(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176971
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】合成パルプおよびティーバック紙
(51)【国際特許分類】
D21H 13/14 20060101AFI20231206BHJP
D01F 6/46 20060101ALI20231206BHJP
D06M 13/188 20060101ALI20231206BHJP
D06M 11/07 20060101ALI20231206BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
D21H13/14
D01F6/46 A
D06M13/188
D06M11/07
A47J31/06 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089595
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 学
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
【テーマコード(参考)】
4B104
4L031
4L033
4L035
4L055
【Fターム(参考)】
4B104AA10
4B104BA44
4B104EA39
4L031AA14
4L031AB01
4L031BA05
4L033AA05
4L033AB01
4L033AC15
4L033BA16
4L035AA05
4L035BB42
4L035FF05
4L035JJ04
4L035JJ15
4L035MA02
4L055AF15
4L055AF16
4L055AG03
4L055AG34
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA30
4L055GA31
(57)【要約】
【課題】使用後に容易に処分可能な合成パルプの提供を目的とする。
【解決手段】合成パルプは、ポリオレフィン系樹脂と、前記ポリオレフィン系樹脂を酸化分解する酸化分解剤と、分解促進剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と、
前記ポリオレフィン系樹脂を酸化分解する酸化分解剤と、
分解促進剤と、
を含む、合成パルプ。
【請求項2】
前記酸化分解剤が、金属元素と、脂肪酸と、を含む、
請求項1に記載の合成パルプ。
【請求項3】
前記金属元素が、遷移金属元素および希土類元素を含む、
請求項2に記載の合成パルプ。
【請求項4】
前記酸化分解剤が、脂肪酸金属塩である、
請求項2に記載の合成パルプ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂が、エチレン系樹脂である、
請求項1に記載の合成パルプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の合成パルプを含む、
ティーバッグ紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成パルプおよびティーバック紙に関する。
【背景技術】
【0002】
合成パルプは世の中に広く流通し、例えば不織布や紙、包装容器、機械用部品等、様々な用途に用いられている。このような合成パルプは、使用後、焼却されたり、土壌に埋められたりして処分されている。
【0003】
一方、各種樹脂成形体の処分方法として、樹脂成形体の使用後に、樹脂を分解するための処理液を塗布し、土壌中で分解する方法が、提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、使用後の合成パルプについて、環境に負荷をかけることなく、簡便に処理することが求められている。しかしながら、合成パルプは樹脂を含むため、焼却の際には高温で処理する必要がある。また、土壌中に埋めた場合、長期間に亘って、分解されずに残存する。また、リサイクルも考えられるが、大がかりで高額な装置が必要となるという問題がある。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。使用後に容易に処分可能な合成パルプの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、以下の合成パルプおよびこれを含むティーバッグ紙を提供する。
[1]ポリオレフィン系樹脂と、前記ポリオレフィン系樹脂を酸化分解する酸化分解剤と、分解促進剤と、を含む、合成パルプ。
[2]前記酸化分解剤が、金属元素と、脂肪酸と、を含む、[1]に記載の合成パルプ。
【0008】
[3]前記金属元素が、遷移金属元素および希土類元素を含む、[2]に記載の合成パルプ。
[4]前記酸化分解剤が、脂肪酸金属塩である、[2]または[3]に記載の合成パルプ。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂が、エチレン系樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の合成パルプ。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の合成パルプを含む、ティーバッグ紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成パルプは、使用後に容易に処理可能である。また、分解時に有害物質を発生したりすることがなく、環境にも影響を及ぼし難い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」で示す数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を含む数値範囲を意味する。
