(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176932
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】貯湯式給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/00 20220101AFI20231206BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20231206BHJP
F24H 15/174 20220101ALI20231206BHJP
F24H 15/215 20220101ALI20231206BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20231206BHJP
F24H 15/223 20220101ALI20231206BHJP
F24H 15/315 20220101ALI20231206BHJP
F24H 15/325 20220101ALI20231206BHJP
【FI】
F24H1/00 A
F24H1/18 H
F24H15/174
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/223
F24H15/315
F24H15/325
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089524
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】入谷 あかね
(72)【発明者】
【氏名】三鬼 拓也
(72)【発明者】
【氏名】井浪 裕基
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】弓削 力也
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA12
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA63
3L122AA64
3L122AA65
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA13
3L122BB12
3L122EA02
3L122FA02
(57)【要約】
【課題】燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに給湯対象部への給湯を行う場合に、燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して低温又は高温の湯水が残留していても、適切に温調制御された湯水を給湯対象部に供給することを早期に実現する。
【解決手段】貯湯式給湯システム1の制御装置70は、燃焼式熱源機50熱交換器53内の湯水の温度が目標給湯温度よりも低いと判断される状況において、バイパス比をその可変範囲内の最大値に制御すると共に、混合部44から燃焼式熱源機50に供給される湯水の温度が目標給湯温度よりも所定温度だけ高い温度になるよう混合部44での混合比率を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置により加熱された湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから出湯する湯水であるタンク出湯湯水に給湯用水を混合させ得ると共に、該タンク出湯湯水と該給湯用水との混合比率を調整し得るように該貯湯タンクに接続された混合部と、給湯対象部に供給される湯水を加熱可能な燃焼式熱源機と、前記混合比率及び前記燃焼式熱源機の作動を制御する機能を有する制御装置とを備え、前記貯湯タンクから前記混合部と前記燃焼式熱源機とを順に経由させて前記給湯対象部に給湯し得るように構成され、前記燃焼式熱源機が、前記混合部から供給される湯水を加熱するための熱交換器と、前記混合部から供給される湯水を該熱交換器を経由させずに流すように前記熱交換器に並列に接続されたバイパス路とを備えると共に、前記熱交換器を流れる湯水の流量に対する前記バイパス路を流れる湯水の流量の比率であるバイパス比を調整し得るように構成された貯湯式給湯システムであって、
前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いと判断される状況において、前記バイパス比をその可変範囲内の最大値又は該最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度よりも所定の第1温度だけ高い温度になるように前記混合比率を調整する第1処理を実行する機能を有するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記第1温度は、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御した状態で、前記目標給湯温度よりも前記1温度だけ高い温度の湯水を前記燃焼式熱源機に供給したとき、前記熱交換器から流出した湯水と前記バイパス路を通った湯水とが該バイパス路の下流端で合流することにより得られる湯水の温度が前記目標給湯温度になるように、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記バイパス比の前記最大値又は前記最大値寄りの所定値と、前記目標給湯温度とに応じて決定された温度であることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1処理の実行中に、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記目標給湯温度との差の絶対値が所定値以下に収まったときには、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度になるように前記混合比率を調整する第2処理を実行するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項4】
請求項1記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いと判断される状況において、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値が所定の第1閾値温度以上の温度であり、且つ、前記貯湯タンク内の湯水の温度の観測値が所定の第2閾値温度以上の温度であるという条件が成立する場合に前記第1処理を実行し、該条件が成立しない場合には、前記バイパス比をその可変範囲の最小値又は該最小値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度以上の温度になるように前記混合比率を調整する第3処理を実行するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項5】
請求項1記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも高いと判断される状況において、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度よりも所定の第2温度だけ低い温度になるように前記混合比率を調整する第4処理を実行する機能をさらに有するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項6】
加熱装置により加熱された湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから出湯する湯水であるタンク出湯湯水に給湯用水を混合させ得ると共に、該タンク出湯湯水と該給湯用水との混合比率を調整し得るように該貯湯タンクに接続された混合部と、給湯対象部に供給される湯水を加熱可能な燃焼式熱源機と、前記混合比率及び前記燃焼式熱源機の作動を制御する機能を有する制御装置とを備え、前記貯湯タンクから前記混合部と前記燃焼式熱源機とを順に経由させて前記給湯対象部に給湯し得るように構成され、前記燃焼式熱源機が、前記混合部から供給される湯水を加熱するための熱交換器と、前記混合部から供給される湯水を該熱交換器を経由させずに流すように前記熱交換器に並列に接続されたバイパス路とを備えると共に、前記熱交換器を流れる湯水の流量に対する前記バイパス路を流れる湯水の流量の比率であるバイパス比を調整し得るように構成された貯湯式給湯システムであって、
