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  • 特開-複合加工機 図1
  • 特開-複合加工機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177006
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】複合加工機
(51)【国際特許分類】
   B23B 23/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B23B23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089659
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
(72)【発明者】
【氏名】林 修司
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FE03
(57)【要約】
【課題】大きな動力源を必要とすることなくテールストックユニットを移動させることができ、装置全体の小型化を図ることが可能な複合加工機を提供する。
【解決手段】本発明にかかる複合加工機の構成は、工具112を交換可能に取り付けられる工具主軸110と、ワークWを交換可能に取り付けられるワーク主軸120と、ワーク主軸120をワークWの回転軸方向であるZ軸方向に移動させるZ軸駆動機構140と、Z軸方向に移動可能なテールストックユニット130と、ワーク主軸120とテールストックユニット130とを、Z軸方向における相対的な間隔を変更自在に接続するパイロットバー160と、パイロットバー160をZ軸方向に進退させて相対的な間隔を変更するクランプ駆動源170と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を交換可能に取り付けられる工具主軸と、
ワークを交換可能に取り付けられるワーク主軸と、
前記ワーク主軸を前記ワークの回転軸方向であるZ軸方向に移動させるZ軸駆動機構と、
前記Z軸方向に移動可能なテールストックユニットと、
前記ワーク主軸と前記テールストックユニットとを、前記Z軸方向における相対的な間隔を変更自在に接続するパイロットバーと、
前記パイロットバーを前記Z軸方向に進退させて前記相対的な間隔を変更するクランプ駆動源と、
を備えたことを特徴とする複合加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具主軸とワーク主軸とテールストックユニットとを備えた複合加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、例えばNC旋盤のような旋削加工が可能な装置と、穴あけ加工やギヤスカイビング加工が可能な装置とが一体化された複合加工機が実用化されている。複合加工機では、ワークがワーク主軸とテールストックとによって保持される場合がある。
【0003】
ワークをワーク主軸とテールストックとにより保持する一例として、厳密には複合加工機ではないが、例えば特許文献1に「ベッドと、ベッド上に装備される主軸台と、ベッド上に配設されるリニアガイドレールと、ガイドレールにより案内される刃物台を有するキャリッジと、リニアガイドレールにより案内されるテールストックと、キャリッジを駆動する手段」を備える旋盤が開示されている。
【0004】
特許文献1の旋盤のテールストックは、リニアガイドレールに係合されるリニアガイドブロックと、リニアガイドブロックを昇降させる油圧装置と、リニアガイドレール上に当接される面を有している。特許文献1ではテールストックは、移動時にはリニアガイドブロックのみでリニアガイドレールにより案内され、クランプ時には油圧装置によりテールストックがリニアガイドレールの上面に押し出されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-080404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ワーク主軸の回転軸方向(以下、Z軸方向という)に移動可能な刃物台を移動制御することによって、テールストックをZ軸方向に移動させている。しかしながら、刃物台すなわち工具軸は、高い加工精度を得るために高剛性が必要であり、重量が極めて重い。すると、重量が重い工具軸を移動させるためには、当然にして大きな動力源が必要となる。このため、特許文献1の旋盤では装置全体が必然的に大型化してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、大きな動力源を必要とすることなくテールストックユニットを移動させることができ、装置全体の小型化を図ることが可能な複合加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる複合加工機の代表的な構成は、工具を交換可能に取り付けられる工具主軸と、ワークを交換可能に取り付けられるワーク主軸と、ワーク主軸をワークの回転軸方向であるZ軸方向に移動させるZ軸駆動機構と、Z軸方向に移動可能なテールストックユニットと、ワーク主軸とテールストックユニットとを、Z軸方向の相対的における間隔を変更自在に接続するパイロットバーと、パイロットバーをZ軸方向に進退させて相対的な間隔を変更するクランプ駆動源と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大きな動力源を必要とすることなくテールストックユニットを移動させることができ、装置全体の小型化を図ることが可能な複合加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態にかかる複合加工機の全体の構成を概略的に示す図である。
図2図1の複合加工機におけるワークのアンクランプ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる複合加工機100の全体の構成を概略的に示す図である。図2は、図1の複合加工機におけるワークのアンクランプ状態を示す図である。図1は、ワークWがクランプ状態の複合加工機100を例示する図である。図2は、ワークWがアンプランプ状態の複合加工機100を例示する図である。
【0013】
図1および図2に示すように本実施形態の複合加工機100は、工具主軸110、ワーク主軸120およびテールストックユニット130を備える。工具主軸110に、工具112が交換可能に取り付けられる。工具主軸110は、B方向に回動可能である。また工具主軸110は、X軸方向(図中前後方向)およびY軸方向(図中上下方向)に移動可能であり、且つA方向(X軸中心と平行な軸回り回動)に旋回可能である。
【0014】
ワーク主軸120に、ワークWが交換可能に取り付けられる。ワーク主軸120は、C方向に回動可能であり、且つ後述するZ軸駆動機構140によってワークWの回転軸R方向であるZ軸方向(図中左右方向。以下、単にZ軸方向と称する。)に移動可能である。本実施形態ではワーク主軸120は、その下方に配置されたZ軸テーブル102に固定されている。
