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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177041
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】状態表示方法及び環境制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089729
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】堀部 智幸
(57)【要約】
【課題】ユーザが、植物の生育状態を容易且つ適切に把握することができる
【解決手段】状態表示システム60は、データ取得部61と、演算部62と、表示部63とを有する。データ取得部61は、植物Pの特徴データを取得する。演算部62は、特徴データに基づいて、2つの指標に関して2つのスコアである第1スコアx1及び第2スコアx2を算出する。表示部63は、平面座標系Cに、第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置をプロットしたグラフGを表示する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象の植物である対象植物の生育状態に関連する特徴データを取得するデータ取得工程と、
前記特徴データに基づいて、前記対象植物の生育状態を示す少なくとも2つの指標に関してそれぞれのスコアを算出するスコア算出工程と、
前記少なくとも2つの指標を座標軸とする座標系上に、前記それぞれのスコアに応じた座標位置をプロットしたグラフを表示する表示工程と、
を実行することを特徴とする状態表示方法。
【請求項2】
前記データ取得工程は、二以上の時刻における前記対象植物の前記特徴データを取得し、
前記スコア算出工程は、前記二以上の時刻における前記特徴データに基づいて、前記二以上の時刻における前記対象植物の前記それぞれのスコアを算出し、
前記表示工程は、前記二以上の時刻における前記それぞれのスコアに応じた座標位置を、前記座標系上にまとめてプロットした前記グラフを表示することを特徴とする請求項1に記載の状態表示方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの指標は、植物の草勢の度合いを示す第1指標と植物の生長の偏りを示す第2指標であることを特徴とする請求項1又は2に記載の状態表示方法。
【請求項4】
前記データ取得工程は、前記対象植物の特徴データとして、茎径、生長点の伸長量、葉幅、葉長、葉の色、葉のねじれのうちの少なくともいずれか1つを含む第1特徴データと、開花果房距離、花梗長、花先の葉の有無、花の向き、葉の色、葉幅のうちの少なくともいずれかの1つを含む第2特徴データを取得し、
前記スコア算出工程は、前記第1特徴データに基づいて前記対象植物の前記第1指標に関する前記スコアである第1スコアを算出し、前記第2特徴データに基づいて前記対象植物の前記第2指標に関する前記スコアである第2スコアを算出することを特徴とする請求項3に記載の状態表示方法。
【請求項5】
請求項1の前記状態表示方法を実行する環境制御システムであって、
前記座標系上の座標位置に応じて決定される複数の環境制御パラメータを記憶する記憶手段と、
前記複数の環境制御パラメータのうち、前記スコア算出工程によって算出された前記それぞれのスコアに応じた座標位置によって決定される環境制御パラメータに基づいて温室内の環境制御を実行する環境制御手段と、
を備えることを特徴とする環境制御システム。
【請求項6】
前記座標系は複数のブロックに分けられており、
前記記憶手段は、前記複数のブロックごとに紐づけられた前記複数の環境制御パラメータを記憶し、
前記環境制御手段は、前記複数の環境制御パラメータのうち、前記スコア算出工程によって算出された前記それぞれのスコアに応じた座標位置の属するブロックに紐づく環境制御パラメータに基づいて環境制御を実行することを特徴とする請求項5に記載の環境制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生育状態を表示する状態表示方法及び当該状態表示方法を実行する環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室を利用して植物を栽培する施設園芸の分野では、植物の現在の生育状態などに応じて、温室内の環境が制御される。例えば、生産者は、植物の茎径や伸長量、葉の色等の植物の特徴を観測し、その観測結果から、自身の持つノウハウに基づいて植物の生育状態を判定する。
【0003】
しかし、生産者の持つノウハウは人によって異なるため、植物の生育状態の判定にばらつきが生じるおそれがある。そこで、特許文献1には、植物の草丈などを検出するセンサと、センサの検出結果に基づいて植物の生育状態が規定の生育状態よりも劣るか否かを判定する判定部とを有する栽培装置が開示されている。特許文献1の装置では、判定部によって判定された植物の生育状態は、生産者などのユーザに通知される。これにより、ユーザは、栽培装置によって判定された植物の生育状態を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-051134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、温室内の環境は、所望する植物の収穫量や品質等から決まる理想の生育状態に応じて調整される。よって、温室内の環境を適切に調整するためには、植物の現在の生育状態が、理想の生育状態にどの程度近いのか、或いは遠いのかを正しく把握することが求められる。しかしながら、特許文献1では、ユーザは、植物の現在の生育状態が規定の生育状態と比較して劣っているか否かを知ることはできるものの、植物の現在の生育状態が理想の生育状態に対してどの程度近い又は遠いかを適切に把握することができない。
【0006】
