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特開2023-176972蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176972
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/129 20210101AFI20231206BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M50/129
H01M50/105
H01M50/121
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089597
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC02
5H011KK02
5H029AJ11
5H029AM12
5H029BJ04
5H029EJ11
5H029HJ07
(57)【要約】
【課題】耐傷性に優れる蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】本開示の一側面は、少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備える蓄電デバイス用外装材であって、シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、シーラント層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S1が、10~50%である、外装材である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備える蓄電デバイス用外装材であって、
前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、前記ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、
前記シーラント層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める前記非相溶系成分(B)の面積割合S1が、10~50%である、外装材。
【請求項2】
前記シーラント層のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める前記非相溶系成分(B)の面積割合S2が、10~40%である、請求項1に記載の外装材。
【請求項3】
前記面積割合S1の前記面積割合S2に対する比率S1/S2が、1より大きい、請求項2に記載の外装材。
【請求項4】
前記バリア層と、前記シーラント層との間に接着性樹脂層を更に備え、
前記接着性樹脂層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、前記ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、
前記接着性樹脂層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める前記非相溶(B)の面積割合S3が、20~70%である、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項5】
前記接着性樹脂層のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める前記非相溶系成分(B)の面積割合S4が、20~60%である、請求項4に記載の外装材。
【請求項6】
前記面積割合S3の前記面積割合S4に対する比率S3/S4が、1より大きい、請求項5に記載の外装材。
【請求項7】
前記面積割合S3の前記面積割合S1に対する比率S3/S1が、1より大きい、請求項4に記載の外装材。
【請求項8】
前記シーラント層が、前記接着性樹脂層より厚い、請求項4に記載の外装材。
【請求項9】
前記非相溶系成分(B)が、ポリエチレン系成分を含む、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項10】
全固体電池用である、請求項1又は2に記載の外装材。
【請求項11】
蓄電デバイス本体と、
前記蓄電デバイス本体を収容する、請求項1又は2に記載の外装材と、
を備える蓄電デバイス。
【請求項12】
全固体電池である、請求項11に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電デバイスの更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-101765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電デバイスの研究開発がなされている。全固体電池は、電池素子の伝導率を上げるため、全固体電池に圧力を掛けながら作動させる。効率よく電池を作動させるためには、電池素子に対して均一に圧力を掛ける必要がある。
【0006】
他方、電池の製造工程では、外装材をロール搬送するときにシーラント層に傷がつくことがある。シーラント層に傷があると、電池素子に均一に圧力が掛からず電池の作動効率が低下する。つまり、外装材には、耐傷性に優れることが求められる。
【0007】
本開示は、耐傷性に優れる蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備える蓄電デバイス用外装材であって、シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、シーラント層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S1が、10~50%である、外装材を提供する。
【0009】
上記外装材は耐傷性に優れる。このような効果が奏される理由を本発明者は以下のように推察している。すなわち、上記外装材の、シーラント層は、ポリプロピレン系樹脂(A)と、非相溶系成分(B)と、を含有する。それにより、非相溶系成分(B)が外装材に掛かる応力を緩和する役割を担う。そして、応力を緩和して耐傷性を担保するためには、適度な応力の分散が必要となる。面積割合S1が10%以上であることで、非相溶系成分(B)による応力の緩和が十分なものとなり、シーラント層における傷の発生が抑制される。また、面積割合S1が50%以下であることで、外装材に加わる応力が跳ね返りシーラント層を傷つけることが抑制される。その結果、外装材は、耐傷性に優れる。
【0010】
一般的に耐傷性を上げる施策としては、結晶核剤をシーラント層に配合してシーラント層を硬くする方法がある。しかし、この場合には、シール強度が低下してしまう。上記外装材は、シーラント層が結晶核剤を含まない場合であっても、耐傷性に優れる。
【0011】
シーラント層のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S2は、10~40%であってよい。面積割合S2が10%以上であることで、非相溶系成分(B)による応力の緩和が一層十分なものとなる。また、面積割合S2が40%以下であることで、外装材に加わる応力が跳ね返りシーラント層を傷つけることが一層抑制される。その結果、外装材は、耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。
【0012】
一態様において、面積割合S1の面積割合S2に対する比率S1/S2は、1より大きくてよい。外装材のシーラント層の傷は、ロール搬送時にロールから加わる応力により生じるが、当該応力は、TD方向に掛かる。S1/S2が1より大きいと、より効率的に応力が緩和される。その結果、外装材は耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。
