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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176994
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/591 20210101AFI20231206BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20231206BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M50/591 101
H01M50/533
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M50/107
H01M50/167
H01M50/586
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089643
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】板垣 翔平
(72)【発明者】
【氏名】淵本 雄平
(72)【発明者】
【氏名】花村 玲
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011BB03
5H011CC06
5H011DD06
5H011DD15
5H011FF03
5H011GG02
5H043AA04
5H043BA07
5H043CA03
5H043CA12
5H043DA03
5H043EA02
5H043EA36
5H043EA40
5H043GA22
5H043GA25
5H043HA06E
5H043HA08E
5H043KA29E
5H043KA35E
5H043KA45E
5H043LA34E
(57)【要約】
【課題】内缶の変形を抑えた円筒形電池を実現する。
【解決手段】円筒形電池1は、封口板10と、その外縁部11を覆うガスケット20と、封口板10で封口される開口33を有する有底の外装缶30と、その内部に収容される内缶40とを含む。内缶40は、側壁部41と、そこから内側に屈曲部42を介して延びる鍔部43とを有する。外装缶30の開口縁部33aは、封口板10及びガスケット20を介して屈曲部42及び鍔部43の側へかしめられる。屈曲部42及び鍔部43の、封口板10及びガスケット20の側とは反対の側には、絶縁樹脂80が設けられる。絶縁樹脂80を設けることで、外装缶30の開口縁部33aがかしめられる際の押圧力による内缶40の屈曲部42及び鍔部43の変形を抑える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封口板と、
前記封口板の外縁部を覆うガスケットと、
前記封口板で封口される開口を有する有底の外装缶と、
前記外装缶の内部に収容され、前記外装缶の内壁面に沿って延びる側壁部と、前記開口側の前記側壁部の端部から内側に屈曲部を介して延びる鍔部とを有する内缶と、
を含み、
前記外装缶の前記開口の開口縁部は、前記封口板の前記外縁部及び前記ガスケットを介して前記内缶の前記屈曲部及び前記鍔部の側へかしめられ、
前記内缶は、前記屈曲部及び前記鍔部の、前記封口板の前記外縁部及び前記ガスケットの側とは反対の側に設けられる絶縁樹脂を有する、円筒形電池。
【請求項2】
前記屈曲部に設けられる前記絶縁樹脂の厚さは、前記鍔部に設けられる前記絶縁樹脂の厚さよりも厚い、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項3】
前記絶縁樹脂は、熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項4】
前記絶縁樹脂は、エポキシ樹脂である、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項5】
前記絶縁樹脂は、鉛筆硬度が3H以上である、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項6】
前記内缶の前記鍔部の内面における先端は、前記屈曲部の内面位置又は前記内面位置よりも前記外装缶の底部側に位置する、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項7】
前記外装缶は、前記外装缶の底部から、かしめられた前記開口縁部までの間の前記内壁面が、前記外装缶の径方向において、前記ガスケットの最外縁の外側に位置する、請求項1に記載の円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形電池として、各種形態のものが知られている。
例えば、セパレータを介して一対の帯状極板を巻回した渦巻電極体が収納される導電内缶が外装缶に嵌着され、その導電内缶の上端開口部に形成された鍔縁上に載置される絶縁パッキングを介して外装缶の折曲縁により封口蓋がかしめ装着された円筒型電池であって、導電内缶の鍔縁が絶縁樹脂層で被覆された円筒型電池が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、発電要素を収納し外側面上部に突部を形成した筒状の一極性集電内缶と、その内缶が嵌着され突部が内側面に接して電気接続される一極性端子兼用外装缶と、内缶の鍔部上に支持される絶縁パッキングにより外装缶と絶縁された他極性端子兼用封口蓋とを備え、外装缶の内底面に配設された絶縁板の周縁立上り壁が外装缶と内缶との間隙に介在された電池が知られている(特許文献2)。
