(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177028
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】誘電体粉末、積層セラミック電子部品、誘電体粉末の製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 517
H01G4/30 515
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089700
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】神津 典之
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】 比誘電率の温度特性に優れ、高電界強度が印加された場合においてもリーク電流が増大することなく高温負荷寿命を有する、誘電体粉末、積層セラミック電子部品、誘電体粉末の製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 誘電体粉末は、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶している誘電体粉末。
【請求項2】
前記少なくとも一種の希土類元素は、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、またはホルミウムの少なくとも一つである、請求項1に記載の誘電体粉末。
【請求項3】
前記少なくとも一種の希土類元素は、チタンに対し1.5at%以下固溶している、請求項1または請求項2に記載の誘電体粉末。
【請求項4】
前記マグネシウムは、0.8at%以下固溶している、請求項1または請求項2に記載の誘電体粉末。
【請求項5】
示差走査熱量測定において、前記少なくとも一種の希土類元素および前記マグネシウムが固溶していないチタン酸バリウムを主成分とする誘電体粉末と比較し、125℃での正方晶と立方晶との間の転移ピーク温度が1℃以上シフトしている、請求項1または請求項2に記載の誘電体粉末。
【請求項6】
チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶しているコア部と、チタン酸バリウムを主成分とし、添加物を有するシェル部と、を有するコアシェル粒子を含む複数の誘電体層と、
前記複数の誘電体層を介して互いに対向する複数の内部電極と、
前記複数の内部電極に電気的に接続される外部電極と、を有する積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記少なくとも一種の希土類元素は、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、またはホルミウムの少なくとも一つである、請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記コア部において、前記少なくとも一種の希土類元素は、チタンに対し1.0at%以下固溶している、請求項6または請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記コア部において、前記マグネシウムは0.5at%以下固溶している、請求項6または請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
X7T特性を満たす、請求項6または請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
チタンに対し0.3at%以上2.0at%以下の少なくとも一種の希土類元素およびチタンに対し0.1at%以上1.0at%以下のマグネシウムを混合し、バリウム化合物およびチタン化合物を加えて固相反応させチタン酸バリウムを主成分とするスラリを得る混合工程と、
前記スラリを熱処理して前記希土類元素をチタン酸バリウムに固溶させる熱処理工程と、を含む、誘電体粉末の製造方法。
【請求項12】
前記バリウム化合物は、炭酸バリウムであり、
前記チタン化合物は、二酸化チタンである、請求項11に記載の誘電体粉末の製造方法。
【請求項13】
前記熱処理工程は、前記スラリから水分を除去して乾燥粉末を得る工程と、前記乾燥粉末を雰囲気温度800℃以上1200℃以下において0.5時間から5時間かけて熱処理する工程と、を含む、請求項11または請求項12に記載の誘電体粉末の製造方法。
【請求項14】
チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶している誘電体粉末に添加物を加えセラミックグリーンシートを得るセラミックグリーンシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する印刷工程と、
前記内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを複数積層し積層体を得る圧着工程と、
前記積層体を焼成して、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶しているコア部と、チタン酸バリウムを主成分とし、添加物を有するシェル部と、を有するコアシェル粒子を含む複数の誘電体層、および複数の内部電極を有する素体を得る焼成工程と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記素体に外部電極を形成する外部電極形成工程をさらに含む、請求項14に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記焼成工程は、前記積層体に外部電極を形成する工程と、前記積層体および前記外部電極を焼成する工程と、を含む、請求項14に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体粉末、積層セラミック電子部品、誘電体粉末の製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層セラミックコンデンサにおいては、小型化および大容量化の要求が高まっている。