【0013】
一態様において、上記外装材は、バリア層と、シーラント層との間に接着性樹脂層を更に備え、接着性樹脂層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、接着性樹脂層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S3が、20~70%であってよい。接着性樹脂層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、非相溶系成分(B)とを含むことで、非相溶系成分(B)が外装材に加わる応力を緩和する役割を担う。そして、面積割合S3が、20%以上であることがで、非相溶系成分(B)による応力の緩和が十分なものとなる。また、面積割合S3が、70%以下であることで、外装材に加わる応力が跳ね返りシーラント層を傷つけることが抑制される。その結果、外装材は、耐傷性に一層優れる傾向がある。
【0014】
一態様において、接着性樹脂層のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S4は、20~60%であってよい。面積割合S4が20%以上であることで、非相溶系成分(B)による応力の緩和が一層十分なものとなる。また、面積割合S4が60%以下であることで、外装材に加わる応力が跳ね返りシーラント層を傷つけることが一層抑制される。その結果、外装材は、耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。
【0015】
一態様において、面積割合S3の面積割合S4に対する比率S3/S4が、1より大きくてよい。外装材のシーラント層の傷は、ロール搬送時にロールから加わる応力により生じるが、当該応力は、TD方向に掛かる。S3/S4が1より大きいと、より効率的に応力が緩和される。その結果、外装材は耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。
【0016】
一態様において、面積割合S3の面積割合S1に対する比率S3/S1は、1より大きくてよい。S3/S1が1より大きいため、応力の起点(シーラント側)より内部(接着樹脂)に非相溶系成分(B)(島成分)が多くなる。これにより、応力が一層緩和され、かつ応力の跳ね返りが一層少なくなる。そのため、上記外装材は耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。
【0017】
一態様において、シーラント層は、接着性樹脂層より厚くてよい。これにより、外装材は応力を一層分散しやすくなり、上記外装材は耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。一態様において、非相溶系成分(B)は、ポリエチレン系成分を含んでいてよい。これにより、上記外装材は耐傷性に一層優れたものとなる傾向がある。一態様において、上記外装材は、全固体電池用であってよい。
【0018】
本開示の他の一側面は、蓄電デバイス本体と、蓄電デバイス本体を収容する、上記外装材と、を備える蓄電デバイスであってよい。一態様において、上記蓄電デバイスは、全固体電池であってよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、耐傷性に優れる蓄電デバイス用外装材及びこれを用いた蓄電デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る外装材の概略断面図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る外装材のシーラント層のTD方向に沿った断面の模式図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る外装材のシーラント層のMD方向に沿った断面の模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る外装材の概略断面図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る蓄電デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
[蓄電デバイス用外装材]
図1は、本開示の蓄電デバイス用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電デバイス用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に配置された第1の接着剤層12aと、該第1の接着剤層12aの基材層11とは反対側に配置された、両面に腐食防止処理層(第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14b)を有するバリア層13と、該バリア層13の第1の接着剤層12aとは反対側に配置された接着性樹脂層15と、該接着性樹脂層15のバリア層13とは反対側に配置されたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材層11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイスの外部側、シーラント層16を蓄電デバイスの内部側に向けて使用される。
【0023】
以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
【0024】
<基材層11>
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電デバイスの外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0025】
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された層であることが好ましい。樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
【0026】
これらの樹脂は、基材層11に適用する場合、延伸又は未延伸のフィルム形態でも、コーティング被膜としての形態のどちらでも構わない。また。基材層11は単層でも多層でもよく、多層の場合は異なる樹脂を組み合わせて使用できる。フィルムであれば共押し出ししたもの、もしくは接着剤を介して積層したものが使用できる。コーティング被膜の場合は積層回数分コーティングしたものが使用でき、フィルムとコーティング被膜を組み合わせて多層とすることもできる。
【0027】
これらの樹脂の中でも、基材層11を構成する材料としては、成型性に優れることから、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0028】
これらの樹脂をフィルム形態で使用する場合は二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
【0029】
基材層11の厚さは、6~100μmであることが好ましく、10~75μmであることがより好ましく、10~50μmであることが更に好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが50μm以下であると、外装材10の総厚を小さくできる傾向がある。
【0030】
