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特開2023-176952金属キャスクの補修装置及び補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176952
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】金属キャスクの補修装置及び補修方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/12 20060101AFI20231206BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231206BHJP
   B23C 1/20 20060101ALI20231206BHJP
   B24B 7/10 20060101ALI20231206BHJP
   G21C 19/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B23C3/12 Z
B23Q11/00 M
B23C1/20
B24B7/10 Z
G21C19/02 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089558
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 ひめの
(72)【発明者】
【氏名】平沼 健
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智
【テーマコード(参考)】
3C011
3C022
3C043
【Fターム(参考)】
3C011BB03
3C022DD07
3C022DD11
3C043CC06
3C043DD02
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】発電所や発電関連施設等において金属キャスクのフランジ面の補修を安価かつ容易に行うことができる金属キャスクの補修装置及び補修方法を提供する。
【解決手段】金属キャスクの補修装置1は、複数のフランジ面51~53のうち、補修対象のフランジ面以外のフランジ面に載置され、当該フランジ面のボルト穴51b~53bにボルト55により固定される環状レール2と、環状レール2の径方向に架け渡され、環状レール2の径方向中心部O1を中心として周方向に回転可能な架設回転部材3と、架設回転部材3において、径方向及び軸方向に移動可能に設けられ、補修対象のフランジ面を加工するフランジ面加工機6と、を備える構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋を固定するためのフランジ面が金属キャスクの胴部の開口部に段差状に複数備わり、複数の前記フランジ面に蓋固定用のボルト穴が形成された金属キャスクの補修装置であって、
複数の前記フランジ面のうち、補修対象の前記フランジ面以外の前記フランジ面に載置され、当該フランジ面の前記ボルト穴にボルトにより固定される環状レールと、
前記環状レールの径方向に架け渡され、前記環状レールの径方向中心部を中心として周方向に回転可能な架設回転部材と、
前記架設回転部材において、前記架設回転部材の径方向及び軸方向に移動可能に設けられ、補修対象の前記フランジ面を加工するフランジ面加工機と、を備えることを特徴とする金属キャスクの補修装置。
【請求項2】
前記フランジ面加工機の加工によって発生した加工屑を吸引する吸引装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の金属キャスクの補修装置。
【請求項3】
前記フランジ面加工機は、補修対象の前記フランジ面を研磨、切削または研削して補修対象の前記フランジ面にシール部を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属キャスクの補修装置。
【請求項4】
前記環状レールは、周方向に分割された分割レールを組み合わせることにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属キャスクの補修装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された金属キャスクの補修装置における前記環状レールを、補修対象の前記フランジ面以外の前記フランジ面に載置して前記ボルトにより固定するとともに、前記環状レールに前記架設回転部材を装着し、前記フランジ面加工機の加工部を補修対象の前記フランジ面にあてがう準備工程と、
前記フランジ面加工機を駆動し補修対象の前記フランジ面を加工する加工工程と、を備えていることを特徴とする補修方法。
