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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177023
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】締結構造体
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20231206BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20231206BHJP
   F16B 33/02 20060101ALI20231206BHJP
   F16B 35/06 20060101ALI20231206BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16B35/00 T
F16B37/00 Z
F16B33/02 Z
F16B35/06 Z
B60K15/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089692
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板津 龍司
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA32
3D038CC14
3D038CC15
(57)【要約】
【課題】締結構造体において、個々のユーザの操作性を確保することができる技術を提供する。
【解決手段】 締結構造体は、第1のねじ部品と第2のねじ部品とが螺合可能に構成されている。第1のねじ部品の内周面は、右回転方向の第1のねじ溝と、第1のねじ溝と交差する左回転方向の第2のねじ溝と、を有している。第2のねじ部品の外周面は、第1のねじ溝と螺合可能である右回転方向の第1のねじ山と、第2のねじ溝と螺合可能である左回転方向の第2のねじ山と、を有している。第2のねじ部品は、第1のねじ山が外周面よりも外周側に突出するとともに第2のねじ山が外周面よりも内周側に位置する第1状態と、第2のねじ山が外周面よりも外周側に突出するとともに第1のねじ山が外周面よりも内周側に位置する第2状態と、に切り換え可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のねじ部品と第2のねじ部品とが螺合可能に構成されている締結構造体であって、
前記第1のねじ部品の内周面は、右回転方向の第1のねじ溝と、前記第1のねじ溝と交差する左回転方向の第2のねじ溝と、を有しており、
前記第2のねじ部品の外周面は、前記第1のねじ溝と螺合可能である右回転方向の第1のねじ山と、前記第2のねじ溝と螺合可能である左回転方向の第2のねじ山と、を有しており、
前記第2のねじ部品は、前記第1のねじ山が前記外周面よりも外周側に突出するとともに前記第2のねじ山が前記外周面よりも内周側に位置する第1状態と、前記第2のねじ山が前記外周面よりも外周側に突出するとともに前記第1のねじ山が前記外周面よりも内周側に位置する第2状態と、に切り換え可能に構成されている、締結構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の締結構造体であって、
前記第1のねじ山及び前記第2のねじ山は、前記第2のねじ部品の周方向に離間して複数設けられている、締結構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の締結構造体であって、
前記第1のねじ山は、前記第1のねじ山が延在する第1方向の長さが、前記第1のねじ溝と前記第2のねじ溝とが交差する範囲の前記第1方向の距離よりも長く、
前記第2のねじ山は、前記第2のねじ山が延在する第2方向の長さが、前記第1のねじ溝と前記第2のねじ溝とが交差する前記範囲の前記第2方向の距離よりも長い、締結構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の締結構造体であって、
