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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176978
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20231206BHJP
【FI】
G02B30/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089616
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB27
2H199BB29
2H199BB30
2H199BB52
(57)【要約】
【課題】 表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【解決手段】 空中表示装置は、画像を表示する表示素子20と、表示素子20から出射された光を受けるように配置され、表示素子20から出射された光を、面内に直交する法線方向に対して斜め方向に屈折させる配向制御素子30と、配向制御素子30から出射された光を受けるように配置され、配向制御素子30から出射された光を、配向制御素子30と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子40とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子から出射された光を受けるように配置され、前記表示素子から出射された光を、面内に直交する法線方向に対して斜め方向に屈折させる配向制御素子と、
前記配向制御素子から出射された光を受けるように配置され、前記配向制御素子から出射された光を、前記配向制御素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、
を具備する空中表示装置。
【請求項2】
前記配向制御素子は、前記表示素子から出射された光のうち、前記法線方向を含む角度範囲の光成分の一部を透過する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記配向制御素子は、平面状の第1基材と、前記第1基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の第1光学要素と、前記複数の第1光学要素にそれぞれ設けられ、光を遮光する複数の遮光層とを含み、
前記複数の第1光学要素の各々は、前記法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する屈折面及び遮光面を有し、
前記複数の遮光層の各々は、前記遮光面に設けられる
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記屈折面の角度は、遮光面の角度より大きい
請求項3に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記光学素子は、前記配向制御素子から前記斜め方向に入射した光を前記法線方向に反射する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記光学素子は、平面状の第2基材と、前記第2基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の第2光学要素とを含み、
前記複数の第2光学要素の各々は、前記法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する
請求項5に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記表示素子、前記配向制御素子、及び前記光学素子は、互いに平行に配置される
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項8】
光を発光する照明素子をさらに具備し、
前記表示素子は、前記照明素子からの光を受けるように配置され、液晶表示素子で構成される
請求項1に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や動画などを空中像として表示可能な空中表示装置が研究され、新しいヒューマン・マシン・インターフェースとして期待されている。空中表示装置は、例えば、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイを備え、表示素子の表示面から出射される光を反射し、空中に実像を結像する。2面コーナーリフレクタアレイによる表示方法は、収差が無く、面対称位置に実像(空中像)を表示することができる。
【0003】
特許文献1は、透明平板の表面から突出した透明な四角柱を2面コーナーリフレクタとして使用し、複数の四角柱を平面上にアレイ状に配置した光学素子を開示している。また、特許文献2は、第1及び第2光制御パネルの各々を、透明平板の内部に垂直に多数かつ帯状の平面光反射部を一定のピッチで並べて形成し、第1及び第2光制御パネルを、互いの平面光反射部が直交するように配置した光学素子を開示している。特許文献1、2の光学素子は、表示素子から出射された光を直交する反射面で2回反射させ、空中像を生成している。
【0004】
特許文献1、2の光学素子を利用した表示装置は、光学素子の斜方向から観察することで空中像を認識できるものであり、光学素子の法線方向からの観察では良好な空中像を認識することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-191404号公報