また、基材層11は、シーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することが好ましい。シーラント層16が多層構造である場合、シーラント層16の融解ピーク温度は最も融解ピーク温度が高い層の融解ピーク温度を意味する。基材層11がシーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することで、ヒートシール時に基材層11(外側の層)が融解することに起因して外観が悪くなることを抑制できる。
【0031】
基材層11の融解ピーク温度は好ましくは290℃以上であり、より好ましくは290~350℃である。基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解ピーク温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)などが挙げられる。基材層11として、市販のフィルムを使用してもよいし、コーティング(塗工液の塗布及び乾燥)によって基材層11を形成してもよい。なお、基材層11は単層構造であっても多層構造であってもよく、熱硬化性樹脂を塗工することによって形成してもよい。また、基材層11は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0032】
基材層11の融解ピーク温度T11とシーラント層16の融解ピーク温度T16の差(T11-T16)は、好ましくは20℃以上である。この温度差が20℃以上であることで、ヒートシールに起因する外装材10の外観の悪化をより一層十分に抑制できる。
【0033】
<第1の接着剤層12a>
第1の接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。第1の接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、外装材10に求められる機能や性能に応じて、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記以外にもエポキシ樹脂を主剤として、硬化剤を配合したものなども使用可能であるが、これに限らない。
【0034】
第1の接着剤層12aは、上述した主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を用いて形成される。また、接着剤層に求められる性能に応じて、上述した接着剤組成物に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0035】
接着剤組成物は、硬化剤として、脂環式イソシアネート多量体及び分子構造内に芳香環を含むイソシアネート多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能イソシアネート化合物を含むことが好ましい。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体及びヌレート体、トリレンジイソシアネートのビウレット体及びヌレート体、ジフェニルメタンジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体及びヌレート体、並びに、キシリレンジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体及びヌレート体が挙げられる。
【0036】
硬化剤としては、脂環式イソシアネート多量体と、分子構造内に芳香環を含むイソシアネート多量体とを併用してもよい。これらを併用することで、耐熱性がより向上する傾向がある。
【0037】
接着剤組成物は、耐熱性がより向上する観点から、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールを含むことが好ましい。これらの中でも、耐熱性が更に向上する観点から、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0038】
接着剤組成物において、ポリオールに含まれる水酸基数に対する、多官能イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基数の比率(NCO/OH)は、1.5~40.0であってもよく、15.0~30.0であってもよい。この比率が1.5以上であると、硬化剤同士が反応し、ウレア樹脂やビウレット樹脂といった副生成物が生成し易い。これらの副生成物には活性水素基が含まれているため、隣接する層の極性基と相互作用を起こし、界面密着力が向上するため、耐熱性が向上する傾向がある。一方、上記比率が40.0以下であると、室温環境下及び高温環境下でのラミネート強度をより向上させることができる。
【0039】
第1の接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましい。
【0040】
第1の接着剤層12aの単位面積当たりの質量は、室温環境下及び高温環境下の両方でより優れたラミネート強度を確保できると共に、より優れた深絞り成型性を得る観点から、2.0~6.0g/mであってもよく、2.5~5.0g/mであってもよく、3.0~4.0g/mであってもよい。
【0041】
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電デバイスの内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0042】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔(アルミニウム合金箔)を用いることがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0043】
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmとすることが好ましく、15~100μmとすることがより好ましい。
【0044】
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と第1の接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と接着性樹脂層15との密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
【0045】
脱脂処理としては、酸脱脂及びアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
【0046】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0047】
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
【0048】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
【0049】
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0050】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0051】
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
【0052】
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)酸や腐食性ガスの影響で溶出したアルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる腐食耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層(酸化物層)14a,14bの凝集力の向上、などが期待される。
