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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176934
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電池ユニット及び電池監視装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20231206BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231206BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20231206BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20231206BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20231206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M10/42 A
H01M10/48 P
G01R31/392
G01R31/3842
G01R31/396
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089528
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】沼田 達宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 正規
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲也
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA17
2G216BA22
2G216BA23
2G216BA34
2G216BB07
2G216BB09
2G216CB17
2G216CB27
2G216CC06
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA05
5G503EA09
5G503FA06
5G503GB03
5H030AA08
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】交換可能な電池ユニットが取り外された後に電池状態を把握することが可能な電池ユニット及び電池監視装置を提供する。
【解決手段】電池ユニットは、外部負荷に対して電池ユニットが取り付けられた状態において、外部負荷に電力を供給可能な電池部(電池セル22)と、電池部に接続された負荷部(電圧均等化回路80)と、負荷部を流れる電流及び負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部(監視IC31)と、外部負荷に対して電池ユニットが取り外された状態において、電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで電池部から負荷部に電流を流させ、その時に測定部により測定された測定結果を取得する制御部(無線IC32)と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)であって、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記外部負荷に電力を供給可能な電池部(22)と、
前記電池部に接続された負荷部(80)と、
前記負荷部を流れる電流及び前記負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部(31)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで前記電池部から前記負荷部に電流を流させ、その時に前記測定部により測定された測定結果を取得する制御部(32)と、を備える電池ユニット。
【請求項2】
前記制御部は、前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記測定結果に基づいて前記電池部の電池状態を演算し記憶する、請求項1に記載の電池ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記制御部と通信を行う電池制御装置からの指示に従って前記測定結果を前記電池制御装置に通知する一方、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態では、前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において実施していなかった前記電池状態の演算を実施する、請求項2に記載の電池ユニット。
【請求項4】
前記制御部と前記電池制御装置との通信が遮断されたか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記判定部により前記電池制御装置との通信が遮断されたと判定された場合、前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外されたと判断し、それを契機として、前記負荷部に前記電池部から電流を流させて前記測定部に測定させる、請求項3に記載の電池ユニット。
【請求項5】
前記判定部は、前記電池制御装置から起動指示信号または前記電池部の電圧均等化指示信号が一定期間入力されなかった場合、または外部装置からの通信が遮断されていることを知らせる信号が入力された場合、前記電池制御装置との通信が遮断されたと判定する、請求項4に記載の電池ユニット。
【請求項6】
前記負荷部は、前記電池部の電圧を均等化するために利用される負荷、前記電池部の温度状態を調整するために利用される負荷、または前記電池部のインピーダンスを測定する際に電流を流すために利用される負荷のいずれかである、請求項1に記載の電池ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、前記外部装置と無線通信可能に構成されている、請求項5に記載の電池ユニット。
【請求項8】
前記制御部は、前記電池部の蓄電状態が一定値以下の場合、前記電池部から前記負荷部に電流を流させることを中止する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池ユニット。
【請求項9】