【0011】
前述のように、一般的な合成パルプを使用後に処理する場合、高温で焼却したり、長期間土壌中に埋めたりする必要があった。
【0012】
これに対し、本発明の合成パルプは、ポリオレフィン系樹脂とともに、当該ポリオレフィン系樹脂を酸化分解可能な酸化分解剤、および分解促進剤を含む。酸化分解剤の酸化分解反応は、合成パルプの通常の使用時(例えば大気中での使用時)には大きく進まない。ただし、紫外線(太陽光)を照射したり、熱をかけたり、水をかけること等によって酸化分解剤や分解促進剤によるポリオレフィン系樹脂の酸化分解反応が徐々に進行し、ポリオレフィン系樹脂が低分子量化する。そして、ポリオレフィン系樹脂が低分子量化した合成パルプを土壌に埋めると、微生物や分解促進剤の働き等によって比較的短時間で分解可能である。つまり、本発明の合成パルプによれば、不要になったときに、特別な処理が必要なく、ポリオレフィン系樹脂を容易に分解することが可能である。
【0013】
ここで、本発明の合成パルプでは、繊維の内部に酸化分解剤や分解促進剤が含まれていてもよく、繊維の表面に酸化分解剤や分解促進剤が付着していてもよく、繊維を酸化分解剤や分解促進剤が被覆していてもよい。
【0014】
また、本発明の合成パルプの形状は特に制限されず、例えば繊維が集合した、成形前の状態であってもよく、抄紙等によって、シート状に成形されていてもよい。以下、分解促進剤、ポリオレフィン系樹脂および酸化分解剤について詳しく説明する。
【0015】
・分解促進剤
分解促進剤は、後述の酸化分解剤によるポリオレフィン系樹脂の分解を促進したり、分解促進剤自身によって、ポリオレフィン系樹脂を分解させたりすることが可能な化合物であればよい。合成パルプは、分解促進剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0016】
分解促進剤の例には、紫外線および/または酸素の存在下で、ポリオレフィン系樹脂をある程度まで分解または断片化可能である公知の材料が含まれる。分解促進剤の具体例には、Willow Ridge Plastics社の商品名PDQ-M、PDQ-H、BDA、およびOxoTerra(商標);Lifeline社のOX1014等のOXO添加剤が含まれる。
【0017】
上記OXO添加剤は、光酸化によって、酸化プロセスを誘発する。例えば、当該OXO添加剤を含む合成パルプに紫外線を照射すると、活性なラジカルが生成され、当該ラジカルによってポリオレフィン系樹脂等が含むC-C結合が切断される。
【0018】
このようなOXO添加剤は、コバルト、鉄、マンガン、マグネシウム、ニッケル、および/または亜鉛等の遷移金属のカルボン酸塩、ジチオカルバミン酸塩とすることができる。OXO添加剤は、上記以外の遷移金属を含んでいてもよいが、鉛、水銀、またはカドミウム等の重金属は含まないことが好ましい。また、OXO添加剤は、上記遷移金属のハロゲン化物(例えば塩化物)、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩素酸塩等であってもよい。さらに、OXO添加剤の具体例には、OXO生分解性プラスチック協会によって発行された“Transition Metal Salts”や、Noreen L.Thomas,et al.,“Oxo-degradable plastics:degradation,environmental impact and recycling”,Institute of Civil Engineering,Waste and Resource Management,vol.165,Issue WR3(https://dspace.lboro.ac.uk/dspace-jspui/bitstream/2134/13941/4/warm165-133.pdf)に記載された化合物等も含まれる。
【0019】
また、紫外光や可視光の存在下で、ポリオレフィン系樹脂(合成パルプ)の分解を促進するOXO添加剤の他の例には、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)をグラフトしたTiO2等の二酸化チタン(Ying Luo,et al.,“Accelerating the degradation of polyethylene composite mulches”,Plastics Research online,2017を参照);銅フタロシアニン(CuPc)感応型TiO2光触媒(Jing Shang,et al.,“Photocatalytic Degradation of Polystyrene Plastic under Fluorescent Light”,Environ.Sci.Technol.2003,37(19),pp.4494-4499を参照);高温でアニールされたセリア、約250℃でアニールされた酸化亜鉛、および硫化銅光触媒(Apeksha