(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177007
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】荷出し開口用型枠とそれを用いた荷出し開口の形成方法
(51)【国際特許分類】
E04G 15/06 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E04G15/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089661
(22)【出願日】2022-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】522219157
【氏名又は名称】株式会社宮本組
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勝次
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150HF17
(57)【要約】
【課題】スラブ筋の挿通孔の位置調整やコンクリートの固化後の撤去が容易であって、安価に製造することが可能な荷出し開口用型枠とそれを用いた荷出し開口の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の荷出し開口用型枠1は、同一形状の一対の分割体7、7からなり、上部が開口する箱状をなす型枠本体2と、この型枠本体2の上端(開口端)の四隅にそれぞれ設置される受け具3及び支柱固定具4と、平面視矩形状をなすように配置されて受け具3によって両端をそれぞれ保持される二対の桟木5a、5a及び5b、5bと、互いに平行をなすように配置された一対の桟木5a、5aの間に架け渡された平行な一対の桟木5c、5cと、4個の支柱固定具4に対してそれぞれ1本ずつ取り付けられた4本の支柱6を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラブに荷出し開口を形成する際に、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上に設置される荷出し開口用型枠であって、
4枚の側板と矩形状の第1の底板からなり、上部が開口した箱状をなす合成樹脂製の型枠本体と、
平面視矩形状をなすように配置された4本の第1の棒材と、
前記側板の上端側の前記型枠本体の四隅にそれぞれ1個ずつ固設されて前記第1の棒材の両端をそれぞれ保持する4個の受け具と、を備えていることを特徴とする荷出し開口用型枠。
【請求項2】
4個の前記受け具に1個ずつそれぞれ取り付けられた4個の支柱保持手段と、
前記第1の底板に直交するように前記型枠本体の外側に配置され、前記支柱保持手段によって4個の前記受け具に1本ずつそれぞれ固定された4本の支柱と、を備え、前記支柱は前記平板材の上に前記型枠本体が設置された状態で先端部が前記平板材に接触可能な長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項3】
前記支柱は外周面に雄ネジが設けられ、
前記支柱保持手段は、側面視コの字をなして前記受け具が内部に配置される支柱固定具と、一対のナットと、からなり、
前記支柱固定具は、
前記支柱が挿通される第1の貫通孔を有する上板と、
この上板に平行であって前記第1の貫通孔に挿通された前記支柱を連通可能に第2の貫通孔が設けられた下板と、
前記上板と前記下板の基端側を繋ぐ接続板と、を備え、
一対の前記ナットは、前記支柱の前記雄ネジに螺合した状態で前記支柱固定具の前記上板と前記下板を間に挟むようにその上下にそれぞれ設置されることを特徴とする請求項2に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項4】
前記支柱固定具の前記上板及び前記下板は、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔が設けられる代わりに、前記支柱を内部に配置可能な第1の切り欠き及び第2の切り欠きが前記基端側から先端側へ向かってそれぞれ形成されるとともに、前記接続板に対し、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きを繋ぎ、前記支柱を内部に配置可能な第3の切り欠きが前記上板及び前記下板と直交する方向へ形成されていることを特徴とする請求項3に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項5】
前記受け具は、
平面視L字状をなす第2の底板と、
側面視L字状をなし、前記第2の底板の外縁部及び内縁部からそれぞれ同じ方向へ垂直に延設された外板及び内板と、からなり、
前記第2の底板と前記外板と前記内板によって、前記第1の棒材の端部が内部に配置される凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項6】
前記型枠本体は、平面視矩形状をなして4枚の前記側板の前記上端から前記第1の底板と平行に外方へ延設された枠体板を備え、
前記受け具は前記枠体板に固設されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項7】
前記型枠本体は、平面視長方形状をなして前記枠体板の外縁部から垂直に上方へ延設された4枚の外側板を備えていることを特徴とする請求項6に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項8】
前記型枠本体の前記側板は、平面視した場合に前記上端側の辺が下端側の辺よりも短い台形をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項9】
前記型枠本体の少なくとも一部に対し、断面形状が波型をなす凹凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項10】
前記型枠本体が透明な部材によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項11】
互いに平行をなすように配置された2本の前記第1の棒材に対し、直交するように架け渡された第2の棒材を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項12】
前記型枠本体は一対の分割体からなり、
この分割体は、前記第1の底板及び互いに平行をなす一対の前記側板に対して直交する平面によって、前記型枠本体が前記第1の底板の中央部分において切断された形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
【請求項13】
請求項1に記載の荷出し開口用型枠を用いて前記コンクリートスラブに前記荷出し開口を形成する方法であって、
前記スラブ形成用型枠の一部を構成する前記平板材の上に前記型枠本体を固設する工程と、
4個の前記受け具を前記側板の前記上端側の前記型枠本体の四隅に1個ずつ固設する工程と、
4本の前記第1の棒材をそれらの両端が前記受け具によってそれぞれ保持されるように前記型枠本体に固設する工程と、を備えていることを特徴とする荷出し開口の形成方法。
【請求項14】
前記型枠本体に固設された4個の前記受け具に対して4個の支柱保持手段を1個ずつ取り付ける工程と、
前記平板材に直交し、かつ、先端部が前記平板材に接触するように前記型枠本体の外側に4本の支柱を配置する工程と、
前記支柱保持手段を介して4本の前記支柱を前記受け具に1本ずつ固定する工程と、を備えていることを特徴とする請求項13に記載の荷出し開口の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを構造材料とする建築物において鉄筋コンクリート構造の床板(以下、コンクリートスラブという。)を施工する際に用いられる型枠に係り、特に、コンクリートスラブに工事用の開口部(以下、荷出し開口という。)を形成するための型枠とそれを用いた荷出し開口の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを構造材料とする建築物では、通常、床や天井等を構成するコンクリートスラブに形成された荷出し開口を利用して、工事用の資材や工具などの上げ下ろしが行われる。
従来の荷出し開口は、開口部を形成する予定の箇所を囲むように設置された複数枚のベニヤ板からなる型枠によって形成されていた。しかしながら、木製の型枠はスラブ筋を通すための孔を正確な位置に形成することが困難なため、設置に時間を要していた。また、スラブ筋が嵌め込まれている状態の型枠をコンクリートが固化した後にスラブ筋から取り外す作業は容易でなく、型枠の撤去を効率良く行うことができないという課題があった。さらに、撤去した後の型枠は再利用できないため、廃棄せざるを得ず、その結果、大量の木材資源が無駄になっていた。
【0003】
