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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177019
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231206BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 555
H05B3/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089684
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佐助
【テーマコード(参考)】
2H033
3K092
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB06
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE03
3K092PP18
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB76
3K092RF03
3K092RF09
3K092RF11
3K092RF27
3K092SS13
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】ヒータユニットに温度分布のムラが発生することを抑制できる定着装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の定着装置は、筒状体と、ヒータユニットと、伝熱部材と、を持つ。筒状体は、フィルム状である。ヒータユニットは、筒状体の内側に配置されている。ヒータユニットは、筒状体の軸方向を長手方向とする。ヒータユニットは、通電により発熱する発熱体を含む発熱体セットを持つ。伝熱部材は、接触部と、反対面と、を持つ。接触部は、ヒータユニットに接触する。反対面は、接触部とは反対側を向く。反対面の長手方向の両端は、接触部よりも長手方向の外側にある。接触部の長手方向の両端は、発熱体セットの長手方向の両端よりも長手方向の内側にある。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の筒状体と、
前記筒状体の内側に配置され、前記筒状体の軸方向を長手方向とし、通電により発熱する発熱体を含む発熱体セットを有するヒータユニットと、
前記ヒータユニットに接触する接触部、および前記接触部とは反対側を向くとともに前記長手方向の両端が前記接触部よりも前記長手方向の外側にある反対面を含み、前記接触部の前記長手方向の両端が前記発熱体セットの前記長手方向の両端よりも前記長手方向の内側にある伝熱部材と、
を備える定着装置。
【請求項2】
フィルム状の筒状体と、
前記筒状体の内側に配置され、前記筒状体の軸方向を長手方向とし、通電により発熱する発熱体を含む発熱体セットを有するヒータユニットと、
前記ヒータユニット側を向くヒータ対向面、および前記ヒータ対向面とは反対側を向く反対面を有する伝熱部材と、
を備え、
前記ヒータ対向面は、
前記ヒータユニットに接触するとともに、前記長手方向の両端が前記発熱体セットの前記長手方向の両端よりも前記長手方向の内側にある接触部と、
前記接触部に前記長手方向の両外側で隣接し、前記ヒータユニットに対する前記長手方向の単位長さ当たりの接触面積が前記接触部よりも小さい端部と、
を有する、
定着装置。
【請求項3】
前記伝熱部材の前記長手方向の端部は、前記ヒータユニットに対して非接触である、
請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記伝熱部材の前記長手方向の両端は、前記発熱体セットの前記両端よりも前記長手方向の外側にある、
請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記伝熱部材は、前記ヒータユニットの基板よりも高い熱伝導率を有する、
請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項6】
前記伝熱部材は、前記接触部から前記反対面にわたる単一の部材である、
請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項7】
前記伝熱部材は、
前記接触部を有する第1プレートと、
前記反対面を有するとともに前記第1プレートに重ね合わされ、前記長手方向の両端が前記第1プレートの前記長手方向の両端よりも前記長手方向の外側にある第2プレートと、
を備える、
請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項8】
前記接触部よりも前記長手方向の外側に配置され、前記伝熱部材と前記ヒータユニットとの間に介在する断熱部材をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項9】
前記断熱部材は、前記伝熱部材よりも低い熱伝導率を有する、
請求項8に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置として、シートに画像を形成する画像形成装置が利用されている。画像形成装置は、トナー(記録剤)を加熱してシートに定着させる定着装置を有する。定着装置は、シートに接触して回転する筒状体と、筒状体を加熱するヒータユニットと、を備える。ヒータユニットには、温度分布のムラの発生を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6242471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ヒータユニットに温度分布のムラが発生することを抑制できる定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様に係る定着装置は、筒状体と、ヒータユニットと、伝熱部材と、を持つ。筒状体は、フィルム状である。ヒータユニットは、筒状体の内側に配置されている。ヒータユニットは、筒状体の軸方向を長手方向とする。ヒータユニットは、通電により発熱する発熱体を含む発熱体セットを持つ。伝熱部材は、接触部と、反対面と、を持つ。接触部は、ヒータユニットに接触する。反対面は、接触部とは反対側を向く。反対面の長手方向の両端は、接触部よりも長手方向の外側にある。接触部の長手方向の両端は、発熱体セットの長手方向の両端よりも長手方向の内側にある。