前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも高いと判断される状況において、前記バイパス比をその可変範囲内の最大値又は該最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度より所定の第2温度だけ低い温度になるように前記混合比率を調整する第4処理を実行する機能を有するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記第2温度は、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御した状態で、前記目標給湯温度よりも前記2温度だけ低い温度の湯水を前記燃焼式熱源機に供給したとき、前記熱交換器から流出する湯水と前記バイパス路を通る湯水とが該バイパス路の下流端で合流することにより得られる湯水の温度が前記目標給湯温度になるように、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記バイパス比の前記最大値又は前記最大値寄りの所定値と、前記目標給湯温度とに応じて決定された温度であることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項8】
請求項5又は6記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御装置は、前記第4処理の実行中に、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記目標給湯温度との差の絶対値が所定値以下に収まったときには、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度になるように前記混合比率を調整する第2処理を実行するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱された湯水を貯える貯湯タンクを備える貯湯式給湯システムでは、従来、例えば特許文献1に見られるように、貯湯タンクから出湯する湯水に水(非加熱状態の給湯用水)を混合し得るように貯湯タンクに接続された混合部を備え、給湯対象部への給湯時に、混合部で温調制御した湯水を燃焼式熱源機を経由させて給湯するシステムが知られている。
【0003】
このシステムでは、燃焼式熱源機は、湯水を加熱するための熱交換器と並列にバイパス路とを備えており、熱交換器を通る湯水と、バイパス路を通る湯水とをバイパス路の下流端で合流させ、その合流後の湯水を給湯対象部に供給するように構成されている。また、バイパス路に備えたサーボ弁により、熱交換器を通る湯水の流量とバイパス路を通る湯水の流量との比率を調整することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に見られる貯湯式給湯システムにおいて、混合部から燃焼式熱源機に供給する湯水の温度を、該混合部で目標給湯温度に温調制御し得る状況では、燃焼式熱源機の燃焼運転を停止状態に維持したままで、混合部で温調制御された湯水を燃焼式熱源機を経由させて給湯対象部に供給することが考えられる。
【0006】
ここで、例えば、前回の給湯の終了時から比較的長い時間が経過した後に、給湯が開始された場合等では、今回の給湯開始時に、燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して冷たい湯水が残留していることがある。また、例えば、目標給湯温度が低めの温度に変更された後に、給湯が開始された場合等では、今回の給湯開始時に、燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して熱い湯水(目標給湯温度の変更前の給湯時に熱交換器に流入した湯水)が残留している場合もある。
【0007】
そして、燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに給湯対象部への給湯を行う場合に、その給湯の開始時に、上記のように燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して冷たい湯水又は熱い湯水が残留している状況では、混合部で温調制御された湯水が燃焼式熱源機のバイパス路の下流端まで到達しても、熱交換器内に混合部から供給された湯水が満たされるまでは、混合部から燃焼式熱源機のバイパス路の下流端まで到達した湯水には、熱交換器から流出する冷たい湯水又は熱い湯水が混合され、その混合によって目標給湯温度よりも低い温度又は高い温度になった湯水が燃焼式熱源機から給湯対象部に供給される。このため、給湯対象部に供給される湯水が、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度の湯水になるまでに時間がかかりやすいという不都合がある。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに給湯対象部への給湯を行う場合に、燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して低温又は高温の湯水が残留していても、目標給湯温度近辺の温度の湯水を給湯対象部に供給することを早期に実現することができる貯湯式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の貯湯式給湯システムの第1の態様は、上記の目的を達成するために、加熱装置により加熱された湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから出湯する湯水であるタンク出湯湯水に給湯用水を混合させ得ると共に、該タンク出湯湯水と該給湯用水との混合比率を調整し得るように該貯湯タンクに接続された混合部と、給湯対象部に供給される湯水を加熱可能な燃焼式熱源機と、前記混合比率及び前記燃焼式熱源機の作動を制御する機能を有する制御装置とを備え、前記貯湯タンクから前記混合部と前記燃焼式熱源機とを順に経由させて前記給湯対象部に給湯し得るように構成され、前記燃焼式熱源機が、前記混合部から供給される湯水を加熱するための熱交換器と、前記混合部から供給される湯水を該熱交換器を経由させずに流すように前記熱交換器に並列に接続されたバイパス路とを備えると共に、前記熱交換器を流れる湯水の流量に対する前記バイパス路を流れる湯水の流量の比率であるバイパス比を調整し得るように構成された貯湯式給湯システムであって、
前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いと判断される状況において、前記バイパス比をその可変範囲内の最大値又は該最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度よりも所定の第1温度だけ高い温度になるように前記混合比率を調整する第1処理を実行する機能を有するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
【0010】
かかる第1発明によれば、制御装置は、熱交換器内の湯水の温度が給湯対象部に対する目標給湯温度よりも低いと判断される状況において、前記第1処理を実行することで、混合部から燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が目標給湯温度よりも所定の第1温度だけ高い温度になるように温調制御される。そして、このように温調制御された湯水が燃焼式熱源機のバイパス路を通って該バイパス路の下流端まで達すると、該湯水に、燃焼式熱源機の熱交換器から流出した湯水であって、目標給湯温度よりも低い温度の湯水が合流する。
【0011】
このため、当該合流により得られた湯水の温度は、目標給湯温度よりも所定の第1温度だけ高い温度から低下して、目標給湯温度に近づくこととなる。従って、燃焼式熱源機の熱交換器内に混合部から供給される温調制御された湯水が満たされる前に、該燃焼式熱源機の熱交換器から目標給湯温度よりも低い温度の湯水が流出する状況であっても、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度の湯水を給湯対象部に供給することが可能となる。
