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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176979
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】建物ユニットの上面雨仕舞構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E04B1/348 L
E04B1/348 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089619
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 将之
(57)【要約】
【課題】主に、大判の防水シートの代わりに用いる仮雨仕舞シートが雨水の重みで下へ撓むのを防止し得るようにする。
【解決手段】
建物ユニット1の上面雨仕舞構造では、建物ユニット1の上面4に防水ゾーン11と非防水ゾーン12とが形成され、非防水ゾーン12には、非防水ゾーン12を覆うように仮雨仕舞シート13が取付けられている。
非防水ゾーン12には、仮雨仕舞シート13の下側に仮雨仕舞シート13を支持する排水下地材14が取付けられている。
非防水ゾーン12は、防水性を有する屋根パネル21を、建物ユニット1の上面4に設置することによって形成されても良い。
非防水ゾーン12は、屋根パネル21の縁部22の周辺に形成されても良い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの上面に防水ゾーンと非防水ゾーンとが形成され、
前記非防水ゾーンには、前記非防水ゾーンを覆うように仮雨仕舞シートが取付けられており、
前記非防水ゾーンには、前記仮雨仕舞シートの下側に前記仮雨仕舞シートを支持する排水下地材が取付けられていることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物ユニットの上面雨仕舞構造であって、
前記非防水ゾーンは、防水性を有する屋根パネルを、前記建物ユニットの上面に設置することによって形成され、
前記非防水ゾーンは、前記屋根パネルの縁部の周辺に形成されることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建物ユニットの上面雨仕舞構造であって、
前記非防水ゾーンには、前記屋根パネルを前記建物ユニットの上面に固定するための作業空間が形成され、
前記非防水ゾーンには、前記屋根パネルの吊具が取付けられ、
前記排水下地材は、前記吊具を取付ける位置に欠損部を有していることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項4】
請求項3に記載の建物ユニットの上面雨仕舞構造であって、
前記排水下地材は、前記仮雨仕舞シートを傾斜状態に支持する傾斜支持部を有しており、
前記傾斜支持部は、前記吊具の頂部の位置から前記防水ゾーンへ向けて下る傾斜面を有していることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項5】
請求項4に記載の建物ユニットの上面雨仕舞構造であって、
前記排水下地材は、前記傾斜支持部の外側に、前記排水下地材を前記屋根パネルの前記縁部に取付けるための取付部を有しており、
前記取付部は、前記傾斜支持部と同じかそれ以上の高さを有していることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物ユニットの上面雨仕舞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物には、ユニット建物で構成されたものがある。ユニット建物は、工場で予め製造した建物ユニットを建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなユニット建物では、建物ユニットの出荷からユニット建物が完成するまでの間に建物ユニットの内部に雨水が入り込まないようにする(または、仮雨仕舞を行う)必要がある。そのために、特許文献1では、例えば、降雨時に、建物ユニットの上部に、建物ユニットの上面全体を覆う大きさの防水シートを被せた状態にして、建物ユニットを工場から建築現場へ搬送するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-140997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように、降雨時に建物ユニットの上部に、建物ユニットの上面全体を覆う大きさの防水シートを被せて出荷するようにした場合、防水シートが大判の部材となるため、大判の防水シートの取扱いが大変であった。
【0006】
そのため、近年、大判の防水シートを用いない雨仕舞構造が各種検討されているが、まだ改良の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
建物ユニットの上面に防水ゾーンと非防水ゾーンとが形成され、
前記非防水ゾーンには、前記非防水ゾーンを覆うように仮雨仕舞シートが取付けられており、
前記非防水ゾーンには、前記仮雨仕舞シートの下側に前記仮雨仕舞シートを支持する排水下地材が取付けられている建物ユニットの上面雨仕舞構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、大判の防水シートの代わりに用いる仮雨仕舞シートが雨水の重みで下へ撓むのを防止することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本実施の形態にかかる建物ユニットの上面雨仕舞構造を示す建物ユニットの上部の分解斜視図である。
図1B図1Aの建物ユニットの上面に対する屋根パネルの固定部分を示す部分拡大斜視図である。
図1C図1Bの固定部分を側方から見た部分拡大縦断面図である。
図2】排水下地材を、取付け仮雨仕舞シートを被せた建物ユニットの上面を示す、図1Cと同様の部分拡大縦断面図である。
図3】排水下地材の全体斜視図である。
図4】屋根パネルに吊具を取付けた状態を示す部分拡大斜視図である。