Gupta,et al.,“Visible Range Photocatalysts for Solid Phase Photocatalytic Degradation of Polyethylene and Polyvinyl Chloride”,JCChems,vol.62,No.1(2017)を参照);バナジウム(III)アセチルアセトナート(VAc)、蛇紋岩、およびBYK社のCloisite(登録商標) 30B(CL)(Zehra Oluz,et al.,“Additives for ultraviolet-induced oxidative degradation of low-density polyethylene”,Applied Polymer Science,Wiley Online Library,2016を参照);が含まれる。
【0020】
さらに、上記分解促進剤の例には、ポリオレフィン系樹脂を攻撃(例えば酵素等の物質を産生)する微生物の成長および活性を促進する材料が含まれる。その具体例には、Enso社のRestore(登録商標)、Bio-Tec Environmental社のEcoPure(登録商標)、ECM Biofilms社のECMマスターバッチペレット1M、Biosphere社のBiodegradable 201、Biodegradable 302、およびEPI Environmental Technologies社のTDPA(登録商標)等が含まれる。これらの多くは、有機組成物であり、生分解性環境で有用な生物を生育および増殖させることが知られている。さらに、これらは、微生物によって分泌される酵素との反応等による微生物作用を促進すること、および/または微生物にコロニー形成および増殖を引き起こす微生物用の食物源を提供することが知られている。また、これらは、加水分解、メタン生成および酢酸生成等のメカニズムを通じて、オレフィン系樹脂の生分解を促進することも知られている。
【0021】
なお、化学添加剤(有機材料)の存在下で増殖する一部の微生物は、樹脂の炭素-炭素結合に作用するラッカーゼ、アミラーゼ、またはリパーゼ等の酵素を分泌するか、または他の方法で、ポリオレフィン系樹脂の分解を促進する。この現象に必要な酵素を提供する代表的な菌類は、Cochliobolus種である。そこで、上記分解促進剤は、このような菌類からの酵素ラッカーゼの産生に寄与する有機炭水化物であってもよい。分解促進剤として使用可能な有機炭水化物の例には、マルトース、ラクトース、キシロース、グルコース、およびガラクトース等の糖が含まれる。また、ペプトン、尿素、硝酸アンモニウム、酵母エキス、および硫酸アンモニウムなどの窒素源も、ラッカーゼを産生する培養物に添加し得ることから、分解促進剤として使用できる(Tirupati Sumathi,et al.,“Production of Laccase by Cochliobolus sdp.Isolated from Plastic Dumped Soils and Their Ability to Degrade Low Molecular Weight PVC”,Biochemistry Research International,2016,9519527を参照)。なお、硝酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、次リン酸カリウム、塩化カルシウム、および塩化カリウムを含む増殖培地で培養した微生物Aspergiillus nigerおよびLysinibacillus xylanilyticusの作用や、UV照射の有無にかかわらず、ポリエチレンを分解するためのグルコース、麦芽抽出物、ペプトン、アスパラギン、硫酸マグネシウム、次リン酸カリウム、および塩酸チアミンを用いた処理は、Atefeh Esmaeili,et al.,“Biodegradation of Low-Density Polyethylene(LDPE) by Mixed Culture of Lysinibacillus xylanilyticus and Aspergillus niger in Soil”,Plos One,published September 23,2013で論じられている。ポリエチレンおよびポリプロピレンの生分解に活性があることが知られている他の細菌および菌類については、Sudhakar,et al.,“Biodegradation of polyethylene and polypropylene”,Indian journal of Biotechnology,Vol.7,January 2008,pp.9-22にも記載されている。
【0022】
分解促進剤は、上述した以外の成分であってもよく、その例には有機系過酸化物、無機系過酸化物、光増感剤、光分解性高分子化合物等も含まれる。これらの分解促進剤の具体例には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物;ベンゾフェノン、金属錯体、芳香族ケトン等の光増感剤;等が含まれる。
【0023】