【0053】
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0054】
腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0055】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/mが好ましく、0.010~0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
【0056】
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
【0057】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電デバイスの組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。シーラント層16は、ポリプロピレン系樹脂(A1)(以下、「(A1)成分」ともいう)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B1)(以下、「(B1)成分」ともいう)と、を含有する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、(A1)成分中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
【0058】
(A1)成分は、プロピレンを含む重合単量体から得られた樹脂である。(A1)成分としては、ホモポリプロピレン及びランダムポリプロピレン等が挙げられ、耐熱性の観点から、ホモポリプロピレンであることが好ましい。ランダムポリプロピレンとしては、例えば、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外のオレフィンとの共重合体が挙げられる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン及びオクテンが挙げられる。オレフィンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。(A1)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(A1)成分の融点は、耐熱性の観点から、150℃~175℃であることが好ましく、160℃~170℃であることがより好ましい。
【0060】
(B1)成分としては、例えば、ポリオレフィン系成分が挙げられる。ポリオレフィン系成分とは、オレフィンに由来する構造を有する化合物である。ポリオレフィン系としては、例えば、ポリエチレン系成分、ポリブテン系成分及びポリメチルペンテン系成分が挙げられ、応力の緩和能力の観点から、ポリエチレン系成分が好ましい。ポリエチレン系成分は、エチレンに由来する構造を有する化合物である。ポリブテン系成分は、ブテンに由来する構造を有する化合物である。ポリメチルペンテン系成分は、メチルペンテンに由来する構造を有する化合物である。(B1)成分は、樹脂であってもよく、エラストマーであってもよい。エラストマーとしては、例えば、αオレフィンをコモノマーをとするポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。(B1)成分としては、単独重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、少なくとも一部に(A)成分に対する非相溶部を有する。共重合体は、2種を重合させたコポリマーであってもよく、3種類を重合させたターポリマーであってもよく、4種以上を重合させたものであってもよい。
【0061】
ポリエチレン系成分としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体が好ましい。エチレン-αオレフィン共重合体としては、例えば、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとブテンとの共重合体、エチレンとメチルペンテンとの共重合体、エチレンとオクテンとの共重合体が好ましい。
【0062】
ポリエチレン系成分におけるエチレンに由来する構造の含有量は、ポリエチレン系成分の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。
【0063】
(B1)成分におけるポリオレフィン系成分の含有量は、(B1)成分の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。
【0064】
シーラント層16における(A1)及び(B1)成分の合計含有量は、シーラント層の全量を基準として、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。
【0065】
(A1)及び(B1)成分の合計質量に占める(A1)成分の割合は、例えば、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、93質量%以下、95質量%以下、又は97質量%以下であってよい。
【0066】
図2は、シーラント層16のTD方向(機械送り方向の垂直方向)に沿った断面の模式図である。図2に示すように、シーラント層16は、(A1)成分31を海とし(B1)成分32を島とする海島構造を有する。シーラント層16のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める(B1)成分の面積割合S1は、10%以上であり、応力緩和が十分なものとなり、耐傷性が一層向上することから、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。面積割合S1は、50%以下であり、シーラント層16が硬くなり耐傷性が一層向上する傾向があることから、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。
【0067】
図3は、シーラント層16のMD方向(機械送り方向)に沿った断面の模式図である。MD方向に沿った断面では、TD方向に沿った断面と比較して、(B1)成分32がMD方向に沿って延びている。シーラント層16のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める(B1)成分の面積割合S2は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、10%以上が好ましい。面積割合S2は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましい。
【0068】
面積割合S1の面積割合S2に対する比率S1/S2は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、1より大きいことが好ましく、1.1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。S1/S2は、同様の観点から、5.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましい。
【0069】
面積割合S1及び面積割合S2は、それぞれ、TD方向、MD方向に沿った断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、観察画像を二値化して島部と海部のそれぞれの面積を算出することにより測定することができ、具体的には後述の実施例の方法により測定することができる。
【0070】