【0006】
第2の態様に係る定着装置は、筒状体と、ヒータユニットと、伝熱部材と、を持つ。筒状体は、フィルム状である。ヒータユニットは、筒状体の内側に配置されている。ヒータユニットは、筒状体の軸方向を長手方向とする。ヒータユニットは、通電により発熱する発熱体を含む発熱体セットを持つ。伝熱部材は、ヒータ対向面と、反対面と、を持つ。ヒータ対向面は、ヒータユニット側を向く。反対面は、ヒータ対向面とは反対側を向く。ヒータ対向面は、接触部と、端部と、を持つ。接触部は、ヒータユニットに接触する。接触部の長手方向の両端は、発熱体セットの長手方向の両端よりも長手方向の内側にある。端部は、接触部に長手方向の両外側で隣接する。端部は、ヒータユニットに対する長手方向の単位長さ当たりの接触面積が接触部よりも小さい。
【0007】
第3の態様に係る定着装置は、上記第1の態様に係る定着装置において、伝熱部材の長手方向の端部がヒータユニットに対して非接触であってもよい。
【0008】
第4の態様に係る定着装置は、上記第1の態様から第3の態様のいずれかの態様に係る定着装置において、伝熱部材の長手方向の両端が発熱体セットの両端よりも長手方向の外側にあってもよい。
【0009】
第5の態様に係る定着装置は、上記第1の態様から第4の態様のいずれかの態様に係る定着装置において、伝熱部材がヒータユニットの基板よりも高い熱伝導率を有してもよい。
【0010】
第6の態様に係る定着装置は、上記第1の態様から第5の態様のいずれかの態様に係る定着装置において、伝熱部材が接触部から反対面にわたる単一の部材であってもよい。
【0011】
第7の態様に係る定着装置は、上記第1の態様から第6の態様のいずれかの態様に係る定着装置において、伝熱部材が、接触部を有する第1プレートと、反対面を有するとともに第1プレートに重ね合わされ、長手方向の両端が第1プレートの長手方向の両端よりも長手方向の外側にある第2プレートと、を備えてもよい。
【0012】
第8の態様に係る定着装置は、上記第1の態様から第7の態様のいずれかの態様に係る定着装置において、接触部よりも長手方向の外側に配置され、伝熱部材とヒータユニットとの間に介在する断熱部材をさらに備えてもよい。
【0013】
第9の態様に係る定着装置は、上記第8の態様に係る定着装置において、断熱部材が伝熱部材よりも低い熱伝導率を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の画像処理装置の概略構成図。
図2】実施形態の画像処理装置のハードウエア構成図。
図3】第1の実施形態の定着装置の正面断面図。
図4図5のIV-IV線におけるヒータユニットの正面断面図。
図5】第1の実施形態のヒータユニットの底面図。
図6】第1の実施形態のヒータ温度計およびサーモスタットの平面図。
図7】第1の実施形態のヒータユニットおよび伝熱部材の断面図。
図8】第1の実施形態の伝熱部材を示す斜視図。
図9】第2の実施形態のヒータユニット、伝熱部材および断熱部材の断面図。
図10】第2の実施形態の伝熱部材および断熱部材を示す斜視図。
図11】第3の実施形態のヒータユニット、伝熱部材および断熱部材の断面図。
図12】第4の実施形態の伝熱部材を示す斜視図。
図13】第5の実施形態のヒータユニットの底面図。
図14】第6の実施形態のヒータユニットの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の定着装置を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付して、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0016】
図1は、実施形態の画像処理装置の概略構成図である。
本実施形態に係る画像処理装置は、例えば、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)プリンタ、複写機等の画像形成装置1である。例えば、画像形成装置1は、ワークプレイスに設置される。画像形成装置1は、シートSに画像を形成する処理を行う。シートSは、用紙でもよい。画像形成装置1は、ハウジング10と、スキャナ部2と、画像形成ユニット3と、シート供給部4と、搬送部5と、排紙トレイ7と、反転ユニット9と、コントロールパネル8と、制御部6と、を有する。
【0017】
ハウジング10は、画像形成装置1の外形を形成する。
スキャナ部2は、複写対象物の画像情報を光の明暗として読み取り、画像信号を生成する。スキャナ部2は、生成した画像信号を画像形成ユニット3に出力する。
画像形成ユニット3は、スキャナ部2から受信した画像信号または外部から受信した画像信号に基づいて、トナー等の記録剤によりトナー像を形成する。画像形成ユニット3は、トナー像をシートSの表面上に転写する。画像形成ユニット3は、シートSの表面上のトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。画像形成ユニット3の詳細は後述される。
【0018】
シート供給部4は、画像形成ユニット3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ搬送部5に供給する。シート供給部4は、シート収容部20と、ピックアップローラ21と、を有する。
シート収容部20は、所定のサイズおよび種類のシートSを収納する。
ピックアップローラ21は、シート収容部20からシートSを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ21は、取り出したシートSを搬送部5へ供給する。
【0019】
搬送部5は、シート供給部4から供給されるシートSを画像形成ユニット3に搬送する。搬送部5は、搬送ローラ23と、レジストローラ24と、を有する。
搬送ローラ23は、ピックアップローラ21から供給されるシートSをレジストローラ24へ搬送する。搬送ローラ23は、シートSの搬送方向の先端をレジストローラ24のニップNに突き当てる。