前記第2のねじ部品は、前記第1のねじ山を前記内周側に付勢する第1付勢部材と、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記第1のねじ山を前記外周側に突出させる第1カム部材と、前記第2のねじ山を前記内周側に付勢する第2付勢部材と、前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記第2のねじ山を前記外周側に突出させる第2カム部材と、前記第1カム部材及び前記第2カム部材を作動させる作動機構と、を備えている、締結構造体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の締結構造体であって、
前記第1のねじ部品は、燃料タンクの給油口部材であり、
前記第2のねじ部品は、前記給油口部材の開口を開閉する燃料キャップである、締結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、締結構造体に関する。特に、ねじ溝を有する部品と、ねじ山を有する部品とが螺合されてなる締結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ山を有する部品と、ねじ溝を有する部品とが螺合されてなる締結構造体が知られている。特許文献1には、フィラーネックと燃料キャップを有する燃料給油部の構造が開示されている。フィラーネックの内周面には、ねじ山が形成されており、燃料キャップの外周面には、ねじ溝が形成されている。燃料キャップをフィラーネックに対して回転させてねじ込むことにより、ねじ山とねじ溝とが螺合して、燃料キャップがフィラーネックに装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-120386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、燃料キャップをフィラーネックに対して一方の方向(例えば、右回転方向)に回転させることにより、ねじが締まり、他方の方向(例えば、左回転方向)に回転させることにより、ねじが緩む。ユーザがねじ部品を回転させるときには、力を入れ易い回転方向が存在する。また、力を入れ易い回転方向は、ユーザの利き手等によっても異なる。特許文献1の構造では、ねじを締める又は緩めるときの回転方向が予め定まっており、ユーザの操作性が十分ではない。本明細書では、締結構造体において、個々のユーザの操作性を確保することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、第1のねじ部品と第2のねじ部品とが螺合可能に構成されている締結構造体を開示する。本技術の第1の態様では、前記第1のねじ部品の内周面は、右回転方向の第1のねじ溝と、前記第1のねじ溝と交差する左回転方向の第2のねじ溝と、を有している。前記第2のねじ部品の外周面は、前記第1のねじ溝と螺合可能である右回転方向の第1のねじ山と、前記第2のねじ溝と螺合可能である左回転方向の第2のねじ山と、を有している。前記第2のねじ部品は、前記第1のねじ山が前記外周面よりも外周側に突出するとともに前記第2のねじ山が前記外周面よりも内周側に位置する第1状態と、前記第2のねじ山が前記外周面よりも外周側に突出するとともに前記第1のねじ山が前記外周面よりも内周側に位置する第2状態と、に切り換え可能に構成されている。
【0006】
上記の締結構造体では、第2のねじ部品が、第1のねじ山のみが突出する第1状態と、第2のねじ山のみが突出する第2状態との間で、切り換え可能に構成されている。すなわち、第1状態では、第2のねじ部品を第1のねじ部品に対して右方向に回転させることによりねじが締まり、左方向に回転させることでねじが緩む。一方、第2状態では、第2のねじ部品を第1のねじ部品に対して左方向に回転させることによりねじが締まり、右方向に回転させることでねじが緩む。このように、第1状態と第2状態とを切り換えることにより、取り付け及び取り外しの回転方向を逆向きにすることができる。したがって、例えば、ねじを締めるときに第2のねじ部品を第1状態とし、ねじを緩めるときに第2のねじ部品を第2状態とした場合、第2のねじ部品を第1のねじ部品に対して右方向に回転させることで、取り付け及び取り外しの両方を行うことができる。このように、上記の締結構造体は、ユーザによらない操作性を提供することができ、ユーザによる扱い易さが向上する。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記第1のねじ山及び前記第2のねじ山は、前記第2のねじ部品の周方向に離間して複数設けられていてもよい。このような構成では、例えば、第1のねじ山と第2のねじ山とが干渉しないように各ねじ山を配置することにより、第1状態と第2状態の切り換え構造を簡易化することができる。
