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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176936
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】立体造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20231206BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20231206BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20231206BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20231206BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231206BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/135
B29C64/236
B29C64/232
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089531
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博史
(72)【発明者】
【氏名】江川 航平
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AG03
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】シェルの造形機構に対してその周囲においてコア材充填部の駆動機構が設けられる箇所が占める面積を比較的小さくすることができる立体造形装置を提供する。
【解決手段】コア材116を吐出するノズル120を有し、所定の支持台128上に支持されたシェル125におけるコア部126内にノズル120を挿入し、コア部126内にコア材116を充填するコア材充填部102を備え、コア材充填部102は、ノズル120を水平方向に移動させる水平方向駆動部150と、ノズル120を重力方向に移動させる重力方向駆動部161と、を有し、ノズル120を水平方向および重力方向に移動させ、水平方向駆動部150は、本体部153と、重力方向に延在する第1の回転軸151aを中心に本体部153に対して回動する第1アーム151と、重力方向に延在する第2の回転軸152aを中心に第1アーム151に対して回動する第2アーム152とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体造形物の外殻層であるシェルを、シェル材を用いて先に造形し、次に造形済の前記シェルに囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填することによって前記コア材を含む立体造形物を形成させる立体造形装置であって、
前記コア材を吐出するノズルを有し、所定の支持台上に支持された前記シェルにおける前記コア部内に前記ノズルを挿入し、前記コア部内に前記コア材を充填するコア材充填部を備え、
前記コア材充填部は、前記ノズルを水平方向に移動させる水平方向駆動部と、前記ノズルを重力方向に移動させる重力方向駆動部と、を有し、前記ノズルを水平方向および重力方向に移動させ、
前記水平方向駆動部は、本体部と、重力方向に延在する第1の回転軸を中心に当該本体部に対して回動する第1アームと、重力方向に延在する第2の回転軸を中心に当該第1アームに対して回動する第2アームとを有することを特徴とする、立体造形装置。
【請求項2】
前記支持台は、前記シェルを造形する装置であるシェル形成部が有し、
前記シェル形成部は、液相材料である前記シェル材を貯留する造形槽と、当該造形槽内に設けられた前記支持台と、前記シェル材を硬化させる光線を前記造形槽内の前記シェル材に照射する光学系と、を有し、
前記第1アームおよび前記第2アームは、前記シェルの造形にかかる前記光学系からの光線の照射範囲から退避可能であることを特徴とする、請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項3】
前記重力方向駆動部が前記ノズルを保持し、前記水平方向駆動部が前記重力方向駆動部を保持しており、前記水平方向駆動部の略先端部において前記ノズルが重力方向に移動し、
前記水平方向駆動部の前記本体部は所定位置に固定され、前記第1アームおよび前記第2アームの高さは一定であることを特徴とする、請求項1に記載の立体造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンティングなどの付加製造技術を用いて立体造形物を形成させる立体造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティング技術を用いた製造装置の名称として、広く3Dプリンタという言葉が使われている。3Dプリンタは、3次元のCADデータをもとにコンピュータで造形物の断面形状を計算し、該造形物を薄い輪切り状の断面構成要素に分割して、その断面構成要素を種々の方法で形成し、それを積層させて目的とする造形物を形成する立体造形装置である。3Dプリンティング技術は、国際的にはAdditive Manufacturing Technologyと同義語として使われる場合が多く、日本語訳として、付加製造技術が用いられている。