レジストローラ24は、ニップNにおいてシートSを撓ませることにより、搬送方向でのシートSの先端の位置を整える。レジストローラ24は、画像形成ユニット3がトナー像をシートSに転写するタイミングに応じてシートSを搬送する。
【0020】
画像形成ユニット3について説明する。
画像形成ユニット3は、複数の画像形成部25と、レーザ走査ユニット26と、中間転写ベルト27と、転写部28と、定着装置30と、を有する。
画像形成部25は、感光体ドラム29を有する。画像形成部25は、スキャナ部2または外部からの画像信号に応じたトナー像を感光体ドラム29に形成する。複数の画像形成部25は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーによるトナー像を形成する。
【0021】
感光体ドラム29の周囲には、帯電器、現像器などが配置される。帯電器は、感光体ドラム29の表面を帯電させる。現像器は、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのトナーを含む現像剤を収容する。現像器は、感光体ドラム29上の静電潜像を現像する。この結果、感光体ドラム29上には、各色のトナーによるトナー像が形成される。
【0022】
レーザ走査ユニット26は、帯電した感光体ドラム29にレーザ光Lを走査して感光体ドラム29を露光する。レーザ走査ユニット26は、各色の画像形成部25の感光体ドラム29を、各別のレーザ光LY,LM,LC,LKで露光する。これによりレーザ走査ユニット26は、感光体ドラム29に静電潜像を形成する。
【0023】
中間転写ベルト27には、感光体ドラム29の表面のトナー像が1次転写される。
転写部28は、中間転写ベルト27上に1次転写されたトナー像を2次転写位置においてシートSの表面上に転写する。
定着装置30は、シートSに転写されたトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。定着装置30の詳細は後述される。
【0024】
反転ユニット9は、シートSの裏面に画像を形成するためシートSを反転させる。反転ユニット9は、定着装置30から排出されるシートSを、スイッチバックにより表裏反転させる。反転ユニット9は、反転したシートSをレジストローラ24に向けて搬送する。
排紙トレイ7は、画像が形成されて排出されたシートSを載置する。
コントロールパネル8は、操作者が画像形成装置1を操作するための情報を入力する入力部の一部である。コントロールパネル8は、タッチパネルや各種ハードキーを有する。
制御部6は、画像形成装置1の各部の制御を行う。
【0025】
図2は、実施形態の画像形成装置のハードウエア構成図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、補助記憶装置93などを備え、プログラムを実行する。画像形成装置1は、プログラムの実行によってスキャナ部2、画像形成ユニット3、シート供給部4、搬送部5、反転ユニット9、コントロールパネル8、通信部90を備える装置として機能する。
【0026】
CPU91は、メモリ92および補助記憶装置93に記憶されたプログラムを実行することによって制御部6として機能する。制御部6は、画像形成装置1の各機能部の動作を制御する。
補助記憶装置93は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置93は、情報を記憶する。
通信部90は、自装置を外部装置に接続するための通信インタフェースを含む。通信部90は、通信インタフェースを介して外部装置と通信する。
【0027】
(第1の実施形態)
定着装置30の基本構成について説明する。
図3は、第1の実施形態の定着装置の正面断面図である。
図3に示すように、定着装置30は、加圧ローラ31と、フィルムユニット35と、を有する。加圧ローラ31とフィルムユニット35との間には、定着ニップFNが形成される。加圧ローラ31は、定着ニップFNに進入したシートSのトナー像を加圧する。加圧ローラ31は、自転してシートSを搬送する。フィルムユニット35は、定着ニップFNに進入したシートSのトナー像を加熱する。
【0028】
本願において、z方向、x方向およびy方向が以下のように定義される。z方向は、加圧ローラ31とフィルムユニット35とが並ぶ方向である。+z方向は、フィルムユニット35から加圧ローラ31に向かう方向である。x方向は、定着ニップFNにおけるシートSの搬送方向であり、+x方向はシートSの搬送方向の下流側である。y方向は、z方向およびx方向に直交する方向であり、加圧ローラ31の軸方向である。
【0029】
加圧ローラ31は、芯金32と、弾性層33と、離型層と、を有する。
芯金32は、ステンレス等の金属材料により円柱状に形成される。芯金32の軸方向の両端部は、回転可能に支持される。芯金32は、モータにより回転駆動される。芯金32は、カム部材に当接する。カム部材は、回転することにより、芯金32をフィルムユニット35に対して接近および離反させる。
【0030】
弾性層33は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。弾性層33は、芯金32の外周面上に一定の厚さで形成される。
離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などの樹脂材料で形成される。離型層は、弾性層33の外周面上に形成される。
加圧ローラ31の外周面の硬度は、ASKER-C硬度計で9.8Nの荷重において、40°~70°であることが望ましい。これにより、定着ニップFNの面積と加圧ローラ31の耐久性が確保される。
【0031】
加圧ローラ31は、カム部材の回転によりフィルムユニット35に対して接近および離反することが可能である。加圧ローラ31をフィルムユニット35に接近させ、加圧バネにより押圧すると、定着ニップFNが形成される。一方、定着装置30でシートSのジャムが発生した場合において、加圧ローラ31をフィルムユニット35から離反させることにより、シートSを取り除くことができる。また、スリープ時など筒状体36が回転停止している状態において、加圧ローラ31をフィルムユニット35から離反させることにより、筒状体36の塑性変形が防止される。
