回りに対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、被装着者の肌面側にフック部を有し、前身頃領域1Fに設けられて非肌面側にループ加工を施されたフロントパッチ2Fとメカニカルファスナで貼着可能な止着テープ2L,2Rが設けられている。
【0020】
フロントパッチ2Fは、熱可塑性樹脂からなる薄いフィルム部分と、強靭な樹脂繊維ネットからなるループ加工部分を有し、両者を強く接着することで構成されている。止着テープ2L,2Rが有するフック部は、おむつの外装の他の部位を形成する不織布とも係合可能である。しかしながら、剥離の際フック部に繊維が付着するため、係合と剥離を繰り返すと、その係合力は急速に弱まる。上述の通り、フロントパッチ2Fのループ加工部分は強靭であり、フック部との剥離の際に、繊維が剥がれてフック部に付着することがない。このため、装着者は、フロントパッチ2Fと止着テープ2L,2Rとの係合と剥離を、実用上十分な回数行うことができる。なお、成人用のようにサイズが大きいおむつの場合には、止着テープ2L,2Rは長手方向にそれぞれ複数設けられてよい。
【0021】
前身頃領域1Fが被装着者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが被装着者の背側に配置された状態で止着テープ2L,2Rがフロントパッチ2Fと係合すると、おむつ1は、被装着者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で被装着者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で被装着者の身体に固定されるので、被装着者はおむつ1を装着した状態で体位を自由に変えることができる。
【0022】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体6が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と被装着者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、被装着者の脚周り部(大腿部)に沿う部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、被装着者の腹囲に沿う部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で被装着者の肌に密着する。よって、非着用者から排出される排出液は、おむつ1から漏出することなく吸収体6に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。おむつ1の非肌面側には、幅方向中央部において長手方向に連続してセンターマークCMが付されており、装着者が被装着者の正中線とおむつ1のセンターマークCMの位置を合わせて、正しい位置で装着させることができる。
【0023】
本開示に係るフロントパッチ2Fは、前身頃領域端部側の幅方向中央部に、股下部側に湾曲した凹部2FBを有し、その逆側である股下部側の幅方向中央部には、凹部2FBと同様の曲率で股下部側に湾曲した凸部2FAを有している。フロントパッチを四角形状に
形成すると、被装着者が前傾姿勢を取った際に、腹部がフロントパッチの上縁に当たり、着用感が低下することがある。本実施形態におけるフロントパッチ2Fの前身頃領域端部側は股下部側に湾曲しているため、被装着者が前傾姿勢を取っても、被装着者の腹部にフロントパッチ2Fが食い込むことがない。
【0024】
また、股下部側では、フロントパッチ2Fは幅方向中央部においてのみ股下部側に湾曲した凸部2FAを有しており、被装着者の脚部付近にはフロントパッチ2Fは設けられていない。このため、被装着者が前傾姿勢を取った際、フロントパッチ2Fは被装着者の脚部に食い込むこともない。また、幅方向中央部の股下側に凸部2FAが設けられていることにより、フロントパッチ2F自体の面積は、フロントパッチを四角形状に形成した場合とほぼ同様となる。このため、本実施形態に係るフロントパッチ2Fは、止着テープ2L,2Rが係合するのに十分な面積を有しつつも、被装着者の装着感を向上させることができる。
【0025】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、図3は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、被装着者の大腿部が位置する部位(図3に示す脚周り部10L,10R)に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排出物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナーカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0026】
