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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176964
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20231206BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231206BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231206BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231206BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20231206BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02J50/40
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L15/20 J
B60L53/122
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089578
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD06
5H105AA01
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125CA11
5H125CA18
5H125DD02
5H125EE51
5H125EE63
5H125FF14
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】設定された走行経路を、受電コイルを有する車両が走行する際に、十分に給電することが可能な送電装置を提供する。
【解決手段】走行中の車両(10)に対して非接触で給電を行う走行中給電システム(1)において用いられる送電装置(2)であって、送電装置は、走行経路設定装置(111)においてHDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線(51)を基準として道路(4)に設けられ、車両が有する受電コイル(35)へ非接触で電力を供給する送電コイル(21)と、送電コイルに電力を供給する送電回路(24)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両(10)に対して非接触で給電を行う走行中給電システム(1)において用いられる送電装置であって、
走行経路設定装置(111)においてHDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線(51)を基準として道路に設けられ、前記車両が有する受電コイル(35)へ非接触で電力を供給する送電コイル(21)と、
前記送電コイルに電力を供給する送電回路(24)と、
を備える送電装置。
【請求項2】
前記ガイド線は、前記HDマップに含まれる静的な情報としての車線リンクである、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記車線リンクに、前記道路に沿って複数の前記送電コイルが設けられている、請求項2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記車線リンクから車線の幅方向に予め定められた距離離れた位置に、前記道路に沿って複数の前記送電コイルが設けられている、請求項2に記載の送電装置。
【請求項5】
車線の幅方向に複数の前記送電コイルが並んで設けられている、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の送電装置。
【請求項6】
インバータ(56)をさらに備え、
単一の前記インバータから複数の前記送電コイルへ給電する、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の送電装置。
【請求項7】
単一の前記インバータは、種類の異なる複数の前記送電コイルへ給電する、請求項6に記載の送電装置。
【請求項8】
前記車両は、前記走行経路設定装置において設定された前記走行経路に沿った自動運転および手動運転が可能であり、
前記自動運転および前記手動運転が可能な前記車両に対して給電可能である、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行中給電システムにおける送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車が普及しつつある。電気自動車は、車載されたバッテリに蓄えられた電力によりモータを駆動することによって、車輪を回転させて走行する。このような電気エネルギーを動力に用いる車両に対し、DWPT(ダイナミック・ワイヤレス・パワー・トランスファー:動的ワイヤレス充電)と呼ばれる技術を用いて、非接触で電力を供給する走行中給電システムが開発されている。この走行中給電システムでは、地上側に埋め込んだ送電コイルから、車両の床下に搭載した受電コイルに非接触で電力を伝送している。
【0003】