【0032】
加圧ローラ31は、モータにより回転駆動されて自転する。定着ニップFNが形成された状態で加圧ローラ31が自転すると、フィルムユニット35の筒状体36が従動回転する。加圧ローラ31は、定着ニップFNにシートSが配置された状態で自転することにより、シートSを搬送方向Wに搬送する。
【0033】
フィルムユニット35は、筒状体36と、ヒータユニット40と、伝熱部材80と、支持部材37と、ステイ38と、感温素子60と、フィルム温度計64と、を有する。
【0034】
筒状体36は、定着ベルトである。筒状体36は、y方向に沿って延びる筒状のフィルムである。筒状体36は、内周側から順に、基層と、弾性層と、離型層と、を有する。基層は、ポリイミド等の材料により筒状に形成される。弾性層は、基層の外周面上に積層配置される。弾性層は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。離型層は、弾性層の外周面上に積層配置される。離型層は、PFA樹脂などの材料で形成される。
【0035】
ヒータユニット40は、筒状体36の内側にある。ヒータユニット40は、y方向を長手方向としx方向を短手方向とする長方形の板状に形成される。x方向およびy方向において、ヒータユニット40の中央に近づく方向を内側といい、ヒータユニット40の中央から離れる方向を外側という場合がある。ヒータユニット40は、+z方向の第1面41と、第1面41とは反対側を向く第2面42と、を有する。ヒータユニット40の第1面41は、筒状体36を加熱する。第1面41は、グリース47を介して筒状体36の内面に接触する。
【0036】
図4は、図5のIV-IV線におけるヒータユニットの正面断面図である。図5は、第1の実施形態のヒータユニットの底面図(+z方向から見た図)である。
図4および図5に示すように、ヒータユニット40は、基板43と、発熱体セット45と、配線セット55と、を有する。
【0037】
基板43は、ステンレス等の金属材料や、窒化アルミニウム等のセラミック材料などで形成される。基板43は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形の板状である。基板43の+z方向の面には、ガラス材料等により絶縁層44が形成される。基板43の-z方向の面は、ヒータユニット40の第2面42である。ヒータユニット40の第2面42は、z方向に直交する平面状に形成されている。
【0038】
図5に示すように、発熱体セット45は、基板43に配置される。発熱体セット45は、少なくとも1つの発熱体50を有する。発熱体50は、銀・パラジウム合金等の材料をスクリーン印刷により基板43に配置することで形成される。発熱体セット45全体の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。発熱体セット45のy方向の両端は、加圧ローラ31のうち筒状体36に接する部分のy方向の両端よりもy方向の内側にある。発熱体セット45のy方向の中心は、定着装置30を通過するシートSの幅中心と一致する。発熱体セット45のx方向の中心hcは、基板43のx方向の中心pcより-x方向に配置される。
【0039】
発熱体セット45は、複数の発熱体50を有する。複数の発熱体50は、y方向に並んで配置された、第1端部発熱体51と、中央部発熱体52と、第2端部発熱体53と、を有する。中央部発熱体52は、発熱体セット45のy方向の中央部に配置される。中央部発熱体52は、y方向に並んで配置される複数の小発熱体を組み合わせて構成されてもよい。第1端部発熱体51は、中央部発熱体52の+y方向であって、発熱体セット45の+y方向の端部に配置される。第2端部発熱体53は、中央部発熱体52の-y方向であって、発熱体セット45の-y方向の端部に配置される。中央部発熱体52のy方向の長さは、定着装置30を通過するシートSの最小幅よりも大きい。中央部発熱体52のy方向の長さは、定着装置30を通過するシートSの最大幅よりも小さい。発熱体セット45のy方向の長さは、定着装置30を通過するシートSの最大幅よりも大きい。発熱体セット45のy方向の長さは、第1端部発熱体51の+y方向の端縁と、第2端部発熱体53の-y方向の端縁と、の距離である。
【0040】
各発熱体50には、配線セット55の配線が接続される。発熱体セット45は、配線セット55を介して通電されることにより発熱する。y方向の幅が小さいシートSは、定着装置30のy方向の中央部を通過する。この場合に制御部6は、複数の発熱体50のうち内側に位置する中央部発熱体52のみを発熱させる。一方で制御部6は、y方向の幅が大きいシートSの場合に、全ての発熱体50を発熱させる。
【0041】
図4に示すように、絶縁層44の+z方向の面に、発熱体セット45および配線セット55が形成される。発熱体セット45および配線セット55を覆うように、ガラス材料等により保護層46が形成される。保護層46は、ヒータユニット40の第1面41を形成する。ヒータユニット40が発熱すると、保護層46と筒状体36との間のグリース47の粘度が低下するので、ヒータユニット40と筒状体36との摺動性が確保される。
【0042】
基板43の+z方向に形成される絶縁層44と同様に、基板43の-z方向に絶縁層44が形成されてもよい。基板43の+z方向に形成される保護層46と同様に、基板43の-z方向に保護層46が形成されてもよい。これにより、基板43の反りが抑制される。
【0043】
図3に示すように、加圧ローラ31の中心rcとフィルムユニット35の中心fcとを結ぶ直線CLが定義される。基板43のx方向の中心pcは、直線CLより、+x方向に配置される。発熱体セット45のx方向の中心hcは、直線CL上に配置される。発熱体セット45の全体は、定着ニップFNの領域内に含まれて、定着ニップFNの中心に配置される。これにより、定着ニップFNの熱分布が均等になり、定着ニップFNを通過するシートSが均等に加熱される。
【0044】
伝熱部材80は、ヒータユニット40に重なる。伝熱部材80は、ヒータユニット40の第2面42の少なくとも一部に接触する。伝熱部材80は、ヒータユニット40の温度分布を均す。伝熱部材80は、ヒータユニット40の基板43の外形に対応する長方形の板状である。