そして、おむつ1は、カバーシート4の肌面側において順に積層されるバックシート5、吸収体6、トップシート7を有する。バックシート5、トップシート7は、略長方形の外観を有するシート状の部材であり、吸収体6は略砂時計形状の外観を有するマット状の部材である。バックシート5、吸収体6、トップシート7は、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排出液の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、装着状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように被装着者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液体透過性を有する。そのため、おむつ1の装着状態において、被装着者が排出した排出液は、被装着者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。また、吸収体6は、股下領域1Bを含んで配置されている。なお、シート等の接合には、ホットメルト接着剤による接着、超音波融着などが含まれる。
【0027】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で被装着者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、被装着者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、被装着者の陰部は、被装着者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、被装着者が仰臥位を取っている場合でも、伏臥位を取っている場合でも、排出液はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。
【0028】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で設けられる。なお、図3に示されるように、レグギャザー3AL,3ARは、股下領域1Bの幅方向の両端部の各々において、おむつ1において被装着者の脚周に沿う部位である脚周り部10L,10Rを含んで配置されている。脚周り部10L,10Rは、股下領域1Bにおいて幅方向の両端部の各々に配置され、弾性部材4SL,4SRは、長手方向に延在するように伸張状態で脚周り部10L,10Rに接着されて、脚周り部10L,10Rを長手方向に伸縮させる。この弾性部材4SL,4SRの配置領域が、レグギャザー3AL,3ARとなる。
【0029】
また、おむつ1は、細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rは、おむつ1の幅方向の中心よりも幅方向の外側に配置されている。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、被装着者の大腿部が位置する部位(図3に示す脚周り部10L,10R)に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って、伸張状態で配置されている。おむつ1の装着状態において、サイドシート8L,8Rは、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、排出液の幅方向外側への漏洩を防ぐ防漏壁である立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0030】
レグギャザー3AL,3ARを付勢する弾性部材4SL,4SRの伸張率および単位長さあたりの収縮力は、立体ギャザー3BL,3BRを付勢する弾性部材8EL,8ERの伸張率および単位長さあたりの収縮力よりも小さい。レグギャザー3AL,3ARは、脚周り部10L,10Rを被装着者の脚周りに沿わせる。このため、レグギャザー3AL,3ARは、被装着者の脚周りを過度に締め付けずに装着感を向上させる。一方、立体ギャザー3BL,3BRは排出液の横漏れを防止するため、装着時に確実に立ち上がるように、弾性部材8EL,8ERにより強く付勢されている。
【0031】
なお、カバーシート4には、おむつ1と被装着者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ弾性部材4Cが弾性部材4SL,4SRよりもおむつ1の幅方向内側でおむつ1の長手方向に沿って設けられている。弾性部材4Cは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて設けられる。
【0032】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7との間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられる止着テープ2L,2Rが、被装着者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を被装着者に密着させ、おむつ1と被装着者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0033】
