(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176960
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20231206BHJP
B29C 45/77 20060101ALI20231206BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/77
B29C45/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089568
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勇佐
(72)【発明者】
【氏名】萩原 幸子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 紀行
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】足立 智也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM22
4F202AM32
4F202AP02
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK06
4F202CS10
4F206AM22
4F206AM32
4F206AP02
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN14
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP22
4F206JP27
4F206JQ55
4F206JQ81
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】高精度にゲートの詰まりの有無を判定することができる射出成形装置を提供する。
【解決手段】射出成形装置1は、溶融樹脂を吐出するノズル24を備える射出装置20と、成形品キャビティCと樹脂流路Pとを備える金型30と、成形品キャビティC内又は樹脂流路P内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧を検出する金型内樹脂圧取得装置331~334と、ノズル24から吐出される溶融樹脂の吐出圧を取得する吐出圧取得装置27と、金型内樹脂圧取得装置331~334により取得された金型内樹脂圧と、吐出圧取得装置により取得された吐出圧とに基づいて特徴量を算出して樹脂流路Pにおける樹脂の詰まりの有無を判定する判定部61と、を備える。樹脂流路Pは、複数のゲートP31~P34と複数のランナP2とスプールP1とを含み、金型内樹脂圧取得装置331~334は、複数のゲートP31~P34のそれぞれの近傍位置に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を吐出するノズルを備える射出装置と、
成形品キャビティと、上記ノズルから吐出される溶融樹脂を上記成形品キャビティに流入させる樹脂流路とを備える金型と、
上記成形品キャビティ内又は上記樹脂流路内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧を検出する金型内樹脂圧取得装置と、
上記ノズルから吐出される溶融樹脂の吐出圧を取得する吐出圧取得装置と、
上記金型内樹脂圧取得装置により取得された上記金型内樹脂圧と、上記吐出圧取得装置により取得された上記吐出圧とに基づいて特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて、上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無を判定する判定部と、
を備え、
上記樹脂流路は、上記成形品キャビティに接続される複数のゲートと、該複数のゲートにそれぞれ接続された複数のランナと、該複数のランナと上記ノズルとに接続されたスプールとを含み、
上記金型内樹脂圧取得装置は、上記金型における上記複数のゲートのそれぞれの近傍位置に設けられている、射出成形装置。
【請求項2】
上記複数のゲートは周方向に配列しており、
上記金型内樹脂圧取得装置は、上記金型において、上記複数のゲートのうち互いに隣り合う上記ゲートの中央位置よりも一方の上記ゲートに近い位置に設けられている、請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
上記金型内樹脂圧取得装置は、上記成形品キャビティにおける平面部に設けられている、請求項2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
上記複数のランナは周方向に配列した上記複数のゲートにそれぞれ接続されており、
上記金型内樹脂圧取得装置は、上記金型において、上記複数のランナがそれぞれ接続された上記ゲートと上記スプールとの中央位置よりも、上記ゲートに近い位置に設けられている、請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項5】
