(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017705
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20230131BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230131BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01H36/00 J
G06F3/041 550
G06F3/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102618
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2021121749
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤木 孝司
(72)【発明者】
【氏名】北川 耕平
【テーマコード(参考)】
5G046
【Fターム(参考)】
5G046AA02
5G046AA03
5G046AB02
5G046AC25
5G046AD02
5G046AE05
(57)【要約】
【課題】複数のタッチスイッチのいずれにタッチ操作が行われたかを判定可能な静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法を提供する。
【解決手段】静電容量式入力装置は、複数のタッチスイッチと、前記複数のタッチスイッチの出力に基づいて、前記複数のタッチスイッチのいずれか1つへのタッチ操作を判定する判定部とを含み、前記判定部は、前記タッチ操作の有無の判定に用いる第1閾値と、前記複数のタッチスイッチの出力の各々とを比較する第1の比較を行い、前記複数のタッチスイッチの出力のうち前記第1閾値よりも大きい出力を、前記第1閾値よりも大きく互いに異なる複数の比較閾値と比較する第2の比較を行い、前記第1の比較又は前記第2の比較で得た比較結果に基づいて、前記複数のタッチスイッチの前記いずれか1つへのタッチ操作を判定する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタッチスイッチと、
前記複数のタッチスイッチの出力に基づいて、前記複数のタッチスイッチのいずれか1つへのタッチ操作を判定する判定部と
を含み、
前記判定部は、
前記タッチ操作の有無の判定に用いる第1閾値と、前記複数のタッチスイッチの出力の各々とを比較する第1の比較を行い、
前記複数のタッチスイッチの出力のうち前記第1閾値よりも大きい出力を、前記第1閾値よりも大きく互いに異なる複数の比較閾値と比較する第2の比較を行い、
前記第1の比較又は前記第2の比較で得た比較結果に基づいて、前記複数のタッチスイッチのいずれか1つへのタッチ操作を判定する、静電容量式入力装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第2の比較の結果、前記複数の比較閾値のうちのいずれかの比較閾値を超える前記出力が1つである場合には、前記複数のタッチスイッチのうち当該1つの出力に対応するタッチスイッチに前記タッチ操作が行われたと判定する、請求項1に記載の静電容量式入力装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第2の比較において、前記複数のタッチスイッチの出力のうち前記第1閾値よりも大きい出力が複数ある場合には、
前記複数の出力のうちの1つを特定出力として選択することと、
前記選択した特定出力が前記複数の比較閾値のうちのいずれかの比較閾値を超えていて、かつ、前記複数の出力のうちの前記選択した特定出力以外の非特定出力が前記いずれかの比較閾値を超えていないかどうかを判定すること
とを前記複数の出力について行うことによって、
前記いずれかの比較閾値を超える前記1つの出力を抽出する、請求項2に記載の静電容量式入力装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第2の比較の結果、前記複数の比較閾値のうちのいずれかの比較閾値以下の出力が2つあり、当該2つの出力のすべてが前記複数の比較閾値のうちの同一の隣り合う2つの比較閾値の間の範囲内にある場合には、又は、前記複数の比較閾値のうち最も低い比較閾値と前記第1閾値との間の範囲内にある場合には、前記複数のタッチスイッチのうち、当該2つの出力のうち先に得られた出力、又は、当該2つの出力のうち後に得られた出力に対応するタッチスイッチに前記タッチ操作が行われたと判定する、請求項1に記載の静電容量式入力装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第2の比較において、前記複数のタッチスイッチの出力のうち前記第1閾値よりも大きい出力が複数ある場合には、