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)であって、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記外部負荷に電力を供給可能な電池部(22)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、前記電池部の自己放電率の推移を演算する制御部(32)と、を備える電池ユニット。
【請求項10】
前記制御部は、
所定時間、自己放電に係る時間を測定するカウンタ以外の機能を停止させ、
前記所定時間の開始時における前記電池部の残容量と、前記所定時間の終了時における前記電池部の残容量との変化率に基づいて前記自己放電率の推移を演算し、
演算された前記自己放電率の推移に基づいて前記電池部の電池状態を演算して記憶する、請求項9に記載の電池ユニット。
【請求項11】
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)に搭載される電池監視装置(30)であって、
前記電池ユニットの電池部(22)に接続された負荷部(80)を流れる電流及び前記負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部(31)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで前記電池部から前記負荷部に電流を流させ、その時に前記測定部により測定された測定結果を取得する制御部(32)と、を備える電池監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ユニット及び電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックからバッテリモジュールを取り外した後にバッテリモジュールを構成する個々の電池セルの劣化度を把握する発明が知られている。例えば特許文献1に記載された発明は、バッテリモジュールが電池パックから取り外される前に劣化度を算出し、算出した劣化度を外部装置に送信する。そしてバッテリモジュールが電池パックから取り外された後に、外部装置が参照される。これにより電池セルの劣化度を把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-163650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリモジュールが電池パックから取り外された後、バッテリモジュールの保管環境は一様ではない。保管環境によってはバッテリモジュールを構成する電池セルの劣化が進む可能性がある。したがってバッテリモジュールが取り外された後に電池セルの劣化度を把握したいニーズがある。しかしながら特許文献1に記載された発明は、バッテリモジュールが取り外された後に充放電を行うことがないため、取り外される前の劣化度しか把握することができず、取り外された後の劣化度を把握することができない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、交換可能な電池ユニットが取り外された後に電池状態を把握することが可能な電池ユニット及び電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
外部負荷に対して交換可能に構成された電池ユニットであって、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記外部負荷に電力を供給可能な電池部と、
前記電池部に接続された負荷部と、
前記負荷部を流れる電流及び前記負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで前記電池部から前記負荷部に電流を流させ、その時に前記測定部により測定された測定結果を取得する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
電池ユニットは、所定のタイミングで電池部を放電させて電流などを測定する。測定された電流などは、例えば電池状態の演算に用いることができる。上述したように従来技術では取り外された後に充放電を行うことがないため、取り外された後の電池状態を把握することができない。これに対し、本発明では、電池部を放電させて測定結果を取得するため、取り外された後の電池状態を把握することが可能となる。
【0008】
本発明は、
外部負荷に対して交換可能に構成された電池ユニットであって、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記外部負荷に電力を供給可能な電池部と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、前記電池部の自己放電率の推移を演算する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
演算された自己放電率の推移は例えば電池状態の演算に用いることができる。自己放電率の推移は新たな機能、装置などを追加することなく演算可能であるため、電池状態を演算する際のコスト低減に寄与する。
【0010】
本発明は、
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)に搭載される電池監視装置(30)であって、
前記電池ユニットの電池部(22)に接続された負荷部(80)を流れる電流及び前記負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部(31)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで前記電池部から前記負荷部に電流を流させ、その時に前記測定部により測定された測定結果を取得する制御部(32)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
電池監視装置は、所定のタイミングで電池部を放電させて電流などを測定する。測定された電流などは、例えば電池状態の演算に用いることができる。上述したように従来技術では取り外された後に充放電を行うことがないため、取り外された後の電池状態を把握することができない。これに対し、本発明では、電池部を放電させて測定結果を取得するため、取り外された後の電池状態を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両の構成図。
図2】電池パック内部の斜視図。
図3】電池制御装置及び電池監視装置を示すブロック図。
図4】電池パックが取り外された状態を示すブロック図。
図5】電池モジュールが取り外された状態を示すブロック図。
図6】電池パックが取り外されたか否か判定するブロック図。