木製以外の型枠を用いて荷出し開口を形成する技術については、例えば、特許文献1に「床貫通口形成用型枠」という名称で、建築中の建造物の床にコンクリートを打設する際に、下の階との連絡用床貫通口(荷出し開口)を床に形成するために用いられる型枠に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された型枠は、小穴が全域に亘って形成された穴明き鉄板と、この穴明き鉄板が側面に添着される鉄筋製枠体からなり、この鉄筋製枠体が連絡用床貫通口の周壁部に相当する形状及び大きさを有する周壁部骨格を備えていることを特徴とする。
このように型枠が鉄筋製であれば、コンクリートが固化した後に撤去せずにコンクリートスラブの中に埋設された状態にしても問題ないため、型枠の撤去作業が不要となる。そして、この型枠を用いる場合には、木製の型枠を用いる場合とは異なり、大量の木材資源が無駄に廃棄されることがない。さらに、型枠にスラブ筋を通す際に、予め形成されている小穴を利用できるため、設置された型枠に対する配筋作業を効率良く行うことができる。
【0004】
また、工事用の資材や工具などの上げ下ろしに用いるための開口をスラブに形成する技術に関するものではないが、特許文献2には、「床スラブの仮設支柱挿通口用フレーム」という名称で、高層ビル等の建築工事の際に建築スペース内に仮設される作業用ステージの床スラブと仮設支柱が交叉する部分に設けられる仮設支柱挿通口の形成に用いられるフレーム(型枠)に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された仮設支柱挿通口用フレームは、耐アルカリ性グラスファイバー入り強化コンクリート製であって、方形の上部開口端に向けて漸次拡幅された倒台形状をなし、下部側壁にその周縁部を残して支柱挿通口が設けられるとともに、各側壁面に配筋用の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
このようにフレームが耐アルカリ性グラスファイバー入り強化コンクリート製であれば、仮設支柱挿通口へのコンクリート打設時にフレームが撤去されずにそのままコンクリートスラブ内に埋設された状態となったとしても床スラブの強度が低下することがない。すなわち、上記構造のフレームは撤去しなくとも良いため撤去作業に要する手間や費用が削減される。また、フレームの各側壁に配筋用の貫通孔が形成されており、フレームの組み込み時に支柱挿通口開設部の床スラブ鉄筋の端部を上記貫通孔に通してフレーム内に突出させておけば、仮設支柱撤去後に仮設支柱挿通口へコンクリートを打設する際にその鉄筋を利用できるため、仮設支柱挿通口の埋め戻し作業を効率良く行うことができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、「スラブ開口用型枠とそれを用いたスラブ開口の形成方法」という名称で、可撓性を有する合成樹脂製のシートをコンクリートスラブに開口部を形成する際に打設されたコンクリートを堰き止める部材として用いる技術に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示されたスラブ開口用型枠に係る発明は、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上に設置されるものであって、平面視矩形状をなす第1の枠体と、この第1の枠体の四隅をそれぞれ保持する4つの保持手段と、この4つの保持手段をそれぞれ下方から支持する4つの支持具と、合成樹脂からなり可撓性を有する矩形状のシートと、このシートの四辺を第1の枠体に固定する固定手段と、を備えており、上記シートは、平板材の上に広げられ、かつ、保持手段を介して第1の枠体の四隅にそれぞれ設置される4つの支持具の下端によって、平面視して中央部分から均等な距離にある4か所を固定された状態において、シートの四辺を持ち上げて、第1の枠体の外側からその上部を跨ぐようにして内側へ折り込むことが可能な大きさを有していることを特徴とする。
このような構造のスラブ開口用型枠においては、底面と4つの側面がシートで覆われた状態で、その周りにコンクリートを打設すると、シートによってコンクリートの侵入が阻まれるため、シートで周りを囲まれた空間内にはコンクリートスラブが形成されない。そして、コンクリートスラブの中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブの表面と接触した状態となっている合成樹脂製のシートはコンクリートに対する密着力が弱いため、コンクリートスラブから容易に引き剥がすことができる。さらに、シートはカッター等を用いて簡単に切断することができるため、シートに複数本のスラブ筋が貫通している場合であっても、シートに形成されたスラブ筋の挿通孔をカッター等で切り開くようにすれば、シートをスラブ筋から容易に分離することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-239538号公報
【特許文献2】特開昭61-98844号公報
【特許文献3】特許第6491386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明では、型枠にスラブ筋を通す際に予め型枠に形成されている小穴を利用する構造となっているため、スラブ形成用型枠の底に断熱材などを敷設することによってスラブ筋を配置すべき高さが変化した場合に、スラブ筋を型枠に通す箇所について微調整を行うことができないという課題があった。また、型枠が鉄筋製であるため、その製造コストが高いという課題があった。さらに、その型枠はコンクリートが固化した後に撤去することが困難であり、コンクリートスラブの中に残したままの状態にせざるを得ないため、特許文献1に開示された発明には、大量の木材資源が廃棄されるという事態は避けることができるものの、大量の金属資源が無駄になってしまうという課題があった。
【0008】
特許文献2に開示された発明では、フレームの組み込み時に配筋用の貫通孔を利用してフレーム内にスラブ筋を突出可能な構造となっているが、断熱材の敷設などにより、フレームにスラブ筋を通す位置が変化した場合に、対応できないという課題があった。また、フレームがグラスファイバー入り強化コンクリート製であるため、フレームの製造コストが高いという課題があった。
【0009】
特許文献3に開示された発明では、木製や鉄製の型枠の代わりに用いられる合成樹脂製のシートはコンクリートが固化した後に撤去が容易であることに加え、上記型枠を用いる場合に比べて製造コストが安いというメリットがあるものの、シートにスラブ筋が挿通された状態で型枠の周囲を作業者が歩くなどしてシートに振動が伝わった場合、スラブ筋を挿通するためにシートに形成された孔が大きくなる可能性があった。また、部品点数の削減等により、製造コストを更に安くできる余地があるものと考えられる。
【0010】
本発明は、このような課題に対処してなされたものであり、スラブ筋の挿通孔の位置調整やコンクリートの固化後の撤去が容易であって、安価に製造することが可能な荷出し開口用型枠とそれを用いた荷出し開口の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明は、コンクリートスラブに荷出し開口を形成する際に、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上に設置される荷出し開口用型枠であって、4枚の側板と矩形状の底板からなり、上部が開口した箱状をなす合成樹脂製の型枠本体と、平面視矩形状をなすように配置された4本の第1の棒材と、側板の上端側の型枠本体の四隅にそれぞれ1個ずつ固設されて第1の棒材の両端をそれぞれ保持する4個の受け具と、を備えていることを特徴とする。
第1の発明において、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上面に第1の底板を密着させるように固定された型枠本体が合成樹脂製であるため、ドリルなどの工具を用いることによって、型枠本体にスラブ筋の挿通孔を簡単に形成することができる。したがって、第1の発明においては、型枠本体が配筋作業の支障にならない。
【0012】
また、第1の発明において、上述したようにスラブ形成用型枠の平板上に型枠本体を設置した状態で、その周りにコンクリートを打設すると、側板と底板によってコンクリートの侵入が阻まれるため、型枠本体の内部にはコンクリートスラブが形成されない。このとき、第1の棒材は、打設されたコンクリートに押されて型枠本体が変形することを抑制するように作用する。
なお、コンクリートが固化した場合、型枠本体はコンクリートスラブの中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブの表面に片面が接触した状態となっている。そして、型枠本体は合成樹脂製であることから木材や金属からなる従来の型枠に比べてコンクリートに対する密着力が弱い。したがって、第1の発明においては、型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がす作業が容易であるという作用を有する。また、合成樹脂はバールなどの工具によって簡単に破壊可能であるため、第1の発明では、側板に複数本のスラブ筋が貫通している状態であってもスラブ筋から型枠本体を取り外してコンクリートスラブから撤去する作業が容易である。
