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特開2023-177032鋳造用中子および中空鋳物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177032
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】鋳造用中子および中空鋳物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/10 20060101AFI20231206BHJP
   B22C 9/24 20060101ALI20231206BHJP
   B22D 31/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B22C9/10 C
B22C9/24 Z
B22D31/00
B22C9/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089712
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 雅也
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093QA01
4E093QB01
4E093UC01
(57)【要約】
【課題】部品の肉厚を厚くすることなく、中空鋳物における引け巣の発生を抑制できる鋳造用中子を提供する。
【解決手段】鋳造用中子は、中空鋳物を鋳造する際に鋳型内に配置されるものである。鋳型において、部品形状空間と、堰とが設けられている。部品形状空間には、溶湯が充填される。部品形状空間は、中空鋳物を形成する。堰は、部品形状空間に連なっている。中空鋳物は、厚肉部と、薄肉部とを有している。薄肉部は、厚肉部と堰との間に形成される。鋳造用中子において、流路と、内部空間とが設けられている。流路は、部品形状空間に連なる。内部空間は、流路に連なっている。内部空間は、薄肉部に囲まれる位置にある。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空鋳物を鋳造する際に鋳型内に配置される鋳造用中子であって、
前記鋳型において、溶湯が充填され且つ前記中空鋳物を形成する部品形状空間と、前記部品形状空間に連なっている堰とが設けられており、
前記中空鋳物は、厚肉部と、前記厚肉部と前記堰との間に形成される薄肉部とを有し、
前記鋳造用中子において、前記部品形状空間に連なる流路と、前記流路に連なっている内部空間とが設けられており、
前記内部空間は、前記薄肉部に囲まれる位置にある、鋳造用中子。
【請求項2】
前記流路の少なくとも一部は、直線状に延びている、請求項1に記載の鋳造用中子。
【請求項3】
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は円形である、請求項1に記載の鋳造用中子。
【請求項4】
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は円形である、請求項2に記載の鋳造用中子。
【請求項5】
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は矩形である、請求項1に記載の鋳造用中子。
【請求項6】
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は矩形である、請求項2に記載の鋳造用中子。
【請求項7】
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は台形である、請求項1に記載の鋳造用中子。
【請求項8】
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は台形である、請求項2に記載の鋳造用中子。
【請求項9】
前記内部空間を形成している第2内壁面と、
前記薄肉部に接し且つ前記第2内壁面を取り囲んでいる外壁面とをさらに備え、
前記第2内壁面は、前記外壁面の形状に沿って設けられている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の鋳造用中子。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の鋳造用中子を前記鋳型の中に配置する工程と、
前記鋳型の中に前記溶湯を流し込むことによって前記部品形状空間および前記内部空間の各々に前記溶湯を充填する工程とを備えている、中空鋳物の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の鋳造用中子を前記鋳型の中に配置する工程と、
前記鋳型の中に前記溶湯を流し込むことによって前記部品形状空間および前記内部空間の各々に前記溶湯を充填する工程とを備えている、中空鋳物の製造方法。
【請求項12】
前記流路において前記溶湯が凝固することによって形成された被除去部を機械加工によって除去する工程をさらに備えている、請求項10に記載の中空鋳物の製造方法。
【請求項13】
前記流路において前記溶湯が凝固することによって形成された被除去部を機械加工によって除去する工程をさらに備えている、請求項11に記載の中空鋳物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋳造用中子および中空鋳物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品の鋳造において、溶湯が凝固する際に溶湯の体積は収縮する。収縮により減少した溶湯の体積と同じ体積の溶湯が、体積収縮した部分へ供給される。しかしながら、凝固していない部分であり且つ凝固した他の部分に取り囲まれている部分(孤立未凝固部)には、周囲から溶湯が供給されない。この場合、孤立未凝固部が凝固する際に孤立未凝固部の体積が収縮することによって、引け巣が発生する。引け巣は、鋳物部品の引張強度および伸び等の機械的特性を悪化させる。このため、引け巣は、鋳物部品の信頼性の低下および寿命の低下を招くおそれがある。
【0003】
特に、鋳物部品の交差部および厚肉部の各々は冷え固まりにくいため、孤立未凝固部が発生しやすい。また、最後に凝固する孤立未凝固部(最終凝固部)は、引け巣が最も発生しやすい部位である。一般に、凝固が遅い部分の近傍に押湯と堰とを設けることによって、押湯および堰内に最終凝固部が発生する。これによって、鋳物部品における引け巣の発生を抑制する。しかしながら、最終凝固部以外に孤立未凝固部が存在する場合、押湯と堰から孤立未凝固部に十分に溶湯が供給できない。この結果、孤立未凝固部において引け巣が発生する。
【0004】
最終凝固部以外に孤立未凝固部が存在する場合に、引け巣の発生を抑制する方法が考案されている。このような方法の一例として、特開2022-011625号公報(特許文献1)には、堰部の跡からネック部までの間の領域の肉厚が、ボデーの他の領域の肉厚よりも厚く形成されているバルブのボデーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-011625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているバルブのボデーによれば、引け巣の発生を抑制できるけれども、部品の肉厚を厚くする必要がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品の肉厚を厚くすることなく、中空鋳物における引け巣の発生を抑制できる鋳造用中子および中空鋳物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る鋳造用中子は、中空鋳物を鋳造する際に鋳型内に配置されるものである。鋳型において、部品形状空間と、堰とが設けられている。部品形状空間には、溶湯が充填される。部品形状空間は、中空鋳物を形成する。堰は、部品形状空間に連なっている。中空鋳物は、厚肉部と、薄肉部とを有している。薄肉部は、厚肉部と堰との間に形成される。鋳造用中子において、流路と、内部空間とが設けられている。流路は、部品形状空間に連なる。内部空間は、流路に連なっている。内部空間は、薄肉部に囲まれる位置にある。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、鋳造時に鋳造用中子の内部空間に充填された溶湯が、鋳造用中子を介して、中空鋳物の薄肉部に熱量を供給する。これによって、部品の肉厚を厚くすることなく、中空鋳物における引け巣の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る鋳造用中子の構成を示す斜視模式図である。
図2】実施の形態1に係る鋳造用中子の構成を示す正面模式図である。
図3図2のIII-III線に沿った縦断面模式図である。
図4図2のIV-IV線に沿った横断面模式図である。
図5】実施の形態1に係る鋳造用中子の構成を示す縦断面模式図である。
図6】実施の形態1に係る中空鋳物の構成を示す斜視模式図である。
図7】実施の形態1に係る中空鋳物の構成を示す縦断面模式図である。
図8】実施の形態1に係る中空鋳物の製造方法を概略的に示すフロー図である。
図9】配置工程を示す横断面模式図である。
図10】配置工程を示す縦断面模式図である。
図11】溶湯充填工程の第1状態を示す縦断面模式図である。
図12】溶湯充填工程の第2状態を示す横断面模式図である。
図13】溶湯が充填された状態を示す横断面模式図である。
図14】鋳造物の構成を示す縦断面模式図である。
図15】実施の形態1に係る鋳造用中子の製造方法を概略的に示すフロー図である。
図16】第1金型の構成を示す斜視模式図である。
図17】第2金型の構成を示す斜視模式図である。
図18】第3金型の構成を示す斜視模式図である。
図19】成形工程を示す縦断面模式図である。
図20】第1中子部を取り出す工程を示す縦断面模式図である。
図21】第1中子部と第2中子部とが組み合わされた状態を示す縦断面模式図である。
図22】実施の形態1の第1変形例に係る鋳造用中子の構成を示す縦断面模式図である。
図23】実施の形態1の第2変形例に係る鋳造用中子の構成を示す縦断面模式図である。
図24】実施の形態2に係る鋳造用中子の構成を示す縦断面模式図である。
図25】実施の形態3に係る鋳造用中子の構成を示す斜視断面模式図である。
図26】実施の形態3に係る鋳造用中子の構成を示す縦断面模式図である。
図27】実施の形態3の第1変形例に係る鋳造用中子の構成を示す斜視断面模式図である。
図28】実施の形態3の第2変形例に係る鋳造用中子の構成を示す斜視断面模式図である。
図29】実施の形態3の第3変形例に係る鋳造用中子の構成を示す斜視断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
実施の形態1.