一方、特許文献1には、自動走行支援システムにおいて、他車両または路側機から提供される動的情報を静的情報に対応付けてダイナミックマップを提供する地図データ生成装置が記載されている。一般的に、自動運転システム(ADS)では、高精度3次元地図データ(HDマップ:High-Definition Map)の車線リンク(車線中心線)に基づき、走行経路を決定して車両の走行制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-30362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記、従来技術において、例えば、自動運転システムにより設定された走行経路を車両が走行する際に、車両側の受電コイルが道路側の送電コイルと対向せずに互いにずれた状態で車両が走行し続けると、充電ができないという問題が生じていた。なお、上記走行中給電システムにおいて、送電コイルは地中に埋設されているため、簡単に移設することはできない。本開示は、上記のような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、設定された走行経路を、受電コイルを有する車両が走行する際に、十分に給電することが可能な送電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の一形態によれば、送電装置が提供される。この送電装置は、走行中の車両(10)に対して非接触で給電を行う走行中給電システム(1)において用いられる送電装置であって、走行経路設定装置(111)においてHDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線(51)を基準として道路に設けられ、前記車両が有する受電コイル(35)へ非接触で電力を供給する送電コイル(21)と、前記送電コイルに電力を供給する送電回路(24)と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、送電装置が備える送電コイルは、HDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線を基準として道路に設けられている。このため、ガイド線を用いて設定された走行経路を車両が走行する際に、送電装置の送電コイルと、車両側の受電コイルとが対向しやすい。したがって、設定された走行経路を車両が走行する際に、送電コイルと受電コイルとが対向した状態が一定時間維持され、安定した給電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態における、走行中給電システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本開示の第1実施形態における車両制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の送電装置において、送電コイルの埋設形態を模式的に示す平面図である。
図4】第2実施形態の送電装置において、送電コイルの埋設形態を模式的に示す平面図である。
図5】第3実施形態の送電装置において、送電コイルの埋設形態を模式的に示す平面図である。
図6】第4実施形態の送電装置において、送電コイルの埋設形態を模式的に示す平面図である。
図7】第5実施形態の送電装置において、インバータと送電コイルとの接続形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の複数の実施形態について図1図7に基づいて説明する。
A.第1実施形態:
A1.走行中給電システム1の構成:
図1に示すように、走行中給電システム1は、道路4に設けられた送電装置2と、車両10側の受電装置3とを備える。走行中給電システム1は、車両10の走行中に送電装置2から車両10にワイヤレスで給電することが可能なシステムである。車両10は、例えば、電気自動車やハイブリッド車として構成される。
【0011】
道路4側の送電装置2は、複数の送電コイル21と、複数の送電コイル21のそれぞれに交流電圧を印加して電力を供給する複数の送電回路24と、複数の送電回路24に電力を供給する外部電源25(以下「電源25」と略す。)と、送電制御部26と、を備えている。
【0012】
複数の送電コイル21は、道路4の進行方向に沿って並ぶように設置されている。送電コイル21は、複数のセクタに区分されている。なお、送電コイル21のより具体的な道路4への埋設形態については、図3を参照して後述する。送電回路24は、電源25から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して送電コイル21に印加する回路であり、インバータ回路、フィルタ回路、共振回路を含んでいる。本実施形態では、インバータ回路、フィルタ回路、共振回路については、周知のものなので、説明を省略する。
【0013】
電源25は、直流電圧を送電回路24に供給する回路である。例えば、電源25は、系統電源から力率改善回路(PFC)を介して送電回路24へ供給される。なお、電源25で系統電源から受電し、電圧変換した50/60Hzの交流を各送電回路へ配電し、各送電回路でPFC及び交流直流変換する形態でもよい。PFCについては、図示を省略している。電源25が出力する直流電圧は、完全な直流電圧でなくてもよく、ある程度の変動(リップル)を含んでいても良い。送電制御部26は、送電回路24および送電コイル21に送電を実行させる。
【0014】
車両10は、メインバッテリ31と、補機バッテリ32と、給電制御部33と、受電回路34と、受電コイル35と、DC/DCコンバータ回路36と、インバータ回路37と、モータジェネレータ41と、補機42と、タイヤ43と、電力メータ44と、を備えている。車両10は、その他、主に自動運転制御に関する自動運転制御システム100(図2参照)を備えているが、これらの構成については、図2を用いて、後述する。
【0015】
受電コイル35は、受電回路34に接続されており、受電回路34の出力には、メインバッテリ31と、DC/DCコンバータ回路36の高圧側と、インバータ回路37と、が接続されている。DC/DCコンバータ回路36の低圧側には、補機バッテリ32と、補機42と、が接続されている。インバータ回路37には、モータジェネレータ41が接続されている。第1実施形態において、受電コイル35は、車両10の幅方向および長さ方向の中心近傍に設けられている。受電コイル35は、送電コイル21からの供給される電力を受け取る。
【0016】