このため、内部を構成する誘電体層を薄くして積層数を多くすることで、小型化および大容量化の要求を満たしてきた。しかしながら、誘電体層を薄くすることで、誘電体層にかかる電界強度が高くなるため、信頼性が低下するという課題が生じた。引用文献1では、積層セラミックコンデンサの誘電体部に希土類元素およびマグネシウムが固溶したコアシェル構造粒子を持つことで比誘電率の温度特性が良く、これらの元素濃度が粒子最表面部で最高濃度となりシェル部の希土類およびマグネシウム濃度の傾きを0.05at%/nm以上とすることで高い高温負荷寿命が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シェル部の希土類元素やマグネシウムの濃度の傾きが大きくなると、コア部に近いシェル部の濃度が薄くなり、または用いられる原料粉が粒度分布を持つことからシェル部の厚みバラツキによりシェル厚みが薄くなる部分が生じ、高電界強度が印加された場合にリーク電流が増大し、十分な高温負荷寿命が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、比誘電率の温度特性に優れ、リーク電流が抑制され、高温負荷寿命を有する、誘電体粉末、積層セラミック電子部品、誘電体粉末の製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る誘電体粉末は、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶している。
【0007】
上記誘電体粉末において、前記少なくとも一種の希土類元素は、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、またはホルミウムの少なくとも一つであってもよい。
【0008】
上記誘電体粉末において、前記少なくとも一種の希土類元素は、チタンに対し1.5at%以下固溶していてもよい。
【0009】
上記誘電体粉末において、前記マグネシウムは、0.8at%以下固溶していてもよい。
【0010】
上記誘電体粉末は、示差走査熱量測定において、前記少なくとも一種の希土類元素および前記マグネシウムが固溶していないチタン酸バリウムを主成分とする誘電体粉末と比較し、125℃での正方晶と立方晶との間の転移ピーク温度が1℃以上シフトしていてもよい。
【0011】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶しているコア部と、チタン酸バリウムを主成分とし、添加物を有するシェル部と、を有するコアシェル粒子を含む複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して互いに対向する複数の内部電極と、前記複数の内部電極に電気的に接続される外部電極と、を有する。
【0012】
上記積層セラミック電子部品において、前記少なくとも一種の希土類元素は、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、またはホルミウムの少なくとも一つであってもよい。
【0013】
上記積層セラミック電子部品の前記コア部において、前記少なくとも一種の希土類元素は、チタンに対し1.0at%以下固溶していてもよい。
【0014】
上記積層セラミック電子部品の前記コア部において、前記マグネシウムは0.5at%以下固溶していてもよい。
【0015】
上記積層セラミック電子部品は、X7T特性を満たしてもよい。
【0016】
本発明に係る誘電体粉末の製造方法は、チタンに対し0.3at%以上2.0at%以下の少なくとも一種の希土類元素およびチタンに対し0.1at%以上1.0at%以下のマグネシウムを混合し、バリウム化合物およびチタン化合物を加えて固相反応させチタン酸バリウムを主成分とするスラリを得る混合工程と、前記スラリを熱処理して前記希土類元素をチタン酸バリウムに固溶させる熱処理工程と、を含む。
【0017】
上記誘電体粉末の製造方法において、前記バリウム化合物は、炭酸バリウムであり、前記チタン化合物は、二酸化チタンであってもよい。
【0018】
上記誘電体粉末の製造方法において、前記熱処理工程は、前記スラリから水分を除去して乾燥粉末を得る工程と、前記乾燥粉末を雰囲気温度800℃以上1200℃以下において0.5時間から5時間かけて熱処理する工程と、を含んでいてもよい。
【0019】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶している誘電体粉末に添加物を加えセラミックグリーンシートを得るセラミックグリーンシート形成工程と、前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する印刷工程と、前記内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを複数積層し積層体を得る圧着工程と、前記積層体を焼成して、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶しているコア部と、チタン酸バリウムを主成分とし、添加物を有するシェル部と、を有するコアシェル粒子を含む複数の誘電体層、および複数の内部電極を有する素体を得る焼成工程と、を含む。
【0020】
上記積層セラミック電子部品の製造方法は、前記素体に外部電極を形成する外部電極形成工程をさらに含んでいてもよい。
【0021】
上記積層セラミック電子部品の製造方法において、前記焼成工程は、前記積層体に外部電極を形成する工程と、前記積層体および前記外部電極を焼成する工程と、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、比誘電率の温度特性に優れ、リーク電流が抑制され、高温負荷寿命を有する、誘電体粉末、積層セラミック電子部品、誘電体粉末の製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】(a)はコアシェル粒子を例示する図であり、(b)は誘電体層の模式的な断面図である。