吸収体6は、一例としては、吸収コア6Cを、薄いコアラップシート6Wで包んだ構造を有している。本実施形態では、吸収コア6Cは、吸収マットを複数積層して構成されている。一例としては、吸収コア6Cは、肌面側の上層吸収マット6aと、非肌面側の下層吸収マット6bを有している。上層吸収マット6aは、装着状態で被装着者の肌面側に位置する吸収マットであり、平面視すると股下領域1Bに括れを有する砂時計型である。上層吸収マット6aは、長手方向端部付近では、吸収体6の幅方向端部付近にまで延在して
いる。これに対して、下層吸収マット6bは、装着状態で被装着者の非肌面側に位置する吸収マットであり、平面視すると矩形である。下層吸収マット6bは、吸収体6の中央部、被装着者の正中線に対応する部分にのみ延在しており、その全幅は上層吸収マット6aの括れ部分以下である。すなわち、下層吸収マット6bは、肌面側から平面視した場合に上層吸収マット6aにその全てが隠れるように上層吸収マット6aと積層されている。
【0034】
股下領域1Bは、被装着者の両足に挟まれる状態になるので、幅方向内側に向けて圧縮圧力がかかる。一方で、前身頃領域1Fや後身頃領域1Rにおいては、被装着者の体重がかかることで、吸収コア6Cの厚み方向への圧力がかかる。これらの圧力に対応するため、吸収コア6Cの股下領域1Bには括れが設けられている。更に、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bを積層して股下領域1Bの吸収コア6Cを高目付けとする。これにより、股下領域1Bにおいて吸収コア6Cの幅方向内側への幅方向内側への型崩れを防止する。また、前身頃領域1Fや後身頃領域1Rにおいては、吸収コア6Cの幅を広げることで体重がかかる面積を増やして厚み方向への型崩れを防止する。このため、吸収コア6Cを略砂時計型とすることが好適である。
【0035】
吸収コア6Cは、一例としては、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super
Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収コア6Cでは、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収コア6C全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収コア6Cの厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0036】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0037】
コアラップシート6Wは、薄い液透過性のシートであり、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより、上述の吸収コア6CのSAP粒子が他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア6Cの型崩れが抑制される。コアラップシート6Wは、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。なお、吸収体6はバックシート5とトップシート7に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート6Wは必須ではない。
【0038】
<おむつの製造方法>
以下に、本発明に係るおむつの製造方法の全体の流れを説明する。まず、カバーシート4の材料となる長尺のカバーシート材の上面に、バックシート5の材料となる長尺のバックシート材を積層して接着し、その上に吸収体6を接着する。次に、トップシート7の材料となる長尺のトップシート材を接着し、更にサイドシート8L,8Rの材料となる長尺のサイドシート材を接着して、積層体を形成する。積層体を形成する各素材には、レグギャザー3AL,3ARや、立体ギャザー3BL,3BR、ウェストギャザー3Rなどを構成する弾性部材が接着されていてよい。積層体が形成されたら、おむつの脚周り部を円弧状に切り抜いて切除し、脚周り開口部を形成し、更に機械送り方向と垂直に個々に切断することで、おむつ1が製造できる。
【0039】
更に、上述の製造過程において、積層体の後身頃領域には、別ラインで形成された止着テープ2L,2Rが接着される。止着テープ2Lは、サイドシート8Lの肌面側に接着されてよく、止着テープ2Rは、サイドシート8Rの肌面側に接着されてよい。また、止着テープ2Lは、具体的には、カバーシート4とサイドシート8Lとの間に、止着テープ2Rは、具体的には、カバーシート4とサイドシート8Rとの間に積層されていてもよい。各止着テープをサイドシート8L,8Rとカバーシート4との間に設けることで、止着テープは積層体から剥がれにくくなる。
【0040】