【0008】
第3の態様では、上記第1又は第2の態様において、前記第1のねじ山は、前記第1のねじ山が延在する第1方向の長さが、前記第1のねじ溝と前記第2のねじ溝とが交差する範囲の前記第1方向の距離よりも長くてもよく、前記第2のねじ山は、前記第2のねじ山が延在する第2方向の長さが、前記第1のねじ溝と前記第2のねじ溝とが交差する前記範囲の前記第2方向の距離よりも長くてもよい。このような構成では、第1のねじ山が上記範囲を通過するときに第2のねじ溝に入り込んだり、第2のねじ山が上記範囲を通過するときに第1のねじ溝に入り込んだりすることを防止することができる。
【0009】
第4の態様では、上記第1から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記第2のねじ部品は、前記第1のねじ山を前記内周側に付勢する第1付勢部材と、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記第1のねじ山を前記外周側に突出させる第1カム部材と、前記第2のねじ山を前記内周側に付勢する第2付勢部材と、前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記第2のねじ山を前記外周側に突出させる第2カム部材と、前記第1カム部材及び前記第2カム部材を作動させる作動機構と、を備えていてもよい。このような構成では、第2のねじ部品の第1状態と第2状態とを簡易に切り換えることができる。
【0010】
第5の態様では、上記第1から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記第1のねじ部品は、燃料タンクの給油口部材であってもよく、前記第2のねじ部品は、前記給油口部材の開口を開閉する燃料キャップであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】締結構造体を構成するフィラーネックの断面図及び燃料キャップの側面図。
図2】燃料キャップの上面図。
図3図2のIII-III線における、第1状態の燃料キャップの断面図。
図4図3に対応する断面における、第2状態の燃料キャップの断面図。
図5】第1状態において、第2のねじ山と第2のねじ溝とがオフセットした角度位置を示す燃料キャップの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例の締結構造体10について説明する。締結構造体10は、燃料タンクに燃料を供給するための略円筒形状に形成された給油口部材としてのフィラーネック12と、フィラーネック12に着脱可能な燃料キャップ26と、を有している。
【0013】
フィラーネック12は、円筒形状を有している。図1では、フィラーネック12が、その中心軸を含む断面で描かれている。フィラーネック12の軸方向下方(下端部12bの下方)には、図示しない燃料タンクが接続されており、フィラーネック12の内部が給油口となっている。フィラーネック12の上端部12aから給油用の給油ガンが挿入される。
【0014】
フィラーネック12の内周面13には、第1のねじ溝14と第2のねじ溝16が形成されている。第1のねじ溝14は、フィラーネック12の上部から下部に向かって、右回転方向(時計回り)に螺旋状に形成されている。第2のねじ溝16は、フィラーネック12の上部から下部に向かって、左回転方向(反時計回り)に螺旋状に形成されている。第1のねじ溝14及び第2のねじ溝16の断面は、半円形状を有している。第1のねじ溝14と第2のねじ溝16は、領域Rにおいて交差している。図示されていないが、第1のねじ溝14と第2のねじ溝16は、フィラーネック12の中心軸に対して領域Rとは反対側においても交差している。すなわち、第1のねじ溝14と第2のねじ溝16は、上方から下方に向かって180°間隔で交差している。
【0015】
燃料キャップ26は、フィラーネック12に着脱自在に構成されている。燃料キャップ26は、本体部28と、本体部28の上部に装着された蓋部30を有している。なお、図1では、燃料キャップ26が、側面から見た図で描かれている。
【0016】
