IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-スポンジローラ 図1
  • 特開-スポンジローラ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177021
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】スポンジローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231206BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G03G15/20 515
F16C13/00 A
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089690
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 優樹
【テーマコード(参考)】
2H033
3J103
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033BB02
2H033BB05
2H033BB08
2H033BB12
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB26
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB31
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA23
3J103AA35
3J103BA34
3J103BA41
3J103FA10
3J103GA02
3J103GA27
3J103GA33
3J103GA66
3J103GA74
3J103HA02
3J103HA12
3J103HA18
3J103HA60
(57)【要約】
【課題】発泡弾性層の引裂き強度が向上したスポンジローラを提供する。
【解決手段】本発明は、軸体2と、軸体2の外周に発泡弾性層3とを備えるスポンジローラ1であって、発泡弾性層3が、ミラブル型シリコーンゴム、カーボンナノチューブ、発泡剤、及び架橋剤を含む発泡弾性層用組成物から形成され、カーボンナノチューブの配合量が、ミラブル型シリコーンゴム100質量部に対し、0.01質量部以上1.0質量部以下であるスポンジローラ1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体の外周に発泡弾性層とを備えるスポンジローラであって、
前記発泡弾性層が、ミラブル型シリコーンゴム、カーボンナノチューブ、発泡剤、及び架橋剤を含む発泡弾性層用組成物から形成され、
前記カーボンナノチューブの配合量が、前記ミラブル型シリコーンゴム100質量部に対し、0.01質量部以上1.0質量部以下であるスポンジローラ。
【請求項2】
前記発泡弾性層の外周に被覆層を備え、前記被覆層が、フッ素樹脂チューブである請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項4】
前記発泡弾性層用組成物が、前記発泡剤として化学発泡剤及び未膨張マイクロバルーンの少なくとも一方を含む請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項5】
前記発泡弾性層用組成物のうち発泡剤を除いたゴム組成物で作製したシリコーンゴムの引裂き強度が、前記カーボンナノチューブを含有しない前記ゴム組成物から作製したシリコーンゴムの引裂き強度に対し、1.05倍以上1.5倍以下である請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項6】
前記スポンジローラが、定着ローラ又は加圧ローラである請求項1から5いずれか1項記載のスポンジローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジローラに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、二次転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種印刷用スポンジローラを備えている。
【0003】
これらのスポンジローラの中でも、例えば、加圧ローラ、定着ローラ等は、記録部材にトナーを定着させるために圧力がかかるうえ、無端ベルトが巻き掛けられて記録部材を搬送するため、横方向の力も加わる。このようなスポンジローラにおいては、ゴム物性としての引裂き強度が高いことが望まれる。
【0004】
一方、近年では、カーボンブラックに替えてカーボンナノチューブを弾性層に含有させて、高い熱伝導率を実現した定着部材が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-36752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボンブラックを添加することにより、ゴムの引裂き強度が上がることが知られているが、その添加量は比較的多いため、圧縮永久歪、反発弾性率等の他のゴム物性を低下させるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ゴム物性を低下させることなく、発泡弾性層の引裂き強度が向上したスポンジローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、カーボンブラックの代わりに、カーボンナノチューブを用いることにより、少量の添加で、一部のゴム物性を維持したまま引裂き強度を向上できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、軸体と、軸体の外周に発泡弾性層とを備えるスポンジローラであって、発泡弾性層が、ミラブル型シリコーンゴム、カーボンナノチューブ、発泡剤、及び架橋剤を含む発泡弾性層用組成物から形成され、カーボンナノチューブの配合量が、ミラブル型シリコーンゴム100質量部に対し、0.01質量部以上1.0質量部以下であるスポンジローラである。
【0008】
発泡弾性層の外周に被覆層を備え、被覆層が、フッ素樹脂チューブであることが好ましい。
【0009】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0010】
発泡弾性層用組成物は、発泡剤として化学発泡剤及び未膨張マイクロバルーンの少なくとも一方を含んでもよい。
【0011】