シーラント層のTD方向に沿った断面における(B1)成分の長径は、0.01μm以上であってよく、外装材に加わる応力の跳ね返りが抑制されて耐傷性が一層向上する傾向があることから、0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。TD方向に沿った断面における(B1)成分の長径は、5μm以下であってよく、外装材に加わる応力が緩和され耐傷性が一層向上する傾向があることから、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。TD方向に沿った断面における(B1)成分の長径は、走査型電子顕微鏡で断面を観察して測定される。
【0071】
シーラント層のMD方向に沿った断面における(B1)成分の長径は、0.2μm以上であってよく、外装材に加わる応力の跳ね返りが抑制されて耐傷性が一層向上する傾向があることから、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。MD方向に沿った断面における(B1)成分の長径は、15μm以下であってよく、外装材に加わる応力が緩和され耐傷性が一層向上する傾向があることから、12.5μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。MD方向に沿った断面における(B1)成分の長径は、走査型電子顕微鏡で断面を観察して測定される。
【0072】
シーラント層16は、添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、難燃剤等を含んでいてもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
【0073】
シーラント層16の融解ピーク温度は、用途によって異なるが、全固体電池向けの外装材の場合、耐熱性が向上することから、160~280℃であることが好ましい。
【0074】
シーラント層16の厚さは、耐傷性が一層向上する傾向があることから、接着性樹脂層15より厚いことが好ましい。シーラント層16の厚さの接着性樹脂層15の厚さに対する比率(シーラント層16の厚さ/接着性樹脂層15の厚さ)は、同様の観点から、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、同様の観点から、10以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0075】
シーラント層16及び接着性樹脂層15の厚さの合計は、15~300μmであってよく、封止性や水蒸気バリア性の観点から、25~150μmが好ましく、50~100μmがより好ましい。
【0076】
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、ポリプロピレン系樹脂(A2)(以下、「(A2)成分」ともいう)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B2)(以下、「(B2)成分」ともいう)と、を含有する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、(A2)成分中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
【0077】
(A2)成分は、(A1)成分と同じ材料を用いてもよいが、接着性樹脂層15は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0078】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸、カルボン酸及びスルホン酸並びにそれらの誘導体により変性されたポリオレフィン樹脂であってよい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体であってよい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、バリア層13との接着性の観点から、無水マレイン酸によりグラフト変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0079】
接着性樹脂層15のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める(B2)成分の面積割合S3は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。面積割合S3は、同様の観点から、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。
【0080】
接着性樹脂層15のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める(B2)成分の面積割合S4は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。面積割合S4は、同様の観点から、60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。
【0081】
面積割合S3の面積割合S4に対する比率S3/S4は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、1より大きいことが好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましい。S3/S4は、同様の観点から、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0082】
面積割合S3の面積割合S1に対する比率S3/S1は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、1より大きいことが好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましい。S3/S1は、同様の観点から、6以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0083】
面積割合S3及び面積割合S4は、それぞれ、TD方向、MD方向に沿った断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、観察画像を二値化して島部と海部のそれぞれの面積を算出することにより測定することができ、具体的には後述の実施例の方法により測定することができる。
【0084】
接着性樹脂層15のTD方向及びMD方向に沿った断面における(B2)成分の長径は、シーラント層のTD方向及びMD方向に沿った断面における(B1)成分の長径と同様であってよい。接着性樹脂層15のTD方向及びMD方向に沿った断面における(B2)成分の長径の測定方法は、シーラント層のTD方向及びMD方向に沿った断面における(B1)成分の長径と同様であってよい。
【0085】
接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0086】
外装材10のように外装材が接着性樹脂層15及びシーラント層16を含む場合、各層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ調製してTダイ法やインフレーション法により積層してもよく、1層を製膜した後その上にもう1層を押し出すことで積層してもよく、各層をTダイ法やインフレーション法にて作製した後に接着剤にて貼り合わせて積層してもよい。使用する接着剤としては、界面密着性の観点から酸変性ポリプロピレン及び硬化剤(例えばイソシアネート等)を含む剤を用いることができる。
【0087】