【0004】
また、上部周縁部を内方へ折曲した封口座面を有する有底円筒形の金属製内缶と、これが収容される有底円筒形の金属製外缶と、この外缶の開口部を塞ぐ皿状の金属製端子板と、この端子板の周縁に装着され外缶の開口端縁部を内方へかしめることで圧縮される環状の封口ガスケットとを備え、帯状の正極、セパレータ、負極が交互に重ねられてスパイラル状に巻回された発電要素がその上下面に絶縁板を介して内缶に装填されたスパイラル電極形電池が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭53-146923号公報
【特許文献2】実開昭56-93958号公報
【特許文献3】特開昭62-113358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、封口板で封口される開口を有する有底の外装缶と、その内部に収容される内缶とを備え、その内缶に設けられる屈曲部とそれを介して延びる鍔部とによって支持される封口板の外縁部とそれを覆うガスケットとを、外装缶の開口縁部を内缶側にかしめることで固定する円筒形電池では、次のようなことが起こり得る。
【0007】
即ち、外装缶の開口縁部を封口板及びガスケットを介して内缶側にかしめる際の押圧力により、その内缶に設けられる屈曲部及び鍔部が、外装缶の底部側に曲がって変形することが起こり得る。ここで、円筒形電池の内缶の内部には、セパレータを介して設けられる正負極の電極層を含む発電要素が収容され、正負いずれか一方の極性の電極層が、内缶及び外装缶と電気的に接続される。一方の極性とされる内缶の屈曲部及び鍔部が、前述の如く外装缶のかしめ時の押圧力でその底部側に変形し、発電要素のうち内缶とは異なる他方の極性の電極層と接触してしまうと、短絡不良が生じる。また、外装缶のかしめ時の押圧力による内缶の屈曲部及び鍔部の変形に伴い、ガスケットがいびつに変形してしまうと、円筒形電池の封止が十分に保てなくなる。
【0008】
このように、内缶の変形は、円筒形電池の性能や品質の低下を引き起こす恐れがある。
1つの側面では、本発明は、内缶の変形を抑えた円筒形電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、封口板と、前記封口板の外縁部を覆うガスケットと、前記封口板で封口される開口を有する有底の外装缶と、前記外装缶の内部に収容され、前記外装缶の内壁面に沿って延びる側壁部と、前記開口側の前記側壁部の端部から内側に屈曲部を介して延びる鍔部とを有する内缶と、を含み、前記外装缶の前記開口の開口縁部は、前記封口板の前記外縁部及び前記ガスケットを介して前記内缶の前記屈曲部及び前記鍔部の側へかしめられ、前記内缶は、前記屈曲部及び前記鍔部の、前記封口板の前記外縁部及び前記ガスケットの側とは反対の側に設けられる絶縁樹脂を有する、円筒形電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、内缶の変形を抑えた円筒形電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】円筒形電池の一例について説明する図である。
図2】円筒形電池の製造方法の一例について説明する図である。
図3】内缶に設けられる絶縁樹脂の厚さについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は円筒形電池の一例について説明する図である。図1には、円筒形電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図1に示す円筒形電池1は、リチウム一次電池の一例である。円筒形電池1は、封口板10、ガスケット20、外装缶30、内缶40、絶縁板50、及び発電要素60を含む。
【0013】
封口板10は、ステンレス等の金属製の円板である。封口板10は、導電性を有する。封口板10は、例えば、その外縁部11をフランジとした皿状又はハット状の形状とされる。封口板10は、円筒形電池1の発電要素60に含まれる正負の電極層のうちのいずれか一方の極性の電極層と電気的に接続され、円筒形電池1の当該極性の電極(電極端子)として機能する。この例では、封口板10は、発電要素60の負極層62と電気的に接続され、円筒形電池1の負極(負極端子)として機能する。
【0014】
封口板10の外縁部11には、ガスケット20が設けられる。封口板10の外縁部11は、ガスケット20で覆われる。即ち、封口板10は、その外縁部11が、一方の面側から、当該一方の面側とは反対の面側まで、ガスケット20で覆われる。ガスケット20には、絶縁性を有する各種絶縁材料が用いられる。ガスケット20には、例えば、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等の絶縁性を有する樹脂材料が用いられる。
【0015】
