特開 2023-176940 端子嵌合構造およびコネクタ嵌合構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023176940

(43)【公開日】2023-12-13

(54)【発明の名称】端子嵌合構造およびコネクタ嵌合構造

(51)【国際特許分類】

   H01R 13/11 20060101AFI20231206BHJP

   H01R 13/6473 20110101ALI20231206BHJP

   H01R 13/04 20060101ALI20231206BHJP

【ＦＩ】

H01R13/11 A

H01R13/6473

H01R13/04 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022089536

(22)【出願日】2022-06-01

(71)【出願人】

【識別番号】390033318

【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002310

【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】中村 英央

(72)【発明者】

【氏名】永田 唯

【テーマコード（参考）】

5E021

【Ｆターム（参考）】

5E021FA03

5E021FA09

5E021FA14

5E021FB02

5E021FB07

5E021FC23

5E021FC32

5E021LA10

5E021LA15

(57)【要約】

【課題】組立作業性に優れる端子嵌合構造およびコネクタ嵌合構造を提供する。
【解決手段】端子嵌合構造ＴＦＳが、端子対ＴＰを構成する第１端子１０および第２端子２０と、相手第１端子９１および相手第２端子９２とを備える。第１端子１０および第２端子２０が、Ｚ方向に見たときにＸ方向に延びる第１基準線Ｌ１に対して対称な第１配列の第１接続部１１，２１と、Ｙ方向に見たときにＸ方向に延びる第２基準線Ｌ２に対して対称な第２配列の第２接続部１２，２２と、第１配列から第２配列へと配列が変換される配列変換部ＣＡＰとを含む。第２接続部１２，２２は、ＸＹ平面に沿いＹ方向の同側に向く第１接触面１２ｃ，２２ｃを含む。相手第１端子９１および相手第２端子９２は、中空ボックス状の端子接続部９３を含む。端子接続部９３は、Ｙ方向の同側に向く弾性接触片を含む。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

端子対を構成する第１端子および第２端子と、
前記第１端子および前記第２端子がそれぞれ嵌合される相手第１端子および相手第２端子と、を備え、
前記第１端子および前記第２端子が、Ｚ方向に見たときにＸ方向に延びる第１基準線に対して対称な第１配列で配置され、ＸＹ平面に沿う第１接続部と、Ｙ方向に見たときにＸ方向に延びる第２基準線に対して対称な第２配列で前記第１接続部に対してＸ方向に配置され、ＸＺ平面に沿い且つＹ方向の同側に向く第１接触面を含む第２接続部と、前記第１接続部と前記第２接続部との間に配置され、前記第１配列から前記第２配列へと配列が変換される配列変換部と、を含み、
前記相手第１端子および前記相手第２端子は、中空ボックス状の端子接続部を含み、
前記相手第１端子および前記相手第２端子の前記端子接続部は、Ｙ方向の同側に向けて前記中空ボックス内に突出し、対応する前記第１端子および前記第２端子の前記第２接続部の前記第１接触面に弾性接触する弾性接触片を含む、端子嵌合構造。

【請求項2】

前記相手第１端子および前記相手第２端子の前記端子接続部は、対応する前記第２接続部の前記第１接触面の背面である第２接触面に対向する底壁部と、前記弾性接触片が形成された頂壁部と、を含む、請求項１に記載の端子嵌合構造。

【請求項3】

前記第１端子および前記第２端子は、板金材で形成され、
前記第２接続部の前記第１接触面および前記第２接触面は、非打ち抜き面である、請求項１に記載の端子嵌合構造。

【請求項4】

請求項１～３の何れか一項に記載の端子嵌合構造を含むコネクタ嵌合構造であって、
前記端子対と、前記端子対を保持する絶縁性のハウジングと、を含むコネクタと、
前記相手第１端子および前記相手第２端子と、前記相手第１端子および前記相手第２端子を保持し前記コネクタと嵌合する絶縁性の相手ハウジングと、を含む相手コネクタと、を備える、コネクタ嵌合構造。

【請求項5】

Ｚ方向に見たときに、前記第１端子および前記第２端子の前記第２接続部の板厚中心に沿う第３基準線が、前記第１基準線に対して、Ｙ方向にオフセットされている、請求項４に記載のコネクタ嵌合構造。

【請求項6】

前記端子対が複数設けられ、
前記ハウジングが、前記複数の端子対をＹ方向に並べて保持する、請求項５に記載のコネクタ嵌合構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、端子嵌合構造およびコネクタ嵌合構造に関する。

【背景技術】

【0002】

差動信号を送受信するコネクタとして、下記の特許文献１に記載されたコネクタがある。このコネクタは、一対の端子と、一対の端子が挿通される挿通部を有し且つ相手方ハウジングの相手方嵌合部と嵌合可能な嵌合部を有するハウジングと、を備える。前記一対の端子を構成する第１の端子および第２の端子は、一端側に、基材の実装面に接続可能な実装領域を有し、他端側に、相手方コネクタに接続可能な接続領域を有する。