【0003】
近年は、3Dプリンタで形成した造形物に対しても、実製品の量産前の評価目的で外観だけでなく剛性や強度が要求されるようになり、金属3Dプリンタや複合材3Dプリンタが注目されている。特に、下記特許文献1に開示されている立体造形方法では、造形槽内で複数回のシェル層の造形とコア材の充填が繰り返された後、活性エネルギー線の照射または熱エネルギーの付与によりコア材を一括して硬化させることにより、コア材により形成される造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い造形物を造形することができる。
【0004】
特許文献1の立体造形方法では、光造形によるシェルの形成とコア材の充填とが交互に実施される。そのため、この立体造形方法を実施するための立体造形装置は、光造形手段とコア材の吐出手段とを備えている。
【0005】
一方、コア材の吐出手段において、コア材の充填はコア材を吐出するノズルがシェル層に囲われた部分に進入した状態で行う必要があるが、シェル層に囲われた部分の任意の位置からコア材を吐出するため、また、シェル層を光造形する際には光造形の邪魔にならないようノズルを光造形手段から退避させるため、コア材の吐出手段には、ノズルを3次元方向に移動させる移動機構が設けられている。
【0006】
このようにノズルを移動させる機構として、図12で示すような複数の直動機構(X軸駆動部231、Y軸駆動部232、Z軸駆動部233)が組み合わされた機構が一般的である。この機構によりノズル220はXYZ方向の任意の位置に移動可能となっており、シェル材221が貯留された造形槽211内の造形台228上に光造形されたシェル225に囲われた部分へ図中鎖線で示した退避位置からノズル220が移動し、シェル225内へのコア材216の充填が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-136923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12の例では、Z軸駆動部233がノズル220を保持し、この重力方向駆動部233をX軸駆動部231が保持し、また、このX軸駆動部231をY軸駆動部232が保持する。一方、この直動機構の組み合わせが剛性を有するためには、この組み合わせが門型の形状を有していることが好ましく、Y軸駆動部232は造形槽211の両横に設けられる。しかし、このようにY軸駆動部232を造形槽211の両横に設ける必要があることが、造形槽211とY軸駆動部232をカバー部241で囲い、また、制御部242を有する立体造形装置200全体のフットプリントを大きくする要因となるという問題があった。
【0009】
本願発明は、上記問題点を鑑み、シェルの造形機構に対してその周囲においてコア材充填部の駆動機構が設けられる箇所が占める面積を比較的小さくすることができる立体造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の立体造形装置は、立体造形物の外殻層であるシェルを、シェル材を用いて先に造形し、次に造形済の前記シェルに囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填することによって前記コア材を含む立体造形物を形成させる立体造形装置であって、前記コア材を吐出するノズルを有し、所定の支持台上に支持された前記シェルにおける前記コア部内に前記ノズルを挿入し、前記コア部内に前記コア材を充填するコア材充填部を備え、前記コア材充填部は、前記ノズルを水平方向に移動させる水平方向駆動部と、前記ノズルを重力方向に移動させる重力方向駆動部と、を有し、前記ノズルを水平方向および重力方向に移動させ、前記水平方向駆動部は、本体部と、重力方向に延在する第1の回転軸を中心に当該本体部に対して回動する第1アームと、重力方向に延在する第2の回転軸を中心に当該第1アームに対して回動する第2アームとを有することを特徴としている。
【0011】
この立体造形装置により、コア材充填部の水平方向駆動部が本体部と、第1の回転軸を中心に本体部に対して回動する第1アームと、第2の回転軸を中心に第1アームに対して回動する第2アームにより構成されることにより、門型の機構をシェルの造形機構をまたぐように配置してコア材充填部を形成させる場合と比較して、シェルの造形機構に対してその周囲においてコア材充填部の駆動機構が設けられる箇所が占める面積を比較的小さくすることができる。
【0012】
また、前記支持台は、前記シェルを造形する装置であるシェル形成部が有し、前記シェル形成部は、液相材料である前記シェル材を貯留する造形槽と、当該造形槽内に設けられた前記支持台と、前記シェル材を硬化させる光線を前記造形槽内の前記シェル材に照射する光学系と、を有し、前記第1アームおよび前記第2アームは、前記シェルの造形にかかる前記光学系からの光線の照射範囲から退避可能であると良い。
【0013】
こうすることにより、光学系によるシェル材の硬化工程の実行時には第1アームおよび第2アームがシェルの造形にかかる光学系からの光線の照射範囲から退避することにより、コア材充填部がシェルの造形を阻害しないようにすることができる。
【0014】
