(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177035
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】凍土形成装置及び凍土造成方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/115 20060101AFI20231206BHJP
E02D 19/14 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E02D3/115
E02D19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089716
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】岡部 光宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 昌也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健治
(72)【発明者】
【氏名】江崎 太一
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA14
(57)【要約】
【課題】設置スペースを抑えながら、冷却する地盤の深度領域を選択可能とする凍土形成装置及び凍土造成方法を提供する。
【解決手段】凍土形成装置1は、地盤Gに埋入され上端側に冷媒入口管7及び冷媒出口管9が設けられた凍結管3を備える凍土形成装置1であって、凍結管3は、上端側に冷媒出口管9が設けられ下端側に底部をもつ外管部21と、外管部21の中空部21h内に配置され冷媒入口管7からの冷媒を外管部21の中空部21h内に供給する供給口23a,25aを含む短尺内管23及び長尺内管25と、を有し、供給口23a,25aの深さ方向の位置が可変である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋入され埋入深さ方向の浅部側に冷媒の入口及び出口が設けられ、前記冷媒が内部で流動する凍結管を備える凍土形成装置であって、
前記凍結管は、
前記浅部側に前記出口が設けられ前記埋入深さ方向の深部側に底部をもつ外管部と、
前記外管部の中空部内に配置され前記入口からの冷媒を前記外管部の前記中空部内に供給する供給口を含む供給部と、を有し、
前記供給部の前記供給口の前記埋入深さ方向の位置が可変である、凍土形成装置。
【請求項2】
前記供給部は、
前記外管部の前記中空部内に並列して配置され、前記埋入深さ方向の位置が互いに異なる前記供給口をそれぞれ含む複数の内管と、
前記入口からの前記冷媒の送出先を複数の前記内管の何れかに選択的に切り替え可能な切替手段と、を備える、請求項1に記載の凍土形成装置。
【請求項3】
前記供給部は、
前記外管部の前記中空部に設けられた第1内管と、
前記第1内管の中空部を通過して前記第1内管よりも前記深部側まで延びる第2内管と、
前記第1内管の前記深部側の一端において当該第1内管と前記第2内管との隙間の開口として形成され前記供給口として機能する第1供給口と、
前記第2内管の前記深部側の一端の開口として形成され前記供給口として機能する第2供給口と、
前記入口からの前記冷媒の送出先を少なくとも前記第1内管と前記第2内管とに選択的に切り替え可能な切替手段と、を備える、請求項1に記載の凍土形成装置。
【請求項4】
前記供給部は、
前記外管部の前記中空部を通過して延びる内管と、
前記内管の前記深部側の一端の開口として形成された前記供給口と、を備え、
前記内管の位置が、前記外管部に対して前記埋入深さ方向に可変である、請求項1に記載の凍土形成装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の凍土形成装置を用いて地盤中に凍土を造成する凍土造成方法であって、
前記埋入深さ方向における深部側において前記中空部内に前記供給口から前記冷媒を供給し、前記地盤中に凍土を形成する凍土形成工程と、
