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  • 特開-消火材シート、消火剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177042
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】消火材シート、消火剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/00 20060101AFI20231206BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231206BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20231206BHJP
   C09D 129/14 20060101ALI20231206BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20231206BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231206BHJP
   C09D 7/60 20180101ALI20231206BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C09K21/00
C09D201/00
C09D5/18
C09D129/14
C09D129/04
C09D7/63
C09D7/60
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089732
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】本庄 悠朔
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真登
(72)【発明者】
【氏名】椎根 康晴
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
【テーマコード(参考)】
4F100
4H028
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA06
4F100AA06A
4F100AA20
4F100AH02A
4F100AH08
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK21A
4F100AK23
4F100AK23A
4F100AK53
4F100AK53A
4F100AK63
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA08
4F100CA08A
4F100CA30A
4F100EH66
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB41
4F100JD04
4F100JK17
4F100JK17A
4F100JK17B
4F100YY00A
4F100YY00B
4H028AA09
4H028AA42
4J038CE021
4J038CE051
4J038HA266
4J038HA276
4J038HA386
4J038JA17
4J038JA27
4J038JA69
4J038JC38
4J038KA02
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA11
4J038NA15
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】消火機能を有するとともに、曲面に適用した場合でも消火剤層のクラックが生じにくい消火剤シートを提供する。
【解決手段】消火材シート1は、消火剤と、バインダ樹脂と、添加剤と、を含む消火剤層3を備える。消火剤、バインダ樹脂及び添加剤の固形分の合計重量に対する消火剤の固形分の重量の比率が60重量%~98重量%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤と、バインダ樹脂と、添加剤と、を含む消火剤層を備え、
前記消火剤、前記バインダ樹脂及び前記添加剤の固形分の合計重量に対する前記消火剤の固形分の重量の比率が60重量%~98重量%である、消火材シート。
【請求項2】
前記バインダ樹脂は、ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1記載の消火材シート。
【請求項3】
前記添加剤は、エポキシ化合物を含み、
前記エポキシ化合物は、二官能以上である、請求項2記載の消火材シート。
【請求項4】
前記消火剤は、カリウム塩を含む、請求項3記載の消火材シート。
【請求項5】
前記消火剤層の厚さが70μm~500μmである、請求項1~4のいずれか一項記載の消火材シート。
【請求項6】
前記消火剤層のマンドレル直径が18mm以下である、請求項1~4のいずれか一項記載の消火材シート。
【請求項7】
前記消火剤層が積層されている樹脂フィルムを備える、請求項1~4のいずれか一項記載の消火材シート。
【請求項8】
消火剤と、バインダ樹脂と、添加剤と、を含み、
前記消火剤、前記バインダ樹脂及び前記添加剤の固形分の合計重量に対する前記消火剤の固形分の重量の比率が60重量%~98重量%であり、