【0003】

第１の端子および第２の端子は、実装領域において、実装面に略水平な第１の方向で互いに離間する第１の配置となり、接続領域において、第１の方向に略垂直な第２の方向で互いに離間する第２の配置となる。また、第１の端子および第２の端子は、実装領域と接続領域との間で、第１の配置から第２の配置へと遷移する遷移領域を有する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０２２－１１８３０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

仮に、第１の端子および第２の端子の接続領域における接触面が、互いに第２方向の反対側に向くように設定すると、組立時において、第１の端子および第２の端子の接続領域に嵌合される一対の相手方端子は、ケーブルの端末に対する圧着後に、一方を他方に対して１８０°向きを反転させる作業が必要である。このため、組立作業性が悪い。

【0006】

そこで、本発明の好ましい一実施形態は、組立作業性に優れた端子嵌合構造およびコネクタ嵌合構造を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の好ましい一実施形態は、端子対（ＴＰ）を構成する第１端子（１０）および第２端子（２０）と、前記第１端子および前記第２端子がそれぞれ嵌合される相手第１端子（９１）および相手第２端子（９２）と、を備える端子嵌合構造（ＴＦＳ）を提供する。前記第１端子および前記第２端子が、Ｚ方向に見たときにＸ方向に延びる第１基準線（Ｌ１）に対して対称な第１配列で配置され、ＸＹ平面に沿う第１接続部（１１，２１）と、Ｙ方向に見たときにＸ方向に延びる第２基準線（Ｌ２）に対して対称な第２配列で前記第１接続部に対してＸ方向に配置され、ＸＺ平面に沿い且つＹ方向の同側に向く第１接触面（１２ｃ，２２ｃ）を含む第２接続部（１２，２２）と、前記第１接続部と前記第２接続部との間に配置され、前記第１配列から前記第２配列へと配列が変換される配列変換部（ＣＡＰ）と、を含む。前記相手第１端子および前記相手第２端子は、中空ボックス状の端子接続部（９３）を含む。前記相手第１端子および前記相手第２端子の前記端子接続部は、Ｙ方向の同側に向けて前記中空ボックス内に突出し、対応する前記第１端子および前記第２端子の前記第２接続部の前記第１接触面に弾性接触する弾性接触片（９３ｄ）を含む。

【0008】

この構成によれば、第１端子および第２の端子の第２接続部に接続される相手第１端子および相手第２端子は、Ｙ方向の同側に向く弾性接触片を有する。このため、組立時において、相手第１端子および相手第２端子の一方を他方に対して１８０°反転させる作業は、不要であり、組立作業性に優れる。

【0009】

なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。

【0010】

１つの好ましい実施形態では、前記相手第１端子および前記相手第２端子の前記端子接続部は、対応する前記第２接続部の前記第１接触面の背面である第２接触面（１２ｅ，２２ｅ）に対向する底壁部（９３ａ）と、前記弾性接触片が形成された頂壁部（９３ｂ）と、を含む。この構成によれば、相手第１端子および相手第２端子は、その弾性接触片によって、対応する第１端子および第２端子の第２接続部の第１接触面を弾性付勢し、その付勢反力により、底壁部が前記第１接触面の背面である第２接触面に付勢され、Ｙ方向の同側に位置決めされる。このため、端子間の嵌合部において、Ｙ方向の位置精度のばらつきが抑制される。

【0011】

１つの好ましい実施形態では、前記第１端子および前記第２端子は、板金材で形成され、前記第２接続部の前記第１接触面および前記第２接触面は、非打ち抜き面である。この構成によれば、非打ち抜き面である第１および第２接触面は、平滑性に優れる。このため、破断面で形成される接触面に接触する場合と比較して、接触信頼性が向上する。

【0012】

１つの好ましい実施形態では、前記端子嵌合構造を含むコネクタ嵌合構造（ＣＦＳ）であって、前記端子対と、前記端子対を保持する絶縁性のハウジング（Ｈ１）と、を含むコネクタ（１）と、前記相手第１端子および前記相手第２端子と、前記相手第１端子および前記相手第２端子を保持し前記コネクタと嵌合する絶縁性の相手ハウジング（Ｈ２）と、を含む相手コネクタ（２００）と、を備える、コネクタ嵌合構造を提供する。

【0013】

この構成によれば、相手ハウジングに相手第１端子および相手第２端子を組み付けるときに、相手第１端子および相手第２端子の一方を他方に対して１８０°反転させる作業は、不要である。このため、組立作業性に優れる。

【0014】

１つの好ましい実施形態では、Ｚ方向に見たときに、前記第１端子および前記第２端子の前記第２接続部の板厚中心（Ｃ１）に沿う第３基準線（Ｌ３）が、前記第１基準線に対して、Ｙ方向にオフセットされている。この構成によれば、第１基準線に対する第３基準線のＹ方向のオフセット量を所望に設定することにより、小型化に寄与することができる。

【0015】

１つの好ましい実施形態では、前記端子対が複数設けられ、前記ハウジングが、前記複数の端子対をＹ方向に並べて保持する。この構成によれば、Ｙ方向の小型化を達成することができる。

【発明の効果】

【0016】

本発明によれば、組立作業性に優れた端子嵌合構造およびコネクタ嵌合構造を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0017】