上記射出装置を制御する制御装置をさらに備え、
上記制御装置は、
上記ノズルから上記金型に溶融樹脂を射出する射出工程と、
上記射出工程に続いて、上記成形品キャビティ内の溶融樹脂に保圧力を付与する保圧工程と、
を含む成形サイクルを実行し、
上記判定部は、上記射出工程における上記金型内樹脂圧の特徴量、および、上記射出工程における前記吐出圧の特徴量に基づいて、上記各ゲートにおける樹脂の詰まりの有無を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の射出成形装置。
【請求項6】
上記判定部は、上記射出工程のうち上記金型内樹脂圧の立ち上がりの時間帯における上記金型内樹脂圧の特徴量及び上記吐出圧の特徴量に基づいて、上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無を判定する、請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項7】
上記判定部は、上記金型内樹脂圧の特徴量及び上記吐出圧の特徴量と上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無との対応関係を含む学習データに基づいて生成された学習済みモデルに基づいて、又は、上記学習データから算出された判定基準に基づいて、上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の射出成形装置。
【請求項8】
上記吐出圧取得装置により取得された上記吐出圧から上記溶融樹脂における現在の粘度に相関する正規化係数を算出し、該正規化係数を用いて上記吐出圧及び上記金型内樹脂圧を正規化する粘度正規化部をさらに有し、
上記判定部は、上記粘度正規化部により正規化された上記吐出圧及び上記金型内樹脂圧の特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて、上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形装置において、射出装置や金型にセンサを設置し、当該センサの検出データを用いて機械学習により成形品の品質を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、射出成形に用いられる金型は、成形品を成形する部位としての成形品キャビティと、成形品キャビティと射出装置のノズルに当接する部位との間の樹脂流路(ランナ、スプール(スプルーとも称する)、ゲート)とを備える。例えばコールドスラグや異物などによって、樹脂流路のうちのゲートが一時的に詰まる不具合が発生することがある。ゲートが詰まると、溶融樹脂が樹脂流路から成形品キャビティに流通しない状態となるため、成形品の寸法精度の低下や寸法精度の不安定化などの原因となる。
【0005】
成形品を成形するための成形サイクルを複数回連続して実行している際に、一時的にゲートにおける詰まりが生じ、その後にゲートにおける詰まりが解消するようなことがある。また、1個の成形品の成形において成形品キャビティに溶融樹脂が供給されている際に、一時的にゲートにおける詰まりが生じ、その後に当該成形品の成形中にゲートにおける詰まりが解消することがある。このように、ゲートにおける詰まりは、長期間に亘り継続して生じている場合のみならず、一時的に生じることがあり、発見することが容易ではない場合がある。また、樹脂流路や成形品キャビティにおける詰まりの有無は、射出装置における溶融樹脂の射出圧などのロギングデータからは判定することが難しい。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高精度にゲートの詰まりの有無を判定することができる射出成形装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、溶融樹脂を吐出するノズルを備える射出装置と、
成形品キャビティと、上記ノズルから吐出される溶融樹脂を上記成形品キャビティに流入させる樹脂流路とを備える金型と、
上記成形品キャビティ内又は上記樹脂流路内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧を検出する金型内樹脂圧取得装置と、
上記ノズルから吐出される溶融樹脂の吐出圧を取得する吐出圧取得装置と、
上記金型内樹脂圧取得装置により取得された上記金型内樹脂圧と、上記吐出圧取得装置により取得された上記吐出圧とに基づいて特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて、上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無を判定する判定部と、
を備え、
上記樹脂流路は、上記成形品キャビティに接続される複数のゲートと、該複数のゲートにそれぞれ接続された複数のランナと、該複数のランナと上記ノズルとに接続されたスプールとを含み、
上記金型内樹脂圧取得装置は、上記金型における上記複数のゲートのそれぞれの近傍位置に設けられている、射出成形装置にある。
【発明の効果】
【0008】