【請求項6】
請求項5に記載された補修方法において、
複数の前記フランジ面は、
金属キャスクの内部空間部を覆う一次蓋が固定される第一フランジ面と、前記一次蓋を覆う二次蓋が固定される第二フランジ面と、前記二次蓋を覆う三次蓋が固定される第三フランジ面とを有しており、
前記準備工程は、
前記第三フランジ面に対して前記環状レールを前記ボルトにより固定し、前記第一フランジ面及び前記第二フランジ面の少なくとも一方を前記フランジ面加工機により加工する第一取り付け工程と、
前記第一フランジ面または前記第二フランジ面に対して前記環状レールを前記ボルトにより固定し、前記第三フランジ面を前記フランジ面加工機により加工する第二取り付け工程と、を備えていることを特徴とする補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属キャスクの補修装置及び補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管接続部に用いられる管用フランジのフランジ面における加工方法として、特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1の加工方法は、旋盤等の工作機械に管用フランジを装着し、管用フランジを回転させながら、溝切り用の工具をフランジ面の内周端から外周端に向かって移動させるものである。この加工方法によれば、フランジ面に対して一定深さで一定間隔の連続した螺旋状の微細な溝(以下、「螺旋溝」と称す。)を形成できる。このような螺旋溝を形成することにより、良好なシール性を確保することができる。
なお、管用フランジのフランジ面において、フランジ面の径方向に加工筋が生じるような面加工を行った場合には、良好なシール性が得られないことが一般に知られている。
【0003】
その他、大型のフランジ面を加工する加工機については、非特許文献1に記載されたものが知られている。非特許文献1の加工機は、内径クランプ式及び外径クランプ式のものであり、フランジ面が大きな容器に対応するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-193201号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FF8200 Flange Facer Operating Manual, Climax Portable Machining & Welding Systems, P/N 59130, Mar. 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の加工方法及び非特許文献1の加工機では、金属キャスクのフランジ面に係る傷の補修方法について記載されていなかった。
特許文献1の加工方法は、製造工場に設置される大型加工機を使用するものであるため、製造工場内における加工に限定される。このため、製造工場以外の発電所内や発電所外の乾式貯蔵施設等の発電所関連施設においてシール性を損なう傷が金属キャスクのフランジ面に生じた場合に、特許文献1の加工方法によりフランジ面を修復しようとすると、製造工場へ金属キャスクを戻す必要があり、運搬等に高いコストを要するという問題がある。
この点、非特許文献1の加工機は、製造工場以外の場所においても補修の対応が可能であるが、大型のクランプ機構を備える構造であるため、金属キャスクのフランジ面の補修にこれを適用しようとすると装置全体が大型化してしまい、取り扱いが大掛かりになるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決し、発電所や発電関連施設等において金属キャスクのフランジ面の補修を安価かつ容易に行うことができる金属キャスクの補修装置及び補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の金属キャスクの補修装置は、蓋を固定するためのフランジ面が金属キャスクの胴部の開口部に段差状に複数備わり、複数の前記フランジ面に蓋固定用のボルト穴が形成された金属キャスクの補修装置であって、複数の前記フランジ面のうち、補修対象の前記フランジ面以外の前記フランジ面に載置され、当該フランジ面の前記ボルト穴にボルトにより固定される環状レールと、前記環状レールの径方向に架け渡され、前記環状レールの径方向中心部を中心として周方向に回転可能な架設回転部材と、前記架設回転部材において、前記架設回転部材の径方向及び軸方向に移動可能に設けられ、補修対象の前記フランジ面を加工するフランジ面加工機と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の補修方法は、金属キャスクの補修装置における前記環