【図1】図１は、本発明の一実施形態に係る端子嵌合構造の嵌合前の状態の斜視図である。

【図2】図２は、嵌合状態の端子嵌合構造の斜視図である。

【図3】図３は、端子対の拡大斜視図である。

【図4】図４は、端子対の平面図である。

【図5】図５は、端子対の側面図である。

【図6】図６は、端子対の底面図である。

【図7A-7C】図７Ａは、嵌合前の端子嵌合構造の平面図である。図７Ｂは、嵌合前の端子嵌合構造の側面図である。図７Ｃは、嵌合前の端子嵌合構造の底面図である。

【図8A-8C】図８Ａは、嵌合状態の端子嵌合構造の平面図である。図８Ｂは、嵌合状態の端子嵌合構造の側面図である。図８Ｃは、嵌合状態の端子嵌合構造の底面図である。

【図9】図９は、嵌合前のコネクタ嵌合構造の斜視図である。

【図10】図１０は、嵌合方向から見たコネクタの斜視図である。

【図11】図１１は、嵌合方向の反対方向から見たコネクタの斜視図である。

【図12】図１２は、嵌合時の端子嵌合構造の周辺の構造の側面図である。

【図13】図１３は、図１２のＸＩＩＩ－ＸＩＩＩ断面図である。

【図14】図１４は、嵌合時の端子嵌合構造の周辺の構造を嵌合方向に見た図である。

【図15】図１５は、図１４のＸＶ－ＸＶ断面図である。

【図16】図１６は、変形例の端子嵌合構造に用いる端子対の平面図である。

【図17】図１７は、変形例の端子嵌合構造に用いる端子対の側面図である。

【図18】図１８は、変形例の端子嵌合構造に用いる端子対の底面図である。

【図19A-19C】図１９Ａは、変形例の端子嵌合構造の平面図である。図１９Ｂは、変形例の端子嵌合構造の側面図である。図１９Ｃは、変形例の端子嵌合構造の底面図である。

【発明を実施するための形態】

【0018】

以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。

【0019】

図１は、本発明の一実施形態に係る端子嵌合構造の嵌合前の状態の斜視図である。図２は、嵌合状態の端子嵌合構造の斜視図である。

【0020】

図１および図２に示すように、端子嵌合構造ＴＦＳは、差動信号伝送用であって、第１端子１０および第２端子２０を含む端子対ＴＰと、第１端子１０および第２端子２０に対して嵌合方向であるＸ方向にそれぞれ嵌合される相手第１端子９１および相手第２端子９２と、を備える。第１端子１０および第２端子２０は、例えば銅合金製の板金材を用いた板金加工により形成されている。ここで、直交する３方向をＸ方向、Ｙ方向およびＺ方向とする。

【0021】

図３は、端子対ＴＰの拡大斜視図である。図３に示すように、第１端子１０は、第１接続部１１と、第２接続部１２と、を含む。第１端子１０は、第１接続部１１と第２接続部１２との間に、接続位置調整部１３と、保持板部１４と、Ｚ方向折曲板部１５と、Ｙ方向曲げ形状部１６と、を含む。

【0022】

第２端子２０は、第１接続部２１と、第２接続部２２と、を含む。第２端子２０は、第１接続部２１と第２接続部２２との間に、接続位置調整部２３と、保持板部２４と、Ｚ方向折曲板部２５と、Ｙ方向曲げ形状部２６と、を含む。

【0023】

図１に示すように、第１端子１０および第２端子２０の第１接続部１１，２１は、Ｘ方向およびＹ方向の２方向に延びる基板実装面Ｋａ（基板Ｋの表面）に実装可能であって、Ｘ方向に直線状に延びる。

【0024】

第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２は、第１接続部１１，２１に対してＸ方向に配置される。図２に示すように、第２接続部１２，２２は、対応する相手端子(相手第１端子９１，相手第２端子９２)と嵌合可能であって、Ｘ方向に直線状に延びる。

【0025】

図７Ａ、図７Ｂおよび図７Ｃは、それぞれ、嵌合前の端子嵌合構造ＴＦＳの平面図、側面図および底面図である。図８Ａ、図８Ｂおよび図８Ｃは、それぞれ、嵌合状態の端子嵌合構造ＴＦＳの平面図、側面図および底面図である。端子対ＴＰを構成する第１端子１０および第２端子（図７Ａ～図７Ｃ）が、図８Ａ～図８Ｃに示すように、相手第１端子９１および相手第２端子９２に対してＸ方向にそれぞれ嵌合される。

【0026】

図１に示すように、相手第１端子９１および相手第２端子９２は、同じ構成であり、それぞれ、端子接続部９３と、電線接続部９４と、架橋部９５と、を含む。架橋部９５は、端子接続部９３および電線接続部９４の底壁部どうしを連結する。図２に示すように、相手第１端子９１および相手第２端子９２の電線接続部９４は、例えばシールドケーブル１００の一対の被覆電線１０１，１０２の端末に、それぞれ圧着接続される。

