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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177000
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】グロメット及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20231206BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20231206BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231206BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
H01B7/00 301
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089649
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平川 晋次
【テーマコード(参考)】
5G309
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G309AA01
5G309AA09
5G333AA09
5G333AB16
5G333CB04
5G333CB05
5G333CB19
5G333EA02
5G333EB08
5G363AA16
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】貫通孔の一方側及び他方側にある経路規制部をインナー部材に嵌合する際の作業性に優れるグロメットを提供する。
【解決手段】グロメット10は、被取付部材(車体パネル1)にある貫通孔2を貫通する電線Wを保持する。グロメット10は、第1経路規制部20、及び、第1開口部を持つ第1環状取付部22を有する第1グロメット本体11と、第2経路規制部30、及び、第1開口部よりも大きい第2開口部を持つ第2環状取付部32を有する第2グロメット本体12とを備える。グロメット10は、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12よりも剛性が高い材料を用いて環状に形成され、貫通孔2に嵌合されるインナー部材13を備える。第1環状取付部22の外周面22aと第2環状取付部32の内周面32bとが向かい合わされた状態で、インナー部材13が第1環状取付部22の外周面22aと第2環状取付部32の内周面32bとの間に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材にある貫通孔を貫通する電線を保持するグロメットにおいて、
前記被取付部材の一方側に引き出された前記電線の経路を規制する第1経路規制部、及び、第1開口部を持つ第1環状取付部を有する第1グロメット本体と、
前記被取付部材の他方側に引き出された前記電線の経路を規制する第2経路規制部、及び、前記第1開口部よりも大きい第2開口部を持つ第2環状取付部を有する第2グロメット本体と、
前記第1グロメット本体及び前記第2グロメット本体よりも剛性が高い材料を用いて環状に形成され、前記貫通孔に嵌合されるインナー部材と、を備え、
前記第1環状取付部の外周面と前記第2環状取付部の内周面とが向かい合わされた状態で、前記インナー部材が前記第1環状取付部の外周面と前記第2環状取付部の内周面との間に配置される、
グロメット。
【請求項2】
前記第1環状取付部の外周面には、前記第1環状取付部の周方向に沿って第1凹部が設けられ、前記インナー部材の内周面には、前記第1凹部と係合する内周側凸部が前記インナー部材の周方向に沿って設けられる、請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記第2環状取付部の内周面には、前記第2環状取付部の周方向に沿って第2凹部が設けられ、前記インナー部材の外周面には、前記第2凹部と係合する外周側凸部が前記インナー部材の周方向に沿って設けられる、請求項1又は2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記第1経路規制部及び前記第2経路規制部はそれぞれ、前記電線を内部に収容する中空体であり、前記中空体には、前記中空体の内部空間を複数の分割空間に区画する壁部が設けられる、請求項1又は2に記載のグロメット。