図7】電池制御装置の機能の一部を電池監視装置が実施することを示すブロック図。
図8】電池制御装置の機能の一部を電池監視装置が実施することを示すブロック図。
図9】第1実施形態に係る電池監視装置の一動作例を説明するフローチャート。
図10】第2実施形態に係る電池監視装置の一動作例を説明するフローチャート。
図11】その他の実施形態を説明するブロック図。
図12】その他の実施形態を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1図2を参照して、車両10に搭載される電池パック11の構成例について説明する。
<車両10の全体構成>
図1は、車両10の構成を概略的に示した図である。車両10は、電池パック11(図1では「Battery」と示す)と、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」と示す)12と、モータ13(図1では「MG」と示す)と、車両ECU14(図1では「ECU」と示す)とを備える。ここでは電池パック11が車両10に適用される実施形態について説明されるが、本開示に従う電池パック11は、車両以外の用途にも適用可能である。
【0015】
電池パック11は、車両10の駆動電源として車両10に搭載される。図1では、電池パック11は、車両10のエンジンルームに設置されているが、これに限定されない。電池パック11は、トランクルーム、座席下、または床下など、他の場所に設置されていてもよい。車両10は、電池パック11に蓄えられた電力を用いて走行する電気自動車またはハイブリッド自動車である。
【0016】
電池パック11は、多数の電池セル22(二次単電池)を含んで構成される組電池20を含む。詳しくは、直列及び/または並列に接続された複数の電池セル22によって電池モジュール21(電池スタック、電池ブロックと称される場合もある)が構成され、複数の電池モジュール21が直列に接続されて組電池20が構成される。各電池セル22は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等によって構成される。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池の他、固体の電解質を用いた所謂全固体電池も含み得る。
【0017】
電池パック11は、モータ13を駆動するための電力を組電池20に蓄えており、PCU12を通じてモータ13へ電力を供給することができる。また、電池パック11は、車両制動時等のモータ13の回生発電時にPCU12を通じてモータ13の発電電力を受けて充電される。
【0018】
また、電池パック11には、組電池20を監視する監視部、及び監視部の監視結果を受けて所定の処理を実行する制御部が設けられる。この監視部及び制御部の構成については、図2以降で詳しく説明する。
【0019】
PCU12は、車両ECU14からの制御信号に従って、電池パック11とモータ13との間で双方向の電力変換を実行する。PCU12は、たとえば、モータ13を駆動するインバータと、インバータに供給される直流電圧を電池パック11の出力電圧以上に昇圧するコンバータとを含んで構成される。
【0020】
モータ13は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータ13は、PCU12により駆動されて回転駆動力を発生し、モータ13が発生した駆動力は、駆動輪に伝達される。一方、車両10の制動時には、モータ13は、発電機として動作し、回生発電を行なう。モータ13が発電した電力は、PCU12を通じて電池パック11に供給され、電池パック11内の組電池20に蓄えられる。
【0021】
車両ECU14は、CPU、ROM及びRAM、各種信号を入出力するための入出力ポート等を含んで構成される。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、車両ECU14の処理が記されている。車両ECU14の主要な処理の一例として、車両ECU14は、電池パック11から組電池20の電圧、電流、SOC(State Of Charge)等の情報を受け、PCU12を制御することにより、モータ13の駆動及び電池パック11の充放電を制御する。
【0022】
<電池パック11の構成>
図2は、電池パック11の内部を模式的に示す斜視図である。電池パック11は、組電池20と、複数の電池監視装置30と、電池制御装置40と、それらの収容する筐体50とを備えている。筐体50の側面には、外部装置に対して電池パック11を接続するためのコネクタ58が設けられている。以下では、図2に示すように、直方体である筐体50の各面のうち、車両10に設置される設置面(図2において下面)において、長手方向をX方向と示し、短手方向をY方向と示す。そして、設置面に対して垂直となる上下方向をZ方向と示す。なお、本実施形態では、車両10の左右方向がX方向に相当し、前後方向がY方向に相当し、上下方向がZ方向に相当するが、電池パック11を車両10に対してどのように配置してもよい。
【0023】
<組電池20の構成>
組電池20は、X方向に並べて配置された複数の電池モジュール21を有する。これらの複数の電池モジュール21が直列に接続されることにより、組電池20が構成される。各電池モジュール21は、Y方向に並べて配置された複数の電池セル22を有する。これらの複数の電池セル22が直列に接続されることにより、電池モジュール21が構成される。
【0024】
各電池モジュール21の上面において、X方向の両端には、直線状のバスバーユニット23が設置されている。バスバーユニット23は、電池セル22を電気的に接続するものである。
【0025】
<電池監視装置30の構成>
電池監視装置30は、サテライト・バッテリ・モジュール(SBM:Satellite Battery Module)とも呼ばれ、電池モジュール21毎に設けられており、図2に示すように、各電池モジュール21の両端に配置されているバスバーユニット23の間に設置されている。図3に示すように、各電池監視装置30は、監視部である監視IC31と、監視側無線部である無線IC32と、無線アンテナ34などを備えている。監視IC31は、セル監視回路(CSC:Cell Supervising Circuit)とも呼ばれ、電池モジュール21を構成する各電池セル22から、電池情報を取得する。この電池情報は、例えば、各電池セル22の電圧情報、温度情報、電流情報、自己診断情報等を含む。自己診断情報とは、例えば、電池監視装置30の動作確認に関する情報、つまり、電池監視装置30の異常や故障に関する情報などである。具体的には、電池監視装置30を構成する監視IC31や無線IC32等の動作確認に関する情報である。