また、おむつの前身頃領域には、フロントパッチ2Fが接着される。具体的には、フロントパッチ2Fは、おむつの前身頃領域におけるカバーシート4の非肌面側に接着される。なお、フロントパッチ2Fは積層体が形成された後にカバーシート4に接着されてもよいし、積層工程を経る前のカバーシートの材料に先行して接着されてもよい。積層体は幅方向中央部に厚みのある吸収体6を有し、また複数の弾性部材が自然長よりも伸長状態で組み込まれている。このため、積層体は、製品化された状態では弾性部材が収縮することで幅方向に形成される複数の凹凸を有しており、フロントパッチ2Fを適切に接着するのは困難である。よって、フロントパッチ2Fを、積層工程を経る前にカバーシート4の材料に接着するのが好適である。
【0041】
<フロントパッチの製造>
図4は、フロントパッチの製造装置および製造工程について示した図である。また、図5は、フロントパッチの組み込み工程を、フロントパッチに着目して示した流れ図である。製造ラインの上流には、フロントパッチ2Fの材料となる長尺のフロントパッチ材20が巻止められたフロントパッチロール21が位置している。フロントパッチロール21から引き出されたフロントパッチ材20は、搬送開始時には連続体の状態で、矢印Aの方向に沿って、製造ラインの下流へと搬送される。当該製造ラインは、本開示における第2搬送部に相当する。フロントパッチ材20は、フロントパッチロール21の状態で、フロントパッチ2Fの本体部分となる一定の坪量を有するフィルム部分と、止着テープ2L,2Rを係止可能なループ加工部分となる樹脂繊維ネットを接着した積層構造を有している。または、フィルム部分と樹脂繊維ネットが別個の素材として製造工程に組み込まれ、製造工程内で接着されて積層構造を有する連続したシートとする構成も考えられる。図4に示す工程において、製造ラインを移動するフロントパッチ材20の表側は、完成状態でカバーシート4と接着されることになるフィルム部分であり、その裏側であって製造ラインのコンベアと当接している側には、着用状態でおむつ1の非肌面側表面の一部を形成する樹脂繊維ネットが存在する。
【0042】
フロントパッチロール21から繰り出されたフロントパッチ材20は、プリンタ22を通過する。プリンタ22は、フロントパッチ材20に対して、センターマークCMや、止着テープ2L,2Rの貼付目標などを印刷する。プリンタ22の一例としては、産業用サーマルプリンタや産業用インクジェットプリンタなどが挙げられる。製造工程上の位置合わせなどにマークセンサが用いられる場合、プリンタ22はカラーマークの印刷をも行う。
【0043】
次に、フロントパッチ材20は、カッターロール23とアンビルロール24の間を通過する。カッターロール23は回転軸を有しており、矢印Bの方向に回転する。カッターロール23は、切断刃231を有している。本開示に係るフロントパッチ2Fは、平面視した場合に、前身頃領域端部側の幅方向中央部に、股下部側に湾曲した凹部2FBを有し、その逆側である股下部側の幅方向中央部には、凹部2FBと同様の曲率で股下部側に湾曲した凸部2FAを有している。このため、切断刃231は、フロントパッチ2Fの幅方向中央部に設けられる凹凸の形状を形成できるように湾曲している。カッターロール23は
、切断刃231により、フロントパッチ材20を、機械送り方向(MD方向)と直交する方向(CD方向)に切断加工し、個々のフロントパッチ2Fを形成する。アンビルロール24は、カッターロール23との間にフロントパッチ材20を挟み込んでカッターロール23と同じ表面速度で回転し、フロントパッチ材20が切断刃231によって確実に切断加工できるようにする。
【0044】
カッターロール23を通過して切断されたフロントパッチ2Fは、機械送り方向前方の幅方向中央に凸部2FAを有し、これに対応する機械送り方向後方における幅方向中央には凹部2FBを有している。当該フロントパッチ2Fは、カバーシート4と接着され、その他の部材を積層されておむつ1となった際には、当該凹部2FB側が前身頃領域1Fの端部側に配置され、凸部2FA側が前身頃領域1Fの股下側に配置されることになる。ここまでの工程が、フロントパッチ形成工程(図5におけるステップS100)に相当する。
【0045】
フロントパッチロール21から引き出されたフロントパッチ材20および、カッターロール23により切断されて形成されたフロントパッチ2Fは、コンベア上を搬送されて20~40m/min程度の低速で移動する。移動速度が低速であるため、本実施形態に係るフロントパッチ2Fの製造工程では、フロントパッチ2Fに対して確実に加工を行うことができる。フロントパッチ2Fは、本開示におけるシート状の連続体に貼り合わせる部材に相当し、コンベア上のフロントパッチ2Fの移動速度は、本開示における第2の速度に相当する。また、コンベア上のフロントパッチ2Fを搬送する工程は、本開示における第2搬送工程に相当する。
【0046】
ところで、フロントパッチ2Fは、フロントパッチ材20がカッターロール23を通過して切断される工程において押圧されるため、製造工程中に表面に皺が形成されることがある。フロントパッチ2Fの皺を伸ばさずにカバーシート4に接着して他の部材と組み合わせておむつ1を形成した場合、フロントパッチ2Fとカバーシート4との間に非接着部分が形成されて設計上の接着強度を維持できず、止着テープ2L,2Rを係止した際に、フロントパッチ2Fがカバーシート4から剥離する可能性がある。また、皺により止着テープ2L,2Rを適切に係止できなくなることがあるため、このようなおむつ1は不良品となる。カバーシート4に接着する前に、フロントパッチ2Fに形成された皺を伸ばしておくことができれば、不良品発生を抑制できる。