(鋳造用中子の構成)
図1から図5を用いて鋳造用中子100の構成について説明する。図1に示されるように、鋳造用中子100は、第1部分1と、第2部分2と、第3部分3とを主に有している。第1部分1の形状は、たとえば円柱状である。第1部分1の延在する方向は、前後方向Yとされる。第2部分2は、第1部分1に連なっている。第2部分2の形状は、たとえば円柱状である。第2部分2は、前後方向Yに沿って延びている。第3部分3は、第2部分2に連なっている。第3部分3は、たとえば円柱状である。第3部分3は、前後方向Yに沿って延びている。第2部分2は、第1部分1と第3部分3の間にある。鋳造用中子100は、中空部品を鋳造する際の中子として用いられる。具体的には、鋳造用中子100は、中空鋳物を鋳造する際に鋳型内に配置される。
【0013】
第1部分1は、第1端面31と、第1外壁面11とを有している。第1端面31は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。第1端面31は、鋳造用中子100の端面である。第1外壁面11は、第1端面31に連なっている。第1外壁面11の形状は、たとえば環状である。第1外壁面11は、前後方向Yに沿って延びている。第1外壁面11において、流入口7が設けられている。流入口7は、たとえば前後方向Yに垂直な方向に開口している。
【0014】
第2部分2は、第1中間面19と、第2外壁面12とを有している。第1中間面19は、第1外壁面11に連なっている。第1中間面19は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。第2外壁面12は、第1中間面19に連なっている。第2外壁面12の形状は、たとえば環状である。第2外壁面12は、前後方向Yに沿って延びている。
【0015】
第3部分3は、第3外壁面13と、第2端面32とを有している。第3外壁面13の形状は、たとえば環状である。第3外壁面13は、前後方向Yに沿って延びている。第2端面32は、鋳造用中子100の端面である。鋳造用中子100において、第2端面32は、第1端面31の反対側にある。第1端面31から第2端面32に向かう方向は、前後方向Yに沿う方向である。第2端面32は、第3外壁面13に連なっている。
【0016】
図2は、前後方向Yに見た鋳造用中子100の構成を示している。前後方向Yに見て、第1部分1の形状は、たとえば円形である。言い換えれば、前後方向Yに見て、第1部分1の第1外壁面11の形状は、たとえば円形である。第1部分1の直径は、第1直径D1とされる。前後方向Yに見て、第2部分2の形状は、たとえば円形である。言い換えれば、前後方向Yに見て、第2部分2の第2外壁面12の形状は、たとえば円形である。第2部分2の直径は、第2直径D2とされる。第2直径D2は、第1直径D1よりも大きい。
【0017】
前後方向Yに見て、鋳造用中子100の中心は、中心軸Oとされる。中心軸Oの延びる方向は、前後方向Yである。前後方向Yに見て、中心軸Oは、第1部分1の中心と実質的に重なっていてもよい。前後方向Yに見て、中心軸Oは、第2部分2の中心と実質的に重なっていてもよい。前後方向Yに見て、第1部分1は、第2外壁面12に囲まれた領域内にある。
【0018】
図3に示される断面は、前後方向Yに平行であり且つ流入口7と交差する断面である。図4に示される断面は、図3に示される断面に垂直であり、且つ中心軸Oを含む断面である。図3および図4に示されるように、第2部分2は、第2中間面29を有している。第2中間面29は、第2外壁面12および第3外壁面13の各々に連なっている。第2中間面29は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。
【0019】
第3部分3の直径は第3直径D3とされる。第3直径D3は、第1直径D1と実質的に同じであってもよい。第3直径D3は、第2直径D2よりも小さい。
【0020】
鋳造用中子100において、流路8と、内部空間9とが設けられている。流入口7において、流路8は、鋳造用中子100の外部に連なっている。内部空間9は、流路8に連なっている。別の観点から言えば、流路8は、内部空間9と鋳造用中子100の外部とを繋いでいる。流路8の少なくとも一部は、直線状に延びている。前後方向Yに平行であり且つ流入口7と交差する断面において、流路8は、たとえばL字状である。内部空間9は、たとえば球状である。
【0021】
流路8は、第1流路部81と、第2流路部82とを有している。流入口7において、第1流路部81は、鋳造用中子100の外部に連なっている。第1流路部81は、直線状に延びている。第1流路部81の延在する方向は、たとえば上下方向Zである。なお、上下方向Zは、前後方向Yに垂直な方向である。上下方向Zおよび前後方向Yの各々に垂直な方向は、左右方向Xとされる。
【0022】
第2流路部82は、第1流路部81および内部空間9の各々に連なっている。第2流路部82は、直線状に延びている。第2流路部82の延在する方向は、前後方向Yに沿う方向である。第2流路部82の延在する方向は、第1流路部81の延在する方向に対して、実質的に垂直であってもよい。第2流路部82は、中心軸Oに沿って延びていてもよい。
【0023】
鋳造用中子100は、第1内壁面21と、第2内壁面22とを有している。第1内壁面21は、たとえば第1外壁面11に連なっている。第1内壁面21と第1外壁面11との稜線は、流入口7を形成している。第1内壁面21は、流路8を形成している。
【0024】
第2内壁面22は、第1内壁面21に連なっている。第2内壁面22は、内部空間9を形成している。第2外壁面12は、第2内壁面22を取り囲んでいる。別の観点から言えば、第2部分2において、内部空間9が設けられている。
【0025】
第2内壁面22の形状は、たとえば球状である。中心軸Oは、第2内壁面22の中心を通っていてもよい。第2内壁面22の直径は、第4直径D4とされる。第4直径D4は、第1直径D1、第2直径D2および第3直径D3の各々よりも小さい。第4直径D4は、可能な限り大きいことが好ましい。第1直径D1に対する第4直径D4の比率は、たとえば0.99である。第1直径D1に対する第4直径D4の比率は、たとえば0.8以上0.995以下であってもよい。同様に、第3直径D3に対する第4直径D4の比率は、たとえば0.99である。第3直径D3に対する第4直径D4の比率は、たとえば0.8以上0.995以下であってもよい。