接着性樹脂層15及びシーラント層16中の樹脂の分析は、IR、NMR、各種質量(mass)分析法、X線分析、ラマン分光法、GPC、DSC、DMAなどの公知の分析方法にて分析することができる。
【0088】
以上、本実施形態の蓄電デバイス用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0089】
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。図1では、第1の接着剤層12aが設けられている場合を示したが、第1の接着剤層12aが設けられていなくてもよい。
【0090】
図1では、シーラント層が、単層である場合を示したが、シーラント層は多層であってもよい。この場合、面積割合S1は、各層のTD方向に沿った断面に占める(B1)成分の面積割合を各層の厚さに基づき重み付けをした加重平均値である。面積割合S2は、各層のMD方向に沿った断面に占める(B1)成分の面積割合を各層の厚さに基づき重み付けをした加重平均値である。
【0091】
図1では、接着性樹脂層15を用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図4に示す蓄電デバイス用外装材20のように第2の接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。外装材は、耐傷性が一層向上する傾向があることから、第2の接着性樹脂層を備えることが好ましい。
【0092】
<第2の接着剤層12b>
第2の接着剤層12bは、バリア層13とシーラント層16とを接着する層である。第2の接着剤層12bには、バリア層13とシーラント層16とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
【0093】
バリア層13上に腐食防止処理層14bが設けられており、且つ、第2の腐食防止処理層14bが上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bに含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
【0094】
例えば、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含むことが好ましい。第2の腐食防止処理層14bがアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含むことが好ましい。また、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含むことが好ましい。ただし、第2の接着剤層12bは必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層12bは、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0095】
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0096】
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0097】
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
【0098】
第2の接着剤層12bが酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、第2の腐食防止処理層14bとの接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材20の耐溶剤性がより向上する。
【0099】
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5~20質量部(固形分比)であることが好ましい。
【0100】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、酸無水物基などが挙げられ、無水マレイン酸基や(メタ)アクリル酸基などが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、シーラント層16に用いる変性ポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0101】
第2の接着剤層12bには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0102】
第2の接着剤層12bは、硫化水素等の腐食性ガスや電解液が関与する場合のヒートシール強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-t-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0103】
また、第2の接着剤層12bを形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。接着剤として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂やエポキシ基を有する主剤にアミン化合物などを作用させたエポキシ樹脂等が挙げられ、耐熱性の観点から好ましい。
【0104】
第2の接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましい。
【0105】
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0106】
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、バリア層13の腐食防止処理層14b側の面上に接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0107】
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
【0108】
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
【0109】
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
【0110】
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
【0111】
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
【0112】
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/mが好ましく、0.010~0.100g/mがより好ましい。
【0113】
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
【0114】
(基材層11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。基材層11は、バリア層13の腐食防止処理層14a側の面に貼り合わせる。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。第1の接着剤層12aは、ドライ塗布量として好ましくは1~10g/mの範囲、より好ましくは2~7g/mの範囲で設ける。
【0115】