また、分解促進剤等によるポリオレフィン系樹脂の分解滅失は、加水分解や微生物等の生分解作用、紫外線や赤外線等による光分解作用、温度変化、外部衝撃、酸アルカリ等の化学作用等が相互に作用してなされるものである。したがって、分解促進剤は、光分解剤と、生分解剤や化学分解剤等との混合物であってもよい。光分解剤の具体例には、脂肪族ケトン類、芳香族ケトン類、キノン類、パーオキサイド類、ヒドロパーオキサイド類、アゾ化合物類等が含まれる。生分解剤の例には、キチン、スターチ、セルロース、グルコース誘導体、ポリ-β-ヒドロキシブチレート、カルボジイミド類等が含まれる。化学分解剤の例には、金属カルボン酸塩と脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸との組み合わせ、金属カルボン酸塩と充填剤との組合せ、遷移金属コンプレックス等が含まれる。
【0024】
さらに、分解促進剤は、生分解性重合体等の重合体であってもよい。重合体は一種の生分解性化合物の重合体であってもよく、二種以上の生分解性化合物の共重合体であってもよい。共重合体はAB型共重合体であってもよく、ABA型共重合体であってもよい。生分解性重合体からなる分解促進剤の例には、ポリ乳酸、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリプロピレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカン酸、キトサン、グルテン、脂肪族および/または芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・セバケート、ポリブチレンテレフタレート・アジペート等)、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0025】
また、分解促進剤の数平均分子量(Mn)は、1,000g/モル~100,000g/モルが好ましく、5,000g/モル~80,000g/モルがより好ましく、10,000g/モル~60,000g/モルがさらに好ましい。また、上記数平均分子量(Mn)は、20,000g/モル~60,000g/モルが特に好ましく、30,000g/モル~50,000g/モルが非常に好ましい。
【0026】
一方、分解促進剤の重量平均分子量(Mw)は、1,000g/モル~150,000g/モルが好ましく、5,000g/モル~100,000g/モルがより好ましく、10,000g/モル~80,000g/モルがさらに好ましい。また、上記重量平均分子量(Mw)は、20,000g/モル~80,000g/モルが特に好ましく、30,000g/モル~80,000g/モルが非常に好ましく、50,000g/モル~70,000g/モルがいっそう好ましい。
【0027】
分解促進剤のZ平均分子量(Mz)は、1,000g/モル~300,000g/モルが好ましく、30,000g/モル~250,000g/モルがより好ましく、50,000g/モル~200,000g/モルがさらに好ましく、100,000g/モル~200,000g/モルが特に好ましく、130,000g/モル~180,000g/モルが非常に好ましい。
【0028】
分解促進剤の多分散指数PDIは、1.1~5.0が好ましく、1.2~3.0がより好ましく、1.2~2.0がさらに好ましく、1.3~1.8が特に好ましく、1.4~1.7が非常に好ましい。
【0029】
また、分解促進剤は、カルボン酸化合物であってもよい。さらに分解促進剤は、化学誘引性化合物;グルタル酸またはその誘導体;5~18炭素の鎖長を有するカルボン酸化合物;重合体;または膨潤剤であってもよい。さらに、分解促進剤は、ポリオレフィン系樹脂を消化可能な微生物であってもよい。また、分解促進剤は、ポリジビニルベンゼン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテレフタレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、メタクリレート、ナイロン6、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリクロロプレン、アクリロニトリルブタジエン系ゴム、およびこれらの共重合体や、これらの組み合わせから得られる生分解剤であってもよい。
【0030】
上記いずれの分解促進剤においても、その量は、その種類や所望の効果に応じて適宜選択され、合成パルプ中のポリオレフィン系樹脂の全量に対して0.1~10.0質量%程度が好ましい。
【0031】
上記分解促進剤を、ポリオレフィン系樹脂や酸化分解剤等と混合する方法は特に制限されない。プラスチック業界の一般的な設備を使用可能であり、後述のように、加熱しながら混合してもよい。
【0032】
・ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン由来の構造を有する樹脂であればよく、一種のオレフィンの単独重合体であってもよく、二種以上のオレフィンを共重合した共重合体であってもよい。合成パルプは、ポリオレフィン系樹脂を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0033】