また、前記重力方向駆動部が前記ノズルを保持し、前記水平方向駆動部が前記重力方向駆動部を保持しており、前記水平方向駆動部の略先端部において前記ノズルが重力方向に移動し、前記水平方向駆動部の前記本体部は所定位置に固定され、前記第1アームおよび前記第2アームの高さは一定であると良い。
【0015】
こうすることにより、水平方向駆動部の各アームが立体造形装置の構成機器と衝突する可能性を低減させるができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の立体造形装置により、シェルの造形機構に対してその周囲においてコア材充填部の駆動機構が設けられる箇所が占める面積を比較的小さくすることができる立体造形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における立体造形装置を説明する概略図であり、平面図である。
図2】本発明の一実施形態における立体造形装置を説明する概略図であり、正面図である。
図3】本実施形態の立体造形装置におけるアームの移動可能範囲を説明する図である。
図4】本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を説明する図である。
図5】本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を説明する図である。
図6】本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を説明する図である。
図7】本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を説明する図である。
図8】本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を説明する図である。
図9】本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を説明する図である。
図10】本実施形態の立体造形装置においてシェル形成部とコア材充填部とを分離した状態を説明する図である。
図11】本発明の他の実施形態における立体造形装置を説明する概略図であり、平面図である。
図12】従来の立体造形装置を説明する概略図であり、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態における立体造形装置について、図1および図2を参照して説明する。図1は立体造形装置の正面図、図2は、立体造形装置の平面図である。
【0019】
立体造形装置100は、光造形装置であるシェル形成部101およびコア材充填部102を有し、シェル形成部101内で形成されたシェルにコア材充填部102によってコア材を充填する。充填されたコア材はシェルごとシェル形成部から取り出され、図示しない加熱炉内で熱硬化する。これにより、シェルの内部形状に対応した、コア材による任意の形状の立体造形物を得る。
【0020】
シェル形成部101は、いわゆる光造形方式の3Dプリンタであり、紫外線硬化樹脂であるシェル材121が貯留されている造形槽111、レーザ光学系112を主たる構成要素とする。また、シェル形成部101はカバー部141に囲われており、このカバー部141に隣接するように、制御部142が配置され、シェル形成部101の各構成機器の動作を制御するための制御盤は制御部142に内包されている。
【0021】
造形槽111中には液相材料であるシェル材121が貯留されており、図示しないシェル材調整系により、その液面位置を所定位置に維持、調整可能となっている。シェル材121としてはエポキシ系、アクリル系など公知のものが使用可能である。造形槽111中には造形台128が設けられている。造形台128はシェル造形のための土台であり、シェルおよび立体造形物の支持台であって、図示しない駆動機構により図中Z軸方向の任意の位置に移動かつ設置可能となっている。
【0022】
レーザ光学系112は紫外線レーザ光源114、走査光学系115とからなり、紫外線レーザ光源114から出射される紫外線レーザ光130は走査光学系115によりシェル材121の液面上(すなわちXY平面)の所定範囲を走査することが可能となっている。
【0023】
シェル材121は紫外線レーザ光130の照射により、図1にて硬化済み紫外線硬化樹脂123で示すように液面から所定の深さだけ硬化する。この硬化深さは0.1mmから0.2mm程度が一般的である。もちろん紫外線レーザ光源114の出力を調整することによりこの硬化深さを調整することが可能である。
【0024】
造形台128上面をシェル材121の液面からこの硬化深さ程度まで沈めた深さに位置させ、シェル材121の液面の任意の位置へ紫外線レーザ光130を照射することにより、造形台128上に任意の面積の硬化済み紫外線硬化樹脂123が形成される。
【0025】
造形台128上に硬化済み紫外線硬化樹脂123が形成された後、硬化深さ分だけ造形台128を下降させ、その後シェル材121の液面の任意の位置へ紫外線レーザ光130を照射することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂123上に硬化済み紫外線硬化樹脂123が積層される。
【0026】