【
図5】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0025】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0026】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。なお、内部電極層12が異なる2つの面に露出して、異なる外部電極に導通していれば、
図1から
図3の構成に限られない。
【0027】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0028】
誘電体層11は、誘電体組成物であって、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする母材を含む。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。本実施形態では、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3)を用いる。Aサイトの一部が他の元素によって置換されていてもよく、Bサイトの一部が他の元素によって置換されていてもよい。例えば、誘電体層11において、チタン酸ジルコン酸バリウムは、90at%以上含まれている。誘電体層11の厚みは、例えば、0.2μm以上10μm以下であり、0.2μm以上5μm以下であり、0.2μm以上2μm以下である。
【0029】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0030】
内部電極層12は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層12の厚みは、例えば、0.1μm以上3μm以下であり、0.1μm以上1μm以下であり、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0031】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0032】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0033】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0034】
本実施形態においては、容量領域14において、誘電体層11が含む結晶粒子の少なくとも一部が、コア部と、コア部を囲むシェル部とを有するコアシェル構造を有している。
【0035】
図4(a)で例示するように、誘電体層11に含まれるコアシェル粒子30は、略球形状のコア部31と、コア部31を囲むように覆うシェル部32とを備えている。コア部31およびシェル部32は、チタン酸バリウムを主成分とする。コア部31は、添加化合物の固溶量が少ない結晶部分である。シェル部32は、添加化合物が固溶しておりかつコア部31の添加化合物濃度よりも高い添加化合物濃度を有している結晶部分である。
【0036】
図4(b)は、誘電体層11の模式的な断面図である。
図4(b)で例示するように、誘電体層11は、主成分セラミックの複数の結晶粒子17を備えている。これらの結晶粒子17のうち、少なくとも一部が
図4(a)で説明したコアシェル粒子30である。
【0037】
コア部31においては、少なくとも1種の希土類元素がAサイトに置換固溶するとともに、マグネシウムがBサイトに置換固溶している。コア部31において、ドナーとして作用する希土類元素の固溶量が少ないと、コア部31における酸化物イオン空孔量を十分に抑制できず、リーク電流が高くなり、高温負荷寿命が短くなるおそれがある。そこで、コア部31において、希土類元素の合計の固溶量に下限を設ける。本実施形態においては、コア部31において、希土類元素の合計の固溶量がチタンに対し0.3at%以上であり、0.5at%以上であることが好ましく、0.7at%以上であることがより好ましい。なお、チタンに対するat%とは、チタンを100at%と仮定する場合の原子濃度比率のことである。
【0038】
一方、コア部31において、希土類元素の固溶量が多いと、比誘電率εrの温度特性がX7T特性を満足できなくなるおそれがある。そこで、コア部31において、希土類元素の合計の固溶量に上限を設ける。本実施形態においては、コア部31において、希土類元素の合計の固溶量がチタンに対し2.0at%以下であり、1.8at%以下であることが好ましく、1.5at%以下であることがより好ましい。
【0039】
次に、コア部31において、アクセプタとして作用するマグネシウムの固溶量が少ないと、コア部31における電気的中性を保つことができなくなり、リーク電流の増大をもたらすおそれがある。そこで、コア部31において、マグネシウムの固溶量に下限を設ける。本実施形態においては、コア部31において、マグネシウムの固溶量がチタンに対し0.1at%以上であり、0.2at%以上であることが好ましく、0.3at%以上であることがより好ましい。
【0040】
一方、コア部31において、マグネシウムの固溶量が多いと、酸化物イオン空孔量が多くなり、高温負荷寿命が短くなり、比誘電率の温度特性がXT特性を満足できなくおそれがある。そこで、コア部31において、マグネシウムの合計の固溶量に上限を設ける。本実施形態においては、コア部31において、マグネシウムの固溶量がチタンに対し1.0at%以下であり、0.9at%以下であることが好ましく、0.8at%以下であることがより好ましい。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、コア部31において、チタン酸バリウムが主成分であり、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶していることで、比誘電率の温度特性の安定性が良く、電気的中性を保ちリーク電流を低くすることができ、酸化物イオン空孔の生成を抑制する作用により高電界強度が印加されても低いリーク電流のままでリーク電流の増大を抑制することができ高い高温負荷寿命が得られる。
【0042】