【0013】
また、第2の発明は、第1の発明において、4個の受け具に1個ずつそれぞれ取り付けられた4個の支柱保持手段と、第1の底板に直交するように型枠本体の外側に配置され、支柱保持手段によって4個の受け具に1本ずつそれぞれ固定された4本の支柱と、を備え、支柱は平板材の上に型枠本体が設置された状態で先端部が平板材に接触可能な長さを有していることを特徴とする。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、第1の棒材と受け具の荷重の一部を支柱が負担することにより、第1の棒材と受け具から型枠本体が受ける荷重が軽減されるという作用を有する。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、支柱は外周面に雄ネジが設けられ、支柱保持手段は、側面視コの字をなして受け具が内部に配置される支柱固定具と、一対のナットと、からなり、支柱固定具は、支柱が挿通される第1の貫通孔を有する上板と、この上板に平行であって第1の貫通孔に挿通された支柱を連通可能に第2の貫通孔が設けられた下板と、上板と下板の基端側を繋ぐ接続板と、を備え、一対のナットは、支柱の雄ネジに螺合した状態で支柱固定具の上板と下板を間に挟むようにその上下にそれぞれ設置されることを特徴とする。
第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、上板の第1の貫通孔と下板の第2の貫通孔に支柱を連通させた状態で上板と下板を上下から挟むように一対のナットを締め付けることによって支柱固定具に支柱が固定されるとともに、支柱固定具の上板及び下板の少なくともいずれか一方を受け具に固定すると、支柱固定具を介して支柱が受け具に固定されるという作用を有する。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、支柱固定具の上板及び下板は、第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられる代わりに、支柱を内部に配置可能な第1の切り欠き及び第2の切り欠きが基端側から先端側へ向かってそれぞれ形成されるとともに、接続板に対し、第1の切り欠きと第2の切り欠きを繋ぎ、支柱を内部に配置可能な第3の切り欠きが上板及び下板と直交する方向へ形成されていることを特徴とする。
第4の発明においては、第3の発明の作用に加え、支柱の雄ネジ部に螺合している一対のナットの間に支柱固定具の上板及び下板が配置されるように各ナットの位置を調節した後、第3の切り欠きの内部に配置した支柱を接続板と平行な状態を維持しながら、上板及び下板の基端側から先端側へ移動させると、支柱が第3の切り欠きを通って第1の切り欠き及び第2の切り欠きの内部に配置されるという作用を有する。
【0016】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、受け具は、平面視L字状をなす第2の底板と、側面視L字状をなし、第2の底板の外縁部及び内縁部からそれぞれ同じ方向へ垂直に延設された外板及び内板と、からなり、第2の底板と外板と内板によって、第1の棒材の端部が内部に配置される凹溝が形成されていることを特徴とする。
第5の発明において、第1の棒材の端部を受け具の凹溝内に配置すると、第1の棒材は底部が受け具の第2の底板で保持されるとともに、側部が受け具の外板と内板でそれぞれ保持されるため、不用意に横方向へずれて受け具から外れてしまうおそれがない。したがって、第5の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、第1の棒材の端部を受け具内に設置する際の作業性が良いという作用を有する。
【0017】
第6の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、型枠本体は、平面視矩形状をなして4枚の側板の上端から第1の底板と平行に外方へ延設された枠体板を備え、受け具は枠体板に固設されることを特徴とする。
第6の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、受け具を型枠本体の枠体板上に配置することで、型枠本体の側板の上端側の四隅に4個の受け具をそれぞれ正確に設置する作業が容易になるという作用を有する。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、型枠本体は、平面視長方形状をなして枠体板の外縁部から垂直に上方へ延設された4枚の外側板を備えていることを特徴とする。
第7の発明において、受け具を型枠本体の枠体板上に配置すると、受け具の外側部が型枠本体の外側板でそれぞれ保持されるため、受け具が不用意に横方向へずれて型枠本体の枠体板上から外れてしまうおそれがない。したがって、第7の発明においては、第6の発明の作用に加え、型枠本体の側板の上端側の四隅に4個の受け具をそれぞれ配置する際の作業性が良いという作用を有する。
【0019】
第8の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、型枠本体の側板は、平面視した場合に上端側の辺が下端側の辺よりも短い台形をなしていることを特徴とする。
型枠本体の側板が鉛直方向と平行に設置されている場合、型枠本体の第1の底板に対して鉛直方向上向きに加えた力は側板をコンクリートスラブから引き剥がす方向に作用しないため、側板をコンクリートスラブから引き剥がすには第1の底板に対する上述の力とは別に水平方向の力を側板に加える必要がある。これに対し、第8の発明では、型枠本体の側板が上方へ向かって次第に広がるような形状をなしているため、型枠本体の第1の底板に対して鉛直方向上向きに加えた力は側板をコンクリートスラブから引き剥がす方向にも作用する。したがって、第8の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、型枠本体の側板が鉛直方向と平行に設置される場合に比べて、型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がし易いという作用を有する。
【0020】
第9の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、型枠本体の少なくとも一部に対し、断面形状が波型をなす凹凸部が設けられていることを特徴とする。
第9の発明では、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用を有することに加え、型枠本体の凹凸部が設けられている面において曲げ剛性が高まるという作用を有する。
【0021】
第10の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、型枠本体は透明な部材によって形成されていることを特徴とする。
第10の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、型枠本体が透明であるため、スラブ筋の挿通孔を形成する作業が容易であるという作用を有する。
【0022】
第11の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、互いに平行をなすように配置された2本の第1の棒材に対し、直交するように架け渡された第2の棒材を備えていることを特徴とする。
第11の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、2本の第1の棒材が上端に配置された一対の側板が第1の棒材を介して第2の棒材にそれぞれ固定されるため、上記一対の側板の間隔が変化するような変形が型枠本体に生じ難いという作用を有する。
【0023】
第12の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、型枠本体は一対の分割体からなり、この分割体は、第1の底板及び互いに平行をなす一対の側板に対して直交する平面によって、型枠本体が第1の底板の中央部分において切断された形状をなしていることを特徴とする。
第12の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、現場で使用する型枠本体の数が多い場合でも分割体ごとにまとめれば嵩張らない状態になるため、型枠本体の運搬が容易であるとともに、保管スペースが節約されるという作用を有する。また、打設されたコンクリートが固化した後で型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がす際に、型枠本体が最初から2つに分割された状態となっているため、第12の発明では、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業が容易であるという第1の発明の作用がより一層発揮される。さらに、型枠本体を射出成形によって製造する場合には、分割体ごとに金型を作れば良いため、型枠本体が分割されていない場合に比べて金型のサイズが小さくなるというメリットがある。
