(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176939
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】端子対およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/646 20110101AFI20231206BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20231206BHJP
【FI】
H01R13/646
H01R12/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089535
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 英央
(72)【発明者】
【氏名】永田 唯
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC19
5E021FC40
5E021LA11
5E021LA15
5E223AB45
5E223AB59
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB22
5E223CB24
5E223CB26
5E223CC07
5E223CD01
5E223DA25
5E223DA33
5E223DB11
5E223EB03
5E223EB14
5E223EB26
(57)【要約】
【課題】位置精度および変形強度の高い端子対、およびこれを含むコネクタを提供する。
【解決手段】第1端子10と第2端子20とを含む端子対TPが、直交3方向をX方向、Y方向、Z方向として、Z方向に見たときにX方向に延びる第1基準線L1に対して対称である第1配列領域A1と、Y方向に見たときにX方向に延びる第2基準線に対して対称である第2配列領域A2と、第1配列領域A1と第2配列領域A2との間の配列変換領域CAとを含む。配列変換領域CAが、第1配列領域A1の対向縁部33e,43eから直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びるZ方向折曲板部15,25と、Z方向に見たときにZ方向折曲板部15,25と第2配列領域A2との間で第2配列領域A2に向かって互いに近づくように曲げられたY方向曲げ形状部16,26と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向として、対応する相手端子に対してX方向にそれぞれ嵌合される第1端子および第2端子を含む差動信号伝送用の端子対であって、
前記第1端子および前記第2端子のそれぞれが、互いにY方向に並び且つZ方向に見たときにX方向に延びる第1基準線に対して対称である第1配列で配置された第1配列領域と、前記第1配列領域に対してX方向に配置された第2配列領域であって、互いにZ方向に並び且つY方向に見たときにX方向に延びる第2基準線に対して対称である第2配列で配置された第2配列領域と、前記第1配列領域と前記第2配列領域との間に配置され、前記第1配列から前記第2配列へと配列が変換される配列変換領域と、を含み、
前記第1端子および前記第2端子の前記配列変換領域が、前記第1端子および前記第2端子の第1配列領域においてY方向に互いに対向しX方向に延びる対向縁部から直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びるZ方向折曲板部と、Z方向に見たときに前記Z方向折曲板部と前記第2配列領域との間で前記第2配列領域に向かって互いに近づくように曲げられたY方向曲げ形状部と、を含む、端子対。
【請求項2】
前記第1端子および前記第2端子の前記第1配列領域が、X方向およびY方向の2方向に延びる基板実装面に実装可能であって、X方向に延びる第1接続部を含み、
前記第1端子および前記第2端子の前記第2配列領域が、前記対応する相手端子と嵌合可能であって、前記X方向に延びる第2接続部を含む、請求項1に記載の端子対。
【請求項3】
前記第1端子および前記第2端子の前記第1配列領域は、前記第1接続部と前記配列変換領域との間に配置され、X方向およびY方向の2方向に延びる板面を有する保持板部を含み、
前記第1端子および前記第2端子の前記Z方向折曲板部は、前記第1端子および前記第2端子の前記保持板部どうしの対向縁部から直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びている、請求項2に記載の端子対。
【請求項4】