【0047】
<フロントパッチの接着>
図6は、フロントパッチの接着工程について示した図である。カッターロール23を通過して成形された個々のフロントパッチ2Fは、製造ライン上を矢印Cの方向に移動する。製造ラインの末端には、サクションロール25が設けられている。カッターロール23を通過後、サクションロール25と接触する前に、フロントパッチ2Fのフィルム部分にはカバーシート材40と接着するための接着剤が塗布される(図5におけるステップS101)。
【0048】
サクションロール25は、既定状態では、フロントパッチ2Fの製造ラインの速度とその表面速度が等速になるように、矢印Eの方向に回転している。サクションロール25は、その内部にエアポンプを有し、外周面には吸気穴を有している。サクションロール25は、吸気穴から空気を吸引することで、周面に到達したフロントパッチ2Fの樹脂繊維ネット側の面を吸着する。このため、製造ラインから供給されたフロントパッチ2Fは、サクションロール25の外周面に吸着された状態で、矢印Dの方向に吸着搬送される。
【0049】
一方、製造ライン上には、後の工程で切断されてカバーシート4となる長尺の連続体の状態のカバーシート材40が、図示しない製造装置により120~150m/min程度
の高速で搬送されて、矢印Fの方向に移動している。カバーシート材40を移動させる製造装置は、本開示における第1搬送部に相当する。また、連続体の状態のカバーシート材40を高速で搬送する工程は、本開示における第1搬送工程に相当する。また、カバーシート材40の移動速度は、本開示における第1の速度に相当する。第1の速度は、第2の速度よりも100m/min以上高速である。カバーシート材40は、本開示におけるシート状の連続体の一例である。
【0050】
サクションロール25とカバーシート材40は接触するものの、既定状態では、サクションロール25の表面速度とカバーシート材40の移動速度とは同期していない。既定状態では、サクションロール25の表面速度はコンベアの速度と等速である。一方、サクションロール25のカバーシート材40を介した対面側には、サクションロール25と同一方向に回転軸を有し、サクションロール25と対向配置されて、サクションロール25と逆方向に回転するハンマーロール26が設けられている。ハンマーロール26は、その円周の一部のみに所定面積の突起部を有している。ハンマーロール26の突起部の表面速度は、カバーシート材40の移動速度と等速で、矢印Gの方向に回転している。
【0051】
サクションロール25は、その外周面がカバーシート材40を介してハンマーロール26の突起部と接触している間、ハンマーロール26の回転力が伝達されて一時的に加速し、ハンマーロール26の突起部と接触している間のみ、その表面速度がカバーシート材40の移動速度と等速となるように回転する。ハンマーロール26の突起部がカバーシート材40から離れると、サクションロール25にはハンマーロール26の回転力が伝達されなくなる。このためサクションロール25は減速し、既定の速度に戻る。
【0052】
フロントパッチ2Fは、サクションロール25の外周面とハンマーロール26の突起部とがカバーシート材40を介して接触し、サクションロール25が加速して表面速度がカバーシート材40の移動速度と一時的に等速になっている間に、接着剤を塗布されたフィルム部分がカバーシート材40と強く当接するように位置調整されている。このため、ハンマーロール26の突起部がサクションロール25の外周面と接触する毎に、カバーシート材40にフロントパッチ2Fが接着される。カバーシート材40に接着されたフロントパッチ2Fはサクションロール25から離脱し、カバーシート材40の適切な位置に接着した状態で次の工程に進み、他の部材を積層しておむつ1の構造の一部となる。本実施形態では、サクションロール25とハンマーロール26とを組み合わせることで、速度が異なるカバーシート材40とフロントパッチ2Fの製造ラインの速度を同期し、カバーシート材40の適切な貼り合わせ位置にフロントパッチ2Fを接着する。
【0053】
図7は、フロントパッチの皺を伸ばす工程を概念的に示す図である。上述の通り、本開示に係るフロントパッチ2Fは、前身頃領域端部側の幅方向中央部に、股下部側に湾曲した凹部2FBを有し、その逆側である股下部側の幅方向中央部には、凹部と同様の曲率で股下部側に湾曲した凸部2FAを有しており、股下部側を先頭としてコンベア上を移動する。
【0054】
図7(A)では、コンベア上を移動するフロントパッチ2Fの股下部側に歪曲した凸部2FAのみがサクションロール25の外周面に乗った状態を示す図である。サクションロール25は外周面上の物体を吸着する。図7(A)に示す状態では、フロントパッチ2Fの大半がコンベア上に残っており、フロントパッチ2Fの股下部側に歪曲した凸部2FAのみがサクションロール25の外周面と当接し、サクションロール25の外周面に吸着する(図5におけるステップS102)。また、ハンマーロール26の突起部はサクションロール25の外周面の側にはないため、ハンマーロール26の回転力はサクションロール25に伝わらず、サクションロール25はコンベアと同じ表面速度である既定速度で低速回転している。なお、フロントパッチ2Fの機械送り方向前側には、既にその全体がサク