【0012】
また、前記第1処理では、熱交換器を流れる湯水の流量に対するバイパス路を流れる湯水の流量の比率であるバイパス比が最大値又は該最大値寄りの所定値に制御されるので、給湯対象部に供給される湯水の流量のうち、バイパス路を通る湯水の流量を極力多くすることができる。このため、混合部で温調制御された湯水を、極力早期にバイパス路の下流端まで到達させることができると共に、第1温度を小さめに抑えることができる。
【0013】
よって、第1発明によれば、燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに給湯対象部への給湯を行う場合に、燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して低温の湯水が残留していても、目標給湯温度近辺の温度の湯水を給湯対象部に供給することを早期に実現することが可能となる。
【0014】
上記第1発明では、前記第1温度は、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御した状態で、前記目標給湯温度よりも前記1温度だけ高い温度の湯水を前記燃焼式熱源機に供給したとき、前記熱交換器から流出した湯水と前記バイパス路を通った湯水とが該バイパス路の下流端で合流することにより得られる湯水の温度が前記目標給湯温度になるように、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記バイパス比の前記最大値又は前記最大値寄りの所定値と、前記目標給湯温度とに応じて決定された温度であることが好ましい(第2発明)。
【0015】
なお、本発明において、熱交換器内の湯水の温度等の観測値は、該温度を温度センサを用いて検出してなる値(検出値)、あるいは、該温度と一定の相関関係を有する一つ以上の状態量の検出値から該相関関係に基づいて推定してなる値(推定値)を意味する。
【0016】
上記第2発明によれば、燃焼式熱源機の熱交換器から目標給湯温度よりも低い温度の湯水が流出する状況で、バイパス路の下流端での湯水の合流により得られる湯水の温度を、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度に温調制御することを適切に実現することが可能となる。ひいては、給湯対象部に供給される湯水の温調性能を高めることが可能となる。
【0017】
上記第1発明又は第2発明では、前記制御装置は、前記第1処理の実行中に、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記目標給湯温度との差の絶対値が所定値以下に収まったときには、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度になるように前記混合比率を調整する第2処理を実行するように構成されていることが好ましい(第3発明)。
【0018】
これによれば、燃焼式熱源機の熱交換器から目標給湯温度よりも低い温度の湯水が流出する状況での給湯時(詳しくは、混合部で温調制御された湯水が燃焼式熱源機のバイパス路の下流端の達した時)から、当該低い温度の湯水の流出が終了した後の給湯時にかけて、給湯対象部に供給する湯水の温度が安定に、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度に維持されるように該湯水の温調制御を行うことが可能となる。
【0019】
上記第1~第3発明のいずれかの発明では、前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いと判断される状況において、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値が所定の第1閾値温度以上の温度であり、且つ、前記貯湯タンク内の湯水の温度の観測値が所定の第2閾値温度以上の温度であるという条件が成立する場合に前記第1処理を実行し、該条件が成立しない場合には、前記バイパス比をその可変範囲の最小値又は該最小値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度以上の温度になるように前記混合比率を調整する第3処理を実行するように構成されているという態様を採用し得る(第4発明)。
【0020】
ここで、上記条件が成立する状況では、熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも低いと判断される状況において前記第1処理を実行することで、バイパス路の下流端での湯水の混合によって得られる湯水の温度を目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度にすることが可能である。
【0021】
一方、上記条件が成立しない状況は、バイパス路の下流端での湯水の混合によって得られる湯水の温度を目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致させ得るように第1処理を行うためには、熱交換器内の湯水の温度が低すぎるか、又は、貯湯タンク内の湯水の温度が不足する状況である。
【0022】
そこで、制御装置は、上記条件が成立しない場合には、前記第3処理を実行する。この第3処理では、前記バイパス比が最小値又は該最小値寄りの所定値に制御されるので、給湯対象部に供給される湯水の流量のうち、熱交換器を通る湯水の流量を極力多くすることができる。このため、熱交換器内から低い温度の湯水全部を流出させることを短時間で遂行することができる。
【0023】
従って、熱交換器から低い温度の湯水が流出する状況で、バイパス路の下流端での湯水の合流によって得られる湯水の温度が目標給湯温度よりも低い温度になっても、その状況を短時間で終わらせることができる。そして、その後は、熱交換器内の湯水の温度を速やかに目標給湯温度と同程度の温度に昇温させることができ、給湯対象部に供給される湯水の温度を適切に温調制御することができる。
【0024】
上記第1~第4発明のいずれかの発明では、前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも高いと判断される状況において、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度よりも所定の第2温度だけ低い温度になるように前記混合比率を調整する第4処理を実行する機能をさらに有するように構成され得る(第5発明)。
【0025】
これによれば、制御装置は、熱交換器内の湯水の温度が給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高いと判断される状況において、前記第4処理を実行することで、混合部から燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が目標給湯温度よりも所定の第2温度だけ低い温度になるように温調制御される。そして、このように温調制御された湯水が燃焼式熱源機のバイパス路を通って該バイパス路の下流端まで達すると、該湯水に、燃焼式熱源機の熱交換器から流出した湯水であって、目標給湯温度よりも高い温度の湯水が合流する。
【0026】
このため、当該合流により得られた湯水の温度は、目標給湯温度よりも所定の第2温度だけ低い温度から上昇して、目標給湯温度に近づくこととなる。従って、燃焼式熱源機の熱交換器内に混合部から供給される温調制御された湯水が満たされる前に、該燃焼式熱源機の熱交換器から目標給湯温度よりも高い温度の湯水が流出する状況であっても、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度の湯水を給湯対象部に供給することが可能となる。
【0027】
また、前記第4処理では、熱交換器を流れる湯水の流量に対するバイパス路を流れる湯水の流量の比率であるバイパス比が最大値又は該最大値寄りの所定値に制御されるので、前記第1処理と同様に、給湯対象部に供給される湯水の流量のうち、バイパス路を通る湯水の流量を極力多くすることができる。このため、混合部で温調制御された湯水を、極力早期にバイパス路の下流端まで到達させることができると共に、第2温度を小さめに抑えることができる。