Z方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記Z方向折曲板部は、前記第1基準線に対して対称であり、且つ、前記第1端子および前記第2端子の前記Y方向曲げ形状部は、前記第1基準線に対して対称である、請求項2に記載の端子対。
【請求項5】
Y方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記Y方向曲げ形状部は、前記第2基準線に対して対称である、請求項4に記載の端子対。
【請求項6】
Y方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記Z方向折曲板部は、前記第2基準線に対して対称である、請求項5に記載の端子対。
【請求項7】
Z方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記第2接続部の板厚中心に沿ってX方向に延びる第3基準線が、前記第1基準線に対してY方向にオフセットされている、請求項2~6の何れか一項に記載の端子対。
【請求項8】
前記第1端子および前記第2端子は、板金材で形成され、
前記第1端子および前記第2端子の前記第2接続部のそれぞれは、X方向およびZ方向に延びる非打ち抜き面である一対の接触面を含み、
前記一対の接触面は、前記第1基準線に対する前記第3基準線のオフセット方向に向く接触面と、前記オフセット方向の反対方向に向く接触面と、を含む、請求項7に記載の端子対。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項に記載の端子対と、
前記端子対を保持するハウジングと、を含むコネクタ。
【請求項10】
前記端子対が複数設けられ、
前記ハウジングが、前記複数の端子対をY方向に並べて保持する、請求項9に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子対およびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
差動信号伝送用のコネクタに用いる端子対として、下記の特許文献1に記載された端子対がある。この端子対は、第1端子および第2端子を含む。第1端子および第2端子は、プラグから基板に向かって、先端部、ツイスト部、終端部の順序で各構成要素を含む。先端部は、短冊形状であって、いずれも所定の鉛直面上に位置して水平方向かつプラグから基板に向かう方向に延伸される。
【0003】
ツイスト部は、第1端子および第2端子の該当箇所を90°捩じることにより形成される。終端部は、短冊形状であって、いずれも所定の水平面上に位置して水平方向かつプラグから基板に向かう方向に延伸される。先端部が、所定の鉛直面上に位置することにより、コネクタの幅を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、端子が、ツイスト部で90°捩じられるため、終端部や先端部の位置精度が、確保され難い。このため、終端部において基板に対する実装不良が発生したり、先端部において相手端子に対する嵌合不良が発生したりする等、接続の信頼性に影響する場合がある。また、捩じられる部分では、端子素材の板厚が、薄くなる傾向にあり、端子の変形強度が低下し易い。このため、伝送特性に影響する場合がある。
【0006】
そこで、本発明の好ましい一実施形態は、位置精度および変形強度の高い端子対、およびこれを含むコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい一実施形態は、直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向として、対応する相手端子(91,92)に対してX方向にそれぞれ嵌合される第1端子(10)および第2端子(20)を含む差動信号伝送用の端子対(TP)を提供する。前記第1端子および前記第2端子のそれぞれが、互いにY方向に並び且つZ方向に見たときにX方向に延びる第1基準線(L1)に対して対称である第1配列で配置された第1配列領域(A1)と、前記第1配列領域に対してX方向に配置された第2配列領域(A2)であって、互いにZ方向に並び且つY方向に見たときにX方向に延びる第2基準線(L2)に対して対称である第2配列で配置された第2配列領域と、前記第1配列領域と前記第2配列領域との間に配置され、前記第1配列から前記第2配列へと配列が変換される配列変換領域(CA)と、を含む。前記第1端子および前記第2端子の前記配列変換領域が、前記第1端子および前記第2端子の第1配列領域においてY方向に互いに対向しX方向に延びる対向縁部(33e,43e)から直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びるZ方向折曲板部(15,25)と、Z方向に見たときに前記Z方向折曲板部と前記第2配列領域との間で前記第2配列領域に向かって互いに近づくように曲げられたY方向曲げ形状部(16,26)と、を含む。