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のグロメットを備える、ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット及びワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板材に形成されている貫通孔に電線を貫通させるに際して、貫通孔の周縁部から電線を保護するために貫通孔の周縁部に取り付けられるグロメット(grommet)がある。特許文献1は、被取付部材としての車体パネルにある貫通孔に電線を貫通させるに際して、電線を保持するグロメット本体と、グロメット本体を支持しつつ貫通孔の周縁部に保持されるインナー部材とを備えるグロメットに関する技術を開示している。このグロメットは、筒状のグロメット本体と、グロメット本体の両端部において貫通孔に対する取り付けを行う取付部を備え、グロメットの内部にワイヤーハーネスが挿通される。取付部には、車体パネルに対する係止を行う係止部材(インナー部材)が保持され、また、グロメット本体の端部には、取付部に対して湾曲した筒状の湾曲筒部(経路規制部)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-127087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているグロメットでは、上述の経路規制部が貫通孔の一方側のみに設けられているため、貫通孔の一方側と他方側との両方に経路規制部の設定が遮音性能向上等のために必要な場合に対応することができない。また、貫通孔の一方側と他方側との両方に経路規制部の設定が遮音性能向上等のために必要な場合には、貫通孔の一方側及び他方側にある両方の経路規制部をインナー部材に嵌合する際の作業をし易い構造とする必要がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、貫通孔の一方側及び他方側にある両方の経路規制部をインナー部材に嵌合する際の作業性に優れるグロメット及び当該グロメットを用いたワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るグロメットは、被取付部材にある貫通孔を貫通する電線を保持するグロメットにおいて、被取付部材の一方側に引き出された電線の経路を規制する第1経路規制部、及び、第1開口部を持つ第1環状取付部を有する第1グロメット本体と、被取付部材の他方側に引き出された電線の経路を規制する第2経路規制部、及び、第1開口部よりも大きい第2開口部を持つ第2環状取付部を有する第2グロメット本体と、第1グロメット本体及び第2グロメット本体よりも剛性が高い材料を用いて環状に形成され、貫通孔に嵌合されるインナー部材と、を備え、第1環状取付部の外周面と第2環状取付部の内周面とが向かい合わされた状態で、インナー部材が第1環状取付部の外周面と第2環状取付部の内周面との間に配置される。
【0007】
本発明の態様に係るワイヤーハーネスは、上述のグロメットを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貫通孔の一方側及び他方側にある両方の経路規制部をインナー部材に嵌合する際の作業性に優れるグロメット及び当該グロメットを用いたワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るグロメットの一例を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係るグロメットの分解図である。
図3】本実施形態に係るグロメットの平面図である。
図4図3のA-A線による断面図である。
図5図4のB部の拡大図である。
図6】他の実施形態に係るグロメットの一例を示す斜視図である。
図7】他の実施形態に係るグロメットの分解図である。
図8】他の実施形態に係るグロメットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係るグロメットについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態に係るグロメット10の斜視図であり、図2は、一実施形態に係るグロメット10の分解図であり、図3は、一実施形態に係るグロメット10の平面図である。また、図4は、一実施形態に係るグロメット10を示す、図3のA-A線による断面図であり、図5は、図4のB部の拡大図である。
【0012】
図1図5に示すグロメット10は、一例として、被取付部材としての車体パネル1に形成されている貫通孔2の周縁部に取り付けられ、貫通孔2を貫通させた電線Wを貫通孔2の周縁部から保護する。貫通孔2の開口形状は、本実施形態では、楕円形である。電線Wは、電線集合体としてのワイヤーハーネスであってもよい。なお、以下の説明では、上方とは、グロメット10が貫通孔2の周縁部に取り付けられるときに貫通孔2に向かう方向の側をいい、下方とは、その反対側をいう。
【0013】