前記複数の出力のうちの1つを特定出力として選択することと、
前記選択した特定出力が前記いずれかの比較閾値以下であり、かつ、前記複数の出力のうちの前記選択した特定出力以外の非特定出力が前記いずれかの比較閾値以下であるかどうかを判定すること
とを前記複数の出力について行うことによって、
前記いずれかの比較閾値以下の前記2つの出力を抽出する、請求項4に記載の静電容量式入力装置。
【請求項6】
前記非特定出力は、前記複数の出力のうちの前記選択した特定出力以外の出力のうち前記特定出力が得られたタッチスイッチに隣接するタッチスイッチの出力である、請求項3に記載の静電容量式入力装置。
【請求項7】
前記複数の比較閾値のうちの最大の比較閾値と前記第1閾値とは、前記タッチスイッチの検出感度、前記タッチスイッチの面積、又は、前記タッチスイッチと当該タッチスイッチに隣接するタッチスイッチとの距離に基づいて設定される、請求項2に記載の静電容量式入力装置。
【請求項8】
前記複数の比較閾値のうちの最大の比較閾値は、操作体が前記タッチスイッチの中心領域を操作した際に、当該タッチスイッチで検出されるセンサ値を基準とした値である、請求項2に記載の静電容量式入力装置。
【請求項9】
前記第1閾値は、操作体が前記タッチスイッチの外縁又は外縁近傍を操作した際に、当該タッチスイッチで検出されるセンサ値を基準とした値である、請求項1に記載の静電容量式入力装置。
【請求項10】
前記複数のタッチスイッチは、車両のステアリングに設けられるスイッチである、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項11】
複数のタッチスイッチと、
前記複数のタッチスイッチの出力に基づいて、前記複数のタッチスイッチのいずれか1つへのタッチ操作を判定する判定部と
を含む、静電容量式入力装置において、
前記判定部が
前記タッチ操作の有無の判定に用いる第1閾値と、前記複数のタッチスイッチの出力の各々とを比較する第1の比較を行い、
前記複数のタッチスイッチの出力のうち前記第1閾値よりも大きい出力を、前記第1閾値よりも大きく互いに異なる複数の比較閾値と比較する第2の比較を行い、
前記第1の比較又は前記第2の比較で得た比較結果に基づいて、前記複数のタッチスイッチのいずれか1つへのタッチ操作を判定する、静電容量式入力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タッチ電極と、タッチの有無を示すタッチ検出信号を出力するタッチ検出回路と、閾値を指定するための閾値指定信号をタッチ検出回路に供給する閾値指定回路と、を備える静電容量式タッチスイッチ装置がある。タッチ操作を受け付ける段階では閾値を低く設定し、タッチ操作を受け付けた後は閾値を高く設定してタッチ操作に対する反応を早めている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の静電容量式タッチスイッチ装置の閾値指定回路を隣接して配列される複数のタッチスイッチに適用すると、タッチ操作を受け付ける段階での閾値が非常に低いため、複数のタッチスイッチで同時にタッチ操作が行われたと判定することになり、複数のタッチスイッチのいずれにタッチ操作が行われたかを判定することは困難である。
【0005】
そこで、複数のタッチスイッチのいずれにタッチ操作が行われたかを判定可能な静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の静電容量式入力装置は、複数のタッチスイッチと、前記複数のタッチスイッチの出力に基づいて、前記複数のタッチスイッチのいずれか1つへのタッチ操作を判定する判定部とを含み、前記判定部は、前記タッチ操作の有無の判定に用いる第1閾値と、前記複数のタッチスイッチの出力の各々とを比較する第1の比較を行い、前記複数のタッチスイッチの出力のうち前記第1閾値よりも大きい出力を、前記第1閾値よりも大きく互いに異なる複数の比較閾値と比較する第2の比較を行い、前記第1の比較又は前記第2の比較で得た比較結果に基づいて、前記複数のタッチスイッチの前記いずれか1つへのタッチ操作を判定する。