前記凍土形成工程よりも前記埋入深さ方向における浅部側において、前記中空部内に前記供給口から前記冷媒を供給し、前記凍土を維持する凍土維持工程と、を備える凍土造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍土形成装置及び凍土造成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、例えば、下記特許文献1に記載されているような凍土造成方法が知られている。この凍土造成方法は、
図6に模式的に示されるように、凍結管103を地盤G中に複数埋入し、各凍結管103に冷媒を循環させて凍土遮水壁を造成するものである。凍結管103は、外管部21と内管25とを有する二重管構造をなしており、送り用冷媒管11に接続された冷媒入口管7と、戻り用冷媒管13に接続された冷媒出口管9と、を備えている。送り用冷媒管11からの冷媒が、冷媒入口管7を通じて凍結管103に導入されると、内管25、内管25の下端の供給口25a、外管部21の中空部21hを順に流動し、冷媒出口管9を通じて戻り用冷媒管13に戻される。このような各凍結管103によって地盤Gが冷却され、凍土遮水壁が形成される。
【0003】
この種の凍土造成方法では、凍土の過度な成長を抑制するために、冷熱供給時間を限定する維持管理運転が実施される。維持管理運転では、凍土温度が十分に低い時は冷媒循環が停止される。そして、凍土温度が所定よりも高くなったときには冷媒循環が再開される。このような制御により、凍土の温度が適切に維持され、当該凍土の強度が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、地表面に比較的近い地盤浅部は、気温の影響により地盤深部と比較して凍土温度が高い傾向にある。従って、地盤深部において凍土が十分に成長していても、地盤浅部における凍土の温度が高ければ、維持管理運転における冷媒の循環を行なわざるを得ない。そうすると、
図7に示されるように、地盤深部においては凍土Fが過度に成長するといった事象が発生し易くなる。凍土Fが過度に成長すれば、地盤の膨張により周辺地盤に変形が生じ周辺構造物に悪影響を及ぼす虞があり、また、凍土Fを解凍する際においても周辺地盤や周辺構造物への悪影響を及ぼす虞がある。また、凍土Fの過度な成長のための冷却電力の無駄にもなる。
【0006】
そこで、冷却する地盤の深度領域を凍結管103の埋入深さ方向で選択可能とし、合理的に地盤を冷却可能とすることが求められる。特許文献1の凍土造成方法では、地盤浅部の地盤のみを冷却可能とすべく、地表面G1近傍で水平方向に延びる水平凍結管107が追加で埋設されている。
【0007】
しかしながら、一般的にこの種の凍土造成方法では、凍結管103を比較的狭いピッチ(例えば80cmピッチ)で設置する必要があり、凍結管103自体も上記ピッチに対してあまり小さくない径(例えば10cm径)をもつ。また、地表面G1近傍では、各凍結管103に対してそれぞれ冷媒入口管7及び冷媒出口管9等の配管が存在しており、断熱材等も設置されるので、地盤浅部は比較的狭隘である。従って、上記のような水平凍結管107やこれらに伴って必要な配管等の設備を追加することが設置スペースの観点から困難な場合もある。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明は、設置スペースを抑えながら、冷却する地盤の深度領域を選択可能とする凍土形成装置及び凍土造成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
〔1〕地盤に埋入され埋入深さ方向の浅部側に冷媒の入口及び出口が設けられ、前記冷媒が内部で流動する凍結管を備える凍土形成装置であって、前記凍結管は、前記浅部側に前記出口が設けられ前記埋入深さ方向の深部側に底部をもつ外管部と、前記外管部の中空部内に配置され前記入口からの冷媒を前記外管部の前記中空部内に供給する供給口を含む供給部と、を有し、前記供給部の前記供給口の前記埋入深さ方向の位置が可変である、凍土形成装置。
【0011】
〔2〕前記供給部は、前記外管部の前記中空部内に並列して配置され、前記埋入深さ方向の位置が互いに異なる前記供給口をそれぞれ含む複数の内管と、前記入口からの前記冷媒の送出先を複数の前記内管の何れかに選択的に切り替え可能な切替手段と、を備える、〔1〕に記載の凍土形成装置。