車体パネル1は、一例としては、車両のフロアパネルである。車体パネル1には、車体パネル1の一方側(車室内側)と、車体パネル1の他方側(車室外側)とを貫通する貫通孔2が形成されている。
【0014】
グロメット10は、第1グロメット本体11と、第2グロメット本体12と、インナー部材13とを備える。第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12は、内周側に電線Wを配策させて保持する筒状部材であり、ゴム材等の柔軟な材料で形成される。その一方、インナー部材13は、グロメットインナー、インナープロテクタ、エッジプロテクタ等とも称されるものであり、合成樹脂等、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12よりも剛性の高い材料で形成される。
【0015】
第1グロメット本体11は、自動車の車室内側(床上側)に配置されている。第1グロメット本体11は、車室内側のスペース3に引き出された電線Wの経路を規制する第1経路規制部20と、第1グロメット本体11における車体パネル1側とは反対側の端部に設けられた第1電線保持筒部21とを有する。また、第1グロメット本体11は、第1グロメット本体11における車体パネル1側の端部に設けられた第1環状取付部22を有する。
【0016】
第1経路規制部20は、電線Wを内部に収容する中空体であり、内部空間23に収容された電線Wの経路を規制して屈曲している状態を維持する。第1経路規制部20は、電線Wの所望の配策方向に沿って延びている。具体的には、第1経路規制部20は、内部空間23を有し、内部空間23に収容された電線Wが必然的に屈曲するように折曲させて形成されている。第1経路規制部20の車体パネル1側の端部は、インナー部材13が第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12に接続されるとき、第2経路規制部30の車体パネル1側の端部に対して第2経路規制部30との間に隙間が生じない程度で突き当てられる。
【0017】
また、第1経路規制部20には、内部空間23を複数の分割空間に区画する壁部24が設けられている。この壁部24は、インナー部材13が第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12に接続されるとき、第2経路規制部30の内部空間33に設けられた壁部34に対して壁部34との間に隙間が生じない程度で突き当てられる。
【0018】
第1電線保持筒部21は、第1経路規制部20の車体パネル1側とは反対側の端部に連続し、内周側で電線Wを保持する円筒体である。第1電線保持筒部21の内径は、電線Wの外径よりも若干小さいか、電線Wの外径とほぼ同一である。第1電線保持筒部21から露出する電線Wの外周には、コルゲートチューブ等の保護部材(図示せず)が配置されている。
【0019】
第1電線保持筒部21は、第1環状取付部22の軸線に対して傾斜した方向(本実施形態では、直交する方向)に沿って延びている。本実施形態では、1本の第1電線保持筒部21が第1経路規制部20に配設されている。第1電線保持筒部21と保護部材とが少なくとも一部重なるように保護部材が第1電線保持筒部21に挿通されている。この保護部材により、第1電線保持筒部21の内面と電線Wの外周面との間を通じた、グロメット10の外部から内部への水等の浸入が抑止される。
【0020】
なお、第1電線保持筒部21の内周面には、第1電線保持筒部21の内周面と電線Wとの間の隙間を塞ぐ環状の第1シール部が設けられていてもよい。
【0021】
第1環状取付部22は、第1開口部を有して楕円環状に形成されている。第1環状取付部22の外径は、後述する第2環状取付部32の内径よりも小さい。第1環状取付部22は、第1凹部25を含む。
【0022】
第1凹部25は、第1環状取付部22の外周側に楕円環状に形成され、インナー部材13が第1グロメット本体11に接続されるとき、インナー部材13の内周側凸部42を嵌合させる。
【0023】
第2グロメット本体12は、自動車の車室外側(床下側)に配置されている。第2グロメット本体12は、車室外側のスペース4に引き出された電線Wの経路を規制する第2経路規制部30と、第2グロメット本体12における車体パネル1側とは反対側の端部に設けられた第2電線保持筒部31とを有する。また、第2グロメット本体12は、第2グロメット本体12における車体パネル1側の端部に設けられた第2環状取付部32を有する。
【0024】