状レールを、補修対象の前記フランジ面以外の前記フランジ面に載置して前記固定ボルトにより固定するとともに、前記環状レールに前記架設回転部材を装着し、前記フランジ面加工機の加工部を補修対象の前記フランジ面にあてがう準備工程と、前記フランジ面加工機を駆動し補修対象の前記フランジ面を加工する加工工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金属キャスクの補修装置及び補修方法によれば、発電所や発電関連施設等において金属キャスクのフランジ面の補修を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る金属キャスクの補修装置を金属キャスクの第三フランジ面に装着した状態を示した要部拡大側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る金属キャスクの補修装置を金属キャスクの第三フランジ面に装着した状態を示した要部模式平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る金属キャスクの補修装置を金属キャスクの第三フランジ面に装着し、第二フランジ面を加工する際の様子を示した要部拡大平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る金属キャスクの補修装置を金属キャスクの第一フランジ面または第二フランジ面に装着し、第三フランジ面を加工する際の様子を示した要部拡大側面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る金属キャスクの補修装置の環状レールの構造を示した要部模式平面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る金属キャスクの補修装置を示した要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。各実施形態において同一の部分には同一の符号を付し重複する説明は省略する。各実施形態の説明において、「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。
【0013】
(第1実施形態)
図1は金属キャスクの補修装置を金属キャスクの第三フランジ面に装着した状態を示した要部拡大側面図、図2は同じく要部模式平面図である。図1に示すように、本実施形態の金属キャスクの補修装置1は、複数のフランジ面51~53が開口部に設けられた金属キャスク50に適用されるものであり、発電所内や発電所外の乾式貯蔵施設等の発電所関連施設においてフランジ面51~53のシール部51a~53aを補修する際に使用されるものである。
【0014】
金属キャスク50は、有底円筒状の胴部54を備えている。胴部54の周壁には、放射線を遮へいする不図示の遮へい体が埋設されている。胴部54の内部には、使用済燃料を収容するための収容部(内部空間部)54aが形成されている。収容部54aには、使用済燃料が保持されるバスケット54bが備わる。胴部54の周壁の上部には、胴部54の軸方向の下側から上側へ順に段差状に拡がる段差面が形成されており、各段差面により3つのフランジ面51~53が形成されている。
【0015】
下段の第一フランジ面51は、胴部54の収容部54aを覆う不図示の一次蓋が固定される面である。第一フランジ面51には、一次蓋との密閉性を高めるためのシール部51aが形成されている。中段の第二フランジ面52は、一次蓋を覆う不図示の二次蓋が固定される面である。第二フランジ面52には、二次蓋との密閉性を高めるためのシール部52aが形成されている。上段の第三フランジ面53は、二次蓋を覆う不図示の三次蓋が固定される面である。第三フランジ面53には、三次蓋との密閉性を高めるためのシール部53aが形成されている。各シール部51a~53aは、所定の径方向幅を有するリング状を呈している。なお、一次蓋、二次蓋及び三次蓋は、炭素鋼等の材料からなり、胴部54の上部開口を密封して金属キャスク50の輸送時及び貯蔵時の密封境界を形成する。
【0016】
金属キャスクの補修装置1(以下、単に「補修装置1」ということがある。)は、図1に示すように、レール2bが設けられた環状レール2と、架設回転部材3と、フランジ面加工機6と、を備えている。環状レール2は、図2に示すように、一体に形成された平板リング状を呈している。本実施形態の環状レール2は、第三フランジ面53用のものであり、第三フランジ面53に対して載置可能な直径及び径方向の幅を有している。環状レール2には、周方向に所定の間隔を空けて複数のボルト挿通孔2aが形成されている。各ボルト挿通孔2aは、第三フランジ面53に形成された三次蓋固定用の複数のボルト穴53b(図1参照)に対応して形成されている。これにより、環状レール2は、図1に示すように、ボルト挿通孔2aを通じてボルト穴53bにボルト55を螺合することで、第三フランジ面53に対して容易に固定できる。なお、環状レール2は、平板リング状のものに限られることはなく、種々の形状のものを採用できる。