【0012】
〔3〕前記供給部は、前記外管部の前記中空部に設けられた第1内管と、前記第1内管の中空部を通過して前記第1内管よりも前記深部側まで延びる第2内管と、前記第1内管の前記深部側の一端において当該第1内管と前記第2内管との隙間の開口として形成され前記供給口として機能する第1供給口と、前記第2内管の前記深部側の一端の開口として形成され前記供給口として機能する第2供給口と、前記入口からの前記冷媒の送出先を少なくとも前記第1内管と前記第2内管とに選択的に切り替え可能な切替手段と、を備える、〔1〕に記載の凍土形成装置。
【0013】
〔4〕前記供給部は、前記外管部の前記中空部を通過して延びる内管と、前記内管の前記深部側の一端の開口として形成された前記供給口と、を備え、前記内管の位置が、前記外管部に対して前記埋入深さ方向に可変である、〔1〕に記載の凍土形成装置。
【0014】
〔5〕〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載の凍土形成装置を用いて地盤中に凍土を造成する凍土造成方法であって、前記埋入深さ方向における深部側において前記中空部内に前記供給口から前記冷媒を供給し、前記地盤中に凍土を形成する凍土形成工程と、前記凍土形成工程よりも前記埋入深さ方向における浅部側において、前記中空部内に前記供給口から前記冷媒を供給し、前記凍土を維持する凍土維持工程と、を備える凍土造成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設置スペースを抑えながら、冷却する地盤の深度領域を選択可能とする凍土形成装置及び凍土造成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る凍土形成装置が設置された地盤を示す断面図である。
【
図2】(a)は、第1実施形態の凍結管の一本を示す鉛直断面図であり、(b)は、そのIIb-IIb断面図である。
【
図3】(a)は、第2実施形態の凍結管の一本を示す鉛直断面図であり、(b)は、そのIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】(a),(c)は、第3実施形態の凍結管の一本をそれぞれ示す鉛直断面図であり、(b)は、そのIVb-IVb断面図である。
【
図5】参考形態に係る凍土形成装置が設置された地盤を示す断面図である。
【
図6】従来の凍土形成装置が設置された地盤を示す断面図である。
【
図7】従来の凍土形成装置の凍結管により形成される凍土を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る凍土形成装置及び凍土造成方法の実施形態について詳細に説明する。以下、同一または同等の構成要素には図面で同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る凍土形成装置1が設置された地盤Gを示す断面図である。凍土形成装置1は、地盤G中に遮水のための凍土壁を造成するものである。凍土形成装置1は、地表面G1から鉛直下方に向けて地盤Gに埋入された複数の凍結管3を備えている。凍土形成装置1は、これらの各凍結管3内に冷媒を流動させることで地盤Gを冷却し凍土を形成させる。凍結管3は、凍土壁の造成予定位置に沿って平面視で一次元的に等ピッチで配列されている。凍結管3の配列ピッチは例えば約80cmである。
【0019】
各凍結管3は、地盤Gに埋入された凍結管本体部5と、凍結管本体部5の上端部に設けられた冷媒入口管7及び冷媒出口管9とを有している。凍結管本体部5は、鉛直方向を円柱軸とする直径約10cm程度の円柱状をなしている。凍結管本体部5の埋入深さは、凍土の造成予定領域の深さに応じて設定され、例えば10~50m程度である。凍結管本体部5の上端部は地表面G1上に突出しており、この突出した凍結管本体部5の上端部に冷媒入口管7及び冷媒出口管9の一端がそれぞれ接続されている。凍結管本体部5の内部には、冷媒入口管7から冷媒出口管9まで冷媒を流通させる冷媒流路が形成されている。冷媒入口管7の他端側は送り用冷媒管11に接続されており、冷媒出口管9の他端側は戻り用冷媒管13に接続されている。送り用冷媒管11及び戻り用冷媒管13は、所定の冷凍設備(図示しない)に接続されている。