第2経路規制部30は、電線Wを内部に収容する中空体であり、内部空間33に収容された電線Wの経路を規制して屈曲している状態を維持する。第2経路規制部30は、電線Wの所望の配策方向に沿って延びている。具体的には、第2経路規制部30は、内部空間33を有し、内部空間33に収容された電線Wが必然的に屈曲するように折曲させて形成されている。第2経路規制部30の車体パネル1側の端部は、インナー部材13が第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12に接続されるとき、第1経路規制部20の車体パネル1側の端部に対して第1経路規制部20との間に隙間が生じない程度で突き当てられる。
【0025】
また、第2経路規制部30には、内部空間33を複数の分割空間に区画する壁部34が設けられている。この壁部34は、インナー部材13が第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12に接続されるとき、第1経路規制部20の内部空間23に設けられた壁部24に対して壁部24との間に隙間が生じない程度で突き当てられる。
【0026】
第2電線保持筒部31は、第2経路規制部30の車体パネル1側とは反対側の端部に連続し、内周側で電線Wを保持する円筒体である。第2電線保持筒部31の内径は、電線Wの外径よりも若干小さいか、電線Wの外径とほぼ同一である。第2電線保持筒部31から露出する電線Wの外周には、コルゲートチューブ等の保護部材(図示せず)が配置されている。
【0027】
第2電線保持筒部31は、第2環状取付部32の軸線に対して傾斜した方向(本実施形態では、直交する方向)に沿って延びている。本実施形態では、1本の第2電線保持筒部31が第2経路規制部30に配設されている。第2電線保持筒部31と保護部材とが少なくとも一部重なるように保護部材が第2電線保持筒部31に挿通されている。この保護部材により、第2電線保持筒部31の内面と電線Wの外周面との間を通じた、グロメット10の外部から内部への水等の浸入が抑止される。
【0028】
なお、第2電線保持筒部31の内周面には、第2電線保持筒部31の内周面と電線Wとの間の隙間を塞ぐ環状の第2シール部が設けられていてもよい。
【0029】
第2環状取付部32は、第1開口部よりも大きい第2開口部を有して楕円環状に形成されている。第2環状取付部32の内径は、第1環状取付部22の外径よりも大きい。第2環状取付部32は、第2凹部35と、リップ部36とを含む。
【0030】
第2凹部35は、第2環状取付部32の内周側に楕円環状に形成され、インナー部材13が第2グロメット本体12に接続されるとき、インナー部材13の外周側凸部43を嵌合させる。
【0031】
リップ部36は、楕円環状のシール部であり、車体パネル1に対向する外周縁面32aから車体パネル1側に突出する。グロメット10が貫通孔2の周縁部に取り付けられたとき、リップ部36は、外周縁面32aの側に倒れる方向に弾性変形し、車体パネル1の他方側の表面(下面)にある、貫通孔2の周縁面に直接当接して密着する。これにより、リップ部36と、リップ部36に対向する車体パネル1の表面との間を通じた、グロメット10の外部から内部への水等の浸入が抑止される。
【0032】
インナー部材13は、貫通孔2に嵌合される。具体的には、第1環状取付部22の外周面22aと第2環状取付部32の内周面32bとが向かい合わされた状態で、インナー部材13が第1環状取付部22の外周面22aと第2環状取付部32の内周面32bとの間に配置されている。
【0033】
図2に示されるインナー部材13は、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12を支持し、且つ、貫通孔2の周縁部に保持される環状部材である。また、インナー部材13は、インナー部材13自身の中心軸を含む仮想平面で二分割された一対の部材、つまり、第1インナー部材40aと第2インナー部材40bとの組み合わせで構成される。
【0034】
インナー部材13は、全体として、複数の壁部で構成される環状の構造体である本体部41と、環状の板体である内周側鍔部としての内周側凸部42と、環状の板体である外周側鍔部としての外周側凸部43とを有する。
【0035】
本体部41は、例えば、外周壁41aと、上壁41bと、内周壁41cとを含む。外周壁41aは、グロメット10が貫通孔2の周縁部に取り付けられるときに、車体パネル1の平面方向に沿って貫通孔2の周縁部と対向する壁部である。上壁41bは、外周壁41aの上方の周端と外周端で連続し、内周側に向けて延設される壁部である。内周壁41cは、上壁41bの内周端と連続し、外周壁41aとおおよそ平行である壁部である。
【0036】
内周側凸部42は、内周壁41cの上下方向中間の周壁から内側に向かって放射状に突出する。内周側凸部42は、楕円環状に形成され、前述のとおり、インナー部材13が第1グロメット本体11に接続されるとき、第1グロメット本体11の第1凹部25に嵌合される。
【0037】
外周側凸部43は、外周壁41aの下方の周端から外側に向かって放射状に突出する。外周側凸部43は、楕円環状に形成され、前述のとおり、インナー部材13が第2グロメット本体12に接続されるとき、第2グロメット本体12の第2凹部35に嵌合される。