【0024】
第13の発明は、第1の発明に係る荷出し開口用型枠を用いてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する方法であって、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上に型枠本体を固設する工程と、4個の受け具を側板の上端側の型枠本体の四隅に1個ずつ固設する工程と、4本の第1の棒材をそれらの両端が受け具によってそれぞれ保持されるように型枠本体に固設する工程と、を備えていることを特徴とする。
このような荷出し開口の形成方法においては、型枠本体が合成樹脂製であって、ドリルなどの工具を用いれば、スラブ筋の挿通孔を簡単に形成できる構造であることから、荷出し開口用型枠の内部にスラブ筋を配置する際に、型枠本体がその作業の支障にならない。また、スラブ形成用型枠内において荷出し開口用型枠の周りにコンクリートを打設してコンクリートスラブを形成する際に、型枠本体によってコンクリートの移動が阻止されるため、型枠本体の内部にはコンクリートスラブが形成されない。さらに、コンクリートスラブが形成された場合、型枠本体はコンクリートスラブの中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブの表面に片面が接触した状態となっているため、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業が容易である。
【0025】
荷出し開口の形成方法に係る第14の発明は、第13の発明において、型枠本体に固設された4個の受け具に対して4個の支柱保持具を1個ずつ取り付ける工程と、平板材に直交し、かつ、先端部が平板材に接触するように型枠本体の外側に4本の支柱を配置する工程と、支柱保持手段を介して4本の支柱を受け具に1本ずつ固定する工程と、を備えていることを特徴とする。
このような荷出し開口の形成方法においては、第13の発明の作用に加え、第1の棒材と受け具の荷重の一部を支柱が負担することにより、第1の棒材と受け具から型枠本体が受ける荷重が軽減されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、コンクリートスラブが形成された後に荷出し開口として機能する箇所に対してもスラブ筋を簡単に配置することができる。また、コンクリートスラブを形成するために、スラブ形成用型枠の中に第1の発明に係る荷出し開口用型枠を設置して、その周囲にコンクリートを打設した場合でも、コンクリートと接触するのは型枠本体のみである。したがって、第1の発明によれば、コンクリートスラブの形成後にスラブ形成用型枠の中から簡単に取り出せることに加え、型枠本体以外は何度でも再利用できるというメリットがある。さらに、型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がす作業や、スラブ筋から分離する作業を容易に行うことができる。
なお、コンクリートスラブから取り出した型枠本体の再利用は困難であるが、第1の発明における型枠本体の材料費は、金属製の型枠本体に比べると格段に安い。したがって、第1の発明によれば、コンクリートスラブの一部に荷出し開口を安価に形成することが可能である。また、第1の発明では、型枠本体の周囲にコンクリートが打設された際に第1の棒材によって型枠本体の変形が抑制されるため、肉厚が薄い型枠本体を用いることが可能である。そして、このような型枠本体を用いた場合、コンクリートスラブからの型枠本体を引き剥がす作業をさらに容易に行うことができる。
【0027】
第2の発明によれば、第1の棒材と受け具から型枠本体が受ける荷重が支柱によって軽減されるため、第1の発明の場合よりもさらに肉厚が薄い型枠本体を用いることができる。これにより、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業がさらに容易になる。
【0028】
第1の発明における支柱保持手段としては、例えば、外周面に雄ネジが設けられた支柱が螺入されるネジ孔を有し、ネジなどによって受け具に固定される構造の板材が考えられる。コンクリートスラブから型枠本体を撤去する際に、受け具を型枠本体から取り外すとともに受け具から支柱保持手段と支柱を取り外す必要があるが、上記構造の支柱保持手段においては、支柱から板材を取り外すことが容易でない。これに対し、第3の発明では、一対のナットによる支柱固定具への締め付けを緩めることで、支柱から支柱固定具を簡単に取り外すことができる。したがって、第3の発明によれば、第2の発明の効果に加え、コンクリートスラブの形成後に支柱から支柱保持手段を取り外す作業を短時間で効率良く行うことができるという効果を奏する。
【0029】
第3の発明では、コンクリートスラブの形成後に支柱から支柱保持手段を取り外す際に、一対のナットのうち、上方に位置するナットを緩めて支柱の上方へ抜き取った後、支柱固定具を支柱の上方へ抜き取らなければならない。これに対し、第4の発明であれば、一対のナットによる支柱固定具への締め付けを緩めた後に、支柱固定具を水平に移動させるようにすれば、支柱から簡単に取り外すことが可能である。したがって、第4の発明によれば、コンクリートスラブの形成後に支柱から支柱保持手段を取り外す作業を短時間で効率良く行うことができるという第3の発明の効果がより一層発揮される。
【0030】
第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明における受け具としては、例えば、平面視L字状をなす板材のみからなる構造が考えられる。ただし、このような構造の受け具においては、第1の棒材を受け具に固定する作業の途中で第1の棒材が水平方向へずれて受け具から外れてしまう可能性がある。これに対し、第5の発明であれば、受け具の外板と内板によって第1の棒材の水平方向へのずれが阻止されるため、第1の棒材が不用意に受け具から外れてしまうおそれがない。したがって、第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、第1の棒材の端部を受け具内に設置する作業を短時間で効率良く行うことができるという効果を奏する。
【0031】
第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明における型枠本体に受け具を固定する際には、例えば、型枠本体の側板の上部に対し、ネジなどを用いて受け具を固定する必要がある。ただし、このような構造では、型枠本体に受け具をネジ止めする位置が一定にならない可能性がある。これに対し、第6の発明であれば、受け具を型枠本体に設置する際に枠体板上に配置できるため、型枠本体に対して受け具を常に一定の箇所に固定することができる。したがって、第6の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、型枠本体に受け具を固設する作業を短時間で効率良く行うことができるという効果を奏する。
【0032】
第6の発明では、受け具を型枠本体に固定する作業の途中で受け具が水平方向へずれて型枠本体から外れてしまう可能性がある。これに対し、第7の発明であれば、外側板によって受け具の水平方向へのずれが阻止されるため、受け具が不用意に型枠本体から外れてしまうおそれがない。したがって、第7の発明によれば、型枠本体に受け具を固設する作業を短時間で効率良く行うことができるという第6の発明の効果がより一層発揮される。
【0033】
第8の発明によれば、型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がし易いことから、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、コンクリートスラブの形成後に型枠本体を撤去する作業を短時間で効率良く行うことができるという効果を奏する。また、荷出し開口を形成するためには、型枠本体の上方から作業者が手を伸ばして型枠本体の内部に配置されているスラブ筋を切断して折り曲げる作業を行う必要があるが、第8の発明では、型枠本体が下部に比べて上部が広くなるような形状をなしていることから、この作業を極めて容易に行うことができる。
【0034】
第9の発明では、型枠本体において凹凸部が設けられている面が高い曲げ剛性を有するため、第1の発明乃至第4の発明の場合よりもさらに肉厚の薄い型枠本体を用いることができる。したがって、第9の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果を奏することに加え、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業が容易になるという効果がより一層発揮される。