【0045】
支持部材37は、液晶ポリマーなどの樹脂材料により形成される。支持部材37は、y方向に長さを持つ。支持部材37は、ヒータユニット40の-z方向と、x方向の両側とを覆うように配置される。支持部材37は、伝熱部材80を介してヒータユニット40を保持する。支持部材37のx方向の両端部には丸面取りが形成される。支持部材37は、ヒータユニット40のx方向の両端部において、筒状体36の内周面を支持する。
【0046】
支持部材37は、基部70と、上流側壁部71と、下流側壁部72と、を備える。基部70は、ヒータユニット40を第2面42側から支持する。上流側壁部71は、基部70の-x方向の端部から加圧ローラ31側に突出している。下流側壁部72は、基部70の+x方向の端部から加圧ローラ31側に突出している。上流側壁部71と下流側壁部72との間に、ヒータユニット40が配置される。
【0047】
ステイ38は、鋼板材料等により形成される。ステイ38はy方向に長さを有する。ステイ38のy方向に垂直な断面はU字状である。ステイ38は、U字の開口部を支持部材37の基部70で塞ぐように、支持部材37の-z方向に装着される。ステイ38のy方向の両端部は、画像形成装置1のハウジング10に固定される。これにより、フィルムユニット35が画像形成装置1に支持される。ステイ38は、フィルムユニット35の曲げ剛性を向上させる。
【0048】
感温素子60は、ヒータユニット40の-z方向に配置される。感温素子60は、伝熱部材80の-z方向の表面に接する。感温素子60は、支持部材37の基部70をz方向に貫通する孔の内側に配置される。感温素子60の配線は、支持部材37の孔から-z方向に引き出される。感温素子60は、ヒータ温度計61およびサーモスタット62である。例えば、ヒータ温度計61はサーミスタである。
【0049】
図6は、第1の実施形態のヒータ温度計およびサーモスタットの平面図(-z方向から見た図)である。図6では、支持部材37の記載が省略されている。
図6に示すように、ヒータ温度計61は、中央部ヒータ温度計611と、端部ヒータ温度計612と、を有する。サーモスタット62は、中央部サーモスタット621と、端部サーモスタット622と、を有する。中央部発熱体52の-z方向に、中央部ヒータ温度計611および中央部サーモスタット621が配置される。一方、第1端部発熱体51および第2端部発熱体53の-z方向に、端部ヒータ温度計612および端部サーモスタット622が配置される。
【0050】
ヒータ温度計61は、伝熱部材80を介してヒータユニット40の温度を検知する。
制御部6(図1参照)は、定着装置30の始動時に、ヒータ温度計61により発熱体セット45の温度を計測する。発熱体セット45の温度が所定温度より低い場合に、制御部6は、発熱体セット45を短時間だけ発熱させる。その後に制御部6は、加圧ローラ31の回転を開始する。発熱体セット45の発熱により、筒状体36の内周面に塗布されたグリース47の粘度が低下する。これにより、加圧ローラ31の回転開始時におけるヒータユニット40と筒状体36との摺動性が確保される。
【0051】
ヒータ温度計61は、伝熱部材80の温度を検知する。
制御部6は、定着装置30の運転時に、ヒータ温度計61により伝熱部材80の温度を計測する。制御部6は、伝熱部材80の温度計測結果に基づいて、発熱体セット45への通電を制御する。これにより、支持部材37に接触する伝熱部材80の温度が、支持部材37の耐熱温度未満に維持される。
【0052】
サーモスタット62は、伝熱部材80を介して検知したヒータユニット40の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電を遮断する。その結果、ヒータユニット40による筒状体36の過剰な加熱が抑制される。
【0053】
図3に示すように、フィルム温度計64は、筒状体36の一部の内周面に接する。フィルム温度計64は、y方向に間隔をあけて並んでいる。フィルム温度計64は、筒状体36におけるy方向で互いに異なる部分の温度を検知する。
【0054】
制御部6は、定着装置30の運転時に、フィルム温度計64により筒状体36のy方向の各部の温度を計測する。制御部6は、筒状体36のy方向の各部の温度計測結果に基づいて、発熱体セット45への通電を制御する。
【0055】
第1の実施形態の伝熱部材80について詳述する。
図7は、第1の実施形態のヒータユニットおよび伝熱部材のyz断面をx方向から見た図である。図8は、第1の実施形態の伝熱部材を示す斜視図である。
【0056】
図7および図8に示すように、伝熱部材80は、薄板状である。伝熱部材80は、ヒータユニット40の基板43よりも高い熱伝導率を有する材料により形成されている。伝熱部材80は、銅やアルミニウム等の比較的熱伝導率の高い金属材料により形成されている。伝熱部材80の厚み方向は、z方向に沿う。伝熱部材80は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形である。伝熱部材80は、ヒータユニット40の第2面42に接触する。伝熱部材80は、z方向から見た平面視で全ての発熱体50に重なる。伝熱部材80は、平面視で発熱体セット45の全体に重なる。伝熱部材80のy方向の中心は、発熱体セット45のy方向の中心と一致する。伝熱部材80のy方向の両端は、発熱体セット45のy方向の両端よりもy方向の外側にある。伝熱部材80のy方向の長さは、定着装置30を通過するシートSの最大幅以上である。伝熱部材80のy方向の両端は、加圧ローラ31のうち筒状体36に接する部分のy方向の両端よりもy方向の外側にある。
【0057】
伝熱部材80は、単一の部材である。伝熱部材80は、ヒータユニット40側を向くヒータ対向面81と、ヒータ対向面81とは反対側を向く反対面84と、を有する。伝熱部材80は、ヒータ対向面81の全体から反対面84の全体にわたって単一の部材として構成されているが、互いに熱的に連続する複数の部材で構成されてもよい。
【0058】
ヒータ対向面81のy方向の中心は、発熱体セット45のy方向の中心と一致する。ヒータ対向面81は、y方向の中間部に形成されてヒータユニット40の第2面42に接触する接触部82と、接触部82にy方向の両外側で隣接する一対の端部83と、を備える。