【0028】
よって、第5発明によれば、燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに給湯対象部への給湯を行う場合に、燃焼式熱源機の熱交換器内に目標給湯温度に比して高温の湯水が残留していても、目標給湯温度近辺の温度の湯水を給湯対象部に供給することを早期に実現することが可能となる。
【0029】
また、本発明の貯湯式給湯システムの第2の態様は、加熱装置により加熱された湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから出湯する湯水であるタンク出湯湯水に給湯用水を混合させ得ると共に、該タンク出湯湯水と該給湯用水との混合比率を調整し得るように該貯湯タンクに接続された混合部と、給湯対象部に供給される湯水を加熱可能な燃焼式熱源機と、前記混合比率及び前記燃焼式熱源機の作動を制御する機能を有する制御装置とを備え、前記貯湯タンクから前記混合部と前記燃焼式熱源機とを順に経由させて前記給湯対象部に給湯し得るように構成され、前記燃焼式熱源機が、前記混合部から供給される湯水を加熱するための熱交換器と、前記混合部から供給される湯水を該熱交換器を経由させずに流すように前記熱交換器に並列に接続されたバイパス路とを備えると共に、前記熱交換器を流れる湯水の流量に対する前記バイパス路を流れる湯水の流量の比率であるバイパス比を調整し得るように構成された貯湯式給湯システムであって、
前記制御装置は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記給湯対象部に対する目標給湯温度よりも高い状態で、前記燃焼式熱源機の燃焼運転を行わずに該給湯対象部への給湯を行うとき、前記熱交換器内の湯水の温度が前記目標給湯温度よりも高いと判断される状況において、前記バイパス比をその可変範囲内の最大値又は該最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度より所定の第2温度だけ低い温度になるように前記混合比率を調整する第4処理を実行する機能を有するように構成されていることを特徴とする(第6発明)。
これによれば、前記第5発明と同様の効果を奏することができる。
【0030】
上記第5発明又は6発明では、前記第2温度は、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御した状態で、前記目標給湯温度よりも前記2温度だけ低い温度の湯水を前記燃焼式熱源機に供給したとき、前記熱交換器から流出する湯水と前記バイパス路を通る湯水とが該バイパス路の下流端で合流することにより得られる湯水の温度が前記目標給湯温度になるように、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記バイパス比の前記最大値又は前記最大値寄りの所定値と、前記目標給湯温度とに応じて決定された温度であることが好ましい(第7発明)。
【0031】
これによれば、燃焼式熱源機の熱交換器から目標給湯温度よりも高い温度の湯水が流出する状況で、バイパス路の下流端での湯水の合流により得られる湯水の温度を、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度に温調制御することを適切に実現することが可能となる。ひいては、給湯対象部に供給される湯水の温調性能を高めることが可能となる。
【0032】
上記第5~第7発明のうちのいずれかの発明では、前記制御装置は、前記第4処理の実行中に、前記熱交換器内の湯水の温度の観測値と、前記目標給湯温度との差の絶対値が所定値以下に収まったときには、前記バイパス比を前記最大値又は前記最大値寄りの所定値に制御すると共に、前記混合部から前記燃焼式熱源機に供給される湯水の温度が前記目標給湯温度になるように前記混合比率を調整する第2処理を実行するように構成されていることが好ましい(第8発明)。
【0033】
これによれば、燃焼式熱源機の熱交換器から目標給湯温度よりも高い温度の湯水が流出する状況での給湯時(詳しくは、混合部で温調制御された湯水が燃焼式熱源機のバイパス路の下流端に達した時)から、当該高い温度の湯水の流出が終了した後の給湯時にかけて、給湯対象部に供給する湯水の温度が安定に、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致する温度に維持されるように該湯水の温調制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態の貯湯式給湯システムの全体構成を示す図。
【
図2】実施形態の貯湯式給湯システムに備えた制御装置による処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態を
図1及び
図2を参照して以下に説明する。本実施形態の貯湯式給湯システム1は、加熱された湯水を貯える貯湯タンク11が搭載されたタンクユニット10と、貯湯タンク11内に貯える湯水を加熱する加熱装置としてのヒートポンプユニット20と、図示しない給水源から供給される給湯用水を貯湯タンク11に供給し得るように構成された給水回路30と、貯湯タンク11内の湯水を台所や浴室、洗面所等の給湯対象部(図示省略)に供給し得るように構成された給湯回路40と、給湯回路40で給湯対象部に供給される湯水を加熱し得るように構成された燃焼式熱源機50とを備える。
【0036】
ヒートポンプユニット20は、貯湯タンク11との間で湯水を循環させる循環路21を介して貯湯タンク11に接続されている。該循環路21は、貯湯タンク11内の湯水を貯湯タンク11の下部からヒートポンプユニット20に流すように配設された往路21aと、ヒートポンプユニット20から貯湯タンク11の上部に湯水を流すように配設された復路21bとを備え、ヒートポンプユニット20(又はタンクユニット10)に搭載された図示しないポンプの作動により、ヒートポンプユニット20と貯湯タンク11との間で湯水を循環させることが可能である。なお、復路21bには、逆止弁22が組付けられている。
【0037】
そして、ヒートポンプユニット20は、貯湯タンク11との間での湯水の循環時に、該ヒートポンプユニット20で流通する湯水を、公知のヒードポンプ動作(冷媒の蒸発(吸熱)、圧縮、凝縮(放熱)、膨張を繰り返す動作)によって加熱し得るように構成されている。
【0038】
給水回路30は、給水源から給湯用水が供給される上流給水路31と、上流給水路31の下流側に分岐されたタンク給水路32及びバイパス給水路33とを備える。タンク給水路32は、給湯用水を上流給水路31から貯湯タンク11の下部に流入させるように配設され、バイパス給水路33は、給湯用水を上流給水路31から貯湯タンク11を経由させずに給湯回路40の混合部44に流すように配設されている。該混合部44は、貯湯タンク11から出湯する湯水であるタンク出湯湯水に、バイパス給水路33から供給される給湯用水を混合させる部分である。
【0039】
そして、タンク給水路32及びバイパス給水路33には、逆止弁34,35が各々組付けられている。さらに、バイパス給水路33には、該バイパス給水路33を通って混合部44に流れる給湯用水の流量である給水流量を検出する流量センサ36が組付けられている。該流量センサ36は本発明における第2流量センサに相当する。また、上流給水路31には、給水源から上流給水路31に供給された給湯用水の温度である給水温度を検出する温度センサ37が組付けられている。
【0040】
給湯回路40は、貯湯タンク11内の湯水を該貯湯タンク11の上部から混合部44に流すように配設された第1給湯路41と、混合部44から燃焼式熱源機50に湯水を流すように配設された第2給湯路42と、燃焼式熱源機50から流出する湯水を図示しない給湯対象部に供給するように配設された第3給湯路43とを備える。
【0041】
混合部44には、貯湯タンク11から第1給湯路41を通って流入する湯水とバイパス給水路33から流入する給湯用水とを混合して第2給湯路42に流出させ得るように構成された混合弁45が組付けられている。該混合弁45は、電動式の三方弁等により構成され、貯湯タンク11から第1給湯路41を通って第2給湯路42に流れる湯水の流量(タンク出湯湯水の流量)と、バイパス給水路33から第2給湯路42に流れる給湯用水の流量との比率である混合比率を可変的に調整し得るように構成されている。かかる混合弁45の作動制御によって上記混合比率を制御することで、該混合弁45から下流側の第2給湯路42に流れる湯水の温度(混合弁45から燃焼式熱源機50に供給する湯水の温度)を調整することが可能である。