成形品の成形時には、射出装置から溶融樹脂が金型の樹脂流路に供給され、樹脂流路から成形品キャビティに供給される。成形時に金型の樹脂流路のうちのゲートが詰まると、溶融樹脂が樹脂流路から成形品キャビティへ流通しない状態、または、流通しにくい状態となる。ゲートが詰まることにより金型内樹脂圧が変動するが、複数のゲートを有する場合、各ゲートの近傍位置において当該金型内樹脂圧の変動を検出することで、各ゲートの詰まりの有無をより正確に検出できる。
【0009】
上記の射出成形装置では、金型内樹脂圧取得装置により各ゲートの近傍位置の金型内樹脂圧を取得し、吐出圧取得部により射出装置のノズルから吐出される吐出圧を取得して、これらに基づいて算出される特徴量に基づいて各ゲートの詰まりの有無を判定している。これにより、各ゲートの詰まりの有無をより正確に判定することができるため、成形品の寸法精度などの低下を発見することができ、寸法精度の安定化を図ることができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、高精度にゲートの詰まりの有無を判定することができる射出成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における射出成形装置の機械構成を示す図。
【
図2】実施形態1における
図1における金型の拡大断面図。
【
図3】実施形態1における金型の空間部分(成形品キャビティおよび樹脂流路)及び金型内樹脂圧取得部を示す図であって、スプールの軸方向から見た透過図(
図2の右から見た図)。
【
図4】実施形態1における射出成形方法を示すフローチャート。
【
図5】(a)ゲート詰まりが発生していない場合の射出工程、保圧工程及び冷却工程における圧力変化を示すグラフ、(b)(a)における二点鎖線Pで囲んだ領域の拡大図。
【
図6】(a)ゲート詰まりが発生している場合の射出工程、保圧工程及び冷却工程における圧力変化を示すグラフ、(b)(a)における二点鎖線Pで囲んだ領域の拡大図。
【
図7】実施形態1の射出成形装置を示す機能ブロック図である。
【
図8】実施形態1の射出成形装置を構成するゲート詰まり判定用コンピュータ装置の処理を示す機能ブロック図。
【
図9】実施形態1における、特徴量マップと記憶部に記憶される判定基準を説明する図。
【
図10】実施形態2における金型の空間部分(成形品キャビティおよび樹脂流路)及び金型内樹脂圧取得部を示す図であって、スプールの軸方向から見た透過図。
【
図11】実施形態3における射出成形装置を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
(1.射出成形装置1の構成)
実施形態1における射出成形装置1について
図1を参照して説明する。射出成形装置1は、金型30を用いて、樹脂の成形品を成形するための装置である。射出成形装置1は、ベッド10、射出装置20、金型30、型締装置40、制御装置50、ゲート詰まり判定用のコンピュータ装置60を主として備える。ベッド10は、設置面に設置される部材である。
【0013】
射出装置20は、ベッド10の上に配置される。射出装置20は、成形材料である樹脂を溶融し、溶融樹脂に圧力を加えて金型30の成形品キャビティCに供給する装置である。射出装置20は、ホッパ21、シリンダ22、スクリュ23、ノズル24、ヒータ25、駆動装置26、吐出圧取得装置27を備える。
【0014】
ホッパ21は、成形材料の素材である樹脂製のペレット(粒状の成形材料)の投入口である。シリンダ22は、ホッパ21に投入されたペレットを加熱溶融してできた溶融樹脂を貯留する。また、シリンダ22は、ベッド10に対してシリンダ22の軸方向に移動可能に設けられる。スクリュ23は、シリンダ22の内部に配置され、回転可能かつ軸方向への移動可能に設けられる。ノズル24は、シリンダ22の前端に設けられた吐出口であり、スクリュ23の前進に伴ってシリンダ22の内部の溶融樹脂を吐出する。
【0015】
ヒータ25は、例えば、シリンダ22の外周面に設けられ、または、シリンダ22の内部に埋設され、シリンダ22内の樹脂を加熱する。つまり、ヒータ25は、ペレットを溶融すると共に、溶融樹脂を溶融状態に保持する。駆動装置26は、シリンダ22の軸方向への移動(前進および後退)、スクリュ23の回転および軸方向移動(前進および後退)等を行う。
【0016】
吐出圧取得装置27は、例えばスクリュ23の基端付近に設けられ、スクリュ23がシリンダ22内の溶融樹脂から受ける圧力データである吐出圧を取得する。
【0017】
また、射出装置20は、吐出圧取得装置27の他に、シリンダ22の位置、スクリュ23の位置、スクリュ23の移動速度、ヒータ25の温度、駆動装置26の状態などを取得するセンサを備える。
【0018】
金型30は、固定側である第一型31と、可動側である第二型32とを備える。金型30は、第一型31と第二型32とを型締めすることで、第一型31と第二型32との間に成形品キャビティCを形成する。第一型31および第二型32は、成形品キャビティCと射出装置20のノズル24に当接する部位との間の樹脂流路Pを備える。樹脂流路Pは、射出装置20のノズル24から供給された溶融材料を成形品キャビティCまで導く流路としてスプールP1、ランナP2、ゲートP3を含む。
【0019】