【0026】
第1内壁面21は、第1内壁面部23と、第2内壁面部24とによって構成されている。第1内壁面部23は、第1外壁面11に連なっている。第1内壁面部23は、第1流路部81を形成している。第1内壁面部23の形状は、たとえば環状である。第1内壁面部23は、上下方向Zに沿って延びている。第1内壁面部23の直径は、第4直径D4よりも小さい。
【0027】
第2内壁面部24は、第1内壁面部23および第2内壁面22の各々に連なっている。第2内壁面部24は、第2流路部82を形成している。第2内壁面部24の形状は、たとえば環状である。第2内壁面部24は、前後方向Yに沿って延びている。第2内壁面部24の直径は、第4直径D4よりも小さい。第2内壁面部24は、中心軸Oを取り囲んでいてもよい。
【0028】
図5に示される断面は、第1内壁面21の延在方向に垂直であり且つ第1内壁面21と交差する断面である。具体的には、図5に示される断面は、前後方向Yに垂直な断面である。図5に示されるように、第1内壁面21の延在方向に垂直な断面において、第1内壁面21の形状は、たとえば円形である。前後方向Yに見て、第1内壁面21の中心は、第1外壁面11の中心と重なっていてもよい。
【0029】
図5において、破線は、前後方向Yに見た第2内壁面22の外形を示している。図5に示されるように、前後方向Yに見て、第2内壁面22は、たとえば円形である。前後方向Yに見て、第2内壁面22は、第1外壁面11に囲まれる領域の内側にあってもよい。
【0030】
(中空鋳物の構成)
次に、図6および図7を用いて、実施の形態1に係る中空鋳物200の構成について説明する。
【0031】
中空鋳物200は、第1厚肉部71と、第2厚肉部72と、薄肉部73とを主に有している。第1厚肉部71の外形は、たとえば円柱状である。第1厚肉部71は、前後方向Yに沿って延びている。薄肉部73は、第1厚肉部71に連なっている。薄肉部73の外形は、たとえば円柱状である。薄肉部73の直径は、第1厚肉部71の直径よりも小さい。薄肉部73は、前後方向Yに沿って延びている。
【0032】
第2厚肉部72は、薄肉部73に連なっている。第2厚肉部72は、薄肉部73に対して第1厚肉部71の反対にある。別の観点から言えば、薄肉部73は、第1厚肉部71と第2厚肉部72との間にある。さらに別の観点から言えば、第2厚肉部72は、薄肉部73を介して第1厚肉部71に連なっている。第2厚肉部72の外形は、たとえば円柱状である。第2厚肉部72の直径は、薄肉部73の直径よりも大きい。第2厚肉部72は、前後方向Yに沿って延びている。第1厚肉部71の直径は、第2厚肉部72の直径よりも大きくてもよい。
【0033】
中空鋳物200において、穴99が設けられている。中空鋳物200は、たとえばボスとして用いられる。具体的には、中空鋳物200は、たとえばエスカレーターの手すり駆動装置の駆動ローラーとして用いられる。
【0034】
図7に示される断面は、前後方向Yに平行であり且つ穴99と交差する断面である。図6および図7に示されるように、中空鋳物200は、第3端面33と、第4端面34と、第1外周面47と、第2外周面48と、第3外周面49とを有している。第3端面33は、第1厚肉部71によって形成されている。第3端面33は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。第3端面33は、中空鋳物200の端面である。中空鋳物200において、第4端面34は、第3端面33の反対側にある。第4端面34は、中空鋳物200の端面である。第4端面34は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。
【0035】
第1外周面47は、第3端面33に連なっている。第1外周面47は、第1厚肉部71によって形成されている。第1外周面47は、前後方向Yに沿って延びている。第2外周面48は、薄肉部73によって形成されている。第2外周面48は、前後方向Yに沿って延びている。第3外周面49は、第4端面34に連なっている。第3外周面49は、第2厚肉部72によって形成されている。第3外周面49は、前後方向Yに沿って延びている。
【0036】
図7に示されるように、中空鋳物200は、第3内壁面53と、第3中間面83と、第4内壁面54と、第4中間面84と、第5内壁面55とを有している。第3内壁面53、第3中間面83、第4内壁面54、第4中間面84および第5内壁面55は、穴99を形成している。穴99は、第3端面33と第4端面34とを貫通している。穴99は、前後方向Yに沿って延びている。
【0037】
第3内壁面53は、第3端面33に連なっている。第3内壁面53は、第1厚肉部71および薄肉部73の各々の内部にある。第3内壁面53は、前後方向Yに沿って延びている。第3内壁面53の形状は、たとえば環状である。第3内壁面53は、鋳造用中子100の第1外壁面11(図3および図4参照)によって形成される。
【0038】
第3中間面83は、第3内壁面53に連なっている。第3中間面83は、薄肉部73の内部にある。第3中間面83は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。第3中間面83は、鋳造用中子100の第1中間面19(図3および図4参照)によって形成される。
【0039】
第4内壁面54は、第3中間面83に連なっている。第4内壁面54は、薄肉部73の内部にある。第4内壁面54は、前後方向Yに沿って延びている。第4内壁面54の形状は、たとえば環状である。第4内壁面54は、鋳造用中子100の第2外壁面12(図3および図4参照)によって形成される。
【0040】
第4中間面84は、第4内壁面54に連なっている。第4中間面84は、薄肉部73の内部にある。第4中間面84は、前後方向Yに垂直な方向に沿って延びている。第4中間面84は、鋳造用中子100の第2中間面29(図3および図4参照)によって形成される。
【0041】