ここで、オレフィン系重合体を構成するオレフィンの炭素数は2~10であることが好ましい。また、一部にオレフィン以外の構造を有していてもよい。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂の例には、ポリエチレン(エチレン単独重合体)、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体が含まれる。また、本明細書のポリオレフィン系樹脂には、オレフィンと、オレフィン以外の単量体とが重合したエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等も含むものとする。この場合、オレフィン以外の構成単位の量は、全構成単位に対して50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。また本明細書におけるポリオレフィン系樹脂には、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸モノマーでグラフト変性したグラフト変性物等も含む。
【0035】
中でもポリオレフィン系樹脂は、酸化分解しやすく、さらに合成パルプの汎用性が高い、との観点で、エチレンを主に含むエチレン系重合体またはプロピレンを主に含むプロピレン系重合体が好ましく、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体(α-オレフィンの炭素数は好ましくは3~20)、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体(α-オレフィンの炭素数は好ましくは2または4~20)、またはこれらを不飽和カルボン酸モノマーでグラフト変性した重合体(以下、「変性ポリオレフィン系樹脂」とも称する)が好ましい。これらの中でも特に、エチレン系重合体(エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸モノマーでグラフト変性した重合体)が好ましい。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂がエチレン単独重合体である場合、ASTMD1238に準拠して、190℃、2.16Kg荷重で測定されるメルトフローレート(以下「MFR」とも称する)は0.01g/10分~1000g/10分が好ましく、0.1g/10分~500g/10分がより好ましく、1g/10分~100g/10分がより好ましい。MFRが上記の範囲にあるエチレン単独重合体を用いると、分岐構造を有する合成パルプが得られやすくなる。その結果、合成パルプから得られる不織布やシート等の強度が高まりやすい。
【0037】
一方、ポリオレフィン系樹脂がエチレン・α-オレフィン共重合体である場合、その密度(ASTMD1505)は0.850~0.950g/cm3が好ましく、0.870~0.945g/cm3がより好ましく、0.900~0.940g/cm3がさらに好ましい。またこの場合、ASTMD1238に準拠して、190℃、2.16Kg荷重で測定されるMFRは0.1~100g/10分が好ましく、0.5~50g/10分がより好ましく、1~20g/10分がさらに好ましい。密度およびMFRが当該範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体を用いると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な合成パルプが得られる。
【0038】
エチレンと共重合する炭素原子数3~20のα-オレフィンの例には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数3~20のα-オレフィン等が含まれる。
【0039】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体におけるエチレン由来の構造単位の量は、50モル%以上100モル%未満が好ましく、80.0~99.5モル%がより好ましく、90.0~99.0モル%がさらに好ましい。
【0040】
また、プロピレン単独重合体の、ASTMD1238に準拠して、230℃、2.16Kg荷重で測定されるMFRは、0.1~500g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましく、1~50g/10分がさらに好ましい。MFRが上記のような範囲にあるプロピレン単独重合体を用いると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な合成パルプが得られる。
【0041】
一方、プロピレン・α-オレフィン共重合体は、プロピレンと炭素原子数2または4~20のα-オレフィンとの共重合体が好ましく、融点は130~165℃が好ましい。さらに、ASTMD1238に準拠して、230℃、2.16Kg荷重で測定されるMFRは0.1~500g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましく、1~50g/10分がさらに好ましい。融点、MFRが上記のような範囲にあるプロピレン・α-オレフィン共重合体を用いると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な合成パルプが得られる。
【0042】
プロピレンと共重合するα-オレフィンは、エチレンもしくは上述のα-オレフィンである。上記プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるプロピレン含量は、通常50モル%以上100モル%未満、好ましくは80.0~99.5モル%、さらに好ましくは90.0~99.0モル%である。
【0043】