【0008】
この構成によれば、配列変換領域が、Z方向折曲板部とY方向曲げ形状部という2方向の曲げを用いて形成されるので、特開2022-22498号公報に記載の技術のように、ねじりを用いる場合と比較して、位置精度が高く、また、変形強度が高い。特に、第1端子および第2端子のZ方向折曲板部が、第1端子および第2端子の互いの第1配列領域の対向縁部から直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びる板部で構成される。このため、位置精度をより高くすることができる。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
【0010】
1つの好ましい実施形態では、前記第1端子および前記第2端子の前記第1配列領域が、X方向およびY方向の2方向に延びる基板実装面(Ka)に実装可能であって、X方向に延びる第1接続部(11,21)を含む。前記第1端子および前記第2端子の前記第2配列領域が、前記対応する相手端子と嵌合可能であって、前記X方向に延びる第2接続部(12,22)を含む。この構成によれば、端子対の位置精度および変形強度を高くすることにより、基板と相手コネクタとの間の伝送における接続信頼性および伝送特性を良好にすることができる。
【0011】
1つの好ましい実施形態では、前記第1端子および前記第2端子の前記第1配列領域は、前記第1接続部と前記配列変換領域との間に配置され、X方向およびY方向の2方向に延びる板面を有する保持板部(14,24)を含む。前記第1端子および前記第2端子の前記Z方向折曲板部は、前記第1端子および前記第2端子の前記保持板部どうしの対向縁部(33e,43e)から直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びている。この構成によれば、位置精度および変形強度をより高くすることができる。
【0012】
1つの好ましい実施形態では、Z方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記Z方向折曲板部は、前記第1基準線に対して対称であり、且つ、前記第1端子および前記第2端子の前記Y方向曲げ形状部は、前記第1基準線に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0013】
1つの好ましい実施形態では、Y方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記Y方向曲げ形状部は、前記第2基準線に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0014】
1つの好ましい実施形態では、Y方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記Z方向折曲板部は、前記第2基準線に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0015】
1つの好ましい実施形態では、Z方向に見たときに、前記第1端子および前記第2端子の前記第2接続部の板厚中心に沿ってX方向に延びる第3基準線(L3)が、前記第1基準線に対してY方向にオフセットされている。この構成によれば、基板と相手コネクタとの伝送において、Y方向の小型化を達成しつつ、Y方向曲げ形状部の対称性を容易に確保することができ、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0016】
1つの好ましい実施形態では、前記第1端子および前記第2端子は、板金材で形成され、前記第1端子および前記第2端子の前記第2接続部のそれぞれは、X方向およびZ方向に延びる非打ち抜き面である一対の接触面(12c,12e;22c,22e)を含み、前記一対の接触面は、前記第1基準線に対する前記第3基準線のオフセット方向(YF)に向く接触面(12e;22e)と、前記オフセット方向の反対方向(YR)に向く接触面(12c;22c)と、を含む。この構成によれば、Y方向の小型化を達成しつつ、接触の信頼性を向上することができる。
【0017】
1つの好ましい実施形態は、前記端子対と、前記端子対を保持するハウジング(H1)と、を含むコネクタ(1)を提供する。この構成によれば、端子対を有するコネクタにおいて、前記端子対による効果が得られる。