【0042】
補足すると、上記混合比率を制御するための弁装置は、上記混合弁45に限られない。例えば、第1給湯路41及びバイパス給水路33のそれぞれに流量制御弁を設け、これらの流量制御弁により混合比率を調整することも可能である。
【0043】
第1給湯路41には、貯湯タンク11の上部から出湯する湯水の温度であるタンク出湯温度を検出する温度センサ46と、逆止弁47と、貯湯タンク11から混合部44に流れる湯水の流量であるタンク出湯流量を検出する流量センサ48とが組付けられている。また、第2給湯路42の上流端寄りの箇所(混合部44の近辺箇所)には、混合部44から燃焼式熱源機50に供給される湯水の温度である混合給湯温度を検出する温度センサ49が組付けられている。
【0044】
燃焼式熱源機50は、入水路51と出湯路52と熱交換器53とバーナ54とを備え、出湯路52が熱交換器53の通水路53aを介して入水路51の下流側に連接されている。そして、入水路51の上流側に第2給湯路42が連接され、出湯路52の下流側に第3給湯路43が連接されている。
【0045】
さらに、入水路51と出湯路52との間には、入水路51から熱交換器53を経由させずに出湯路52に湯水を流すためのバイパス路55が熱交換器53の通水路53aと並列に接続されている。そして、入水路51とバイパス路55との接続部には、該接続部の上流側の入水路51から流入する湯水を、下流側の入水路51とバイパス路55とに分配し得るように構成された分配弁56が組付けられている。
【0046】
該分配弁56は、電動式の三方弁等により構成され、上流側の入水路51から下流側の入水路51に流れる湯水の流量(=熱交換器53の通水路53aに流れる湯水の流量。以降、熱交換器流量という)と、上流側の入水路51からバイパス路55に流れる湯水の流量(以降、バイパス流量という)との比率であるバイパス比を可変的に調整し得るように構成されている。なお、以降の説明では、バイパス比を、熱交換器流量に対するバイパス流量の比率(=バイパス流量/熱交換器流量)と定義する。
【0047】
補足すると、本実施形態では、分配弁56の作動制御によるバイパス比の可変範囲は、給湯対象部への給湯時に、熱交換器流量が定常的にゼロでない流量に維持されるように設定されている。これは、燃焼式熱源機50のバーナ54の燃焼運転を行わずに給湯対象部への給湯を行う際に、熱交換器53の通水路52a内の湯水を貯湯タンク11から供給される温められた湯水に置換しておくためである。このようにすることで、給湯対象部への給湯中に貯湯タンク11が湯切れ状態になっても、バーナ54の燃焼運転を開始することで、給湯対象部に熱交換器53から冷えた湯水が供給されたりすることなく、給湯対象部に供給される湯水の温度を給湯設定温度近辺の温度に安定に保つことができる。
【0048】
また、バイパス比を制御するための弁装置は、上記分配弁56に限られない。例えば、分配弁56の代わりに、バイパス路55と出湯路52との接続部に、上流側の出湯路52から流入する湯水とバイパス路55から流入する湯水とを混合して下流側の出湯路52に流出させ得ると共にその混合比率を調整し得るように構成された電動式の混合弁を組付けて、該混合弁によりバイパス比を調整することも可能である。あるいは、熱交換器53の通水路53aを経由する流路(入水路51とバイパス路55との接続部よりも下流側の入水路51、又は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも上流側の出湯路52)と、バイパス路55との両方又は一方に流量制御弁を組付けて、該流量制御弁によりバイパス比を調整することも可能である。
【0049】
燃焼式熱源機50はさらに、出湯路52から第3給湯路43に流れる湯水の温度である熱源機出湯温度を検出する温度センサ57と、熱交換器53の通水路53aの出口近辺の湯水の温度を検出する温度センサ58とを備える。温度センサ57は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも下流側の出湯路52に組付けられ、温度センサ58は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも上流側の出湯路52に組付けられている。
【0050】
バーナ54は、例えばガスバーナであり、燃焼室60aを内部に形成する燃焼筐60内の燃焼室60aに収容されている。該バーナ54には、その燃焼運転時に、図示しない燃料供給装置により燃焼ガスが供給されると共に、燃焼筐60に取り付けられた送風機61(ファン)の作動により燃焼用空気が供給される。そして、熱交換器53は、バーナ54の燃焼運転により発生する燃焼熱(顕熱及び潜熱の一方又は両方)を受けて、該熱交換器53の通水路53aを流れる湯水を加熱するように燃焼筐60に搭載されている。
【0051】
また、本実施形態では、燃焼式熱源機50はさらに、出湯路52から浴槽BTに給湯するための湯はり用流路62と,浴槽BT内の湯水を加熱するための熱交換器63及びバーナ64(ガスバーナ)とを備える。バーナ64は、前記バーナ54と共に燃焼筐60の燃焼室60aに収容されている。該バーナ64には、その燃焼運転時に、図示しない燃料供給装置により燃焼ガスが供給されると共に、前記送風機61の作動により燃焼用空気が供給される。従って、本実施形態では、送風機61は、バーナ54,64の両方に対して共用の送風機である。
【0052】
熱交換器63は、バーナ64の燃焼運転により発生する燃焼熱(顕熱及び潜熱の一方又は両方)を受けて、該熱交換器63の通水路63aを流れる湯水を加熱するように、前記熱交換器53と共に燃焼筐60に搭載されている。そして、熱交換器63は、浴槽BT内の湯水を該浴槽BTとの間で循環させ得るように循環路65を介して浴槽BTに接続されている。該循環路65には、電動式のポンプ66が組付けられており、該ポンプ66を作動させることで、熱交換器63と浴槽BTとの間で浴槽BT内の湯水が循環する。
【0053】
湯はり用流路62は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも下流側の出湯路52から分岐され、循環路65に接続されている。そして、湯はり用流路62には、これを開閉可能な開閉弁としての電磁弁67が組付けられている。
【0054】
燃焼式熱源機50は、上記のように構成されているので、給湯回路40の第2給湯路42から供給される湯水の全体又は一部を入水路51から熱交換器53の通水路53a及び出湯路52を経由させて第3給湯路43に供給する(ひいては、給湯対象部に供給する)ことが可能である。このとき、バーナ54の燃焼運転を行うことで、第2給湯路42から供給される湯水を加熱して昇温させることが可能である。さらに、バーナ54の燃料量とバイパス比との両方又は一方を調整することで、熱源機出湯温度を調整することが可能である。
【0055】
また、湯はり用流路62の電磁弁67を開弁制御することで、バーナ54の燃焼運転により加熱された湯水を、出湯路52から湯はり用流路62と循環路65とを介して浴槽BTに給湯する(浴槽BTの湯はりを行う)ことが可能である。さらに、バーナ64の燃焼運転を行いながらポンプ66を作動させることで、浴槽BT内の湯水を浴槽BTと熱交換器63との間で循環させつつ加熱することが可能である。
なお、燃焼式熱源機50のバーナ54,64はガスバーナに限らず、灯油等の液体燃料を燃焼させるバーナであってもよい。
【0056】
貯湯式給湯システム1は、さらに、該貯湯式給湯システム1の作動制御を行う機能を有する制御装置70を備える。該制御装置70は、例えば、マイコン等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。例えば、制御装置70は、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20及び燃焼式熱源機50のそれぞれに各別に搭載され、且つ、相互に通信を行い得る複数の電子回路ユニットの集合体として構成され得る。ただし、制御装置70は、単一構成のものであってもよい。