【0035】
第10の発明では、型枠本体が透明であり、スラブ筋の挿通孔の形成が容易であるため、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、コンクリートスラブが形成された後に荷出し開口として機能する箇所に対して、スラブ筋を配置する作業を短時間で効率良く行うことができるという効果を奏する。
【0036】
第11の発明では、2本の第1の棒材が上端に配置された一対の側板の間隔が変化するような変形が型枠本体に生じ難いため、肉厚が薄い型枠本体を用いることで、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業を容易にすることができる。すなわち、第11の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果を奏することに加え、コンクリートスラブから短時間で効率良く型枠本体を引き剥がすことができるという効果を奏する。
【0037】
第12の発明によれば、嵩張らない状態にすることで、型枠本体の運搬が容易になるとともに保管スペースが節約されることから、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、運搬や保管に要する費用が削減されるという効果を奏する。また、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業が容易であるため、第12の発明によれば、コンクリートスラブの形成後の撤去作業を短時間で効率良く行うことが可能である。さらに、第12の発明では、型枠本体を射出成形によって製造する際に、小さいサイズの金型を使用できることから、安価に製造することが可能である。
【0038】
第13の発明によれば、荷出し開口用型枠の内部にスラブ筋を簡単に配置することができる。また、スラブ形成用型枠の中に設置した荷出し開口用型枠の周囲にコンクリートを打設した場合に、コンクリートスラブの形成後にスラブ形成用型枠の中から荷出し開口用型枠を簡単に取り出すことができる。さらに、コンクリートスラブから取り出した荷出し開口用型枠は型枠本体を除いて何度でも再利用することが可能である。すなわち、第13の発明によれば、コンクリートスラブを形成する際に用いた荷出し開口用型枠について、型枠本体を除く全ての部材を再利用できるため、コンクリートスラブの一部に荷出し開口を安価に形成することが可能である。
また、第13の発明によれば、荷出し開口用型枠の内部にもスラブ筋を配置することから、使い終わった荷出し開口を塞ぐために、その内部に形成されるコンクリートスラブに対し、十分な強度をもたせることができる。
【0039】
第14の発明によれば、第1の棒材と受け具から型枠本体が受ける荷重が支柱によって軽減されるため、第13の発明の場合よりもさらに肉厚が薄い型枠本体を用いることで、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業をさらに容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】(a)は本発明の実施の形態に係る荷出し開口用型枠の外観の一例を示した斜視図であり、(b)は同図(a)に示した型枠本体の斜視図である。
【
図2】(a)及び(b)はそれぞれ
図1(a)に示した受け具の斜視図及び平面図であり、(c)及び(d)はそれぞれ
図1(a)に示した支柱固定具の斜視図及び平面図であり、(e)及び(f)はそれぞれ
図1(a)に示した支柱及び桟木の斜視図である。
【
図3】(a)は
図1(b)に示した型枠本体の分割体の平面図であり、(b)は同図(a)におけるA方向矢視図である。
【
図4】
図1(a)に示した荷出し開口用型枠を用いて荷出し開口をコンクリートスラブに形成する手順を示したフローチャートである。
【
図5】(a)はスラブ形成用型枠の合板上に設置された状態を示す型枠本体の平面図であり、(b)は同図(a)におけるB-B線矢視断面図である。
【
図6】(a)は
図5(a)において型枠本体に受け具と桟木が設置される様子を示した斜視図であり、(b)は同図(a)において型枠本体に補強用の桟木が設置される様子を示した斜視図である。
【
図7】(a)は
図6(b)において型枠本体に支柱固定具が設置された状態を示した斜視図であり、(b)は同図(a)において型枠本体に支柱が設置された状態を示した斜視図である。
【
図8】(a)及び(b)はそれぞれ
図7(b)において型枠本体に設けられたスラブ筋挿通孔にスラブ筋が挿通された状態を示した斜視図及び平面図である。
【
図9】(a)は
図8(b)におけるC-C線矢視断面図であり、(b)は同図(a)において型枠本体の周りにコンクリートが打設された状態を示した図であり、(c)は同図(b)において型枠本体内のスラブ筋を切断して端部を折り曲げた状態を示した図である。
【
図10】(a)及び(b)はそれぞれ
図9(c)において荷出し開口用型枠を撤去した状態を示した断面図及び斜視図であり、(c)は同図(a)において折り曲げられたスラブ筋を元の真っ直ぐな状態に戻すとともに、切断された部分を接合した状態を示した図である。
【
図11】(a)はパイプ固定部材の外観斜視図であり、(b)は
図10(b)において荷出し開口の周囲にパイプ固定部材が設置された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の荷出し開口用型枠の構造と、その荷出し開口用型枠を用いてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する方法について
図1乃至
図11を用いて具体的に説明する。
なお、本発明の荷出し開口用型枠は、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを構造材料とする建築物においてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する際に型枠の一部として用いられる合板のような木製の平板材又はデッキプレートのような金属製の平板材の上面に設置されるものである。
したがって、本明細書では、荷出し開口用型枠がそのような状態で使用される場合を想定して、「上板」や「下板」あるいは「上下」などの表現を用いている。また、本発明の荷出し開口用型枠を用いてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する方法の具体例として、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材が合板である場合について説明しているが、当該平板材が金属製のデッキプレートである場合にも、以下に説明する荷出し開口の形成方法に係る本発明の作用及び効果は同様に発揮される。
【実施例0042】
図1(a)は本発明の実施の形態に係る荷出し開口用型枠の外観の一例を示した斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)に示した型枠本体の斜視図である。また、
図2(a)及び
図2(b)はそれぞれ
図1(a)に示した受け具の斜視図及び平面図であり、
図2(c)及び
図2(d)はそれぞれ
図1(a)に示した支柱固定具の斜視図及び平面図である。そして、
図2(e)及び
図2(f)はそれぞれ
図1(a)に示した支柱及び桟木の斜視図である。なお、
図2(e)は支柱に一対のナットが取り付けられた状態を示している。
【0043】
図1(a)に示すように本発明の荷出し開口用型枠1は、同一形状の一対の分割体7、7からなり、上部が開口した箱状をなす型枠本体2と、この型枠本体2の上端(開口端)の四隅にそれぞれ1個ずつ設置される4個の受け具3と、側面視コの字をなして受け具3が内部に配置される支柱固定具4と、平面視矩形状をなすように配置されて受け具3によって両端をそれぞれ保持される二対の桟木5a、5a及び5b、5bと、互いに平行をなすように配置された一対の桟木5a、5aに対し、直交するように架け渡された平行な一対の桟木5c、5cと、4個の支柱固定具4に対してそれぞれ1本ずつ取り付けられた4本の支柱6を備えている。
なお、
図1(a)に示す荷出し開口用型枠1では木製の角材からなる桟木5a~5cが用いられているが、本発明の荷出し開口用型枠は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、木製の角材の代わりに、矩形以外の断面形状を有する金属製の棒材が用いられた構造であっても良い。また、型枠本体2は透明なポリカーボネートによって形成されているが、型枠本体2はポリカーボネート以外の透明な合成樹脂によって形成されたものであっても良い。
【0044】
型枠本体2は、矩形状の第1の底板2aと、平面視した場合に上辺(上端側の辺)が下辺(下端側の辺)よりも短い台形をなす二対の側板2b、2b及び2c、2cと、平面視矩形状をなし、二対の側板2b、2b及び2c、2cの上端から第1の底板2aと平行に外方へ延設された枠体板2dと、平面視長方形状をなし、枠体板2dの外縁部から垂直に上方へ延設された二対の外側板2e、2e及び2f、2fによって構成されている。