【0038】
ここで、インナー部材13が第1インナー部材40aと第2インナー部材40bとの一対の部材の組み合わせである場合、第1インナー部材40aと第2インナー部材40bとは、互いに同様の半環形状であってもよい。また、第1インナー部材40aと第2インナー部材40bとは、互いに組み合わされる際に連結される2つの連結部44a,44bを含む。2つの連結部44a,44bのうち、一方の連結部44aは爪部及び溝部による接続機構であり、他方の連結部44bはヒンジ部であってもよい。つまり、第1インナー部材40aと第2インナー部材40bとは、一方側端部が爪部及び溝部による接続機構により連結され、他方側端部がヒンジ部により連結されていてもよい。
【0039】
なお、2つの連結部が爪部及び溝部による接続機構であってもよい。つまり、第1インナー部材と第2インナー部材とは、両方側の端部が爪部及び溝部による接続機構を介して連結されてもよい。また、ここではインナー部材が2つのインナー部材に分割される場合を例示したが、3つ以上のインナー部材に分割されてもよい。
【0040】
また、インナー部材13は、本体部41の一部が貫通孔2に挿入されたときに、本体部41を貫通孔2の周縁に係止される複数のインナーロック50を有する。本実施形態では、インナーロック50は、インナー部材13の全体として、周方向に等間隔で4箇所に設けられている。つまり、第1インナー部材40a及び第2インナー部材40bとしては、インナーロック50は、それぞれのインナー部材に2箇所ずつ設けられている。なお、インナーロック50の設置数は、特に限定されるものではなく、4つ以外であってもよい。
【0041】
インナーロック50は、ロック爪51を含む。
【0042】
ロック爪51は、本体部41の外周壁41aに沿って設けられ、外周壁41aの内側と外側とを結ぶ方向で弾性変形する。ロック爪51は、貫通孔2の周縁部と接触又は係合する突起部を有する。ここで、突起部が貫通孔2の周縁部に係合する状態とは、インナーロック50が本体部41を貫通孔2の周縁部に係止させたとき、つまり、グロメット10が貫通孔2の周縁部に取り付けられたときの、貫通孔2に対する突起部の状態をいう。突起部は、外周壁41aの周方向に沿った稜線を頂点部として外方に突出し、常時、外周壁41aの外周よりも外側にある。つまり、ロック爪51の弾性変形は、突起部が貫通孔2の周縁部と接触していることに伴う、突起部の変位により生じる。そして、突起部が貫通孔2の周縁部に係合している状態では、突起部の下端溝に貫通孔2の周縁部が入り込むことで、本体部41は、貫通孔2の周縁部に対して一定の姿勢に維持される。
【0043】
なお、インナー部材13では、インナーロック50が周方向に4箇所に設けられているので、計4つのロック爪51に含まれる各々の突起部は、本体部41の中心軸を基準とした放射方向に沿って突出することになる。
【0044】
次に、グロメット10の組付手順を説明する。
【0045】
まず、電線Wを第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12の内部に収容する。つまり、第1グロメット本体11と第2グロメット本体12とを離間状態として内部に電線Wを配策する。
【0046】
次に、インナー部材13を第1グロメット本体11に外方から取り付ける。つまり、第1グロメット本体11の外周側に設けた第1凹部25にインナー部材13の内周側に設けた内周側凸部42を嵌め込みつつ、インナー部材13の第1インナー部材40aと第2インナー部材40bとを接続する。これにより、第1グロメット本体11とインナー部材13とが嵌合される。
【0047】
次に、第2グロメット本体12をインナー部材13に外方から取り付ける。つまり、インナー部材13の外周側に設けた外周側凸部43に第2グロメット本体12の内周側に設けた第2凹部35を被せることにより、第2グロメット本体12とインナー部材13とが嵌合される。
【0048】
次に、電線Wを車体パネル1の貫通孔2に通し、車室外側のスペース4により、第1グロメット本体11を挿入先端側としてグロメット10を貫通孔2に押し込む。すると、第1グロメット本体11が貫通孔2から車室内側のスペース3に突出し、次に、インナー部材13が貫通孔2に入り込んで、インナー部材13が挿入完了位置まで挿入されると、グロメット10が車体パネル1の貫通孔2に装着される。
【0049】
次に、グロメット10の作用効果について説明する。
【0050】