第5内壁面55は、中空鋳物200の端部にある。第5内壁面55は、第4中間面84に連なっている。第5内壁面55は、薄肉部73および第2厚肉部72の各々の内部にある。第5内壁面55は、前後方向Yに沿って延びている。第5内壁面55の形状は、たとえば環状である。第5内壁面55は、鋳造用中子100の第3外壁面13(図3および図4参照)によって形成される。
【0042】
薄肉部73の肉厚は、第1厚肉部71および第2厚肉部72の各々の肉厚よりも薄い。別の観点から言えば、前後方向Yに垂直な方向において、第4内壁面54と第2外周面48との間の距離は、第3内壁面53と第1外周面47との間の距離よりも小さい。同様に、前後方向Yに垂直な方向において、第4内壁面54と第2外周面48との間の距離は、第5内壁面55と第3外周面49との間の距離よりも小さい。中空鋳物200の材質は、特に制限されない。中空鋳物200は、たとえば球状黒鉛鋳鉄によって構成されている。
【0043】
(中空鋳物の製造方法)
次に、図8から図14を用いて、中空鋳物200の製造方法について説明する。図8に示されるように、実施の形態1に係る中空鋳物200の製造方法は、配置工程(S10)と、溶湯充填工程(S20)と、取り出し工程(S30)と、除去工程(S40)とを有している。
【0044】
まず、配置工程(S10)が実施される。図9に示される断面は、上下方向Zに垂直であり、且つ鋳造用中子100の中心軸Oを含む断面である。図10に示される断面は、図9のX-X線に沿う組み合わせ断面である。図9および図10に示されるように、鋳型300が準備される。鋳型300は、第1鋳型部88と、第2鋳型部89とを有している。第2鋳型部89は、第1鋳型部88上にある。鋳型300は、砂型または金型である。別の観点から言えば、中空鋳物200は、砂型鋳造法または金型鋳造法を用いて作製される。鋳型300において、湯口91と、湯道92と、押湯93と、堰94と、部品形状空間95とが設けられている。
【0045】
湯口91は、鋳型300の外部に連なっている。湯口91は、たとえば円柱状である。湯口91は、上下方向Zに沿って延びている。湯口91の下端において、湯道92は、湯口91に連なっている。湯道92は、上下方向Zに垂直な方向に沿って延びている。具体的には、湯道92は、たとえば前後方向Yに沿って延びている。湯道92は、たとえば円柱状である。
【0046】
押湯93は、上下方向Zに沿って延びている。押湯93の下端において、押湯93は、湯道92に連なっている。押湯93の下端において、堰94は、押湯93に連なっている。堰94は、たとえば前後方向Yに沿って延びている。堰94は、たとえば円柱状である。なお、堰94は、左右方向Xに沿って延びていてもよい。
【0047】
部品形状空間95は、堰94に連なっている。部品形状空間95は、中空鋳物200を形成する部分である。部品形状空間95の外形は、中空鋳物200の外形と実質的に同じである。
【0048】
部品形状空間95において、鋳造用中子100が配置されている。鋳造用中子100の流路8は、部品形状空間95に連なっている。鋳造用中子100の内部空間9は、流路8を介して部品形状空間95に連なっている。鋳造用中子100の第1部分1および第3部分3の各々は、第1鋳型部88および第2鋳型部89の各々に接している。鋳造用中子100の第2部分2は、鋳型300から離間している。第1部分1は、第2部分2よりも堰94の近くに配置されている。第2部分2は、第3部分3よりも堰94の近くに配置されている。
【0049】
配置工程(S10)において、第1鋳型部88および第2鋳型部89が準備される。鋳造用中子100は、第1鋳型部88上に配置される。第2鋳型部89が第1鋳型部88上に配置される。鋳造用中子100は、第1鋳型部88と第2鋳型部89とによって挟まれる。以上のようにして、鋳型300の部品形状空間95内に鋳造用中子100が位置するように、鋳造用中子100が、鋳型300の中に配置される。
【0050】
次に、溶湯充填工程(S20)が実施される。図11は、鋳型300に溶湯97が流し込まれている状態を示している。図11に示されるように、溶湯97の入った取鍋96が準備される。取鍋96から湯口91に溶湯97が流し込まれる。湯口91、湯道92、押湯93および堰94の各々を経由して、部品形状空間95に溶湯97が流れ込む。これによって、部品形状空間95に、溶湯97が充填される。
【0051】
図12は、溶湯97が部品形状空間95に充填される過程を示している。図12に示されるように、部品形状空間95に流れ込んだ溶湯97は、矢印101に沿って流れる。
【0052】
流入口7が、堰94側に開口している場合、堰94と流入口7との間の距離が短くなる。これによって、流入口7に流入する溶湯97の流速が速くなる。流入口7に近い鋳造用中子100の部分は、他の鋳造用中子100の部分よりも強度が低い。このため、流入口7に近い鋳造用中子100の部分が、溶湯97との接触によって欠損するおそれがある。従って、流入口7に流入する溶湯97の速度は遅いことが好ましい。このため、流入口7と堰94との間の距離が長くなるように、鋳造用中子100が配置されることが好ましい。具体的には、流入口7は、たとえば上下方向Zに開口していてもよい。流入口7は、たとえば堰94の反対側に開口していてもよい。これによって、鋳造用中子100の欠損を抑制できる。
【0053】
図13に示されるように、鋳型300の中に溶湯97を流し込むことによって部品形状空間95(図12参照)および内部空間9(図12参照)の各々に溶湯97が充填される。これによって、鋳造物320が形成される。図13および図14に示されるように、鋳造物320は、中空鋳物200と、第1被除去部77と、第2被除去部78と、第3被除去部79とを有している。
【0054】
第1被除去部77は、中空鋳物200に連なっている。第1被除去部77は、流路8に充填された溶湯97が凝固することによって形成される。第2被除去部78は、第1被除去部77に連なっている。第2被除去部78は、中空鋳物200から離間している。第2被除去部78は、内部空間9に充填された溶湯97が凝固することによって形成される。第3被除去部79は、中空鋳物200の第1厚肉部71に連なっている。第3被除去部79は、堰94に充填された溶湯97が凝固することによって形成される。
【0055】