図1(b)に示すように一対の分割体7、7は、
図1(a)に示した型枠本体2が第1の底板2aの中央部分において、第1の底板2a及び一対の側板2b、2bに対して直交する平面によって切断された形状をなしている。
なお、
図1(a)では一対の分割体7、7の端面7a、7a(
図1(b)を参照)が当接した状態となっているが、実際に荷出し開口をコンクリートスラブに形成する際には、打設されたコンクリートが端面7a、7aの間から一対の分割体7、7の内部に侵入することを防ぐため、後述するように、一方の分割体7の上に他方の分割体7の一部が重なるような状態で型枠本体2をスラブ形成用型枠の合板12(
図5(a)又は
図5(b)を参照)の上に設置することが望ましい。
【0045】
このように、荷出し開口用型枠1では型枠本体2が一対の分割体7、7によって構成されているため、現場で使用する型枠本体2の数が多い場合には分割体7ごとにまとめることで、嵩張らない状態にすることができる。このようにすれば、型枠本体2の運搬が容易になり、保管スペースも節約されるため、運搬や保管に要する費用を削減することができる。また、型枠本体2を射出成形によって製造する場合には、分割体ごとに金型を作れば良いため、型枠本体が分割されていない場合に比べて金型のサイズが小さくなる。すなわち、上記構造の荷出し開口用型枠1では、型枠本体2を射出成形によって製造する際に、小さいサイズの金型を使用できるため、安価に製造することが可能である。
【0046】
図2(a)及び
図2(b)に示すように受け具3は、ビス固定孔8aが設けられ、平面視L字状をなす第2の底板3aと、側面視L字状をなし、第2の底板3aの外縁部及び内縁部からそれぞれ同じ方向へ垂直に延設された外板3b及び内板3cからなる。すなわち、受け具3では第2の底板3aと外板3bと内板3cによって、桟木5a、5bの端部が内部に配置される凹溝が形成されている。
また、
図2(c)及び
図2(d)に示すように支柱固定具4は側面視コの字をなすように直角に二度曲折された長方形状の板材からなり、ビス固定孔8b、8bが長手方向へ所望の間隔をあけて設けられている上板4aと、この上板4aに平行な下板4bと、上板4aと下板4bの基端側を繋ぐ接続板4cによって構成されている。なお、上板4aと下板4bには、基端側から長手方向と平行に所定の長さを有する第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bがそれぞれ形成されており、接続板4cには第1の切り欠き9aと第2の切り欠き9bを繋ぐ第3の切り欠き9cが上板4a及び下板4bと直交する方向へ形成されている。
【0047】
図2(e)に示すように支柱6は、支柱固定具4の第1の切り欠き9a、第2の切り欠き9b及び第3の切り欠き9cの内部へ配置可能な太さを有し、一端が先鋭化された棒状体からなり、外周面6aには雄ネジ部6bが他端から所定の長さに亘って形成されている。そして、支柱固定具4に対し、後述するように雄ネジ部6bに螺合する一対のナット10、10を用いることによって固定される構造となっている。すなわち、支柱固定具4と一対のナット10、10は、支柱6を受け具3に固定する支柱保持手段を構成している。
図2(f)に示すように桟木5a~5cは細長い木製の角材であり、桟木5a、5bの幅w(
図2(f)を参照)は受け具3における第2の底板3aの幅W
1(
図2(b)を参照)よりも狭く、桟木5a、5bの厚さt(
図2(f)を参照)と受け具3における第2の底板3aの厚さT(
図2(a)を参照)の合計及び外板3b及び内板3cの幅W
2(
図2(a)を参照)は、いずれも支柱固定具4における上板4aと下板4bの間隔L(
図2(c)を参照)よりも薄い。そして、桟木5aの長さは、スラブ形成用型枠に設置された型枠本体2の上端に固設された状態で桟木5aの両端をそれぞれ保持する一対の受け具3、3における外板3b、3bの間隔よりも短く、かつ、上述の一対の受け具3、3における第2の底板3a、3aの間隔よりも長い。
【0048】
また、桟木5bの長さは、スラブ形成用型枠に設置された型枠本体2の上端に固設された状態で桟木5bの両端をそれぞれ保持する一対の受け具3、3における外板3b、3bの間隔よりも短く、かつ、上述の一対の受け具3、3における第2の底板3a、3aの間隔よりも長い。すなわち、桟木5a、5bは両端を受け具3の内部に配置可能であって、かつ、両端が受け具3の内部に配置された状態で支柱固定具4の内部に配置可能な構造となっている。
なお、桟木5cは、平行に配置された一対の桟木5a、5aに対して垂直に架け渡すことができるように、その長さはスラブ形成用型枠に設置された状態の型枠本体2における一対の外側板2f、2fの間隔よりも長い。
【0049】
図3(a)は
図1(b)に示した型枠本体の分割体の平面図であり、
図3(b)は
図3(a)におけるA方向矢視図である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、型枠本体2の第1の底板2a及び側板2cには凹凸部11が設けられている。なお、第1の底板2aの凹凸部11は、凹凸部11が設けられていない部分の第1の底板2a及び外側板2eの双方に垂直な平面で切断した場合の断面形状が波型をなしており、側板2cの凹凸部11は、凹凸部11が設けられていない部分の側板2c及び外側板2eの双方に垂直な平面で切断した場合の断面形状が波型をなしている。
この場合、凹凸部11によって、側板2cに接続されている側と端面7a(
図1(b)を参照)の間が上方又は下方へ凸になるような曲げに対する第1の底板2aの剛性が高められるとともに、枠体板2dに接続されている側と第1の底板2aに接続されている側の間が内側又は外側へ向かって凸になるような曲げに対する側板2cの剛性が高められる。すなわち、荷出し開口用型枠1においては、型枠本体2の凹凸部11が設けられている面において曲げ剛性が高まるという作用を有する。したがって、荷出し開口用型枠1では、肉厚の薄い型枠本体2を用いることができる。
なお、凹凸部11は第1の底板2aと側板2cだけでなく、側板2bに設けても良いし、第1の底板2aのみに設けても良い。また、型枠本体2を凹凸部11が設けられていない構造とすることもできる。
【0050】
つぎに、荷出し開口用型枠1を用いてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する方法について、
図4乃至
図11を参照しながら具体的に説明する。なお、
図4は荷出し開口用型枠1を用いて荷出し開口をコンクリートスラブに形成する手順を示したフローチャートである。また、
図5(a)はスラブ形成用型枠の合板上に設置された状態を示す型枠本体の平面図であり、
図5(b)は
図5(a)におけるB-B線矢視断面図である。さらに、
図6(a)は
図5(a)において型枠本体に受け具と桟木が設置される様子を示した斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)において型枠本体に補強用の桟木が設置される様子を示した斜視図である。そして、
図7(a)は
図6(b)において型枠本体に支柱固定具が設置された状態を示した斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)において型枠本体に支柱が設置された状態を示した斜視図である。
図8(a)及び
図8(b)はそれぞれ
図7(b)において型枠本体に設けられたスラブ筋挿通孔にスラブ筋が挿通された状態を示した斜視図及び平面図である。また、
図9(a)は
図8(b)におけるC-C線矢視断面図であり、
図9(b)は
図9(a)において型枠本体の周りにコンクリートが打設された状態を示しており、
図9(c)は
図9(b)において型枠本体内のスラブ筋を切断して端部を折り曲げた状態を示している。さらに、
図10(a)及び
図10(b)はそれぞれ
図9(c)において荷出し開口用型枠を撤去した状態を示した断面図及び斜視図であり、
図10(c)は
図10(a)において折り曲げられたスラブ筋を元の真っ直ぐな状態に戻すとともに、切断された部分を接合した状態を示している。そして、
図11(a)はパイプ固定部材の外観斜視図であり、
図11(b)は
図10(b)において荷出し開口の周囲にパイプ固定部材が設置された状態を示している。
なお、図が煩雑になるのを避けるため、
図5(a)及び
図5(b)では一部のビスについてのみ符号を付しており、
図8(b)、
図9(a)乃至
図9(c)、
図10(c)及び
図11(b)では一部のスラブ筋についてのみ符号を付している。また、
図5(a)、
図5(b)、
図8(b)及び
図9(a)乃至
図9(c)では凹凸部の図示を省略している。さらに、
図1乃至
図3に示した構成要素については、同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0051】