【0027】

図１に示すように、電線接続部９４は、Ｘ方向に延びる底壁部９４ａと、芯線圧着部９４ｂと、被覆圧着部９４ｃと、を含む。芯線圧着部９４ｂは、底壁部９４ａの一部と、該一部の両側に延設される一対のバレル片であって、被覆電線１０１，１０２の芯線（図示せず）に圧着される一対のバレル片を含む。被覆圧着部９４ｃは、底壁部９４ａの一部と、該一部の両側に延設される一対のバレル片であって、被覆電線１０１，１０２において前記芯線を覆う絶縁性の被覆部（図示せず）に圧着される一対のバレル片を含む。

【0028】

相手第１端子９１および相手第２端子９２の端子接続部９３は、断面中空のボックス状をなす。端子接続部９３は、底壁部９３ａと、頂壁部９３ｂと、一対の側壁部９３ｃと、弾性接触片９３ｄ（図７Ａを参照）と、係止突起９３ｅと、を含む。端子接続部９３の底壁部９３ａは、電線接続部９４の底壁部９４ａと架橋部９５を介してＸ方向に連なる。頂壁部９３ｂは、底壁部９３ａと平行に対向する。一対の側壁部９３ｃは、互いに対向し、底壁部９３ａと頂壁部９３ｂとを連結する。

【0029】

図７Ａに示すように、弾性接触片９３ｄは、頂壁部９３ｂから端子接続部９３の内部に向けて延設され、図８Ａに示すように、対応する端子（第１端子１０および第２端子２０）と弾性接触する。係止突起９３ｅは、図示しないインナハウジングを係止するための突起であり、頂壁部９３ｂの外面に突出形成されている。

【0030】

図４は、端子対ＴＰの平面図である。図５は、端子対ＴＰの側面図である。図６は、端子対ＴＰの底面図である。図４～図６に示すように、第１端子１０および第２端子２０のそれぞれは、第１配列領域Ａ１と、第１配列領域Ａ１よりもＸ方向に配置された第２配列領域Ａ２と、第１配列領域Ａ１と第２配列領域Ａ２との間に配置された配列変換領域ＣＡと、を含む。

【0031】

第１端子１０および第２端子２０の第１配列領域Ａ１は、互いにＹ方向に並び、且つ図４に示すようにＺ方向に見たときにＸ方向に延びる第１基準線Ｌ１に対して対称である第１配列で配置された領域である。

【0032】

すなわち、第１端子１０および第２端子２０の第１配列領域Ａ１は、図５に示すようにＹ方向に見たときに、互いに重なる。また、第１端子１０および第２端子２０の第１配列領域Ａ１は、図４に示すようにＺ方向に見たときに、第１基準線Ｌ１に対して対称な形状をなす。また、第１端子１０の第１配列領域Ａ１と第１基準線Ｌ１との距離ｄ１が、第２端子２０の第１配列領域Ａ１と第１基準線Ｌ１との距離ｄ２と等しくされている（ｄ１＝ｄ２）。

【0033】

第１端子１０および第２端子２０の第２配列領域Ａ２は、互いにＺ方向に並び、且つ図５に示すようにＹ方向に見たときにＸ方向に延びる第２基準線Ｌ２に対して対称である第２配列で配置された領域である。

【0034】

すなわち、第１端子１０および第２端子２０の第２配列領域Ａ２は、図４に示すようにＺ方向に見たときに、互いに重なる。また、第１端子１０および第２端子２０の第２配列領域Ａ２は、図５に示すようにＹ方向に見たときに、第２基準線Ｌ２に対して対称な形状をなす。また、第１端子１０の第２配列領域Ａ２と第２基準線Ｌ２との距離Ｄ１が、第２端子２０の第２配列領域Ａ２と第２基準線Ｌ２との距離Ｄ２と等しくされている（Ｄ１＝Ｄ２）。

【0035】

図４～図６に示すように、第１端子１０および第２端子２０の配列変換領域ＣＡは、第１配列領域Ａ１と第２配列領域Ａ２との間で、第１配列から第２配列へと配列が変換される領域である。

【0036】

第１端子１０の第１配列領域Ａ１は、第１接続部１１と、接続位置調整部１３と、保持板部１４と、を含む。第１端子１０の配列変換領域ＣＡは、Ｚ方向折曲板部１５と、Ｙ方向曲げ形状部１６と、を含む。第２端子２０の第１配列領域Ａ１は、第１接続部２１と、接続位置調整部２３と、保持板部２４と、を含む。第２端子２０の配列変換領域ＣＡは、Ｚ方向折曲板部２５と、Ｙ方向曲げ形状部２６と、を含む。すなわち、Ｚ方向折曲板部２５およびＹ方向曲げ形状部２６が、配列変換部ＣＡＰを構成している。

【0037】

第１端子１０および第２端子２０の第１接続部１１，２１は、一端１１ａ，２１ａと、一端１１ａ，２１ａに対してＸ方向に配置される他端１１ｂ，２１ｂと、を含む。第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２は、一端１２ａ，２２ａと、Ｘ方向の先端である他端１２ｂ，２２ｂと、を含む。