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の腐食防止処理層14b側の面上に接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。接着性樹脂層15の形成には、上述した接着性樹脂層15の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いられる。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いられる。
【0116】
本工程により、図1に示すような、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
【0117】
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押出すことで積層させてもよい。
【0118】
接着性樹脂層15における面積割合S3及び面積割合S4は、接着性樹脂層形成用樹脂組成物における(B2)成分の配合量を変更することで適宜調整される。
【0119】
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
【0120】
シーラント層16における面積割合S1及び面積割合S2は、シーラント層形成用樹脂組成物における(B1)成分の配合量を変更することで適宜調整される。
【0121】
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13間の接着、及び、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/第2の接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。また、積層体をエージング処理することで、面積割合S2及び面積割合S4を減少させることができる。エージング温度は、80℃以上、100℃以上、又は120℃以上であってよく、140℃以下、150℃以下、又は160℃以下であってよい。エージング時間は、1時間以上、2時間以上又は3時間以上であってよく、24時間以下、48時間以下、又は72時間以下であってよい。
【0122】
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
【0123】
次に、図4に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0124】
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、バリア層13の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせて積層体を得る工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。得られた積層体をエージング処理する工程は、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0125】
(第2の接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせて積層体を得る工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
【0126】
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材20を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。第2の接着剤層12bの好ましいドライ塗布量は、第1の接着剤層12aと同様である。
【0127】
この場合、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
【0128】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電デバイス用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材は、ヒートシール後の高温環境下での使用に際しても優れたヒートシール性を維持することができるため、そのような環境での使用が想定される固体電解質を用いた全固体電池用の外装材として好適である。
【0129】
[蓄電デバイス]
図5は、上述した外装材を用いて作製した蓄電デバイスの一実施形態を示す斜視図である。図5に示されるように、蓄電デバイス50は、電極を含む電池要素(蓄電デバイス本体)52と、上記電極から延在し、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(リード、電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10であり、電池要素52を収容する容器として用いられる。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイス50の外部側、シーラント層16を蓄電デバイス50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つのラミネートフィルムを重ねて周縁部を熱融着することにより、内部に電池要素52を包含した構成となる。金属端子53は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。なお、蓄電デバイス50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
【0130】
電池要素52は、正極と負極との間に電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
【0131】
本実施形態の蓄電デバイス50は、全固体電池であってもよい。この場合、電池要素52の電解質には硫化物系固体電解質等の固体電解質が用いられる。本実施形態の蓄電デバイス50は、本実施形態の外装材10を用いているため、電池素子に均一に圧力が掛かり作動効率が向上する傾向がある。
【実施例0132】
以下に、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0133】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
【0134】
<基材層(厚さ25μm)>
PET:一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0135】
<第1の接着剤層(単位面積当たりの質量4.0g/m)>
ポリエステルポリオール(昭和電工マテリアルズ社製、商品名:テスラック2505-63、水酸基価:7~11mgKOH/g)と、イソホロンジイソシアネートのヌレート体(三井化学社製、商品名:タケネート600)とを、NCO/OH比が20.0となるように配合し、酢酸エチルで固形分26質量%に希釈した接着剤を用いた。
【0136】
<第2の接着剤層(単位面積当たりの質量3.0g/m)>
トルエンに溶解させた酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、イソシアヌレート構造のポリイソシアネート化合物を10質量部(固形分比)で配合した接着剤を用いた。
【0137】
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
【0138】
<バリア層(厚さ40μm)>
AL:焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0139】
<接着性樹脂層及びシーラント層>
接着性樹脂層及びシーラント層に用いた材料を下記表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
[外装材の作製]
(実施例1)