受電回路34は、受電コイル35から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路を含む。なお、受電回路34は、整流回路にて生成した直流の電圧を、メインバッテリ31の充電に適した電圧に変換するDC/DCコンバータ回路を含んでいても良い。受電回路34から出力される直流電圧は、メインバッテリ31の充電や、インバータ回路37を介したモータジェネレータ41の駆動に利用することができる。また、DC/DCコンバータ回路36を用いて降圧することで、補機バッテリ32の充電や、補機42の駆動にも利用可能である。
【0017】
メインバッテリ31は、モータジェネレータ41を駆動するための比較的高い直流電圧を出力する2次電池である。モータジェネレータ41は、3相交流モータとして動作し、車両10の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ41は、車両10の減速時にはジェネレータとして動作し、3相交流電圧を発生する。インバータ回路37は、モータジェネレータ41がモータとして動作するとき、メインバッテリ31の直流電圧を3相交流電圧に変換してモータジェネレータ41に供給する。インバータ回路37は、モータジェネレータ41がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ41が出力する3相交流電圧を直流電圧に変換してメインバッテリ31に供給する。
【0018】
DC/DCコンバータ回路36は、メインバッテリ31の直流電圧を、補機42の駆動に適した直流電圧に変換して補機バッテリ32及び補機42に供給する。補機バッテリ32は、補機42を駆動するための直流電圧を出力する2次電池である。補機42は、車両10の空調装置や電動パワーステアリング装置、ヘッドライト、ウインカ、ワイパー等の周辺装置や車両10の様々なアクセサリーを含む。DC/DCコンバータ回路36は無くても良い。
【0019】
電力メータ44は、受電コイル35で給電を受けた電力量を計量する。電力メータ44で計量した電力量は、図示しない記憶部に記憶される。また、電力メータ44で計量した電力量は、例えば、車両の車内に設けられたモニタ画面(図2を参照して後述する報知装置150)等に表示してもよい。給電制御部33は、走行中に非接触給電を受ける際には、受電回路34を制御して受電を実行する。
【0020】
A2.自動運転制御システム100の構成:
図2に示すように、車両10は、自動運転制御システム100を備える。車両10は、自動運転および手動運転が可能である。自動運転では、車両10の運転を操作するための操舵ハンドルがドライバによって操作されていなくても、自動的に車両10が操舵されて運転される。また、自動運転では、操舵はドライバにより行われ、加減速が自動的に制御される形態もある。手動運転では、ドライバによって操舵ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルが操作されることによって操舵や加減速が行われて車両10が運転される。
【0021】
本実施形態において、自動運転制御システム100は、車両制御装置110と、周辺センサ120と、内部センサ130と、道路情報記憶部140と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、を備える。車両制御装置110と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、前述の給電制御部33とは、車載ネットワーク250を介して接続されている。
【0022】
周辺センサ120は、自動運転に必要な車外の周辺情報を取得する。周辺センサ120は、カメラ121と物体センサ122とを備える。カメラ121は、車両10の周囲を撮像して画像を取得する。物体センサ122は、車両10の周囲の状況を検出する。物体センサ122として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。
【0023】
内部センサ130は、自車位置センサ131と、加速度センサ132と、車速センサ133と、ヨーレートセンサ134と、を備える。自車位置センサ131は、現在の車両10の位置を検出する。自車位置センサ131として、例えば、汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))やジャイロセンサ等が挙げられる。
【0024】
加速度センサ132は、車両10の加速度を検出する検出器である。加速度センサ132は、例えば、車両10の前後方向の縦加速度を検出する縦加速度センサと、車両10の横加速度を検出する横加速度センサとを含む。車速センサ133は、車両10の現在の走行速度を計測する。ヨーレートセンサ134は、車両10の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサ134としては、例えばジャイロセンサを用いることができる。周辺センサ120および内部センサ130は、取得した各種データを車両制御装置110に送信する。
【0025】
道路情報記憶部140は、車両10が走行予定の道路に関する詳細な道路情報等を記憶する。道路情報は、HDマップ(High-Definition Map:高精度3次元地図データ)に含まれる静的な情報である。例えば、道路情報は、車線数、車線幅、各車線の中心座標、停止線位置、信号機位置、ガードレール位置、道路勾配、カーブや直線部の道路種別、カーブの曲率半径、カーブ区間の長さ等の情報を含む。なお、これらの道路情報等は、広域ネットワークを介して、適宜最新の情報にアップデートされる。
【0026】
報知装置150は、車両10の乗員(主にドライバ)に対して、画像や音声を用いて各種の情報を報知する装置である。報知装置150は、表示装置およびスピーカを含む。表示装置としては、例えば、HUD(Head-Up Display)や、インストルメントパネルに設けられた表示装置を用いることができる。なお、「画像」には、動画や文字列も含まれる。