【発明の効果】
【0007】
複数のタッチスイッチのいずれにタッチ操作が行われたかを判定可能な静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の静電容量式入力装置の操作部110が設けられたステアリングホイール10を示す図である。
【
図2】実施形態の静電容量式入力装置100を示す図である。
【
図3】タッチスイッチ114とタッチスイッチ115とに別々にタッチ操作を行った場合のタッチスイッチ111~119における静電容量の分布を示す図である。
【
図4】
図3(A)、
図3(B)における縦20行×横24列の領域のうちの上から8行目から10行目における静電容量を表す棒グラフを示す図である。
【
図5】
図3(A)、
図3(B)における縦20行×横24列の領域のうちの上から11行目から13行目における静電容量を表す棒グラフを示す図である。
【
図6】比較用の判定処理による判定を説明する図である。
【
図7】実施形態の静電容量式入力装置100における判定処理で用いる閾値を説明する図である。
【
図8】実施形態の判定部123の判定処理による判定を説明する図である。
【
図9】判定部123が実行する判定処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図10】ステップS4の詳細な処理を示すフローチャートである。
【
図11】ステップS5の詳細な処理を示すフローチャートである。
【
図12】静電容量の分布と第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の静電容量式入力装置の操作部110が設けられたステアリングホイール10を示す図である。ステアリングホイール10は、車両の運転席に配置されており、スポークに操作部110が設けられている。
図1には、一例として、利用者の右側の手Hの親指で操作部110を操作している状態を示す。
【0011】
車両は、エンジン、及び/又は、モータ等を動力源として道路を走行可能なオートモービルである。車両には、例えば米国のSAE (Society of Automotive Engineers) Internationalによって規定された様々なレベルの自動運転機能が搭載されていてもよい。
【0012】
操作部110は、拡大して示すように、一例として9つのタッチスイッチ111~119を有する。タッチスイッチ111~119を示す拡大図では、タッチスイッチ111~119を覆うカバーを省略する。タッチスイッチ111~119は、複数のタッチスイッチの一例である。ここでは、タッチスイッチ111~119が配置される領域に(1)~(9)を記す。
【0013】
タッチスイッチ111~119は、筐体110Aに収容され、
図1の手前側の操作面を覆うカバー110Bが取り付けられた状態で、ステアリングホイール10のスポークに設けられている。
【0014】
タッチスイッチ111~119は、縦方向に3行×横方向に3列で略マトリクス状に配列されている。タッチスイッチ111~119は、一例として金属箔、金属板、又は導電膜等で作製される電極であり、配線やケーブル等を介して図示しない制御装置に接続されている。タッチスイッチ111~119と手H(
図1参照)との間の静電容量は、タッチスイッチ111~119に対する手Hの近接の度合(距離)によって変化する。
【0015】
タッチスイッチ111~119は、一例として車両の様々な電装機器の操作に用いられる。カバー110Bのうちのタッチスイッチ111~119のいずれかの表面上の部分に指先等で触れる(タッチする)ことにより、車両の所望の電装機器を操作することができる。タッチスイッチ111~119で操作可能な電装機器の機能は、例えば、オーディオの選曲や音量調節、ハンズフリーフォンのオンフック又は終了の選択、又はクルーズコントロールの設定等である。
【0016】
図2は、実施形態の静電容量式入力装置100を示す図である。静電容量式入力装置100は、操作部110及び制御装置120を含む。操作部110はタッチスイッチ111~119(
図1参照)を有するが、
図2では省略する。静電容量式入力装置100は、タッチスイッチ111~119へのタッチ操作を一例として自己容量式で検出する。
【0017】