シート状に成形したときのマンドレル直径が18mm以下である、消火剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火材シート、及び、消火剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災を消火抑制するための自己消火性成形品が知られている。例えば特許文献1に開示されている自己消火性成形品は、燃焼によってエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含んでおり、火災の熱エネルギーによって消火機能を有する化学種を発生させることで自己消火機能を発動することができる。これによれば、消火のために消火器や消火装置等を使用する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/047762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自己消火性成形品は、例えばシート状であって自動車のパネルや建物の壁等の被貼付物に貼り付けて使用することができる。このような使用態様に鑑みると、自己消火性成形品を曲面に貼り付けることも想定されるが、特許文献1では曲面対応に必要な特性については何ら検討がなされていない。これについて本発明者らが検討したことによれば、シート状にした消火剤組成物を曲面に沿って屈曲させる試験をしたときに、その曲面に追従しきれず消火剤組成物にクラック(割れ)が生じる場合があることが分かった。
【0005】
そこで本発明は、消火機能を有するとともに、曲面に適用した場合でも消火剤層のクラックが生じにくい消火剤シートを提供することを目的とする。また、当該消火剤シートに適した消火剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、消火剤と、バインダ樹脂と、添加剤と、を含む消火剤層を備え、消火剤、バインダ樹脂及び添加剤の固形分の合計重量に対する消火剤の固形分の重量の比率が60重量%~98重量%である、消火材シートを提供する。
【0007】
この消火材シートは、曲面に適用した場合でも消火剤層のクラックが生じにくく、火災の熱エネルギーによって消火剤が消火機能を発揮する状態になる。
【0008】
本発明の消火材シートは、以下に挙げる特徴を一つ又は複数備えていてもよい。
・バインダ樹脂は、ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも一方を含む。
・添加剤は、エポキシ化合物を含んでおり、このエポキシ化合物は二官能以上である。
・消火剤は、カリウム塩を含んでいる。
・消火剤層の厚さが70μm~500μmである。
・消火剤層のマンドレル直径が18mm以下である。
・消火剤層が積層されている樹脂フィルムを備えている。
【0009】
また、本発明は、消火剤と、バインダ樹脂と、添加剤と、を含み、消火剤、バインダ樹脂及び添加剤の固形分の合計重量に対する消火剤の固形分の重量の比率が60重量%~98重量%であり、シート状に成形したときのマンドレル直径が18mm以下である、消火剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消火機能を有するとともに、曲面に適用した場合でも消火剤層のクラックが生じにくい消火剤シートを提供することができる。また、当該消火剤シートに適した消火剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】消火材シートの断面図である。
図2】消火材積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
本実施形態の消火材シートは、消火剤組成物がシート状に成形されたものである。この消火材シートは、発火し得る対象物に対して貼り付けて用いられる。そして、対象物が発火したときに、その熱エネルギーを受けて消火剤組成物から消火機能を有する化学種が放出され、これによって炎が消火される。消火のために消火器や消火装置等を使用する必要がないことから、このような消火材シートは「自己消火性」があると表現する。
【0014】
消火対象物としては、発火する虞のあるものであれば特に制限されない。発火する虞のあるものとしては、例えば、対象物としては、電線、配電盤、分電盤、制御盤、蓄電池(リチウムイオン電池等)、建材用壁紙、天井材等の建材、リチウムイオン電池回収用BOX(リサイクルBOX)、ごみ箱、自動車関連部材、コンセント、コンセントカバーなどの各部材が挙げられる。特に本実施形態の消火材シートは曲面に対する追従性が高いので、曲面に対して適用することに適している。
【0015】
<消火材シート>
図1に示されているとおり、本実施形態の消火材シート1は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に積層された消火剤層3とを備えている。消火剤層3は消火剤組成物がシート状に成形されたものである。消火剤層3の厚さは、70μm~500μmであってもよく、90μm~300μmであってもよく、110μm~200μmであってもよい。
【0016】
消火剤層3のマンドレル直径は、18mm以下であってもよく、12mm以下であってもよく、6mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。ここで「マンドレル直径」とは、消火剤層3を単独でJIS K5600-5-1に準拠してタイプ1のマンドレル試験を実施したときに、クラック(割れ)が認められなかった最小の直径をいう。試験上可能な最小直径は2mmである。
【0017】
樹脂フィルム2は、消火剤層3をシート状に成形する際の支持体となるフィルムである。材料は特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、消火剤層3を単独で使用する場合を考慮し、消火剤層3に接する側の樹脂フィルム2の表面が離型処理されていることが好ましい。