なお、コア部31に固溶する希土類元素は、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、またはホルミウムの少なくとも1つであることが好ましい。これらは、Aサイトに置換固溶しやすく、ドナーとして作用しやすいからである。コア部31に固溶する希土類元素の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。例えば、ジスプロシウムとユーロピウムの両方がコア部31に固溶していてもよい。コア部31に2種類以上の希土類元素が固溶する場合には、希土類元素の合計の固溶量とは、当該2種類以上の希土類元素の固溶量のことを意味する。
【0043】
シェル部32においては、コア部31よりも、希土類元素およびマグネシウムの固溶量が多くなっている。具体的には、チタンに対する希土類元素の合計のat%は、コア部31よりもシェル部32において高くなっている。また、チタンに対するマグネシウムのat%は、コア部31よりもシェル部32において高くなっている。シェル部32には、コア部31に固溶していない他の添加物が固溶していてもよい。
【0044】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図5は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0045】
(原料粉末作製工程)
まず、希土類元素化合物と、マグネシウム化合物と、バリウム化合物と、チタン化合物とを水溶液中で混合し、分散させる。希土類元素化合物としては、例えば希土類元素の酸化物を用いる。マグネシウム化合物としては、例えば酸化マグネシウム(MgO)を用いる。バリウム化合物としては、例えば炭酸バリウム(BaCO3)を用いる。チタン化合物としては、例えば二酸化チタン(TiO2)を用いることができる。
【0046】
例えば、希土類元素を「R」と表す場合に、希土類元素の酸化物R2O3と、酸化マグネシウムとを水に分散させ、分散剤としてカルボン酸アンモニウム塩を添加した水溶液に、Ba/Ti比(チタンに対するバリウムの原子濃度比率)=0.975以上1.000以下の範囲で、炭酸バリウムおよび二酸化チタンを加えてスラリとし、混合・分散処理を行う。
【0047】
チタン酸バリウムに対する希土類元素の合計添加量は、チタン酸バリウム100モルに対して、酸化物(R2O3)換算で0.15モル以上、1.0モル以下である。すなわち、チタン100モルに対する希土類元素の合計添加量を、0.3モル以上、0.2モル以下とする。チタン酸バリウムに対するマグネシウムの添加量は酸化物(MgO)換算で0.1モル以上1.0モル以下とする。すなわち、チタン100モルに対するマグネシウムの添加量を、0.1モル以上1.0モル以下とする。スラリの混合・分散処理には、ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル等を用いることができる。いずれの混合方法においても、所定の温度以下で熱分解が終了するまで行うことが望ましい。
【0048】
混合・分散処理を終えたスラリを100℃以上300℃以下で乾燥し、水を除去する。乾燥粉末を800℃以上1200℃以下で、Airガス中で0.5時間~5時間かけて熱処理を行なうことで仮焼する。仮焼によりチタン酸バリウム中に希土類元素およびマグネシウムが固溶する。得られた誘電体粉末において、チタン酸バリウムに希土類元素およびマグネシウムが固溶しているかどうかは、粉体のDSC測定(差走査熱量測定)により判断できる。具体的には、希土類元素およびマグネシウムが固溶していないチタン酸バリウムと比較して、125℃付近の正方晶と立方晶との間の転移ピーク温度が1℃以上シフトしていれば、誘電体粉末のチタン酸バリウム中に希土類元素およびマグネシウムが固溶していると判断することができる。
【0049】
得られた誘電体粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、マグネシウム、マンガン、モリブデン、バナジウム、クロム、希土類元素(イットリウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウム)の酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0050】
例えば、誘電体粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕して原料粉末を調製する。例えば、上記のようにして得られた原料粉末について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。
【0051】
(塗工工程)
次に、得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上にセラミックグリーンシートを塗工して乾燥させる。高容量化と高絶縁化の観点から、セラミックグリーンシートの厚みは、1μm以上5μm以下とすることが好ましい。
【0052】
(内部電極形成工程)
次に、セラミックグリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出される内部電極パターンを配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。例えば、平均粒子径が50nm以下のチタン酸バリウムを均一に分散させてもよい。
【0053】
(圧着工程)
その後、内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれたセラミックグリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、所定層数(例えば100~1000層)だけ積層する。積層したセラミックグリーンシートの上下に、カバー層13を形成するためのカバーシートを圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。
【0054】
(焼成工程)