【特許文献2】特開2011-175297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によると、画像を表示する表示素子と、前記表示素子から出射された光を受けるように配置され、前記表示素子から出射された光を、面内に直交する法線方向に対して斜め方向に屈折させる配向制御素子と、前記配向制御素子から出射された光を受けるように配置され、前記配向制御素子から出射された光を、前記配向制御素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子とを具備する空中表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第2態様によると、前記配向制御素子は、前記表示素子から出射された光のうち、前記法線方向を含む角度範囲の光成分の一部を透過する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第3態様によると、前記配向制御素子は、平面状の第1基材と、前記第1基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の第1光学要素と、前記複数の第1光学要素にそれぞれ設けられ、光を遮光する複数の遮光層とを含み、前記複数の第1光学要素の各々は、前記法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する屈折面及び遮光面を有し、前記複数の遮光層の各々は、前記遮光面に設けられる、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第4態様によると、前記屈折面の角度は、遮光面の角度より大きい、第3態様に係る空中表示装置が提供される。
【0011】
本発明の第5態様によると、前記光学素子は、前記配向制御素子から前記斜め方向に入射した光を前記法線方向に反射する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0012】
本発明の第6態様によると、前記光学素子は、平面状の第2基材と、前記第2基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の第2光学要素とを含み、前記複数の第2光学要素の各々は、前記法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する、第5態様に係る空中表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第7態様によると、前記表示素子、前記配向制御素子、及び前記光学素子は、互いに平行に配置される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第8態様によると、光を発光する照明素子をさらに具備し、前記表示素子は、前記照明素子からの光を受けるように配置され、液晶表示素子で構成される、第1態様に係る空中表示装置が提供される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
図2図2は、図1に示した空中表示装置のXZ面における側面図である。
図3図3は、図1に示した配向制御素子の斜視図である。
図4図4は、図2に示した配向制御素子のXZ面における側面図である。
図5図5は、配向制御素子における屈折面及び遮光面の角度を説明する図である。
図6図6は、図1に示した光学素子の斜視図である。
図7図7は、空中表示装置のブロック図である。
図8図8は、光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図9図9は、光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図10図10は、光学素子における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
図11図11は、光学素子における入射面及び反射面の角度条件を説明する図である。
図12図12は、空中表示装置の光線追跡図である。
図13図13は、表示素子の配光特性を説明するグラフである。
図14図14は、配向制御素子の配光特性を説明するグラフである。
図15図15は、光学素子の配光特性を説明するグラフである。
図16図16は、配向制御素子の製造方法を説明する断面図である。
図17図17は、配向制御素子の製造方法を説明する断面図である。
図18図18は、配向制御素子の製造方法を説明する断面図である。
図19図19は、配向制御素子の製造方法を説明する断面図である。
図20図20は、配向制御素子の製造方法を説明する断面図である。
図21図21は、配向制御素子の製造方法を説明する断面図である。
図22図22は、変形例に係る空中表示装置のXZ面における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[1] 空中表示装置1の構成
図1は、本発明の実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。図1において、X方向は、空中表示装置1のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向(法線方向ともいう)である。図2は、図1に示した空中表示装置1のXZ面における側面図である。
【0019】
空中表示装置1は、画像(動画を含む)を表示する装置である。空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像を表示する。空中表示装置1の光出射面とは、空中表示装置1を構成する複数の部材のうち最上層に配置された部材の上面を意味する。空中像とは、空中に結像する実像である。
【0020】
空中表示装置1は、照明素子(バックライトともいう)10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40を備える。照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0021】
照明素子10は、照明光を発光し、この照明光を表示素子20に向けて出射する。照明素子10は、光源部11、導光板12、及び反射シート13を備える。照明素子10は、例えばサイドライト型の照明素子である。照明素子10は、面光源を構成する。照明素子10は、後述する角度θの斜め方向に光強度がピークになるように構成してもよい。
【0022】