【0026】
無線IC32は、監視IC31と有線で接続されており、通信インターフェース321、CPU322、カウンタ323を有するマイコンである。図3では紙面の都合上、ROM、RAMなどが省略されているが、無線IC32はROM、RAMなども有する。図3以降の図面においても同様である。監視IC31は通信インターフェース311を備える。無線IC32と監視IC31は、通信インターフェースを介してデータをやり取りする。無線IC32は、監視IC31から受け取ったデータを無線アンテナ34を介して電池制御装置40に送信する。また、無線IC32は、無線アンテナ34を介して受信したデータを監視IC31に送る。カウンタ323は、スイッチ、センサなどの入力機器から入力されるオン/オフ信号の数を数えたり、時間を測定したりする論理回路である。
【0027】
無線IC32は、電源回路33を介して電池セル22に接続される。無線IC32は、電源回路33を介して電池セル22から供給される電力によって作動する。
【0028】
<電池制御装置40の構成>
電池制御装置40は、電池ECUやBMU(Battery Management Unit)とも呼ばれ、X方向の一端に配置されている電池モジュール21の外側側面に取り付けられている。電池制御装置40は、各電池監視装置30と無線通信可能に構成されている。
【0029】
詳しく説明すると、図3に示すように、電池制御装置40は、制御部である制御MCU41と、制御側無線部である無線IC42と、無線アンテナ43などを備えている。制御MCU41は、通信インターフェース411、CPU412を有するマイコンである。制御MCU41についても無線IC32と同様にROM、RAMなどの図示が省略されているが、制御MCU41もROM、RAMなどを有する。CPU412は、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、電池制御に関する処理が記されている。
【0030】
主要な処理の一例として、制御MCU41は、電池監視装置30に対して電池情報の取得及び送信を指示する。また、制御MCU41は、電池監視装置30から受け取った電池情報に基づいて、組電池20、電池モジュール21、電池セル22の監視を行う。また、制御MCU41は、監視結果などに基づいて、組電池20とPCU12やモータ13との通電及び通電遮断状態を切り替えるリレースイッチを制御する。また、制御MCU41は電圧均等化指示信号を送信する。この電圧均等化指示信号については後述する。なお、本実施形態では、車両ECU14が、組電池20の充放電制御を行うために、PCU12に対して指示を行っていたが、制御MCU41が実施可能に構成してもよい。
【0031】
無線IC42は、制御MCU41と有線で接続されており、無線IC32と同様に、通信インターフェース421、CPU422を有するマイコンである。無線IC42についても無線IC32と同様にROM、RAMなどの図示が省略されているが、無線IC42もROM、RAMなどを有する。無線IC42は、制御MCU41から受け取ったデータを、無線アンテナ43を介して電池監視装置30に送信する。また、無線IC42は、無線アンテナ43を介して受信したデータを制御MCU41に送る。
【0032】
本実施形態では電池制御装置40は、電池監視装置30と無線通信にてデータをやり取りするものとして説明するが、これに限定されない。電池制御装置40と電池監視装置30は有線で接続されていてもよい。図3に示す符号60は、電池パック11から電力が供給される負荷であり、一例は上述したモータ13である。
【0033】
次に、図2図3を用いて説明した電池パック11が車両10から取り外された状態を考える。電池パック11を車両10から取り外す目的の一例は、いわゆる3Rのためである。3Rとは、Reduce、Reuse、Recycleの総称である。図4は、電池パック11が車両10から取り外された状態を示す。本実施形態において、「電池パック11が車両10から取り外された状態」とは、電池パック11それ自体は車両10から取り外されているものの、電池パック11を構成する電池モジュール21の分解などは行われていない状態をいう。すなわち、「電池パック11が車両10から取り外された状態」とは、図4に示すように電池パック11は負荷60と切り離されているものの、電池パック11の構成に変化は生じていない状態をいう。
【0034】
電池パック11をリサイクルする場合、電池パック11そのものをリサイクルする場合と電池パック11を構成する電池モジュール21をリサイクルする場合がある。電池パック11を構成する電池モジュール21をリサイクルする場合、電池パック11から電池モジュール21を取り外す必要がある。図5は、複数の電池モジュールの中から1つの電池モジュール21が電池パック11から取り外された状態を示す。以下ではこのような状態を「電池モジュール21が電池パック11から取り外された状態」と呼ぶ。電池モジュール21を電池パック11から取り外すとき、電池パック11は車両10から取り外されていてもよいし、車両10に搭載されたままでもよい。なお、電池パック11に電池モジュール21が1つしか残っておらず、最後の電池モジュール21が取り外された状態も、「電池モジュール21が電池パック11から取り外された状態」に該当する。
【0035】
次に図6を参照して、電池パック11が車両10から取り外されたことを判定するための方法の一例について説明する。上述したように電池監視装置30(無線IC32)と電池制御装置40は、無線通信により定期的にデータをやり取りしている。無線IC32は、電池制御装置40から起動指示信号または電池セル22の電圧均等化指示信号が一定期間(T1)入力されなかった場合、電池制御装置40との通信が遮断されたと判定する。「起動指示信号」とは車両10のイグニッションスイッチがオンされたときに入力される信号である。「電圧均等化指示信号」とは、電池セル22の電圧を均等化する際に入力される信号である。電圧均等化指示信号に関しては、イグニッションスイッチがオフであっても一定期間(T2)ごとに電池制御装置40から無線IC32に送信される(T1>T2)。したがって、少なくとも電圧均等化指示信号について、電池パック11が車両10に搭載されていれば、一定期間(T2)ごとに無線IC32は受信する。一方で、電池パック11が車両10から取り外された場合、起動指示信号及び電圧均等化指示信号のどちらも電池制御装置40から無線IC32に送信されない。
【0036】