外装缶30は、ステンレス等の金属製の有底の円筒缶である。外装缶30は、導電性を有する。外装缶30は、底部32と、底部32の縁から立ち上がる側壁部31と、底部32と対向して位置する開口33とを有する。有底の外装缶30の、その一端の開口33は、ガスケット20で外縁部11が覆われる封口板10により封口される。外装缶30は、円筒形電池1の発電要素60に含まれる正負の電極層のうち、封口板10と電気的に接続される電極層とは反対の極性の電極層と電気的に接続され、円筒形電池1の当該極性の電極(電極端子)として機能する。この例では、外装缶30は、発電要素60の正極層61と電気的に接続され、円筒形電池1の正極(正極端子)として機能する。
【0016】
内缶40は、ステンレス等の金属製の円筒缶である。内缶40は、導電性を有する。内缶40は、外装缶30の内部に収容される。内缶40は、外装缶30の側壁部31の内壁面31aに沿って延びる側壁部41と、外装缶30の開口33側の側壁部41の端部から内側に屈曲する屈曲部42と、側壁部41から屈曲部42を介して内側に延びる鍔部43とを有する。内缶40の鍔部43の根元の部分が屈曲部42であるとも言える。屈曲部42の内面は、断面円弧状に湾曲した面(R面)であってもよい。屈曲部42は、内缶40のR部分とも言える。
【0017】
内缶40は、その側壁部41が外装缶30の側壁部31の内壁面31aと接触するように、外装缶30の内部に収容される。例えば、内缶40は、外装缶30の内壁面31aの内側に嵌合(又は嵌着)され、外装缶30の内部に収容される。内缶40は、外装缶30と接触し、外装缶30と電気的に接続される。
【0018】
内缶40は、円筒形電池1の発電要素60に含まれる正負の電極層のうち、封口板10と電気的に接続される電極層とは反対の極性の電極層と電気的に接続されると共に、外装缶30と電気的に接続される。この例では、内缶40は、発電要素60の正極層61と電気的に接続されると共に、外装缶30と電気的に接続される。例えば、内缶40は、発電要素60の正極層61が側壁部41の内壁面41aと接触するように設けられることで正極層61と電気的に接続され、側壁部41が外装缶30の側壁部31の内壁面31aと接触するように設けられることで外装缶30と電気的に接続される。外装缶30は、内缶40を介して発電要素60の正極層61と電気的に接続される。
【0019】
絶縁板50は、外装缶30の内部の底部32上に設けられる。絶縁板50には、絶縁性を有する各種絶縁材料が用いられる。
発電要素60は、正極層61及び負極層62と、それら正極層61と負極層62との間に介在されるセパレータ63とを有する。発電要素60には、シート状の正極層61と負極層62とが、シート状のセパレータ63を介して巻回され、円筒状とされた電極体が用いられる。例えば、円筒形電池1をリチウム一次電池とする場合、正極層61には、ステンレス等の金属箔の両面に正極活物質である二酸化マンガンを含有する正極合剤を設けたものが用いられる。負極層62には、負極活物質としてのリチウム金属箔が用いられる。負極層62のリチウム金属箔は、負極集電体を介して負極集電ピン64と電気的に接続される。セパレータ63には、微孔性フィルムや不織布等の絶縁性の材料が用いられる。シート状の正極層61と、負極集電ピン64と電気的に接続されたシート状の負極層62とが、シート状のセパレータ63を介して積層された状態で巻回され、円筒状の電極体である発電要素60が実現される。
【0020】
発電要素60は、絶縁板50を底部32上に設けた外装缶30の内部に収容される内缶40のその内側、即ち、側壁部41、屈曲部42及び鍔部43の内側に収容される。絶縁板50により、発電要素60の下部に露出する正極層61及び負極層62並びに負極集電ピン64と、外装缶30の底部32とが、直接接触することが抑えられる。
【0021】
発電要素60は、この例では、正極層61が最外層となるように巻回され、最外層の正極層61が、内缶40の側壁部41の内壁面41aと接触するように設けられる。これにより、発電要素60の正極層61が、内缶40と電気的に接続され、内缶40を介して外装缶30と電気的に接続される。発電要素60は、その外周部の正極層61及び負極層62並びにセパレータ63(それらの収容状態での上端)が、内缶40の屈曲部42及び鍔部43と対向するように、内缶40の内側に収容される。
【0022】
また、発電要素60の負極層62と電気的に接続されて発電要素60の巻芯部に位置する負極集電ピン64は、外装缶30の開口33を封口する封口板10の内面(外装缶30の底部32と対向する面)に接続されるように設けられる。これにより、発電要素60の負極層62が、封口板10と電気的に接続される。
【0023】
絶縁板50、発電要素60及び内缶40が収容される外装缶30の内部には、所定の非水電解液が注入される。例えば、円筒形電池1の非水電解液には、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系有機電解液が用いられる。非水電解液が内部に注入された外装缶30の開口33に、ガスケット20が外縁部11に設けられた封口板10が設けられる。封口板10の外縁部11及びそこに設けられるガスケット20は、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の上に載置され、屈曲部42及び鍔部43によって支持される。即ち、内缶40の屈曲部42及び鍔部43は、封口板10の外縁部11及びガスケット20の座として機能する。封口板10の外縁部11及びガスケット20が、内缶40の屈曲部42及び鍔部43で支持された状態で、外装缶30の開口33の開口縁部33aが、封口板10の外縁部11及びガスケット20を介して、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の側へかしめられる。これにより、かしめられた外装缶30の開口縁部33aと、内缶40の屈曲部42及び鍔部43との間に、ガスケット20を介して封口板10の外縁部11が挟まれて固定され、外装缶30の開口33が、封口板10及びガスケット20で封口されて密閉される。