本実施形態の第一の態様に係るグロメット10は、被取付部材(車体パネル1)にある貫通孔2を貫通する電線Wを保持する。グロメット10は、被取付部材(車体パネル1)の一方側に引き出された電線Wの経路を規制する第1経路規制部20、及び、第1開口部を持つ第1環状取付部22を有する第1グロメット本体11を備える。また、グロメット10は、被取付部材(車体パネル1)の他方側に引き出された電線Wの経路を規制する第2経路規制部30、及び、第1開口部よりも大きい第2開口部を持つ第2環状取付部32を有する第2グロメット本体12を備える。さらに、グロメット10は、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12よりも剛性が高い材料を用いて環状に形成され、貫通孔2に嵌合されるインナー部材13を備える。第1環状取付部22の外周面22aと第2環状取付部32の内周面32bとが向かい合わされた状態で、インナー部材13が第1環状取付部22の外周面22aと第2環状取付部32の内周面32bとの間に配置される。
【0051】
本実施形態に係るグロメット10によれば、経路規制部(第1経路規制部20、第2経路規制部30)が貫通孔2の両側に設けられているため、貫通孔2の一方側と他方側との両方に経路規制部の設定が遮音性能向上等のために必要な場合に対応することができる。このため、本実施形態によれば、遮音性能に優れるグロメット10を提供することができる。
【0052】
また、本実施形態では、例えばゴム製の第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12をそれぞれ、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12よりも剛性が高い材料(例えば、合成樹脂)を用いて形成されたインナー部材13に対して嵌合させる。合成樹脂は硬質であり変形し難いため、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12をそれぞれインナー部材13に対して嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、貫通孔2の一方側及び他方側にある両方の経路規制部(第1経路規制部20、第2経路規制部30)をインナー部材13に嵌合する際の作業性に優れるグロメット10を提供することができる。
【0054】
本実施形態の第二の態様に係るグロメット10において、第1環状取付部22の外周面22aには、第1環状取付部22の周方向に沿って第1凹部25が設けられる。その一方、インナー部材13の内周面(内周壁41c)には、第1凹部25と係合する内周側凸部42がインナー部材13の周方向に沿って設けられる。
【0055】
第1環状取付部22の外周面22aに第1凹部25が設けられ、インナー部材13の内周面(内周壁41c)には内周側凸部42が設けられることにより、インナー部材13を第1グロメット本体11に外方から取り付けることができる。つまり、第1グロメット本体11の第1凹部25にインナー部材13の内周側凸部42を嵌め込むことにより、第1グロメット本体11とインナー部材13とを嵌合させることができる。このため、第1グロメット本体11とインナー部材13とが適切に嵌合されたことを目視で確認することができ、第1グロメット本体11とインナー部材13との嵌合検出をし易い構造のグロメット10とすることができる。
【0056】
本実施形態の第三の態様に係るグロメット10において、第2環状取付部32の内周面32bには、第2環状取付部32の周方向に沿って第2凹部35が設けられる。その一方、インナー部材13の外周面(外周壁41a)には、第2凹部35と係合する外周側凸部43がインナー部材13の周方向に沿って設けられる。
【0057】
第2環状取付部32の内周面32bに第2凹部35が設けられ、インナー部材13の外周面(外周壁41a)には外周側凸部43が設けられることにより、第2グロメット本体12をインナー部材13に外方から取り付けることができる。つまり、インナー部材13の外周側凸部43に第2グロメット本体12の第2凹部35を被せることにより、第2グロメット本体12とインナー部材13とを嵌合させることができる。このため、第2グロメット本体12とインナー部材13とが適切に嵌合されたことを目視で確認することができ、第2グロメット本体12とインナー部材13との嵌合検出をし易い構造のグロメット10とすることができる。
【0058】
本実施形態の第四の態様に係るグロメット10において、第1経路規制部20及び第2経路規制部30はそれぞれ、電線Wを内部に収容する中空体であり、これら中空体には、中空体の内部空間23,33を複数の分割空間に区画する壁部24,34が設けられる。
【0059】