ションロール25の外周面上に乗ってサクションロール25に吸着されたフロントパッチ2F1が存在している。
【0055】
図7(B)では、サクションロール25にハンマーロール26の回転力が伝達され始めた状態を示す図である。ハンマーロール26の突起部がカバーシート材40を介してサクションロール25に伝達されると、サクションロール25はカバーシート材40の移動速度まで急加速する。フロントパッチ2Fは、図7(A)の状態で、股下部側に湾曲した凸部2FAのみがサクションロール25に吸着されている状態であり、股下部側に湾曲した凸部2FAは、サクションロール25の回転に伴って急速に引き出される。この状態で、フロントパッチ2Fは幅方向中央部、すなわち股下部側に湾曲した凸部2FAからサクションロール25の表面上への強い張力を受ける。また、当該張力によってフロントパッチ2Fの股下側が引き出されると、フロントパッチ2Fの股下側もサクションロール25によって吸着され、前身頃領域端部側が、今度は股下側の幅方向全領域にかかる張力によって引き出される。この過程において、フロントパッチ2Fは、機械送り方向前側端部における幅方向中央部、すなわちおむつ股下部側に湾曲した凸部2FAおよびおむつ股下側の幅方向全領域から張力を受け、皺が十分に伸びた状態となる。なお、既に全体がサクションロール25上に吸着されているフロントパッチ2F1は、この過程でサクションロール25とハンマーロール26の突起部による圧力によりカバーシート材40と当接し、適切な貼り合わせ位置でカバーシート材40に接着される。
【0056】
図7(C)は、フロントパッチ2Fの大半がサクションロール25上に乗った状態を示す図である。ハンマーロール26の突起部は、その大半がサクションロール25から離れているが、未だにその一部がカバーシート材40を介してサクションロール25の外周面と当接しており、サクションロール25に回転力を伝達している。フロントパッチ2Fは、高速回転しているサクションロール25により急速に引き出される。このため、コンベア上には機械送り方向後ろ側の、おむつ長手方向端部側の幅方向中央部に設けられた凹部2FBの幅方向両端部であって、凹部2FBから見ると相対的に凸部になっている部分のみが残存している。
【0057】
この状態では、サクションロール25の表面に載ったフロントパッチ2Fのうちの大部分がカバーシート材40と等速で高速移動しており、機械送り方向後側端部における幅方向端部、すなわち、おむつ長手方向端部側の幅方向中央部に設けられた凹部2FBの幅方向両端部であって、凹部2FBから見ると相対的に凸部になっている部分のみがコンベアと等速で低速移動している。このため、コンベアに残されたフロントパッチ2Fの一部は、サクションロール25の回転力、また既にサクションロール25の外周面上に乗ってサクションロール25の外周面に吸着されたフロントパッチ2Fの他部分から強い引張力を受け、皺が十分に伸びた状態となる。ここまでの工程が、フロントパッチ皺伸ばし工程(図4におけるステップS103)に相当する。
【0058】
フロントパッチ2F1の適切な貼り合わせ位置を過ぎてハンマーロール26の突起部がサクションロール25の外周面から離れると、ハンマーロール26の回転力がサクションロール25に伝達されなくなるため、サクションロール25の外周面の移動速度はコンベアの移動速度にまで減速する(図4におけるステップS104)。この状態では、皺が伸びたフロントパッチ2Fが、サクションロール25の外周面上に完全に乗った状態になる(図7(A)におけるフロントパッチ2F1と同じ状態)。この状態のフロントパッチ2Fは、次にハンマーロール26の突起部がサクションロール25側に到達し、サクションロール25の外周面の速度がカバーシート材40の移動速度まで加速された際に(図4におけるステップS105)、同時に加速してカバーシート材40と等速で当接し、サクションロール25とハンマーロール26の突起部により与えられる圧力により、適切な貼り合わせ位置で、カバーシート材40に接着される(図4におけるステップS106)。フ
ロントパッチ2Fと、カバーシート材40とを等速で当接させて適切な貼り合わせ位置で接着する工程は、本開示における貼付工程に相当する。
【0059】
なお、サクションロール25の再加速が始まる前に、コンベア上を移動する別のフロントパッチ2F2の凸部2FAがサクションロール25の外周面に吸着されている。当該フロントパッチ2F2はサクションロール25の再加速に伴う張力により皺を伸ばされながらコンベア上から引き出される。図4におけるステップS106が終了し、適切な貼り合わせ位置を過ぎてハンマーロール26の突起部がサクションロール25の外周面から離れた際には、フロントパッチ2F2は、その全体がサクションロール25の外周面に吸着されている状態となる。フロントパッチ2F2は、次回ハンマーロール26の突起部がサクションロール25側に到達した際に、適切な貼り合わせ位置でカバーシート材40と接着されることになる。