すなわち、これらの信号が一定期間(T1)入力されないということは電池パック11が車両10に搭載されていない、または搭載されていない可能性が高いことを意味する。したがって無線IC32は所定の信号が一定期間入力されなかった場合、電池制御装置40との通信が遮断されたと判定する。そして無線IC32は電池制御装置40との通信が遮断されたと判定した場合、電池パック11が車両10から取り外されたと判定する。このような無線IC32の機能(無線IC32のCPU322の機能)は「判定部」に相当する。
【0037】
他の判定方法として、図6に示すように、外部装置70からの信号が用いられてもよい。外部装置70の一例は、車両を検査する際に用いられる検査装置である。このような外部装置70から無線アンテナ72を介して通信が遮断されていることを知らせる信号を無線IC32が受信したとき、無線IC32は電池制御装置40との通信が遮断されたと判定してもよい。
【0038】
なお図6では、電池パック11が車両10から取り外されたか否かを判定するための方法を説明したが、「電池モジュール21が電池パック11から取り外されたか否か」についても同様の方法で判定可能である。
【0039】
次に図7を参照して、電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定された後の処理について説明する。図7では電池モジュール21が電池パック11から取り外される前において、電池パック11は車両10に取り付けられているものとする。電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定されたとき、電池監視装置30(無線IC32)は、電池モジュール21が電池パック11に取り付けられた状態において実施していなかった機能を実施する。「電池モジュール21が電池パック11に取り付けられた状態において実施していなかった機能」とは、電池モジュール21が電池パック11に取り付けられた状態においては、電池制御装置40が実施していた機能を意味する。すなわち、電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定されたとき、無線IC32は、電池モジュール21が電池パック11に取り付けられた状態においては電池制御装置40が実施していた機能を電池制御装置40に代わって実施する。無線IC32が代替して実施する機能は、電池制御装置40が実施していた機能の全部でもよいし、一部でもよい。ここでは無線IC32が代替して実施する機能は、電池制御装置40が実施していた機能の一部として説明する。無線IC32が代替して実施する際の目的は、本来の目的とは異なる。この点については後述する。
【0040】
電池モジュール21が電池パック11に取り付けられた状態において電池制御装置40が実施していた機能の一つとして、上述した電圧均等化指示信号の送信が挙げられる。電圧均等化指示信号とは、各電池セル22の電圧を均等化させるために電池制御装置40が電池監視装置30(無線IC32)に送信する信号である。この信号は無線IC32からさらに監視IC31に送信される。監視IC31は電圧均等化回路80を駆動させて各電池セル22の電圧を均等化させる。電圧均等化回路80とは、電池セル22を電源として、所定の電流を出力する回路である。
【0041】
電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定された後、取り外される前は電池制御装置40が実施していた電圧均等化指示信号の送信を無線IC32が実施する。具体的には無線IC32は電圧均等化指示信号を監視IC31に送信する。ここで、電池制御装置40が電圧均等化指示信号を送信する目的は、各電池セル22の電圧を均等化させることである。上述したように無線IC32が電圧均等化指示信号を送信する目的は、この本来の目的とは異なる。つまり、無線IC32が電圧均等化指示信号を送信する目的は、各電池セル22の電圧を均等化させることではない。無線IC32が電圧均等化指示信号を送信する目的は、各電池セル22のSOHの演算に用いられるパラメータを測定するためである。したがって無線IC32はそれぞれの電池セル22に接続される電圧均等化回路80のすべてが駆動するように電圧均等化指示信号を監視IC31に送信する。
【0042】
図7に示すように監視IC31は指示に従い電圧均等化回路80を駆動させる。監視IC31は少なくとも電圧均等化回路80を流れる電流及び電圧均等化回路80に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する。もちろん、監視IC31は電流及び電圧の両方を測定してもよいし、そのときの温度を測定してもよい。温度測定には一例としてセルサーミスタを用いればよい。
【0043】
監視IC31は、測定した電流などを無線IC32に送信する。無線IC32は監視IC31から取得した電流などを用いて電池セル22の電池状態を演算する。本実施形態において「電池セル22の電池状態」とは電池セル22のSOH(State Of Health)を意味する。SOHは健全状態、劣化状態などと呼ばれることもある。SOHの演算方法の一例について説明する。一般にSOHとして、容量維持率と内部抵抗の増加率の2つの指標が知られている。「容量維持率」とは、新品の電池の満容量に対する現在の電池の満容量の比率である。「内部抵抗の増加率」とは、電池の劣化と共に増加する内部抵抗の増加率である。電池の外部から測定可能な物理量は、電流、電圧、温度であり、SOHを直接測定することは難しい。そこでOCV推定法(Open Circuit Voltage)、非線形カルマンフィルタなどの方法が知られている。無線IC32はこれらの方法を用いてSOHを演算する。なお、上記の2つの指標の他に、SOC、または電池の内部抵抗を用いてSOHを演算する方法も知られているため、無線IC32はこれらを用いてSOHを演算してもよい。なお、電池モジュール21が電池パック11から取り外された場合、無線IC32は電池セル22を電源として駆動する。
【0044】
このように本実施形態によれば、電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定された後、無線IC32は所定のタイミングで電池セル22を放電させてSOHを演算する。上述したように従来技術では取り外された後に充放電を行うことがないため、取り外された後のSOHを把握することができない。これに対し、本実施形態では、電池セル22を放電させてSOHを演算するため、取り外された後のSOHを把握することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定された後、取り外される前は電池制御装置40が実施していた電圧均等化指示信号の送信を無線IC32が実施する。電池制御装置40が電圧均等化指示信号を送信する目的は、各電池セル22の電圧を均等化させることであるが、無線IC32が電圧均等化指示信号を送信する目的は、これとは異なり、SOHの演算に用いられるパラメータを測定するためである。すなわち、本実施形態では、無線IC32は、本来の目的とは異なる目的で電池制御装置40が実施していた機能を利用する。このような既存の機能を異なる目的で利用することにより、新たな機能、装置などの追加が不要となり、コスト低減に寄与する。