第1経路規制部20及び第2経路規制部30の内部にそれぞれ壁部24,34を設けて、この壁部24,34の近傍に電線Wを配策することにより、電線Wが第1経路規制部20及び第2経路規制部30の内部で極力動かないようにすることが可能になる。また、第1経路規制部20及び第2経路規制部30の内部にそれぞれ設けた壁部24,34は補剛のためのリブとしても機能し、第1経路規制部20及び第2経路規制部30の剛性を高めることができる。このため、第1グロメット本体11及び第2グロメット本体12をインナー部材13に組み付ける作業の際に第1経路規制部20及び第2経路規制部30が貫通孔2側に凹むのを抑制することが可能になる。
【0060】
本実施形態に係るワイヤーハーネスは、上述の態様のいずれかの態様のグロメット10を備える。
【0061】
本実施形態によれば、貫通孔2の一方側及び他方側にある両方の経路規制部(第1経路規制部20、第2経路規制部30)をインナー部材13に嵌合する際の作業性に優れるワイヤーハーネスを提供することができる。
【0062】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態に係るグロメット10Aについて説明する。なお、上述のグロメット10と実質的に同一の構成部分は同一符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
図6は、他の実施形態に係るグロメット10Aの斜視図であり、図7は、他の実施形態に係るグロメット10Aの分解図であり、図8は、他の実施形態に係るグロメット10Aの平面図である。
【0064】
図6図8に示すように、この実施形態に係るグロメット10Aでは、第1経路規制部20に対して複数本(図示例では、2本)の第1電線保持筒部21a,21bが設けられている。また、グロメット10Aでは、第1電線保持筒部21a,21bと同様に、第2経路規制部30に対して複数本(図示例では、2本)の第2電線保持筒部31a,31bが設けられている。
【0065】
2本の第1電線保持筒部21a,21bにおいて、一方の第1電線保持筒部21aの内径は他方の第1電線保持筒部21bの内径より大きくなっている。一例として、太い方の第1電線保持筒部21aには、HV(高圧側電圧)の電線Waが挿通され、細い方の第1電線保持筒部21bにはLV(低圧側電圧)の電線Wbが挿通される。第1経路規制部20の内部空間23に設けられた壁部24は、内部空間23を複数の収容空間に区画する。このため、第1経路規制部20の内部空間23においては、高圧側電圧の電線Waと低圧側電圧の電線Wbとは、それぞれ別の収容空間に収容されている。
【0066】
また、2本の第2電線保持筒部31a,31bにおいて、一方の第2電線保持筒部31aの内径は他方の第2電線保持筒部31bの内径より大きくなっている。一例として、太い方の第2電線保持筒部31aには、高圧側電圧の電線Waが挿通され、細い方の第2電線保持筒部31bには低圧側電圧の電線Wbが挿通される。第2経路規制部30の内部空間33に設けられた壁部34は、内部空間33を複数の収容空間に区画する。このため、第2経路規制部30の内部空間33においては、高圧側電圧の電線Waと低圧側電圧の電線Wbとは、それぞれ別の収容空間に収容されている。
【0067】
なお、ここでは2本の電線保持筒部が第1経路規制部及び第2経路規制部にそれぞれ配設される場合を例示したが、3本以上の電線保持筒部が第1経路規制部及び第2経路規制部にそれぞれ配設されてもよい。
【0068】
図6図8に示すグロメット10Aによれば、上述のグロメット10と同様に、貫通孔2の一方側及び他方側にある両方の経路規制部(第1経路規制部20、第2経路規制部30)をインナー部材13に嵌合する際の作業性を向上させることが可能である。
【0069】
また、グロメット10Aにおいては、第1経路規制部20及び第2経路規制部30はそれぞれ、電線Wa,Wbを内部に収容する中空体であり、これら中空体には、中空体の内部空間23,33を複数の収容空間(分割空間)に区画する壁部24,34が設けられる。
【0070】
第1経路規制部20及び第2経路規制部30の内部にそれぞれ壁部24,34を設けて、高圧側電圧の電線Waの収容空間と低圧側電圧の電線Wbの収容空間とを別にすることにより、電線Wa,Wb間の干渉、ノイズの発生を抑制することができる。
【0071】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 車体パネル
2 貫通孔
10,10A グロメット
11 第1グロメット本体
12 第2グロメット本体
13 インナー部材
20 第1経路規制部
21,21a,21b 第1電線保持筒部
22 第1環状取付部
22a 外周面
23 内部空間
24 壁部
25 第1凹部
30 第2経路規制部
31,31a,31b 第2電線保持筒部
32 第2環状取付部
32b 内周面
33 内部空間
34 壁部
35 第2凹部
41a 外周壁
41c 内周壁
42 内周側凸部
43 外周側凸部
W,Wa,Wb 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8