操作部110と制御装置120とは、配線やケーブル等を介して接続されている。制御装置120は、一例としてステアリングホイール10に設けられていて、操作部110と一体的に構成されている。なお、ここでは制御装置120が一例として操作部110に設けられていて、操作部110と一体的に構成されている形態について説明するが、制御装置120は操作部110と別に構成されていて、ステアリングホイール10の外側で車両の室内に設けられていてもよい。
【0018】
制御装置120は、車両に搭載されるCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークを介して、電装機器の制御を行うECU(Electronic Control Unit)50に接続されている。ECU50は、車両のオーディオ、ハンズフリーフォン、クルーズコントロール及びその他の電装機器の制御を行う電子制御装置である。
図2には1つのECU50を示すが、制御装置120には複数のECU50が接続されていてもよい。
【0019】
制御装置120は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0020】
制御装置120は、主制御部121、静電容量検出部122、判定部123、及びメモリ124を有する。主制御部121、静電容量検出部122、判定部123は、制御装置120が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ124は、制御装置120のメモリを機能的に表したものである。
【0021】
主制御部121は、制御装置120の制御処理を統括する処理部であり、静電容量検出部122、及び判定部123が行う処理以外の処理を実行する。
【0022】
静電容量検出部122は、タッチスイッチ111~119(
図1参照)の静電容量を検出し、タッチスイッチ111~119の各々の静電容量のカウント値を表すデータを判定部123に伝送する。静電容量のカウント値は、タッチスイッチ111~119に操作を行っていない状態における基準値に対する変化分であり、操作時の静電容量から基準値を減算した差分である。以下では、静電容量は、基準値に対する差分値である。タッチスイッチ111~119の静電容量は、タッチスイッチ111~119の出力の一例である。タッチスイッチ111~119の各々では、タッチスイッチ111~119の各々における静電容量を表す1つのカウント値が得られる。
【0023】
判定部123は、静電容量検出部122から伝送されるタッチスイッチ111~119の各々の静電容量のカウント値に基づいて、タッチスイッチ111~119のうちのいずれか1つでタッチ操作が行われたことを判定する。判定部123の判定結果は、タッチスイッチ111~119のうちのタッチ操作が行われたいずれか1つのタッチスイッチを表す。判定部123の判定結果は、静電容量式入力装置100がいずれのタッチスイッチでタッチ操作が行われたかを検出した検出結果である。なお、判定部123が実行する判定処理については後述する。
【0024】
メモリ124は、制御装置120が判定処理を行うために必要なプログラム及びデータ等を格納する。メモリ124には、タッチスイッチ111~119の各々の静電容量のカウント値を表すデータや、判定部123が判定処理の過程で生成したデータ等が格納される。
【0025】
ここで、静電容量式入力装置100がタッチスイッチ111~119に対して行われるタッチ操作を検出する際の感度については、様々な要望が有り得る。例えば、寒冷地での利用を見込んで設計される車両に静電容量式入力装置100が搭載される場合には、手Hにグローブを嵌めてステアリングホイール10及び操作部110を操作することが有り得る。このような場合には、タッチスイッチ111~119の各々の静電容量のカウント値が小さくなる傾向があるため、判定部123の判定処理における閾値を低くすることになる。グローブを嵌めている場合におけるタッチ操作を検出する際の感度を向上させるためである。ただし、閾値を低くすると、タッチ操作が行われたタッチスイッチで得られるカウント値に加えて、隣に位置するタッチスイッチで得られるカウント値も閾値を超える可能性が生じるため、工夫が必要である。
【0026】
このような工夫として、実施形態の判定部123の判定処理では、タッチ操作が行われたタッチスイッチをタッチスイッチ111~119のうちの1つに特定するために、3つ以上(3段階以上)の閾値を用いて隣接するタッチスイッチの静電容量の大小を比較しやすくする。ここでは、実施形態の判定部123の判定処理について説明する前に、比較用の判定処理について
図3乃至