光源部11は、導光板12の側面に向き合うように配置される。光源部11は、導光板12の側面に向けて光を発光する。光源部11は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)からなる複数の発光素子を含む。導光板12は、光源部11からの照明光を導光し、照明光を自身の上面から出射する。反射シート13は、導光板12の底面から出射された照明光を、再び導光板12に向けて反射する。照明素子10は、導光板12の上面に、光学特性を向上させる部材(プリズムシート、及び拡散シートを含む)を備えていてもよい。
【0023】
表示素子20は、透過型の表示素子である。表示素子20は、例えば液晶表示素子で構成される。表示素子20の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。表示素子20は、照明素子10から出射された照明光を受ける。表示素子20は、照明素子10からの照明光を透過して光変調を行う。そして、表示素子20は、自身の表示面に所望の画像を表示する。
【0024】
配向制御素子30は、入射光を屈折させるとともに、不要光を低減する機能を有する。不要光とは、空中像を生成するのに寄与しない光成分である。配向制御素子30は、表示素子20から出射された光を、面内に直交する法線方向に対して斜め方向に屈折させる。配向制御素子30の詳細な構成については後述する。
【0025】
光学素子40は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子40は、底面側から面内に直交する法線方向に対して斜め方向に入射した入射光を、例えば正面方向(法線方向)に反射する。光学素子40は、空中表示装置1の正面の空中に空中像2を結像する。光学素子40の詳細な構成については後述する。空中像2は、光学素子40の素子面に平行であり、2次元の画像である。素子面とは、光学素子40が面内方向に広がる仮想的な平面を言う。素子面は、面内と同じ意味である。その他の素子の素子面についても同じ意味である。光学素子40の正面にいる観察者3は、空中像2を視認することができる。
【0026】
[1-1] 配向制御素子30の構成
図3は、図1に示した配向制御素子30の斜視図である。図4は、図2に示した配向制御素子30のXZ面における側面図である。
【0027】
配向制御素子30は、基材31、複数の光学要素32、及び複数の遮光層35を備える。基材31は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0028】
基材31の底面には、複数の光学要素32が設けられる。複数の光学要素32の各々は、三角柱で構成される。光学要素32は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材31に接する。複数の光学要素32は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。換言すると、複数の光学要素32は、XZ面において鋸歯状を有する。
【0029】
複数の光学要素32の各々は、屈折面33及び遮光面34を有する。Y方向から見て、左側の側面が屈折面33であり、右側の側面が遮光面34である。屈折面33は、配向制御素子30の底面側から入射した光を屈折させる面である。遮光面34は、配向制御素子30の底面側からの光を遮光する面である。
【0030】
基材31及び光学要素32は、透明材料で構成される。光学要素32は、例えば、基材31と同じ透明材料によって基材31と一体的に形成される。基材31と光学要素32とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材31に光学要素32を接着してもよい。基材31及び光学要素32を構成する透明材料としては、例えば、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0031】
各光学要素32の遮光面34には、遮光層35が設けられる。遮光層35は、光を遮光する機能を有する。遮光層35は、例えば、黒色の染料又は顔料を含む材料、カーボンブラックを含む材料、若しくは黒鉛を含む材料で構成される。
【0032】
図5は、配向制御素子30における屈折面33及び遮光面34の角度を説明する図である。
屈折面33は、配向制御素子30の素子面に直交する法線方向に対して角度θ11だけ傾いている。遮光面34は、配向制御素子30の素子面に直交する法線方向に対して角度θ12だけ傾いている。遮光面34の角度θ12は、遮光層35の傾斜角と同じ意味である。屈折面33の角度θ11は、例えば、45度以上65度以下の角度範囲に設定される。遮光面34の角度θ12は、例えば、0度以上25度以下の角度範囲に設定される。すなわち、屈折面33の角度θ11は、遮光面34の角度θ12より大きく設定される。
【0033】
配向制御素子30は、表示素子20から屈折面33に入射する光を屈折させるとともに、表示素子20から遮光層35に入射する光を遮光する。屈折面33に入射する光は、法線方向を含む所定の角度範囲で進む光成分を含む。遮光層35に入射する光は、屈折面33に入射する角度範囲よりも左側及び右側に進む光成分を含む。また、法線方向に進む光のうち、平面視において屈折面33が占める領域の光成分が屈折面33に入射し、平面視において遮光層35が占める領域の光成分が遮光層35に入射する。結果として、配向制御素子30は、表示素子20から出射された光のうち、法線方向を含む所定の角度範囲の光成分の一部を透過し、表示素子20から出射された光のうち、上記所定の角度範囲よりも左側及び右側に進む光成分の一部を遮光する。
【0034】
配向制御素子30は、角度θを中心とした所定の角度範囲の光成分を出射する。角度θは、配向制御素子30と表示素子20との距離、配向制御素子30の屈折率、屈折面33の角度、及び遮光面34の角度を最適に設定することで調整が可能である。
【0035】
[1-2] 光学素子40の構成
図6は、図1に示した光学素子40の斜視図である。なお、図6には、光学素子40の一部を拡大した拡大図も図示している。図6の拡大図は、XZ面における側面図である。
【0036】