【0059】
接触部82は、x方向およびy方向に沿う平坦面である。接触部82は、x方向およびy方向の全長にわたってヒータユニット40に接触する。接触部82は、平面視で矩形状に形成されている。接触部82のy方向の中心は、ヒータ対向面81のy方向の中心と一致する。接触部82のy方向の両端は、発熱体セット45のy方向の両端よりもy方向の内側にある。接触部82のy方向の長さは、定着装置30を通過するシートSの最大幅以上である。
【0060】
各端部83は、x方向およびy方向に沿う平坦面である。各端部83は、接触部82のy方向の端縁に対して、y方向の外側を向く段差面を介して接続している。各端部83の全体は、ヒータユニット40の第2面42に対して非接触である。ヒータユニット40に対する各端部83のy方向の単位長さ当たりの接触面積は、ヒータユニット40に対する接触部82のy方向の単位長さ当たりの接触面積よりも小さい。本実施形態では、各端部83の全体がヒータユニット40に対して隙間を有しているので、ヒータユニット40に対する各端部83のy方向の単位長さ当たりの接触面積は0である。
【0061】
反対面84は、x方向およびy方向に沿う平坦面である。反対面84の外形は、平面視で伝熱部材80の外形に一致している。反対面84のy方向の両端は、ヒータ対向面81の接触部82よりもy方向の外側にある。反対面84は、支持部材37の基部70側を向いている。反対面84は、支持部材37の基部70に直接接触していてもよいし、支持部材37の基部70との間に他の部材を介在していてもよい。
【0062】
本実施形態の定着装置30および画像形成装置1の作用を説明する。
定着装置30の筒状体36を加熱するにあたって発熱体セット45を発熱させると、ヒータユニット40に温度分布が発生する。特にヒータユニット40の加熱初期にはヒータユニット40が伝熱部材80よりも高温となるので、ヒータユニット40から伝熱部材80に熱が逃げてヒータユニット40の温度分布にムラが生じやすい。
【0063】
本実施形態では、伝熱部材80のヒータ対向面81は、ヒータユニット40に接触する接触部82と、接触部82にy方向の両外側で隣接する端部83と、を持つ。接触部82のy方向の両端が発熱体セット45のy方向の両端よりもy方向の内側にある。端部83のヒータユニット40に対するy方向の単位長さ当たりの接触面積は、接触部82のヒータユニット40に対するy方向の単位長さ当たりの接触面積よりも小さい。
【0064】
この構成により、発熱体セット45のy方向の両端に対応する位置を避けるように伝熱部材80のヒータ対向面81の接触部82が設けられる。発熱体セット45において特に熱が逃げやすいy方向の端部から伝熱部材80に熱が移動することを抑制できる。したがって、ヒータユニット40における発熱体セット45の端部に対応する箇所が発熱体セット45の中間部に対応する箇所よりも低温になることを抑制できる。
【0065】
さらに、ヒータ対向面81において接触部82には端部83が隣接しているので、伝熱部材のy方向の全長が接触部のy方向の全長と一致する構成と比較して、ヒータ対向面81とは反対側を向く反対面84をy方向に拡大できる。これにより、伝熱部材80内でヒータ対向面81の接触部82から反対面84に移動する熱をy方向に拡散できる。よって、伝熱部材80の反対面84の温度上昇を抑制して、伝熱部材80に対してヒータユニット40とは反対側に配置された支持部材37の温度上昇に起因する破損を抑制できる。
【0066】
しかも、ヒータ対向面81の端部83はヒータユニット40に対して非接触である。この構成によれば、ヒータ対向面の端部がヒータユニットに接触する構成と比較して、ヒータユニット40の加熱初期に発熱体セット45のy方向の端部から伝熱部材80に熱が移動することをより効果的に抑制できる。
【0067】
ところで、ヒータユニット40の加熱開始後、定着装置30にシートSを通過させると、ヒータユニット40からシートSに熱が移動する。ヒータユニット40からシートSに熱が移動することで、ヒータユニット40のうちシートSの通過範囲に対応するy方向の中央部に温度低下が生じうる。中央部の温度低下を抑制するために発熱体セット45を発熱させると、発熱体セット45のうちシートSの通過範囲外にあるy方向の端部がさらに高温になる。
【0068】
本実施形態では、伝熱部材80のヒータ対向面81における接触部82のy方向の長さがシートSの最大幅以上なので、発熱体セット45のy方向の端部から接触部82のy方向の端部を通じて伝熱部材80に熱を効率よく移動させることができる。したがって、シートSを通過させた定着装置30においてヒータユニット40の温度分布を均すことができる。
【0069】
さらに本実施形態では、伝熱部材80の反対面84のy方向の両端が接触部82のy方向の両端よりもy方向の外側にあるので、高温となった接触部82のy方向の端部の熱を反対面84に向けてy方向の外側にも拡散することができる。したがって、伝熱部材80の反対面84の局所的な温度上昇を抑制して、伝熱部材80に対してヒータユニット40とは反対側に配置された支持部材37の温度上昇に起因する破損を抑制できる。
【0070】
伝熱部材80のy方向の両端は、発熱体セット45のy方向の両端よりもy方向の外側にある。この構成によれば、反対面84が発熱体セット45よりもy方向に長く形成されるので、シートSが連続して定着装置30を通過した際に、伝熱部材80のうちy方向においてシートSの通過範囲外にある箇所の温度上昇を抑制できる。したがって、支持部材37の温度上昇に起因する破損を抑制できる。
【0071】
伝熱部材80は、ヒータユニット40の基板43よりも高い熱伝導率を有する。この構成により、伝熱部材80は、基板43内よりも高速で熱伝導することができる。したがって、ヒータユニット40の温度分布を効率よく均すことができる。
【0072】