上記エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体およびプロピレン・α-オレフィン共重合体は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの従来公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの従来公知の重合法により重合あるいは共重合させることにより調製できる。
【0044】
また、変性ポリオレフィン系樹脂は、上記のエチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等を不飽和カルボン酸もしくはその誘導体をグラフトして得られる。
【0045】
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体(不飽和カルボン酸等)の例には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ノルボルネンカルボン酸、無水テトラヒドロフタル酸等の酸無水物;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエトキシメタクリレート等のヒドロキシアルキルエステルまたはヒドロキシアルコキシアルキルエステル等が含まれる。本発明では、特に無水マレイン酸が好ましく用いられる。これらの不飽和カルボン酸もしくはその誘導体は、1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
変性ポリオレフィン系樹脂におけるグラフト率は、グラフト変性前のポリオレフィン系樹脂100重量%に対して、不飽和カルボン酸等のグラフトモノマー換算で0.01~10重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。グラフト率が上記範囲内にあると、高度に分岐し、相互の絡み合いが良好な、すなわち内部結合強度の高い合成パルプが得られる。
【0047】
変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂の従来公知のグラフト変性方法、たとえば押出機等を使用して、無溶媒で、ポリオレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸もしくはその誘導体とを反応させて変性ポリオレフィン系樹脂を調製することができる。反応温度は120~350程度とすることができる。
【0048】
いずれのグラフト変性方法においても、上記グラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を行なうのが好ましい。ラジカル開始剤は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.001~1重量部使用することが好ましく、0.01~0.5重量部がより好ましい。
【0049】
このようなラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル、アゾ化合物などを使用できる。このようなラジカル開始剤の例には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルフェニルアセテート、t-ブチルペルイソブチレート、t-ブチルペル-sec-オクトエート、t-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびt-ブチルペルジエチルアセテート;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等が含まれる。これらの中でも、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましい。
【0050】
なお、ポリオレフィン系樹脂は、市販品を使用してもよい。パルプ状のポリオレフィン系樹脂の市販品の例には、三井化学社製のSWP(商品名)等が含まれる。
【0051】
ここで、上述のポリオレフィン系樹脂の融点は、70℃~150℃が好ましく、80℃~140℃がより好ましく、90℃~135℃がさらに好ましい。一般に合成パルプの融点は、これを構成するポリオレフィン系樹脂の融点に依存する。そして、ポリオレフィン系樹脂の融点が150℃以下であると、合成パルプから、比較的低温で不織布等を作製することが可能となる。一方で、ポリオレフィン系樹脂の融点が70℃以上であると、得られる不織布等の耐熱性が高まる。ポリオレフィン系樹脂の融点は示差走査型熱量計によって測定される。
【0052】
合成パルプ中のポリオレフィン系樹脂の量は、88~98質量%が好ましく、93~97質量%がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の量が88質量%以上であると、強度が高く合成パルプから得られる不織布等の強度が高くなる。一方、ポリオレフィン系樹脂の量が98質量%以下であると、相対的に酸化分解剤の量が十分になり、使用後の分解処理を容易に行うことができる。
【0053】
・酸化分解剤
酸化分解剤は、上述のポリオレフィン系樹脂を徐々に酸化分解可能な化合物であればよい。合成パルプは、酸化分解剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。酸化分解剤は、金属元素を含むことが好ましい。酸化分解剤が金属元素を含むと、金属元素が触媒となり、ポリオレフィン系樹脂が効率よく分解される。