【0038】

図３に示すように、第１端子１０の第２接続部１２は、相手端子に対する第１接触面１２ｃおよび第２接触面１２ｅと、これら第１および第２接触面１２ｃ，１２ｅに対して直交する打ち抜き面１２ｐ（破断面）と、を含む。第２端子２０の第２接続部２２は、相手端子に対する第１接触面２２ｃおよび第２接触面２２ｅと、これら第１および第２接触面２２ｃ，２２ｅに対して直交する打ち抜き面２２ｐ（破断面）と、を含む。第１接触面１２ｃ，２２ｃおよび第２接触面１２ｅ，２２ｅは、Ｘ方向およびＺ方向の２方向に延びる面であって、非打ち抜き面である。第１端子１０の第１接触面１２ｃおよび第２端子２０の第１接触面２２ｃは、Ｙ方向の同側に向いている。また、第２接続部１２，２２の一端１２ａ，２２ａには、Ｚ方向の両側に突出する成形上必要な突起形状である突起１２ｄ，２２ｄが突出形成されている。

【0039】

第１端子１０の第１接続部１１の一端１１ａから第２接続部１２の他端１２ｂまでの経路長は、第２端子２０の第１接続部２１の一端２１ａから第２接続部２２の他端２２ｂまでの経路長と等しくされている。これにより、送受信される差動信号の位相ずれが抑制される。

【0040】

接続位置調整部１３，２３は、第１接続部１１，２１の他端１１ｂ，２１ｂからＺ方向に直交状に延びる。接続位置調整部１３，２３は、第１接続部１１，２１の他端１１ｂ，２１ｂと接続された一端１３ａ，２３ａと、延設端である他端１３ｂ，２３ｂと、を含む。

【0041】

接続位置調整部１３，２３は、Ｚ方向の長さ（他端１３ｂ，２３ｂの高さ位置）の設定により、第１接続部１１，２１に対する第２接続部１２，２２のＺ方向の位置（基板実装面Ｋａからの第２接続部１２，２２の高さ位置に相当）を調整する機能を果たす。

【0042】

図３および図４に示すように、保持板部１４，２４は、接続位置調整部１３，２３の他端１３ｂ，２３ｂからＸ方向に隣接して配置される。保持板部１４，２４は、Ｘ方向およびＹ方向の２方向に延びる板面を有している。

【0043】

保持板部１４，２４は、接続位置調整部１３，２３の他端１３ｂ，２３ｂから直交状にＸ方向に延びる第１板部３１，４１と、第１板部３１，４１の延設端から直交状にＹ方向の外方に延びる第２板部３２，４２と、第２板部３２，４２の延設端から直交状にＸ方向に延びる第３板部３３，４３と、を含む。第２板部３２，４２は、第１板部３１，４１と第３板部３３，４３とを連結し、一方で例えばプレス後のつなぎ桟として機能している。第２板部３２，４２の一端は、第３板部３３，４３に対してＹ方向の外方に突出するつなぎ形状としての突起３２ａ，４２ａを形成している。

【0044】

図４に示すように、保持板部１４，２４の第３板部３３，４３は、Ｙ方向に互いに対向しＸ方向に延びる対向縁部３３ｅ，４３ｅを含む。Ｚ方向折曲板部１５，２５は、保持板部１４，２４の第３板部３３，４３の対向縁部３３ｅ，４３ｅの少なくとも一部から直交状に折り曲げられ、Ｚ方向の互いに逆向きに延びる。

【0045】

図５に示すように、Ｚ方向折曲板部１５，２５の延設端１５ｂ，２５ｂは、保持板部１４，２４と接続される基端１５ａ，２５ａに対して、Ｚ方向に離隔し且つＸ方向に離隔した位置に配置されている。ただし、延設端１５ｂ，２５ｂが、Ｘ方向に関して、基端１５ａ，２５ａと同じ位置に配置されていてもよい。

【0046】

図４に示すようにＺ方向に見たときに、Ｙ方向曲げ形状部１６，２６は、Ｚ方向折曲板部１５，２５と、第２配列領域Ａ２にある第２接続部１２，２２との間で、第２配列領域Ａ２（第２接続部１２，２２）に向かって互いに近づくように曲げられた形状を有している。Ｙ方向曲げ形状部１６，２６は、Ｚ方向折曲板部１５，２５の延設端１５ｂ，２５ｂに接続された一端１６ａ，２６ａと、第２接続部１２，２２の一端１２ａ，２２ａと接続された他端１６ｂ，２６ｂと、を含む。

【0047】

Ｚ方向に見たときに（図４を参照）、第１端子１０および第２端子２０のＺ方向折曲板部１５，２５は、第１基準線Ｌ１に対して対称である。Ｚ方向に見たときに、第１端子１０および第２端子２０のＹ方向曲げ形状部１６，２６は、第１基準線Ｌ１に対して対称である。

【0048】

また、Ｚ方向に見たときに（図４を参照）、第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２の板厚中心Ｃ１に沿ってＸ方向に延びる第３基準線Ｌ３が、第１基準線Ｌ１に対して、Ｙ方向のオフセット方向ＹＦにオフセット量ｅで、オフセットされている。