発泡弾性層用組成物のうち発泡剤を除いたゴム組成物で作製したシリコーンゴムの引裂き強度が、カーボンナノチューブを含有しないゴム組成物から作製したシリコーンゴムの引裂き強度に対し、1.1倍以上1.5倍以下であることが好ましい。
【0012】
スポンジローラは、定着ローラ又は加圧ローラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡弾性層の引裂き強度が向上したスポンジローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のスポンジローラの一実施形態を示す斜視図である。
図2】圧縮永久歪の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[スポンジローラ]
図1に示すように、本発明のスポンジローラ1は、軸体2と、軸体2の外周に発泡弾性層3とを備えるスポンジローラである。
以下に、各構成の詳細を説明する。
【0016】
<軸体>
軸体2は、好ましくは導電特性を有する、従来公知のスポンジローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0017】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0018】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0019】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0020】
<発泡弾性層>
発泡弾性層3は、適切なニップ幅とニップ圧をもって対象物に押圧可能な硬度や弾性をスポンジローラ1に付与するために設けられる。
発泡弾性層3は、発泡弾性層用組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。発泡弾性層用組成物は、(A)ミラブル型シリコーンゴム、(B)カーボンナノチューブ、(C)発泡剤、及び(D)架橋剤を含有する。
【0021】
(A)ミラブル型シリコーンゴム
ミラブル型シリコーンゴムとしては、付加硬化型のミラブル型シリコーンゴムが好ましい。付加硬化型のミラブル型シリコーンゴムは、例えば、少なくとも(a)オルガノポリシロキサン及び(b)充填剤を含有するものが好ましい。
【0022】
(a)オルガノポリシロキサン
(a)オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示される。
SiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0023】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、Rは、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0024】
(a)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。
【0025】
(a)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、Rのうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0026】
(a)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(a)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(a)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0027】
(a)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。
また、(a)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0028】
(b)充填剤
(b)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0029】
シリカ系充填材としては、RSi(ORで示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、Rは、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。Rはアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0030】
シリカ系充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0031】
本発明におけるミラブル型シリコーンゴムは、例として、信越化学工業株式会社製のKE-571-U、KE-1571-U、KE-951-U、KE-541-U、KE-551-U、KE-561-U、KE-961T-U、KE-1541-U、KE-1551-U、KE-941-U、KE-971T-U等を使用することができる。また、導電性付与剤を含有しているミラブル型シリコーンゴムとしては、KE-87C-40PU等を使用することができる。
【0032】
(B)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブの配合量は、ミラブル型シリコーンゴム100質量部に対し0.01質量部以上1.0質量部以下である。0.01質量部以上であることにより、カーボンナノチューブの効果、すなわち、所望の導電性を付与でき、1.0質量部以下であることにより、他パラメータの物性値を著しく下げることなく、引き裂き強度を向上させることができる。
本発明において用いるカーボンナノチューブは、平均長さが、5μm以上であり、外径が、1nm以上2nm以下であることが好ましい。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、単層であっても多層であってもよいが、半導体領域を維持したまま、極めて高弾性で破断しづらい単層のカーボンナノチューブが好ましい。例えば、単層カーボンナノチューブであれば、電気伝導性は、10~10S/m、密度は、1.8~2.0g/cmであるものが挙げられる。
【0033】
(C)発泡剤
発泡剤としては、発泡弾性層3の形成に用いられる既知の発泡剤を用いることができる。例えば、化学発泡剤及び未膨張マイクロバルーンの少なくとも一方を用いることができる。