【0027】
車両制御装置110は、走行経路設定部111と、周辺情報認識部112と、報知部114と、制御決定部115と、通信部116と、を備える。車両制御装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0028】
走行経路設定部111は、車両10の走行する経路を設定する。より具体的には、走行経路設定部111は、道路情報記憶部140に記憶された道路情報を用いて、予め定められた目的地までの目標走行経路を設定する。本実施形態における「目標走行経路」とは、目的地までの単なる道順ではなく、走行車線や道路内における走行位置等の詳細な経路を示す。走行経路設定部111は、「走行経路設定装置」に相当する。
【0029】
周辺情報認識部112は、周辺センサ120の検出信号を用いて車両10の周辺情報を認識する。より具体的には、周辺情報認識部112は、カメラ121が撮像した画像および物体センサ122の出力信号に基づき、走行している道路の左右の区画線(以下、「レーンマーカ」という)の存在とその位置や、信号機の存在とその位置や指示内容、他車両の存在、位置、大きさ、距離、進行方向、他車両のドライバの存在とその動作、他車両の周辺の人の存在、位置、等を周辺情報として認識する。なお、周辺情報認識部112は、信号機や、外部サーバ等との無線通信によってこれらの情報の一部または全部を取得し、認識してもよい。
【0030】
報知部114は、画像表示および音声出力が可能な上記報知装置150を用いて、走行経路および車両位置情報等の種々の情報を乗員に報知する。報知部114は、例えば、ハンズオン要求の情報を、車両10の走行状況に応じて制御決定部115の処理に従って報知する。ハンズオン要求とは、自動運転の実行中においてドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、ドライバが操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するものである。また、報知部114は、現在の電力量の情報を、車両10の走行状況に応じて制御決定部115の処理に従って報知する。
【0031】
制御決定部115は、車両10の制御内容を決定し、車載ネットワーク250を通じて自動運転制御部210に車両10の制御を行うよう出力する。通信部116は、例えば、図示しないアンテナを通じて図示しない情報センターから、交通情報、天気情報、事故情報、障害物情報、交通規制情報等を取得する。通信部116は、車車間通信により、他車両から種々の情報を取得してもよい。また、通信部116は、路車間通信により、道路の各所に設けられた路側機から種々の情報を取得してもよい。
【0032】
自動運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。自動運転制御部210は、例えば、走行経路設定部111が定めた走行経路に沿って走行するように、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御する。自動運転制御部210は、例えば、車両10が隣車線に車線変更を行う場合に、車両10が走行している車線の基準線から隣車線の基準線を走行するように合流支援を行ってもよい。
【0033】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両10の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、自動運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0034】
制動力制御ECU230は、車両10の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、自動運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0035】
操舵制御ECU240は、車両10の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、ドライバが少量の力でステアリングを操作でき、車両10の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、自動運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0036】
自動運転では、走行経路設定部111は、道路情報記憶部140に記憶された道路情報と、自車位置センサ131によって検出された現在位置と、車両10の周囲の他車両等の位置や速度等と、に基づいて、車両10の走行プランを作成する。この走行プランには、数秒後までの車両10の操舵プラン及び加減速プラン等が含まれる。
【0037】
基本的には、車両10が走行車線の中心を走るように、車線リンクを用いて走行経路が設定される。すなわち、図3に示すように、車両10の幅方向の中心線Cが、車線リンク51(=車線中心線)上に位置するように走行経路が設定される。
【0038】
A3.送電コイル21の埋設位置の詳細:
次に、上記詳述した走行中給電システム1の送電装置2が有する送電コイル21の道路における埋設位置について説明する。送電コイル21は、HDマップに含まれる静的な情報であって、走行経路設定部111においてHDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線を基準として、道路に埋設されている。第1実施形態では、ガイド線は、「車線リンク51」であり、送電コイル21は、車線リンク51と一致する位置に埋設されている。なお、このように、車線リンク51上に設置される送電コイル21を、以下「中心給電用の送電コイル21」ともいう。
【0039】