【0054】
また、酸化分解剤は、上記金属元素とともに、脂肪酸を含むことが好ましい。酸化分解剤が金属元素とともに脂肪酸を含むと、脂肪酸が滑剤となり、合成パルプ中での金属元素の分散性が高まる。また特に、酸化分解剤が、脂肪酸および金属塩を含む脂肪酸金属塩である場合には、脂肪酸金属塩中の脂肪酸が、太陽光(例えば紫外線)や熱、酸素、水等によってラジカルとなり、上述のポリオレフィン系樹脂の炭素-炭素結合の一部を酸化分解することができる。そして、合成パルプ中のポリオレフィン系樹脂が、低分子量のカルボン酸やアルコール類に変化する。低分子量化されたポリオレフィン系樹脂を含む合成パルプを土壌に埋めたり、コンポスト内に入れたりすると、環境中の微生物により消化吸収される。そして最終的に、バイオマスや微生物の体内に蓄えられたり、呼吸等の代謝活動により、二酸化炭素や水に変化したりする。
【0055】
ここで、酸化分解剤が含む金属元素は、ポリオレフィン系樹脂の酸化分解反応の触媒となる元素であればよく、その例には、遷移金属元素や希土類元素が含まれる。金属元素の例には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブテン、テクネチウム、ルテニウム、パラジウム、銀、カドミウム等の遷移金属元素;スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等の希土類金属元素が含まれる。酸化分解剤は、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0056】
酸化分解剤は、遷移金属元素および希土類金属元素の両方を含むことが特に好ましい。遷移金属元素および希土類元素を組み合わせる場合、酸化数が異なる組み合わせが好ましい。例えば、遷移金属元素としてマンガン(酸化数が2価または3価)を用いる場合には、希土類金属元素としてセリウム(酸化数が3価または4価)を用いること等が好ましい。
【0057】
ここで、合成パルプは、上記金属元素を単体として含んでいてもよく、金属元素に各種配位子が配位した錯体の状態で含んでいてもよい。金属元素に配意する配位子の例には、無機元素、脂肪酸、-OH基、ハロゲン、オキサレート基、H-シトレート基、-NO2基、-N基、エチレンジアミン四酢酸、カルボニル基、ニトロシル基、ポルフィリン基等が含まれる。これらの中でも上述のように、脂肪酸と金属との塩(脂肪酸金属塩)が好ましい。
【0058】
なお、合成パルプ中の金属元素の量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.015~0.15質量部となる範囲が好ましく、0.023~0.075質量部がより好ましい。金属元素の量が当該範囲であると、合成パルプの分解性が高まる。
【0059】
一方、合成パルプが含む脂肪酸の例には、炭素数が12以上の長鎖脂肪酸が含まれる。当該脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸の例には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデジル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等が含まれる。これらの中でも、反応性や安定性等の観点から、不飽和脂肪酸であるオレイン酸が好ましい。
【0060】
合成パルプ中の脂肪酸の量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.185~1.85質量部となる範囲が好ましく、0.278~0.925質量部がより好ましい。脂肪酸の量が当該範囲であると、上記金属元素の分散性が高まったり、分解性が高まったりする。
【0061】
合成パルプ中の酸化分解剤の総量(例えば金属元素および脂肪酸の合計量)は、0.2~2.0質量%が好ましく、0.3~1.0質量%がより好ましい。酸化分解剤の総量が0.2質量%以上であると、十分に合成パルプを分解しやすくなる。一方、酸化分解剤の総量の量が2.0質量%以下であると、相対的にポリオレフィン系樹脂の量が十分になり、合成パルプ、ひいてはこれから得られる不織布等の強度が高まる。
【0062】
・その他の成分
なお、合成パルプは、その用途、および本発明の目的(分解性)を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例には、天然パルプ;バインダー成分;乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、歩留まり向上剤、凝結剤、凝集剤、分散剤、離型剤、消泡剤、殺菌剤、抗菌剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等の各種添加剤が含まれる。
【0063】
・合成パルプの物性
合成パルプの平均繊維長は0.05~50mmが好ましく、0.05~10mmがより好ましく、0.1~3mmがさらに好ましい。繊維長および平均繊維長は、例えばディスク型リファイナーで処理して調整できる。
【0064】