【0024】
尚、上記のような内缶40を用いない別の形態として、外装缶30の開口縁部33a近傍の周囲に絞り加工によるビーディング部を設け、そのビーディング部を座にして、封口板10の外縁部11及びガスケット20を載置し、外装缶30の開口縁部33aをかしめてその開口33を封口する形態も知られている。しかし、円筒形電池1を比較的小型サイズとする場合、例えば、外装缶30の直径や、外装缶30の底部32から封口板10までの高さを10mm程度のサイズとするような場合には、その外装缶30に上記のようなビーディング部を設けることは難しい。そのようなサイズの外装缶30にビーディング部を設けてしまうと、電池内部の内容積が著しく減少してしまったり、電池内部に収容できる発電要素60のサイズに制約が生じてしまったりして、十分な電池性能を実現できないことが起こり得るためである。
【0025】
そのため、円筒形電池1(図1)では、外装缶30にビーディング部を設ける代わりに、その外装缶30の内部に、上記のような内缶40を収容する。その内缶40に設けた屈曲部42及び鍔部43を座にして、封口板10の外縁部11及びガスケット20を載置し、外装缶30の開口縁部33aをかしめてその開口33を封口する。このようにビーディング部を設けない場合、外装缶30は、その底部32から、かしめられた開口縁部33aまでの間の内壁面31aが、外装缶30の径方向において、ガスケット20の最外縁の外側に位置するようになるとも言える。
【0026】
外装缶30にビーディング部を設ける代わりに、内缶40を用いることで、円筒形電池1を比較的小型サイズとする場合でも、上記のような内容積の減少や、発電要素60のサイズの制約を回避して、十分な電池性能を実現することが可能になる。尚、このような内缶40を用いる手法は、円筒形電池1を比較的小型サイズとする場合に限らず、中型サイズや大型サイズとする場合にも、同様に適用可能である。
【0027】
上記のような構成を有する円筒形電池1の内缶40には、図1に示すように、その屈曲部42及び鍔部43の、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側とは反対の側、即ち、内缶40の内側に、硬化状態の絶縁樹脂80が設けられる。絶縁樹脂80は、内缶40の内側の、鍔部43から屈曲部42(鍔部43の根元のR部分)を介して側壁部41の一部に跨る領域に、設けられる。例えば、絶縁樹脂80は、内缶40の屈曲部42に設けられる絶縁樹脂80の厚さが、内缶40の鍔部43に設けられる絶縁樹脂80の厚さよりも厚くなるように、設けられる。
【0028】
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に設けられる絶縁樹脂80は、内缶40で支持される封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力に対する屈曲部42及び鍔部43の変形を抑える補強部材としての機能を発揮する。即ち、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に、絶縁樹脂80が設けられることで、封口板10の外縁部11及びガスケット20を介して外装缶30の開口縁部33aがかしめられる際に、その押圧力によって屈曲部42の曲がりが大きくなり鍔部43が外装缶30の底部32側に変形すること、又は過剰に変形することが抑えられる。内缶40の屈曲部42及び鍔部43に、屈曲部42の方が厚くなるように絶縁樹脂80が設けられると、そのような外装缶30の底部32側への鍔部43の変形、又は過剰な変形が、より効果的に抑えられる。
【0029】
外装缶30の開口縁部33aをかしめる際の、絶縁樹脂80による内缶40の変形抑制効果について更に説明する。
図2は円筒形電池の製造方法の一例について説明する図である。図2(A)及び図2(B)には、外装缶の開口縁部のかしめ工程における要部拡大断面図を模式的に示している。尚、図2(A)及び図2(B)には、図1のP1部に相当する部分のかしめ工程における拡大断面図を模式的に示している。
【0030】
上記図1に示したような構成を有する円筒形電池1の製造においては、まず、円筒形電池1を構成する各要素、即ち、上記のような封口板10、ガスケット20、外装缶30、絶縁樹脂80を設けた内缶40(絶縁樹脂80付き内缶40とも言う)、絶縁板50、発電要素60、及び非水電解液等が準備される。
【0031】