【0046】
図7では、電池モジュール21が電池パック11から取り外される前に電池制御装置40が実施していた機能として電圧均等化指示信号の送信を取り上げたが、これに限定されない。要するに、電池セル22から電流を取り出すことができれば足りるため、例えば、図8に示すようにモジュール均等化回路81に駆動信号を送信する機能を無線IC32が代替してもよい。また、電池制御装置40は電池セル22の温度状態を調整するための回路、電池セル22のインピーダンスを測定するための回路などを駆動する機能も有するが、これらの機能を無線IC32が代替してもよい。なお、上述と同様に無線IC32がこれらの回路を駆動させる目的は、本来の目的とは異なり、SOHの演算に用いられるパラメータを測定するためである。電圧均等化回路80及びモジュール均等化回路81は、電池監視装置30に設けられるものとして説明したが、これに限定されない。
【0047】
次に図9のフローチャートを参照して、電池監視装置30(無線IC32及び監視IC31)の一動作例について説明する。図9に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0048】
ステップS101において無線IC32は、電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定された後、所定のタイミングにおいて、取り外される前は電池制御装置40が実施していた電圧均等化指示信号を送信する。これにより電圧均等化回路80が駆動する。所定のタイミングは、例えば実験、シミュレーションなどを通じて予め設定される。
【0049】
処理はステップS102に進み、監視IC31は、少なくとも電圧均等化回路80を流れる電流及び電圧均等化回路80に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する。ステップS102の処理は所定時間が経過するまで繰り返し実行される(ステップS103)。所定時間はカウンタ323によって測定される。所定時間が経過した後、処理はステップS104に進み、無線IC32は電圧均等化回路80を停止させる。電圧均等化回路80を駆動させる目的は電流などの測定であるから、電流などの測定が完了すれば電圧均等化回路80を駆動させる理由がなくなるからである。処理はステップS105に進み、無線IC32は測定された電流などを用いて電池セル22のSOHを演算し、演算結果を自己の記憶部(例えばメモリ)に記憶する。SOHの演算結果は、演算値そのもので記憶されてもよく、ヒストグラム形式で記憶されてもよい。
【0050】
記憶部に記憶されたSOHの演算結果が読み出されるタイミングは特に限定されないが、一例として電池モジュール21が電池パック11に取り付けられたときが挙げられる。
【0051】
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0052】
電池パック11または電池モジュール21は、モータ13に対して交換可能に構成されている。電池パック11または電池モジュール21は、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り付けられた状態において、モータ13に電力を供給可能な電池セル22と、電池セル22に接続された電圧均等化回路80と、電圧均等化回路80を流れる電流及び負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する監視IC31と、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り外された状態において、電池セル22を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで電池セル22から電圧均等化回路80に電流を流させ、その時に監視IC31により測定された測定結果を取得する無線IC32と、を備える。モータ13は「外部負荷」に相当する。電池セル22は「電池部」に相当する。電圧均等化回路80は「負荷部」に相当する。監視IC31は「測定部」に相当する。無線IC32は「制御部」に相当する。
【0053】
本実施形態によれば、電池パック11または電池モジュール21は、所定のタイミングで電池セル22を放電させて電流などを測定する。測定された電流などは、例えばSOHの演算に用いることができる。上述したように従来技術では取り外された後に充放電を行うことがないため、取り外された後のSOHを把握することができない。これに対し、本実施形態では、電池セル22を放電させてSOHを演算するため、取り外された後のSOHを把握することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、主に「電池モジュール21が電池パック11から取り外された状態」において電池モジュール21を構成する電池セル22のSOHを演算するものとして説明したが、これに限定されない。図4に示したように、「電池パック11が車両10から取り外された状態」において電池パック11を構成する電池セル22のSOHを演算するものであってもよい。また、近年では、電池モジュールを構成することなく電池セルが直接電池パックに搭載される方式、電池パックの筐体部分を車体に一体化し電池モジュールを車体に直納する方式、電池セルを車体に直納する方式などが登場している。
【0055】
したがって本実施形態は、「車両10に直接取り付けられた電池セル22が車両10から取り外された状態」において電池セル22のSOHを演算するものであってもよい。この場合、電池セル22に電池監視装置30が取り付けられることになる。また、「車両10に直接取り付けられた電池モジュール21が車両10から取り外された状態」において電池モジュール21を構成する電池セル22のSOHを演算するものであってもよい。すなわち、「電池ユニット」には「電池監視装置30が搭載された電池パック」、「電池監視装置30が搭載された電池モジュール」、または「電池監視装置30が搭載された電池セル」が含まれる。
【0056】
また、無線IC32は、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り外された状態において、監視IC31によって計測された測定結果に基づいて電池セル22のSOHを演算し記憶してもよい。これにより取り外された後のSOHを把握することが可能となる。