図5】吊具を取付けた屋根パネルの端垂木に沿った非防水ゾーンの拡大平面図である。
図6図5の吊具の位置の縦断面図である。
図7】排水下地材を取付けていない比較例にかかる、仮雨仕舞シートの設置状況および仮雨仕舞シートが雨水で下へ撓んだ状態を示す、図1Cと同様の部分拡大縦断面図である。
図8】建物ユニットを車両に搭載し、荷締めした状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図8は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例0012】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0013】
住宅などの建物を、ユニット建物で構成する。ユニット建物は、工場で予め製造した建物ユニット1(図1)を建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物である。
【0014】
ここで、図1A(~図1C)に示すように、建物ユニット1は、ユニット建物を構成する箱型の単位建物構成物であり、ほぼ直方体状をしている。建物ユニット1は、内部に骨格部分として、ボックスラーメン構造のユニットフレームを有している。ユニットフレームは、金属製の4本の柱2と、金属製の4本の天井梁3と、金属製の4本の床梁(不図示)とで主に構成される。柱2は上下端に端板を取付けた角筒状の部材とされ、天井梁3および床梁は、内向きC字状の部材とされる。
【0015】
建物ユニット1を基準とした直交する三方向を、短辺方向X、長辺方向Y、上下方向Zとする。短辺方向Xは、建物ユニット1の短辺xが延びる水平な方向(妻方向)である。長辺方向Yは、建物ユニット1の長辺yが延びる水平な方向(桁方向)である。上下方向Zは、真上と真下を結ぶ方向である。
【0016】
4本の柱2は、上下方向Zに延びる。4本の天井梁3および4本の床梁は、水平かつ平行な一対の短辺xと、水平かつ平行な一対の長辺yとを、それぞれ有する。
【0017】
ユニットフレームでは、4本の柱2が四隅の位置に設置される。4本の柱2の上端間に4本の天井梁3が矩形状に連結されて、水平な上面4を形成する。4本の柱2の下端間に4本の床梁が矩形状に連結されて、水平な下面(不図示)を形成する。上面4と下面との間には、4つの側面が形成される。建物ユニット1の屋外側に面した側面には、外壁パネル5(図1C)が取付けられる。
【0018】
この実施例の建物ユニット1は、同じユニット建物に使用される他のもの(通常ユニット)と比べて小型のもの(小型ユニット)となっている。ただし、後述する上面雨仕舞構造は、通常ユニットに適用しても良い。
【0019】
この実施例では、上記のような建物ユニット1に対し、以下のような上面雨仕舞構造を設ける。
【0020】
(1)図2に示すように、
建物ユニット1の上面4に防水ゾーン11と非防水ゾーン12とが形成される。
非防水ゾーン12には、非防水ゾーン12を覆うように仮雨仕舞シート13が取付けられる。
そして、非防水ゾーン12には、仮雨仕舞シート13の下側に仮雨仕舞シート13を支持する排水下地材14(図3)が取付けられても良い。
【0021】
ここで、上面雨仕舞構造は、建物ユニット1の上面4を仮雨仕舞するための構造である。仮雨仕舞は、建物ユニット1を一時的に雨水15から保護するものである。建物ユニット1は、少なくとも工場から建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てられるまでの間、上面4を仮雨仕舞される。なお、ユニット建物の完成後にも継続的に必要となる本雨仕舞は、仮雨仕舞とは別に設けられる。ただし、仮雨仕舞の一部(例えば、防水ゾーン11)を本雨仕舞のために利用しても良い。
【0022】
上面4は、上記したように、直方体状をした建物ユニット1の6つの面のうちの、上側の面である。上面4は、4本の柱2の上端間を連結する4本の天井梁3によって平面視ほぼ矩形状に形成される。上面4は、降雨時に雨水15を最も多く受ける面である。
【0023】
防水ゾーン11は、建物ユニット1の上面4における、防水性を有する領域である。防水ゾーン11は、工場出荷時の状態で、建物ユニット1の上面4の塞がれている部分(閉塞部分)とされる。防水ゾーン11は、建物ユニット1の上面4のほぼ中央部に形成される。この実施例では、建物ユニット1の上面4の周縁部およびその近傍を除くほとんどの部分(大部分)が防水ゾーン11とされている。仮雨仕舞のためには、防水ゾーン11をより大きくするのが好ましい。
【0024】
非防水ゾーン12は、建物ユニット1の上面4における、防水性を有さない領域である。非防水ゾーン12は、工場出荷時の状態で、建物ユニット1の上面4のほぼ開いている部分(開口部分)などとされる。非防水ゾーン12は、最終的には、屋根材などで塞がれて防水される。非防水ゾーン12は、建物ユニット1の上面4の内側における、防水ゾーン11以外の部分、例えば、防水ゾーン11の外側などに形成される。この実施例では、非防水ゾーン12は、建物ユニット1の上面4の周縁部およびその近傍などに、各天井梁3に沿って細長く形成される。細長い非防水ゾーン12は、建物ユニット1の上面4の各辺(各天井梁3)に沿った最大で4箇所の部分に形成される。
【0025】
仮雨仕舞シート13は、仮雨仕舞のための防水性を有する合成樹脂製の柔軟なシート材である。仮雨仕舞シート13は、建物ユニット1にとっては、建物ユニット1を構成しない外部の部材となる。仮雨仕舞シート13は、建物ユニット1の上面4の非防水ゾーン12に対して取付けられ、非防水ゾーン12を仮雨仕舞する。仮雨仕舞シート13は、細長い非防水ゾーン12に沿った細長いものなどとされる。仮雨仕舞シート13は、必要に応じて、非防水ゾーン12ごとに分けて設置される。
【0026】
仮雨仕舞シート13は、各非防水ゾーン12の全体を覆い得るように、非防水ゾーン12よりも一回り程度以上大きなものとする。例えば、仮雨仕舞シート13は、建物ユニット1の側面の上部(または、外壁パネル5の上部)に達する程度の幅で、建物ユニット1の短辺xまたは長辺yの両端を所要量越える程度の長さに形成される。
【0027】
この実施例では、仮雨仕舞シート13は、少なくとも建物ユニット1の上面4の短辺xの側に形成される非防水ゾーン12に対して取付けられる。仮雨仕舞シート13は、建物ユニット1の上面4の長辺yの側に形成される非防水ゾーン12に対して取付けても良い。