まず、バリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-1)と(CL-2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0142】
次に、ドライラミネート手法により、第1の接着剤(第1の接着剤層)を用いて、腐食防止処理層付きバリア層の第1の腐食防止処理層側の面と基材層のコロナ処理された面とを貼り合わせて第1の積層体を得た。腐食防止処理層付きバリア層と基材層との積層は、第1の腐食防止処理層上に第1の接着剤を、乾燥後の塗布量(単位面積当たりの質量)が4.0g/mとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材層とラミネートし、80℃で120時間エージングすることで行った。
【0143】
次いで、第1の積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットした。第1の積層体の第2の腐食防止処理層上に270℃、80m/分の加工条件でTダイから共押出しすることで接着性樹脂層及びシーラント層をこの順で積層して外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を得た。接着性樹脂層及びシーラント層の積層では、表2に示した各種材料を事前にドライブレンドしておき、上記押出ラミネートに使用した。接着性樹脂層及びシーラント層の厚さは、表3に示す値となるようにした。
【0144】
(実施例2~5)
実施例1と同様にして第1の積層体を得た。実施例1と同様にして第1の積層体の第2の腐食防止処理層上に接着性樹脂層及びシーラント層をこの順で積層して第2の積層体を得た。第2の積層体を表2示す温度及び時間でエージングして外装材を得た。
【0145】
(実施例6~12、比較例1~3)
接着性樹脂層及びシーラント層の材料として、表2に示した材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0146】
(実施例13、17)
接着性樹脂層及びシーラント層の材料として、表2に示した材料を用いたこと以外は、実施例3と同様にして外装材を得た。
【0147】
(実施例14~16)
接着性樹脂層及びシーラント層の厚さを表3に示すとおり変更したこと以外は、実施例3と同様にして外装材を得た。
【0148】
(実施例18)
実施例1と同様にして第1の積層体を得た。次に、ドライラミネート手法により、第2の接着剤(第2の接着剤層)を用いて、第1の積層体の第2の腐食防止処理層上に表2に示すシーラント層を貼り付けた。第1の積層体とシーラント層との積層は、第2の腐食防止処理層上に第2の接着剤層を形成するための接着剤を、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。以上の方法で、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
【0149】
[非相溶系成分(B)の面積割合の測定]
(実施例1~18及び比較例1~3)
各例で得られた外装材を樹脂で固めた後、Leica社製のウルトラミクロトームにて外装材の断面を切り出した。断面のエチレン-プロピレン共重合体成分を四酸化ルテニウムにより70℃で2~4時間かけて染色した。染色後の断面に白金蒸着をした。そして、走査型電子顕微鏡で断面観察(観察倍率:2000倍)をして観察対象とする層について画像を撮影した。観察は、観察対象とする層の断面の任意の3箇所で行った。3箇所それぞれの画像から任意の領域(10μ角)を切り出した。切り出した領域について画像処理ソフト(ImageJ)で海成分部と島成分部とに二値化して、島成分の割合を算出した。具体的には、切り出した領域を8ビット(256階調)画像に変換し、海成分部と島成分部との閾値となる階調を、オートで設定し、二値化により切り出した領域中における島成分部の面積割合を算出した。3箇所の面積割合の平均値を観察対象とする層の断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合とした。観察対象は、シーラント層及び接着性樹脂層のMD方向及びTD方向に沿った断面とした。結果を表3に示した。
【0150】
[耐傷性の評価]
(実施例1~18及び比較例1~3)
各例で得られた外装材に対して、鉛筆硬度試験を行った。具体的には、JIS K 5600に規定される鉛筆硬度試験器にかけ、外装材のシーラント層への傷の付き方を確認し、鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度を以下の「S」、「A」、「B」、「C」、「D」の5段階で評価した。結果を表3に示した。
〔評価基準〕
S:鉛筆硬度が5H以上である場合
A:鉛筆硬度が3H以上4H未満である場合
B:鉛筆硬度が2H以上3H未満である場合
C:鉛筆硬度がH以上2H未満である場合
D:鉛筆硬度がH未満である場合
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
本開示の要旨は以下の[1]~[12]に存する。
[1]少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備える蓄電デバイス用外装材であって、
シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、
シーラント層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S1が、10~50%である、外装材。
[2]シーラント層のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S2が、10~40%である、[1]に記載の外装材。
[3]面積割合S1の面積割合S2に対する比率S1/S2が、1より大きい、[2]に記載の外装材。
[4]バリア層と、シーラント層との間に接着性樹脂層を更に備え、
接着性樹脂層が、ポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリプロピレン系樹脂に対して非相溶である非相溶系成分(B)と、を含有し、
接着性樹脂層のTD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S3が、20~70%である、[1]~[3]のいずれかに記載の外装材。
[5]接着性樹脂層のMD方向に沿った断面を観察したときに、断面に占める非相溶系成分(B)の面積割合S4が、20~60%である、[4]に記載の外装材。
[6]面積割合S3の面積割合S4に対する比率S3/S4が、1より大きい、[5]に記載の外装材。
[7]面積割合S3の面積割合S1に対する比率S3/S1が、1より大きい、[4]~[6]のいずれかに記載の外装材。
[8]シーラント層が、接着性樹脂層より厚い、[4]~[7]のいずれかに記載の外装材。
[9]非相溶系成分(B)が、ポリエチレン系成分を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の外装材。
[10]全固体電池用である、[1]~[9]のいずれかに記載の外装材。
[11]蓄電デバイス本体と、
蓄電デバイス本体を収容する、[1]~[10]のいずれかに記載の外装材と、
を備える蓄電デバイス。
[12]全固体電池である、[11]に記載の蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0154】
10,20…外装材、11…基材層、13…バリア層、15…接着性樹脂層、16…シーラント層、50…蓄電デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5