【0057】
制御装置70は、貯湯式給湯システム1の運転操作をユーザが行うためのリモコン75と有線又は無線による通信を行うことが可能である。該リモコン75は、複数の操作スイッチを含む操作部75a、貯湯式給湯システム1の運転に関する様々な情報を表示する表示部75b等を含む。
【0058】
リモコン75の操作部75aの操作によって、給湯対象部への給湯を行う給湯運転のオン/オフ操作、目標給湯温度(詳しくは、給湯対象部への給湯温度や、浴槽BTの湯はり用の給湯温度の目標値)の設定操作、浴槽BTの湯はりや追い焚きを行うための操作等を行うことが可能である。また、リモコン75の表示部75bでは、目標給湯温度の設定値(以降、給湯設定温度という)や、貯湯式給湯システム1の運転状態等を表示することが可能である。
【0059】
そして、制御装置70は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能によって、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20及び燃焼式熱源機50の各制御対象機器の作動制御を行うことが可能である。この場合、タンクユニット10の制御対象機器には混合弁45が含まれ、ヒートポンプユニット20の制御対象機器には、図示しないヒートポンプ動作用の機器(圧縮機、膨張弁等)、湯水の循環用のポンプ等が含まれる。
【0060】
また、燃焼式熱源機50の制御対象機器には、バーナ54,64、分配弁56、電磁弁67、ポンプ66等が含まれる。なお、バーナ54,64のそれぞれの作動制御は、より詳しくは、送風機61、並びに図示しない燃料供給装置及び点火装置の作動制御を通じて行われる。
【0061】
次に、本実施形態の貯湯式給湯システム1の作動に関して説明する。制御装置70は、貯湯タンク11の湯切れ状態が検知された場合等、所定の条件下で貯湯タンク11の湯水を加熱するように該ヒートポンプユニット20を作動させる。この場合、貯湯タンク11内の湯水の全体又はほぼ全体が所定温度以上(例えば45℃以上)の温度になるようにヒートポンプユニット20の作動制御が行われる。
【0062】
なお、貯湯タンク11の湯切れ状態は、貯湯タンク11内の所定温度以上の湯量が所定量以下に低下した状態である。そして、貯湯タンク11の湯切れ状態であるか否かは、例えば、貯湯タンク11の表面等に上下に間隔を存して装着される複数の温度センサの出力に基づいて判断され得る。
【0063】
また、制御装置70は、貯湯タンク11内の湯温が給湯設定温度以上である状態で、給湯対象部の図示しない給湯栓の開栓等によって、給湯対象部への通水(所定流量以上の通水)が開始されると、該通水が停止されるまで、
図2のフローチャートに示す処理を実行する。この処理は、より詳しくは、燃焼式熱源機50のバーナ54の燃焼運転を行わない状態(燃焼運転の停止状態)で、給湯対象部への給湯を行うための処理である。以降、バーナ54の燃焼運転の停止状態)での給湯対象部への給湯を、タンク給湯ということがある。
【0064】
この場合、貯湯タンク11内の湯温が給湯設定温度以上であるか否かは、本実施形態では、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度(貯湯タンク11から第1給湯路41への出湯温度)が給湯設定温度以上であるか否かによって判断される。ただし、例えば、貯湯タンク11内の上部等に温度センサが備えられている場合には、該温度センサにより検出される温度が給湯設定温度以上であるか否かを判断してもよい。
【0065】
また、給湯対象部への通水が開始されたか否かは、流量センサ36,48によりそれぞれ検出される流量(給水流量及びタンク出湯流量)の総和の流量が第1の所定流量以上(例えば2.4リットル/分以上)になったか否かによって判断される。また、給湯対象部への通水が停止されたか否かは、流量センサ36,48によりそれぞれ検出される流量(給水流量及びタンク出湯流量)の総和の流量が第1の所定流量よりも小さい第2の所定流量以下(例えば1.8リットル/分以下)になったか否かによって判断される。
【0066】
なお、例えば、上流給水路31、あるいは、第2給湯路42、あるいは、燃焼式熱源機50の入水路51(バイパス路55との接続部よりも上流側の入水路51)、あるいは、燃焼式熱源機50の出湯路52(バイパス路55との接続部よりも下流側の出湯路52)に流量センサが備えられている場合には、該流量センサにより検出される流量に基づいて、給湯対象部への通水が開始されたか否か、及び該通水が停止されたか否かを判断してもよい。
【0067】
貯湯タンク11内の湯温が給湯設定温度以上である状態で、給湯対象部への通水が開始された場合、制御装置70は、該通水が停止されるまで、タンク給湯用の処理として、以下に説明するSTEP1からの処理を実行する。STEP1において、制御装置70は、給湯設定温度と、熱交換器53の通水路53a内の湯水の温度である熱交換器水温との差の絶対値が、あらかじめ定められた所定値TA以下であるかを判断する。
【0068】
この判断処理は、換言すれば、熱交換器水温が給湯設定温度と同程度の温度であるか否かを判断する処理であり、所定値TAは、例えば3℃である。また、この判断処理では、熱交換器水温の値として、熱交換器53の下流側の温度センサ58で検出される温度が用いられる。
【0069】
ここで、例えば、給湯対象部への前回のタンク給湯の終了時からの経過時間が比較的長い場合等、燃焼式熱源機50の湯水の流路(入水路51、出湯路52、熱交換器53の通水路53a、バイパス路55)に残留する湯水が給湯設定温度に比して冷えている状況において、給湯対象部への通水が開始された場合に、該通水の開始時(タンク給湯の開始時)にSTEP1の判断結果が否定的になる。
【0070】
あるいは、給湯対象部への前回のタンク給湯の終了後、まもなくに(早期に)、給湯設定温度が前回のタンク給湯での給湯設定温度よりも高い温度に比較的大きく変更された状態で、給湯対象部への通水が開始された場合にも、該通水の開始時(タンク給湯の開始時)にSTEP1の判断結果が否定的になる。
なお、これらの場合には、給湯設定温度>熱交換器水温となるので、給湯設定温度-熱交換器水温>TAとなる。
【0071】
また、例えば前回のタンク給湯の終了後、まもなく(早期に)、給湯設定温度が前回のタンク給湯での給湯設定温度よりも低い温度に比較的大きく変更された状態で、給湯対象部への通水が開始された場合にも、該通水の開始時(タンク給湯の開始時)にSTEP1の判断結果が否定的になる。なお、この場合は、給湯設定温度<熱交換器水温となるので、熱交換器水温-給湯設定温度>TAとなる。
【0072】
一方、例えば、前回のタンク給湯の終了後、まもなくに(早期に)、給湯設定温度が前回のタンク給湯での給湯設定温度から変更されていない状態(あるいは、給湯設定温度の変更量が十分に小さい状態)で、給湯対象部への通水が開始された場合には、該通水の開始時(タンク給湯の開始時)にSTEP1の判断結果が肯定的になる。
【0073】
タンク給湯の開始時に、STEP1の判断結果が否定的になった場合には、制御装置70は、STEP2において、現在の熱交換器水温(温度センサ58により検出される温度)と、給湯設定温度よりもあらかじめ設定された所定温度TBだけ低い温度とを比較し、熱交換器水温が、当該低い温度(=給湯設定温度-TB)以上の温度であるか否かを判断する。この判断処理は、換言すれば、熱交換器水温が給湯設定温度よりも大幅に低い温度であるか否かを判断する処理である。そして、上記所定温度TBは、例えば15℃である。
【0074】
熱交換器水温が給湯設定温度以上の温度である場合、あるいは、熱交換器水温が給湯設定温度よりも低い温度であって、且つ、該給湯設定温度との温度差(=給湯設定温度-熱交換器水温)が上記所定温度TB以下の温度である場合に、熱交換器水温≧給湯設定温度-TBとなって、STEP2の判断結果が肯定的になる。
【0075】
この場合には、制御装置70は、次に、STEP3において、貯湯タンク11内の湯水の温度であるタンク湯温(現在値)と給湯設定温度との温度差(=タンク湯温-給湯設定温度)が、給湯設定温度と熱交換器水温と前記バイパス比(=バイパス流量/熱交換器流量)の可変範囲内での最大値Rmaxとにより、次式(1)により規定される所定値α以上の温度差であるか否か(換言すれば、タンク湯温が(給湯設定温度+α)以上の温度であるか否か)を判断する。