図13に示されるように、中空鋳物200の第1厚肉部71は、薄肉部73と堰94との間に形成される。中空鋳物200の薄肉部73は、第2厚肉部72と堰94との間に形成される。別の観点から言えば、中空鋳物200において、第2厚肉部72は、堰94から最も離れた位置に形成される。
【0056】
図13に示されるように、鋳造用中子100の第1外壁面11は、第1厚肉部71および薄肉部73の各々に接する。鋳造用中子100の第1中間面19は、中空鋳物200の薄肉部73に接する。鋳造用中子100の第2外壁面12は、中空鋳物200の薄肉部73に接する。鋳造用中子100の第2中間面29は、中空鋳物200の薄肉部73に接する。鋳造用中子100の第3外壁面13は、中空鋳物200の第2厚肉部72および薄肉部73の各々に接する。
【0057】
鋳造用中子100の第1内壁面21は、第1厚肉部71および薄肉部73の各々に囲まれる。鋳造用中子100の第2内壁面22は、薄肉部73に囲まれる。別の観点から言えば、鋳造用中子100の内部空間9(図3および図4参照)は、薄肉部73に囲まれる位置にある。
【0058】
次に、取り出し工程(S30)が実施される。第1鋳型部88と第2鋳型部89とが分離されることによって、鋳型300から鋳造物320と鋳造用中子100とが取り出される。鋳造物320と鋳造用中子100とに振動が加えられることによって、鋳造用中子100は粉砕される。鋳造物320の内部から、粉砕された鋳造用中子100が取り出される。以上のようにして、鋳造物320が鋳型300から取り出される。
【0059】
次に、除去工程(S40)が実施される。たとえば機械加工によって、第1被除去部77が鋳造物320から除去される。具体的には、第1被除去部77が鋳造物320から切り離される。第1被除去部77および第2被除去部78は、鋳造物320の内部から取り出される。たとえば機械加工によって、鋳造物320から第3被除去部79が除去される。以上のようにして、中空鋳物200(図6参照)が作製される。
【0060】
(鋳造用中子の製造方法)
次に、図15から図21を用いて、鋳造用中子100の製造方法について説明する。図15に示されるように、実施の形態1に係る鋳造用中子100の製造方法は、準備工程(S50)と、成型工程(S60)とを有している。鋳造用中子100の製造方法として、たとえばシェルモールド法が用いられてもよい。
【0061】
準備工程(S50)において、第1金型61、第2金型62および第3金型63の各々が準備される。図16に示されるように、第1金型61は、第1合わせ面64と、第1凹面51と、第2凹面52とを有している。第1合わせ面64は平面状である。第1凹面51は、第1合わせ面64に連なっている。第1凹面51は、鋳造用中子100の第1部分1、第2部分2および第3部分3の各々を形成する部分である。第2凹面52は、第1合わせ面64および第1凹面51の各々に連なっている。第2凹面52は、吹き込み口を形成する部分である。第2凹面52は、第1合わせ面64の端部に設けられている。
【0062】
図17に示されるように、第2金型62は、第2合わせ面65を有している。第2合わせ面65は平面状である。第2合わせ面65において、第1凸部41と、第2凸部42と、第3凸部43とが設けられている。第1凸部41は、鋳造用中子100の第1内壁面部23を形成する部分である。第1凸部41の形状は半円柱状である。第1凸部41は、第5端面35を形成している。第5端面35は、第1金型61と第2金型62とを重ね合わせた際に、第1金型61の第1凹面51(図16参照)に接するように設けられている。別の観点から言えば、第5端面35は、鋳造用中子100の流入口7(図3および図4参照)を形成する部分である。
【0063】
第2凸部42は、鋳造用中子100の第2内壁面部24を形成する部分である。第2凸部42は、第1凸部41に連なっている。第2凸部42の形状は半円柱状である。第1凸部41と第2凸部42とは、たとえばL字状に連なっている。言い換えれば、第1凸部41の延在方向と、第2凸部42の延在方向とは、実質的に垂直であってもよい。
【0064】
第3凸部43は、鋳造用中子100の第2内壁面22を形成する部分である。第3凸部43は、第2凸部42に連なっている。第3凸部43の形状は半球状である。
【0065】
図18に示されるように、第3金型63の形状は、第2金型62の形状と実質的に鏡面対称である。第3金型63は、第3合わせ面66を有している。第3合わせ面66は平面状である。第3合わせ面66において、第4凸部44と、第5凸部45と、第6凸部46とが設けられている。第4凸部44は、鋳造用中子100の第1内壁面部23を形成する部分である。第4凸部44の形状は半円柱状である。第4凸部44は、第6端面36を形成している。第6端面36は、第1金型61と第3金型63とを重ね合わせた際に、第1金型61の第1凹面51(図16参照)に接するように設けられている。別の観点から言えば、第5端面35は、鋳造用中子100の流入口7(図3および図4参照)を形成する部分である。
【0066】
第5凸部45は、鋳造用中子100の第2内壁面部24を形成する部分である。第5凸部45は、第4凸部44に連なっている。第5凸部45の形状は半円柱状である。第4凸部44と第5凸部45とは、たとえばL字状に連なっている。言い換えれば、第4凸部44の延在方向と、第5凸部45の延在方向は、実質的に垂直であってもよい。
【0067】
第6凸部46は、鋳造用中子100の第2内壁面22を形成する部分である。第6凸部46は、第5凸部45に連なっている。第6凸部46の形状は半球状である。
【0068】
次に、成型工程(S60)が実施される。図19に示されるように、第1金型61と第2金型62とが重ね合わされる。具体的には、第1金型61の第1合わせ面64と、第2金型62の第2合わせ面65とが合わせられる。第2凸部42および第3凸部43の各々は、第1凹面51から離間している。第2凹面52と、第2合わせ面65とは、吹き込み口69を形成する。
【0069】
第1金型61および第2金型62は、200℃以上300℃以下まで加熱される。吹き込み口69から中子砂98が吹き込まれる。吹き込まれた中子砂98は、加熱されることによって硬化する。これによって、図20に示されるように、第1中子部10と、バリ90とが形成される。バリ90は、第1中子部10に連なっている。