【0020】
上記のような凍土形成装置1においては、冷凍設備から送り用冷媒管11を通じて供給される冷媒が、各冷媒入口管7を通じて各凍結管3に導入される。供給される冷媒の温度は、例えば-30℃である。導入された冷媒は、各凍結管3の凍結管本体部5内部の冷媒流路を流通した後、各冷媒出口管9から排出される。その後、冷媒は戻り用冷媒管13を通じて冷凍設備に返送される。このような冷媒の循環によって、各凍結管の凍結管本体部5の周囲において、地盤G中の水分が凍結して凍土が形成され、この凍土が凍結管3の配列方向に互いに繋がることにより、凍土壁が造成される。上記冷媒としては、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液等が用いられる。
【0021】
続いて、上記凍結管3について更に詳細に説明する。
図2(a)は、凍結管3の一本を示す鉛直断面図であり、
図2(b)は、そのIIb-IIb断面図である。凍結管3の凍結管本体部5は、図に示されるように、外管部21と、短尺内管23と、長尺内管25と、を備えている。外管部21と、短尺内管23と、長尺内管25と、はすべて円管状をなす。外管部21は下端に底壁21bをもつ有底の管状体であり、凍結管本体部5の外殻を構成している。外管部21の外周壁の上端部には冷媒出口管9が接続されている。
【0022】
短尺内管23及び長尺内管25は、当該外管部21の中空部21h内に並列して平行に設置され、外管部21の管軸方向に延在している。冷媒入口管7は、分岐管7a,7bの2本に分岐しており、分岐管7aはバルブVaを介して短尺内管23の上端に接続され、分岐管7bはバルブVbを介して長尺内管25の上端に接続されている。なお、
図1においては、分岐管7a,7b及びバルブVa,Vbの図示が省略されている。
【0023】
短尺内管23の下端及び長尺内管25の下端は、それぞれ外管部21の中空部21h内に存在している。長尺内管25の下端は、外管部21の底壁21bの直近に位置している。短尺内管23の下端は、長尺内管25の下端よりも浅い位置に位置している。短尺内管23の下端に開口する管口は、冷媒入口管7からの冷媒を比較的浅い位置で外管部21の中空部21h内に供給する第1供給口23aとして機能する。長尺内管25の下端に開口する管口は、冷媒入口管7からの冷媒を比較的深い位置で外管部21の中空部21h内に供給する第2供給口25aとして機能する。
【0024】
上記のような凍結管3において、バルブVaが閉状態、バルブVbが開状態とされると、冷媒入口管7からの冷媒は、長尺内管25を通じて第2供給口25aから底壁21b近傍の位置で中空部21h内に供給される。その後、冷媒は中空部21h内を上昇し、冷媒出口管9に排出される。すなわちこの場合、冷媒は、凍結管本体部5の深さ方向の全長に亘って流動する。従って、凍結管本体部5の周囲の地盤Gは、凍結管本体部5の深さ方向の全長に亘って冷却され、すなわち、造成予定の凍土壁のすべての深度領域が冷却される。
【0025】
一方、バルブVaが開状態、バルブVbが閉状態とされると、冷媒入口管7からの冷媒は、短尺内管23を通じて第1供給口23aから比較的浅い位置で中空部21h内に供給される。中空部21h内で第1供給口23aよりも深い部分には、既に冷媒が充填されているので、第1供給口23aから供給される冷媒は下方に流動し難く、中空部21h内で冷媒出口管9に向けて流動する傾向にある。従って、ほとんどの上記冷媒は中空部21h内を上昇し、冷媒出口管9に排出される。すなわちこの場合、冷媒は、凍結管本体部5のうち、概ね第1供給口23aよりも浅い部分のみに流動する。従って、凍結管本体部5の周囲の地盤Gは、概ね第1供給口23aよりも浅い部分のみが冷却される。
【0026】
上記のように、短尺内管23及び長尺内管25は、中空部21h内への冷媒の供給口23a,25aを含む供給部20を構成する。また、凍土形成装置1における凍結管3のバルブVa,Vbは、冷媒入口管7からの冷媒の送出先を複数の内管(短尺内管23及び長尺内管25)の何れかに選択的に切り替え可能な切替手段として機能する。なお、凍土形成装置1は、上記バルブVa,Vbを含んで冷媒の循環経路を制御する制御装置を備えてもよい。このような切替手段により、冷媒入口管7からの冷媒を外管部21の中空部21hに供給する供給口(第1供給口23a及び第2供給口25a)の深さ方向の位置を可変にすることができる。第1供給口23aの深さ方向の位置は、地表面G1から例えば深さ1~5mの位置に設定される。第2供給口25aの深さ方向の位置は、外管部21の底壁21bの直近の位置に設定される。