α=(給湯設定温度-熱交換器水温)/Rmax ……(1)
【0076】
この場合、所定値αを決定するために用いるタンク湯温の値としては、本実施形態では、第1給湯路41の温度センサ46で検出されるタンク出湯温度(現在値)が用いられる。ただし、例えば、貯湯タンク11内の上部等に温度センサが備えられている場合には、該温度センサにより検出される温度をタンク湯温の値として用いてもよい。
【0077】
また、バイパス比の最大値Rmaxは、例えば3.2である。補足すると、所定値αの値は、上記式(1)の演算により算出してもよいが、Rmaxの値が固定値であることから、例えば、給湯設定温度と熱交換器水温とからマップを用いて所定値αの値を決定することも可能である。
【0078】
ここで、熱交換器水温が給湯設定温度よりも低い場合には、所定値αの値は正の値となる。そして、この場合には、タンク湯温に応じて、STEP3の判断結果が肯定的になる場合と、否定的になる場合とがある。
【0079】
一方、熱交換器水温が給湯設定温度よりも高い場合には、所定値αの値は負の値となる。そして、タンク給湯は、タンク湯温が給湯設定温度以上である場合に行われる給湯である。従って、所定値αの値が負の値となる場合(熱交換器水温>給湯設定温度である場合)には、STEP3の判断結果が必然的に肯定的になる。
【0080】
STEP3の判断結果が肯定的となる場合(タンク湯温-給湯設定温度≧αである場合)には、混合部44から燃焼式熱源機50に供給される湯水の温度である混合給湯温度を、給湯設定温度に上記所定値αを加算した温度に制御すれば、バイパス比を最大値Rmaxに制御した状態で、燃焼式熱源機50から出湯する湯水(バイパス路55を通った湯水と熱交換器53から流出した湯水との合流後の湯水)の温度を給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致させることができる。
【0081】
なお、給湯設定温度に所定値αを加算した温度は、該所定値αが正の値であるとき(熱交換器水温<給湯設定温度であるとき)には、給湯設定温度よりも高い温度である。また、所定値αが負の値であるとき(熱交換器水温>給湯設定温度であるとき)には、給湯設定温度に所定値αを加算した温度は、給湯設定温度よりも低い温度である。
【0082】
そこで、STEP3の判断結果が肯定的である場合には、制御装置70は、STEP4において、バイパス比を最大値Rmaxに制御するように分配弁56を作動させると共に、給湯設定温度に所定値αを加算した温度を混合給湯温度の目標値として、混合部44での混合比率を制御するように混合弁45を作動させる。そして、制御装置70は、STEP1からの処理を繰り返す。これにより、タンク給湯の実行中に、STEP1の判断結果が肯定的になるまでSTEP4の処理が継続的に実行される。
【0083】
上記のようにSTEP1の判断結果が否定的になると共にSTEP2,3の判断結果が肯定的となる状況で、STEP4の処理を実行することで、混合部44で(給湯設定温度+α)の温度に温調制御された湯水が燃焼式熱源機50のバイパス路55の下流端に達すると、該湯水に熱交換器53の通水路53aから流出した湯水が合流する。そして、その合流後の湯水の温度は、給湯設定温度に一致もしくくはほぼ一致する温度になる。従って、タンク給湯の開始後、給湯設定温度+αの温度に温調制御された湯水が燃焼式熱源機50のバイパス路55の下流端に達した後は、熱交換器54の通水路54a内に給湯設定温度よりも高い温度又は低い温度の湯水が残留していても、給湯設定温度に給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する適切な温度の湯水を給湯対象部に供給することができる。
【0084】
また、STEP4でバイパス比を最大値Rmaxに制御することで、混合部54で温調制御された湯水を燃焼式熱源機50のバイパス路55の下流端に早期に到達させることができる。このため、タンク給湯の開始後、適切な温度に温調制御された湯水を早期に給湯対象部に供給することができる。
【0085】
一方、STEP2又は3の判断結果が否定的となる状況は、熱交換器水温が給湯設定温度よりも低い状況であると共に、熱交換器水温が給湯設定温度よりも大幅に低いか、又は、タンク湯温が給湯設定温度に比して十分に高くない状況である。そして、これらの状況では、混合給湯温度を給湯設定温度よりも高くしても、燃焼式熱源機50のバイパス路55を通る湯水と熱交換器53の通水路53aから流出する湯水との合流後の湯水の温度を、給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致させることができない。
【0086】
そこで、STEP2又は3の判断結果が否定的になる場合(熱交換器水温<給湯設定温度-TBであるか、又はタンク湯温-給湯設定温度≦αである場合)制御装置70は、STEP5において、バイパス比を最小値Rminに制御する(熱交換器流量を最大化する)ように分配弁56を作動させると共に、給湯設定温度よりも所定値TCだけ高い温度を混合給湯温度の目標値として、混合部44での混合比率を制御するように混合弁45を作動させる。上記所定値TCは、あらかじめ定められた一定値であり、例えば3℃である。
【0087】
なお、タンク湯温が(給湯設定温度+TC)以下の温度である場合には、貯湯タンク11から第1給湯路41に出湯する湯水がそのまま(給湯用水が混合されずに)、混合部44及び第2給湯路42を通って燃焼式熱源機50に供給される。
そして、制御装置70は、STEP1からの処理を繰り返す。これによりSTEP5の処理が、STEP1の判断結果が肯定的になるまで継続的に実行される。
【0088】
このようにSTEP1の判断結果が否定的になると共にSTEP2又は3の判断結果が否定的になる状況で、STEP5の処理を実行した場合、混合部44で温調制御された湯水が燃焼式熱源機50のバイパス路55の下流端に達しても、該湯水に熱交換器53の通水路53aから流出した湯水を合流させて得られる湯水の温度は、給湯設定温度よりも低い温度に留まる。
【0089】
ただし、バイパス比を最小値Rminに制御して、熱交換器流量を最大化することで、熱交換器53の通水路53a内の冷えた湯水(給湯設定温度よりも低い温度の湯水)は、該熱交換器53の通水路53aから速やかに流出すると共に、該熱交換器53の通水路53a内に混合部44で温調制御された湯水が速やかに進入することで、該通水路53a内の湯水の温度が給湯設定温度に速やかに近づいていく。
【0090】
従って、熱交換器53の通水路53aから流出する冷えた湯水によって燃焼式熱源機50から出湯する湯水が、給湯設定温度よりも低い温度になる期間は短時間で済む。また、混合給湯温度を給湯設定温度よりも所定値TCだけ高い温度に温調制御しておくことで、燃焼式熱源機50から出湯する湯水の温度と給湯設定温度との温度差を小さめの温度差に抑制することができる。
【0091】
タンク給湯の開始時に、STEP1の判断結果が否定的になった場合には、STEP4又は5の処理が上記の如く実行されながら、混合部44で温調制御された湯水が熱交換器53に流入することで、熱交換器水温が給湯設定温度に近づいていき、やがてSTEP1の判断結果が肯定的になる。
【0092】
また、前記したように、前回のタンク給湯の終了後、まもなくに(早期に)、給湯設定温度が前回のタンク給湯での給湯設定温度から変更されていない状態(あるいは、給湯設定温度の変更量が十分に小さい状態)で、給湯対象部への通水が開始された場合には、該通水の開始時(タンク給湯の開始時)にSTEP1の判断結果が肯定的になる。なお、STEP4又は5の処理の実行中に、給湯設定温度が変更されることで、STEP1の判断結果が肯定的になる場合もある。
【0093】
このようにSTEP1の判断結果が肯定的になった場合(|給湯設定温度-熱交換器水温|≦TAである場合)には、制御装置70は、STEP6からの処理を実行する。STEP6では、制御装置70は、バイパス比をその可変範囲内の最大値Rmaxに制御する(バイパス流量を最大化する)ように分配弁56を作動させると共に、給湯設定温度を混合給湯温度の目標値として、混合部44での混合比率を制御するように混合弁45を作動させる。
【0094】