例えば、伝熱部材が複数の部材によって構成され、ヒータ対向面の接触部と反対面との間に部材同士の接合部が形成されている場合、接合部において熱の移動が阻害される可能性がある。本実施形態では、伝熱部材80は、ヒータ対向面81の接触部82から反対面84にわたる単一の部材である。この構成によれば、ヒータ対向面の接触部と反対面との間に部材同士の接合部が形成されている場合と比較して、伝熱部材80内でヒータ対向面81の接触部82から反対面84に熱を効率よく移動させることができる。よって、伝熱部材80の厚み方向の全体を使って熱を効率よく拡散することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のフィルムユニット35について、図9および図10を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図9は、第2の実施形態のヒータユニット、伝熱部材および断熱部材のyz断面をx方向から見た図である。図10は、第2の実施形態の伝熱部材および断熱部材を示す斜視図である。
【0074】
第2の実施形態では、伝熱部材80のヒータ対向面81の端部83とヒータユニット40の第2面42との間に断熱部材86が介在する点で、第1の実施形態と異なる。断熱部材86は、ヒータ対向面81の接触部82よりもy方向の外側に配置されている。断熱部材86は、ヒータ対向面81の端部83およびヒータユニット40の第2面42に接触して、互いの接近を規制している。断熱部材86は、伝熱部材80よりも低い熱伝導率を有する材料により形成されている。例えば、断熱部材86は、樹脂やフェルトなどによって形成されている。断熱部材86を形成する樹脂は、支持部材37を形成する樹脂と同じであってもよい。断熱部材86の形状は、平面視でヒータ対向面81の端部83の形状と一致している。ただし、断熱部材86の形状は、平面視でヒータ対向面81の端部83の形状と一致していなくてもよい。例えば、断熱部材86は、平面視でヒータ対向面81の端部83よりも小さくてもよい。
【0075】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、ヒータユニット40が加圧ローラ31に押圧されてヒータ対向面81の端部83に近づくように撓むことを断熱部材86によって抑制できる。したがって、定着ニップFNをy方向の所望の範囲に確実に形成できる。
【0076】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の伝熱部材180について、図11を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図11は、第3の実施形態のヒータユニット、伝熱部材および断熱部材のyz断面をx方向から見た図である。
【0077】
第1の実施形態では、伝熱部材80が単一の部材である。これに対して第3の実施形態では、伝熱部材180が複数の部材によって形成されている点で、第1の実施形態と異なる。伝熱部材180は、第1プレート187および第2プレート188を重ね合わせて形成されている。第1プレート187および第2プレート188は、銅やアルミニウム等の比較的熱伝導率の高い金属材料やグラファイトシート等により形成されている。第1プレート187および第2プレート188それぞれの厚み方向は、伝熱部材180の厚み方向に沿う。
【0078】
第1プレート187は、第2プレート188とヒータユニット40との間にある。第1プレート187は、y方向を長手方向とする矩形状に形成されている。第1プレート187は、ヒータ対向面81の接触部82を有する。第2プレート188は、第1プレート187にヒータユニット40とは反対側から重ね合されている。第2プレート188は、y方向を長手方向とする矩形状に形成されている。第2プレート188は、x方向において第1プレート187と同じ幅を持つ。第2プレート188のy方向の両端は、第1プレート187のy方向の両端よりもy方向の外側にある。第2プレート188の外形は、平面視で伝熱部材180の外形と一致している。第2プレート188は、伝熱部材180の反対面84の全体を有する。第2プレート188は、第1プレート187よりもy方向の外側にヒータ対向面81の端部83を持つ。第2プレート188は、第1プレート187に接合していてもよい。第1プレート187と第2プレート188との間に優れた熱伝導性を持つグリース等を配置してもよい。
【0079】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では第1プレート187および第2プレート188を重ね合わせることでヒータ対向面81に接触部82および端部83を形成できるので、伝熱部材180を容易に形成できる。
【0080】
さらに、本実施形態の伝熱部材180に対して、第2の実施形態の断熱部材86を組み合わせてもよい。この構成によれば、伝熱部材180のy方向の端部がヒータユニット40側に撓むことを断熱部材86によって規制できる。したがって、伝熱部材180を所望の形状に維持することができる。特に第1プレート187および第2プレート188が可撓性を有するグラファイトシートにより形成されている場合に効果的である。
【0081】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の伝熱部材280について、図12を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図12は、第4の実施形態の伝熱部材を示す斜視図である。
【0082】
第1の実施形態では、伝熱部材80のヒータ対向面81の端部83の全体がヒータユニット40に対して非接触である。これに対して第4の実施形態では、ヒータ対向面281の端部283がヒータユニット40への接触を避ける凹部289を有している点で、第1の実施形態と異なる。
【0083】
伝熱部材280のヒータ対向面281の端部283には、凹部289が形成されている。凹部289は、底面を有していてもよいし、伝熱部材280をz方向に貫通していてもよい。端部283は、凹部289を有することで、ヒータユニット40の第2面42への接触面積を減らしている。その結果、ヒータユニット40に対する各端部283のy方向の単位長さ当たりの接触面積は、ヒータユニット40に対する接触部282のy方向の単位長さ当たりの接触面積よりも小さい。
【0084】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態ではヒータ対向面281の端部283がヒータユニット40に接触しているので、ヒータユニット40が加圧ローラ31に押圧されて伝熱部材280側に撓むことを抑制できる。したがって、定着ニップFNをy方向の所望の範囲に確実に形成できる。