【0049】

また、図４に示すように、第２接続部１２の接触面２２ｃ（Ｘ方向およびＺ方向の２方向に延びる面であって、打ち抜き面２２ｐでない非打ち抜き面）は、オフセット方向ＹＦの反対方向ＹＲ（反対側）の面で構成されている。

【0050】

また、図５に示すようにＹ方向に見たときに、第１端子１０および第２端子２０のＹ方向曲げ形状部１６，２６は、第２基準線Ｌ２に対して対称である。また、Ｙ方向に見たときに（図５を参照）、第１端子１０および第２端子２０のＺ方向折曲板部１５，２５は、第２基準線Ｌ２に対して対称であることが好ましい。

【0051】

本実施形態によれば、第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２に接続される相手第１端子９１および相手第２端子９２は、Ｙ方向の同側に向く弾性接触片９３ｄを有する。このため、組立時において、相手第１端子９１および相手第２端子９２の一方を他方に対して１８０°反転させる作業は、不要であり、組立作業性に優れる。

【0052】

また、相手第１端子９１および相手第２端子９２の端子接続部９３は、第２接続部１２，２２の第１接触面１２ｃ，２２ｃの背面である第２接触面１２ｅ，２２ｅに対向する底壁部９３ａと、弾性接触片９３ｄが形成された頂壁部９３ｂと、を含む。

【0053】

この構成によれば、相手第１端子９１および相手第２端子９２は、その弾性接触片９３ｄによって、対応する第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２の第１接触面１２ｃ，２２ｃを弾性付勢し、その付勢反力により、底壁部９３ａが第１接触面１２ｃ，２２ｃの背面である第２接触面１２ｅ，２２ｅに付勢され、Ｙ方向の同側に位置決めされる。このため、端子間の嵌合部において、Ｙ方向の位置精度のばらつきが抑制される。

【0054】

また、第１端子１０および第２端子２０は、板金材で形成され、第２接続部１２，２２の第１および第２接触面１２ｃ，１２ｅ；２２ｃ，２２ｅは、非打ち抜き面である。この構成によれば、非打ち抜き面である第１および第２接触面１２ｃ，１２ｅ；２２ｃ，２２ｅは、平滑性に優れる。このため、破断面で形成される接触面に接触する場合と比較して、接触信頼性が向上する。

【0055】

図３に示すように、配列変換領域ＣＡが、Ｚ方向折曲板部１５，２５とＹ方向曲げ形状部１６，２６という２方向の曲げを用いて形成されるので、特開２０２２－２２４９８号公報に記載の技術のように、ねじりを用いる場合と比較して、位置精度が高く、また、変形強度が高い。

【0056】

特に、図４に示すように、第１端子１０および第２端子２０のＺ方向折曲板部１５，２５が、第１端子１０および第２端子２０の互いの第１配列領域Ａ１の対向縁部３３ｅ，４３ｅから直交状に折り曲げられ、Ｚ方向の互いに逆向きに延びる板部で構成される。このため、位置精度をより高くすることができる。

【0057】

また、図３に示すように、第１端子１０および前記第２端子２０の第１配列領域Ａ１が、Ｘ方向およびＹ方向の２方向に延びる基板実装面Ｋａに実装可能であって、Ｘ方向に延びる第１接続部１１，２１を含む。第１端子１０および第２端子２０の第２配列領域Ａ２が、対応する相手第１端子９１および相手第２端子９２と嵌合可能であって、Ｘ方向に延びる第２接続部１２，２２を含む。この構成によれば、端子対ＴＰの位置精度および変形強度を高くすることにより、基板Ｋと相手コネクタ２００との間の伝送における接続信頼性および伝送特性を良好にすることができる。

【0058】

また、第１端子１０および第２端子２０の第１配列領域Ａ１は、第１接続部１１，２１と配列変換領域ＣＡとの間に配置され、Ｘ方向およびＹ方向の２方向に延びる板面を有する保持板部１４，２４を含む。また、第１端子１０および第２端子２０のＺ方向折曲板部１５，２５は、第１端子１０および第２端子２０の保持板部１４，２４どうしの対向縁部３３ｅ，４３ｅから直交状に折り曲げられ、Ｚ方向の互いに逆向きに延びている。このため、位置精度および変形強度をより高くすることができる。

【0059】

また、Ｚ方向に見たときに（図４を参照）、第１端子１０および第２端子２０のＺ方向折曲板部１５，２５は、第１基準線Ｌ１に対して対称であり、且つ、第１端子１０および第２端子２０のＹ方向曲げ形状部１６，２６は、第１基準線Ｌ１に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。

【0060】

また、Ｙ方向に見たときに（図５を参照）、第１端子１０および第２端子２０のＹ方向曲げ形状部１６，２６は、第２基準線Ｌ２に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。

【0061】

また、Ｙ方向に見たときに（図５を参照）、第１端子１０および第２端子２０のＺ方向折曲板部１５，２５は、第２基準線Ｌ２に対して対称である。この構成によれば、対称性の確保により、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。