本体部28は、フィラーネック12の内周面13内に挿入可能な略円柱形状を有している。本体部28の外周面29には、第1のねじ山32と第2のねじ山34が設けられている。第1のねじ山32は、第1のねじ溝14と螺合可能に構成されている。第1のねじ山32は、本体部28の上部から下部に向かって、第1のねじ溝14(破線で示す)に沿うように右回転方向に延在している。本体部28の外周面29には、複数の第1のねじ山32が設けられている。詳細には、燃料キャップ26の中心軸に対して、図示された第1のねじ山32とは反対側にも、第1のねじ山32が設けられている。すなわち、本実施例では、第1のねじ溝14に沿って、180°間隔で4つの第1のねじ山32が設けられている。
【0017】
第2のねじ山34は、第2のねじ溝16と螺合可能に構成されている。第2のねじ山34は、本体部28の上部から下部に向かって、第2のねじ溝16(破線で示す)に沿うように左回転方向に延在している。本体部28の外周面29には、複数の第2のねじ山34が設けられている。本実施例では、第1のねじ山32と同様に、第2のねじ溝16に沿って、180°間隔で4つの第2のねじ山34が設けられている。
【0018】
図1に示すように、第2のねじ山34の延在方向(第2のねじ溝16に沿う方向)の長さL1は、第1のねじ溝14と第2のねじ溝16の交差範囲(領域R)の当該延在方向の距離D2よりも長い。同様に、第1のねじ山32の延在方向(第1のねじ溝14に沿う方向)の長さ(不図示)は、領域Rの当該延在方向の距離D1よりも長い。
【0019】
後述するが、第1のねじ山32及び第2のねじ山34は、一方が外周面29よりも外周側に突出し、他方が外周面29よりも内周側に収納されるように構成されている。すなわち、両方のねじ山32、34が、同時に外周面29よりも外周側に突出することがないように構成されている。
【0020】
図2図4に示すように、燃料キャップ26は、切り換えスイッチ40を有している。切り換えスイッチ40には、ハートカム48が接続されている。すなわち、切り換えスイッチ40は、いわゆるオルタネートスイッチである。切り換えスイッチ40は、ガイドピン49が開始位置に位置することで、蓋部30の上面から突出する第1位置(図3参照)と、ガイドピン49が係止位置に位置することで、蓋部30の上面に埋没する第2位置(図4参照)との間で切り換え可能に構成されている。なお、図3は、図2のIII-III線における断面図であり、図4は、図3に対応する断面図である。燃料キャップ26は、切り換えスイッチ40を第1位置と第2位置との間で切り換えることによって、第1のねじ山32のみが外周面29から突出する第1状態と、第2のねじ山34のみが外周面29から突出する第2状態と、に切り換えることができる。以下、第1状態と第2状態の切り換えについて詳細に説明する。
【0021】
図3及び図4に示すように、第1のねじ山32は、第1のばね36によって本体部28の内周側に付勢されており、第2のねじ山34は、第2のばね38によって本体部28の内周側に付勢されている。このため、第1のねじ山32は、外力が印加されていない状態では、第1のばね36によって外周面29よりも内周側に収納された状態となる(図4参照)。また、第2のねじ山34は、外力が印加されていない状態では、第2のばね38によって外周面29よりも内周側に収納された状態となる(図3参照)。
【0022】
切り換えスイッチ40には、軸部42が接続されている。軸部42は、円柱形状を有しており、軸部42の周囲には、第1カム44及び第2カム46が設けられている。第1カム44は、本体部28の周方向において、第1のねじ山32に対応する位置に設けられている。第2カム46は、本体部28の周方向において、第2のねじ山34に対応する位置に設けられている。
【0023】
図3に示すように、切り換えスイッチ40が第1位置にある第1状態では、ハートカム48のガイドピン49が開始位置にある。第1状態では、第1カム44の高さ位置が第1のねじ山32の高さ位置と一致する。このため、第1のねじ山32が、第1カム44によって第1のばね36の付勢力に抗して本体部28の外周側に押し出される。これにより、第1のねじ山32は、外周面29よりも外周側に突出した状態となる。一方、第1状態では、第2カム46は、第2のねじ山34と高さ方向にオフセットしている。このため、第2のねじ山34は、第2のばね38の付勢力によって外周面29よりも内周側に収納されたままの状態となる。すなわち、第1状態では、第1のねじ山32のみが外周面29から突出した状態となる。右回転方向の第1のねじ山32のみが突出しているので、例えば、燃料キャップ26をフィラーネック12に対して右方向に回転させることにより、第1のねじ山32が第1のねじ溝14に螺合して、燃料キャップ26をフィラーネック12に取り付けることができる。
【0024】