【0085】
(第5の実施形態)
第5の実施形態のヒータユニット340について、図13を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図13は、第5の実施形態のヒータユニットの底面図である。
【0086】
第5の実施形態では、ヒータユニット340の発熱体350の配置が第1の実施形態とは異なる。ヒータユニット340は、基板43と、発熱体セット345と、配線セット355と、を有する。
【0087】
発熱体セット345は、基板43に配置される。発熱体セット345全体の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。
発熱体セット345は、複数の発熱体350を有する。複数の発熱体350は、一対の第1発熱体351と、第2発熱体352と、第3発熱体353と、を有する。複数の発熱体350は、x方向において、一方の第1発熱体351、第2発熱体352、第3発熱体353、他方の第1発熱体351、の順に配置されている。各発熱体350は、y方向を長手方向とする。各発熱体350は、種々のシート幅に対応した長さを持つ。第2発熱体352は、第1発熱体351よりもy方向で短い。第2発熱体352のy方向の両端は、第1発熱体351のy方向の両端よりも内側にある。第3発熱体353は、第2発熱体352よりもy方向で短い。第3発熱体353のy方向の両端は、第2発熱体352のy方向の両端よりも内側にある。各発熱体350には、配線セット355の配線が接続される。発熱体セット345は、配線セット355を介して通電されることにより発熱する。制御部6は、通過するシートSの幅に合わせて、対応する発熱体350を発熱させる。
【0088】
以上に説明した第5の実施形態においても、上記実施形態と同様に伝熱部材80,180,280をヒータユニット340に重ね合わせてもよい。この場合、ヒータ対向面81の接触部82のy方向の両端を、発熱体セット345のy方向の両端よりもy方向の内側に配置することで、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0089】
(第6の実施形態)
第6の実施形態のヒータユニット440について、図14を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図14は、第6の実施形態のヒータユニットの底面図である。
【0090】
第6の実施形態では、ヒータユニット440の発熱体450の配置が第1の実施形態とは異なる。ヒータユニット440は、基板43と、発熱体セット445と、配線セット455と、を有する。
【0091】
発熱体セット445は、基板43に配置される。発熱体セット445全体の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。
発熱体セット445は、複数の発熱体450を有する。複数の発熱体450は、一対の第1発熱体451と、第2発熱体452と、を有する。複数の発熱体450は、x方向において、一方の第1発熱体451、第2発熱体452、他方の第1発熱体451、の順に配置されている。各発熱体450は、y方向を長手方向とする。第1発熱体451は、y方向の中央から端部に向かうに従い太くなっている。y方向において一対の第1発熱体451の両端は、互いに略同じ位置にある。第2発熱体452は、y方向の中央から端部に向かうに従い細くなっている。y方向において第2発熱体452の両端は、各第1発熱体451の両端と略同じ位置にある。
【0092】
各発熱体450には、配線セット455の配線が接続される。発熱体セット445は、配線セット455を介して通電されることにより発熱する。制御部6は、通過するシートSの幅に合わせて、対応する発熱体450を発熱させる。第1発熱体451のみを発熱させた場合、発熱体セット445の発熱量は、y方向の中央から端部に向かうに従い小さくなる。一方で、一対の第1発熱体451および第2発熱体452を同時に発熱させた場合、発熱体セット445の発熱量は、第1発熱体451のみを発熱させた場合よりも、y方向の全長にわたって平均化される。したがって、制御部6は、小さめの幅のシートSが通過する場合に、第1発熱体451のみに通電する。制御部6は、大きめの幅のシートSが通過する場合に、第1発熱体451および第2発熱体452に通電する。
【0093】
以上に説明した第6の実施形態においても、上記実施形態と同様に伝熱部材80,180,280をヒータユニット440に重ね合わせてもよい。この場合、ヒータ対向面81の接触部82のy方向の両端を、発熱体セット445のy方向の両端よりもy方向の内側に配置することで、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0094】
上記実施形態では、ヒータユニット40の第1面41が筒状体36の内面に接触しているが、ヒータユニットの第1面と筒状体の内周面との間に、他の均熱部材が介在していてもよい。
【0095】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、伝熱部材の接触部の長手方向の両端が発熱体セットの長手方向の両端よりも長手方向の内側にあり、伝熱部材の反対面の長手方向の両端が接触部よりも長手方向の外側にあることにより、ヒータユニットにおける発熱体セットの端部に対応する箇所が発熱体セットの中間部に対応する箇所よりも低温になることを抑制できるとともに、伝熱部材の反対面の温度上昇を抑制して、伝熱部材に対してヒータユニットとは反対側に配置された支持部材の温度上昇に起因する破損を抑制できる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
30…定着装置、36…筒状体、40,340,440…ヒータユニット、43…基板、45,345,445…発熱体セット、50,350,450…発熱体、80,180,280…伝熱部材、81,281…ヒータ対向面、82,282…接触部、83,283…端部、84…反対面、86…断熱部材、187…第1プレート、188…第2プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14