【0062】

また、Ｚ方向に見たときに（図４を参照）、第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２の板厚中心Ｃ１に沿ってＸ方向に延びる第３基準線Ｌ３が、第１基準線Ｌ１に対してＹ方向にオフセットされている。この構成によれば、基板Ｋと相手コネクタとの伝送において、Ｙ方向の小型化を達成しつつ、Ｙ方向曲げ形状部１６の対称性を容易に確保することができ、伝送される信号の減衰の度合いを小さくすることができる。

【0063】

また、第１端子１０および第２端子２０が、板金材で形成される。図４に示すように、第２接続部１２，２２が、Ｘ方向およびＺ方向に延びる非打ち抜き面であって平滑性に優れた接触面２２ｃを含む（図３も参照）。接触面２２ｃは、第１基準線Ｌ１に対する第３基準線Ｌ３のオフセット方向ＹＦの反対方向ＹＲの面である。この構成によれば、Ｙ方向の小型化を達成しつつ、接触の信頼性を向上することができる。

【0064】

図９は、本発明の一実施形態のコネクタ嵌合構造ＣＦＳの分解斜視図である。コネクタ嵌合構造ＣＦＳは、互いに嵌合されるコネクタ１および相手コネクタ２００を備える。図１０は、嵌合方向（Ｘ方向）から見たコネクタ１の斜視図である。図１１は、嵌合方向（Ｘ方向）の反対方向から見たコネクタ１の斜視図である。

【0065】

図９～図１１に示すように、コネクタ１は、少なくとも１つの（図示の例では、複数の）端子対ＴＰと、絶縁性のインナハウジング２と、導電性のシールドシェル３と、絶縁性のアウタハウジング４と、を含む。インナハウジング２とアウタハウジング４とで、ハウジングＨ１が構成されている。

【0066】

端子対ＴＰは、図１～図８の実施形態で示された端子対ＴＰと同じ構成である。端子対ＴＰは、インナハウジング２によって保持されている。インナハウジング２は、シールドシェル３によって覆われた状態で、アウタハウジング４のシェル挿入空間４Ｓに挿入配置されている。

【0067】

端子対ＴＰは、図１～図８の実施形態で示された位置関係のまま、インナハウジング２およびシールドシェル３を介して、アウタハウジング４に収容され、固定されている。複数の端子対ＴＰは、Ｙ方向に並べて配置されている。これに応じて、アウタハウジング４は、Ｘ方向に延びる複数のシェル挿入空間４ＳをＹ方向に並べて形成している。

【0068】

図１２は、嵌合時の端子嵌合構造ＴＦＳの周辺の構造の側面図である。図１３は、図１２のＸＩＩＩ－ＸＩＩＩ断面図である。図１４は、嵌合時の端子嵌合構造ＴＦＳの周辺の構造を嵌合方向（Ｘ方向）に見た図である。図１５は、図１４のＸＶ－ＸＶ断面図である。

【0069】

図９に示すように、複数のシールドケーブル１００の端末に接続される相手コネクタ２００は、少なくとも１つの対（図示の例では、複数の対）をなす相手第１端子９１および相手第２端子９２（図１５を参照）と、絶縁性の相手インナハウジング２１０と、導電性の相手シールドシェル２２０と、絶縁性の相手アウタハウジング２３０と、を含む。相手インナハウジング２１０と相手アウタハウジング２３０と、相手ハウジングＨ２が、構成されている。相手第１端子９１、相手第２端子９２およびシールドケーブル１００は、図１～図８の実施形態で示されたものと同じ構成である。

【0070】

図１４および図１５に示すように、相手インナハウジング２１０は、相手第１端子９１および相手第２端子９２をＺ方向に並べて保持する。図９に示すように、相手インナハウジング２１０は、相手シールドシェル２２０によって覆われた状態で、相手アウタハウジング２３０のシェル挿入空間２３０Ｓに挿入配置されている。

【0071】

図１２および図１３に示すように、端子嵌合時に、コネクタ１のシールドシェル３に、相手コネクタ２００の相手シールドシェル２２０が、挿入嵌合される。相手シールドシェル２２０は、オフセット方向ＹＦの反対方向ＹＲの壁部２２１と、相手アウタハウジング２３０の係止部に係止可能なアウタハウジングランス２２２と、相手インナハウジング２１０に係止可能なインナハウジングランス２２３と、を含む。

【0072】

アウタハウジングランス２２２およびインナハウジングランス２２３は、オフセット方向ＹＦの反対方向ＹＲの壁部２２１に配置されている。アウタハウジングランス２２２は、壁部２２１から外向きに突出形成されている。インナハウジングランス２２３は、壁部２２１から内向きに突出形成されている。

【0073】

本実施形態によれば、組立時において、相手ハウジングＨ２に相手第１端子９１および相手第２端子９２を組み付けるときに、相手第１端子９１および相手第２端子９２の一方を他方に対して１８０°反転させる作業は、不要である。このため、組立作業性に優れる。

【0074】

また、Ｚ方向に見たときに、第１端子１０および第２端子２０の第２接続部１２，２２の板厚中心Ｃ１に沿う第３基準線Ｌ３が、第１端子１０および第２端子２０の第１接続部１１，２１間の中心線に相当する第１基準線Ｌ１に対して、Ｙ方向にオフセットされている。この構成によれば、第１基準線Ｌ１に対する第３基準線Ｌ３のオフセット量ｅを所望に設定することにより、小型化に寄与することができる。