図3に示す第1状態において、切り換えスイッチ40を押下すると、図4に示すように、ガイドピン49が開始位置から係止位置に移動してハートカム48に係止する。この第2状態では、第2カム46が第2のねじ山34の高さ位置と一致する位置まで移動する。このため、第2のねじ山34が、第2カム46によって第2のばね38の付勢力に抗して本体部28の外周側に押し出される。これにより、第2のねじ山34が、外周面29よりも外周側に突出した状態となる。一方、第1状態から第2状態に切り換えると、第1カム44が、第1のねじ山32と高さ方向にオフセットする位置まで移動する。このため、第1のねじ山32は、第1カム44による外力から解放され、第1のばね36の付勢力によって外周面29よりも内周側に収納される。すなわち、第2状態では、第2のねじ山34のみが外周面29から突出した状態となる。左回転方向の第2のねじ山34のみが突出しているので、例えば、燃料キャップ26をフィラーネック12に対して左方向に回転させることにより、第2のねじ山34が第2のねじ溝16に螺合して、燃料キャップ26をフィラーネック12に取り付けることができる。
【0025】
なお、図4に示す第2状態において、切り換えスイッチ40を再度押下することにより、ガイドピン49の係止が解除され、ガイドピン49は再び開始位置へ移動する。これにより、燃料キャップ26を第2状態から第1状態へ切り換えることができる。このように、本実施例の燃料キャップ26は、切り換えスイッチ40を繰り返し押下することにより、第1状態と第2状態とを交互に切り換え可能に構成されている。
【0026】
なお、上述の説明から明らかなように、燃料キャップ26を第1状態と第2状態とに切り換えると、第1のねじ山32と第2のねじ山34が交互に突出する。このため、燃料キャップ26をフィラーネック12から取り外した状態では、燃料キャップ26の各状態の切り換えを容易に行うことができる。一方で、燃料キャップ26がフィラーネック12に装着された状態や、燃料キャップ26の取り付け又は取り外しの間に、第1状態と第2状態とを切り換えたい状況も存在し得る。しかしながら、例えば、第1状態において燃料キャップ26を取り付け又は取り外している過程においては、図5に示すように、第2のねじ山34の位置が第2のねじ溝16の位置に一致しない角度位置が存在する。このような場合、第2のねじ山34の外周には空間(すなわち、第2のねじ溝16)が存在しないので、第2のねじ山34を押し出すことができず、第1状態から第2状態へ切り換えることができない。本実施例では、燃料キャップ26を取り付け又は取り外している過程において、ユーザが第1状態と第2状態とを切り換えることを補助するために、図2に示すように、燃料キャップ26の蓋部30の上面に、第1マーカ52及び第2マーカ54が設けられている。
【0027】
図2に示すように、フィラーネック12の周囲の部材には、第1マーカ52及び第2マーカ54に対応するマーカ56が設けられている。本実施例では、燃料キャップ26がフィラーネック12に螺合されている状態で、第1マーカ52又は第2マーカ54の周方向の角度位置がマーカ56に一致するときに、各状態を切り換え可能になっている。例えば、図2に示すように、第2マーカ54の角度位置がマーカ56に一致する場合、第2のねじ山34の位置が第2のねじ溝16の位置に一致していることを示している(図1に示す状態)。一方、第1マーカ52の角度位置がマーカ56に一致する場合、第1のねじ山32の位置が第1のねじ溝14の位置に一致していることを示している。例えば、ユーザが第1状態から第2状態に切り換えたい場合、第2マーカ54の角度位置をマーカ56に一致する位置まで燃料キャップ26を回転させる(図2に示す状態)。これにより、第2のねじ山34の位置が第2のねじ溝16の位置に一致する(図1に示す状態)。ユーザは、その後、切り換えスイッチ40を押下する。第2のねじ山34の外周には、第2のねじ溝16が位置しているので、切り換えスイッチ40を押下することによって、第2のねじ山34を外周側に突出させることができる。また例えば、ユーザが第2状態から第1状態に切り換えたい場合には、第1マーカ52の角度位置をマーカ56に一致する位置(図2に示す状態から蓋部30を周方向に180°回転させた状態)まで回転させて、切り換えスイッチ40を押下することにより、第2状態から第1状態に切り換えることができる。このように、本実施例では、燃料キャップ26をフィラーネック12に取り付けた状態においても、第1状態と第2状態とを容易に切り換えることができる。
【0028】