【0018】
1つの好ましい実施形態では、前記端子対が複数設けられ、前記ハウジングが、前記複数の端子対をY方向に並べて保持する。この構成によれば、複数の端子対を有するコネクタにおいて、前記端子対による効果が得られ、また、Y方向の小型化を達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、位置精度および変形強度の高い端子対、およびこれを含むコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る端子対が相手端子と嵌合される前の状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、嵌合状態の端子対および相手端子の斜視図である。
【
図7A-7C】
図7Aは、嵌合前の端子対および相手端子の平面図である。
図7Bは、嵌合前の端子対および相手端子の側面図である。
図7Cは、嵌合前の端子対および相手端子の底面図である。
【
図8A-8C】
図8Aは、嵌合状態の端子対および相手端子の平面図である。
図8Bは、嵌合状態の端子対および相手端子の側面図である。
図8Cは、嵌合状態の端子対および相手端子の底面図である。
【
図9】
図9は、端子対を含むコネクタおよび相手コネクタの斜視図である。
【
図10】
図10は、嵌合方向から見たコネクタの斜視図である。
【
図11】
図11は、嵌合方向の反対方向から見たコネクタの斜視図である。
【
図12】
図12は、嵌合時の端子対および相手端子の周辺の構造の側面図である。
【
図14】
図14は、嵌合時の端子対および相手端子の周辺の構造を嵌合方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る端子対が相手端子と嵌合される前の状態の斜視図である。
図2は、嵌合状態の端子対および相手端子の斜視図である。
図3は端子対の拡大斜視図である。
【0023】
図1および
図2に示すように、端子対TPは、第1端子10および第2端子20を含む。第1端子10および第2端子20は、例えば銅合金製の板金材を用いた板金加工により形成されている。第1端子10および第2端子20は、差動信号伝送用であって、対応する相手端子(相手第1端子91および相手第2端子92)に対して嵌合方向であるX方向にそれぞれ嵌合される。ここで、直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向とする。
【0024】
図3に示すように、第1端子10は、第1接続部11と、第2接続部12と、を含む。第1端子10は、第1接続部11と第2接続部12との間に、接続位置調整部13と、保持板部14と、Z方向折曲板部15と、Y方向曲げ形状部16と、を含む。
【0025】
第2端子20は、第1接続部21と、第2接続部22と、を含む。第2端子20は、第1接続部21と第2接続部22との間に、接続位置調整部23と、保持板部24と、Z方向折曲板部25と、Y方向曲げ形状部26と、を含む。
【0026】
図1に示すように、第1端子10および第2端子20の第1接続部11,21は、X方向およびY方向の2方向に延びる基板実装面Ka(基板Kの表面)に実装可能であって、X方向に直線状に延びる。
【0027】
第1端子10および第2端子20の第2接続部12,22は、第1接続部11,21に対してX方向に配置される。
図2に示すように、第2接続部12,22は、対応する相手端子(相手第1端子91,相手第2端子92)と嵌合可能であって、X方向に直線状に延びる。
【0028】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、それぞれ、嵌合前の端子対TPおよび相手端子(相手第1端子91,相手第2端子92)の平面図、側面図および底面図である。
図8A、
図8Bおよび
図8Cは、それぞれ、嵌合状態の端子対TPおよび相手端子(相手第1端子91,相手第2端子92)の平面図、側面図および底面図である。嵌合前の端子対TP(
図7A~
図7C)が、
図8A~
図8Cに示すように、相手端子(相手第1端子91,相手第2端子92)に対してX方向に嵌合される。
【0029】
図1に示すように、相手第1端子91および相手第2端子92は、同じ構成であり、それぞれ、端子接続部93と、電線接続部94と、架橋部95と、を含む。架橋部95は、端子接続部93および電線接続部94の底壁部どうしを連結する。
図2に示すように、相手第1端子91および相手第2端子92の電線接続部94は、例えばシールドケーブル100の一対の被覆電線101,102の端末に、それぞれ圧着接続される。
【0030】