さらに、金型30は、成形品キャビティC内又は樹脂流路P内の樹脂材料の圧力である金型内圧力データを検出する金型内樹脂圧取得装置33を備える。金型内圧力データは、成形品キャビティC又は樹脂流路Pの内壁面が金型30内を流通する溶融樹脂から受ける圧力データである。
【0020】
型締装置40は、ベッド10上において射出装置20に対向配置される。型締装置40は、装着された金型30の開閉動作を行うと共に、金型30を締め付けた状態において、成形品キャビティCに射出された溶融材料の圧力により金型30が開かないようにする。
【0021】
型締装置40は、固定盤41、可動盤42、ダイバー43、駆動装置44、型締装置用計測装置45を備える。固定盤41には、第一型31が固定される。可動盤42には、第二型32が固定される。可動盤42は、固定盤41に対して接近および離間可能である。ダイバー43は、可動盤42の移動を支持する。駆動装置44は、例えば、シリンダ装置によって構成されており、可動盤42を移動させる。型締装置用計測装置45は、型締力、金型温度、駆動装置44の状態などを取得する。
【0022】
制御装置50は、射出装置20の駆動装置26および型締装置40の駆動装置44を制御する。ゲート詰まり判定用のコンピュータ装置60は、金型30の樹脂流路Pにおける各ゲートP3(
図2に示す)の詰まりの有無の判定を行う。ゲート詰まり判定用のコンピュータ装置60は、演算装置および記憶装置などにより構成されており、コンピュータプログラムを実行することにより処理される。ゲート詰まり判定用のコンピュータ装置60は、例えば、制御装置50による制御データ、吐出圧取得装置27、金型内樹脂圧取得装置33などにより取得される圧力データなどを用いて、各ゲートP3の詰まりの有無を判定する。
【0023】
(2.金型30の詳細構成)
金型30の詳細な構成について、
図2および
図3を参照して説明する。金型30は、成形品を成形するための成形品キャビティCを有する。成形品キャビティCは、第一型31と第二型32とにより形成される。本形態においては、成形品キャビティCは、例えば、円環状に形成されているが、C字形状、U字形状など任意の形状とすることができる。成形品キャビティCは、1箇所のみ形成されるようにしても良いし、複数箇所形成されるようにしても良い。
図2および
図3においては、説明を容易にするために、1つの成形品キャビティCを図示する。
【0024】
また、金型30は、ノズル24(
図1に示す)と当接する部位と成形品キャビティCとの間の接続する樹脂流路Pを有する。樹脂流路Pは、スプールP1(スプルーとも称する)と、ランナP2と、ゲートP3とを備える。スプールP1は、ノズル24から溶融材料が導入される通路である。スプールP1は、例えば、ノズル24との当接部位から直線状に形成されている。
【0025】
ランナP2は、スプールP1から角度を有して形成される流路である。つまり、スプールP1に導入された溶融樹脂が、ランナP2に流入される。例えば、
図3に示すように、本形態においては、複数のランナP2が、スプールP1から1つの成形品キャビティCに向かって径方向に分岐して形成されている。なお、複数の成形品キャビティCが形成される場合にも、複数のランナP2が、スプールP1から複数の成形品キャビティCのそれぞれに向かって分岐して形成される。
【0026】
ゲートP3は、ランナP2の先端に位置して成形品キャビティCに接続されており、ランナP2から成形品キャビティCに溶融樹脂を導く流路である。ゲートP3の流路断面積は、ランナP2の流路断面積よりも小さく形成されている。複数のランナP2のそれぞれと1つの成形品キャビティCとを接続する複数のゲートP3が形成されている。従って、複数のゲートP3のうち1つが詰まった場合であっても、他のゲートP3から成形品キャビティCに溶融樹脂が流通する。ランナP2及びゲートP3の数は限定されないが、本形態においては、
図3に示すように、ランナP2及びゲートP3はそれぞれ4個形成されている。4個のゲートP3(P31~P34)はスプールP1の軸方向から見てスプールP1の中心を基準に周方向に等間隔に配列している。
【0027】
金型30には、
図2、
図3に示すように、金型内樹脂圧取得装置33が設けられている。金型内樹脂圧取得装置33は、複数のゲートP3のそれぞれの近傍位置に設けられる。本実施形態で4個の金型内樹脂圧取得装置331~334が設けられている。ゲートP3のそれぞれの近傍位置とは、
図3に示すように、配列方向において互いに隣り合うゲートP3同士の中央位置P4よりも一方のゲートP3に近い位置をいう。つまり、金型内樹脂圧取得装置33は、複数のゲートP3に対応する位置に設けられている。そして、複数の金型内樹脂圧取得装置33のそれぞれは、対応するゲートP3における詰まりの影響を受ける範囲に設けられている。また、本実施形態では、
図2に示すように、金型内樹脂圧取得装置33は、成形品キャビティCの平面部C1に設けられている。金型内樹脂圧取得装置33は、金型30内の溶融樹脂の圧力を取得する。
【0028】
(3.射出成形方法)
射出成形装置1による成形品の射出成形方法について
図4を参照して説明する。射出成形方法は、射出成形装置1の制御装置50により実行される。
【0029】