外装缶30の開口33から、その底部32上に絶縁板50が設けられ、その上に、巻回された発電要素60及びそれを収容する絶縁樹脂80付き内缶40が挿入される。そして、非水電解液の注入後、外装缶30の開口33を塞ぐように封口板10が設けられる。封口板10は、その外縁部11及びそれを覆うガスケット20が、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の上に載置され、屈曲部42及び鍔部43で支持されるように設けられる。
【0032】
このような状態から、封口金型が用いられ、外装缶30の開口33側から底部32側に向かって加圧が行われる。これにより、図2(A)又は図2(B)に示すように、外装缶30の開口縁部33aが、封口板10の外縁部11及びガスケット20を介して、それらを支持する内缶40の屈曲部42及び鍔部43の側へかしめられる。
【0033】
このような工程により、上記図1及び図2(A)又は図2(B)に示したような構成を有する円筒形電池1が製造される。
円筒形電池1の製造において、外装缶30の開口縁部33aをかしめる際には、封口金型による加圧が行われることで、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に対し、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側から、外装缶30の底部32側(又は内部に収容される発電要素60側)に向かって、押圧力が働く。
【0034】
この時、円筒形電池1では、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側とは反対の側に、硬化状態の絶縁樹脂80が設けられている。この絶縁樹脂80が、補強部材として機能し、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力に抗して屈曲部42及び鍔部43を支持し、屈曲部42及び鍔部43が外装缶30の底部32側(又は発電要素60側)に変形すること、又は過剰に変形することを抑える。ここで、屈曲部42に設けられる絶縁樹脂80の厚さを、鍔部43に設けられる絶縁樹脂80の厚さよりも厚くしておくと、当該押圧力に対する屈曲部42の曲がり又は過剰な曲がりがより効果的に抑えられるようになり、屈曲部42及びそこから先に延びる鍔部43の変形又は過剰な変形がより効果的に抑えられるようになる。
【0035】
例えば、図2(A)に示すように、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に絶縁樹脂80が設けられることで、外装缶30の開口縁部33aがかしめられる際の押圧力に対し、屈曲部42及び鍔部43が発電要素60側(外装缶30の底部32側)へ変形することが抑えられる。
【0036】
或いは、図2(B)に示すように、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に絶縁樹脂80が設けられることで、外装缶30の開口縁部33aがかしめられる際の押圧力に対し、屈曲部42及び鍔部43が発電要素60側(外装缶30の底部32側)へ過剰に変形することが抑えられる。例えば、屈曲部42及び鍔部43が、鍔部43の内面における先端43aが発電要素60まで到達するようになるほど大きく変形してしまうことが抑えられる。
【0037】
尚、内缶40の屈曲部42及び鍔部43が変形する場合、鍔部43の内面における先端43aは、変形前の当初の高さ位置に相当する屈曲部42の内面位置42aよりも、外装缶30の底部32側(発電要素60側)に位置するようになる。
【0038】
ここで、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に絶縁樹脂80を設けない場合について述べる。
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に絶縁樹脂80を設けない場合には、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力に対する十分な補強効果が得られない。そのため、屈曲部42及び鍔部43の変形、即ち、屈曲部42及び鍔部43の外装缶30の底部32側(又は内部に収容される発電要素60側)への変形が生じ易くなる。
【0039】
内缶40の内部には、正極層61及び負極層62という異なる極性の電極層を有する発電要素60が収容される。内缶40は、発電要素60の正負の電極層のうちの一方の電極層、この例では正極層61と接触し、正極層61と電気的に接続される。即ち、内缶40(その側壁部41、屈曲部42及び鍔部43)は、正の極性を有する。
【0040】
封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力により、内缶40の屈曲部42及び鍔部43が外装缶30の底部32側へ変形すると、その変形量によっては、変形した内缶40(例えばその鍔部43)が、収容される発電要素60(鍔部43と対向する外周部)と接触することが起こり得る。変形した内缶40が、発電要素60のうち、内缶40の極性とは異なる極性の電極層、この例では負極層62と接触してしまうと、短絡不良が生じる。
【0041】
また、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力により、内缶40の屈曲部42及び鍔部43が外装缶30の底部32側へ変形すると、その変形量によっては、ガスケット20の変形がいびつになり、ガスケット20による封止を保てなくなることも起こり得る。