図1に示すように、電線接続部94は、X方向に延びる底壁部94aと、芯線圧着部94bと、被覆圧着部94cと、を含む。芯線圧着部94bは、底壁部94aの一部と、該一部の両側に延設される一対のバレル片であって、被覆電線101,102の芯線(図示せず)に圧着される一対のバレル片を含む。被覆圧着部94cは、底壁部94aの一部と、該一部の両側に延設される一対のバレル片であって、被覆電線101,102において前記芯線を覆う絶縁性の被覆部(図示せず)に圧着される一対のバレル片を含む。
【0031】
相手第1端子91および相手第2端子92の端子接続部93は、断面中空のボックス状をなす。端子接続部93は、底壁部93aと、頂壁部93bと、一対の側壁部93cと、弾性接触片93d(
図7Aを参照)と、係止突起93eと、を含む。端子接続部93の底壁部93aは、電線接続部94の底壁部94aと架橋部95を介してX方向に連なる。頂壁部93bは、底壁部93aと平行に対向する。一対の側壁部93cは、互いに対向し、底壁部93aと頂壁部93bとを連結する。
【0032】
図7Aに示すように、弾性接触片93dは、頂壁部93bから端子接続部93の内部に向けて延設され、
図8Aに示すように、対応する端子(第1端子10および第2端子20)と弾性接触する。係止突起93eは、図示しないインナハウジングを係止するための突起であり、頂壁部93bの外面に突出形成されている。
【0033】
図4は、端子対TPの平面図である。
図5は、端子対TPの側面図である。
図6は、端子対TPの底面図である。
図4~
図6に示すように、第1端子10および第2端子20のそれぞれは、第1配列領域A1と、第1配列領域A1よりもX方向に配置された第2配列領域A2と、第1配列領域A1と第2配列領域A2との間に配置された配列変換領域CAと、を含む。
【0034】
第1端子10および第2端子20の第1配列領域A1は、互いにY方向に並び、且つ
図4に示すようにZ方向に見たときにX方向に延びる第1基準線L1に対して対称である第1配列で配置された領域である。
【0035】
すなわち、第1端子10および第2端子20の第1配列領域A1は、
図5に示すようにY方向に見たときに、互いに重なる。また、第1端子10および第2端子20の第1配列領域A1は、
図4に示すようにZ方向に見たときに、第1基準線L1に対して対称な形状をなす。また、第1端子10の第1配列領域A1と第1基準線L1との距離d1が、第2端子20の第1配列領域A1と第1基準線L1との距離d2と等しくされている(d1=d2)。
【0036】
第1端子10および第2端子20の第2配列領域A2は、互いにZ方向に並び、且つ
図5に示すようにY方向に見たときにX方向に延びる第2基準線L2に対して対称である第2配列で配置された領域である。
【0037】
すなわち、第1端子10および第2端子20の第2配列領域A2は、
図4に示すようにZ方向に見たときに、互いに重なる。また、第1端子10および第2端子20の第2配列領域A2は、
図5に示すようにY方向に見たときに、第2基準線L2に対して対称な形状をなす。また、第1端子10の第2配列領域A2と第2基準線L2との距離D1が、第2端子20の第2配列領域A2と第2基準線L2との距離D2と等しくされている(D1=D2)。
【0038】
図4~
図6に示すように、第1端子10および第2端子20の配列変換領域CAは、第1配列領域A1と第2配列領域A2との間で、第1配列から第2配列へと配列が変換される領域である。
【0039】
第1端子10の第1配列領域A1は、第1接続部11と、接続位置調整部13と、保持板部14と、を含む。第1端子10の配列変換領域CAは、Z方向折曲板部15と、Y方向曲げ形状部16と、を含む。第2端子20の第1配列領域A1は、第1接続部21と、接続位置調整部23と、保持板部24と、を含む。第2端子20の配列変換領域CAは、Z方向折曲板部25と、Y方向曲げ形状部26と、を含む。
【0040】
第1端子10および第2端子20の第1接続部11,21は、一端11a,21aと、一端11a,21aに対してX方向に配置される他端11b,21bと、を含む。第1端子10および第2端子20の第2接続部12,22は、一端12a,22aと、X方向の先端である他端12b,22bと、を含む。
【0041】
図3に示すように、第1端子10および第2端子20の第2接続部12,22のそれぞれは、相手端子に対する一対の接触面12c,12e;22c,22eと、一対の接触面12c,12e;22c,22eに対して直交する打ち抜き面12p,22p(破断面)と、を含む。一対の接触面12c,12e;22c,22eのそれぞれは、X方向およびZ方向の2方向に延びる面であって、非打ち抜き面である。また、第2接続部12,22の一端12a,22aには、Z方向の両側に突出する突起12d,22dが突出形成されている。