本発明は、ユーザが、植物の生育状態を容易且つ適切に把握することができるようにする方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の状態表示方法は、観測対象の植物である対象植物の生育状態に関連する特徴データを取得するデータ取得工程と、前記特徴データに基づいて、前記対象植物の生育状態を示す少なくとも2つの指標に関してそれぞれのスコアを算出するスコア算出工程と、前記少なくとも2つの指標を座標軸とする座標系上に、前記それぞれのスコアに応じた座標位置をプロットしたグラフを表示する表示工程と、を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ユーザが、座標系上にスコアに応じた座標位置がプロットされたグラフを見ることで、対象植物の現在の生育状態を一目で把握することができる。座標系は植物の生育状態を示す少なくとも2つの指標を座標軸としているため、ユーザは、座標系上における植物の理想の生育状態の座標位置についても容易に把握することができる。このため、ユーザは、植物の現在の生育状態が、理想の生育状態にどの程度近い又は遠いかを、容易且つ適切に把握することができる。
【0009】
本発明の状態表示方法において、前記データ取得工程手段は、二以上の時刻における前記対象植物の前記特徴データを取得し、前記スコア算出工程は、前記二以上の時刻における前記特徴データに基づいて、前記二以上の時刻における前記対象植物の前記それぞれのスコアを算出し、前記表示工程は、前記二以上の時刻における前記それぞれのスコアに応じた座標位置を、前記座標系上にまとめてプロットした前記グラフを表示することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、各時刻における対象植物のスコアの座標位置が1つの座標系上にまとめてプロットされたグラフが表示される。このため、ユーザは、対象植物の生育状態の時間経過による変化の様子を一目で把握することができる。
【0011】
本発明の状態表示方法において、前記少なくとも2つの指標は、植物の草勢の度合いを示す第1指標と植物の生長の偏りを示す第2指標であることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、ユーザは、第1指標及び第2指標を座標軸とする平面座標系上に、スコアに応じた座標位置がプロットされたグラフを見ることで、対象植物の生育状態を示す草勢の度合いと生長の偏りについて、視覚的に容易に把握することができる。
【0013】
本発明の状態表示方法において、前記データ取得工程は、前記対象植物の特徴データとして、茎径、生長点の伸長量、葉幅、葉長、葉の色、葉のねじれのうちの少なくともいずれか1つを含む第1特徴データと、開花果房距離、花梗長、花先の葉の有無、花の向き、葉の色、葉幅のうちの少なくともいずれかの1つを含む第2特徴データを取得し、前記スコア算出工程は、前記第1特徴データに基づいて前記対象植物の前記第1指標に関する前記スコアである第1スコアを算出し、前記第2特徴データに基づいて前記対象植物の前記第2指標に関する前記スコアである第2スコアを算出することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、上記の第1特徴データに基づいて対象植物の第1スコアが算出され、第2特徴データに基づいて対象植物の第2スコアが算出される。このため、対象植物の生育状態を示す草勢の度合いと生長の偏りについてより適切に判定することができる。
【0015】
本発明の環境制御システムは、上記の前記状態表示方法を実行する環境制御システムであって、前記座標系上の座標位置に応じて決定される複数の環境制御パラメータを記憶する記憶手段と、前記複数の環境制御パラメータのうち、前記スコア算出工程によって算出された前記それぞれのスコアに応じた座標位置によって決定される環境制御パラメータに基づいて温室内の環境制御を実行する環境制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、状態表示方法のスコア算出工程によって算出されたスコアに応じた座標位置によって、記憶部に記憶された複数の環境制御パラメータのうちから一の環境制御パラメータが決定される。そして、決定された環境制御パラメータに基づいて環境制御が実行される。このため、対象植物の生育状態に応じた適切な環境制御を実行することができるとともに、ユーザは、表示工程によって表示された内容と記憶手段によって記憶されたデータとを照合することで、現在実行されている環境制御の内容を容易に把握することができる。
【0017】
本発明の環境制御システムにおいて、前記座標系は複数のブロックに分けられており、前記記憶手段は、前記複数のブロックごとに紐づけられた前記複数の環境制御パラメータを記憶し、前記環境制御手段は、前記複数の環境制御パラメータのうち、前記スコア算出工程によって算出された前記それぞれのスコアに応じた座標位置の属するブロックに紐づく環境制御パラメータに基づいて環境制御を実行することが好ましい。
【0018】
座標系上の座標位置に応じて細かく環境制御パラメータが決定されている場合、記憶手段に記憶されるデータの容量が大きくなってしまい、処理速度が低下するおそれがある。また、記憶手段によって記憶されるデータが多くなると、ユーザにとっても、現在実行されている環境制御の内容を容易に把握することができなくなるおそれがある。本発明によれば、座標系を複数のブロックに分け、ブロックごとに紐づけられた環境制御パラメータを利用することによって、データ容量が膨大となることを抑制するとともに、ユーザが現在実行されている環境制御の内容をさらに容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る植物育成システムの概略図である。
図2図1のA矢視図である。
図3】植物育成システムの電気的構成を示すブロック図である。
図4】撮影装置及びその周辺構成を示す説明図である。
図5】植物の特徴データを示す表である。
図6】第1スコアの算出の仕方を示す図である。
図7】第2スコアの算出の仕方を示す図である。
図8】状態表示システムによって表示されるグラフである。
図9】メモリに記憶された環境制御パラメータを示す図である。
【0020】
次に、本発明の好適な実施形態について、図1図9を参照しつつ以下に説明する。なお、図1の紙面上下方向(すなわち、重力の作用する鉛直方向)を上下方向とする。図1の紙面上下方向と直交する方向を水平方向とする。図1の紙面と垂直な方向を所定方向とする。
【0021】
(植物育成システム)
まず、本実施形態に係る植物育成システム1の構成について図1図4を参照しつつ説明する。図1は、植物育成システム1の概略図である。図2は、図1のA矢視図であり、植物Pの栽培方式の一つであるハイワイヤー方式を示す図である。図3は、植物育成システム1の電気的構成を示すブロック図である。図4は、撮影装置及びその周辺構成を示す説明図である。
【0022】