そして、造形台128の下降とシェル材121液面への紫外線レーザ光130の照射とを繰り返し実施することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂123の積層が進行し、三次元形状の硬化済み紫外線硬化樹脂123を得ることができる。本発明では、このようにして造形された造形物をシェルと呼ぶ。このシェルは中空形状を有するコア材116を充填するための外殻層であり、シェルで囲われた部分のうち底面を有する部分をコア部と呼ぶ。
【0027】
コア材充填部102は、造形槽111内の造形台128上に造形されたシェルにおけるコア部へコア材116を吐出、充填する機構であり、コア材供給系113、ノズル移動系103を主たる構成要素とし、シェル形成部101に隣接する。
【0028】
コア材供給系113は液相材料であるコア材116をその内部に貯留するコア材タンク117中から、ポンプ119で配管系118b、118aを順に介してコア材116を送液、供給し、ノズル120の先端から吐出する。ノズル120はノズル移動系103により、図中XYZ軸各方向に移動かつ固定可能となっている。このため配管系118aはノズル120の移動に追随するようフレキシブルな構成及び材料となっている。コア材116は熱硬化性樹脂中に強化材が均一に分散されたもので、シェル材121同様エポキシ系、アクリル系など公知の熱硬化樹脂が使用可能である。また、コア材116の比重はシェル材121の比重よりも大きい。
【0029】
ノズル移動系103は、対象物を水平方向に移動させる水平方向駆動部150および水平方向駆動部150の先端部に設けられた重力方向駆動部161を有し、水平方向駆動部150によりノズル120は水平方向(XY方向)に移動し、重力方向駆動部161によりノズル120は重力方向(Z軸方向)に移動する。
【0030】
水平方向駆動部150は、2本のアームである第1アーム151、第2アーム152、および本体部153を有している。第1アーム151は水平方向に延在する略平板状のアームであり、Z軸方向に延在する軸である第1の回転軸151aにおいて本体部153と連結され、所定位置で固定されている本体部153に対して、第1アーム151は第1の回転軸151aを回転中心としてモータ駆動などにより回転移動する。第2アーム152は水平方向に延在する略平板状のアームであり、Z軸方向に延在する軸である第2の回転軸152aにおいて第1アーム151と連結され、第1アーム151に対して第2アーム152は第2の回転軸152aを回転中心としてモータ駆動などにより回転移動する。すなわち、水平方向駆動部は、いわゆるシリアルリンクロボットの形態を有する。
【0031】
重力方向駆動部161は、第2アーム152の略先端部に取り付けられた、対象物をZ軸方向に移動させる駆動ユニットであり、第1アーム151および第2アーム152が動作することによって重力方向駆動部161の水平方向の位置が変化する。
【0032】
重力方向駆動部161の下端部にはノズル120が固定されており、重力方向駆動部161が動作することによりノズル120は上下方向に移動する。これに水平方向駆動部150の動作が加わることにより、ノズル120は3次元方向に移動することが可能となっている。
【0033】
また、水平方向駆動部150の本体部153は、シェル形成部101に隣接する架台162に載置、固定されている。すなわち、本体部153は、シェル形成部101の外部に固定されている。そして、第1アーム151および第2アーム152は、シェル形成部101を囲うカバー部141に設けられた開口を通ってシェル形成部101の造形槽111の上方まで進入可能となっている。
【0034】
また、水平方向駆動部150において第1の回転軸151aおよび第2の回転軸152aはZ軸方向に延在する軸であるため、これらの回転軸を回転中心として第1アーム151および第2アーム152が回転移動しても、第1アーム151および第2アーム152の高さは変わらず、一定である。そして、本体部153が架台162に載置、固定されていることにより、第1アーム151および第2アーム152は造形槽111の上端部よりも高い位置にあるよう、調節されている。そのため、第1アーム151および第2アーム152が造形槽111の上方まで進入する際に第1アーム151および第2アーム152が造形槽111と衝突することは無い。
【0035】
また、本実施形態では、架台162にはコア材充填部102の動作を制御する制御盤が内包されている。すなわち、シェル形成部101の制御盤(制御部142が内包)とコア材充填部102の制御盤とが別個に設けられており、シェル形成部101の制御盤とシェル形成部101を構成する各機器をつなぐ配線、配管は、コア材充填部102の制御盤とコア材充填部102を構成する各機器をつなぐ配線、配管とは纏めて束ねられることなく、互いに分離されるよう配置されている。
【0036】
また、コア材タンク117、ポンプ119も架台162の内部に配置されても良い。
【0037】
図3は、本実施形態の立体造形装置におけるアームの水平方向の移動可能範囲を説明する図である。
【0038】
2つの軸である第1の回転軸151aおよび第2の回転軸152aを回転中心として第1アーム151および第2アーム152が動作することによる第2アーム152の先端部分の移動可能範囲(≒ノズル120の移動範囲)を図3上においてハッチングで示している。
【0039】