【0057】
また、無線IC32は、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り付けられた状態において、無線IC32と通信を行う電池制御装置40からの指示に従って監視IC31によって計測された測定結果を電池制御装置40に通知する。その一方で、無線IC32は、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り外された状態では、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り付けられた状態において実施していなかったSOHの演算を実施する。電池パック11または電池モジュール21が取り外される前は電池制御装置40が実施していたSOHの演算について、電池パック11または電池モジュール21が取り外された状態では無線IC32が実施する。これにより新たに機能、装置などを追加することなくSOHの演算が可能となる。
【0058】
無線IC32は、電池制御装置40との通信が遮断されたか否かを判定する。無線IC32は、電池制御装置40との通信が遮断されたと判定された場合、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り外されたと判断し、それを契機として、電圧均等化回路80に電池セル22から電流を流させる。これにより適切なタイミングでSOHの演算が可能となる。
【0059】
無線IC32は、電池制御装置40から起動指示信号または電池セル22の電圧均等化指示信号が一定期間入力されなかった場合、または外部装置70からの通信が遮断されていることを知らせる信号が入力された場合、電池制御装置40との通信が遮断されたと判定する。このように電池制御装置40または外部装置70から送信される信号を用いることにより、通信が遮断されたか否かを適切に判定することが可能となる。
【0060】
「負荷部」には、図7図8で説明したように電圧を均等化するために利用される回路(電圧均等化回路80、モジュール均等化回路81)が含まれる。また、「負荷部」には、電池セル22の温度状態を調整するために利用される負荷が含まれてもよい。「電池セル22の温度状態を調整するために利用される負荷」の一例は、電池パック11に内蔵され、電池セル22を温めるためのヒータである。また、「負荷部」には、電池セル22のインピーダンスを測定する際に電流を流すために利用される負荷が含まれてもよい。このような既存の負荷を用いることにより、新たに機能、装置などを追加することなくSOHの演算が可能となる。
【0061】
<第2実施形態>
次に、図10のフローチャートを参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では本来とは異なる目的で電圧均等化回路80を駆動して電池セル22を放電させてSOHを演算したが、第2実施形態では、電池セル22の自己放電率の推移を用いてSOHを演算する。
【0062】
図10に示すステップS201において無線IC32は、電池モジュール21が電池パック11から取り外されたと判定された後、所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過した後(ステップS201でYES)、処理はステップS202に進み、無線IC32は、自己放電に関するフラグをオンにする。なお無線IC32は、外部装置70からの指示に基づいて自己放電に関するフラグをオンにしてもよい。処理はステップS203に進み、無線IC32は、カウンタ323以外の機能を停止する。カウンタ323以外の機能を停止する理由は、自己放電に起因する電流以外の電流が回路に流れることを防止するためである。処理はステップS204に進み、所定時間の間、カウンタ323以外の機能が停止された状態で待機する(電池セル22を自己放電させる)。
【0063】
所定時間が経過した後(ステップS204でYES)、処理はステップS205に進み、無線IC32は停止した機能を復帰させる。処理はステップS206に進み、無線IC32は電池セル22の自己放電率の推移を演算する。自己放電率の推移の演算方法の一例として、ステップS204における所定時間の開始時における電池セル22の残容量(SOC)と、所定時間の終了時における電池セル22の残容量(SOC)の変化率に基づいて演算する方法が挙げられる。残容量は電池セル22の電圧、電流、温度などを用いて算出することができる。無線IC32は、電池セル22の自己放電率の推移に基づいてSOHを演算する。
【0064】
第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0065】
電池パック11または電池モジュール21は、モータ13に対して電池パック11または電池モジュール21が取り外された状態において、電池セル22を電源として動作するように構成されるとともに、電池セル22の自己放電率の推移を演算する無線IC32を備える。演算された自己放電率の推移は例えばSOHの演算に用いることができる。自己放電率の推移は新たな機能、装置などを追加することなく演算可能であるため、SOHを演算する際のコスト低減に寄与する。
【0066】
無線IC32は、所定時間、自己放電に係る時間を測定するカウンタ323以外の機能を停止させる。これにより自己放電に起因する電流以外の電流が回路に流れることを防止され、自己放電率の推移の演算精度が向上する。無線IC32は、所定時間の開始時における電池セル22の残容量と、所定時間の終了時における電池セル22の残容量との変化率に基づいて自己放電率の推移を演算する。そして無線IC32は、演算された自己放電率の推移に基づいて電池セル22のSOHを演算して記憶する。
【0067】
<その他の実施形態>
・上述の実施形態において無線IC32は、SOHの演算結果を自己の記憶部に記憶すると説明したがこれに限定されない。図11に示すように無線IC32は、SOHの演算結果を無線通信を用いて外部装置70(例えばクラウドサーバ)に送信してもよい。無線通信を用いることによりコネクタなどの物理的なインターフェースが不要となる。また、上述の実施形態において無線IC32は、測定された電流などを用いてSOHを演算すると説明したがこれに限定されない。図11に示すように無線IC32は測定された電流などを外部装置70に送信し、SOHの演算そのものについては外部装置70が実施してもよい。この場合、無線IC32は測定された電流などを記憶する機能と、送信する機能を有していれば足りる。また、無線IC32と外部装置70の両方がSOHを演算してもよい。この場合、両方の演算結果を突き合わせて演算結果の妥当性が比較されてもよい。演算結果が異なる場合、その違いを補正係数として次の演算時に用いてもよい。