植物育成システム1は、栽培されているトマト等の植物Pの周辺環境や生育状態等に関する情報を取得し、その情報を生産者などのユーザに通知するとともに、当該情報に基づいて植物Pを育成するためのものである。図1及び図3に示すように、植物育成システム1は、栽培ハウス2(本発明の温室)、センシングシステム3、環境制御システム4、調節装置5、供給装置6等を含む。
【0023】
栽培ハウス2は、ビニールハウス等の建物である。図1に示すように、栽培ハウス2は、地面101に立設された複数の柱102と、柱102に支持されて水平方向に延びる梁103と、柱102と梁103の上方に設置された屋根104等を有する。屋根104には、開閉可能な天窓(不図示)が設けられている。柱102、梁103、屋根104等によって、栽培ハウス2の内部空間105が形成されている。内部空間105内では、複数の植物Pが栽培されている。複数の植物Pは、例えば、地面101上の土台106に設けられた畝107に植えられている。
【0024】
複数の植物Pは、図2に示すように、一般的に知られたハイワイヤー方式で栽培されている。ハイワイヤー方式とは、水平方向と略平行な所定方向に張られたワイヤー111に糸巻112を移動可能に吊り下げ、糸巻112から垂らされた誘引線113に植物Pの茎Sを沿わせて、茎Sを誘引線113に固定する方式である。ハイワイヤー方式は、例えば、トマト、ナス、キュウリ、パプリカ等の栽培に用いられる。ワイヤー111は、不図示の吊下部材を介して梁103等に吊り下げられている。図2に示すように、糸巻112は、ワイヤー111に沿って移動可能なフック114を有し、フック114を介してワイヤー111に吊るされている。糸巻112は、例えば作業者によって、ワイヤー111に沿って所定方向に移動させられる。図2に示すように、植物Pの茎Sは、例えばピンチ等のロック部材115によって誘引線113に固定される。糸巻112と誘引線113と1又は複数のロック部材115によって、茎Sが支持され、植物Pが上下方向に沿って延びる。図2に示すように、植物Pの成長に合わせて糸巻112を所定方向に移動させることで、茎Sの固定される位置が変更される(図2の二点鎖線参照)。そうすると、植物Pの茎S全体のうち、ロック部材115よりも下方の部分が所定方向に延びた状態となる。これにより、収穫等の作業を一定の高さで行うことが可能となり、作業性を向上させることができる。
【0025】
センシングシステム3は、栽培ハウス2の内部空間105の環境や植物Pの生育状態に関連する情報等を取得するためのものである。センシングシステム3は、撮影装置31と、計測装置32と、通信部33とを含む。センシングシステム3は、後述する環境制御システム4と接続されている。
【0026】
撮影装置31は、内部空間105内を移動し、植物Pを撮影して画像データを生成する。植物Pの画像データは、植物Pの生育状態に関連する情報である。撮影装置31によって生成された画像データは、通信部33によって後述の環境制御システム4に送信される。図1及び図4に示すように、内部空間105内には、撮影装置31が走行するためのレール141が設けられている。レール141は、吊下部材142等を介して梁103から取り下げられている。レール141が延びている延在方向は水平方向と略平行である。
【0027】
図4に示すように、撮影装置31は、本体部150と、カメラ160と、第1移動機構170と、第2移動機構180とを含む。撮影装置31は、第1移動機構170によってレール141上を走行し、第2移動機構180によってカメラ160を上下移動させ、カメラ160によって植物Pを撮影する。撮影装置31には、動力源として、例えば充電池21が搭載されている。充電池21は、レール141上の所定位置に設けられた充電装置(不図示)によって充電される。
【0028】
図4に示すように、カメラ160は、カメラ本体161と、レンズ162と、撮像素子(不図示)等を有する。カメラ160は、レンズ162を通過した画像を撮像素子によって画像データに変換することで、複数の画素の集合体である画像を撮影する。カメラ本体161は、例えば、ワイヤロープ54、55によって本体部150に吊り下げられている。カメラ本体161は、不図示の回転機構によって、水平回転可能に構成されている。レンズ162は、いわゆるズームレンズであり、焦点距離を変更可能(つまり、撮影範囲を変更可能)に構成されている。或いは、カメラ160は、単焦点の広角レンズと望遠レンズとを有しており、レンズを切換可能に構成されていても良い。
【0029】
第1移動機構170は、カメラ160をレール141に沿って延在方向に走行させるためのものである。図4に示すように、第1移動機構170は、第1モータ41と、車輪42~45とを有する。第1モータ41は、例えば一般的なサーボモータである。第1モータ41は、例えばロータリーエンコーダ(不図示)を有する。これにより、延在方向における撮影装置31の位置を検知することが可能となっている。車輪42~45は、本体部150に回転可能に取り付けられている。車輪42~45は、レール141を上下に挟むように配置されている。より具体的には、車輪42、43が上方から、車輪44、45が下方から、それぞれレール141を挟み込むように配置されている。これにより、本体部150がレール141に安定的に吊り下げられる。車輪42は、例えば無端ベルト46を介して第1モータ41の回転軸に接続されている。これにより、第1モータ41の動力が車輪42に伝達され、撮影装置31がレール141に沿って走行する。
【0030】
第2移動機構180は、カメラ160を上下方向に移動させるためのものである。第2移動機構180は、例えば、第2モータ51と、ドラム52、53とを有する。第2移動機構180は、ワイヤロープ54、55がそれぞれ巻きつけられているドラム52、53に第2モータ51の動力を伝えることでドラム52、53を回転させ、カメラ160を昇降させる。第2モータ51は、例えば、第1モータ41と同様のサーボモータである。ドラム52、53は、不図示の無端ベルトやプーリ等を介して、第2モータ51の回転軸に接続されている。これにより、第2モータ51の動力がドラム52、53に伝達されてドラム52、53が回転し、ワイヤロープ54、55のドラム52、53に巻き付けられていない部分の長さが変化する。このようにして、カメラ160が上下駆動される(図4の二点鎖線参照)。
【0031】
計測装置32は、内部空間105の環境に関連する情報を取得するものである。計測装置32として、例えば、温度計、湿度計、二酸化炭素濃度計等が設けられている。通信部33は、撮影装置31によって取得された画像データや、計測装置32によって取得された温度、湿度、二酸化炭素濃度等の情報を後述する環境制御システム4に送信するためのものである。
【0032】