【0018】
<消火剤組成物>
消火剤組成物は、少なくとも消火剤とバインダ樹脂と添加剤とを含んでいる。消火剤組成物は、これらが均一に混合された組成物である。
【0019】
(消火剤)
消火剤としては、種々の有機塩や無機塩を単独で、又は、混合して用いることができる。有機塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩としてはカリウム塩を用いることができる。有機カリウム塩としては、酢酸カリウム、クエン酸カリウム(クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム)、酒石酸カリウム、乳酸カリウム、シュウ酸カリウム、マレイン酸カリウム等のカルボン酸カリウム塩が挙げられる。このうち燃焼の負触媒効果に対する有用性の観点から、酢酸カリウム又はクエン酸カリウムを用いることができる。
【0020】
無機塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。無機塩としてはカリウム塩を用いることができる。無機カリウム塩としては、四硼酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウム等が挙げられる。このうち燃焼の負触媒効果に対する有用性の観点から、炭酸水素カリウムを用いることができる。
【0021】
また、消火剤は酸化作用を有する化合物を含んでいてもよい。酸化作用を有する化合物としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸マグネシウムのような塩素酸塩が挙げられる。これらは火災の熱エネルギーを受けて各カリウム塩からエアロゾルを発生させることができる。
【0022】
消火剤の量は、対象物の態様、発火時の火力、消火時間、許容されるスペース等に応じて適宜選択することができる。消火剤の量が多いほど消火能力は向上し、消火時間も短縮されるが、嵩が増す場合もあるため消火体を配置できる場所が限られることになる。消火剤の量は、例えば0.01~1.0g/cmとすることができ、0.02~0.2g/cmであってよい。
【0023】
消火剤組成物における消火剤の含有量は、消火剤、バインダ樹脂及び添加剤の固形分の合計重量に対する消火剤の固形分の重量の比率(以下「消火剤固形分比率」と呼ぶ)が60重量%~98重量%である。この比率が60重量%以上であることで充分な消火機能を有することができ、98重量%以下であることで、消火剤組成物がシート状に成形された状態で、曲げに対する追従性を十分に発揮することができる。消火剤固形分比率は、70重量%~97重量%であってもよく、75重量%~96重量%であってもよく、80重量%~95重量%であってもよく、85重量%~94重量%であってもよい。
【0024】
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂(以下、単に「バインダ」ともいう。)は、消火剤を均一に分散するとともに、消火剤の粒子間を結着する。バインダ樹脂はこのほか、消火機能を有する化学種を消火剤組成物から放出するための燃料としても働き、更に、消火剤層を形成する際の塗工適性を高める。また、バインダ樹脂は、消火剤成分として潮解性を有する塩が含まれる場合にその潮解を抑制することができる。
【0025】
バインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1-)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
バインダ樹脂としては、ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも一方の樹脂を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂はいずれも水酸基含有樹脂である。ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール化度が大きいほど樹脂の疎水性が向上するため、塩(消火剤として用いる塩)による吸湿を抑制し易い。ポリビニルアルコール系樹脂はアセタール化されていないため、ポリビニルアセタール系樹脂と比較すると水酸基数は多いが、上記樹脂以外の他の樹脂成分との反応点が多いとも考えられる。そのため、バインダ設計の観点ではポリビニルアルコール系樹脂のほうが設計自由度が高く、扱い易い。
【0027】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂のケン化により得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。他のモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0028】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、特に制限されないが、80モル%以上であってもよく、95モル%以上であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂が適度なケン化度を有することで、塩との密着性が向上し易く、塩による吸湿を抑制し易い。
【0029】
ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよい。変性の態様としては、アセトアセチル基変性、カルボン酸変性、カルボニル基変性、スルホン酸変性、ヒドラジド基変性、チオール基変性、アルキル基変性、シリル基変性、ポリエチレングリコール基変性、エチレンオキシド基変性、ウレタン結合を有する基による変性、リン酸エステル基変性等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂を変性することで、塩との密着性が向上し易く、塩による吸湿を抑制し易い。
【0030】
ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化により得られる。
【0031】
ポリビニルアセタール系樹脂を得るために用いるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、特に制限されないが、80モル%以上であってもよく、95モル%以上であってもよい。
【0032】
アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、特に制限されないが、炭素数1~10の肪族基又は芳香族基を有するアルデヒドが挙げられる。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクテルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、アミルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β-フェニルプロピオンアルデヒド等の芳香族アルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらのうち、アセタール化反応性に優れる観点から、アルデヒドは、ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド又はn-ノニルアルデヒドであってもよく、ブチルアルデヒドであってもよい。
【0033】
アセタール化に用いられるケトンとしては、特に制限されないが、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、t-ブチルケトン、ジプロピルケトン、アリルエチルケトン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、4’-アミノアセトフェノン、p-クロロアセトフェノン、4’-メトキシアセトフェノン、2’-ヒドロキシアセトフェノン、3’-ニトロアセトフェノン、P-(1-ピペリジノ)アセトフェノン、ベンザルアセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、4-ニトロベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、p-ブロモベンゾフェノン、シクロヘキシル(フェニル)メタノン、2-ブチロナフトン、1-アセトナフトン、2-ヒドロキシ-1-アセトナフトン、8’-ヒドロキシ-1’-ベンゾナフトン等が挙げられる。
【0034】
アルデヒド及びケトンの使用量はアセタール化度に応じて適宜設定することができる。例えば、反応前のポリビニルアルコール系樹脂の水酸基に対して、アルデヒド及びケトンの合計量は0.30~0.45水酸基当量とすることができる。
【0035】
ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量(残存水酸基価)は、10~40モル%であってもよく、15~25モル%であってもよい。水酸基量が上記範囲内であると、アルデヒド及びケトンの脂肪族基や芳香族基により疎水性が得られ、吸湿スピードが鈍化し易い傾向がある。水酸基量は、主鎖の全エチレン基量に対する、水酸基が結合しているエチレン基量の割合(モル%)である。水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法によって算出することができる。
【0036】
ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂は、それぞれ単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量Mwは、10000以上であってもよく、20000以上であってもよく、また150000以下であってもよく、100000以下であってもよい。重量平均分子量Mwが上記下限以上であることで、樹脂の疎水性を確保し易く、また重量平均分子量Mwが上記上限以下であることで、適度な樹脂柔軟性を確保し易く、耐屈曲性や塗工適性が向上し易い。重量平均分子量Mwは、GPC法により算出することができる。
【0038】
ポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂のガラス転移温度Tgは、55℃以上であってもよく、80℃以上であってもよく、また110℃以下であってもよく、100℃以下であってもよい。ガラス転移温度Tgが上記下限以上であることで、結晶性が大きくなるために樹脂の疎水性を確保し易く、またガラス転移温度Tgが上記上限以下であることで、塗工適性が向上し易い。ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計を用いた熱分析により測定することができる。
【0039】
バインダに含まれるポリビニルアセタール系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、同樹脂の特性を充分に発現する観点から、バインダの全量を基準として40重量%以上とすることができ、70重量%以上であってもよく、80重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。
【0040】