【0028】
仮雨仕舞シート13は、その内側(室内側)の辺を、防水ゾーン11の外縁部またはその周辺などに取付けられる。防水ゾーン11の外縁部は、防水ゾーン11における、非防水ゾーン12に沿った縁部である。非防水ゾーン12に対する仮雨仕舞シート13の取付けは、例えば、防水性を有する粘着テープなどで行うことができる。また、例えば、仮雨仕舞シート13は、ネジなどの固定具で取付けた後に、その上から粘着テープを貼り付けるようにしても良い。粘着テープには、所要の接着力を有し、着脱が容易で、繰り返しの接着に耐えられる養生テープなどを用いることができる。これらにより、仮雨仕舞シート13は建物ユニット1の上面4に対して着脱自在に設置される。
【0029】
排水下地材14は、仮雨仕舞シート13を設置する際に、仮雨仕舞シート13の下地として使われる金属製の部材である。排水下地材14は、建物ユニット1にとっては、建物ユニット1を構成しない外部の部材となる。排水下地材14は、例えば、図3に示すような形状、構造にする。排水下地材14は、非防水ゾーン12およびその周辺などに取付けられる。排水下地材14は、特に、非防水ゾーン12の開口となっている部分に取付けられる。
【0030】
排水下地材14は、仮雨仕舞シート13を、下側から面で支持するものとしても良い。排水下地材14は、各非防水ゾーン12に沿って延び、非防水ゾーン12をほぼ塞ぎ得る大きさや形状の長尺部材とされる。排水下地材14は、1本物で構成しても良いし、長手方向に対し複数に分割して継ぎ合わせて使っても良い。排水下地材14は、非防水ゾーン12に対して着脱自在に設置しても良い。
【0031】
この実施例の排水下地材14は、少なくとも建物ユニット1の上面4の短辺xの側の非防水ゾーン12に対して取付けられる。排水下地材14は、建物ユニット1の上面4の長辺yの側の非防水ゾーン12に対して取付けても良い。
【0032】
(2)図1に示すように、非防水ゾーン12は、防水性を有する屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に設置することによって形成されても良い。
図2に示すように、非防水ゾーン12は、屋根パネル21の縁部22の周辺に形成されても良い。
【0033】
ここで、屋根パネル21は、ユニット建物の屋根を構成するパネルである。屋根パネル21は、平面視ほぼ矩形状をしており、建物ユニット1の上面4に、上面4と向きを合わせて設置される。建物ユニット1の上面4に屋根パネル21を取付けることにより、屋根付きの建物ユニット1となるため、建築現場に建物ユニット1を据え付けるだけで、ユニット建物に屋根(の大部分)が形成され、屋根を別に設置する手間が削減される。屋根パネル21を取付けた建物ユニット1は、ユニット建物の最上階などに使用される。屋根パネル21は、全体が防水性を有するのが好ましいが、大部分が防水性を有していれば良い。
【0034】
屋根パネル21は、パネル枠23と屋根面材24とによって構成される。具体的には、パネル枠23は、平行な複数本の垂木25と、垂木25の両端部に設けられた平行な一対の端垂木26とによって形成された平面視ほぼ矩形状の枠体とされる。屋根面材24は、屋根下地材、防水性を有するルーフィングシート、仕上鋼板などの屋根葺材からなる面材で構成される。屋根パネル21は、パネル枠23の上部に屋根面材24を取付けて構成される(図4)。屋根面材24の上には、例えば、太陽光発電パネルなどを取付けても良い。
【0035】
垂木25は、建物ユニット1の長辺方向Yに延びる木製または金属製の部材とされる。端垂木26は、建物ユニット1の短辺方向Xに延びる木製または金属製の部材とされる。屋根パネル21は、屋根面材24によって防水性が得られる。そのため、屋根パネル21は、屋根面材24が設置されている領域が、防水ゾーン11となる。そして、屋根パネル21は、屋根面材24が設置されていない領域が、非防水ゾーン12になる。屋根パネル21は、屋根面材24の大きさによって、防水ゾーン11の大きさおよび非防水ゾーン12の有無が設定される。
【0036】
また、屋根パネル21は、建物ユニット1の上面4よりも一回り程度小さく形成されて、建物ユニット1の上面4の中央部に設置される。屋根パネル21は、建物ユニット1の上面4に対する配置の仕方によって、防水ゾーン11および非防水ゾーン12の位置や非防水ゾーン12の大きさが設定される。
【0037】
屋根パネル21は、建物ユニット1の上面4よりも上方に設置される。屋根パネル21または屋根面材24は、建物ユニット1の上面4またはパネル枠23に対し、ほぼ水平に設置しても良いが、緩い排水勾配を有して斜めに設置しても良い。この実施例では、屋根パネル21または屋根面材24は、長辺yの側の一方を他方よりも僅かに高く設置することで短辺方向Xに沿って一方の側から他方の側へ向けて下る傾斜面としている。この場合、一方の側を室内側とし、他方の側を屋外側とするのが好ましい。屋根パネル21は、図の左側(奥側)が一方の長辺y、右側(手前側)が他方の長辺yとなっている。
【0038】
屋根パネル21は、図1B図1Cに示すように、梁受金具31などの取付金具を用いて建物ユニット1の上面4を構成する天井梁3に取付けられる。梁受金具31は、少なくとも短辺xの側に取付けられる。梁受金具31は、側面視ほぼL字型をしており、縦面31aがビスなどの固定具32で屋根パネル21の端垂木26の外側面に外側から横方向に固定される。縦面31aは、端垂木26の上面と同じかそれよりも低い位置に取付けられる。梁受金具31は、横面31bがボルト・ナットなどの締結固定具33で天井梁3の上に上下方向Zに締結固定される。
【0039】
図1Cは、上記した排水勾配を形成するために、屋根パネル21の一部を、建物ユニット1の上面4から浮かせて固定した状態を示している。端垂木26は、梁受金具31を介して、建物ユニット1の短辺xの側の天井梁3に対し、天井梁3から離間して固定されている。
【0040】
この場合、端垂木26は、建物ユニット1の短辺xの側の天井梁3に対し、天井梁3よりも上方の位置に固定されている。端垂木26は、短辺xの側の天井梁3よりも長辺方向Yに対し、若干内側となるようにズラして設置されている。端垂木26は、短辺xの側の天井梁3に対し、上下方向Zに一部重複されている。ただし、建物ユニット1の上面4に対する屋根パネル21の設置の仕方は、上記に限るものではない。