調節装置5は、内部空間105の環境を整えるための装置である。調節装置5として、例えば、温度調節用の空調装置、天窓を開閉させる天窓作動装置、天井のカーテンを開閉させる天井カーテン作動装置、加湿を行うミスト生成装置、内部空間105内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置等が設けられている。図3に示すように、調節装置5は、環境制御システム4と電気的に接続されている。
【0033】
供給装置6は、植物Pに水や肥料を与えるための装置である。供給装置6として、例えば、各植物Pに水を供給する給水装置、各植物Pに肥料を供給する肥料供給装置等が設けられている。図3に示すように、供給装置6は、環境制御システム4と電気的に接続されている。
【0034】
環境制御システム4は、内部空間105の環境の調節及び植物Pへの水や肥料の供給等を行うためのものである。図3に示すように、環境制御システム4は、状態表示システム60と、メモリ70(本発明の記憶手段)と、制御部80(本発明の環境制御手段)と、通信部90とを含む。
【0035】
通信部90は、センシングシステム3の通信部33から送信された画像データや、計測装置32から送信された内部空間105の環境に関する情報を受信するものである。なお、通信部90は、外部PCと電気的に接続されていてもよい。
【0036】
(状態表示システム)
状態表示システム60は、観測対象の植物P(本発明の対象植物)の生育状態を示すスコアがプロットされたグラフを表示するためのものである。図3に示すように、状態表示システム60は、データ取得部61と、演算部62と、表示部63とを有する。
【0037】
データ取得部61は、植物Pの生育状態に関連する特徴データを取得するものである。データ取得部61が取得する特徴データは、植物Pの草勢に関連する第1特徴データと、植物Pの生長の偏りに関連する第2特徴データがある。さらに、データ取得部61は、複数の時刻における植物Pの第1特徴データ及び第2特徴データを取得する。データ取得部61が特徴データを取得する工程が、本発明のデータ取得工程に相当する。なお、本実施形態では、データ取得部61は、内部空間105にある複数の植物Pのそれぞれの特徴データを取得する。
【0038】
以下、データ取得部61が取得するデータについて、図5を参照しつつ具体的に説明する。データ取得部61は、例えば、図5に示すように、複数の時刻としての異なる日付における植物Pの特徴データについて、各日付における植物Pの特徴データが記載された表T1として取得する。表T1には、一例として、6つの日付(2021年10月29日、11月5日、11月12日、11月26日、12月3日、12月10日)における植物Pの特徴データが記載されている。植物Pの特徴データは、例えば、各日付の同一時刻における値である。表T1に記載された「週」とは、植物Pの栽培開始時から何週間経過したかを表すものである。なお、表T1には、第15週から第20週までの植物Pの特徴データのみが記載されているが、実際には、第1週から最終週(例えば、第20週)までのすべての特徴データが記載されている。
【0039】
表T1には、植物Pの特徴データとして、植物Pの生長点の伸長量(cm)、茎径(cm)、開花果房距離(cm)、葉長(cm)、葉幅(cm)、枝数(本)、葉色(濃い、適度、淡い)、葉のねじれ(強い、適度、弱い)、花先の葉の有無、花梗長(cm)、花の向き(上向き、横向き、下向き)が記載されている。表T1において、葉色は、色が濃いときが0、適度のときが1、淡いときが2と表示される。葉のねじれは、ねじれが強いときが0、適度のときが1、弱いときが2と表示される。花先の葉の有無は、無しのときが0、有りのときが1と表示される。花の向きは、下向きのときが0、横向きのときが1、上向きのときが2と表示される。また、表T1には、植物Pの特徴データの他、内部空間105の平均気温(℃)、日中平均気温(℃)、夜間平均気温(℃)、平均積算日射(kJ/cm2)が記載されている。例えば、図5に示すように、2021年10月29日の植物Pの伸長量は17.6cmであり、開花果房距離は23.3cmである。また、2021年11月5日の植物Pの葉のねじれは、表T1において0と表示されていることから、葉のねじれが強いことが分かる。なお、表T1は、後述する表示部63によって、ユーザに対して表示されてもよい。
【0040】
本実施形態において、データ取得部61が取得する第1特徴データは、植物Pの茎径(cm)、生長点の伸長量(cm)、葉幅(cm)、葉長(cm)、葉色(濃い、適度、淡い)、葉のねじれ(強い、適度、弱い)の情報である。また、データ取得部61が取得する第2特徴データは、植物Pの開花果房距離(cm)、花梗長(cm)、花先の葉の有無、花の向き(上向き、横向き、下向き)、葉色(濃い、適度、淡い)、葉幅(cm)の情報である。
【0041】
データ取得部61は、例えば、撮影装置31によって生成された画像データを解析することによって第1特徴データに含まれる一部または全部の情報、及び、第2特徴データに含まれる一部または全部の情報を取得する。または、データ取得部61は、ユーザによって外部PC(不図示)に入力された値から、第1特徴データに含まれる一部または全部の情報、及び、第2特徴データに含まれる一部または全部の情報を取得するものでもよい。この場合、例えば、ユーザが植物Pの特徴を観察、測定し、その観察結果及び測定結果を外部PCに手入力する。または、ユーザが植物Pの特徴の観察結果、測定結果を紙面に記入し、その紙面をOCR技術(Optical Character Reader)を利用して外部PCに読み込ませる。外部PCに入力された値のデータは、通信部90を介してデータ取得部61に送られる。なお、データ取得部61は、撮影装置31によって生成された画像データと、ユーザによって外部PCに入力された値の両方から第1特徴データと第2特徴データを取得してもよい。
【0042】
演算部62は、特徴データに基づいて、植物Pの生育状態を示す2つの指標として、草勢の度合いを示す第1指標と生長の偏りを示す第2指標に関してそれぞれのスコアを算出する。より詳細には、演算部62は、第1特徴データに基づいて第1指標に関する第1スコアx1を算出し、第2特徴データに基づいて第2指標に関する第2スコアx2を算出する。また、演算部62は、複数の時刻における特徴データに基づいて、各時刻における植物Pの第1スコアx1及び第2スコアx2を算出する。演算部62が第1スコアx1及び第2スコアx2を算出する工程が、本発明のスコア算出工程に相当する。なお、演算部62は、例えば、内部空間105にある複数の植物Pのそれぞれの第1スコアx1を及び第2スコアx2の平均値を算出する。