このようにして得られたグリーン積層体を、250℃の窒素雰囲気で8時間程度かけて脱バインダ処理した後に、酸素分圧が10-14atm~10-10atm、1100℃~1300℃の還元雰囲気で、10分~2時間の焼成を行なう。
【0055】
(再酸化処理工程)
還元雰囲気で焼成された誘電体層11の部分的に還元された主相であるチタン酸バリウムに酸素を戻すために、内部電極層12を酸化させない程度に、600℃~1000℃で窒素雰囲気中での熱処理が行われることがある。この工程は、再酸化処理工程とよばれる。
【0056】
(外部電極形成工程)
得られた積層チップ10の2端面に、ガラスフリットを含有する金属ペーストをディップ法で塗布し、窒素雰囲気において約800℃程度で焼き付けて下地層を形成する。その後、下地層上に、めっき処理により、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行う。それにより、外部電極20a,20bが形成される。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0057】
本実施形態に係る製造方法によれば、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶している誘電体粉末を用いる。このように希土類元素を予め固溶させた誘電体粉末を用いることで、コア部31での酸化物イオン空孔の生成を抑制することができる。また、希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶していることで、比誘電率の温度特性の安定性が良く、電気的中性を保ちリーク電流を低くすることができ、酸化物イオン空孔の生成を抑制する作用により高電界強度が印加されても低いリーク電流のままでリーク電流の増大を抑制することができ高い高温負荷寿命が得られる。
【0058】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【実施例0059】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0060】
酸化ジスプロシウムおよび酸化マグネシウムを水に分散させ、分散剤としてカルボン酸アンモニウム塩を添加した水溶液に、炭酸バリウムとおよび二酸化チタンを加えてスラリとし、混合・分散処理を行った。チタンに対してジスプロシウムを0.3at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.1at%とした。また、Ba/Ti比を0.995とした。混合・分散処理を終えたスラリを100℃~300℃で乾燥し、水を除去した。乾燥粉末を800℃~1200℃で、Airガス中で0.5時間~5時間仮焼し、平均粒子径0.2μmのチタン酸バリウムセラミックを合成し、誘電体粉末とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.3モルのジスプロシウムを固溶させ、0.1モルのマグネシウムを固溶させた。
【0061】
次に、得られた誘電体粉末におけるチタン100モルに対して、二酸化ジスプロシウム(Dy2O3)を1.5モル、酸化マグネシウムを1.0モル、酸化マンガン(MnO)を0.3モル、酸化バナジウム(V2O5)を0.3モル、二酸化ケイ素(SiO2)を1.0モル加え、さらに、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加え湿式混合しスラリを得た。次に、得られたスラリを用いてドクターブレード法により3.0μmのセラミックグリーンシートを得た。
【0062】
次に、得られたセラミックグリーンシートの主面上に、有機バインダを含むニッケル導電ペーストを用いて印刷し、内部電極パターンを形成した。次に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを、ニッケル導電性ペーストが引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、グリーン積層体を得た。
【0063】
次に、得られたグリーン積層体を、窒素雰囲気中にて250℃で8時間脱バイした後に、酸素分圧10-14~10-10atmの還元雰囲気中で1100℃~1300℃で10分?2時間焼成して積層チップを得た。その後、窒素ガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行った。
【0064】
次に、得られた積層チップの両端に、ガラスフリットを含有する銅ペーストを塗布し、窒素雰囲気中において800℃で焼き付けた。さらに、外部電極の表面に、ニッケルめっきおよびスズめっきを施して積層セラミックコンデンサを得た。得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.2mm、長さ2.0mm、厚さ0.5mmであり、内部電極間に介在する誘電体層の厚みは2.4μmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は10とした。
【0065】
(実施例2)
実施例2では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを0.3at%とし、チタンに対してマグネシウムを1.0at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.3モルのジスプロシウムを固溶させ、1.0モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0066】
(実施例3)
実施例3では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを2.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.1at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、2.0モルのジスプロシウムを固溶させ、0.1モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0067】