【0042】
第1端子10の第1接続部11の一端11aから第2接続部12の他端12bまでの経路長は、第2端子20の第1接続部21の一端21aから第2接続部22の他端22bまでの経路長と等しくされている。これにより、送受信される差動信号の位相ずれが抑制される。
【0043】
接続位置調整部13,23は、第1接続部11,21の他端11b,21bからZ方向に直交状に延びる。接続位置調整部13,23は、第1接続部11,21の他端11b,21bと接続された一端13a,23aと、延設端である他端13b,23bと、を含む。
【0044】
接続位置調整部13,23は、Z方向の長さ(他端13b,23bの高さ位置)の設定により、第1接続部11,21に対する第2接続部12,22のZ方向の位置(基板実装面Kaからの第2接続部12,22の高さ位置に相当)を調整する機能を果たす。
【0045】
図3および
図4に示すように、保持板部14,24は、接続位置調整部13,23の他端13b,23bからX方向に隣接して配置される。保持板部14,24は、X方向およびY方向の2方向に延びる板面を有している。
【0046】
保持板部14,24は、接続位置調整部13,23の他端13b,23bから直交状にX方向に延びる第1板部31,41と、第1板部31,41の延設端から直交状にY方向の外方に延びる第2板部32,42と、第2板部32,42の延設端から直交状にX方向に延びる第3板部33,43と、を含む。第2板部32,42は、第1板部31,41と第3板部33,43とを連結し、一方で例えばプレス後のつなぎ桟として機能している。第2板部32,42の一端は、第3板部33,43に対してY方向の外方に突出するつなぎ形状としての突起32a,42aを形成している。
【0047】
図4に示すように、保持板部14,24の第3板部33,43は、Y方向に互いに対向しX方向に延びる対向縁部33e,43eを含む。Z方向折曲板部15,25は、保持板部14,24の第3板部33,43の対向縁部33e,43eの少なくとも一部から直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びる。
【0048】
図5に示すように、Z方向折曲板部15,25の延設端15b,25bは、保持板部14,24と接続される基端15a,25aに対して、Z方向に離隔し且つX方向に離隔した位置に配置されている。ただし、延設端15b,25bが、X方向に関して、基端15a,25aと同じ位置に配置されていてもよい。
【0049】
図4に示すようにZ方向に見たときに、Y方向曲げ形状部16,26は、Z方向折曲板部15,25と、第2配列領域A2にある第2接続部12,22との間で、第2配列領域A2(第2接続部12,22)に向かって互いに近づくように曲げられた形状を有している。Y方向曲げ形状部16,26は、Z方向折曲板部15,25の延設端15b,25bに接続された一端16a,26aと、第2接続部12,22の一端12a,22aと接続された他端16b,26bと、を含む。
【0050】
Z方向に見たときに(
図4を参照)、第1端子10および第2端子20のZ方向折曲板部15,25は、第1基準線L1に対して対称である。Z方向に見たときに、第1端子10および第2端子20のY方向曲げ形状部16,26は、第1基準線L1に対して対称である。
【0051】
また、Z方向に見たときに(
図4を参照)、第1端子10および第2端子20の第2接続部12,22の板厚中心に沿ってX方向に延びる第3基準線L3が、第1基準線L1に対して、Y方向のオフセット方向YFにオフセット量eで、オフセットされている。
【0052】
また、
図4に示すように、第2接続部12,22の一対の接触面12c,12e;22c,22e(X方向およびZ方向の2方向に延びる面であって、打ち抜き面22pでない非打ち抜き面)は、オフセット方向YFに向く接触面12e;22eと、オフセット方向YFの反対方向YR(反対側)に向く接触面12c;22cとで構成されている。
【0053】
また、
図5に示すようにY方向に見たときに、第1端子10および第2端子20のY方向曲げ形状部16,26は、第2基準線L2に対して対称である。また、Y方向に見たときに(
図5を参照)、第1端子10および第2端子20のZ方向折曲板部15,25は、第2基準線L2に対して対称であることが好ましい。
【0054】
本実施形態によれば、
図3に示すように、配列変換領域CAが、Z方向折曲板部15,25とY方向曲げ形状部16,26という2方向の曲げを用いて形成されるので、特開2022-22498号公報に記載の技術のように、ねじりを用いる場合と比較して、位置精度が高く、また、変形強度が高い。