図4のステップS1に示すように、まず、スラブ形成用型枠を構成する合板12に墨出しを行って、荷出し開口の形成を予定している箇所を特定した後、一方の分割体7の上に他方の分割体7の一部が重なるような状態で型枠本体2を合板12の当該箇所に設置する。そして、第1の底板2aに設けられたビス固定孔(図示せず)を利用し、ビス13によって第1の底板2aを合板12に固定する(
図5(a)及び
図5(b)を参照)。なお、荷出し開口用型枠1では型枠本体2が透明な部材によって形成されており、上記作業の際に型枠本体2を通して合板12の状態を目視で確認できるため、作業者は、合板12に対して型枠本体2を正しい位置に効率よく設置することができる。
【0052】
つぎに、ステップS2において、型枠本体2の上端の四隅に受け具3を1個ずつ設置した後、ビス固定孔8a(
図2(b)を参照)を利用し、ビス13によって型枠本体2の枠体板2dに受け具3を固定する。なお、型枠本体2に枠体板2dが設けられていない場合、型枠本体2に対し一定の位置に受け具3をネジ止めすることが難しい。これに対し、上記構造の荷出し開口用型枠1では、受け具3を型枠本体2の上に設置する際に枠体板2dを利用することができる。したがって、荷出し開口用型枠1によれば、型枠本体2に対して受け具3を常に一定の箇所に固定することができる。
また、型枠本体2に外側板2e、2fが設けられていない場合、受け具3を型枠本体2の枠体板2dの上に配置する際に受け具3が水平方向へずれて型枠本体2から外れてしまう可能性がある。これに対し、上記構造の荷出し開口用型枠1では、受け具3の外側部が型枠本体2の外側板2e、2fでそれぞれ保持されるため、受け具3が不用意に横方向へずれて型枠本体2の枠体板2dの上から外れてしまうおそれがない。したがって、荷出し開口用型枠1によれば、型枠本体2に受け具3を固設する作業を短時間で効率良く行うことができる。
【0053】
その後、
図6(a)に示すように平面視矩形状をなすように配置された二対の桟木5a、5a及び5b、5bをそれらの両端が受け具3によってそれぞれ保持されるように型枠本体2の上に設置した後、外側板2e、2fに設けられたビス固定孔(図示せず)を利用し、ビス(図示せず)によって型枠本体2の外側板2e、2fに二対の桟木5a、5a及び5b、5bをそれぞれ固定する。さらに、互いに平行をなすように配置された一対の桟木5a、5aに一対の桟木5c、5cを直交するように架け渡す(
図6(b)を参照)。その後、ビス(図示せず)を用いて一対の桟木5c、5cを一対の桟木5a、5aに固定する。
【0054】
なお、二対の桟木5a、5a及び5b、5bは、後述するように型枠本体2の周囲にコンクリートが打設された際に、そのコンクリートに押されて型枠本体2が変形することを抑制するように作用する。また、荷出し開口用型枠1では、一対の側板2b、2bが一対の桟木5a、5aを介して一対の桟木5c、5cにそれぞれ固定されているため、上記一対の側板2b、2bの間隔が変化するような変形が型枠本体2に生じ難い。このように、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2の周囲にコンクリートが打設された際に二対の桟木5a、5a及び5b、5b並びに一対の桟木5c、5cによって型枠本体2の変形が抑制されるため、肉厚が薄い型枠本体2を用いることが可能である。
【0055】
また、受け具3が平面視L字状をなす第2の底板3aのみからなる場合、桟木5a、5bを受け具3に固定する作業の途中で桟木5a、5bが水平方向へずれて受け具3から外れてしまう可能性がある。これに対し、荷出し開口用型枠1では、二対の桟木5a、5a及び5b、5bは、端部が第2の底板3aと外板3bと内板3cによって形成される受け具3の凹溝内に配置され、その底部が受け具3の第2の底板3aで保持されるとともに、側部が受け具3の外板3bと内板3cでそれぞれ保持されるため、不用意に横方向へずれて受け具3から外れてしまうおそれがない。したがって、荷出し開口用型枠1によれば、桟木5a、5bの端部を受け具3の内部に設置する作業を短時間で効率良く行うことができる。
【0056】
ステップS3では、型枠本体2の上に配置された受け具3及び桟木5a、5bを上板4aと下板4bによって枠体板2dごと上下から挟むようにして、支柱固定具4を型枠本体2の四隅に設置する(
図7(a)を参照)。そして、2つのビス固定孔8b、8b(
図2(c)及び
図2(d)を参照)を利用し、ビス(図示せず)によって支柱固定具4の上板4aを二対の桟木5a、5a及び5b、5bにそれぞれ固定する。
なお、荷出し開口用型枠1では、支柱6の雄ネジ部6bに螺合している一対のナット10、10の間に支柱固定具4の上板4a及び下板4bが配置されるように各ナット10の位置を調節した後、第3の切り欠き9cの内部に配置した支柱6を接続板4cと平行な状態を維持しながら、上板4a及び下板4bの基端側から先端側へ移動させると、支柱6が第3の切り欠き9cを通って第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bの内部に配置される。また、コンクリートの固化後に支柱6から支柱固定具4を取り外す場合、一対のナット10、10による支柱固定具4への締め付けを緩めた後に、支柱6から遠ざかる方向へ支柱固定具4を水平に移動させるようにすれば、支柱6から支柱固定具4を簡単に取り外すことができる。したがって、荷出し開口用型枠1では、支柱固定具4に支柱6を設置する作業及び支柱固定具4を支柱6から取り外す作業を短時間で効率良く行うことができる。
【0057】
支柱6を型枠本体2に固定する支柱保持手段としては、例えば、外周面に雄ネジ部6bが設けられた支柱6が螺入されるネジ孔を有し、ネジなどによって受け具3に固定される構造を備えた板材が考えられる。コンクリートスラブから型枠本体2を撤去する際に、受け具3を型枠本体2から取り外すとともに受け具3から支柱保持手段と支柱6を取り外す必要があるが、上記構造の支柱保持手段においては、支柱6から板材を取り外すことが容易でない。これに対し、
図2(c)に示した支柱固定具4では、一対のナット10、10による締め付けを緩めることで、支柱6から支柱固定具4を簡単に取り外すことができる。
また、支柱固定具4において、第1の切り欠き9a、第2の切り欠き9b及び第3の切り欠き9cが上板4a、下板4b及び接続板4cに設けられる代わりに、上板4aに支柱6が挿通される第1の貫通孔が設けられるとともに、この第1の貫通孔に挿通された支柱6を連通可能に第2の貫通孔が下板4bに設けられた構造とすることもできる。このような構造の支柱固定具4においては、上板4aの第1の貫通孔と下板4bの第2の貫通孔に支柱6を連通させた状態で上板4aと下板4bを上下から挟むように一対のナット10、10を締め付けることにより支柱6が固定されるという作用を有する。
ただし、この場合には、コンクリートスラブの形成後に支柱6から支柱固定具4を取り外す際に、一対のナット10、10のうち、上方に位置するナット10を緩めて支柱6の上方へ抜き取った後、支柱固定具4を支柱6の上方へ抜き取る必要があるため、
図2(c)に示した支柱固定具4に比べると、支柱6から支柱固定具4を取り外す際の作業性が悪い。
【0058】
つぎに、ステップS4において、合板12の型枠本体2が設置されていない部分に断熱材14を敷き詰める。さらに、ステップS5において、4本の支柱6を合板12に直交し、かつ、先端部が合板12に接触するように型枠本体2の外側に配置した後、4つの支柱固定具4の第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bの内部にそれぞれ1本ずつ配置する。そして、上下のナット10、10(
図2(e)を参照)を締め付けることにより上板4aと下板4bを上下から挟み付けるようにして、支柱6を支柱固定具4に固定する(
図7(b)を参照)。
このとき、桟木5a、5bと受け具3の荷重の一部を4本の支柱6が負担することになるため、型枠本体2が桟木5a、5bと受け具3から受ける荷重が軽減される。したがって、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2の肉厚を薄くすることができる。
【0059】
ステップS6では、合板12がその一部を構成するスラブ形成用型枠(図示せず)の内部に、スラブ筋と呼ばれる複数本の鉄筋(以下、スラブ筋15という。)を格子状に配置するために、型枠本体2にスラブ筋挿通孔を形成する。なお、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2が透明な合成樹脂製であり、ドリルなどの工具を用いることによって、スラブ筋挿通孔(図示せず)を簡単に形成することができるため、型枠本体2が配筋作業の支障になることはない。
そして、ステップS7では、型枠本体2に形成されたスラブ筋挿通孔にスラブ筋15を挿通し、荷出し開口用型枠1の内部に複数本のスラブ筋15を水平に配置する(
図8(a)及び
図8(b)並びに
図9(a)を参照)。