【0041】
そして、屋根パネル21の縁部22は、パネル枠23の外周部分または屋根面材24の外周部分の少なくとも一部となる。この実施例では、パネル枠23の外周部分と屋根面材24の外周部分とは、不一致とされている。即ち、屋根パネル21は、少なくとも短辺xの側では、屋根面材24の縁部が、パネル枠23の縁部22の端垂木26に達しない長さとなっている。よって、短辺xの側では、端垂木26が屋根パネル21の縁部22となり、その周辺が非防水ゾーン12となる。また、屋根面材24の縁部が、防水ゾーン11の外縁部となる。
【0042】
上記したように、屋根面材24が存在している領域が防水ゾーン11であるため、屋根面材24の外側は非防水ゾーン12になる。そのため、端垂木26と屋根面材24との間の隙間、および屋根パネル21の外側は、非防水ゾーン12となる。非防水ゾーン12は、屋根パネル21の内側と外側の両方に形成されることになる。屋根パネル21の内側の非防水ゾーン12は、端垂木26に沿った細長いものとなる。よって、この非防水ゾーン12に設置される排水下地材14は、少なくとも端垂木26とほぼ同じ長さで、少なくとも端垂木26と屋根面材24との隙間とほぼ同じ幅を有するものとされる。これに対し、仮雨仕舞シート13は、屋根パネル21の内側と外側の非防水ゾーン12を両方同時に覆い得る大きさにする。
【0043】
なお、この実施例は、主に、建物ユニット1の上面4の短辺xの側の非防水ゾーン12に対して仮雨仕舞を行うものとして説明している。よって、長辺yの側に形成される非防水ゾーン12については、特に説明しないが、短辺xの側と同様に仮雨仕舞を行うことができる。
【0044】
(3)非防水ゾーン12には、屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に固定するための作業空間41が形成される。
図4(~図6)に示すように、非防水ゾーン12には、屋根パネル21の吊具42が取付けられても良い。
排水下地材14は、吊具42を取付ける位置に欠損部43(図3)を有しても良い。
【0045】
ここで、作業空間41は、図1Cに示すように、梁受金具31の横面31bを天井梁3の上面に対して締結固定具33で上下方向Zに締結固定する際に、屋根パネル21の上側から天井梁3の下側へ手を差し込んで作業するための、屋根パネル21の通過空間である。作業空間41を確保するために、屋根パネル21には、縁部22の周辺に、端垂木26に沿った細長い非防水ゾーン12が形成される。作業空間41は、端垂木26の厚みよりも幅広くなっている。また、作業空間41は、天井梁3の上部の幅とほぼ同じかそれよりも若干幅広くなっている。
【0046】
吊具42は、建物ユニット1を工場で製造する際に、屋根パネル21をクレーンで吊り上げて建物ユニット1の上面4に設置するために、クレーンの係留ワイヤ44(図1)を引っ掛ける金具である。吊具42は、建物ユニット1にとっては、建物ユニット1を構成しない外部の部材となる。屋根パネル21の建物ユニット1の上面4への設置後には、吊具42は不要になる。
【0047】
吊具42は、屋根パネル21の非防水ゾーン12に取付けられる。例えば、吊具42は、非防水ゾーン12になっている屋根パネル21の4つのコーナー部分またはその周辺にそれぞれ取付けられる。吊具42は、どのような形状や構造のものとしても良いが、非防水ゾーン12には、屋根面材24がないので、パネル枠23に対して取付け得る構造のものとされる。吊具42は、垂木25や端垂木26に取付けることができるが、この実施例では、吊具42は、端垂木26に対して、端垂木26内側面側から取付けるものとしている。
【0048】
吊具42は、少なくとも、クレーンの係留ワイヤ44を引っ掛ける部分と、パネル枠23に取付ける部分とを有する。
【0049】
この実施例では、吊具42は、例えば、図6に示すように、縦の面42aと、上下一対の横の面42b,42cとを一体に有する、側面視ほぼF字型のものとされている。縦の面42aは、上側の横の面42bよりも上に延びる。一対の横の面42b,42cは端垂木26の高さとほぼ同じかそれよりも若干広い間隔を有して上下に離間される。縦の面42aの上部がクレーンの係留ワイヤ44を引っ掛ける部分となり、縦の面42aの下部と、一対の横の面42b,42cとがパネル枠23に取付ける部分となる。なお、吊具42は、縦の面42aと、下側の横の面42cとを有する側面視ほぼL字型のものとしても良い(図2)。
【0050】
吊具42の縦の面42aは、上部にクレーンの係留ワイヤ44を引っ掛けるワイヤ引掛孔42d(図4)を有すると共に、下部が端垂木26の内側面に当接される。上側の横の面42bは、端垂木26の上面に上側から当接されることで、端垂木26の上面を上下方向Zに係止する。下側の横の面42cは、端垂木26の底面に下側から当接されることで、端垂木26の底面を上下方向Zに係止する。上下の横の面42b,42cは、端垂木26の上面または下面に係止できる状態になっていれば、端垂木26の上面または下面からある程度までは離れていても良い。
【0051】
吊具42は、端垂木26に対して横から装着することで、縦の面42aの下部と上下一対の横の面42b,42cとで端垂木26を包持する。このとき、吊具42の縦の面42aの上部は、上端(頂部42e)が、建物ユニット1を搬送する際の、高さ制限内に納まる高さ以下の高さで上方へ突出されても良い。これにより、吊具42を取付けたままでの、建物ユニット1の搬送が可能になる。なお、屋根パネル21の建物ユニット1の上面4への設置後に吊具42を取外すのであれば、吊具42の頂部42eは、上記よりも高く上方へ突出させても良い。この実施例では、吊具42の頂部42eの突出量は、端垂木26の高さのほぼ半分程度となっている。
【0052】
吊具42は、例えば、上側の横の面42bに対し、ネジなどの固定具45を上から下へ向けて取付けることで、端垂木26の上面に固定される。吊具42は、ネジなどの固定具45を外すことで、端垂木26から取外すことが可能(着脱可能)である。なお、吊具42は、例えば、上記に加えて、または、上記は別に、下側の横の面42cや、縦の面42aの下部の少なくとも一方を、固定具45で端垂木26の下面や内側面に取付けるようにしても良い。