【0060】
フロントパッチ2Fが接着されたカバーシート材40には、後の工程でバックシート5の材料となる長尺のバックシート材が積層され、予め裁断された吸収体6が接着される。次に、トップシート7の材料となる長尺のトップシート材が接着され、サイドシート8L,8Rの材料となる長尺のサイドシート材が接着されて止着テープ2L,2Rが付加されることで、積層体が形成される。積層体を形成する各素材には、積層体の形成中にレグギャザー3AL,3ARや、立体ギャザー3BL,3BR、ウェストギャザー3Rなどを構成する弾性部材が適時付加される。積層体が形成されたら、おむつの脚周り部を円弧状に切り抜いて切除することで脚周り開口部を形成し、更に機械送り方向と垂直に個々に切断することで、おむつ1が製造できる。なお、胴回り部の形成は積層体の形成中に行われてもよい。
【0061】
このように、本実施形態に係る吸収性物品の製造装置では、フロントパッチ2Fを輸送するコンベアの移動速度がカバーシート材40の移動速度よりも十分に遅いため、フロントパッチ2Fに対する印刷や切断などの加工を的確に行うことができる。また、フロントパッチ2Fの幅方向中央部が股下方向に凸な形状の凸部2FAを有しているため、コンベア上を移動するフロントパッチ2Fをカバーシート材40の移動速度にまで加速する際に、幅方向端部から強い張力を順次加えることができる。このため、本実施形態に係る吸収性物品の製造装置は、加工により形成されることがある皺が伸びた状態のフロントパッチ2Fを、カバーシート材40の適切な位置に接着できる。このため、本実施形態に係る吸収性物品の製造装置は、フロントパッチ2Fに高度な加工を施すことが可能であり、フロントパッチ2Fのカバーシート4への接着不良に起因する不良品の発生を抑制できる。
【0062】
カバーシート材40の移動速度である第1の速度は、コンベアの移動速度である第2の速度よりも高速であり、その速度差は100m/min以上である。速度差が100m/min以上あると、サクションロール25によって引き出される際にフロントパッチ2Fの加工により形成されることのある皺を確実に取ることができ、フロントパッチ2Fが進行方向に向けて張った状態で、カバーシート材40との接着をすることができ、好適である。
【0063】
なお、本開示に係るシート状の連続体はカバーシート材40に限られず、部材もフロントパッチ2Fに限られない。本開示に示す技術は、吸収性物品の製造工程上シート状の連続体として供給されて搬送される部材に、異なる速度で搬送されて加工される別の部材を積層する種々の工程に適用することができる。
【0064】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。
【0065】
例えば、ハンマーロール26を熱ロールとし、フロントパッチ2Fのカバーシート4側となるフィルム部材に予めホットメルト接着剤を配置しておくことで、フロントパッチ2Fがカバーシート材40と当接した際、同時に熱溶着させることもできる。
【0066】
また、サクションロール25の回転を電子計算機等で制御してもよい。ハンマーロール26の突起部がカバーシート材40と当接していない間、サクションロール25の外周面はコンベアと等速の既定速度である第2の速度で移動している。電子計算機は、ハンマーロール26の突起部とカバーシート材40が当接する際にサクションロール25の外周面の速度をハンマーロール26の突起部の速度であるカバーシート材40の移動速度である第1の速度にまで加速する。ハンマーロール26の突起部とサクションロール25がカバーシート材40を介して当接している間、サクションロール25の外周面の移動速度はハンマーロール26の外周面の移動速度であるカバーシート材40の移動速度と同期する。ハンマーロール26の突起部がカバーシート材40から離れた場合、電子計算機はサクションロール25の回転速度を減速し、コンベアと同じ表面速度である既定速度での低速回転に戻す。
【0067】
このようにサクションロール25の回転速度が自律的に変化するように構成することで、本来サクションロール25の外周面に回転力を伝えるべきタイミングでハンマーロール26の突起部が空転しても、サクションロール25の回転速度を適正化することができる。このため、フロントパッチ2Fを、精度よくカバーシート材40に貼付することができ、生産効率が更に向上する。
【0068】
以上で開示した実施形態やその応用例は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F,2F1,2F2・・フロントパッチ
2FA・・凸部
2FB・・凹部
2L,2R・・止着テープ
3AL,3AR・・レグギャザー
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
20・・フロントパッチ材
21・・フロントパッチロール
22・・プリンタ
23・・カッターロール
24・・アンビルロール
25・・サクションロール
26・・ハンマーロール
40・・カバーシート材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7