【0068】
図12に示すように、本実施形態に係る電池モジュール21の他に、電池モジュール21とは仕様、規格などが異なる電池モジュール90~92が存在する場合、これらの電池モジュールによって演算されたSOHが一括して外部装置70に送信されてもよい。このような送信は例えば通信周波数を統一することにより実現する。これにより仕様、規格などが異なる電池モジュールを一括して管理することが可能となる。
【0069】
・電池セル22の蓄電状態が一定値以下の場合、無線IC32は、電池セル22から負荷部に電流を流させることを中止してもよい。これにより電池セル22の過放電が抑制される。
【0070】
・監視IC31の動作頻度について、電池パック11が車両10から取り外された後は、電池パック11が車両10から取り外される前と比較して、低くしてもよい。監視IC31の機能の一つに故障診断が含まれるが、電池パック11が車両10から取り外された後は、電池パック11が車両10から取り外される前と比較して故障診断の回数を減らしてもよい。電池パック11が車両10から取り外された後は、故障診断のニーズは低いからである。
【0071】
・無線IC32が電圧均等化回路80、モジュール均等化回路81などを駆動させるための信号として、電池制御装置40が用いる信号ではなく、専用の信号が用いられてもよい。すなわち、電圧均等化回路80などを駆動させることができれば、信号は限定されない。
【0072】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0073】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)であって、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記外部負荷に電力を供給可能な電池部(22)と、
前記電池部に接続された負荷部(80)と、
前記負荷部を流れる電流及び前記負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部(31)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで前記電池部から前記負荷部に電流を流させ、その時に前記測定部により測定された測定結果を取得する制御部(32)と、を備える電池ユニット。
[構成2]
前記制御部は、前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記測定結果に基づいて前記電池部の電池状態を演算し記憶する、構成1に記載の電池ユニット。
[構成3]
前記制御部は、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記制御部と通信を行う電池制御装置からの指示に従って前記測定結果を前記電池制御装置に通知する一方、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態では、前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において実施していなかった前記電池状態の演算を実施する、構成1または2に記載の電池ユニット。
[構成4]
前記制御部と前記電池制御装置との通信が遮断されたか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記判定部により前記電池制御装置との通信が遮断されたと判定された場合、前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外されたと判断し、それを契機として、前記負荷部に前記電池部から電流を流させて前記測定部に測定させる、構成3に記載の電池ユニット。
[構成5]
前記判定部は、前記電池制御装置から起動指示信号または前記電池部の電圧均等化指示信号が一定期間入力されなかった場合、または外部装置からの通信が遮断されていることを知らせる信号が入力された場合、前記電池制御装置との通信が遮断されたと判定する、構成4に記載の電池ユニット。
[構成6]
前記負荷部は、前記電池部の電圧を均等化するために利用される負荷、前記電池部の温度状態を調整するために利用される負荷、または前記電池部のインピーダンスを測定する際に電流を流すために利用される負荷のいずれかである、構成1~5のいずれか1項に記載の電池ユニット。
[構成7]
前記制御部は、前記外部装置と無線通信可能に構成されている、構成5に記載の電池ユニット。
[構成8]
前記制御部は、前記電池部の蓄電状態が一定値以下の場合、前記電池部から前記負荷部に電流を流させることを中止する、構成1~7のいずれか1項に記載の電池ユニット。
[構成9]
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)であって、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り付けられた状態において、前記外部負荷に電力を供給可能な電池部(22)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、前記電池部の自己放電率の推移を演算する制御部(32)と、を備える電池ユニット。
[構成10]
前記制御部は、
所定時間、自己放電に係る時間を測定するカウンタ以外の機能を停止させ、
前記所定時間の開始時における前記電池部の残容量と、前記所定時間の終了時における前記電池部の残容量との変化率に基づいて前記自己放電率の推移を演算し、
演算された前記自己放電率の推移に基づいて前記電池部の電池状態を演算して記憶する、構成9に記載の電池ユニット。
[構成11]
外部負荷(13)に対して交換可能に構成された電池ユニット(11,21,22)に搭載される電池監視装置(30)であって、
前記電池ユニットの電池部(22)に接続された負荷部(80)を流れる電流及び前記負荷部に印加される電圧のうち少なくともいずれか一方を測定する測定部(31)と、
前記外部負荷に対して前記電池ユニットが取り外された状態において、前記電池部を電源として動作するように構成されるとともに、所定のタイミングで前記電池部から前記負荷部に電流を流させ、その時に前記測定部により測定された測定結果を取得する制御部(32)と、を備える電池監視装置。
【符号の説明】
【0074】
11・・・電池パック、13・・・モータ、21・・・電池モジュール、22・・・電池セル、31・・・監視IC、32・・・無線IC、80・・・電圧均等化回路、30・・・電池監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12