レール2bは、環状レール2の上面において、ボルト55に干渉しない位置に設けられている。
【0017】
架設回転部材3は、図1図2に示すように、環状レール2の径方向に延在して環状レール2に架け渡される部材である。架設回転部材3は、図2に示すように、環状レール2の径方向中心部O1を中心として周方向に回転可能に設けられている。
架設回転部材3は、図3に示すように、径方向に延在する一対の直線状レール3a,3aと、直線状レール3a,3aの径方向の両端部に設けられ、直線状レール3a,3aを所定間隔に保持する保持部材3b,3b(一方のみ図示、以下同じ)と、を備えている。保持部材3b,3bの下部には、環状レール2のレール2bに沿うように車輪3c,3c(図1参照)が取り付けられている。なお、架設回転部材3は、フランジ面加工機6の後記する加工部材6bが補修対象の第一フランジ面51及び第二フランジ面52に対して接触する際の摩擦力を利用して、後記するように自動的に回転するように構成されている。
【0018】
直線状レール3a,3aには、四角枠状のガイド部材4が取り付けられているとともに、ガイド部材4の中空部には、フランジ面加工機6を支持する支持部材5が挿通されている。ガイド部材4は、直線状レール3a,3aの延在方向に移動可能であり、第一フランジ面51~第三フランジ面53のうち補修対象のフランジ面に対応する位置にフランジ面加工機6を径方向に位置調整する役割をなす。ガイド部材4は、位置調整後に直線状レール3a,3aに対して固定可能である。
支持部材5は、ガイド部材4の上下方向に移動可能であり、補修対象のフランジ面に対応する位置にフランジ面加工機6を上下方向に位置調整する役割をなす。支持部材5は、位置調整後にガイド部材4に対して固定可能である。
【0019】
フランジ面加工機6は、第一フランジ面51~第三フランジ面53のシール部51a~53aを加工する加工機であり、電動モータ6aと、電動モータ6aの出力軸に取り付けられた加工部材6bとを備えている。電動モータ6aは、不図示の電源コードを介して供給される電力により所定の回転速度で回転駆動される。加工部材6bは、シール部51a~53bを研磨するためのフラップホイール等の研磨部材である。加工部材6bの幅は、シール部51a~53aの幅と等しいことが好ましい。ここで、加工部材6bとしては、研磨部材の他に、切削加工を行うための工具等、研削加工を行うための砥石等を用いることができる。この場合には、必要に応じて切削加工や研削加工を行うための機構を電動モータ6aに組み付けることができる。
【0020】
次に、本実施形態の金属キャスクの補修装置1を用いた補修方法について説明する。
補修方法は、準備工程及び加工工程を備えている。準備工程は、金属キャスク50に対して補修装置1を取り付ける工程であり、第一取り付け工程と第二取り付け工程とを備えている。第一取り付け工程は、第一フランジ面51及び第二フランジ面52を補修対象とする場合の、補修装置1の取り付け工程である。一方、第二取り付け工程は、第三フランジ面53を補修対象とする場合の、補修装置1の取り付け工程である。第一取り付け工程及び第二取り付け工程は、補修対象のフランジ面に併せて適宜選択する。加工工程は、補修対象のフランジ面を、取り付けた補修装置1により加工する工程である。なお、前記のように、補修装置1は、環状レール2と架設回転部材3とフランジ面加工機6とを備えている。
【0021】
はじめに、第一取り付け工程による補修装置1の取り付け及び加工工程による加工について説明する。第一取り付け工程では、図1図3に示すように、補修対象ではない第三フランジ面53に対して環状レール2を載置し、補修対象の第一フランジ面51及び第二フランジ面52に対してフランジ面加工機6の加工部材6bをあてがうように取り付ける。
【0022】
具体的に、第三フランジ面53の各ボルト穴53bに対して環状レール2の各ボルト挿通孔2aを位置合わせてボルト55を挿入し、各ボルト55を締め付けることで第三フランジ面53に環状レール2を固定する。
その後、環状レール2のレール2bに架設回転部材3を載せて環状レール2に架設回転部材3を架け渡す。そして、ガイド部材4を直線状レール3a,3aに沿って径方向に移動させるとともに支持部材5をガイド部材4に沿って上下方向に移動させ、フランジ面加工機6の加工部材6bが、例えば、第二フランジ面52のシール部52aに対応する位置となるように調整する。そして、位置調整後にガイド部材4及び支持部材5を移動不能に固定する。