【0043】
以下、図6を参照しつつ、演算部62による第1スコアx1の算出の仕方の一例について説明する。まず、演算部62は、各第1特徴データP1~P6と各第1特徴データに設けられた所定の閾値との比較によって、各第1特徴データに応じたSa1~Sa6のスコアを算出する。具体的に説明すると、演算部62は、植物Pの茎径の値P1が閾値V1n-1以下のときはSa1を0とし、P1が閾値V1n-1よりも大きく閾値V1n以下のときはSa1を1とし、P1が閾値V1nよりも大きいときはSa1を2とする。また、演算部62は、植物Pの生長点の伸長量の値P2が閾値V2n-1以下のときはSa2を0とし、P2が閾値V2n-1よりも大きく閾値V2n以下のときはSa2を1とし、P2が閾値V2nよりも大きいときはSa2を2とする。また、演算部62は、植物Pの葉幅の値P3が閾値V3n-1以下のときはSa3を0とし、P3が閾値V3n-1よりも大きく閾値V3n以下のときはSa3を1とし、P3が閾値V3nよりも大きいときはSa3を2とする。さらに、演算部62は、植物Pの葉長の値P4が閾値V4n-1以下のときはSa4を0とし、P4が閾値V4n-1よりも大きく閾値V4n以下のときはSa4を1とし、P4が閾値V4nよりも大きいときはSa4を2とする。また、演算部62は、植物Pの葉色P5について、色が濃いときはSa5を0とし、色が適度のときはSa5を1とし、色が淡いときはSa5を2とする。そして、演算部62は、植物Pの葉のねじれP6について、ねじれが強いときはSa6を0とし、ねじれが適度のときはSa6を1とし、ねじれが弱いときはSa6を2とする。
【0044】
なお、閾値V1n~V4n、V1n-1~V4n-1は、植物Pの種類ごとに予め設定される値である。また、葉色P5について、色が濃いか適度か淡いかの判定は、例えば、予め用意された各色との比較によって行われてもよく、RGBの数値を取得することによって行われてもよい。また、葉のねじれP6について、ねじれが強いか適度か弱いかの判定は、例えば、予め用意された各ねじれの程度を示す画像との比較によって行われても良く、立体画像解析ソフト等によって行われてもよい。
【0045】
次に、演算部62は、各スコアSa1~Sa6を合計して第1スコアx1を算出する。(図6参照)。なお、本実施形態において、演算部62は、第1スコアx1が1~9の9段階となるように調整する処理を行っている。例えば、演算部62は、各スコアSa1~Sa6の合計値が0のときは第1スコアx1を1とし、各スコアSa1~Sa6の合計値が1~9のときは第1スコアx1を1~9とし、各スコアSa1~Sa6の合計値が10~12のときは第1スコアx1を9とする。
【0046】
以下、図7を参照しつつ、演算部62による第2スコアx2の算出の仕方の一例について説明する。まず、演算部62は、各第2特徴データP7~P12と各第2特徴データに設けられた所定の閾値との比較によって、各第2特徴データに応じたSb1~Sb6のスコアを算出する。具体的に説明すると、演算部62は、植物Pの開花果房距離の値P7が閾値V7n-1以下のときはSb1を0とし、P7が閾値V7n-1よりも大きく閾値V7n以下のときはSb1を1とし、P7が閾値V7nよりも大きいときはSb1を2とする。また、演算部62は、植物Pの花梗長の値P8が閾値V8n-1以下のときはSb2を0とし、P8が閾値V8n-1よりも大きく閾値V8n以下のときはSb2を1とし、P8が閾値V8nよりも大きいときはSb2を2とする。また、演算部62は、植物Pの花先の葉の有無P9について、葉が無しのときはSb3を0とし、葉が有りのときはSb3を1とする。さらに、演算部62は、植物Pの花の向きP10について、下向きのときはSb4を0とし、横向きのときはSb4を1とし、上向きのときはSb4を2とする。また、演算部62は、植物Pの葉色P11について、色が濃いときはSb5を0とし、色が適度のときはSb5を1とし、色が淡いときはSb5を2とする。そして、演算部62は、植物Pの葉幅の値P12が閾値V12n-1以下のときはSb6を0とし、P12が閾値V12n-1よりも大きく閾値V12n以下のときはSb6を1とし、P12が閾値V12nよりも大きいときはSb6を2とする。
【0047】
なお、閾値V7n、V8n、V12n、V7n-1、V8n-1、V12n-1は、植物Pの種類ごとに予め設定される値である。また、葉色P11について、色が濃いか適度か淡いかの判定は、例えば、予め用意された各色との比較によって行われてもよく、RGBの数値を取得することによって行われてもよい。また、本実施形態では、第1特徴データに含まれる植物Pの葉幅の値P3と第2特徴データに含まれる植物Pの葉幅の値P12とは同じものである。また、第1特徴データに含まれる植物Pの葉色P5と第2特徴データに含まれる植物Pの葉色P11とは同じものである。
【0048】
次に、演算部62は、各スコアSb1~Sb6を合計して第2スコアx2を算出する。(図7参照)。なお、本実施形態において、演算部62は、第2スコアx2がA~Iの9段階となるように調整する処理を行っている。例えば、演算部62は、各スコアSb1~Sb6の合計値が0のときは第2スコアx2をAとし、各スコアSb1~Sb6の合計値が1~9のときは第2スコアx2をA~Iとし、各スコアSb1~Sb6の合計値が10又は11のときは第2スコアx2をIとする。
【0049】
表示部63は、草勢の度合いを示す第1指標と生長の偏りを示す第2指標を座標軸とする平面座標系C上に、植物Pの第1指標に関する第1スコアx1及び第2指標に関する第2スコアx2に応じた座標位置をプロットしたグラフGを表示するものである(図8参照)。表示部63がグラフGを表示する工程が、本発明の表示工程に相当する。なお、表示部63は、例えば、内部空間105にある複数の植物Pのそれぞれの第1スコアx1を及び第2スコアx2の平均値に応じた座標位置をプロットしたグラフGを表示する。
【0050】
本実施形態では、図8に示すように、平面座標系Cは、第1指標が縦軸で、第2指標が横軸である。平面座標系Cは、縦軸が下から順に1~9までの9段階、横軸が左から順にA~Iの9段階の9×9のマス目表示されている。第1指標は、9が最も草勢が強く、1が最も草勢が弱いことを示す。第2指標は、Aが最も生殖生長に偏った状態で、Iが最も栄養生長に偏った状態を示す。以下、平面座標系C上の任意の座標位置を示す場合、「(第1指標の数字)-(第2指標の英文字)」という表示の仕方をすることとする。例えば、第1指標が1、第2指標がBの場合、「1-B」となる。なお、平面座標系C上の中央部分である「5-E」の座標位置が、植物Pの理想の生育状態を示している。換言すれば、植物Pの第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置が、平面座標系C上の「5-E」にプロットされた場合、その植物Pは理想の生育状態であるといえる。