【0053】
吊具42は、この実施例では、端垂木26に対し、梁受金具31と長手方向の同じ位置またはその近傍に、大部分が梁受金具31と重なるように取付けられる(図5)。この際、梁受金具31は、端垂木26の外側面に設置され、吊具42は、端垂木26の内側面に設置されることで、互いに干渉せずに長手方向の同じ位置に、端垂木26を挟んで対向するように設置される。吊具42は、梁受金具31よりも小型の金具であるため、吊具42は、梁受金具31の範囲内の適宜の位置に取付けられる。
【0054】
なお、建物ユニット1自体をクレーンで吊上げるための吊金具(不図示)は、屋根パネル21の吊具42とは別に設けられて、例えば、建物ユニット1の柱2の上端部に着脱可能に取付けられる。屋根パネル21を建物ユニット1の上面4よりも小さくしたのは、吊金具を取付けるために、建物ユニット1の上面4に取付スペースを確保するためである。そして、この取付スペースも非防水ゾーン12になる。
【0055】
欠損部43は、排水下地材14に設けられた、局所的に欠損している部分である。欠損部43は、切欠きや孔部などとすることができる。欠損部43は、吊具42が取付けられる位置に対し、吊具42の取付作業に必要な最小限の大きさに形成される。例えば、欠損部43は、吊具42の幅とほぼ同じかそれよりも若干広い幅で、吊具42の設置位置(端垂木26の内側面)に形成される。この際、欠損部43は、排水下地材14に対し、ワイヤ引掛孔42dが外部に露出される程度の深さに形成する。これにより、排水下地材14があっても、吊具42にクレーンの係留ワイヤ44を取付けることが可能になる。欠損部43によって、排水下地材14は、局所的に不連続な形状になるが、欠損部43を最小限の大きさとすることで、排水下地材14としての機能にはほとんど支障がない。
【0056】
(4)図2図3)に示すように、排水下地材14は、仮雨仕舞シート13を傾斜状態に支持する傾斜支持部51を有しても良い。
傾斜支持部51は、吊具42の頂部42eの位置から防水ゾーン11へ向けて下る傾斜面51aを有しても良い。
【0057】
ここで、排水下地材14は、仮雨仕舞シート13をほぼ水平に支持するものとしても良いが、この実施例では、仮雨仕舞シート13を傾斜状態となるように支持するものとしている。
【0058】
傾斜状態は、建物ユニット1の内外方向に傾斜した状態としても良い。内外方向は、建物ユニット1の内側(室内側)と外側(屋外側)とを結ぶ方向である。内外方向は、内側から外側へ向かって傾斜させても良いし、外側から内側へ向かって傾斜させても良い。内外方向は、短辺方向Xおよび長辺方向Yの両方に存在する。この実施例では、内外方向は、建物ユニット1の長辺方向Yとなっている。
【0059】
傾斜支持部51は、排水下地材14の主要部であり、水平に対して斜めに傾いた部分(傾斜面51a)である。仮雨仕舞シート13の少なくとも非防水ゾーン12を覆う部分を、傾斜支持部51の傾斜面51aで下側から直接支持することによって、傾斜支持部51は、仮雨仕舞シート13の上記部分を斜めにする。傾斜支持部51は、仮雨仕舞シート13の上に降った雨水15の排水を促進する機能を有する。仮雨仕舞シート13の上に降った雨水15は、傾斜の下側へ向かって流下される。この実施例では、雨水15は、建物ユニット1の内側へ流下されて建物ユニット1の上面4の防水ゾーン11へと排水される。防水ゾーン11では、屋根パネル21に緩い排水勾配を付けて傾斜させることで、仮雨仕舞シート13からの雨水15は、防水ゾーン11に降った雨水15と共に屋外へ排水される。
【0060】
頂部42eは、吊具42の最も高い部分であり、縦の面42aの上端となる。吊具42の頂部42eは、防水ゾーン11を構成する屋根パネル21よりも高なるように上方へ突出される。これにより、排水下地材14は、傾斜支持部51によって仮雨仕舞シート13を建物ユニット1の上面4や屋根パネル21よりも高い位置に持ち上げる。
【0061】
傾斜面51aは、傾斜支持部51の一部(主要部)であり、傾斜支持部51における、ほぼ吊具42の頂部42eの位置から、ほぼ屋根面材24の外縁部の位置まで達する幅を有して、屋根面材24の外縁部のほぼ全域に沿って延びる部分である。そして、傾斜面51aは、建物ユニット1の外側(屋外側)から内側(室内側)へ向けて下る斜面となっている。傾斜面51aは、吊具42の頂部42eとほぼ同じ高さから屋根面材24の上面の高さまで下り勾配に延びて、屋根面材24の上面に乗る。傾斜面51aは、長手方向の全域に亘って一定の勾配に形成しても良い。上記した欠損部43は、傾斜支持部51の傾斜面51aに対し、吊具42を設置する位置に、内側から切欠くように局所的に形成されている。
【0062】
なお、傾斜支持部51は、傾斜面51aの他に、少なくとも縦面部分51bを有している。縦面部分51bは、部分的なものとしても良い。この実施例では、縦面部分51bは、傾斜面51aと共に端垂木26とほぼ同じ長さに連続的に延ばされて、傾斜支持部51を形成している。傾斜面51aおよび縦面部分51bによって、傾斜支持部51は、山型の断面の縦面部分51b部材となる。傾斜面51aは、直角三角形における斜辺の位置に形成される。縦面部分51bは、直角三角形における垂直な辺に形成される。
【0063】
縦面部分51bは、ほぼパネル枠23の上部(端垂木26の上面)の位置から、ほぼ吊具42の頂部42eの位置まで達する高さを有してほぼ真上に立ち上がる。縦面部分51bは、傾斜面51aの外側の辺(上辺)と一体に設けられて、傾斜面51aの外側の辺を内側の辺(下辺)よりも高く持ち上げる。傾斜面51aおよび縦面部分51bは、吊具42の頂部42eとほぼ同じ高さの位置で屈曲部分を介して互いに連結されており、屈曲部分は、傾斜支持部51の頂部(または、傾斜面51aおよび縦面部分51bの共通の上辺)となる。
【0064】
上記した欠損部43は、必要な場合には、傾斜支持部51の縦面部分51bにおける、少なくとも、ワイヤ引掛孔42dと合致する位置にも、局所的に設けられる。
【0065】
なお、欠損部43は、傾斜支持部51の傾斜面51aと縦面部分51bとの両方に跨るように、繋げて形成しても良い。この場合、欠損部43は、少なくとも、ワイヤ引掛孔42dが外部に露出される程度の深さに、傾斜支持部51の頂部(屈曲部分)に切欠き形成される。
【0066】