化学発泡剤であれば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物の中でも、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が好適に使用される。特に、アゾビス-イソブチロニトリルが好適に使用できる。
【0034】
未膨張マイクロバルーンとして、樹脂マイクロバルーンを挙げることができる。樹脂マイクロバルーンとしては、外殻に熱可塑性樹脂を用いたものが好ましく用いられる。外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体、メタアクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。シリコーンゴムの硬化温度に合わせて、外殻となる樹脂の軟化温度が適当な範囲内にある樹脂マイクロバルーンを用いることが好ましい。また、内包される蒸発性物質としては、ブタン、イソブタン等の炭化水素を挙げることができる。
未膨張マイクロバルーンの平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明に好適な未膨張マイクロバルーンは、「マツモトマイクロスフェアーFシリーズ」(松本油脂製薬株式会社製)、「エクスパンセルシリーズ」(エクスパンセル社製)等として市販されている。この発明に好適な未膨張の樹脂マイクロバルーンは、発泡弾性層3を形成するのに使用される化学発泡剤の分解温度よりも高い温度で膨張する機能を有する樹脂マイクロバルーンから選択される。
発泡剤の配合量は、発泡弾性層用組成物100質量部に対しての低比重でありながら、大きさが均一なセルを得る観点から、0.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0036】
(D)架橋剤
架橋剤としては、付加反応架橋剤、有機過酸化物架橋剤等を挙げることができる。
上記付加反応架橋剤として、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
付加反応架橋剤の配合量は、通常、発泡弾性層用組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。
付加反応架橋剤を使用する場合、有機過酸化物架橋剤は、単独でミラブル型シリコーンゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すると、得られる定着ローラ又は加圧ローラの強度、歪み等の物性をより一層向上させることができる。
【0037】
有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
有機過酸化物架橋剤の配合量は、通常、発泡弾性層用組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0038】
付加反応架橋剤は、付加反応触媒を併用するのが好ましい。付加反応触媒は、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができる。
【0039】
また、発泡弾性層用樹脂組成物は、各種の添加剤が含有されてもよい。各種の添加剤として、例えば鎖延長剤等の助剤、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、シリカ系以外の充填材として、例えばガラスビーズ、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0040】
発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。発泡弾性層用樹脂組成物の硬化方法は組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよい。また、発泡弾性層3の成形方法も、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、押出成形等を選択することができる。また、軸体2上に形成された発泡弾性層3を研削又は研磨等してもよい。
【0041】
発泡弾性層用樹脂組成物を加硫させる際の加熱温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。更に三次加硫として180~280℃、特に200~250℃で1~15分間時間加熱してもよい。このように複数の回数をもって加熱すると未膨張マイクロバルーンの膨張、ミラブル型シリコーンゴムの硬化、残留する低分子シロキサンの排除、膨張したマイクロバルーンの熱収縮を必要に応じてコントロールすることが可能となって好ましい。このように複数回の加熱操作を行うことにより、未膨張マイクロバルーンが膨張すると同時にシリコーンゴムが硬化してセル壁が形成され、その後に膨張したマイクロバルーンのみ熱収縮された状態となって平均セル径を150μm以下に調整することができる。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有する発泡弾性層3を容易に形成することもできる。
【0042】
このようにして得られるスポンジローラを更に研磨工程に供してもよい。研磨工程は、軸体の外周面に形成されたスポンジローラの形状を、軸体の軸線方向においてスポンジローラの厚みを軸体の中央に向かって徐々に増大させ、軸体の中央から軸体の先端に向かって徐々に減少させる形状、つまりクラウン形状、或いは軸体の中央から軸体の両端に向かってスポンジローラの厚み増加させる形状、つまり逆クラウン形状に調整する工程である。
【0043】
発泡弾性層3の厚さは特に限定されず、0.1mm以上6mm以下であることが好ましく、1mm以上4mm以下であることがより好ましい。なお、本明細書における厚さは、スポンジローラ1の軸線方向に垂直な方向の厚さを示す。
【0044】
発泡弾性層3の外径は特に限定されず、例えば6mm以上25mm以下であることが好ましく、7mm以上21mmであることがより好ましい。
【0045】
発泡弾性層3の外周面には、被覆層との接着性向上等の目的で、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてよい。
【0046】
(反発弾性率)
発泡弾性層3の反発弾性率は、ニップ痕の発生を抑制する観点から、70.0%以上90.0%以下であることが好ましく、75.0%以上85.0%以下であることがより好ましい。発泡弾性層3の反発弾性率が上記範囲であることにより、発泡弾性層3のゴムの反発力が上がり、圧縮永久歪を低減することができる。
本発明における反発弾性率は、後述の実施例に記載した方法で測定した値とする。
【0047】
(圧縮永久歪)