(実施例4)
実施例4では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを2.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを1.0at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、2.0モルのジスプロシウムを固溶させ、1.0モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0068】
(実施例5)
実施例5では、誘電体粉末を合成する際に、二酸化ジスプロシウムの代わりに二酸化ユーロピウム(Eu2O3)を用いた。チタンに対してユーロピウムを1.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、1.0モルのユーロピウムを固溶させ、0.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0069】
(実施例6)
実施例6では、誘電体粉末を合成する際に、二酸化ジスプロシウムの代わりに二酸化ガドリニウム(Gd2O3)を用いた。チタンに対してガドリニウムを1.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、1.0モルのガドリニウムを固溶させ、0.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0070】
(実施例7)
実施例7では、誘電体粉末を合成する際に、二酸化ジスプロシウムの代わりに二酸化ホルミウム(Ho2O3)を用いた。チタンに対してホルミウムを1.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、1.0モルのホルミウムを固溶させ、0.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0071】
(実施例8)
実施例8では、誘電体粉末を合成する際に、二酸化ジスプロシウムだけではなく二酸化ユーロピウムも用いた。チタンに対してジスプロシウムを0.5at%とし、チタンに対してユーロピウムを0.5at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.5モルのジスプロシウムを固溶させ、0.5モルのガドリニウムを固溶させ、0.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0072】
(実施例9)
実施例9では、誘電体粉末を合成する際に、二酸化ジスプロシウムだけではなく、二酸化ユーロピウムおよび二酸化ガドリニウムも用いた。チタンに対してジスプロシウムを0.33at%とし、チタンに対してユーロピウムを0.33at%とし、チタンに対してガドリニウムを0.33at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.33モルのジスプロシウムを固溶させ、0.33モルのユーロピウムを固溶させ、0.33モルのガドリニウムを固溶させ、0.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0073】
(実施例10)
実施例10では、誘電体粉末を合成する際に、二酸化ジスプロシウムだけではなく、二酸化ユーロピウム、二酸化ガドリニウム、および二酸化ホルミウムも用いた。チタンに対してジスプロシウムを0.25at%とし、チタンに対してユーロピウムを0.25at%とし、チタンに対してガドリニウムを0.25at%とし、チタンに対してホルミウムを0.25at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.25モルのジスプロシウムを固溶させ、0.25モルのユーロピウムを固溶させ、0.25モルのガドリニウムを固溶させ、0.25モルのホルミウムを固溶させ、0.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0074】
(比較例1)
比較例1では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを0.2at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.1at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.2モルのジスプロシウムを固溶させ、0.1モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0075】
(比較例2)
比較例2では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを0.2at%とし、チタンに対してマグネシウムを1.0at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.2モルのジスプロシウムを固溶させ、1.0モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0076】
(比較例3)
比較例3では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを2.5at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.1at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、2.5モルのジスプロシウムを固溶させ、0.1モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0077】
(比較例4)