光学素子40は、基材41、及び複数の光学要素42を備える。基材41は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0037】
基材41の底面には、複数の光学要素42が設けられる。複数の光学要素42の各々は、三角柱で構成される。光学要素42は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材41に接する。複数の光学要素42は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。換言すると、複数の光学要素42は、XZ面において鋸歯状を有する。
【0038】
複数の光学要素42の各々は、入射面43及び反射面44を有する。Y方向から見て、左側の側面が入射面43であり、右側の側面が反射面44である。入射面43は、表示素子20からの光が入射する面である。反射面44は、入射面43に外部から入射した光を、光学要素42の内部で反射する面である。入射面43と反射面44とは、角度θを有する。
【0039】
基材41及び光学要素42は、透明材料で構成される。光学要素42は、例えば、基材41と同じ透明材料によって基材41と一体的に形成される。基材41と光学要素42とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材41に光学要素42を接着してもよい。基材41及び光学要素42を構成する透明材料としては、例えば、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0040】
このように構成された光学素子40は、入射光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子40は、素子面の正面の位置に、空中像を結像する。
【0041】
[1-3] 空中表示装置1のブロック構成
図7は、空中表示装置1のブロック図である。空中表示装置1は、制御部50、記憶部51、入出力インターフェース(入出力IF)52、表示部53、及び入力部54を備える。制御部50、記憶部51、及び入出力インターフェース52は、バス55を介して互いに接続される。
【0042】
入出力インターフェース52は、表示部53、及び入力部54に接続される。入出力インターフェース52は、表示部53、及び入力部54のそれぞれに対して、所定の規格に応じたインターフェース処理を行う。
【0043】
表示部53は、照明素子10、及び表示素子20を備える。表示部53は、画像を表示する。
【0044】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサにより構成される。制御部50は、記憶部51に格納されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。制御部50は、表示処理部50A、及び情報処理部50Bを備える。
【0045】
表示処理部50Aは、表示部53(具体的には、照明素子10、及び表示素子20)の動作を制御する。表示処理部50Aは、照明素子10のオン及びオフを制御する。表示処理部50Aは、表示素子20に画像信号を送信し、表示素子20に画像を表示させる。
【0046】
情報処理部50Bは、空中表示装置1が表示する画像を生成する。情報処理部50Bは、記憶部51に格納された画像データを用いることが可能である。情報処理部50Bは、図示せぬ通信機能を用いて外部から画像データを取得してもよい。
【0047】
記憶部51は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、及びレジスタ等の揮発性記憶装置とを含む。記憶部51は、制御部50が実行するプログラムを格納する。記憶部51は、制御部50の制御に必要な各種データを格納する。記憶部51は、空中表示装置1が表示する画像のデータを格納する。
【0048】
入力部54は、タッチパネルやボタンなどを含み、ユーザが入力した情報を受け付ける。情報処理部50Bは、入力部54が受け付けた情報に基づいて、表示部53に表示する画像を選択することが可能である。
【0049】
[2] 空中表示装置1の動作
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0050】
図2の矢印は、光路を示している。図2に示すように、表示素子20の表示面における任意の点“o”から、法線方向を中心とした放射状に光が出射される。表示素子20の点“o”から出射された光は、配向制御素子30に入射する。
【0051】
配向制御素子30に入射する光のうち、法線方向を含む所定の角度範囲の光成分の一部は、配向制御素子30の屈折面33に入射する。光学要素32の屈折面33に入射した光は、屈折面33で屈折し、さらに配向制御素子30の上面で屈折する。そして、角度θを中心とした所定の角度範囲の光成分は、配向制御素子30から出射される。
【0052】
一方、配向制御素子30に入射する光のうち、上記所定の角度範囲よりも左側及び右側に進む光成分の一部は、配向制御素子30の遮光層35に入射し、遮光層35で遮光される。よって、配向制御素子30に入射する光のうち、空中像の生成に寄与しない不要光の一部は、配向制御素子30を透過しない。
【0053】
配向制御素子30から出射された右斜め方向に進む光は、光学素子40に入射する。光学素子40は、入射光を、配向制御素子30と反対側の空中に結像し、空中に空中像2を表示する。
【0054】
図8は、光学素子40における光の反射の様子を説明する斜視図である。図9は、光学素子40における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。図9は、観察者3の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。図10は、光学素子40における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。図10は、観察者3の両目がY方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
【0055】