このように、荷出し開口用型枠1によれば、スラブ筋挿通孔の形成が容易であるため、コンクリートスラブが形成された後に荷出し開口として機能する箇所に対して、スラブ筋15を配置する作業を短時間で効率良く行うことができる。
【0060】
ステップS8では、スラブ形成用型枠内において荷出し開口用型枠1の周りにコンクリートを打設して、
図9(b)に示すように支柱6に取り付けられた下側のナット10が埋没しない高さまでコンクリートスラブ16を形成する(
図9(b)を参照)。このとき、型枠本体2によって荷出し開口用型枠1の内部へのコンクリートの侵入が阻まれるため、型枠本体2で周りを囲まれた荷出し開口用型枠1の内部にコンクリートスラブ16が形成されることはない。
また、型枠本体2の第1の底板2aは合板12に対してビス13を用いて隙間が生じないように密着した状態で固定されているため、荷出し開口用型枠1の周りに打設されたコンクリートが型枠本体2の第1の底板2aと合板12の間に入り込むおそれはない。
【0061】
ステップS9では、
図9(c)に示すように、荷出し開口用型枠1の内部において、むき出しの状態となっている全てのスラブ筋15について、その中央部分を切断した後、それらの端部を上方に向けてそれぞれ折り曲げる。なお、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2が下部に比べて上部が広くなるような形状をなしていることから、型枠本体2の上方から作業者が手を伸ばして型枠本体2の内部に配置されているスラブ筋15を切断して折り曲げるという作業を極めて容易に行うことができる。
その後、ステップS10において、荷出し開口用型枠1を撤去する(
図10(a)及び
図10(b)を参照)。具体的には、まず、支柱固定具4の上板4aを桟木5a、5bに固定しているビス(図示せず)を抜いて支柱固定具4を回転させ、上板4aと下板4bの間に受け具3及び桟木5a、5bが配置されていない状態にした後、支柱固定具4を水平に移動させるようにして、第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bの内部に配置されていた支柱6から取り外す。つぎに、桟木5a~5cのビス(図示せず)を抜いて型枠本体2から桟木5a~5cを取り外した後、ビス13を抜いて受け具3を型枠本体2から取り外す。そして、型枠本体2をスラブ筋15から取り外す。
【0062】
なお、ステップS10においてコンクリートスラブ16から撤去しようとする型枠本体2は、
図9(b)に示すようにコンクリートスラブ16の中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブ16の表面に片面が接触した状態となっている。また、型枠本体2は合成樹脂製であるため、木材や金属からなる従来の型枠に比べてコンクリートに対する密着力が弱く、バールなどの工具によって簡単に破壊することができる。そして、型枠本体2は2つの分割体7、7によって構成されており、分割体7ごとにスラブ筋15から取り外せば良いことから、型枠本体2の側板2b、2cに複数本のスラブ筋15が貫通している状態であってもスラブ筋15から型枠本体2を取り外す作業が容易である。
【0063】
型枠本体2の側板2b、2cが鉛直方向と平行に設置されていると、型枠本体2を引き上げようとして第1の底板2aに対して鉛直方向上向きに加えられた力は、側板2b、2cをコンクリートスラブ16から引き剥がす方向には作用しない。そのため、側板2b、2cをコンクリートスラブ16から引き剥がすには、第1の底板2aに対して鉛直方向上向きに加えられる力とは別に水平方向の力を側板2b、2cに加える必要がある。
これに対し、
図9(b)に示すように型枠本体2の側板2b、2cが上方へ向かって次第に広がるような形状をなしている場合には、型枠本体2の第1の底板2aに対して鉛直方向上向きに加えられた力が、側板2b、2cをコンクリートスラブ16から引き剥がす方向にも作用する。すなわち、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2がコンクリートスラブ16から引き剥がし易い構造となっている。
【0064】
また、荷出し開口用型枠1によれば、コンクリートスラブ16の形成後にスラブ形成用型枠の中から簡単に取り出せることに加え、型枠本体2と支柱6を除けば、何度でも再利用することが可能である。さらに、前述したように、周囲にコンクリートが打設された際にコンクリートの圧力による型枠本体2の変形が桟木5a~5cによって抑制されるため、荷出し開口用型枠1では肉厚の薄い型枠本体2を用いることができる。この場合、コンクリートスラブ16から型枠本体2を引き剥がす作業がさらに容易となる。
このように、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2がコンクリートスラブ16から引き剥がし易いため、コンクリートスラブ16の形成後に型枠本体2を撤去する作業を短時間で効率良く行うことができる。
なお、コンクリートスラブ16から取り出した型枠本体2の再利用は困難であるが、荷出し開口用型枠1の型枠本体2の材料費は、従来の金属製の型枠本体に比べると格段に安い。したがって、荷出し開口用型枠1によれば、コンクリートスラブ16の一部に荷出し開口17(
図10(b)を参照)を安価に形成することが可能である。
【0065】
図11(a)に示すように、パイプ固定部材18は、平面視矩形状をなし、四隅にネジ挿通孔19が設けられたベース18aの片面の中央に、円筒状のパイプ支持部18bが立設された構造となっている。ステップS10では、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、荷出し開口17の周囲の4か所において、支柱6の上端がコンクリートスラブ16の上面から突出した状態になっている。そこで、ステップS11では、この支柱6の上端を利用して開口養生(荷出し開口17の周囲に安全柵を設置する作業)を行う。具体的には、まず、ベース18aのネジ挿通孔19の一つに1本の支柱6の上端を挿通させた後、ナット10を締めつけるとともに、他のネジ挿通孔19も利用して、パイプ固定部材18を荷出し開口17の周囲の4か所に固定する。そして、4個のパイプ固定部材18のパイプ支持部18bにパイプ(図示せず)をそれぞれ立てて、この4本のパイプを利用して荷出し開口17の周囲に安全柵(図示せず)を設置する。
【0066】
以上説明したように、荷出し開口用型枠1を用いた荷出し開口17の形成方法においては、コンクリートスラブ16に荷出し開口17を形成する際に、既に説明した荷出し開口用型枠1の作用及び効果が同様に発揮される。
【0067】
なお、荷出し開口用型枠1は、一対の分割体7、7からなる型枠本体2を備えているが、このような構造に限定されるものではない。例えば、一対の分割体7、7は、型枠本体2が第1の底板2aの中央部分において、第1の底板2a及び一対の側板2c、2cに対して直交する平面によって切断された形状をなすものであっても良い。また、型枠本体2を一対の分割体7、7によって構成されたものではなく、一体物とすることもできる。
さらに、桟木5cが側板2b、2bではなく、側板2c、2cに架け渡された構造であっても良い。そして、桟木5cの本数は2本に限らず、適宜変更可能である。また、桟木5aと桟木5bは同じ長さであっても良い。
本発明は、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを構造材料とする多層建築物において床や天井等となるコンクリートスラブに荷出し開口を形成する場合に適用可能である。
1…荷出し開口用型枠 2…型枠本体 2a…第1の底板 2b、2c…側板 2d…枠体板 2e、2f…外側板 3…受け具 3a…第2の底板 3b…外板 3c…内板 4…支柱固定具 4a…上板 4b…下板 4c…接続板 5a~5c…桟木 6…支柱 6a…外周面 6b…雄ネジ部 7…分割体 7a…端面 8a~8b…ビス固定孔 9a…第1の切り欠き 9b…第2の切り欠き 9c…第3の切り欠き 10…ナット 11…凹凸部 12…合板 13…ビス 14…断熱材 15…スラブ筋 16…コンクリートスラブ 17…荷出し開口 18…パイプ固定部材 18a…ベース 18b…パイプ支持部 19…ネジ挿通孔 t…桟木の厚さ w…桟木の幅 L…上板と下板の間隔 T…第2の底板の厚さ W1…第2の底板の幅 W2…外板と内板の幅
前記支柱固定具の前記上板及び前記下板は、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔が設けられる代わりに、前記支柱を内部に配置可能な第1の切り欠き及び第2の切り欠きが前記基端側から先端側へ向かってそれぞれ形成されるとともに、前記接続板に対し、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きを繋ぎ、前記支柱を内部に配置可能な第3の切り欠きが前記上板及び前記下板と直交する方向へ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の荷出し開口用型枠。