【0027】
以上のような凍土形成装置1による作用効果について説明する。凍土形成装置1によれば、各凍結管3において、冷媒入口管7からの冷媒を外管部21の中空部21hに供給する供給口の深さ方向の位置を可変にすることができる。そして、各凍結管3においては、概ね供給口(第1供給口23a又は第2供給口25a)よりも浅い位置のみで地盤Gが冷却される。従って、凍土形成装置1によれば、冷却する地盤の深度領域を選択することができる。例えば、前述したように、冷却する地盤の深度領域を、凍土壁の造成予定領域のすべての深度領域とするか、造成予定領域のうち所定よりも浅い深度領域のみとするか、を選択することができる。
【0028】
また、凍結管3においては、凍結管本体部5の外殻をなす外管部21内に短尺内管23及び長尺内管25が収められているので、1本の凍結管3あたりの占有領域は、例えば
図6で説明したような凍結管103と同等に抑えることができる。そして、外管部21の外側には、例えば、
図6における水平凍結管107などの大きな設備を追加する必要が無い。従って、凍土形成装置1の設置スペースは抑えられ、狭隘な場所で機器の設置に制約がある場合にも、凍土形成装置1を適用することができる。
【0029】
また、冷媒入口管7、冷媒出口管9、送り用冷媒管11、及び戻り用冷媒管13など、凍結管3に接続される冷媒循環ラインは、
図6で説明したような凍結管103の場合と同じであるので、特別な配管作業等を必要とせず、例えば継手部からの冷媒漏洩等のリスクも小さい。
【0030】
また、凍結管3における外管部21は、
図6で説明したような凍結管103の外管部21と同じ構造をなすので、凍結管3の構成は、既に施工済みの凍結管にも適用することができる。すなわち、例えば既に地盤G中に埋設された凍結管103において、外管部21の中空部内の構造を差替えることで凍結管3の構造に改変することができる。
【0031】
以上のような凍土形成装置1を用いて実施される凍土造成方法は、例えば次のようなものである。この凍土形成装置1において、まず、地盤G中に凍土壁が形成される前は、各凍結管3においてバルブVaが閉状態、バルブVbが開状態とされることで、外管部21の中空部21h内に第2供給口25aから冷媒が供給される。そうすると、前述の通り、凍土壁の造成予定領域のすべての深度領域が冷却され、最終的に凍土壁が完成する(凍土形成工程)。そして、バルブVa、Vbが両方とも閉状態とされ冷媒の循環が停止される。
【0032】
その後、凍土壁のうち浅い部分は、気温の影響により温度上昇し易いので、所定以上の凍土温度が検知されたときに、バルブVaが開状態、バルブVbが閉状態とされる。これにより、外管部21の中空部21h内に第1供給口23aから冷媒が供給される。そうすると、前述の通り、凍土壁の造成予定領域のうち概ね第1供給口23aよりも浅い深度領域のみが冷却され、当該領域における凍土壁の温度が低下する。このとき、概ね第1供給口23aよりも深い深度領域は冷却されないので、凍土壁の深部の成長を促進することは避けられる。上記の凍土形成工程で凍土壁が形成された後は、このような制御が実行されることで凍土壁の温度が維持され、凍土が適切に維持される(凍土維持工程)。また、この制御を実行可能にするために、凍土壁の造成予定領域には、凍土温度を測定するための測温管(図示せず)が設置されている。
【0033】
このような凍土造成方法によれば、凍土維持工程において、本来は冷却不要な凍土壁の深部が冷却されることが避けられ、凍土壁の深部が過度に成長することが回避される。従って、本来は不要な冷却電力の無駄が低減される。また、凍土壁の深部の過度な成長による周辺地盤や周辺構造物への悪影響も抑制される。
【0034】
〔第2実施形態〕
図3を参照しながら本発明の凍土形成装置の第2実施形態について説明する。本実施形態の凍土形成装置1Bは、第1実施形態の凍土形成装置1における凍結管3に代えて、
図3に示される凍結管3Bを備えるものである。