【0055】
特に、
図4に示すように、第1端子10および第2端子20のZ方向折曲板部15,25が、第1端子10および第2端子20の互いの第1配列領域A1の対向縁部33e,43eから直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びる板部で構成される。このため、位置精度をより高くすることができる。
【0056】
また、
図3に示すように、第1端子10および前記第2端子20の第1配列領域A1が、X方向およびY方向の2方向に延びる基板実装面Kaに実装可能であって、X方向に延びる第1接続部11,21を含む。第1端子10および第2端子20の第2配列領域A2が、対応する相手端子91,92と嵌合可能であって、X方向に延びる第2接続部12,22を含む。この構成によれば、端子対TPの位置精度および変形強度を高くすることにより、基板Kと相手コネクタ200との間の伝送における接続信頼性および伝送特性を良好にすることができる。
【0057】
また、第1端子10および第2端子20の第1配列領域A1は、第1接続部11,21と配列変換領域CAとの間に配置され、X方向およびY方向の2方向に延びる板面を有する保持板部14,24を含む。また、第1端子10および第2端子20のZ方向折曲板部15,25は、第1端子10および第2端子20の保持板部14,24どうしの対向縁部33e,43eから直交状に折り曲げられ、Z方向の互いに逆向きに延びている。このため、位置精度および変形強度をより高くすることができる。
【0058】
また、Z方向に見たときに(
図4を参照)、第1端子10および第2端子20のZ方向折曲板部15,25は、第1基準線L1に対して対称であり、且つ、第1端子10および第2端子20のY方向曲げ形状部16,26は、第1基準線L1に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0059】
また、Y方向に見たときに(
図5を参照)、第1端子10および第2端子20のY方向曲げ形状部16,26は、第2基準線L2に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。)
また、Y方向に見たときに(
図5を参照)、第1端子10および第2端子20のZ方向折曲板部15,25は、第2基準線L2に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0060】
また、Z方向に見たときに(
図4を参照)、第1端子10および第2端子20の第2接続部12,22の板厚中心C1に沿ってX方向に延びる第3基準線L3が、第1基準線L1に対してY方向にオフセットされている。この構成によれば、基板Kと相手コネクタとの伝送において、Y方向の小型化を達成しつつ、Y方向曲げ形状部16の対称性を容易に確保することができ、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。
【0061】
また、第1端子10および第2端子20が、板金材で形成される。
図4に示すように、第2接続部12,22が、X方向およびZ方向に延びる非打ち抜き面であって平滑性に優れた一対の接触面12c,12e;22c,22eを含む(
図3も参照)。接触面12c,22cは、第1基準線L1に対する第3基準線L3のオフセット方向YFの反対方向YRに向く面である。接触面12e,22eは、オフセット方向YFに向く面である。この構成によれば、Y方向の小型化を達成しつつ、接触の信頼性を向上することができる。
【0062】
図9は、本発明の一実施形態のコネクタ1および相手コネクタ200の斜視図である。
図10は、嵌合方向(X方向)から見たコネクタ1の斜視図である。
図11は、嵌合方向(X方向)の反対方向から見たコネクタ1の斜視図である。
【0063】
図9~
図11に示すように、コネクタ1は、少なくとも1つの(図示の例では、複数の)端子対TPと、絶縁性のインナハウジング2と、導電性のシールドシェル3と、絶縁性のアウタハウジング4と、を含む。インナハウジング2とアウタハウジング4とで、ハウジングH1が構成されている。
【0064】
端子対TPは、
図1~
図8の実施形態で示された端子対TPと同じ構成である。端子対TPは、インナハウジング2によって保持されている。インナハウジング2は、シールドシェル3によって覆われた状態で、アウタハウジング4のシェル挿入空間4Sに挿入配置されている。
【0065】
端子対TPは、
図1~
図8の実施形態で示された位置関係のまま、インナハウジング2およびシールドシェル3を介して、アウタハウジング4に収容され、固定されている。複数の端子対TPは、Y方向に並べて配置されている。これに応じて、アウタハウジング4は、X方向に延びる複数のシェル挿入空間4SをY方向に並べて形成している。