【0070】
第1金型61と第2金型62とが分離されることによって、第1金型61と第2金型62とから、第1中子部10とバリ90とが取り出される。バリ90は、第1中子部10から除去される。同様に、第1金型61と第3金型63とを用いて、第2中子部20が作製される。第2中子部20の形状は、第1中子部10の形状と実質的に鏡面対称である。
【0071】
図21に示されるように、第1中子部10と第2中子部20とが組み合わされる。第1中子部10は、第1部材16と、第2部材17と、第3部材18とを有している。第2部材17は、第1部材16に連なっている。第3部材18は、第2部材17に連なっている。第3部材18は、第2部材17に対して第1部材16の反対側にある。別の観点から言えば、第2部材17は、第1部材16と第3部材18との間にある。第1部材16、第2部材17および第3部材18は、第1面15を形成している。
【0072】
第2中子部20は、第4部材26と、第5部材27と、第6部材28とを有している。第5部材27は、第4部材26に連なっている。第6部材28は、第5部材27に連なっている。第6部材28は、第5部材27に対して第4部材26の反対側にある。別の観点から言えば、第5部材27は、第4部材26と第6部材28との間にある。第4部材26、第5部材27および第6部材28は、第2面25を形成している。
【0073】
第2中子部20の第2面25は、第1中子部10の第1面15に対面している。第1面15と第2面25とは、たとえば図示されていない砂型用接着剤によって接着されてもよい。第1中子部10の第1部材16と、第2中子部20の第4部材26とは、鋳造用中子100の第1部分1(図3および図4参照)を構成する。第1中子部10の第2部材17と、第2中子部20の第5部材27とは、鋳造用中子100の第2部分2(図3および図4参照)を構成する。第1中子部10の第3部材18と、第2中子部20の第6部材28とは、鋳造用中子100の第3部分3(図3および図4参照)を構成する。以上のように、鋳造用中子100が作製される。
【0074】
次に、実施の形態1に係る鋳造用中子100および中空鋳物の製造方法の作用効果について説明する。
【0075】
中空鋳物200の薄肉部73は、第2厚肉部72と堰94との間に形成される。薄肉部73の肉厚は、第2厚肉部72の肉厚よりも薄い。このため、中空鋳物200を鋳造する際に、薄肉部73は、第2厚肉部72よりも早く凝固する。この場合、押湯93および堰94から第2厚肉部72の未凝固部に溶湯97を供給することができない。言い換えれば、第2厚肉部72において、凝固していない部分であり且つ凝固した他の部分に取り囲まれている部分(孤立未凝固部)が発生する。孤立未凝固部が凝固しつつ収縮することによって、第2厚肉部72に引け巣が発生することがある。
【0076】
中空鋳物200における引け巣を抑制するための方法として、複数の押湯93と複数の堰94とを設ける方法がある。具体的には、たとえば押湯93および堰94から第2厚肉部72へ溶湯97が直接供給されるように、押湯93および堰94の各々が設けられる。しかしながら、この場合、鋳造物320において、複数の第3被除去部79が形成される。このため、第3被除去部79を除去するための時間が増加する。
【0077】
中空鋳物200における引け巣を抑制するための別の方法として、第2厚肉部72の周辺に冷金を設置する方法がある。冷金によって第2厚肉部72の冷却速度が速められ、第2厚肉部72は、薄肉部73よりも早く凝固することができる。しかしながら、この場合、冷金を作製するコストと、冷金を配置する作業時間とが必要になる。このため、中空鋳物200の作製コストが増大する。また、冷金の周辺にある中空鋳物200の部分において、チル化が発生するおそれがある。チル化とは、鋳物の欠陥の一種である。チル化は、溶湯97の冷却速度が過度に速い場合に発生する。チル化が生じた鋳物においては、鋳物断面の一部または表面層の一部が白銑化する。白銑化した部分は硬いため、鋳物の機械加工が困難になる。
【0078】
実施の形態1に係る鋳造用中子100においては、流路8と内部空間9とが設けられている。流路8は、部品形状空間95に連なる。内部空間9は、流路8に連なっている。内部空間9は、薄肉部73に囲まれる位置にある。このため、部品形状空間95に充填された溶湯97は、流路8を経由して内部空間9に充填される。内部空間9に充填された溶湯97から、鋳造用中子100の第2部分2を介して、薄肉部73に熱量が供給される。これによって、薄肉部73の凝固を遅らせることができる。言い換えれば、第2厚肉部72と堰94との間の領域において、溶湯97は液体のまま維持される。このため、第2厚肉部72において孤立未凝固部が発生することを抑制できる。この結果、中空鋳物200の肉厚を厚くすることなく、中空鋳物200における引け巣の発生を抑制できる。このため、中空鋳物200の機械的特性を向上できる。これによって、中空鋳物200の信頼性を向上できる。
【0079】
また、第2厚肉部72へ溶湯97が直接供給されるように堰94を設ける必要がなくなる。このため、第3被除去部79を除去するための時間の増加を抑制できる。この結果、中空鋳物200の加工時間を低減できる。
【0080】
実施の形態1に係る鋳造用中子100によれば、流路8の少なくとも一部は、直線状に延びている。このため、流路8の形状を簡易化できる。これによって、流路8の形状が複雑である場合と比較して、溶湯97が流路8を通過するために必要な時間を短くすることができる。このため、流路8を通過する溶湯97の温度の低下を抑制できる。この結果、内部空間9に充填された溶湯97から、薄肉部73に供給される熱量を増大できる。また、流路8の形状が簡単であるため、鋳造用中子100の作製時間を低減できる。
【0081】
実施の形態1に係る鋳造用中子100の製造方法によれば、機械加工によって、第1被除去部77が除去されてもよい。このため、除去された第1被除去部77と第2被除去部78とを再溶解することによって、第1被除去部77および第2被除去部78の各々は、リターン材として再利用できる。これによって、内部空間9が設けられていない鋳造用中子100を用いる場合と比較して、材料費を増加させることなく、中空鋳物200における引け巣の発生を抑制できる。