図3(a)は、凍結管3Bの一本を示す鉛直断面図であり、
図3(b)は、そのIIIb-IIIb断面図である。図に示されるように、凍結管3Bは、凍結管3の長尺内管25に代えて、長尺内管25Bを備えている。長尺内管25は、短尺内管23に対して並列に設けられるのに対し、長尺内管25B(第2内管)は、短尺内管23(第1内管)の中空部23hを通過している。そして長尺内管25Bは、短尺内管23よりも深部側まで延び、長尺内管25Bの下端は外管部21の底壁21bの直近に位置している。すなわち、短尺内管23と長尺内管25Bとが二重管構造をなしている。
【0035】
この構造によれば、短尺内管23の下端における当該短尺内管23と長尺内管25Bとの隙間の円環状の開口が第1供給口23aとして機能する。また、長尺内管25Bの下端に開口する管口が第2供給口25aとして機能する。そして、第1実施形態と同様に、バルブVa,Vbを含む切替手段により、冷媒入口管7からの冷媒を外管部21の中空部21hに供給する供給口(第1供給口23a及び第2供給口25a)の深さ方向の位置を可変にすることができる。従って、上述のような凍結管3Bを備える本実施形態の凍土形成装置1Bによっても、第1実施形態の凍土形成装置1と同様の作用効果が得られるとともに、第1実施形態と同様の凍土造成方法を実行することができる。
【0036】
〔第3実施形態〕
図4を参照しながら本発明の凍土形成装置の第3実施形態について説明する。本実施形態の凍土形成装置1Cは、第1実施形態の凍土形成装置1における凍結管3に代えて、
図4に示される凍結管3Cを備えるものである。
図4(a)は、凍結管3Cの一本を示す鉛直断面図であり、
図4(b)は、そのIVb-IVb断面図である。
図4(c)は、
図4(a)とは別の状態の凍結管3Cの一本を示す鉛直断面図である。凍結管3Cは、凍結管3の長尺内管25に代えて、可動の長尺内管25Cを備えている。また、凍結管3Cでは、凍結管3における短尺内管23が省略されている。
【0037】
長尺内管25Cは、外管部21の上壁21kを貫通して中空部21h内に挿入されている。長尺内管25Cは、外管部21に平行に延在しており、外管部21に対して管軸方向に可動である。上壁21kと長尺内管25Cとの接合部には、両者の隙間を水密に塞ぎながら、上壁21kに対する長尺内管25Cの移動を可能にするための所定の水密可動機構が設けられる。また、長尺内管25Cを上下動させるための駆動装置(図示せず)が設けられてもよい。
【0038】
長尺内管25Cの上端は、バルブVを介して冷媒入口管7に接続されており、長尺内管25Cの下端に開口する管口は、冷媒入口管7からの冷媒を外管部21の中空部21h内に供給する供給口25dとして機能する。長尺内管25Cは、
図4(a)に示されるように、供給口25dが外管部21の底壁21bの直近に位置するような位置に移動することが可能である。また、長尺内管25Cは、
図4(c)に示されるように、供給口25dが底壁21bから離れて浅い位置に位置するような位置に移動することも可能である。
【0039】
この構造によれば、長尺内管25Cが管軸方向に移動することで、冷媒入口管7からの冷媒を外管部21の中空部21hに供給する供給口25dの深さ方向の位置を可変にすることができる。従って、上述のような凍結管3Cを備える本実施形態の凍土形成装置1Cによっても、第1実施形態の凍土形成装置1と同様の作用効果が得られるとともに、第1実施形態と同様の凍土造成方法を実行することができる。
【0040】
本実施形態の凍土形成装置1Cを用いて実施される凍土造成方法は、例えば次のようなものである。まず、地盤G中に凍土壁が形成される前は、
図4(a)に示されるように、供給口25dが外管部21の底壁21bの直近に位置するような位置で、長尺内管25Cが設置される。そして、各凍結管3Cにおいて外管部21の中空部21h内に供給口25dから冷媒が供給されると、凍土壁の造成予定領域のすべての深度領域が冷却され、最終的に凍土壁が完成する(凍土形成工程)。そして、バルブVが閉状態とされ冷媒の循環が停止される。
【0041】
その後、