【0066】
図12は、嵌合時の端子対TPおよび相手端子(相手第1端子91および相手第2端子92)の周辺の構造の側面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII断面図である。
図14は、嵌合時の端子対TPおよび相手端子(相手第1端子91および相手第2端子92)の周辺の構造を嵌合方向(X方向)に見た図である。
図15は、
図14のXV-XV断面図である。
【0067】
図9に示すように、複数のシールドケーブル100の端末に接続される相手コネクタ200は、少なくとも1つの対(図示の例では、複数の対)をなす相手第1端子91および相手第2端子92(
図15を参照)と、絶縁性の相手インナハウジング210と、導電性の相手シールドシェル220と、絶縁性の相手アウタハウジング230と、を含む。相手インナハウジング210と相手アウタハウジング230と、相手ハウジングH2が、構成されている。相手第1端子91、相手第2端子92およびシールドケーブル100は、
図1~
図8の実施形態で示されたものと同じ構成である。
【0068】
図14および
図15に示すように、相手インナハウジング210は、相手第1端子91および相手第2端子92をZ方向に並べて保持する。
図9に示すように、相手インナハウジング210は、相手シールドシェル220によって覆われた状態で、相手アウタハウジング230のシェル挿入空間230Sに挿入配置されている。
【0069】
図12および
図13に示すように、端子嵌合時に、コネクタ1のシールドシェル3に、相手コネクタ200の相手シールドシェル220が、挿入嵌合される。相手シールドシェル220は、オフセット方向YFの反対方向YRの壁部221と、相手アウタハウジング230の係止部に係止可能なアウタハウジングランス222と、相手インナハウジング210に係止可能なインナハウジングランス223と、を含む。
【0070】
アウタハウジングランス222およびインナハウジングランス223は、オフセット方向YFの反対方向YRの壁部221に配置されている。アウタハウジングランス222は、壁部221から外向きに突出形成されている。インナハウジングランス223は、壁部221から内向きに突出形成されている。
【0071】
本実施形態によれば、端子対TPを有するコネクタにおいて、
図1~
図8の実施形態の端子対TPによる効果が得られる。また、複数の端子対TPを有するコネクタ1において、Y方向の小型化を達成することができる。
【0072】
また、相手コネクタ200の相手第1端子91および相手第2端子92がY方向の同側に向くので、コネクタ1の第1端子10および第2端子20に嵌合させるときに、相手第1端子91および相手第2端子92の一方を他方に対して反転させる必要がなく、作業性に優れる。
【0073】
また、オフセット方向YFの反対方向YRのスペースの有効利用により、小型化に寄与することができる。例えば、相手シールドシェル220における、オフセット方向YFの反対方向YRの壁部221に、アウタハウジングランス222およびインナハウジングランス223を配置することにより、小型化に寄与することができる。
【0074】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、接続位置調整部13,23は、必ずしも設けられなくてもよい。コネクタ1および相手コネクタ200は、基板対基板用であってもよいし、基板対電線用であってもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 コネクタ
2 インナハウジング
3 シールドシェル
4 アウタハウジング
10 第1端子
11 第1接続部
12 第2接続部
12c 接触面
12e 接触面
14 保持板部
15 Z方向折曲板部
16 Y方向曲げ形状部
20 第2端子
21 第1接続部
22 第2接続部
22c 接触面
22e 接触面
24 保持板部
25 Z方向折曲板部
26 Y方向曲げ形状部
33 第3板部
33e 対向縁部
43 第3板部
43e 対向縁部
91 相手第1端子
92 相手第2端子
200 相手コネクタ
210 相手インナハウジング
220 相手シールドシェル
230 相手アウタハウジング
A1 第1配列領域
A2 第2配列領域
C1 板厚中心
CA 配列変換領域
H1 ハウジング
H2 相手ハウジング
K 基板
Ka 基板実装面
L1 第1基準線
L2 第2基準線
L3 第3基準線
TP 端子対
YF オフセット方向
YR 反対方向