【0082】
実施の形態1に係る鋳造用中子100によれば、内部空間9の第4直径D4は、鋳造用中子100の第1直径D1、第2直径D2および第3直径D3の各々よりも小さい。このため、第2被除去部78の直径は、中空鋳物200の第3内壁面53および第5内壁面55の各々の直径よりも小さい。これによって、除去工程(S40)において、第2被除去部78を変形することなく、中空鋳物200の穴99から第2被除去部78を取り除くことができる。この結果、中空鋳物200の作製に必要な時間を低減できる。
【0083】
流路8の直径が内部空間9の直径(第4直径D4)よりも大きい場合、内部空間9に充填された溶湯97は、流路8に充填された溶湯97よりも先に凝固することがある。この場合、内部空間9に充填された溶湯97が凝固する際に、部品形状空間95から流路8を経由して内部空間9へ、溶湯97が供給される。その後、流路8に充填された溶湯97が凝固する際に、部品形状空間95から流路8へ、溶湯97が供給される。このため、部品形状空間95から鋳造用中子100の内部へ供給される溶湯97の体積が増大する。これによって、中空鋳物200において、引け巣が発生するおそれがある。
【0084】
実施の形態1に係る鋳造用中子100によれば、流路8の直径は、内部空間9の直径(第4直径D4)よりも小さい。このため、流路8に充填された溶湯97が、内部空間9に充填された溶湯97よりも早く凝固する。これによって、内部空間9に充填された溶湯97が凝固する際に、部品形状空間95から内部空間9へ溶湯97が供給されることを抑制できる。この結果、中空鋳物200における引け巣の発生を抑制できる。
【0085】
実施の形態1に係る鋳造用中子100によれば、第1内壁面21の延在方向に垂直な断面において、第1内壁面21の形状は円形である。このため、第1内壁面21の形状を簡易化ができる。これによって、内部空間9に溶湯97が充填される際に、溶湯97に接する第1内壁面21の表面積を小さくすることができる。このため、第1内壁面21の断面形状が複雑である場合と比較して、内部空間9に充填される溶湯97の温度の低下を抑制できる。これによって、内部空間9に充填された溶湯97から、薄肉部73に供給される熱量を増大できる。また、第1内壁面21の形状が簡単であるため、鋳造用中子100の作製時間を低減できる。
【0086】
実施の形態1に係る中空鋳物200は、球状黒鉛鋳鉄によって構成されていてもよい。球状黒鉛鋳鉄は、引け巣が発生しやすい性質を有している。このように引け巣が発生しやすい材料を用いて中空鋳物200を作製する場合においても、実施の形態1に係る鋳造用中子100によれば、中空鋳物200における引け巣の発生を抑制できる。
【0087】
なお、上記において、第1部分1、第2部分2および第3部分3の各々の形状が円柱状である構成について説明したが、本開示は上記構成に限定されない。具体的には、第1部分1の第1外壁面11、第2部分2の第2外壁面12および第3部分3の第3外壁面13の各々の形状は、中空鋳物200の形状によって決定される。
【0088】
第1内壁面部23が設けられる位置は、機械加工による第1被除去部77の除去が容易な位置であることが好ましい。具体的には、たとえば第1被除去部77が中空鋳物200の第1厚肉部71の端部に連なるように、第1内壁面部23が設けられることが好ましい。これによって、中空鋳物200の加工時間を低減できる。
【0089】
流路8に充填された溶湯97は、鋳造用中子100を介して、部品形状空間95に充填されている溶湯97に間接的に熱量を供給する。このため、第1厚肉部71または薄肉部73の凝固を遅らせるために、第1厚肉部71または薄肉部73に近い部分において、流路8が設けられていることが好ましい。
【0090】
配置工程(S10)において、冷却速度が速い中空鋳物200の部分の周囲に、内部空間9と流路8とが配置されてもよい。これによって、冷却速度が速い中空鋳物200の部分の冷却速度を遅くすることができる。このため、中空鋳物200におけるチル化の発生を抑制できる。
【0091】
(実施の形態1の変形例)
次に、図22および図23を用いて、実施の形態1に係る鋳造用中子100の変形例の構成について説明する。図22に示される縦断面模式図は、図5に示される縦断面模式図に対応している。図23に示される縦断面模式図は、図5に示される縦断面模式図に対応している。
【0092】
図22に示されるように、第1内壁面21の延在方向に垂直な断面において、第1内壁面21の形状は矩形であってもよい。別の観点から言えば、流路8の形状は直方体状であってもよい。図23に示されるように、第1内壁面21の延在方向に垂直な断面において、第1内壁面21の形状は台形であってもよい。別の観点から言えば、流路8の形状は四角柱状であってもよい。
【0093】
実施の形態2.
次に、図24を用いて、実施の形態2に係る鋳造用中子100の構成について説明する。実施の形態2に係る鋳造用中子100は、主に、流路8の形状が直線状である点において、実施の形態1に係る鋳造用中子100の構成と異なっており、その他の点については、実施の形態1に係る鋳造用中子100の構成と実質的に同一である。以下、実施の形態1に係る鋳造用中子100の構成と異なる点を中心に説明する。
【0094】
図24に示されるように、前後方向Yに平行な断面において、流路8の形状は直線状であってもよい。流路8は、たとえば前後方向Yに垂直な方向に沿って延在していてもよい。第2外壁面12において、流入口7が設けられていてもよい。鋳造用中子100の第1部分1および第3部分3の各々は、中実であってもよい。
【0095】
実施の形態2に係る鋳造用中子100によれば、流路8の形状は直線状であってもよい。これによって、流路8の全長を短くすることができる。このため、溶湯97が流路8を通過するために必要な時間を短くすることができる。これによって、流路8の全長が長い場合と比較して、流路8を通過する溶湯97の温度の低下を抑制できる。この結果、内部空間9に充填された溶湯97から、薄肉部73に供給される熱量を増大できる。また、流路8の形状が簡単であるため、鋳造用中子100の作製時間を低減できる。
【0096】
実施の形態3.