【0042】
内缶40の変形による電極層との接触、この例では負極層62との接触を抑えるために、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力を弱める、即ち、封口金型による加圧を弱めることも考えられる。しかし、このようにすると、ガスケット20の十分な封止機能が得られず、外装缶30の内部に注入される非水電解液の液漏れが生じ易くなることが起こり得る。
【0043】
このように、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に絶縁樹脂80を設けない場合には、液漏れを抑えるために十分な押圧力で外装缶30の開口縁部33aをかしめようとすると、封口板10の外縁部11及びガスケット20を支持する屈曲部42及び鍔部43に過剰な変形が生じ易くなり、その結果、発電要素60の異なる極性の電極層との接触や、ガスケット20のいびつな変形による密閉性の低下が起こり得る。逆に、内缶40と、それとは異なる極性の発電要素60の電極層との接触や、ガスケット20のいびつな変形による密閉性の低下を抑えるために、かしめ時の押圧力を弱めると、かしめが不十分となり、ガスケット20の十分な封止機能が得られず、液漏れが生じ易くなることが起こり得る。
【0044】
これに対し、上記図1及び図2(A)又は図2(B)に示した円筒形電池1では、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側とは反対の側に、硬化状態の絶縁樹脂80が設けられる。絶縁樹脂80は、例えば、屈曲部42に設けられる絶縁樹脂80の厚さの方が、鍔部43に設けられる絶縁樹脂80の厚さよりも厚くなるように設けられる。
【0045】
絶縁樹脂80が設けられることで、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力に対する内缶40の屈曲部42及び鍔部43の強度が補強され、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、外装缶30の底部32側への変形又は過剰な変形が抑えられる。即ち、図2(A)又は図2(B)に示したように、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、発電要素60側への変形又は過剰な変形が抑えられる。よって、変形した内缶40(例えばその鍔部43)の、それとは異なる極性の発電要素60の電極層(例えば負極層62)との接触が抑えられ、短絡不良が抑えられる。内缶40には、その屈曲部42及び鍔部43の、発電要素60と対向する内面側に絶縁樹脂80が設けられているため、たとえ内缶40が発電要素60側に過剰に変形したとしても、内缶40が発電要素60の電極層(例えば負極層62)と直接接触することが抑えられ、短絡不良が抑えられる。
【0046】
また、絶縁樹脂80が設けられることで、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、発電要素60側への変形又は過剰な変形が抑えられるため、封口板10の外縁部11及びガスケット20の側からの押圧力によってガスケット20がいびつに変形することが抑えられ、ガスケット20による封止を保てなくなることが抑えられる。外装缶30の開口縁部33aを、内缶40の屈曲部42及び鍔部43が発電要素60側へ過剰に変形すること、並びにガスケット20がいびつに変形することを抑えつつ、十分な押圧力又はより大きな押圧力でかしめることが可能になるため、外装缶30の内部に注入される非水電解液の液漏れが生じることが抑えられる。
【0047】
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に絶縁樹脂80を設けることで、更には、屈曲部42の方が鍔部43よりも厚くなるように絶縁樹脂80を設けることで、高性能、高品質の円筒形電池1が実現される。
【0048】
絶縁樹脂80について更に述べる。
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に設ける絶縁樹脂80には、絶縁性を示す熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、絶縁樹脂80として、エポキシ樹脂が用いられる。絶縁樹脂80の樹脂材料には、硬化剤等の添加剤が含有されてもよい。また、内缶40の屈曲部42及び鍔部43に設ける絶縁樹脂80には、熱硬化性樹脂のほか、紫外線等の光の照射によって硬化する光硬化性樹脂が用いられてもよい。
【0049】
絶縁樹脂80によって上記のような内缶40の屈曲部42及び鍔部43の変形又は過剰な変形を抑えるためには、絶縁樹脂80には、硬化状態で比較的高い硬度を示す樹脂材料が用いられることが好ましい。例えば、硬化状態での鉛筆硬度が3H以上、より好ましくは5H以上となる樹脂材料が用いられ、絶縁樹脂80が形成される。硬化状態で所定の硬度を示す所定の樹脂材料を用いて内缶40に絶縁樹脂80が形成されることで、外装缶30の開口縁部33aをかしめる際の、封口板10の外縁部11及びガスケット20を介した押圧力に対する変形又は過剰な変形が、効果的に抑えられるようになる。