比較例4では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを2.5at%とし、チタンに対してマグネシウムを1.0at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、2.5モルのジスプロシウムを固溶させ、1.0モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0078】
(比較例5)
比較例5では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを0.3at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.05at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.3モルのジスプロシウムを固溶させ、0.05モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0079】
(比較例6)
比較例6では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを0.3at%とし、チタンに対してマグネシウムを1.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、0.3モルのジスプロシウムを固溶させ、1.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0080】
(比較例7)
比較例7では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを2.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを0.05at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、2.0モルのジスプロシウムを固溶させ、0.05モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0081】
(比較例8)
比較例8では、誘電体粉末を合成する際に、チタンに対してジスプロシウムを2.0at%とし、チタンに対してマグネシウムを1.5at%とした。このように、誘電体粉末において、チタン100モルに対して、2.0モルのジスプロシウムを固溶させ、1.5モルのマグネシウムを固溶させた。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0082】
(比誘電率の温度特性)
実施例1~10および比較例1~8の積層セラミックコンデンサのそれぞれについて、比誘電率の温度特性を調べた。具体的には、測定周波数1kHz、測定電圧1.0Vrmsの測定条件、-55℃~125℃の範囲で静電容量を測定した。得られた結果がX7T特性を満たす場合には比誘電率の温度特性を合格「〇」と判定し、得られた結果がX7T特性を満たさなければ比誘電率の温度特性を不合格「×」と判定した。
【0083】
(平均故障時間MTTFとリーク電流の測定)
信頼性評価として、150℃にて、20V/rmsの直流電界をかけて信頼性試験を行った。実施例1~10および比較例1~8の積層セラミックコンデンサのそれぞれについて、20個のサンプルに対して、電圧印加開始時間から絶縁抵抗が1桁落ちるまでの時間を故障時間としてワイブル解析をすることにより、MTTFを求めた。また、試験開始から10秒後の電流をリーク電流とした。リーク電流が20μA以下であればリーク電流を合格「〇」と判定し、リーク電流が20μAを上回ればリーク電流を不合格「×」と判定した。MTTFが10000分以上であればMTTFを合格「〇」と判定し、MTTFが10000分未満であればMTTFを不合格「×」と判定した。
【0084】
実施例1~10については、いずれも、比誘電率の温度特性、リーク電流、MTTFが合格「〇」と判定された。これは、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶する誘電体粉末を用いたことで、誘電体層のコアシェル粒子のコア部において、チタン酸バリウムを主成分とし、少なくとも一種の希土類元素がチタンに対し0.3at%以上2.0at%以下固溶し、マグネシウムが0.1at%以上1.0at%以下固溶していたからであると考えられる。
【0085】
比較例1では、リーク電流およびMTTFが不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、希土類元素の固溶量が不足していたからであると考えられる。比較例2では、MTTFが不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、希土類元素の固溶量が不足していたからであると考えられる。比較例3では、比誘電率の温度特性およびリーク電流が不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、希土類元素の固溶量が多すぎたからであると考えられる。比較例4では、比誘電率の温度特性が不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、希土類元素の固溶量が多すぎたからであると考えられる。比較例5では、リーク電流およびMTTFが不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、マグネシウムの固溶量が不足していたからであると考えられる。比較例6では、比誘電率の温度特性が不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、マグネシウムの固溶量が多すぎたからであると考えられる。比較例7では、リーク電流が不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、マグネシウムの固溶量が不足していたからであると考えられる。比較例8では、比誘電率の温度特性が不合格「×」と判定された。これは、誘電体粉末において、マグネシウムの固溶量が多すぎたからであると考えられる。
【表1】
【0086】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。