図4(c)に示されるように、外管部21に対して長尺内管25Cを管軸方向に上昇させ、供給口25dが底壁21bから離れて浅い位置に位置するようにする。供給口25dの深さ方向の位置は、地表面G1から例えば深さ1~5mの位置に設定される。このとき、長尺内管25Cが外管部21の上壁21kから上方に長く突出するので、突出した長尺内管25Cの一部が切除されてもよい。そして、第1実施形態における凍土維持工程と同様に、所定以上の凍土温度が検知されたときにバルブVを開状態とする制御が実行される(凍土維持工程)。この凍土維持工程では、外管部21の中空部21h内に対して、比較的浅い位置の供給口25dから冷媒が供給される。そうすると、凍土壁の造成予定領域のうち比較的浅い深度領域のみが冷却される。そして、概ね供給口25dよりも深い深度領域は冷却されないので、凍土壁の深部の成長を促進することは避けられる。このような凍土維持工程によって凍土壁の温度が維持され、凍土が適切に維持される。
【0042】
なお、上記のように長尺内管25Cの一部が切除された後、再び供給口25dを外管部21の底壁21bの直近に移動する必要が生じた場合には、長尺内管25Cの上端に管材を溶接等で継ぎ足して長尺内管25Cを延長した上で、当該長尺内管25Cを外管部21に対して管軸方向に下降させればよい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、第1実施形態では、下端位置が互いに異なる2本の内管23,25が用いられる例を説明したが、この例に倣って、下端位置が互いに異なる内管の数を更に増やして、供給口23a,25a,…の深さ方向の位置を更に多段階に切り替えられるようにしてもよい。
【0044】
第2実施形態では、二重管構造の内管23,25Bが用いられる例を説明したが、この例に倣って、内管を更なる多重管構造として、供給口23a,25a,…の深さ方向の位置を更に多段階に切り替えられるようにしてもよい。このように、供給口23a,25a,…の深さ方向の位置を更に多段階に切り替えられるようにすることで、冷却する地盤の深度領域を更に細かく制御できるようにしてもよい。
【0045】
また、第1実施形態のように内管23,25,…を並列配置する構成と、第2実施形態のように内管23,25B,…を多重構造とする構成と、第3実施形態のように内管25Cを管軸方向に可動とする構成と、が適宜組み合わされて採用されてもよい。
【0046】
また、各実施形態における凍結管3は、地表面G1から鉛直下方に向けて地盤Gに埋入されるものであるが、これには限定されない。すなわち、本発明は、地盤に対して種々の方向(例えば水平方向)に向けて埋入される凍結管を備える凍土形成装置にも適用することができる。
【0047】
〔参考形態〕
なお、冷却する地盤の深度領域を選択可能とする凍土形成装置としては、
図5に示す凍土形成装置201のようなものも考えられる。
図5は、参考形態に係る凍土形成装置201が設置された地盤Gを示す断面図である。
図5に示されるように、凍土形成装置201は、
図6で説明したような従来の二重管構造の凍結管103と、凍結管103同士の間に追加で埋設され凍結管103よりも短尺の短尺凍結管104と、を備えるものである。短尺凍結管104は、凍結管103と同一の二重管構造をなすものであるが、凍結管103よりも短尺である点で相違している。
【0048】
このような凍土形成装置201によれば、各凍結管103のみに冷媒を循環させて、凍土壁の造成予定領域のすべての深度領域を冷却することができる。また、各短尺凍結管104のみに冷媒を循環させて、造成予定領域のうち所定よりも浅い深度領域のみを冷却することができる。このような凍土形成装置201に比較して、上述した第1~第3実施形態の凍土形成装置1,1B,1Cによれば、凍結管3同士の各間に短尺凍結管104を追加で設置する必要が無いので、設置スペースが抑えられ、狭隘な場所で機器の設置に制約がある場合にも適用が容易である。
【符号の説明】
【0049】
1,1B,1C…凍土形成装置、3,3B,3C…凍結管、7…冷媒入口管、9…冷媒出口管、20…供給部、21…外管部、21b…底壁、21h…中空部、23…短尺内管(第1内管)、23a…第1供給口(供給口)、23h…中空部、25…長尺内管,25B…長尺内管(第2内管)、25C…長尺内管(切替手段)、25a…第2供給口(供給口)、25d…供給口、G…地盤、Va,Vb…バルブ(切替手段)。