(5)排水下地材14は、傾斜支持部51の外側に、排水下地材14を屋根パネル21の縁部22に取付けるための取付部61を有しても良い。
取付部61は、傾斜支持部51と同じかそれ以上の高さ62を有しても良い。
【0067】
ここで、傾斜支持部51の外側は、例えば、縦面部分51bの外面(屋外側の側面)となる。
【0068】
屋根パネル21の縁部22は、端垂木26であり、例えば、端垂木26の上面とされる。これにより、取付部61は、端垂木26の上面に取付けられる。
【0069】
取付部61は、排水下地材14を非防水ゾーン12に取付けるための部分であり、傾斜支持部51とは別の部材で構成されて、傾斜支持部51と共に排水下地材14に一体に備えられる。取付部61と傾斜支持部51は、例えば、溶接や、リベットや、ボルト・ナットなどの締結固定具によって接合される。
【0070】
取付部61は、部分的なものとしても良いが、傾斜支持部51とほぼ同じ長さの長尺部材としても良い。この実施例では、排水下地材14は、取付部61を金属製の厚肉の部材で構成し、傾斜支持部51を金属製の薄肉の部材で構成している。これにより、取付部61は、排水下地材14の屋根パネル21に対する取付剛性を確保すると共に、傾斜支持部51を補強して、傾斜支持部51による仮雨仕舞シート13に対する支持機能および排水機能を補助している。
【0071】
具体的には、取付部61は、側面視ほぼG字状断面の部材となっている。取付部61は、内外方向の内側に位置する第一の縦部分61aと、内外方向の外側に位置する第二の縦部分61bと、第一の縦部分61aおよび第二の縦部分61bの下端間を連結する横部分61cとを有する、段違い形状になっている。第一の縦部分61aおよび第二の縦部分61bは、上端部に、対向する方向へ向かう短い横フランジ部61d,61eをそれぞれ形成しても良い。
【0072】
第一の縦部分61aは、傾斜支持部51(の縦面部分51b)とほぼ同じかそれよりも若干高い高さ62を有している。第二の縦部分61bは、第一の縦部分61aよりも低く、屋根パネル21の上面4よりは高くなっている。これにより、取付部61に対し、仮雨仕舞シート13は、内側が高くなり、外側が低くなるように被せられる。横部分61cは、ほぼ端垂木26の内側面の位置からほぼ天井梁3の外側面の位置にまで及ぶ幅を有している。第一の縦部分61aおよび第二の縦部分61bは、横部分61cの幅と同じ間隔に離間されて、横部分61cの両端部から上方へ延びている。
【0073】
排水下地材14は、取付部61の横部分61cの内側部分が、端垂木26の上部に当接され、外側部分が端垂木26の外側へ張出した状態で、屋根パネル21の縁部22に設置(当接配置)される。排水下地材14は、ビスなどの固定部材63で内側部分を端垂木26に上方から下へ向けて固定される。排水下地材14は、ビスなどの固定部材63を外すことで、屋根パネル21の縁部22から取外すことが可能(着脱可能)である。
【0074】
上記した欠損部43は、必要な場合には、取付部61の第一の縦部分61aにおける、少なくとも、ワイヤ引掛孔42dと合致する位置にも、局所的に設けられる。
【0075】
なお、欠損部43は、傾斜支持部51の傾斜面51aと縦面部分51bと取付部61の第一の縦部分61aとの全てに跨るように形成しても良い。この場合、欠損部43は、少なくとも、ワイヤ引掛孔42dが外部に露出される程度の深さに、排水下地材14の頂部に切欠き形成される。
【0076】
なお、図1では、分かり易いように、吊具42を端垂木26の外側面の梁受金具31よりも端部寄りの位置に取付けているが、吊具42は、この変形例のように取付けることもできる。この場合、欠損部43は、主に取付部61に形成される。傾斜支持部51については、欠損部43は、設けなくても良いが、必要な場合には、ワイヤ引掛孔42dが外部に露出される程度の深さに形成すれば良い。
【0077】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0078】
建物ユニット1の工場出荷から建築現場でユニット建物が完成するまでの間に、建物ユニット1の内部に雨水15が入り込まないように、建物ユニット1に対して仮雨仕舞を行う。これにより、降雨時においても、建物ユニット1を建築現場へ搬送して建築現場で組み立てることが可能になる。よって、ユニット建物の工期を更に短縮して生産性を向上できる。
【0079】
そのために、建物ユニット1の上面4に防水ゾーン11を形成することで、防水ゾーン11によって、建物ユニット1の上面4の大部分を仮雨仕舞する。そして、建物ユニット1の上面4における、防水ゾーン11以外となる部分(非防水ゾーン12)には、仮雨仕舞シート13を取付けることで仮雨仕舞を行う。仮雨仕舞シート13は、非防水ゾーン12を覆い得る大きさで良いので、小型化される。よって、仮雨仕舞シート13を取扱い易くして、建物ユニット1の上面4の全面に対して大判の仮雨仕舞シートを取付ける必要や手間などをなくせる。
【0080】
この際、図7の比較例に示すように、非防水ゾーン12を仮雨仕舞シート13で覆っただけの状態では、仮雨仕舞シート13の上からの雨水15の排水は特に考慮されておらず、また、仮雨仕舞シート13は支えるものがない。そのため、例えば、雨水15の重みで仮雨仕舞シート13が下へ撓み、そこへ雨水15が溜まって建物ユニット1内へ入り込むおそれが生じる。
【0081】
そこで、この実施例では、図2に示すように、非防水ゾーン12に排水下地材14を取付けて、仮雨仕舞シート13を排水下地材14によって下から支えるようにする。排水下地材14は、建物ユニット1の各辺にそれぞれ形成された各非防水ゾーン12の少なくともいずれかに沿って延び、その非防水ゾーン12のほぼ全体を覆うものとしても良い。
【0082】
具体的な手順としては、まず、工場で防水性を有する屋根パネル21を製造する。屋根パネル21は、建物ユニット1への固定作業のために、一部(縁部22)に作業空間41を残しておく。この作業空間41が屋根パネル21の内側の非防水ゾーン12となる。
【0083】
そのため、屋根パネル21の内側の非防水ゾーン12に対して、仮雨仕舞のために、排水下地材14と仮雨仕舞シート13とを順番に取付ける。そして、排水下地材14で非防水ゾーン12をほぼ覆うようにする。これにより、非防水ゾーン12は、ある程度仮雨仕舞される。また、排水下地材14で仮雨仕舞シート13を下から支えて、非防水ゾーン12を覆った仮雨仕舞シート13が下へ撓まないようにする。排水下地材14と仮雨仕舞シート13とは、屋根パネル21に対して容易に取付けたり、取外したりできる。