バインダは、疎水性向上に伴う塩による吸湿抑制の観点から、上述した樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、シランカップリング剤等が挙げられる。バインダに含まれる他の成分の含有量は、例えば60重量%以下である。
【0041】
(添加剤)
本実施形態における添加剤は、消火剤組成物に柔軟性をもたせて成形性を高めるため、及び、シート成形体の曲面への追従性を高めるために用いられる。この添加剤としては、具体的にはエポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物の中でも二官能以上のエポキシ化合物であることが好ましく、以下に示す化学式(1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化1】

化学式(1)中、mは1~6の整数であり、nは1~30の整数である。mは1~4の整数であってもよく、1~3の整数であってもよい。nは1~20の整数であってもよく、1~15の整数であってもよい。特に、mが1であるとき、nは1~25の整数であってもよい。また特に、mが2又は3であるとき、nは5~15の整数であってもよく、8~12の整数であってもよい。なお、nは、化合物合成時に生じる鎖長のばらつきから、その平均を表したものとして必ずしも整数である必要はなく、例えば上記「nは5~15の整数」との部分は「nは5~15の範囲の任意の数」であると理解してもよい。
【0042】
消火剤組成物における添加剤の含有量は、消火剤組成物に対する柔軟性付与剤としての観点から、消火剤、バインダ樹脂及び添加剤の固形分の合計重量に対する添加剤の固形分の重量の比率が0.2重量%~12.0重量%であってもよく、0.4重量%~8.0重量%であってもよく、1.0重量%~4.0重量%であってもよい。
【0043】
添加剤として添加する化合物が樹脂である場合、当該樹脂はバインダ樹脂としてではなく添加剤として扱う。添加剤として用いられる樹脂は、その樹脂を単独でバインダ樹脂として用いた場合に、膜として成立しない樹脂である。すなわち、基材への塗工は可能であるが、乾燥後に膜が崩壊して基材から剥がれ落ちる樹脂である。
【0044】
<消火材シートの製造方法>
消火材シート1は、消火剤、バインダ樹脂、添加剤を含有する塗布液(消火剤層形成用組成液)を調製し、これを樹脂フィルム上に塗布し乾燥させることで製造することができる。ここで、塗布液の調製方法として、消火剤を含有する消火剤液と、バインダ樹脂を含有するバインダ樹脂液とを別々に調整し、これらと添加剤とを混合することで塗布液を調製してもよい。
【0045】
消火剤液及びバインダ樹脂液の調製に用いる溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、水溶性の溶媒が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。吸湿性を有する消火剤を用いる場合は、有機溶媒はアルコール系溶媒であってもよく、具体的にはエタノール及びイソプロピルアルコールの混合溶媒であってもよい。
【0046】
消火剤液を調製する場合、消火剤の重量と溶媒の重量との比は30:70~70:30であってもよく、40:60~60:40であってもよく、45:55~55:45であってもよい。バインダ樹脂液を調製する場合、バインダ樹脂の重量と溶媒の重量との比は2:98~30:70であってもよく、5:95~25:75であってもよく、10:90~20:80であってもよい。溶媒量は、塗布液の塗工適性を保つためにこれらの下限値以内であることが好ましい。また、溶媒量は、一度の塗工で必要な厚さを確保するために、これらの上限値以内であることが好ましい。また、溶媒量は、乾燥後の残留溶媒が少なく十分に乾燥でき、乾燥後の膜割れや気泡を発生させない観点から、これらの上限以内であることが好ましい。
【0047】
塗布液を樹脂フィルム上に塗布する方法としては、ウェットコーティング法が挙げられる。ウェットコーティング法としては、グラビアコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコート法、スピンコート法、スポンジロール法、ダイコート法、刷毛による塗装等が挙げられる。塗布後の乾燥には、オーブンを用いることができる。
【0048】
<効果>
以上のように構成された消火材シート1は、発火し得る対象物に対して貼り付けて用いることができる。消火材シート1は、コンパクトで狭い場所への貼り付けに適応可能であるだけでなく、発火の危険性のある湾曲した場所(例えば電池ケースの内部や電池自体への巻き付け)や凹凸を含む場所(例えばケースの角)へ貼り付けた場合でも消火剤層3のクラックや剥がれが発生せず、曲げたり巻き付けたりすることができる。また、その有利な特性ゆえにロールtoロールの加工に適している。そして、貼り付けた対象物が発火したときには、その熱エネルギーを受けて消火剤層3から消火機能を有する化学種が放出され(例えばエアロゾルとして放出され)、これによって炎を消火することができる。
【0049】
<消火材積層体>
本発明の他の実施形態として、シート状に成形した消火剤組成物に対して樹脂層や水蒸気バリア層を積層した態様とすることもできる。ここでは、これを消火材シートの一種として「消火材積層体」と呼ぶ。図2に示されているとおり、消火材積層体10は、消火剤層3をその両面から覆うようにして樹脂層4,4を備え、更に、これらの両面から接着層5,5を介して水蒸気バリア層6,6を備えている。また、片側の水蒸気バリア層6には更に粘着層7が設けられ、これに離型フィルム8が積層されている。離型フィルム8は、消火材積層体10を所望の箇所に貼り付ける際には剥がされるものであり、樹脂製であっても紙製であってもよい。