まず、制御装置50は、連続した複数回の成形サイクルの前に、ノズル24を金型30から離間させた状態でノズル24からシリンダ22内の溶融樹脂を吐出させるパージ工程S1を実行する。パージ工程S1は、例えば、熱劣化した樹脂の排出や、異なる樹脂材料への入替の目的で行われる。パージ工程S1では、スクリュ23を前進させることにより、シリンダ22内の溶融樹脂がノズル24から吐出される。
【0030】
続いて、制御装置50は、スクリュ23を回転させながら、スクリュ23を所定位置まで後退させることにより、シリンダ22の前側に所定量の溶融樹脂を貯留させる計量工程S2を実行する。計量工程にS2おいては、前方位置に位置するスクリュ23を回転させることでシリンダ22の前端側に溶融樹脂を移動させ、溶融樹脂の前方への移動の反作用によりスクリュ23を所定位置まで後退させる。このようにして、シリンダ22内において、スクリュ23の先端とノズル24との間に、所定量の溶融樹脂が貯留される。
【0031】
続いて、制御装置50は、シリンダ22を前進させることにより、ノズル24を金型30に当接させるノズルタッチ工程S3を実行する。なお、このとき、金型30は、型締めされているものとする。ただし、ノズルタッチ工程S3の後に、型締めを行うようにしても良い。
【0032】
続いて、制御装置50は、以下の成形サイクルS4~S11を実行する。制御装置50は、スクリュ23の速度制御によりスクリュ23を前進させて、ノズル24から金型30に溶融樹脂を射出する射出工程S4を実行する。射出工程S4において、溶融樹脂がノズル24から樹脂流路Pに流入し、樹脂流路Pから成形品キャビティCへ流入する。射出工程S4にて、成形品キャビティCの大部分(例えば、90~95%)に溶融樹脂が供給される。
【0033】
制御装置50は、射出工程S4に続いて、スクリュ23にかかる圧力制御により、成形品キャビティCの溶融樹脂に保圧力を付与する保圧工程S5を実行する。保圧工程S5では、スクリュ23に所定の圧力を付与するように制御することで、スクリュ23をさらに前進させて、ノズル24から樹脂流路Pを介して成形品キャビティCに溶融樹脂を供給する。保圧工程S5において、成形品キャビティCが溶融樹脂により完全充填される。
【0034】
続いて、制御装置50は、スクリュ23への圧力の付与を停止すると共に金型30の加熱を停止して、金型30を冷却することにより金型30内の溶融樹脂を冷却する冷却工程S6を実行する。冷却工程S6にて、金型30内の溶融樹脂が固化する。制御装置50は、冷却工程S6に続いて、型締装置40を制御して、第一型31から第二型32を離間させて、成形品を取り出す離型・成形品取出工程S7を実行する。続いて、制御装置50は、型締装置40を制御して、第一型31に第二型32を合わせ、型締めを行う型締め工程S8を実行する。
【0035】
また、保圧工程S5を終了した後には、制御装置50は、シリンダ22を後退させることにより、ノズル24を金型30から離間させるノズル離間工程S9を実行する。制御装置50は、ノズル離間工程S9に続いて、前方位置に位置するスクリュ23を回転させることでシリンダ22の前端側に溶融樹脂を移動させ、溶融樹脂の前方への移動の反作用によりスクリュ23を所定位置まで後退させることで、シリンダ22の前側に所定量の溶融樹脂を貯留させる計量工程S10を実行する。
【0036】
型締め工程S8および計量工程S10が完了した後に、制御装置50は、シリンダ22を前進させることにより、ノズル24を金型30に当接させるノズルタッチ工程S11を実行する。ただし、ノズルタッチ工程S11の後に、型締め工程S8を実行しても良い。そして、ノズルタッチ工程S11の後には、上述した射出工程S4から再び繰り返される。
【0037】
(4.吐出圧および金型内圧力の挙動)
射出工程S4および保圧工程S5における金型内樹脂圧取得装置33(331~334)及び吐出圧取得装置27の取得圧力の挙動(時間変化)について、
図5(a)、(b)および
図6(a)、(b)を参照して説明する。まず、各ゲートP3における詰まりが無い状態について、
図5(a)、(b)を参照して説明する。なお、金型内樹脂圧取得装置331は金型内樹脂圧Aを取得し、金型内樹脂圧取得装置332は金型内樹脂圧Bを取得し、金型内樹脂圧取得装置333は金型内樹脂圧Cを取得し、金型内樹脂圧取得装置334は金型内樹脂圧Dを取得するものとする。
【0038】
図5(a)、(b)にて示すように、時刻t1において、射出工程S4が開始されることにより、スクリュ23が前進し、吐出圧が上昇する。その後、本形態においては、スクリュ23の前進速度を、最初低速とした後に、高速に切り替えている。
【0039】
図5(a)、(b)に示すように、スクリュ23の前進速度を高速に切り替えると、溶融樹脂が金型30の樹脂流路Pに流入することで、吐出圧および金型内樹脂圧は、急上昇する。そして、樹脂流路PのゲートP3から成形品キャビティCに流入することで、吐出圧および金型内樹脂圧は僅かに低下して、その後徐々に上昇するように変化する。従って、射出工程S4において、吐出圧は、吐出圧ピーク時t2において最大値となる。射出工程S4を終了する時刻をt4とし、射出工程S4において、吐出圧ピーク時t2と射出工程終了時t4との間の時刻をt3とする。時刻t3は、例えば、圧力ピーク時t2と射出工程終了時t4との中間時刻とするが、中間時刻からずれた時刻としても良い。