このハッチングは、最大限の移動範囲を表したものであり、実際に立体造形装置100が動作する際には、ノズル120からのコア材116の吐出は造形台128上に形成されたシェルが有するコア部に対して行われるため、ノズル120の移動範囲は造形台128全体をカバーできていれば足りる。そのため、たとえば図3の破線でハッチングした部分は移動範囲から外すようにしても良い。なお、図3において造形槽111の右下部よりも右方でカバー部141の外側に位置する部分をノズル120の移動範囲に残しているのは、そこがシェル125の造形を阻害しないことを目的としてシェル形成部101によるシェル造形動作中にノズル120および第1アーム151、第2アーム152が造形槽111から退避する場所であるためである。
【0040】
このようにノズル120の移動機構が水平方向駆動部150により構成され、かつ水平方向駆動部150の移動範囲を可能な限り狭めることにより、仮に図12のように門型の機構がシェル形成部をまたぐように配置してコア材充填部を形成させる場合と比較して、シェルの造形機構に対してその周囲においてコア材充填部の駆動機構が設けられる箇所が占める面積を比較的小さくすることができるため、立体造形装置全体のフットプリントを比較的小さくすることができる。
【0041】
次に、本実施形態の立体造形装置における立体造形物の製造過程を図4乃至9を用いて説明する。
【0042】
まず、シェル形成部101が動作し、造形槽111内の造形台128上にシェル125が形成される。その様子を図4および図5に示す。図4は正面図であり、図5は平面図である。
【0043】
造形台128上へのシェル125の形成では、前述の通りシェル材121液面への紫外線レーザ光130の照射と造形台128の下降とが繰り返し実施されることにより、硬化済み紫外線硬化樹脂の積層が進行し、三次元形状のシェル125を得ることができる。このとき、水平方向駆動部150およびノズル120がシェル材121液面への紫外線レーザ光130の照射を邪魔することが無いよう、第1アーム151、第2アーム152、およびノズル120はシェル形成部101の外側へ退避している。また、本実施形態では、図4における高さhで示すように、ノズル120の下端部は造形槽111の上端部よりも高い位置となっている。また、図5に示すようにノズル120はカバー部141の外側にまで退避している。なお、本説明では、このようにシェル形成部101によるシェルの造形を邪魔しないように第1アーム151、第2アーム152、およびノズル120がとる位置を退避位置とも呼ぶ。
【0044】
造形台128上にシェル125が造形された後、次に、水平方向駆動部150が動作することによって、ノズル120が上記の退避位置からシェル125の内壁面が形成するコア部126の上方まで移動する。その様子を図6および図7に示す。図6は正面図であり、図7は平面図である。
【0045】
水平方向駆動部150が動作することによってノズル120は水平移動するが、図4に示した通りノズル120の下端部は造形槽111の上端部より高い位置にあるため、ノズル120は造形槽111に衝突すること無くコア部126の上方までノズル120が移動することができる。なお、本実施形態では、コア部126の略中央部にノズル120が位置するように移動しているが、必ずしもその必要は無く、たとえばコア部126の略隅部にノズル120が位置するように移動しても良い。
【0046】
次に、図8に示すように、重力方向駆動部161が動作することによってノズル120が下降する。これによりノズル120がコア部126へ進入し、ノズル120の下降が完了した後、ノズル120の下端からのコア材116の吐出、充填が実施される。
【0047】
コア材116の吐出、充填の工程は、シェル125が造形槽111内のシェル材121に浸漬した状態で実施され、コア材116の充填前にはコア部126にはシェル材121が存在する。そして、シェル材121より比重が大きいコア材116が充填されていくにしたがって、シェル材121は押し上げられ、シェル125の上部に設けられた開口を経てコア部126からシェル125の外部へシェル材121が押し出される。すなわち、シェル材121からコア材116への置換が行われる。
【0048】
最後に、コア部126へのコア材116の充填が完了した後、図9に示すように、重力方向駆動部161が動作することによってノズル120が上昇する。これによりノズル120がコア部126から退避し、ノズル120の退避が完了した後、次に水平方向駆動部150が動作し、図4および図5に示したように第1アーム151、第2アーム152、およびノズル120が退避位置へ移動する。
【0049】
上記の通りシェル125が有するコア部126へコア材116を充填した後、シェル125ごとコア材116は造形台128から取り外され、図示しない加熱炉に載置される。そして、コア部126に充填された状態のコア材116へ熱エネルギーを付与することにより、コア材116は熱硬化する。この熱硬化したコア材116およびそれを囲うシェル125が合わさったものが本説明における立体造形物であり、所望の形状を有するコア部126にコア材116を充填してから熱硬化させることにより、所望の形状の立体造形物を得ることができる。また、本方法によるとコア材116により形成される立体造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することができる。
【0050】
次に、本実施形態の立体造形装置においてシェル形成部とコア材充填部とを分離した状態を図10に示す。
【0051】