なお、「ガイド線を基準として道路に埋設されている」とは、第1実施形態のように、ガイド線の一例に相当する車線リンク51と一致するように送電コイル21が埋設される形態のみでなく、後述の第2実施形態のように、車線リンク51を基準ラインとして、車線リンク51から車線の幅方向に所定距離離間した位置に送電コイル21が埋設される形態をも含む。第1実施形態では、受電コイル35は車両10の中心近傍に設けられているため、車両10の幅方向の中心線Cが車線リンク51と一致する状態において、送電コイル21と受電コイル35とが対向する。
【0040】
なお、一般車両では、信号機のある交差点前の区間(数十メートル)などは、低速となるまたは停止することが多いため、こうした区間に送電コイル21を積極的に設けるとよい。また、送電コイル21が埋設されている区間の最新情報は、適宜、アップデートされ、例えば、道路情報記憶部140に記憶される。
【0041】
上記第1実施形態において、送電装置2が備える送電コイル21は、HDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線としての車線リンク51と一致するように道路に設けられている。このため、ガイド線を用いて設定された走行経路を車両が走行する際に、送電装置2の送電コイル21と、車両10側の受電コイル35とが対向しやすい。したがって、送電コイル21と受電コイル35とが対向した状態が一定時間維持され、安定した給電が可能となる。また、自動運転において、通常時には、車線53の中央を走るように制御されるのが一般的であるので、設定された走行経路を走行しつつ確実に充電することができる。また、手動運転においても、通常、運転者は、車線53の中央を走行しようとすることが多いため、安定して充電することができる。
【0042】
B.第2実施形態:
次に、第2実施形態について、図4を参照して説明する。なお、第2実施形態および後述する各実施形態において、走行中給電システム1の全体構成(図1)および車両制御装置110(図2)の構成は、上記第1実施形態と略同様であるため、実質的に同一の部分については同一の符号を付すとともに説明は省略する。
【0043】
図4に示すように、第2実施形態では、上記第1実施形態に対して、受電コイル35が、車両10の中心近傍ではなく、タイヤ43の内部または、タイヤ43の近傍であって車両10が備えるサスペンション装置の下側周辺に設けられている点が異なっている。さらに、第2実施形態の送電装置2において、送電コイル21は、車線リンク51から道路の両幅方向に所定距離Lだけ離間した位置に、平面視において互いに平行な2本のラインとなるように埋設されている。この2本のラインの間隔は、車両10の幅方向における受電コイル35の設置間隔と略同一である。すなわち、車両10の幅方向の中心線Cが車線リンク51と一致する状態で車両10が走行する際に、送電コイル21と受電コイル35とが対向する。なお、このように、車線リンク51から所定距離離間して設置される送電コイル21を、以下「タイヤ給電用の送電コイル21」ともいう。
【0044】
第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
C.第3実施形態:
次に、第3実施形態について、図5を参照して説明する。図5に示すように、第3実施形態では、上記第2実施形態に対して、車線リンク51上にも送電コイル21が埋設されている点が異なっている。すなわち、第3実施形態の送電装置2は、中心給電用の送電コイル21と、タイヤ給電用の送電コイル21とを備えている。車線リンク51上における中心給電用の送電コイル21の埋設形態は、上記第1実施形態と同様である。
【0046】
第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、受電コイル35の設置位置が中心近傍であってもタイヤ43の近傍であっても、いずれの形態にも対応可能であるため、種々の車両10に対してより確実に給電可能な送電装置2として実施できる。なお、図5では、第2実施形態の車両10が表されているが、第1実施形態の車両10が走行する場合にも給電可能である。
【0047】
D.第4実施形態:
次に、第4実施形態について、図6を参照して説明する。図6に示すように、第4実施形態では、上記第2実施形態に対して、送電コイル21が、車線53の幅方向に複数並んで設けられている点が異なっている。図6では、車線リンク51から道路4の両幅方向に所定距離Lだけ離間した位置を中心に、幅方向に3つの受電コイル35が並設された例を図示している。
【0048】
第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、車両10の走行ラインが車線53内において幅方向に変位した場合であっても、送電装置2における送電可能な面積を大きく確保できるため、受電コイル35が送電コイル21と対向しやすくなり、好適に給電することができる。さらに、車幅、すなわち左右タイヤ43の間隔が異なる車両10への給電も可能となる。
【0049】
E.第5実施形態:
次に、第5実施形態について、図7を参照して説明する。図7に示すように、第5実施形態において、送電コイル21および受電コイル35の設置形態については、上記第3実施形態と同様である。第5実施形態の送電装置2が有する送電回路24では、配電盤等により構成される系統受電端55から送電コイル21との接続経路間に、インバータ56が複数設けられている。インバータ56は、系統受電端55から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換する。
【0050】
インバータ56は、中心給電用の送電コイル21と、タイヤ給電用の送電コイル21とで、それぞれ大きさの異なる送電コイル21を含む複数種(本実施形態では2種)の送電コイル21に接続している。そして一つのインバータ56から、複数種類の送電コイル21へ送電可能である。車両10の受電コイル35の設置位置に応じて、給電対象となる送電コイル21から受電コイル35へ順次給電する。なお、図7に示す例では、一つのインバータ56が、車両10の一台分程度の長さの領域内に配置される複数の送電コイル21に対して送電する例を示した。しかし、一つのインバータ56に接続する送電コイル21の数や設置領域については、一度に給電可能な電力量に応じて適宜変更可能である。