【0023】
加工工程では、フランジ面加工機6の電動モータ6aに電力を供給し、加工部材6bにより第二フランジ面52のシール部52aを研磨する。電動モータ6aを駆動して加工を始めると、シール部52aと加工部材6bとの摩擦力によりシール部52aを蹴る駆動力が発生し、その駆動力により架設回転部材3が環状レール2に沿って略一定速度で自動的に回転する。これにより、周方向の全体に亘ってシール部52aが加工部材6bにより同心円状に加工される。周方向の全体に亘ってシール部52aの加工が完了したら、電力の供給を停止し、支持部材5の固定を解除してシール部52aから加工部材6bを引き離す。
【0024】
続けて、第一フランジ面51を加工する場合には、第三フランジ面53に環状レール2を固定したまま、フランジ面加工機6の加工部材6bが第一フランジ面51のシール部51aに対応する位置となるように、ガイド部材4及び支持部材を位置調整する(図1の破線で図示)。
【0025】
その後、前記と同様に、加工工程によりフランジ面加工機6の電動モータ6aを駆動させて加工を始める。この場合にも、シール部51aに対する加工部材6bの摩擦力によりシール部51aを蹴る駆動力が発生し、その駆動力により架設回転部材3が環状レール2に沿って略一定速度で自動的に回転する。これにより、周方向の全体に亘ってシール部51aが加工部材6bにより同心円状に加工される。
【0026】
加工が完了したら、支持部材5の固定を解除して電動モータ6aを持ち上げ、シール部51aから加工部材6bを引き離す。そして、架設回転部材3を環状レール2から取り外すとともに、各ボルト55による螺合を解除して環状レール2を第三フランジ面53から取り外す。これにより、補修装置1による補修作業が完了する。
【0027】
次に、第二取り付け工程による補修装置1の取り付け及び加工工程による加工について説明する。第二取り付け工程では、図4に示すように、第一フランジ面51及び第二フランジ面52のいずれか一方に環状レール2をボルト55により固定する。この場合、それぞれの径に対応した大きさの環状レール2を用意する。そして、フランジ面加工機6の加工部材6bが第三フランジ面53のシール部53aに対応する位置となるように、ガイド部材4及び支持部材5を位置調整する。
【0028】
そして、加工工程によりフランジ面加工機6の電動モータ6aを駆動させて加工を始める。この場合にも、シール部53aに対する加工部材6bの摩擦力によりシール部53aを蹴る駆動力が発生し、この駆動力により架設回転部材3が環状レール2に沿って略一定速度で自動的に回転する。これにより、周方向の全体に亘ってシール部53aが加工部材6bにより同心円状に加工される。
なお、第二取り付け工程において、第一フランジ面51に環状レール2をボルト55により固定した場合には、第二フランジ面52及び第三フランジ面53の両方を補修対象のフランジ面とすることができる。また、第二取り付け工程において、第二フランジ面52に環状レール2をボルト55により固定した場合には、第一フランジ面51及び第三フランジ面53の両方を補修対象のフランジ面とすることができる。
【0029】
以上説明した本実施形態の金属キャスクの補修装置1によれば、構成が簡単であるとともに、金属キャスク50に対する取り付け取り外しも簡単であるので、発電所や発電関連施設等において金属キャスク50の第一フランジ面51~第三フランジ面53の補修を安価かつ容易に行うことができる。また、既存のボルト穴51b~53bを利用して環状レール2を第一フランジ面51~第三フランジ面53に取り付けることができるので、別途、環状レール2を取り付けるための構造を設ける必要がなく、コスト低減に寄与する補修装置1が得られる。
【0030】
また、補修装置1によれば、発電所関連施設である使用済燃料貯蔵施設において一次蓋が閉止されている状態にある場合にも、第三フランジ面53のシール部53aの補修を好適に実施可能である。
【0031】
また、本実施形態の補修方法によれば、金属キャスク50に対する取り付け取り外しを簡単に行うことができ、発電所や発電関連施設等において金属キャスク50の第一フランジ面51~第三フランジ面53の補修を安価かつ容易に行うことができる。
【0032】
また、本実施形態の補修方法によれば、第一取り付け工程及び第二取り付け工程を備えた準備工程を有しているので、補修対象の第一フランジ面51~第三フランジ面53に併せて補修装置1を準備でき、補修対象に対応した効率のよい補修を実現できる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して第2実施形態に係る金属キャスクの補修装置について説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る金属キャスクの補修装置の環状レールの構造を示した要部模式平面図である。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、環状レール2Aを分割構造とした点にある。