【0040】
図5(a)に示すように、射出工程S4から保圧工程S5に切り替わることにより、吐出圧および金型内樹脂圧は、保圧工程S5における圧力制御による所望の保圧力近傍まで低下する。通常、吐出圧および金型内樹脂圧は、所望の保圧力より僅かに低い圧力まで低下した直後に、所望の保圧力近傍に向かって上昇する。
【0041】
そして、保圧工程S5が継続されて、成形品キャビティCに溶融樹脂が完全充填された時、すなわち充填完了時t5において、吐出圧および金型内樹脂圧は上昇する。吐出圧は、圧力制御されているため、その直後において所望の保圧力となる。一方、金型内樹脂圧は、充填完了時t5の後には、徐々に上昇していく。
【0042】
次に、ゲートP32における詰まりが有る場合について、
図6(a)、(b)を参照して説明する。ゲート詰まりのない
図5(b)の場合と比べて
図6(b)では、射出工程S4におけるゲートP32の近傍位置に配置された金型内樹脂圧取得装置332により取得された金型内樹脂圧Bの立ち上がりが遅れていること及び射出工程S4におけるピーク圧力が低下していることが見て取れる。一方、その他の金型内樹脂圧A、C及びDは射出工程S4におけるピーク圧力が若干上昇している。
【0043】
(6.第一実施形態の射出成形装置1)
第一実施形態の射出成形装置1について
図7および
図8を参照して説明する。射出成形装置1は、
図7に示すように、射出装置20、金型30、型締装置40、制御装置50およびコンピュータ装置60を備える。
図7においては、射出成形装置1の一部の機能部分のみを図示する。また、以下においては、コンピュータ装置60について説明する。
【0044】
コンピュータ装置60は、判定部61と記憶部62とを備える。判定部61は、上述したコンピュータ装置60を構成する演算装置により構成されており、コンピュータプログラムの実行により機能する。記憶部62は、上述したコンピュータ装置60を構成する記憶装置により構成されている。
【0045】
判定部61は、金型内樹脂圧取得装置33により取得された金型内樹脂圧と吐出圧取得装置27により取得された吐出圧とに基づいて、各ゲートP3(P31~P34)の詰まりの有無を判定する。各ゲートP3は、上述したように、ランナP2と成形品キャビティCとの間に位置し、流路断面積がランナP2よりも小さい。従って、ゲートP3は、例えば、コールドスラグや異物などによって詰まるおそれがある。判定部61は、このような各ゲートP3の詰まりの有無を判定する。さらには、上述した成形サイクルを複数回連続して実行している際において、一時的に各ゲートP3のいずれかにおける詰まりが生じた後に当該ゲート詰まりが解消する現象が起こりうる。この現象において、判定部61は、一時的なゲートP3の詰まりの有無を判定することができる。
【0046】
さらに、判定部61は、金型内樹脂圧A~Dおよび吐出圧そのものではなく、金型内樹脂圧A~Dの特徴量および吐出圧の特徴量に基づいて、各ゲートP3の詰まりの有無を判定する。従って、判定部61は、取得した金型内樹脂圧A~Dから特徴量を抽出すると共に、取得した吐出圧から特徴量を抽出する。
【0047】
本形態において、判定部61は、射出工程S4(時刻t1~t4)における金型内樹脂圧の特徴量、および、射出工程S4における吐出圧の特徴量を用いて、ゲートP3の詰まりの有無を判定する。特に、判定部61は、射出工程S4のうち吐出圧が圧力ピークに達した以降、すなわち、時刻t2~t4における金型内樹脂圧の特徴量および吐出圧の特徴量を用いる。
【0048】
より具体的には、判定部61は、射出工程S4における圧力の立ち上がり部分、すなわち、射出工程S4のうち保圧工程S5寄りの後期時間帯(t3~t4)における金型内樹脂圧A~Dの特徴量、および、射出工程S4のうち保圧工程S5寄りの後期時間帯(t3~t4)における吐出圧の特徴量を用いる。
【0049】
特徴量は、例えば、後期時間帯(t3~t4)における金型内樹脂圧A~Dの時間積分値、および、後期時間帯(t3~t4)における吐出圧の時間積分値などとする。なお、特徴量は、後期時間帯(t3~t4)における金型内樹脂圧A~Dの最大値、最小値、中央値、平均値、第一四分位数、第三四分位数、分散、標準偏差、尖度、歪度などを用いるようにしても良い。また、判定部61は、複数の特徴量を用いるようにしても良い。
【0050】
また、本形態においては、判定部61は、機械学習を適用して、各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定する。従って、判定部61は、予め生成された学習済みモデルを用いて、各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定する。特に、判定部61は、機械学習を適用する場合には、複数の特徴量を適用することが容易にできる。
【0051】
記憶部62は、判定部61により各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定するために用いられる情報を記憶する。本形態においては、記憶部62は、訓練データセットを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを記憶する。判定部61は、記憶部62に記憶された学習済みモデルを用いる。