【0075】

また、端子対ＴＰが複数設けられ、ハウジングＨ１が、複数の端子対ＴＰをＹ方向に並べて保持する。この構成によれば、Ｙ方向の小型化を達成することができる。

【0076】

また、オフセット方向ＹＦの反対方向ＹＲのスペースの有効利用により、小型化に寄与することができる。例えば、相手シールドシェル２２０における、オフセット方向ＹＦの反対方向ＹＲの壁部２２１に、アウタハウジングランス２２２およびインナハウジングランス２２３を配置することにより、小型化に寄与することができる。

【0077】

次いで、図１６、図１７および図１８は、それぞれ、変形例の端子嵌合構造ＴＦＳ１に用いる端子対ＴＰ１の平面図、側面図および底面図である。図１９Ａ、図１９Ｂおよび図１９Ｃは、それぞれ、変形例の端子嵌合構造ＴＦＳ１の平面図、側面図および底面図である。図１９Ａ、図１９Ｂおよび図１９Ｃの変形例の端子嵌合構造ＴＦＳ１に用いる、図１６～図１８の端子対ＴＰ１が、図４～図６の実施形態の端子対ＴＰと異なるのは、下記である。

【0078】

すなわち、図４～図６の実施形態の端子対ＴＰでは、第１端子１０のＹ方向曲げ形状部１６（配列変換部ＣＡＰ）と第２端子２０のＹ方向曲げ形状部２６（配列変換部ＣＡＰ）とが、第１基準線Ｌ１に対して対称である。これに対して、図１６～図１８の変形例の端子対ＴＰ１では、第１端子１０のＹ方向曲げ形状部１６Ｑ（配列変換部ＣＡＰ）と第２端子２０のＹ方向曲げ形状部２６Ｑ（配列変換部ＣＡＰ）とが、第１基準線Ｌ１に対して非対称である。

【0079】

第１端子１０のＹ方向曲げ形状部１６Ｑは、一端１６Ｑａおよび他端１６Ｑｂを有しており、Ｚ方向に見たときに（図１６を参照）、一端１６Ｑａから他端１６Ｑｂの間で直線状に延びている。第２端子２０のＹ方向曲げ形状部２６Ｑは、一端２６Ｑａおよび他端２６Ｑｂを有しており、Ｚ方向に見たときに（図１６を参照）、一端２６Ｑａから他端２６Ｑｂの間で直線状に延びている。

【0080】

図１６に示すようにＺ方向に見たときに、第１基準線Ｌ１に対する第１端子１０のＹ方向曲げ形状部１６Ｑの傾斜角度が、第１基準線Ｌ１に対する第２端子２０のＹ方向曲げ形状部２６Ｑの傾斜角度よりも小さくされている。図１６～図１９Ｃの変形例において、その他の構成は、図１～図８の実施形態と同じ構成であるので、該実施形態と共通の参照符号が付されている。

【0081】

変形例の端子嵌合構造ＴＦＳ１においても、組立時において、相手第１端子９１および相手第２端子９２の一方を他方に対して１８０°反転させる作業は、不要であり、組立作業性に優れる。変形例の端子嵌合構造ＴＦＳ１が、コネクタ嵌合構造に適用されてもよい。

【0082】

本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、接続位置調整部１３，２３は、必ずしも設けられなくてもよい。コネクタ１および相手コネクタ２００は、基板対基板用であってもよいし、基板対電線用であってもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。

【符号の説明】

【0083】

１ コネクタ
１０ 第１端子
１１ 第１接続部
１２ 第２接続部
１２ｃ 第１接触面
１２ｅ 第２接触面
１５ Ｚ方向折曲板部（配列変換部）
１６ Ｙ方向曲げ形状部（配列変換部）
１６Ｑ Ｙ方向曲げ形状部（配列変換部）
２０ 第２端子
２１ 第１接続部
２２ 第２接続部
２２ｃ 第１接触面
２２ｅ 第２接触面
２５ Ｚ方向折曲板部（配列変換部）
２６ Ｙ方向曲げ形状部（配列変換部）
２６Ｑ Ｙ方向曲げ形状部（配列変換部）
９１ 相手第１端子
９２ 相手第２端子
９３ 端子接続部
９３ａ 底壁部
９３ｂ 頂壁部
９３ｄ 弾性接触片
２００ 相手コネクタ
Ｃ１ 板厚中心
ＣＡＰ 配列変換部
ＣＦＳ コネクタ嵌合構造
Ｈ１ ハウジング
Ｈ２ 相手ハウジング
Ｌ１ 第１基準線
Ｌ２ 第２基準線
Ｌ３ 第３基準線
ＴＦＳ 端子嵌合構造
ＴＦＳ１ 端子嵌合構造
ＴＰ 端子対
ＴＦ１ 端子対
ＹＦ オフセット方向
ＹＲ 反対方向

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7A-7C】

【図8A-8C】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19A-19C】