次に、図25および図26を用いて実施の形態3に係る鋳造用中子100の構成について説明する。実施の形態3に係る鋳造用中子100は、主に、第2内壁面22が第2外壁面12の形状に沿って設けられている点において、実施の形態1に係る鋳造用中子100の構成と異なっており、その他の点については、実施の形態1に係る鋳造用中子100の構成と実質的に同一である。以下、実施の形態1に係る鋳造用中子100の構成と異なる点を中心に説明する。
【0097】
図25に示される断面は、前後方向Yに平行であり、且つ中心軸Oを含む断面である。図25に示されるように、第2部分2の外形は、直方体状であってもよい。第2内壁面22は、第2外壁面12の形状に沿って設けられていてもよい。具体的には、第2内壁面22の形状は、直方体状であってもよい。
【0098】
図26に示される断面は、前後方向Yに垂直であり、且つ第2内壁面22と交差する断面である。図25および図26に示されるように、上下方向Zにおける第2外壁面12と第2内壁面22との間の距離は、第1厚みW1とされる。第1厚みW1は、上下方向Zにおける第2部分2の肉厚である。第2外壁面12と第2内壁面22との間に位置する第2部分2の全域に渡って、第1厚みW1は、実質的に一定であってもよい。
【0099】
図26に示されるように、左右方向Xにおける第2外壁面12と第2内壁面22との間の距離は、第2厚みW2とされる。第2厚みW2は、左右方向Xにおける第2部分2の肉厚である。第2外壁面12と第2内壁面22との間に位置する第2部分2の全域に渡って、第2厚みW2は、実質的に一定であってもよい。
【0100】
第2厚みW2は、第1厚みW1と実質的に同じであってもよい。別の観点から言えば、周方向において、第2部分2の肉厚は、実質的に一定であってもよい。
【0101】
実施の形態3に係る鋳造用中子100によれば、第2内壁面22は、第2外壁面12の形状に沿って設けられていてもよい。このため、第2内壁面22が第2外壁面12の形状に沿っていない場合と比較して、内部空間9の体積を増大することができる。別の観点から言えば、第2内壁面22と、薄肉部73との間の距離を短くすることができる。これによって、内部空間9に充填された溶湯97から、薄肉部73に供給される熱量を増大できる。
【0102】
また、実施の形態3に係る鋳造用中子100によれば、第2内壁面22が第2外壁面12の形状に沿っていない場合と比較して、第2部分2の全周に渡って、内部空間9に充填された溶湯97から薄肉部73に、実質的に均一に熱量を供給することができる。このため、薄肉部73の全域において、凝固を遅くすることができる。
【0103】
(実施の形態3の変形例)
次に、図27から図29を用いて、実施の形態3に係る鋳造用中子100の変形例の構成について説明する。図27に示される斜視断面模式図は、図25に示される斜視断面模式図に対応している。図28に示される斜視断面模式図は、図25に示される斜視断面模式図に対応している。図29に示される斜視断面模式図は、図25に示される斜視断面模式図に対応している。
【0104】
図27に示されるように、第2部分2の外形は、円柱状であってもよい。第2内壁面22の形状は、楕円体状であってもよい。第2内壁面22の形状は、長球状であってもよい。図28に示されるように、第2部分2の外形は、円錐台状であってもよい。第2内壁面22の形状は、円錐台状であってもよい。第1厚みW1は、第2外壁面12に垂直な方向における第2部分2の厚みであってもよい。図29に示されるように、第2部分2の外形は、角錐台状であってもよい。第2内壁面22の形状は、角錐台状であってもよい。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0106】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0107】
(付記1)
中空鋳物を鋳造する際に鋳型内に配置される鋳造用中子であって、
前記鋳型において、溶湯が充填され且つ前記中空鋳物を形成する部品形状空間と、前記部品形状空間に連なっている堰とが設けられており、
前記中空鋳物は、厚肉部と、前記厚肉部と前記堰との間に形成される薄肉部とを有し、
前記鋳造用中子において、前記部品形状空間に連なる流路と、前記流路に連なっている内部空間とが設けられており、
前記内部空間は、前記薄肉部に囲まれる位置にある、鋳造用中子。
【0108】
(付記2)
前記流路の少なくとも一部は、直線状に延びている、付記1に記載の鋳造用中子。
【0109】
(付記3)
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は円形である、付記1または付記2に記載の鋳造用中子。
【0110】
(付記4)
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は矩形である、付記1または付記2に記載の鋳造用中子。
【0111】
(付記5)
前記流路を形成している第1内壁面を備え、
前記第1内壁面の延在方向に垂直な断面において、前記第1内壁面の形状は台形である、付記1または付記2に記載の鋳造用中子。
【0112】
(付記6)
前記内部空間を形成している第2内壁面と、
前記薄肉部に接し且つ前記第2内壁面を取り囲んでいる外壁面とをさらに備え、
前記第2内壁面は、前記外壁面の形状に沿って設けられている、付記1から付記5のいずれか1項に記載の鋳造用中子。
【0113】
(付記7)
付記1から付記6のいずれか1項に記載の鋳造用中子を前記鋳型の中に配置する工程と、
前記鋳型の中に前記溶湯を流し込むことによって前記部品形状空間および前記内部空間の各々に前記溶湯を充填する工程とを備えている、中空鋳物の製造方法。
【0114】
(付記8)
前記流路において前記溶湯が凝固することによって形成された被除去部を機械加工によって除去する工程をさらに備えている、付記7に記載の中空鋳物の製造方法。
【符号の説明】
【0115】
1 第1部分、2 第2部分、3 第3部分、7 流入口、8 流路、9 内部空間、10 第1中子部、11 第1外壁面、12 第2外壁面、13 第3外壁面、15 第1面、16 第1部材、17 第2部材、18 第3部材、19 第1中間面、20 第2中子部、21 第1内壁面、22 第2内壁面、23 第1内壁面部、24 第2内壁面部、25 第2面、26 第4部材、27 第5部材、28 第6部材、29 第2中間面、31 第1端面、32 第2端面、33 第3端面、34 第4端面、35 第5端面、36 第6端面、41 第1凸部、42 第2凸部、43 第3凸部、44 第4凸部、45 第5凸部、46 第6凸部、47 第1外周面、48 第2外周面、49 第3外周面、51 第1凹面、52 第2凹面、53 第3内壁面、54 第4内壁面、55 第5内壁面、61 第1金型、62 第2金型、63 第3金型、64 第1合わせ面、65 第2合わせ面、66 第3合わせ面、69 吹き込み口、71 第1厚肉部、72 第2厚肉部、73 薄肉部、77 第1被除去部、78 第2被除去部、79 第3被除去部、81 第1流路部、82 第2流路部、83 第3中間面、84 第4中間面、88 第1鋳型部、89 第2鋳型部、90 バリ、91 湯口、92 湯道、93 押湯、94 堰、95 部品形状空間、96 取鍋、97 溶湯、98 中子砂、99 穴、100 鋳造用中子、101 矢印、200 中空鋳物、300 鋳型、320 鋳造物、D1 第1直径、D2 第2直径、D3 第3直径、D4 第4直径、O 中心軸、W1 第1厚み、W2 第2厚み、X 左右方向、Y 前後方向、Z 上下方向。
図1
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