【0052】
機械学習を適用する場合のコンピュータ装置60の機能について
図8を参照して説明する。学習フェーズとして、まずは、訓練データセット63を準備する。訓練データセット63は、金型内樹脂圧の特徴量と、吐出圧の特徴量と、各ゲートP31~P34における詰まりの有無のラベルデータとを含む。
【0053】
学習フェーズとして、コンピュータ装置60における機械学習処理部64が、訓練データセット63を用いて機械学習を行うことにより、1つの学習済みモデルを生成する。学習済みモデルは、記憶部62に記憶される。本形態においては、学習済みモデルは、金型内樹脂圧の特徴量および吐出圧の特徴量を説明変数とし、各ゲートP31~P34の詰まりの有無を目的変数とする。
【0054】
続いて、推定フェーズとして、判定部61が、検出データ65としての金型内樹脂圧および吐出圧を取得する。そして、判定部61は、金型内樹脂圧の特徴量を算出し、かつ、吐出圧の特徴量を算出する。続いて、判定部61は、記憶部62に記憶されている学習済みモデルを用いて、金型内樹脂圧の特徴量および吐出圧の特徴量を入力することにより、各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定する(出力する)。
【0055】
本実施形態では、学習済みモデルを用いて各ゲートP31~P34における詰まりの有無を判定することとしたが、これに替えて、記憶部62に予め各ゲートP31~P34における詰まりの有無を判定するための判定基準を設定しておき、判定部61が金型内樹脂圧の特徴量および吐出圧の特徴量と当該判定基準とを比較して、各ゲートP31~P34における詰まりの有無を判定することとしてもよい。
図9に示す例では、金型内樹脂圧取得装置331~334により取得された各ゲートP31~P34における金型内樹脂圧と吐出圧取得装置27により取得された吐出圧との2次元マップにおいて、直線で示された判定基準よりも下方をゲート詰まりありと判定して、当該判定基準よりも上方をゲート詰まりなしと判定する。この場合においても各ゲートP31~P34における詰まりの有無を判定することができる。
【0056】
(7.実施形態1の効果)
成形品の成形時には、射出装置20から溶融樹脂が金型30の樹脂流路Pに供給され、樹脂流路Pから成形品キャビティCに供給される。成形時に金型30の樹脂流路PのうちのゲートP3が詰まると、溶融樹脂が樹脂流路Pから成形品キャビティCへ流通しない状態、または、流通しにくい状態となる。
【0057】
そして、ゲートP3が詰まることにより樹脂流路Pにおける金型内樹脂圧に変動を生じることに着目し、射出成形装置1の判定部61は、各ゲートP31~P34の近傍位置にそれぞれ設けた金型内樹脂圧取得装置331~334により取得した金型内樹脂圧の特徴量に基づいて、各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定している。各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することにより、成形品の寸法精度などの低下を発見することができ、寸法精度の安定化を図ることができる。
【0058】
特に、各ゲートP31~P34の近傍位置に金型内樹脂圧取得装置331~334を設けたことにより、
図5(b)と
図6(b)に示すように、ゲート詰まりが生じているゲートP32の近傍位置に設けた金型内樹脂圧取得装置332により取得された金型内樹脂圧Bの変化を検出することができる。従って、金型内樹脂圧の特徴量を用いることにより、各ゲートP31~P34の詰まりの有無を高精度に判定できる。
【0059】
さらに、判定部61は、ゲートP3の詰まりの有無の判定において、金型内樹脂圧の特徴量に加えて、吐出圧の特徴量を用いるようにした。射出工程S4において、ゲートP3の詰まりの有無により、金型内樹脂圧のみならず、吐出圧も変化している。従って、判定部61が、金型内樹脂圧の特徴量に加えて、吐出圧の特徴量を用いることにより、より高精度に各ゲートP31~P3の詰まりの有無を判定することができる。
【0060】
また、判定部61は、金型内樹脂圧および吐出圧のうち射出工程S4におけるデータを用いている。特に射出工程S4において、ゲートP3の詰まりの有無によって圧力に変化が生じる。従って、判定部61は、射出工程S4の圧力データを用いることで、高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。
【0061】
本実施形態では、複数のゲートP31~P34は周方向に配列しており、金型内樹脂圧取得装置331~334は、金型30において、複数のゲートP31~P34のうち互いに隣り合うゲートP3の中央位置P4よりも一方のゲートP3に近い位置に設けられている。これにより、金型内樹脂圧取得装置331~334は、ゲートP31~P34の近傍位置に確実に位置されることとなるため、高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。