【0034】
図5に示すように、環状レール2Aは、周方向に分割された6個の分割レール21を組み合わせる(連結する)ことにより構成されている。なお、分割レール21の分割位置22や分割個数は、図5に示した位置や個数に限られることはなく、適宜設定可能である。
分割レール21の連結部は、不図示の櫛歯構造とされている。これにより、分割レール21同士の強固な連結が可能となっている。
なお、分割レール21の連結部をヒンジ構造として、折り畳み可能に構成してもよい。
【0035】
以上説明した本実施形態の金属キャスクの補修装置1によれば、不使用時に環状レール2Aを分割レール21毎に分割して保管できるので、保管場所を狭くでき、発電所や発電関連施設等のスペースの有効利用を図ることができる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して第3実施形態に係る金属キャスクの補修装置について説明する。図6は本発明の第3実施形態に係る金属キャスクの補修装置を示した要部拡大側面図である。本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、吸引装置30を設けた点にある。
【0037】
図6に示すように、吸引装置30は、吸引ノズル31と、吸引ノズル31に接続された吸引ホース32とを備えている。吸引ノズル31は、加工によって発生した加工屑を吸引するものであり、加工部材6bの近傍位置に配置されている。吸引ホース32の下流側は、不図示の吸引ファン等に連通されている。
このような吸引装置30は、吸引ファン等の駆動によりエアを吸引することにより吸引ノズル31及び吸引ホース32内を負圧にして、加工部材6b周りの加工屑を吸引する。
【0038】
以上説明した本実施形態の金属キャスクの補修装置1によれば、吸引装置30により、加工時に発生する加工屑の飛散や各部への混入を防止できる。
特に、加工屑が金属キャスク50のバスケット54bの内部やボルト穴51b~53bに入り込むのを好適に防止できる。また、第一フランジ面51に対して一次蓋を固定した状態で第二フランジ面52のシール部52aを加工する場合には、一次蓋と第一フランジ面51との隙間部分51c等に加工屑が侵入するのを好適に防止できる。また、加工屑の飛散による発電関連施設内等の他の系統への混入も未然に防止できる。
【0039】
なお、吸引装置30とともに、あるいは、吸引装置30に代えて、加工物の飛散を防止するカバー部材を加工部材6bの周り等に設けてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記各実施形態では、加工部材6bの摩擦力を利用して架設回転部材3が環状レール2に沿って自動的に回転するものを示したが、これに限られることはなく、架設回転部材3に対して、別途、駆動機構を設けて回転するように構成してもよい。この場合には、前記したようなシール部51a~53aを蹴る駆動力と反対方向に駆動機構を用いて架設回転部材3を回転させることもできる。このように構成することで、研磨加工の度合いを調整することができる。
【0041】
また、前記各実施形態では、加工部材6bにより、シール部51a~53aに対して同心円状に研磨加工等を行うものを示したが、これに限られることはなく、螺旋溝を形成するものであってもよい。この場合には、直線状レール3a,3aに対してガイド部材4が所定速度で移動するように構成し、シール部51a~53aに対して螺旋溝が自動的に形成されるように構成することが好ましい。なお、手動にて螺旋溝を形成するものであってもよい。これらのことは、加工部材6bとして切削加工を行うための工具等、研削加工を行うための砥石等を用いた場合にも同様に構成できる。
【0042】
また、前記各実施形態において架設回転部材3は、レール2bに沿って車輪3c,3cにより移動するものを示したが、これに限られることはなく、種々の移動手段を採用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 補修装置
2 環状レール
2A 環状レール
3 架設回転部材
6 フランジ面加工機
6b 加工部材
21 分割レール
30 吸引装置
50 金属キャスク
51 第一フランジ面(フランジ面)
51a~53a シール部
51b~53b ボルト穴
52 第二フランジ面(フランジ面)
53 第三フランジ面(フランジ面)
54 胴部
54a 収容部(内部空間部)
55 ボルト
O1 径方向中心部
図1
図2
図3
図4
図5
図6