ここで、合成パルプの平均繊維長は以下の手順で求めることができる。合成パルプを構成する繊維を、長さ0.05mm刻みで分級する。その後、それぞれの級(長さ)に含まれる繊維の実測繊維長と、それぞれの級に含まれる繊維の本数と、を測定する。測定は、12000~13000本の繊維について行えばよい。その後、上記測定結果から、以下の式により、それぞれの級の数平均繊維長Ln(mm)を求める。
Ln=ΣL/N
L:1つの級に含まれる繊維の実測繊維長(mm)
N:1つの級に含まれる繊維の本数
そして、以下の式により、ポリオレフィン系合成パルプ(A)を構成する繊維の平均繊維長(mm)を求める。
平均繊維長=Σ(Nn×Ln3)/Σ(Nn×Ln2)
Nn:それぞれの級に含まれる繊維の本数
【0065】
一方、上記繊維長は、濃度が0.02質量%となるように合成パルプを水に分散させ、バルメットオートメーション社製自動繊維測定機(製品名:ValmetFS5)で繊維の一本一本の長さを測定することで、求めることができる。当該測定機では、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する。平均繊維長は、重量平均として表わされる。
【0066】
また、合成パルプの濾水度は、カナダ標準フリーネス(CSF)で800cc以下が好ましい。平均繊維長が上記範囲内にある合成パルプは、相互の絡み合いが良好で、内部結合強度が高いため、不織布等に使用したり、紙に使用したりした際に薄くできる。
【0067】
本発明に係る合成パルプは、その用途にもよるが、繊維の裂断長が通常3~8kmであることが望ましく、また内部結合強度が通常3~8kg・cmであることが望ましい。また、ヒートシール温度が180℃以上におけるシール強度が100g以上であることが望ましい。
【0068】
・合成パルプの製造方法
上記合成パルプの製造方法は、酸化分解剤および分解促進剤をどの時点でポリオレフィン系樹脂と混合するかによって、例えば以下の4つの方法が含まれる。ただし、これら以外の方法であってもよい。
【0069】
1)1つ目の方法は、ポリオレフィン系樹脂を上述の方法で調製し、ペレット状に加工する。そして、溶媒に当該ペレットと、酸化分解剤と、分解促進剤とを添加し、攪拌しながら加熱する。そして、ポリオレフィン系樹脂、酸化分解剤、および分解促進剤を含む、懸濁液を調製する。当該懸濁液をエマルジョンフラッシュ紡糸法により繊維状とし、さらに叩解処理する方法である。
【0070】
2)2つ目の方法は、上述の方法で調製したポリオレフィン系樹脂と酸化分解剤と分解促進剤とを溶融混錬し、ペレット状に加工する。そして、当該ペレットを溶媒に分散させるとともに加熱し、懸濁液を調製する。そして、当該懸濁液をエマルジョンフラッシュ紡糸法により繊維状とし、さらに叩解処理する方法である。
【0071】
3)3つの目の方法は、ポリオレフィン系樹脂を調製する際に、酸化分解剤および分解促進剤を添加する。そして、これらの混合物をペレット状に加工する。そして、当該ペレットを溶媒に分散させるとともに加熱し、懸濁液を調製する。当該懸濁液をエマルジョンフラッシュ紡糸法により繊維状とし、さらに叩解処理する方法である。
【0072】
4)4つの目の方法は、ポリオレフィン系樹脂を上述の方法で調製し、ペレット状に加工する。そして、当該ペレットを溶媒に分散させるとともに加熱し、ポリオレフィン系樹脂を含む懸濁液を調製する。当該懸濁液をエマルジョンフラッシュ紡糸法により繊維状とする。そして、当該繊維状となったポリオレフィン系樹脂を、叩解処理した後、酸化分解剤や分解促進剤を含む溶液に浸漬する方法である。
【0073】
・合成パルプの用途
本発明の合成パルプは、単独で、あるいは天然パルプおよび/または他の合成パルプ、および必要に応じて有機繊維、無機繊維、無機粉体等と混合して、種々の合成紙またはシートの製造に使用できる。製紙またはシートの製造は従来の技術により行なうことができる。得られた製紙またはシートは、それ自体で種々の用途に使用できるほか、他のシートと積層することもできる。
【0074】
本発明に係る合成パルプは、たとえば電池用セパレータ等の保液性物品、成形ボード、およびティーバッグ紙、滅菌紙、乾燥剤袋等のヒートシール紙の製造のために特に好適に使用できる。
【0075】
このほか、本発明に係る合成パルプを乾燥粉砕して綿状としたものは、例えば、塗料のタレ防止剤、シーラー、シーラント、コーキング材、接着剤等の増粘用添加剤として使用できる。また、本発明に係る合成パルプを木材パルプ等の天然パルプと混抄して得られたシートは耐水性を有し、たとえばラベル紙、ティッシュペーパー、タオルペーパー、払拭材などとして、また他の合成繊維と混抄して得られたシートは、たとえば合成紙、インモールドラベル紙などとして使用できる。さらに、合成パルプは、他の粉砕パルプ等と混合した後にシート状またはマット状とすることにより、たとえば水、油、溶剤、尿などを吸収する吸水シートまたは吸水マットとして使用できる。さらに合成パルプは、解繊繊維等用の乾式バインダー、電線ケーブル被覆材、絶縁紙、ブックカバー、ファイバーセメント等のセメント製品、気体用フィルター、液体用フィルター、マスク、セラミックスペーパー、紙皿等の成形板紙、壁紙、クッションフロアーの裏打ち材、壁材の補強用繊維、タイルグラウト、濾過助剤等としても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の合成パルプは、使用後に容易に分解可能である。また、分解時に有害物質を生成したりすることがなく、環境にも影響を及ぼし難い。したがって、例えば不織布や紙等の材料として非常に有用である。