以上に説明した通り、本実施例の締結構造体10では、燃料キャップ26が、第1のねじ山32のみが突出する第1状態と、第2のねじ山34のみが突出する第2状態との間で、切り換え可能に構成されている。すなわち、第1状態では、燃料キャップ26をフィラーネック12に対して右方向に回転させることによりねじが締まり、左方向に回転させることでねじが緩む。一方、第2状態では、燃料キャップ26をフィラーネック12に対して左方向に回転させることによりねじが締まり、右方向に回転させることでねじが緩む。このように、第1状態と第2状態とを切り換えることにより、取り付け及び取り外しの回転方向を逆向きにすることができる。したがって、例えば、ねじを締めるときに燃料キャップ26を第1状態とし、ねじを緩めるときに燃料キャップ26を第2状態とすることにより、燃料キャップ26をフィラーネック12に対して右方向に回転させることで、取り付け及び取り外しの両方を行うことができる。このように、本実施例の締結構造体10では、ユーザによらない操作性を提供することができ、容易に扱うことができる。また、右回転方向用のねじ部品と左回転方向用のねじ部品をそれぞれ用意する必要がないので、用意すべき部品の種類を削減することができ、部品の管理を容易に行うことができる。
【0029】
また、本実施例では、複数の第1のねじ山32及び第2のねじ山34が、燃料キャップ26の周方向に離間して、互いに干渉しないように設けられている。このため、第1状態と第2状態の切り換え構造を簡易化することができる。
【0030】
また、本実施例では、第2のねじ山34の延在方向の長さL1が、領域Rの当該延在方向の距離D2よりも長い。同様に、第1のねじ山32の長さについても、距離D1よりも長い。このため、第1のねじ山32が領域Rを通過するときに第2のねじ溝16に入り込んだり、第2のねじ山34が領域Rを通過するときに第1のねじ溝14に入り込んだりすることを防止することができる。
【0031】
また、本実施例では、カム機構によって第1状態と第2状態とを切り換えるため、簡易な構造により第1状態と第2状態を切り換えることができる。
【0032】
(対応関係)
フィラーネック12、燃料キャップ26が、それぞれ「第1のねじ部品」、「第2のねじ部品」の一例である。第1のばね36、第2のばね38が、それぞれ「第1付勢部材」、「第2付勢部材」の一例である。第1カム44、第2カム46、ハートカム48が、それぞれ「第1カム部材」、「第2カム部材」、「作動機構」の一例である。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下、上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0034】
上述した実施例では、切り換えスイッチ40が、ハートカム方式のオルタネートスイッチであった。しかしながら、切り換えスイッチ40は、例えば、ラチェットカム方式や回転カム方式であってもよい。
【0035】
また、上述した実施例では、第1のばね36及び第2のばね38によって、第1のねじ山32及び第2のねじ山34を本体部28の内周側に付勢したが、これに限られず、他の弾性部材等を用いて第1のねじ山32及び第2のねじ山34を付勢してもよい。
【0036】
また、第1のねじ山32の数と第2のねじ山34の数は、特に限定されない。各ねじ山32、34は、本体部28の周方向の異なる角度位置の3か所、またはそれ以上の箇所に設けてもよい。また、各ねじ溝14、16及び各ねじ山32、34の断面形状は特に限定されず、例えば、角形等の形状であってもよい。
【0037】
また、上述した実施例では、燃料給油部の構造を例にして説明したが、本明細書に開示の技術は、他の構造に適用してもよい。例えば、本明細書に開示の技術をモータ等の回転部材への締結部品に適用してもよい。本明細書に開示の技術では、第1状態と第2状態とを切り換えることにより締結する回転方向を選択することができるため、回転部材の回転方向と、締結する回転方向とを一致させることにより、締結部品の緩みを抑制することができる。
【0038】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10:締結構造体、12:フィラーネック、14:第1のねじ溝、16:第2のねじ溝、26:燃料キャップ、32:第1のねじ山、34:第2のねじ山、40:切り換えスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5