【0050】
内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、押圧力に対する変形又は過剰な変形を効果的に抑えるためには、絶縁樹脂80は、屈曲部42に設けられる絶縁樹脂80の厚さの方が、鍔部43に設けられる絶縁樹脂80の厚さよりも厚くなるように設けられることが好ましい。
【0051】
ここで、図3は内缶に設けられる絶縁樹脂の厚さについて説明する図である。図3(A)及び図3(B)には、絶縁樹脂が設けられた内缶の要部断面図を模式的に示している。
図3(A)及び図3(B)に示すように、内缶40は、側壁部41、屈曲部42及び鍔部43を有する。側壁部41は、上記のような外装缶30の内壁面31aに沿って延びる部位である。屈曲部42は、側壁部41の端部から内缶40の内側に屈曲する部位である。鍔部43は、屈曲部42から内缶40の内側に延びる部位である。屈曲部42は、鍔部43の根元の部分であり、内面がR面とされたR部分である。ここでは、側壁部41が延びる方向D1から鍔部43が延びる方向D2まで屈曲(例えば90°屈曲)する部位であるP2部(点線枠部分)を屈曲部42と言う。
【0052】
このような内缶40の屈曲部42及び鍔部43の内側に、絶縁樹脂80が設けられる。絶縁樹脂80は、内缶40の内側の、鍔部43から屈曲部42(鍔部43の根元のR部分)を介して側壁部41の一部に跨る領域に、設けられる。
【0053】
尚、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の、絶縁樹脂80が設けられる側とは反対の側、即ち、屈曲部42及び鍔部43の外側に、上記のような封口板10の外縁部11及びガスケット20が設けられる。
【0054】
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に設けられる絶縁樹脂80は、例えば、屈曲部42に設けられる絶縁樹脂80の厚さの方が、鍔部43に設けられる絶縁樹脂80の厚さよりも厚くなるように設けられる。例えば、図3(A)に示すように、屈曲部42の、側壁部41が延びる方向D1及び鍔部43が延びる方向D2となす角度が共に等しい方向D3の厚さT1(屈曲部42の中央から離れるにつれて薄くなり得る)が、鍔部43における方向D1の厚さT2よりも厚くなるように、絶縁樹脂80が設けられる。或いは、図3(B)に示すように、屈曲部42における方向D1の厚さT3が、鍔部43における方向D1の厚さT2(屈曲部42に近い領域では遠い領域よりも厚くなり得る)よりも厚くなるように、絶縁樹脂80が設けられる。
【0055】
このように絶縁樹脂80は、屈曲部42に設けられる絶縁樹脂80の厚さの方が、鍔部43に設けられる絶縁樹脂80の厚さよりも厚くなるように設けることができる。このような形状の絶縁樹脂80は、例えば、流動性を示す上記のような所定の樹脂材料を、内缶40の屈曲部42及び鍔部43の内側に塗布し、その後、乾燥、硬化させることで、形成することができる。この場合、樹脂材料の塗布を複数回繰り返し、その後、乾燥、硬化を行い、所定の厚さT1及びT2を有する絶縁樹脂80、又は所定の厚さT3及びT2を有する絶縁樹脂80を形成してもよい。或いは、樹脂材料の塗布、乾燥、硬化という一連の工程を複数回繰り返して行い、所定の厚さT1及びT2を有する絶縁樹脂80、又は所定の厚さT3及びT2を有する絶縁樹脂80を形成してもよい。
【0056】
続いて、実施例及び比較例について説明する。
以下の比較例及び実施例1-4では、内缶40に絶縁樹脂80を設けずに作製された円筒形電池(比較例)、及び内缶40に絶縁樹脂80を設けて作製された円筒形電池(実施例1-4)について、絶縁樹脂80の鉛筆硬度、鍔部変形量[mm]及び短絡不良率[%]を測定した。
【0057】
ここでは、比較例及び実施例1-4の各々について、5つの円筒形電池を作製した。絶縁樹脂80の鉛筆硬度は、JIS K-5600に準拠した鉛筆ひっかき試験により、硬化状態での鉛筆硬度を測定した。鍔部変形量は、鍔部43の先端43aの、かしめ前の当初の位置(屈曲部42の内面位置42aに相当)からの変化量を、マイクロスコープで測定した。短絡不良率は、作製した円筒形電池の電気試験に基づいて測定した。
【0058】
(比較例)
内缶40に絶縁樹脂80が設けられない形態の円筒形電池を作製した。絶縁樹脂80を設けていない内缶40を用い、5つの円筒形電池を作製した。
【0059】
(実施例1)
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に双方で同等の厚さとなるように絶縁樹脂80が設けられた形態の円筒形電池を作製した。絶縁樹脂80として、硬化状態での鉛筆硬度が7Hのものを用いた。このような絶縁樹脂80を設けた内缶40を用い、5つの円筒形電池を作製した。
【0060】
(実施例2)
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に屈曲部42の方が鍔部43よりも厚くなるように絶縁樹脂80が設けられた形態の円筒形電池を作製した。絶縁樹脂80として、硬化状態での鉛筆硬度が7Hのものを用いた。このような絶縁樹脂80を設けた内缶40を用い、5つの円筒形電池を作製した。