配向制御素子30の任意の点“o´”から出射された光は、光学素子40の入射面43に入射し、反射面44に到達する。反射面44の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で到達した光は、反射面44で全反射され、光学素子40の光学要素42が形成されている側の反対側の平面から出射される。臨界角とは、その入射角を超えると全反射する最少の入射角である。臨界角は、入射面の垂線に対する角度である。
【0056】
図9のXZ面では、点“o´”から出射された光は、光学要素42の反射面44で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0057】
図10のYZ面では、点“o´”から出射された光は、光学要素42の反射面44で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0058】
すなわち、観察者3が空中像を認識できる条件は、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に認識することができる。
【0059】
図11は、光学素子40における入射面43及び反射面44の角度条件を説明する図である。
【0060】
Z方向(素子面に垂直な方向)に対する入射面43の角度をθ、Z方向に対する反射面44の角度をθ、入射面43と反射面44とのなす角度をθとする。角度をθは、以下の式(1)で表される。
θ=θ+θ ・・・(1)
【0061】
配向制御素子30から角度θで出射された光は、入射面43に入射する。光学素子40の材料の屈折率をn、空気の屈折率を1とする。入射面43における入射角をθ、屈折角をθとする。反射面44における入射角をθ、反射角をθ(=θ)とする。光学素子40の上面における入射角をθ、屈折角をθとする。屈折角θが出射角である。出射角θは、以下の式(2)で表される。
θ=sin-1(n*sin(sin-1((1/n)*sin(90°-(θ+θ)))+θ2+2θ-90°)) ・・・(2)
【0062】
反射面44における臨界角は、以下の式(3)で表される。
臨界角<θ(=θ
臨界角=sin-1(1/n) ・・・(3)
【0063】
すなわち、反射面44における入射角θは、反射面44における臨界角より大きく設定される。換言すると、反射面44の角度θは、反射面44に入射する光の入射角が臨界角より大きくなるように設定される。
【0064】
また、入射面43に入射した光は、入射面43で全反射されないように設定される。すなわち、入射面43の角度θは、入射面43に入射する光の入射角が臨界角より小さくなるように設定される。
【0065】
光学素子40の素子面と空中像2の面との角度、及び光学素子40の素子面と空中像2の面との距離は、光学素子40に入射する光の角度θ、光学素子40の屈折率、光学素子40の入射面43の角度θ、光学素子40の反射面44の角度θを最適に設定することで調整が可能である。
【0066】
図12は、空中表示装置1の光線追跡図である。
表示素子20の表示面における任意の点“o”から、法線方向を中心とした放射状に光が出射される。表示素子20から配向制御素子30に入射した光は、配向制御素子30により屈折するとともに、配向制御素子30を透過する。
【0067】
図12から明らかなように、配向制御素子30からは、法線方向より右側に傾いた方向の光成分が出射している。配向制御素子30から出射される光成分より左側及び右側の光成分は、配向制御素子30の遮光層35で遮光されるため、そのほとんどが配向制御素子30を透過しない。
【0068】
配向制御素子30から光学素子40に斜めに入射した光は、光学素子40によって正面方向に反射される。そして、光学素子40によって反射された光は、点“o´´”で結像する。点“o´´”の位置は、空中像2が表示される位置である。
【0069】
図13は、表示素子20の配光特性を説明するグラフである。図13の横軸がX方向に沿って観察者が表示素子20を見る角度(度)を表しており、縦軸が光の出力比(%)を表している。角度0度は、表示素子20を法線方向(正面)から見た場合に対応する。照明素子10の配光特性も図13のグラフとおおよそ同じである。
【0070】
角度0度で表示素子20を見た場合が出力比(光強度)が最も大きい。表示素子20を見る角度が大きくなるにつれて、出力比が小さくなる。
【0071】
図14は、配向制御素子30の配光特性を説明するグラフである。図14の横軸がX方向に沿って観察者が配向制御素子30を見る角度(度)を表しており、縦軸が光の出力比(%)を表している。図14は、図13の配光特性を有する光が表示素子20から配向制御素子30に入射した場合のグラフである。
【0072】
配向制御素子30の配光特性では、おおよそ角度25度が光強度のピークである。角度25度を中心として、見る角度が中心から離れるにつれて、出力比が小さくなる。60%以上の光強度は、5度以上45度以下の角度範囲で得られる。
【0073】
図15は、光学素子40の配光特性を説明するグラフである。図15の横軸がX方向に沿って観察者が光学素子40を見る角度(度)を表しており、縦軸が光の出力比(%)を表している。図15は、図14の配光特性を有する光が配向制御素子30から光学素子40に入射した場合のグラフである。
【0074】
光学素子40の配光特性では、角度-10度以上5度以下の角度範囲に光強度のピークが含まれる。すなわち、観察者3が空中表示装置1を法線方向(正面)から見た場合に、空中像2をよりはっきりと視認できる。また、角度-25度以上10度以下でも十分大きな光強度を得ることができる。よって、空中表示装置1は、所定の視野角を有する空中像を表示することができる。
【0075】
[3] 配向制御素子30の製造方法
次に、配向制御素子30の製造方法について説明する。図16乃至図21は、配向制御素子30の製造方法を説明する断面図である。
【0076】