【0051】
第5実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、複数の送電コイル21へ一つのインバータ56から給電することで、簡素なシステム構成を実現できる。つまり、例えば、中心給電用の送電コイル21と、タイヤ給電用の送電コイル21とに対して、それぞれ個別のインバータを設置する場合には、利用されていないときのインバータが無駄となるし、インバータの設置場所も広く必要となる。この点、第5実施形態によれば、インバータ56の設置場所をコンパクトに抑えることができ、システム構成を容易にできる。
【0052】
F.他の実施形態:
(F1)上記各実施形態において、車両10は、自動運転制御システム100を備えていなくてもよい。この構成の場合、単に、道路情報記憶部140に記憶された道路情報を用いて、走行経路設定部111により目的地までの道順を設定するだけであってもよい。また、走行経路設定部111を有さずに、スマートフォン等の携帯機器によるナビゲーションアプリを使用して、運転者が走行経路を手動運転により走行してもよい。かかる構成においては、送電コイル21の設置位置に相当するライン、すなわち、車線リンクを携帯機器に表示させてもよい。
【0053】
(F2)上記第5実施形態において、送電コイル21および受電コイル35の設置形態については、上記第3実施形態と同様の形態としたが、上記第1、2,4実施形態における配置形態であってもよいし、さらに異なる形態であってもよい。また、3種類以上の異なる種類の送電コイル21に対して、一つのインバータ56から送電するようにしてもよい。
【0054】
(F3)上記各実施形態において、ガイド線は「車線リンク51」である例を示したが、ガイド線は、車線リンク51に限られない。ガイド線の他の例としては、車両10が路線バスである場合には、一般車線からバス停留所へ迂回するバス専用レーンに沿う車線ライン、例えば、バス専用レーンの中心線から所定距離歩道に近づいた線等がガイド線であってもよい。この場合、走行経路設定部111は、車線ラインに沿ってバスが走行するように走行経路を設定する。このため、車線ラインに沿って送電コイル21が埋設されていることで、バス停留所前付近をバスが低速走行する際に、バスが歩道に接近することで、バス停での乗客の昇降がしやすく、かつ、効率的に充電することが可能となる。
【0055】
(F4)さらに、ガイド線は、例えば、片側2車線や右折レーン等がある交差点内での右折時の様に、現在走行中の車線における車線リンクと、右折先の走行車線における車線リンクとを結ぶ曲線がガイド線であってもよい。この場合、この曲線位置に送電コイル21を埋設すると、右折待ちで一時停止する時に充電する機会を増やすことが可能となる。
【0056】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
(請求項1)
走行中の車両(10)に対して非接触で給電を行う走行中給電システム(1)において用いられる送電装置であって、
走行経路設定装置(111)においてHDマップを用いて走行経路が設定される際に用いられる線であるガイド線(51)を基準として道路に設けられ、前記車両が有する受電コイル(35)へ非接触で電力を供給する送電コイル(21)と、
前記送電コイルに電力を供給する送電回路(24)と、
を備える送電装置。
(請求項2)
前記ガイド線は、前記HDマップに含まれる静的な情報としての車線リンクである、請求項1に記載の送電装置。
(請求項3)
前記車線リンクに、前記道路に沿って複数の前記送電コイルが設けられている、請求項2に記載の送電装置。
(請求項4)
前記車線リンクから車線の幅方向に予め定められた距離離れた位置に、前記道路に沿って複数の前記送電コイルが設けられている、請求項2に記載の送電装置。
(請求項5)
車線の幅方向に複数の前記送電コイルが並んで設けられている、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の送電装置。
(請求項6)
インバータ(56)をさらに備え、
単一の前記インバータから複数の前記送電コイルへ給電する、請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の送電装置。
(請求項7)
単一の前記インバータは、種類の異なる複数の前記送電コイルへ給電する、請求項6に記載の送電装置。
(請求項8)
前記車両は、前記走行経路設定装置において設定された前記走行経路に沿った自動運転および手動運転が可能であり、
前記自動運転および前記手動運転が可能な前記車両に対して給電可能である、請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の送電装置。
【符号の説明】
【0057】
1…走行中給電システム、2…送電装置、3…受電装置、4…道路、10…車両、21…送電コイル、24…送電回路、25…外部電源、26…送電制御部、31…メインバッテリ、32…補機バッテリ、33…給電制御部、34…受電回路、35…受電コイル、36…DC/DCコンバータ回路、37…インバータ回路、41…モータジェネレータ、42…補機、43…タイヤ、44…電力メータ、51…車線リンク、53…車線、55…系統受電端、56…インバータ、100…自動運転制御システム、110…車両制御装置、111…走行経路設定部、112…周辺情報認識部、113…判定部、114…報知部、115…制御決定部、116…通信部、120…周辺センサ、121…カメラ、122…物体センサ、130…内部センサ、131…自車位置センサ、132…加速度センサ、133…車速センサ、134…ヨーレートセンサ、140…道路情報記憶部、150…報知装置、210…自動運転制御部、250…車載ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7