【0084】
なお、仮雨仕舞シート13は、使用しないときには、丸めるなどによって非防水ゾーン12の上から退避させておくことができる。
【0085】
この排水下地材14が設置された屋根パネル21に対し、吊具42を取付ける。そして、吊具42を使って屋根パネル21をクレーンで吊り上げ、建物ユニット1の上面4に設置する。吊具42は、屋根パネル21の建物ユニット1の上面4への設置後には、屋根パネル21から取外しても良いし、そのまま屋根パネル21に残しておいても良い。
【0086】
その後、屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に固定する。固定作業は、屋根パネル21に形成した作業空間41を通してボルト・ナットなどの締結固定具33で締結するようにして行う。この作業空間41が非防水ゾーン12となっている。固定作業の際には、仮雨仕舞シート13は、めくって非防水ゾーン12を露出させた状態にする。非防水ゾーン12には、排水下地材14が設置されているため、固定作業は、排水下地材14の欠損部43を通して行う。
【0087】
更に、建物ユニット1の上面4と屋根パネル21との間に、別の非防水ゾーン12が形成される場合には、別の非防水ゾーン12に対しても、上記と同様に、仮雨仕舞を行えるようにしても良い。即ち、別の非防水ゾーン12に対し、仮雨仕舞シート13、または、排水下地材14と仮雨仕舞シート13とを取付ける。別の非防水ゾーン12は、例えば、建物ユニット1の上面4に建物ユニット1の吊金具を取付けるために、屋根パネル21を建物ユニット1の上面4よりも小さくすることによって形成される。
【0088】
そして、仮雨仕舞シート13は、建物ユニット1を降雨時に搬送する場合などに拡げて使用する。この際、仮雨仕舞シート13は、拡げて非防水ゾーン12を覆う。非防水ゾーン12には、排水下地材14が設置されているので、仮雨仕舞シート13は、排水下地材14で支えられる。更に、拡げた仮雨仕舞シート13は、建物ユニット1の側面に垂らして、例えば、養生テープなどの粘着テープTなどで側面に取付けられた外壁パネル5の上部などに貼り付ける。これにより、仮雨仕舞シート13は、非防水ゾーン12の上に安定した状態で設置される。非防水ゾーン12に設置された仮雨仕舞シート13は、排水下地材14の傾斜支持部51と取付部61とによって、建物ユニット1の上面4や、屋根パネル21よりも高くなるように山型に持ち上げられる。
【0089】
仮雨仕舞シート13および排水下地材14は、建物ユニット1の建築現場への搬送および建築現場での建物ユニット1の設置後の雨が止んだ時などに撤去して再利用することができる。
【0090】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果が得られる。
【0091】
(効果 1)建物ユニット1の上面雨仕舞構造では、建物ユニット1の上面4に防水ゾーン11と非防水ゾーン12とを形成する。非防水ゾーン12には、非防水ゾーン12を覆うように仮雨仕舞シート13が取付けられる。
そして、非防水ゾーン12には、仮雨仕舞シート13の下側に仮雨仕舞シート13を支持する排水下地材14(図3)を取付けておく。
【0092】
これにより、例えば、降雨時に、建物ユニット1を工場から出荷して建築現場へ搬送するときに、非防水ゾーン12を、非防水ゾーン12に取付けた排水下地材14の上から、仮雨仕舞シート13で覆った状態にできる。そのため、仮雨仕舞シート13は、排水下地材14で下側から支えられる。よって、仮雨仕舞シート13は、非防水ゾーン12を、仮雨仕舞すると共に、仮雨仕舞シート13が雨水15の重みで下へ撓むのを防止できる。その結果、例えば、下へ撓んだ仮雨仕舞シート13に雨水15が溜まり、溜まった雨水15が溢れて、非防水ゾーン12から建物ユニット1内へ入り込むなどの不具合を防止できる。
【0093】
なお、仮雨仕舞シート13および排水下地材14は、非防水ゾーン12に対して、着脱自在としても良い。これにより、仮雨仕舞シート13および排水下地材14を、使用後に建物ユニット1から取外して撤去し、別の建物ユニット1に再利用することが可能になる。
【0094】
(効果 2)図1に示すように、建物ユニット1の上面雨仕舞構造では、非防水ゾーン12は、防水性を有する屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に設置することによって形成されても良い。
図2に示すように、非防水ゾーン12は、屋根パネル21の縁部22の周辺に形成されても良い。
【0095】
建物ユニット1の上面4に防水性を有する屋根パネル21を設置する。これにより、建物ユニット1は屋根の一部を備えたものとなり、建物ユニット1を建築現場に設置することで、そのまま屋根の一部を形成できる。
【0096】
この際、例えば、屋根パネル21を、建物ユニット1の上面4と同じ大きさにすると、建物ユニット1の上面4に対して、建物ユニット1自体をクレーンで吊上げるための吊金具を取付けるスペースがなくなってしまう。そのため、屋根パネル21は、建物ユニット1の上面4よりも小さくする必要がある。
【0097】
これにより、屋根パネル21と、建物ユニット1の上面4との間には、非防水ゾーン12が形成される。非防水ゾーン12は、それ以外にも建物ユニット1の上面4に形成される。そこで、非防水ゾーン12に仮雨仕舞シート13を取付けて、仮雨仕舞シート13で非防水ゾーン12を仮雨仕舞する。そして、非防水ゾーン12に排水下地材14を取付けて、排水下地材14で仮雨仕舞シート13を下側から支持する。そのため、上記したように、仮雨仕舞シート13が雨水15の重みで下へ撓んで、溢れた雨水15が非防水ゾーン12から建物ユニット1内へ入り込む不具合を防止できる。
【0098】
(効果 3)建物ユニット1の上面雨仕舞構造では、非防水ゾーン12には、屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に固定するための作業空間41が形成されても良い。
この非防水ゾーン12には、屋根パネル21の吊具42が取付けられても良い。排水下地材14は、吊具42を取付ける位置に欠損部43を有しても良い。