これにより、混合部44で給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する温度に温調制御された湯水が燃焼式熱源機50のバイパス路55及び熱交換器53を経由して(主にバイパス路55を経由して)、給湯対象部に供給される。この場合、熱交換器水温は、給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する温度になっているので、燃焼式熱源機50から出湯する湯水の温度は、給湯設定温度近辺の温度に維持される。
【0095】
また、この場合、バイパス比が最大値Rmaxに制御されるので、混合部44で給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する温度に温調制御された湯水を速やかに燃焼式熱源機50から出湯させて給湯対象部に供給することができる。
【0096】
制御装置70は、STEP6の処理を上記の如く実行しながら、STEP7において、給湯設定温度と熱交換器水温との差の絶対値が、前記所定値TAよりも若干高い温度、例えばTA+1℃以上の温度差になったか否かを判断し、該判断の結果が否定的である場合には、STEP6の処理を継続する。
【0097】
ここで、タンク給湯の実行中に給湯設定温度が比較的大きく変更された場合に、STEP7の判断結果が肯定的になる。また、本実施形態では、燃焼式熱源機50の送風機61がバーナ54,64に対する共用の送風機であるため、タンク給湯の実行中に、リモコン75で浴槽BT内の湯の追い焚きの実行が指示された場合に、バーナ64の燃焼運転のための送風機61の作動によって、バーナ54側の熱交換器53が冷却され、その結果、熱交換器53の熱交換器水温が低下して、STEP7の判断結果が肯定的になる場合もある。
【0098】
そして、STEP7の判断結果が肯定的になった場合には、制御装置70は、STEP1からの処理を再び実行する。この場合、STEP7の判断結果が肯定的になった直後のSTEP1の判断結果は否定的になるので、STEP4又は5の処理を実行されるようになる。
【0099】
本実施形態では、タンク給湯は、以上説明した如く実行される。なお、給湯対象部への給湯の開始時に、タンク湯温が給湯設定温度よりも低い場合、あるいは、タンク給湯の実行中に、貯湯タンク11が湯切れ状態になった場合には、燃焼式熱源機50のバーナ54の燃焼運転が開始される。そして、温度センサ57で検出される温度(熱源機出湯温度)が給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致するように、バーナ54の燃焼量とバイパス比とが制御される。
【0100】
ここで、本実施形態と本発明との対応関係について補足すると、熱交換器水温が給湯設定温度よりも低い場合におけるSTEP4の処理が本発明における第1処理に相当し、該STEP4の処理における所定値αが本発明における所定の第1温度に相当する。
【0101】
また、STEP2又はSTEP3の判断結果が否定的である場合に実行させるSTEP5の処理が本発明における第3処理に相当する。そして、STEP2における(給湯設定温度-TB)が本発明における第1閾値温度に相当し、STEP3における(給湯設定温度+α)が本発明における第2閾値温度に相当する。
【0102】
また、熱交換器水温が給湯設定温度よりも高い場合におけるSTEP4の処理が本発明における第4処理に相当し、該STEP4の処理における(-α)が本発明における所定の第2温度に相当する。
【0103】
また、熱交換器水温が給湯設定温度よりも低い場合、あるいは、給湯設定温度よりも高い場合におけるSTEP4の処理の実行中に、STEP1の判断結果が肯定的になった場合に実行されるSTEP6の処理が本発明における第2処理に相当する。
【0104】
以上説明した実施形態によれば、タンク給湯の開始時に、熱交換器水温が給湯設定温度よりも高い温度又は低い温度になっていて、STEP1の判断結果が否定的となる場合、あるいは、タンク給湯の実行中に、給湯設定温度の変更等により、熱交換器水温が給湯設定温度よりも高い温度又は低い温度になって、STEP1の判断結果が否定的になった場合に、STEP2,3の判断結果が肯定的になる状況では、前記STEP4の処理が実行される。
【0105】
このため、STEP4の処理の開始後、熱交換器53から給湯設定温度よりも高い温度又は低い温度の湯水が流出する期間において、混合部44で温調制御された湯水がバイパス路55の下流端に達した直後から給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する温度の湯水を燃焼式熱源機50から給湯対象部に出湯させることができる。
【0106】
また、STEP4では、バイパス比を最大値Rmaxに制御することで、混合部44で温調制御された湯水を速やかにバイパス路55の下流端まで到達させることができる。従って、給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する温度の湯水を給湯対象部に早期に供給することができる。
【0107】
また、熱交換器水温が給湯設定温度よりの低い状況でSTEP1の判断結果が否定的になった場合に、STEP2又は3の判断結果が否定的になる状況では、STEP5の処理が実行される。この場合は、熱交換器53から給湯設定温度よりも低い温度の湯水が流出する期間において、混合部44で温調制御された湯水がバイパス路55の下流端に達しても、燃焼式熱源機55から出湯する湯水の温度は、給湯設定温度よりも低い温度に留まるものの、バイパス比が最小値Rminに制御される(熱交換器流量が最大化される)ため、熱交換器53から給湯設定温度よりも低い温度の湯水が流出する期間が短時間で済む。
【0108】
従って、給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致する温度の湯水を給湯対象部に供給することを、混合部44で温調制御された湯水がバイパス路55の下流端に達してから短時間で実現することができる。
【0109】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に他の実施形態をいくつか例示する。前記実施形態では、STEP1の判断結果が否定的になった場合に、熱交換器水温が給湯設定温度よりも高い状況であるか、給湯設定温度よりも低い状況であるかによらずに、STEP2,3の判断処理を経て、STEP4の処理が実行されるようにした。ただし、熱交換器水温が給湯設定温度よりも高い状況では、STEP1の判断結果が否定的になった場合に直ちに、STEP4の処理を実行するようにしてもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、STEP4,6の処理において、バイパス比を最大値Rmaxに制御した(バイパス流量を最大化するようにした)。ただし、STEP4,6の処理において、バイパス比をその可変範囲内の最大値Rmax寄りの値(最大値Rmaxよりも若干小さい値)に制御してもよい。
【0111】
また、前記実施形態では、STEP1において、給湯設定温度と、熱交換器水温の検出値(温度センサ58による検出値)とを用いてSTEP1の判断処理を実行したが、給湯設定温度と、熱交換器水温の検出値との両方を直接的に使用せずとも、STEP1の判断結果を特定することも可能である。例えば、前回のタンク給湯の終了後の経過時間が十分に長い時間になった後に、タンク給湯(給湯対象部への通水)が開始された場合には、STEP1の判断結果が否定的であると特定して、STEP2からの処理を実行してもよい。
【0112】
また、例えば、STEP6の処理によるタンク給湯の実行中に、給湯設定温度が所定値TAよりも大きく増加又は減少された場合には、STEP1の判断結果が否定的になったと特定して、STEP2からの処理を実行してもよい。
【0113】
また、前記実施形態では、貯湯タンク11内の湯水を加熱する加熱装置として、ヒートポンプユニット20を用いたが、該加熱装置は、他の種類の加熱装置であってもよい。例えば、該加熱装置は、燃焼式の加熱装置、あるいは、燃料電池等を熱源として用いる加熱装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…貯湯式給湯システム、11…貯湯タンク、20…ヒートポンプユニット(加熱装置)、44…混合部、50…燃焼式熱源機、70…制御装置。