【0051】
また、平面座標系Cは、3×3の9つのブロックB1~B9に分けられている。ブロックB1には、「1-A」、「2-A」、「3-A」、「1-B」、「2-B」、「3-B」、「1-C」、「2-C」、「3-C」が含まれる。ブロックB2には、「1-D」、「2-D」、「3-D」、「1-E」、「2-E」、「3-E」、「1-F」、「2-F」、「3-F」が含まれる。ブロックB3には、「1-G」、「2-G」、「3-G」、「1-H」、「2-H」、「3-H」、「1-I」、「2-I」、「3-I」が含まれる。ブロックB4には、「4-A」、「5-A」、「6-A」、「4-B」、「5-B」、「6-B」、「4-C」、「5-C」、「6-C」が含まれる。ブロックB5には、「4-D」、「5-D」、「6-D」、「4-E」、「5-E」、「6-E」、「4-F」、「5-F」、「6-F」が含まれる。ブロックB6には、「4-G」、「5-G」、「6-G」、「4-H」、「5-H」、「6-H」、「4-I」、「5-I」、「6―I」が含まれる。ブロックB7には、「7-A」、「8-A」、「9-A」、「7-B」、「8-B」、「9-B」、「7-C」、「8-C」、「9-C」が含まれる。ブロックB8には、「7-D」、「8-D」、「9-D」、「7-E」、「8-E」、「9-E」、「7-F」、「8-F」、「9-F」が含まれる。ブロックB9には、「7-G」、「8-G」、「9-G」、「7-H」、「8-H」、「9-H」、「7-I」、「8-I」、「9-I」が含まれる。
【0052】
図8に示すように、表示部63は、平面座標系C上に、1~9のいずれかをとる第1スコアx1とA~Iのいずれかをとる第2スコアx2に応じた座標位置をプロットしたグラフGを表示する。例えば、2021年10月29日における植物Pの第1スコアx1が9で第2スコアx2がGである場合、表示部63は、平面座標系C上の「9-G」にプロットしたグラフGを表示する(図8参照)。図8の斜線部分が「9-G」がプロットされた箇所である。また、表示部63は、複数の時刻としての異なる日付における第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置を、1つの平面座標系C上にまとめてプロットしたグラフGを表示する。例えば、2021年10月29日、11月5日、11月12日、11月26日、12月3日、12月10日における植物Pの第1スコアx1がそれぞれ、9、8、8、7、6、1であり、第2スコアx2がそれぞれG、F、C、G、C、Dの場合、表示部63は、平面座標系C上の「9-G」、「8-F」、「8-C」、「7-G」、「6-C」、「1-D」にまとめてプロットしたグラフGを表示する(図8参照)。なお、表示部63は、第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置のプロットの色を各時刻(本実施形態では各日付)によって変えることが好ましい。これにより、ユーザは、各時刻の植物Pのプロットを容易に判別することができる。
【0053】
表示部63は、全ての観測日における植物Pの特徴データに基づいて算出された第1スコア及び第2スコアに応じた座標位置をまとめてプロットしたグラフを表示してもよいし、一又は複数の任意の観測日における植物Pの第1スコア及び第2スコアに応じた座標位置のみをまとめてプロットしたグラフを表示してもよい。前者の場合、栽培開始以降の全ての観測日における植物Pの生育状態の比較ができる一方で、プロットの数が多いためグラフが見にくい。後者の場合、生育状態を把握したい観測日に限定して植物Pの生育状態の比較を行うことができるため、プロットの数を抑えることができグラフが見やすくなる。一又は複数の任意の観測日とは、例えば、直近6つの観測日などである。
【0054】
表示部63は、例えばモニタであって、モニタに上記グラフGを表示するものである。モニタは、例えば、ユーザが視認しやすい位置に設置されており、内部空間105内の複数の植物Pに対応する位置に複数設置されている。また、モニタは、内部空間105内の複数の植物Pよりも少ない数が設置されていてもよい。この場合、1つのモニタは、複数の植物Pの第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置をプロットした複数のグラフGを表示する。
【0055】
以上、状態表示システム60のデータ取得部61によってデータ取得工程が実行され、演算部62によってスコア算出工程が実行され、表示部63によって表示工程が実行されることにより、本発明の状態表示方法が実行される。
【0056】
メモリ70は、上述の平面座標系C上の座標位置に応じて決定される複数の環境制御パラメータを記憶している。本実施形態では、図8に示すように、平面座標系Cは9つのブロックB1~B9に分けられており、メモリ70は、図9に示すように、9つのブロックB1~B9ごとに紐づけられた9つの環境制御パラメータを記憶している。例えば、ブロックB1には、環境制御パラメータNo.1が紐づけられている。そして、環境制御パラメータNo.1は、「草勢強化制御1.xml」の設定ファイルと合致する。メモリ70に記憶された情報は、ユーザが確認可能となっている。なお、設定ファイルの形式はxml形式に限られない。例えば、CSV形式やJSON形成でもよい。
【0057】
制御部80は、例えば一般的なPCによって構成されており、CPUと、ROMと、RAM等を有する。制御部80は、複数の環境パラメータのうち、演算部62によって算出された第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置の属するブロックに紐づく環境制御パラメータに基づいて内部空間105の環境制御を実行する。より詳細には、制御部80は、環境制御パラメータNo.と合致する設定ファイルに基づいて、植物Pを理想の生育状態とすべく、調節装置5及び供給装置6の駆動を制御する。なお、制御部80は、環境制御を実行する際に、計測装置32によって取得された内部空間105の環境に関連する情報も併せて参照してもよい。
【0058】