【0062】
本実施形態では、金型内樹脂圧取得装置331~334は、成形品キャビティCにおける平面部C1に設けられている。これにより、金型内樹脂圧取得装置331~334による圧力の検出精度をより向上することができるため、高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。
【0063】
本実施形態では、射出装置20を制御する制御装置50をさらに備え、制御装置50は、ノズル24から金型30に溶融樹脂を射出する射出工程S4と、射出工程S4に続いて、成形品キャビティC内の溶融樹脂に保圧力を付与する保圧工程S5と、を含む成形サイクルを実行する。そして、判定部61は、射出工程S4における金型内樹脂圧A~Dの特徴量、および、射出工程S4における吐出圧の特徴量に基づいて、各ゲートP31~P34における樹脂の詰まりの有無を判定する。これにより、一層、高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。
【0064】
本実施形態では、判定部61は、射出工程S4のうち金型内樹脂圧の立ち上がりの時間帯における金型内樹脂圧の特徴量及び吐出圧の特徴量に基づいて、上記樹脂流路における樹脂の詰まりの有無を判定する。これにより、射出工程S4のうち金型内樹脂圧の立ち上がりの時間帯において、ゲート詰まりによる金型内樹脂圧の変化が顕著に表れるため、一層、高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。
【0065】
本実施形態では、判定部61は、金型内樹脂圧の特徴量及び吐出圧の特徴量とゲートP3における樹脂の詰まりの有無との対応関係を含む学習データに基づいて生成された学習済みモデルに基づいて、又は、学習データから算出された判定基準に基づいて、各ゲートP31~P34における樹脂の詰まりの有無を判定する。上記学習済みモデルに基づいた場合は、材料や環境のバラつきの影響が大きい製品においても高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。上記判定基準に基づいた場合は、学習モデルを用意する必要がないため、低コスト化を図ることができる。
【0066】
[実施形態2]
実施形態2における射出成形装置1では、
図10に示すように、複数のランナP21~P24は周方向に配列した複数のゲートP31~P32にそれぞれ接続されている。そして、金型内樹脂圧取得装置331~334は、金型30において、複数のランナP21~P24のそれぞれが接続されたゲートP31~P34とスプールP1との中央位置P41~P44よりも、上記ゲートに近い位置に設けられている。その他の構成は、実施形態1の場合と同等であるため、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
実施形態2においても、金型内樹脂圧取得装置331~334は、ゲートP31~P34の近傍位置に設けられるため、高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。しかしながら、ランナP21~P24はいずれも略円錐形状また略円錐形状と略円柱形状とを組み合わせた形状となっているため、実施形態1の場合の成形品キャビティCの平面部C1の場合に比べて、金型内樹脂圧取得装置331~334による金型内樹脂圧の検出精度は若干劣る可能性がある。
【0068】
[実施形態3]
実施形態3における射出成形装置1では、
図11に示すように、ゲート詰まり判定用のコンピュータ装置60が粘度正規化部66をさらに備える。粘度正規化部66は、吐出圧取得装置27により取得された吐出圧から溶融樹脂における現在の粘度に相関する正規化係数を算出し、該正規化係数を用いて吐出圧及び金型内樹脂圧を正規化する。粘度正規化部66では、溶融樹脂の粘度を取得することはせずに、吐出圧取得装置27により取得された吐出圧の変化から溶融樹脂の粘度の変化度を推定して現在の粘度に相関する正規化係数を算出する。
【0069】
そして、本実施形態3では、判定部61は、
図8に示す判定データとして、粘度正規化部66により正規化された吐出圧及び金型内樹脂圧を用いてそれぞれの特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて、各ゲートP31~P34における樹脂の詰まりの有無を判定する。その他の構成は実施形態1の場合と同等であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
本実施形態3によれば、材料のロットバラつきや水分含有量のバラつきによる溶融材料の粘度変化を考慮して吐出圧及び金型内樹脂圧の特徴量を算出することができるため、より高精度に各ゲートP31~P34の詰まりの有無を判定することができる。
【0071】
本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:射出成形装置、20:射出装置、27:吐出圧取得装置、30:金型、33(331~334):金型内樹脂圧取得装置、50:制御装置、60:コンピュータ装置、61:判定部、62:記憶部、66:粘度正規化部