【0050】
ここで、樹脂層4,4の材質としては、ポリオレフィン(PE、PP、COP等)、ポリエステル(PET等)、フッ素樹脂(PTFE、ETFE、EFEP、PFA、FEP、PCTFE等)、ビニル樹脂(PVC、PVA等)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0051】
樹脂層4,4は、熱溶融性(熱融着性)を有してよい。熱溶融性を有する樹脂としてはポリオレフィン系樹脂が挙げられる。すなわち、樹脂層4,4はポリオレフィン系樹脂を含んでよい。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂や、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。これらのうち、ヒートシール性に優れ、かつ水蒸気透過度が低く消火剤の劣化を抑制し易い観点から、ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、又は無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)を含んでよい。これらの樹脂は透明性を有しており、消火剤の外観検査が容易である。そのため、消火材積層体の交換時期の確認等がし易くなる。
【0052】
樹脂層4,4は、消火剤層3よりも面積が広くされており、樹脂層4,4同士が接触している部分を熱融着(ヒートシール)することで消火剤層3を封止することができる。なお、図2では消火剤層3を消火材シート1から樹脂フィルム2を剥がした状態で用いているが、樹脂フィルム2を剥がさないで消火材シート1そのものを樹脂層4,4によって封止してもよい。樹脂層4,4の厚さは、単独で25μm~150μmとすることができ、30μm~100μmであってもよい。
【0053】
接着層5,5を構成する接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ウレタン系接着剤又はポリビニルエーテル系接着剤、またはそれら合成系接着剤、等が挙げられる。これらのうち、85℃-85%RH高温高湿時における樹脂層4,4との密着性、低コストを両立する観点から、接着剤としてはエポキシ-ウレタン合成系接着剤を好適に用いることができる。
【0054】
水蒸気バリア層6,6は、消火材積層体10の設置場所や使用環境に依らず、消火剤の性状が大きく変化しない程度の水蒸気バリア性を維持し易くなる。水蒸気バリア層6,6の水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)は、消火剤の種類に応じ設計できるため特に制限されないが、10g/m/day以下とすることができ、1g/m/day以下であってよい。水蒸気透過度の調整の観点から、水蒸気バリア層6,6としてはアルミナ蒸着層、シリカ蒸着層等の金属酸化物蒸着層を備えるポリエステル樹脂層(例えばPET層)、アルミ箔等の金属箔が挙げられる。水蒸気バリア層が金属酸化物蒸着層を備える場合、金属酸化物蒸着層は消火剤側を向いていてよい。水蒸気バリア層6,6の厚さは、単独で4.5μm~25μmとすることができ、7μm~12μmであってもよい。
【0055】
粘着層7としては、公知のものを適宜用いることができる。消火剤層3とともに樹脂フィルム2を封止した場合は、樹脂フィルム2が存在する側に粘着層7を設ける。粘着層7によって、消火材積層体を対象物に貼り付けることができる。
【0056】
消火材積層体を貼り付けた対象物が発火した場合には、その熱エネルギーによって水蒸気バリア層6、接着層5及び樹脂層4が溶融し、消火剤組成物から消火機能を有する化学種が放出され、これによって炎を消火することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、消火剤、バインダ樹脂、添加剤を含有する塗布液を調製し、これを樹脂フィルム上に塗布して消火剤層を形成する態様を示したが、樹脂フィルムは必須ではない。塗布液を樹脂フィルム上に塗布することに代えて、対象物の被処理面上に塗布し乾燥することにより、対象物上に直接、消火剤層を形成する態様としてもよい。対象物の素材としては金属、樹脂、木材、セラミックス、ガラス等が挙げられ、対象物は非多孔性であっても多孔性であってもよい。
【実施例0058】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
[消火剤液の調製]
消火剤としてのクエン酸カリウムと塩素酸カリウムの混合物を、これと同重量のエタノールに混合した。こうして消火剤液を得た。
【0060】
[バインダ樹脂液の調製]
バインダ樹脂としてのポリビニルブチラールを、エタノールとイソプロピルアルコールとの混合液に混合した。こうしてバインダ樹脂液を得た。
【0061】
[塗布液の調製]
上記で調製した消火剤液と、バインダ樹脂液と、添加剤としての下記のエポキシ化合物Aとを混合した。混合割合は、計算上、乾燥後の固形分重量について、消火剤、バインダ樹脂及び添加剤の固形分の合計重量に対する消火剤の固形分の重量の比率(以下「消火剤固形分比率」と呼ぶ)が90重量%となるようにした。こうして塗布液を得た。
【化2】
【0062】
シリコーン離型処理されたポリエチレンフタレート(PET)フィルムを用意した。上記で得た塗布液を、ギャップを650μmに設定したアプリケーターを用いてPETフィルム上に塗布した。このフィルムを75℃に設定したオーブンで7分間乾燥させた。その後、フィルムの表面に形成された塗膜を剥がすことで、消火剤層を得た。この消火剤層の厚さをニコン社製「DIGIMICRO MU-501A」及び「DIGIMICRO STAND MS-3G」で測定したところ、150μmであった。