【0061】
(実施例3)
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に屈曲部42の方が鍔部43よりも厚くなるように絶縁樹脂80が設けられた形態の円筒形電池を作製した。絶縁樹脂80として、硬化状態での鉛筆硬度が5Hのものを用いた。このような絶縁樹脂80を設けた内缶40を用い、5つの円筒形電池を作製した。
【0062】
(実施例4)
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に屈曲部42の方が鍔部43よりも厚くなるように絶縁樹脂80が設けられた形態の円筒形電池を作製した。絶縁樹脂80として、硬化状態での鉛筆硬度が3Hのものを用いた。このような絶縁樹脂80を設けた内缶40を用い、5つの円筒形電池を作製した。
【0063】
比較例及び実施例1-4で作製された円筒形電池について得られた測定結果を表1に示す。表1の鍔部変形量[mm]は、比較例及び実施例1-4の各々における5つの円筒形電池で測定された鍔部変形量の平均値を表している。表1の短絡不良率[%]は、比較例及び実施例1-4の各々における5つの円筒形電池で発生する短絡不良の率を表している。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、内缶40に絶縁樹脂80が設けられない比較例では、鍔部変形量が0.306mmと比較的大きく、短絡不良率も54.1%と比較的大きくなる。比較例のような形態では、かしめ時の押圧力で内缶40が比較的大きく変形し、対向する発電要素60の、内缶40とは異なる極性の電極層(負極層62)との接触、それによる短絡不良が生じ易くなると言える。
【0066】
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に双方で同等の厚さとなるように絶縁樹脂80が設けられる実施例1では、鍔部変形量が0.241mm、短絡不良率が4.4%となり、いずれも比較例よりも抑えることが可能になる。絶縁樹脂80が設けられることで、内缶40の過剰な変形に起因した発電要素60との接触、それによる短絡不良の発生が、抑えられるようになる。
【0067】
内缶40の屈曲部42及び鍔部43に屈曲部42の方が鍔部43よりも厚くなるように絶縁樹脂80が設けられる実施例2-4の場合、例えば、実施例2では、鍔部変形量が0.063mm、短絡不良率が0.1%となる。実施例3では、鍔部変形量が0.091mm、短絡不良率が0.0%となる。実施例4では、鍔部変形量が0.144mm、短絡不良率が1.2%となる。実施例2-4では、鍔部変形量、短絡不良率共に、比較例及び実施例1よりも低く抑えられるようになる。絶縁樹脂80が設けられ、且つ屈曲部42の方が鍔部43よりも厚くなるように絶縁樹脂80が設けられることで、内缶40の変形自体を抑えることが可能になり、内缶40の過剰な変形に起因した発電要素60との接触、それによる短絡不良の発生を、効果的に抑えることが可能になると言える。
【0068】
表1の実施例2-4の結果より、内缶40の鍔部43の変形抑制効果は、絶縁樹脂80の鉛筆硬度が高くなるほど大きくなると言える。特に、絶縁樹脂80の鉛筆硬度を5H以上とすると、鍔部変形量を0.1mm以内の低い値に抑えることが可能になり、短絡不良率も十分に低い値に抑えることが可能になる。
【0069】
尚、以上の説明では、内缶40及び外装缶30が発電要素60の正極層61と電気的に接続され、封口板10が発電要素60の負極層62と電気的に接続される構成を例示した。このほか、内缶40及び外装缶30が発電要素60の負極層62と電気的に接続され、封口板10が発電要素60の正極層61と電気的に接続される構成とすることも可能であり、この場合も、上記のように内缶40に絶縁樹脂80を設けることで、上記同様の効果を得ることが可能である。
【0070】
また、以上の説明では、円筒形電池1をリチウム一次電池とする場合を例示したが、円筒形電池1は、リチウム二次電池とすることも可能である。円筒形電池1をリチウム二次電池とする場合、発電要素60の正極層61には、正極活物質としてコバルト酸リチウム等が用いられ、発電要素60の負極層62には、負極活物質としてリチウム金属やリチウム合金等が用いられる。非水電解液には、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系有機電解液が用いられる。
【0071】
また、内缶40に上記のように絶縁樹脂80を設ける手法は、円筒形電池1を比較的小型サイズとする場合に限らず、中型サイズや大型サイズとする場合にも、同様に適用可能であり、それにより、上記同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 円筒形電池
1a 変形解析モデル
10 封口板
11 外縁部
20 ガスケット
30 外装缶
31、41 側壁部
31a、41a 内壁面
32 底部
33 開口
33a 開口縁部
40 内缶
42 屈曲部
42a 内面位置
43 鍔部
43a 先端
50 絶縁板
60 発電要素
61 正極層
62 負極層
63 セパレータ
64 負極集電ピン
70 封口金型
80 絶縁樹脂
D1、D2、D3 方向
S1、S2、S3 鍔部変形量
T1、T2、T3 厚さ
図1
図2
図3