具体的な環境制御の内容としては、例えば、以下が挙げられる。(1)制御部80は、調節装置5である空調装置や天窓作動装置の駆動を制御して、内部空間105の温度を上げる又は下げる。(2)制御部80は、調節装置5である天井カーテン作動装置の駆動を制御して、植物Pの日射量を調節する。(3)制御部80は、調節装置5であるミスト生成装置や天窓作動装置の駆動を制御して、内部空間105の湿度を調節する。(4)制御部80は、調節装置5である二酸化炭素供給装置や天窓作動装置の駆動を制御して、内部空間105の二酸化炭素濃度を調節する。(5)制御部80は、供給装置6である給水装置の駆動を制御して、植物Pに供給する水の量を調節する。(6)制御部80は、供給装置6である肥料供給装置の駆動を制御して、植物Pに供給する肥料の量を調節する。制御部80は、植物Pの第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置の属するブロックに紐づく環境制御パラメータと合致する設定ファイル(例えば、「草勢強化制御1.xml」)に基づいて、上記(1)~(6)等の環境制御を適宜組み合わせつつ実行する。
【0059】
(効果)
以上のように、本実施形態の状態表示システム60は、データ取得部61と、演算部62と、表示部63とを有する。データ取得部61は、植物Pの特徴データを取得する。演算部62は、特徴データに基づいて、2つの指標に関して2つのスコアである第1スコアx1及び第2スコアx2を算出する。表示部63は、平面座標系Cに、第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置をプロットしたグラフGを表示する。これによれば、ユーザが、平面座標系C上に第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置がプロットされたグラフGを見ることで、観測対象の植物Pの現在の生育状態を一目で把握することができる。平面座標系Cは植物Pの生育状態を示す2つの指標を座標軸としているため、ユーザは、平面座標系C上における植物Pの理想の生育状態の座標位置についても容易に把握することができる。このため、ユーザは、植物Pの現在の生育状態が、理想の生育状態にどの程度近い又は遠いかを、容易且つ適切に把握することができる。
【0060】
本実施形態の状態表示システム60では、2つの指標は、植物Pの草勢の度合いを示す第1指標と植物の生長の偏りを示す第2指標である。これによれば、ユーザは、第1指標及び第2指標を座標軸とする平面座標系C上に、第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置がプロットされたグラフGを見ることで、植物Pの生育状態を示す草勢の度合いと生長の偏りについて、視覚的に容易に把握することができる。
【0061】
本実施形態の状態表示システム60では、データ取得部61は、植物Pの特徴データとして、植物Pの茎径、生長点の伸長量、葉幅、葉長、葉の色、葉のねじれを含む第1特徴データと、植物Pの開花果房距離、花梗長、花先の葉の有無、花の向き、葉の色、葉幅を含む第2特徴データとを取得する。また、演算部62は、第1特徴データに基づいて第1指標に関する第1スコアx1を算出し、第2特徴データに基づいて第2指標に関する第2スコアx2を算出する。これによれば、植物Pの生育状態を示す草勢の度合いと生長の偏りについてより適切に判定することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の状態表示システム60では、データ取得部61は、複数の時刻としての異なる日付における植物Pの特徴データを取得する。演算部62は、複数の時刻としての異なる日付における特徴データに基づいて、異なる日付における植物Pの第1スコアx1及び第2スコアx2を算出する。そして、表示部63は、複数の時刻としての異なる日付における第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置を、平面座標系CにまとめてプロットしたグラフGを表示する。これによれば、ユーザは、植物Pの生育状態の時間経過による変化の様子を一目で把握することができる。
【0063】
本実施形態の環境制御システム4は、上述の状態表示システム60と、メモリ70と、制御部80とを含む。メモリ70は、平面座標系C上の座標位置に応じて決定される複数の環境制御パラメータを記憶する。制御部80は、複数の環境制御パラメータのうち、演算部62によって算出された第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置によって決定される環境制御パラメータに基づいて内部空間105の環境制御を実行する。これによれば、状態表示システム60の演算部62によって算出された第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置によって、メモリ70に記憶された複数の環境制御パラメータのうちから一の環境制御パラメータが決定される。そして、決定された環境制御パラメータに基づいて環境制御が実行される。このため、植物Pの生育状態に応じた適切な環境制御を実行することができるとともに、ユーザは、表示部63によって表示された内容とメモリ70によって記憶されたデータとを照合することで、現在実行されている環境制御の内容を容易に把握することができる。
【0064】
本実施形態の環境制御システム4では、平面座標系Cは9つのブロックB1~B9に分けられている。メモリ70は、9つのブロックB1~B9ごとに紐づけられた複数の環境制御パラメータを記憶する。制御部80は、複数の環境制御パラメータのうち、演算部62によって算出された第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置の属するブロックに紐づく環境制御パラメータに基づいて環境制御を実行する。平面座標系C上の座標位置に応じて細かく環境制御パラメータが決定されている場合、メモリ70に記憶されるデータの容量が大きくなってしまい、処理速度が低下するおそれがある。また、メモリ70によって記憶されるデータが多くなると、ユーザにとっても、現在実行されている環境制御の内容を容易に把握することができなくなるおそれがある。本実施形態によれば、平面座標系Cを複数のブロックB1~B9に分け、ブロックB1~B9ごとに紐づけられた環境制御パラメータを利用することによって、データ容量が膨大となることを抑制するとともに、ユーザが現在実行されている環境制御の内容をさらに容易に把握することができる。
【0065】
(変形例)
以下に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0066】