【0015】
テールストックユニット130は、ワークWをクランプまたはアンクランプする装置であり、Z軸方向に移動可能である。テールストックユニット130のワークWと対向する面には、ワークWをワーク主軸120に押し付けるように心押しセンタ132が設けられている。本実施形態の複合加工機100は、図1に示すようにワーク主軸120に取り付けられたワークWをテールストックユニット130によってクランプし、かかるワークWを工具主軸110に取り付けられた工具によって加工する。
【0016】
また本実施形態の複合加工機100は更に、Z軸駆動機構140、第1レール152、第2レール154(後述するように、第1レール152と第2レール154とが連続して一体となっていてもよい)、パイロットバー160およびクランプ駆動源170を備える。Z軸駆動機構140は、Z軸駆動モータ142およびZ軸駆動ボールネジ144を含んで構成され、ワーク主軸120(Z軸テーブル102)をワークWのZ軸方向に移動させる。
【0017】
Z軸駆動モータ142は、Z軸方向に沿って設けられたZ軸駆動ボールネジ144を回動させるための駆動源であり、ベッド104上に固定されている。Z軸駆動ボールネジ144は、Z軸駆動モータ142に一端が固定され、ベッド104上に配置されたストッパ146に他端が固定されている。
【0018】
第1レール152は、ベッド104上に配置されていて、ワーク主軸120のZ軸方向の移動を案内する。第2レール154は、ベッド104上に配置されていて、テールストックユニット130のZ軸方向の移動を案内する。
【0019】
パイロットバー160は、ワーク主軸120とテールストックユニット130とを、Z軸方向における相対的な間隔を変更自在に接続する部材である。これにより、ワーク主軸120は、パイロットバー160によってZ軸テーブル102を介してテールストックユニット130に接続されている。したがってワーク主軸120が移動すると、テールストックユニット130がワーク主軸120に追従して同じ方向に移動する。
【0020】
クランプ駆動源170は、パイロットバー160を進退させることでワーク主軸120とテールストックユニット130との相対的な間隔を変更する。クランプ駆動源170としては、例えば油圧シリンダやモータを例示することができるが、これに限定するものではなく、他の既知の装置を用いてもよい。
【0021】
以下、図1および図2に示す複合加工機100の動作を説明する。本実施形態の複合加工機100では、Z軸駆動機構140によってワーク主軸120をワークWのZ軸方向に移動させ、クランプ駆動源170によってワーク主軸120とテールストックユニット130との相対的な間隔を変更することにより、ワークWをクランプまたはアンクランプする。
【0022】
詳細には図1に示すようにワークWがクランプされている状態では、ワークWは、ワーク主軸120に取り付けられ、テールストックユニット130の心押しセンタ132によって矢印D1方向に付勢されることにより、それらに挟持されている。
【0023】
本実施形態の複合加工機100では、ワークWを加工する際にまずZ軸駆動モータ142を駆動する。これにより、Z軸駆動ボールネジ144が回転することでZ軸テーブル102が第1レール152を走行し、ひいてはワーク主軸120がZ軸方向に移動する。ワーク主軸120はパイロットバー160によってテールストックユニット130と接続されているため、テールストックユニット130は、ワーク主軸120に追従して第2レール154上を走行してZ軸方向に移動する。その結果、ワーク主軸120およびテールストックユニット130はワークWを挟持した状態でZ軸方向に移動し、ワークWは、工具主軸110に取り付けられた工具112に対して相対的に移動する。
【0024】
上記構成によれば、ワーク主軸120を移動させる動力源であるZ軸駆動モータ142によってワーク主軸120と連動してテールストックユニット130を移動させることができる。したがって従来のように工具主軸110にZ軸方向への駆動源を持たせる場合に比して、大きな動力源を必要とすることなく工具主軸110およびテールストックユニット130を移動させることができる。したがって複合加工機100の小型化を図ることが可能である。
【0025】
ワークWを交換する場合等、ワークWをアンクランプする際には、まずクランプ駆動源170を駆動する。これにより、パイロットバー160がテールストックユニット130に向かって前進する。換言すれば、テールストックユニット130はパイロットバー160によってワーク主軸120から離間する方向(D2方向)に付勢され、第2レール154上を走行する。その結果、図2に示すようにテールストックユニット130の心押しセンタ132がワークWから離れた状態となり、ワークWがアンクランプされた状態となる。
【0026】
ワークWの交換等の作業が完了したら、クランプ駆動源170を再度駆動する。そしてパイロットバー160をワーク主軸120に向かって後退させる。これにより、テールストックユニット130はパイロットバー160によってワーク主軸120に近接する方向(D1方向)に付勢され、第2レール154上を走行する。その結果、図1に示すようにテールストックユニット130の心押しセンタ132がワークWに接触した状態となり、ワークWがクランプされた状態となる。
【0027】
上記説明したように本実施形態の複合加工機100によれば、クランプ駆動源170によってパイロットバー160を進退させることでワーク主軸120とテールストックユニット130との相対的な間隔を変更することができる。したがって、ワークWのクランプおよびアンクランプを容易に行うことが可能である。
【0028】
またパイロットバー160はねじが切ってあり、テールストックユニット130はパイロットバー160に対して位置調整可能となっている。これにより、ワークWのサイズに応じて大まかにテールストックユニット130の位置を合わせておき、クランプ駆動源170は短いストロークでクランプとアンクランプを行うことが可能である。
【0029】
なお本実施形態の複合加工機100では第1レール152と第2レール154とを別体とする構成を例示したが、これに限定するものではない。第1レール152と第2レール154とが一体となった構成であっても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、工具主軸とワーク主軸とテールストックユニットとを備えた複合加工機として利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100…複合加工機、102…Z軸テーブル、104…ベッド、110…工具主軸、112…工具、120…ワーク主軸、130…テールストックユニット、132…心押しセンタ、140…Z軸駆動機構、142…Z軸駆動モータ、144…Z軸駆動ボールネジ、146…ストッパ、152…第1レール、154…第2レール、160…パイロットバー、170…クランプ駆動源、R…回転軸、W…ワーク
図1
図2