本実施形態では、前述の通りコア材充填部102はシェル形成部101の外部に設けられており、また、シェル形成部101の制御盤とコア材充填部102の制御盤とが別個に設けられ、シェル形成部101の制御盤とシェル形成部101を構成する各機器をつなぐ配線、配管は、コア材充填部102の制御盤とコア材充填部102を構成する各機器をつなぐ配線、配管とは纏めて束ねられることなく、互いに分離されるよう配置されている。そのため、図10のようにシェル形成部101に対してコア材充填部102の付け外しが容易であり、コア材充填部102を一時切り離してシェル形成部101のみを光造形装置として用いることができ、また、既存の3Dプリンタをシェル形成部101として用いるようコア材充填部102をその近傍に配置することによって立体造形装置100を形成させることもできる。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態における立体造形装置を図11に示す。
【0053】
この実施形態における立体造形装置100では、シェル形成部101の外部に捨て打ち部104が配置されている。そして、立体造形物の製造が行われていないときなどしばらくノズル120からのコア材116の充填を必要としないときに、ノズル120がシェル形成部101から退避して捨て打ち部104にコア材116を吐出する、すなわち捨て打ちを行う。このようにコア材116の捨て打ちを行うことにより、ノズル120を含むコア材供給系113において放置によってコア材116の粘度が上昇することを防ぎ、再び立体造形物の製造にノズル120が供する際のコア材116の吐出不良を防ぐことができる。また、シェル形成部101の外部で捨て打ちが行われることにより、シェル形成部101の内部をコア材116で汚すことなく、コア材116の捨て打ちを実施することができる。
【0054】
このようにコア材116の捨て打ちを行う以外にも、ノズル120がシェル形成部101から退避した状態で、たとえば吐出性能の確認のためのコア材116の吐出、計量が行われても良く、また、ノズル120の清掃、交換など保守作業が行われても良い。
【0055】
以上の立体造形装置により、シェルの造形機構に対してその周囲においてコア材充填部の駆動機構が設けられる箇所が占める面積を比較的小さくすることができる立体造形装置を提供することが可能である。
【0056】
ここで、本発明の立体造形装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では水平方向駆動部150はシェル形成部101に隣接する架台162に載置されているが、それに限らずたとえば水平方向駆動部150の本体部153がシェル形成部101から張り出すように本体部153の側面がシェル形成部101に固定される形態であっても良い。
【0057】
また、上記の説明では、シェル形成部101によるシェル造形動作中に平面視において第1アーム151および第2アーム152が造形槽111から完全に退避するようにしているが、それに限らず、少なくともシェル125の造形にかかる紫外線レーザ光源114からの紫外線レーザ光130の走査範囲(照射範囲)から退避できる位置であれば、仮に第1アーム151や第2アーム152が平面視において造形槽111と重なっていても構わない。
【0058】
また、上記の説明では、水平方向駆動部150の略先端に重力方向駆動部161が設けられ、重力方向駆動部161によりノズル120が上下動する際に第1アーム151および第2アーム152は上下しない構成であるが、重力方向駆動部に水平方向駆動部が取り付けられ、ノズルとともに水平方向駆動部の各アームも上下動する構成であっても良い。
【0059】
また、上記の説明では、水平方向駆動部150は2本のアームを有しているが、3本以上のアームを有していても良い。
【0060】
また、上記の説明では、加熱炉によって熱硬化したコア材116とそれを囲うシェル125とを合わせて立体造形物と呼んでいるが、熱硬化したコア材116のみを立体造形物と呼んでも良い。
【0061】
また、図4乃至図9に示したシェル125の造形とコア材116の充填を複数回交互に実施してからコア材116の熱硬化が行われても良い。
【0062】
また、上記の説明では、シェル形成部は光造形方式の3Dプリンタであるが、それに限らず、たとえば粉末焼結積層方式や熱溶解積層方式の3Dプリンタなどであっても良い。
【符号の説明】
【0063】
100 立体造形装置
101 シェル形成部
102 コア材充填部
103 ノズル移動系
104 捨て打ち部
111 造形槽
112 レーザ光学系
113 コア材供給系
114 紫外線レーザ光源
115 走査光学系
116 コア材
117 コア材タンク
118a 配管系
118b 配管系
119 ポンプ
120 ノズル
121 シェル材
123 硬化済み紫外線硬化樹脂
125 シェル
126 コア部
128 造形台
130 紫外線レーザ光
141 カバー部
142 制御部
150 水平方向駆動部
151 第1アーム
151a 第1の回転軸
152 第2アーム
152a 第2の回転軸
153 本体部
161 重力方向駆動部
162 架台
200 立体造形装置
211 造形槽
216 コア材
220 ノズル
221 シェル材
225 シェル
228 造形台
231 X軸駆動部
232 Y軸駆動部
233 Z軸駆動部
241 カバー部
242 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12