【0063】
[屈曲性評価]
消火剤層を得たのち、これを室温一般環境にて一晩以上放置した。その後、室温一般環境にてJIS K5600-5-1に準拠し、タイプ1のマンドレル試験を実施した。直径の大きいマンドレルから試験を行い、試験後の消火剤層を目視確認して消火剤層のクラック(割れ)の有無を確認した。その結果、直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。
【0064】
[消火能力評価]
樹脂層としてLLDPEフィルムを用い、これに水蒸気バリア層としてのシリカ蒸着フィルムを接着剤で貼り合わせた積層体を二枚作製した。次に、消火剤層を10mm×10mmの大きさに切り出した。この消火剤層を、二枚の積層体で、樹脂層面が向かい合うようにして挟み込んだ。全面熱ラミネートによる仮接着をし、次いでヒートシールバーで四方シールを行った。更に、その積層体の片面に、ウレタン粘着層を有する離型フィルムを貼り合わせた。このようにして、図2に示した消火材積層体を作製した。
【0065】
底板がガラス板となっており、かつ、139×109×30mmの容積を有する金属製の容器を用意した。この容器の側面の一部に通風孔を設けた。このガラス板の中央に、上記で作製した消火材積層体を、離型フィルムを剥がして貼り付けた。Φ30mmのるつぼに1.0mLのヘプタンを入れて着火した。上記容器を被せて消火材積層体の働きによって炎が消火するかどうかを観察した。その結果、30秒以内に消火した。
【0066】
<実施例2>
添加剤として下記のエポキシ化合物Bを使用したこと以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。なお、エポキシ化合物Bは常温で固体であったので、75℃に設定したオーブンで10分間加温して液体にしたのちに、塗布液を調製した。
【化3】
【0067】
その結果、直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。
【0068】
<実施例3>
添加剤として下記のエポキシ化合物Cを使用したこと以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。
【化4】
【0069】
その結果、直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。
【0070】
<実施例4~6>
実施例1~3のそれぞれにおいて、エポキシ化合物の添加量を2倍にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。これらの試験をそれぞれ実施例4~6とする。実施例4~6において、消火剤固形分比率はいずれも86.4重量%である。
【0071】
屈曲性評価では、実施例4~6のいずれも、直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。
【0072】
<実施例7~9>
実施例1~3のそれぞれにおいて、エポキシ化合物の添加量を0.5倍にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。これらの試験をそれぞれ実施例7~9とする。実施例7~9において、消火剤固形分比率はいずれも91.9重量%である。
【0073】
屈曲性評価では、実施例7~8のいずれも、直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。
【0074】
<実施例10~12>
実施例1~3のそれぞれにおいて、エポキシ化合物の添加量を0.1倍にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。これらの試験をそれぞれ実施例10~12とする。実施例10~12において、消火剤固形分比率はいずれも93.4重量%である。
【0075】
屈曲性評価では、実施例10~12のいずれも、直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。
【0076】
<比較例1>
塗布液の調整においてバインダ樹脂液の混合量を減少させ、消火剤固形分比率が99重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。また、消火能力評価も行った。
【0077】
その結果、屈曲性評価では直径32mmの試験でクラックが認められた。消火能力評価では、炎は30秒以内に消火した。
【0078】
<比較例2>
塗布液の調整においてバインダ樹脂液の混合量を増加させ、消火剤固形分比率が50重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして塗布液を調製し、消火剤層を得て、屈曲性評価を行った。また、消火能力評価も行った。
【0079】
その結果、屈曲性評価では直径2mmの試験でもクラックは認められなかった。また、消火能力評価では、炎は3分経過しても消火しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の消火材シートは、特に、建装材、自動車部材、航空機部材、エレクトロニクス部材等の産業資材に用いられる部材に対し、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…消火材シート、2…樹脂フィルム、3…消火剤層、4…樹脂層、5…接着層、6…水蒸気バリア層、7…粘着層、8…離型フィルム、10…消火材積層体(消火材シート)。

図1
図2