【0099】
屋根パネル21は、縁部22に、屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に固定するための作業空間41が必要になる。状況によっては、屋根パネル21の内側に作業空間41を設ける必要が生じ、この作業空間41が非防水ゾーン12になる。そこで、屋根パネル21の非防水ゾーン12に対し仮雨仕舞シート13を取付けて、仮雨仕舞シート13で非防水ゾーン12を仮雨仕舞する。そして、非防水ゾーン12に排水下地材14を取付ける。これにより、上記したように、屋根パネル21の内側に非防水ゾーン12を有している場合でも、非防水ゾーン12から建物ユニット1内へ入り込む不具合を防止できる。
【0100】
そして、非防水ゾーン12には、屋根パネル21の吊具42を取付ける。これにより、防水ゾーン11の防水性に影響を与えずに、屋根パネル21に吊具42を取付けることができる。
【0101】
排水下地材14には、吊具42を取付ける位置に欠損部43を設ける。排水下地材14が欠損部43を有することで、非防水ゾーン12の大部分を排水下地材14で塞いでしまっても、欠損部43の位置に吊具42を支障なく取付けることができる。そして、欠損部43に吊具42を取付けても、欠損部43は吊具42によっては完全には塞がれないため、欠損部43を使って屋根パネル21を建物ユニット1の上面4に固定することができる。
【0102】
なお、吊具42を取付ける際には、仮雨仕舞シート13をめくって、欠損部43を露出させるだけで、作業空間41の一部が出現されるので、固定作業を行う際に手間と時間がかからない。
【0103】
欠損部43は、吊具42の取付作業ができる程度の小さなもので良いため、欠損部43の位置で仮雨仕舞シート13が下へ撓むことがほぼ防止されるので、欠損部43によって排水下地材14による防水機能が損なわれることはない。
【0104】
なお、吊具42は、使用後に建物ユニット1から取外して撤去され、別の建物ユニット1に再利用される。
【0105】
(効果 4)建物ユニット1の上面雨仕舞構造では、排水下地材14は、仮雨仕舞シート13を傾斜状態に支持する傾斜支持部51を備えても良い。これにより、排水下地材14は、傾斜支持部51によって仮雨仕舞シート13が傾斜状態となるように仮雨仕舞シート13を下側から支持する。そのため、傾斜された仮雨仕舞シート13は、上に降った雨水15を即座に流下させて排水除去する。よって、傾斜支持部51は、仮雨仕舞シート13に降った雨水15が、仮雨仕舞シート13の上に留まらないようにできる。
【0106】
この際、傾斜支持部51は、非防水ゾーン12に設けた吊具42の頂部42eの位置から防水ゾーン11へ向けて下る傾斜面51aを有しても良い。そのため、排水下地材14は、吊具42とほぼ同じ程度の高さ62に抑えられるので、建物ユニット1の上面4に排水下地材14を設置したままでの建物ユニット1の搬送が可能となる。
【0107】
また、図8に示すように、降雨時に建物ユニット1を車両71で搬送する際には、車両71に搭載した建物ユニット1は、非防水ゾーン12などに拡げた仮雨仕舞シート13の上からラッシングベルト72で車両71に荷締めされる。このとき、ラッシングベルト72は、排水下地材14の傾斜支持部51に係留されることになる。
【0108】
これにより、ラッシングベルト72は、傾斜支持部51によって、建物ユニット1の上面4から浮いた状態で荷締めできる。よって、ラッシングベルト72は、建物ユニット1の上面4に対して直接接しないので、上面4の防水ゾーン11(を有する屋根パネル21)がラッシングベルト72によって破損するのを防止できる。
【0109】
また、排水下地材14は、傾斜支持部51の高さ62を吊具42の頂部42eの位置に揃えることで、荷締めの際に、残された吊具42を、排水下地材14によって保護したり、吊具42による仮雨仕舞シート13の損傷を防止したりすることが可能となる。よって、屋根パネル21から吊具42を取外す手間をなくすことができる。
【0110】
(効果 5)建物ユニット1の上面雨仕舞構造では、排水下地材14は、傾斜支持部51の外側に、排水下地材14を屋根パネル21の縁部22に取付けるための、取付部61を有しても良い。
取付部61は、傾斜支持部51と同じかそれ以上の高さ62を有しても良い。
【0111】
これにより、取付部61によって、排水下地材14を、屋根パネル21の縁部22に対して強固かつ確実に取付けることができる。また、取付部61によって、傾斜支持部51を補強することができる。
【0112】
傾斜支持部51の外側の取付部61は、仮雨仕舞シート13を上から被せることで、仮雨仕舞シート13の屋外側の部分を下側から支えることができる。例えば、取付部61に、高さの異なる第一の縦部分61aと第二の縦部分61bとを設けることで、取付部61に被せられた仮雨仕舞シート13は、屋外側へ向けて下り勾配になる。よって、仮雨仕舞シート13は、取付部61の上に降った雨水15の一部を屋外側へ積極的に流下させて排水することができる。
【0113】
取付部61は、傾斜支持部51と同じかそれ以上の高さ62を有している。よって、車両71で建物ユニット1を搬送するための、ラッシングベルト72による建物ユニット1の荷締めの際に、取付部61は、ラッシングベルト72を傾斜支持部51と同じかそれよりも高い位置に係留させる。これにより、ラッシングベルト72は、取付部61によって、建物ユニット1の上面4に直接接しないように取付けられる。よって、建物ユニット1の上面4の防水ゾーン11(に取付けた屋根パネル21)がラッシングベルト72によって破損するのを防止できる。
【0114】
また、取付部61は、荷締めの際に、傾斜支持部51や残された吊具42を保護したり、吊具42による仮雨仕舞シート13の損傷を防止したりすることも可能となる。よって、屋根パネル21から吊具42を取外す手間をなくすことができる。
【符号の説明】
【0115】
1 建物ユニット
4 上面
11 防水ゾーン
12 非防水ゾーン
13 仮雨仕舞シート
14 排水下地材
21 屋根パネル
22 縁部
41 作業空間
42 吊具
42e 頂部
43 欠損部
51 傾斜支持部
51a 傾斜面
61 取付部
62 高さ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8