図16に示すように、遮光層35が設けられていない配向制御素子30を準備する。遮光層35が設けられていない配向制御素子30を配向制御素子部材30Aと呼ぶ。配向制御素子部材30Aは、基材31及び複数の光学要素32からなる部材である。配向制御素子部材30Aは、交互に配置された複数の屈折面33及び複数の遮光面34を有する。配向制御素子部材30Aは、透明材料で構成され、例えば、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)で構成される。配向制御素子部材30Aは、任意の製造方法を用いて製造される。配向制御素子部材30Aは、複数の屈折面33及び複数の遮光面34が上にくるように配置される。
【0077】
続いて、図17に示すように、複数の屈折面33及び複数の遮光面34上に、黒色のUV(紫外線)硬化塗料35Aを均一に塗布する。UV硬化塗料35Aは、紫外線を照射すると硬化する樹脂で構成される。UV硬化塗料35Aは、黒色の染料又は顔料を含む。UV硬化塗料35Aは、露光された部分が現像液に溶解しやすくなるポジ型の樹脂である。
【0078】
続いて、UV硬化塗料35Aに、1次硬化処理(プリベーク)を施す。1次硬化処理は、熱処理である。この1次硬化処理により、UV硬化塗料35Aに含まれる溶媒が蒸発する。これにより、UV硬化塗料35Aは、乾燥して硬化する。
【0079】
続いて、図18に示すように、屈折面33上のUV硬化塗料35Aに紫外光が照射されるように斜め方向から、UV硬化塗料35Aに紫外光を照射する。この紫外線照射工程は、屈折面33上のUV硬化塗料35Aに紫外光が照射され、遮光面34上のUV硬化塗料35Aに紫外光が照射されない角度で行われる。具体的には、法線方向に対して遮光面34の傾斜角と同じか若干大きい角度で、UV硬化塗料35Aに紫外光を照射する。
【0080】
続いて、図19に示すように、UV硬化塗料35Aを現像する。すなわち、UV硬化塗料35Aを現像液60に浸し、感光部分(屈折面33上のUV硬化塗料35A)を除去する。
【0081】
続いて、図20に示すように、UV硬化塗料35Aに、2次硬化処理(ポストベーク)を施す。2次硬化処理は、熱処理である。この2次硬化処理により、遮光層35が乾燥し、遮光層35の密着性が向上する。
【0082】
このようにして、図21に示すように、遮光層35を備えた配向制御素子30が形成される。
【0083】
[4] 変形例
次に、空中表示装置1の変形例について説明する。図22は、変形例に係る空中表示装置1のXZ面における側面図である。配向制御素子30は、照明素子10と表示素子20との間に配置してもよい。変形例に係る空中表示装置1においても、上記実施形態と同じ動作を実現できる。
【0084】
[5] 実施形態の効果
本発明の実施形態によれば、表示素子20から出射された光を光学素子40で反射させることで、空中に空中像2を表示することができる。また、空中表示装置1の正面方向において、空中像2を表示することができる。また、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置1を実現できる。
【0085】
また、配向制御素子30は、表示素子20から出射された光を、面内に直交する法線方向に対して斜め方向に屈折させる。これにより、光学素子40は、斜め方向の光を受けることが可能となり、結果として、空中像2の表示品質を向上させることができる。
【0086】
また、配向制御素子30は、表示素子20から出射された光のうち、空中像2の表示に寄与しない不要光の一部を遮光することができる。これにより、空中像2の表示品質を向上させることができる。
【0087】
また、観察者3の両眼がX方向(すなわち、複数の光学要素42が並ぶ方向)に平行、又はそれに近い状態で光学素子40を見た場合に、観察者3は、空中像を視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に視認することができる。すなわち、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態において、視野角を確保することができる。
【0088】
また、空中表示装置1を構成する複数の素子を平行に配置することができる。これにより、Z方向に小型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0089】
上記実施形態では、光学要素42の左側の側面が入射面43、右側の側面が反射面44として定義している。しかし、これに限定されず、入射面43と反射面44とを逆に構成してもよい。この場合、配向制御素子30の屈折面33及び遮光面34の位置関係も逆になる。また、実施形態で説明した空中表示装置1の作用も左右が逆になる。
【0090】
上記実施形態では、表示素子20として液晶表示素子を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、様々な種類の表示素子を用いることが可能である。表示素子20は、例えば、自発光型である有機EL(electroluminescence)表示素子、又はマイクロLED(Light Emitting Diode)表示素子などを用いることが可能である。マイクロLED表示素子は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれLEDで発光させる表示素子である。自発光型の表示素子20を用いる場合、照明素子10は不要である。
【0091】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0092】
1…空中表示装置、2…空中像、3…観察者、10…照明素子、11…光源部、12…導光板、13…反射シート、20…表示素子、30…配向制御素子、30A…配向制御素子部材、31…基材、32…光学要素、33…屈折面、34…遮光面、35…遮光層、35A…UV硬化塗料、40…光学素子、41…基材、42…光学要素、43…入射面、44…反射面、50…制御部、50A…表示処理部、50B…情報処理部、51…記憶部、52…入出力インターフェース、53…表示部、54…入力部、55…バス、60…現像液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
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図22