上記実施形態では、状態表示システム60のデータ取得部61がデータ取得工程を実行し、演算部62がスコア算出工程を実行し、表示部63が表示工程を実行する。しかしながら、データ取得工程、スコア算出工程、表示工程のうちの少なくともいずれか1つは、ユーザによって行われてもよい。例えば、ユーザが、植物Pの特徴データを所定の用紙やタブレットに書き込むことで、データ取得工程を実行してもよい。また、ユーザが、特徴データに基づいて第1スコアx1及び第2スコアx2を手計算することによって、スコア算出工程を実行してもよい。さらに、ユーザが、平面座標系C上に第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置を手入力でプロットしたグラフGを表示するものでもよい。
【0067】
上記実施形態では、表示部63は、第1指標が縦軸で第2指標が横軸である2軸の平面座標系C上に、第1スコアx1及び第2スコアx2に応じた座標位置をプロットしたグラフGを表示するものである。しかしながら、表示部63は、3軸の3次元座標系上に、スコアに応じた座標位置をプロットした3次元のグラフを表示するものでもよい。この場合、演算部62は、植物Pの特徴データに基づいて、植物Pの生育状態を示す3つの指標に関して3つのスコアを算出する。3つのスコアを算出する場合、例えば、演算部62は、第1スコアx1と第2スコアx2とに加えて、時間経過を示す指標に関するスコア、観測日間の平均日射量を示す指標に関するスコア、植物の蒸散量を示す指標に関するスコアなどを第3スコアとして算出してもよい。
【0068】
上記実施形態では、植物Pの生育状態を示す少なくとも2つの指標は、植物Pの草勢の度合いを示す第1指標と、植物Pの生長の偏りを示す第2指標である。しかしながら、植物Pの生育状態を示す指標であれば、上記の第1指標及び第2指標に限られない。例えば、植物Pの生育状態を示す指標として、植物の蒸散量や光合成の量などを示す指標でもよい。
【0069】
上記実施形態では、第1特徴データは、植物Pの茎径、生長点の伸長量、葉幅、葉長、葉の色、葉のねじれの情報である。しかしながら、第1特徴データは、茎径、生長点の伸長量、葉幅、葉長、葉の色、葉のねじれのうちの少なくともいずれか1つを含むものでもよい。また、上記実施形態では、第2特徴データは、植物Pの開花果房距離、花梗長、花先の葉の有無、花の向き、葉の色、葉幅の情報である。しかしながら、第2特徴データは、開花果房距離、花梗長、花先の葉の有無、花の向き、葉の色、葉幅のうちの少なくともいずれかの1つを含むものでもよい。また、植物Pの特徴データは、上記に限られない。例えば、特徴データに、植物Pの枝の本数や、花の色、根の色、根の張り具合、葉の温度(赤外線センサ等による計測)、葉の密集度などが含まれていてもよい。
【0070】
上記実施形態では、データ取得部61は、複数の時刻として、異なる日付における植物Pの特徴データを取得している。しかしながら、データ取得部61は、同日の異なる時刻における植物Pの特徴データを取得してもよい。また、上記実施形態では、データ取得部61は、1週間に1回、植物Pの特徴データを取得するものである。しかしながら、データ取得部61は、1~数日に1回、植物Pの特徴データを取得するものでもよく、1日に複数回、植物Pの特徴データを取得するものでもよい。
【0071】
上記実施形態では、第1スコアの算出に用いられる各スコアSa1~Sa6について、0、1、2の何れかとしている。しかしながら、スコアごとに取り得る値が異なっていてもよい。例えば、Sa1は0、1、2の何れかの値を取るが、Sa2は0、0.5、1の何れかの値を取る、といったようにしてもよい。第2スコアの算出に用いられる各スコアSb1~Sb6についても同様である。
【0072】
上記実施形態では、平面座標系Cは、9つのブロックB1~B9に分けられている。しかしながら、平面座標系Cは、2~8つのブロック、または10以上のブロックに分けられていてもよい。ブロック分けは、例えば、各ブロックに含まれる座標位置に応じて決定される環境制御パラメータは同じものであり、且つ、ブロックごとに紐づけられた環境制御パラメータが互いに異なるものとなるように設定される。また、平面座標系Cは、ブロック分けされていなくてもよい。この場合、メモリ70は、平面座標系C上の座標位置に応じて決定される複数の環境制御パラメータを記憶する。そして、制御部80は、複数の環境制御パラメータのうち、演算部62によって算出されたスコアに応じた座標位置によって決定される環境制御パラメータに基づいて内部空間105の環境制御を実行する。
【0073】
上記実施形態では、メモリ70は、9つのブロックごとに紐づけられた9つの環境制御パラメータを記憶している。しかしながら、9つのブロックごとに紐づけられるのは、8つ以下の環境制御パラメータでもよい。すなわち、少なくともいずれか2つのブロックに紐づけられた環境制御パラメータが重複していてもよい。
【0074】
上記実施形態では、演算部62は、種々の所定の特徴データと、所定の閾値との比較等によって、植物Pの生育状態を示す第1スコアx1及び第2スコアx2を算出している。この点について、各スコアの算出に用いられる閾値の値や種々の特徴データの内容は、観察対象の植物Pの種類や品種ごとに変更可能であってもよい。
【0075】
上記実施形態では、演算部62は、データ取得部61によって取得された特徴データと閾値との比較等によって、第1スコアx1及び第2スコアx2を算出している。しかしながら、演算部62は、AI技術(artificial intelligence)を利用して第1スコアx1及び第2スコアx2を算出してもよい。この場合、例えば、植物Pの種々の特徴データの組み合わせに対応する第1スコアx1及び第2スコアx2をAIに予め学習させる。AIは、学習したデータをもとに、データ取得部61によって取得された観察対象の植物Pの種々の特徴データの組み合わせに対応する第1スコアx1及び第2スコアx2を推測する。
【0076】
上記実施形態において、植物Pは、ハイワイヤー方式で栽培されているものとしたが、これには限られない。例えば、移動可能なプランタ(不図示)等の容器に植えられているコチョウラン等を育成する植物育成システムに対し、本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 植物育成システム
2 栽培ハウス(温室)
4 環境制御システム
60 状態表示システム
61 データ取得部(データ取得手段)
62 演算部(スコア算出手段)
63 表示部(表示手段)
70 メモリ(記憶手段)
80 制御部(環境制御手段)
C 平面座標系
G グラフ
P 植物
x1 第1スコア
x2 第2スコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9