発泡弾性層の圧縮永久歪は、3.0%以上13.0%以下であることが好ましく、4.0%以上12.0%以下であることがより好ましい。
本発明における圧縮永久歪は、後述の実施例に記載した方法で測定した値とする。
【0048】
(発泡弾性層の引裂き強度)
ここで、「発泡弾性層の引裂き強度」とは、上記発泡弾性層用組成物から発泡剤(化学発泡剤及び未膨張マイクロバルーン)を除いたゴム組成物を調製し、このゴム組成物を硬化させたシリコーンゴムの引裂き強度を意味する。
発泡弾性層用組成物のうち発泡剤を除いたゴム組成物で作製したシリコーンゴムの引裂き強度が、カーボンナノチューブと発泡剤を含有しないゴム組成物から作製したシリコーンゴムの引裂き強度に対し、1.1倍以上1.5倍以下にすることが可能である。本発明においては、上記のように、カーボンナノチューブが組成物中0.01質量部以上0.5質量部以下の少量であるので、反発弾性率、圧縮永久歪、ヤング率等の他のゴム物性を悪化させることなく、引裂き強度を向上させることができる。
発泡弾性層3の引裂き強度は、後述の実施例に記載した方法で測定した値とする。
【0049】
<被覆層>
本発明のスポンジローラは、発泡弾性層3の外周に、被覆層を設けてもよい。被覆層は、樹脂チューブであることが好ましい。
樹脂チューブの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、FEP(4フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(4フッ化エチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS、ポリウレタンなどを用いることができる。これらのなかでも、PFAが好ましい。
樹脂チューブは、PFAからなることがより好ましい。
樹脂チューブは、樹脂組成物を溶融押出法等により作製することができる。樹脂チューブ、接着剤層が設けられた発泡弾性層3に、公知の加圧挿入法、減圧挿入法によって装着することができる。
【0050】
樹脂チューブの厚さは、内面に導電層を設ける観点から、30μm以上60μm以下であること好ましい。
【0051】
本発明のスポンジローラは、反発弾性率、圧縮永久歪等の他のゴム物性を維持しながら、引裂き強度が向上しているため、耐久性が高く、画像形成装置に定着ローラ又は加圧ローラとして組み込むことにより、高品質な画像を提供することができる。
【実施例0052】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
以下の手順により、実施例1のスポンジローラを作製した。
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM23製、直径10mm、長さ274.2mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0054】
(発泡弾性層の形成)
下記の発泡弾性層用組成物を用いて、押出成形により、軸体の外周面上にシリコーンゴムを含む発泡弾性層を成形した。なお、押出成形では、発泡弾性層用組成物を、正外線加熱炉(IR炉)を用いて270℃で5分間加熱し、更に、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して硬化させた。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にシリコーンゴムを含む発泡弾性層を形成した。発泡弾性層の厚さは、4mmであった。
【0055】
発泡弾性層用組成物の詳細は、以下のとおりである。
(A)ミラブル型シリコーンゴム
KE-571-U(信越化学工業株式会社製) 100質量部
(B)カーボンナノチューブ 0.01質量部
(C)発泡剤 化学発泡剤(AIBN) 0.5質量部
(D)架橋剤 商品名「C-25B」(信越化学工業株式会社製) 2.0質量部
(E)着色剤KE-color-BR(信越化学工業株式会社製) 1.0質量部
(F)触媒 商品名「C-25A」(信越化学工業株式会社製) 0.5質量部
【0056】
[実施例2、実施例3及び実施例4]
発泡弾性層用組成物中のカーボンナノチューブの含有量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0057】
[比較例1]
発泡弾性層用組成物に、カーボンナノチューブを含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0058】
[比較例2及び比較例3]
カーボンナノチューブの代わりにカーボンブラック「サーマルブラック」(旭カーボン株式会社製)を表1に示す配合量で添加したこと以外は、実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0059】
[評価]
上記実施例及び比較例について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
(反発弾性率)
スポンジローラ上面に対し、高さ1mから鉄球φ16mm(16.0g)を落下させ、跳ね返りの高さを測定した。測定値は、初期高さに対する、跳ね返り高さの比率(%)で表した。比較例1の反発弾性率を100として、その他の実施例及び比較例の反発弾性率をパーセンテージで表1に記載した。
【0061】
(圧縮永久歪)
図2に示すように、スポンジローラ1の上下を鉄板20で挟み、万力で固定する。その際、上下の鉄板20の間にスペーサー21を挟み、鉄板20の間隔が一定の距離を保つように調整する。その状態のまま、180℃の乾燥機中で22時間放置する。その後、スポンジローラ1を挟んでいた鉄板20を外し、室温で3時間放置する。そのスポンジローラ1を圧縮しない状態で再度180℃の乾燥機中に1時間放置する。その後、取り出し1h放冷した後のスポンジローラ1の直径を測定し、以下の式で圧縮永久歪を計算する。
圧縮永久歪(%)=(D1-D2)/(D1-H)×100
試験前のスポンジローラ1の直径 D1
試験後のスポンジローラ1の直径 D2
軸体の直径 L
スペーサー21の高さ H
【0062】
(引裂き強度)
上記発泡弾性層用組成物から発泡剤除いたゴム組成物を調製し、このゴム組成物から、JIS K6252に準拠して、アングル形(切込なし)の試験片を作製した。この試験片を用いて、速度500mm/min、チャック間40mmで、引裂き強度を測定した。比較例1の引裂き強度を100として、その他の実施例及び比較例の引裂き強度をパーセンテージで表1に記載した。
【0063】
【表1】
【符号の説明】
【0064】
1 スポンジローラ
2 軸体
3 発泡弾性層
20 鉄板
21 スペーサー
図1
図2