図6を用いて説明する。比較用の判定処理では、2つ(2段階)の閾値を用いて、タッチ操作が行われたタッチスイッチをタッチスイッチ111~119のうちの1つに特定する。
【0027】
図3は、タッチスイッチ114とタッチスイッチ115とに別々にタッチ操作を行った場合のタッチスイッチ111~119における静電容量の分布を示す図である。
図3(A)は、タッチスイッチ114の中央部分にタッチ操作が行われた場合のタッチスイッチ111~119における静電容量の分布を示し、
図3(B)は、タッチスイッチ115の中央部分にタッチ操作が行われた場合のタッチスイッチ111~119における静電容量の分布を示す。静電容量はカウント値で示す。
【0028】
図3(A)、
図3(B)には、一例として平面視におけるタッチスイッチ111~119の表面全体を含む矩形状の領域を3mmの間隔で縦20行×横24列の480個の領域に分割して解析を行い、480個の領域についての解析で得た480個の静電容量を記す。実際のタッチスイッチ111~119の各々では、静電容量を表す1つのカウント値が得られるが、ここでは静電容量の分布を細かく解析するために、480個の領域についての解析で得た480個の静電容量を記す。より具体的には、
図3(A)には、タッチスイッチ114の出力を示す。
図3(A)におけるタッチスイッチ114の出力は、480個の領域の各々にタッチ操作を行った場合のタッチスイッチ114の出力である。同様に、
図3(B)には、タッチスイッチ115の出力を示す。
図3(B)におけるタッチスイッチ115の出力は、480個の領域の各々にタッチ操作を行った場合のタッチスイッチ115の出力である。
【0029】
図3(A)において、480個の領域の各々にタッチ操作を行った場合に、タッチスイッチ114の出力は、タッチスイッチ114の中央部分の領域にタッチ操作を起こったときほど静電容量が高く、タッチスイッチ114の中央部分から離れる領域にタッチ操作を行ったときほど静電容量が低下している。これは
図3(B)におけるタッチスイッチ115についても同様である。
【0030】
また、
図3(A)、
図3(B)には、静電容量が第1閾値(1)を超えた領域をグレーで示す。第1閾値(1)は、実際にタッチスイッチ111~119で得られる9つの静電容量について、タッチ操作の有無の判定に用いる閾値である。第1閾値(1)は、手Hにグローブを嵌めた状態でもタッチ操作の有無を判定可能な低い値である。
【0031】
図3(A)に示すように、480個の領域の各々にタッチ操作を行った場合に、タッチスイッチ114の出力に基づいて第1閾値(1)に基づいてタッチ操作が有ったと判定される領域は、タッチスイッチ114の外部にまで及んでいる。すなわち、タッチスイッチ114の外部でタッチスイッチ114の近傍に位置する領域にタッチ操作を行ったとしても、タッチスイッチ114の出力が第1閾値を超えてしまっている。同様に、
図3(B)に示すように、480個の領域の各々にタッチ操作を行った場合に、タッチスイッチ115の出力に基づいて第1閾値(1)に基づいてタッチ操作が有ったと判定される領域は、タッチスイッチ115の外部にまで及んでいる。すなわち、タッチスイッチ115の外部でタッチスイッチ115の近傍に位置する領域にタッチ操作を行ったとしても、タッチスイッチ115の出力が第1閾値を超えてしまっている。このように、第1閾値(1)に基づいてタッチ操作が有ったと判定される領域がタッチスイッチ114及び115の外部にまで及ぶのは、第1閾値(1)は、手Hにグローブを嵌めた状態でもタッチ操作の有無を判定可能な低い値であるからである。
【0032】
このため、タッチスイッチ114の領域にタッチ操作を行った場合に、タッチスイッチ114に隣接するタッチスイッチ111、112、115、117、118にタッチ操作を行ったと判定されるおそれがある。タッチスイッチ114に隣接するタッチスイッチとは、タッチスイッチ114の横方向及び縦方向の隣と、斜め方向の隣に位置するタッチスイッチ111、112、115、117、118である。また、言い換えると、タッチスイッチ114に隣接するタッチスイッチ111、112、115、117、118の領域にタッチ操作を行った場合に、タッチスイッチ114にタッチ操作を行ったと判定されるおそれがある。
【0033】
同様に、タッチスイッチ115にタッチ操作を行った場合に、タッチスイッチ115に隣接するタッチスイッチ111、112、113、114、116、117、118にタッチ操作を行ったと判定されるおそれがある。タッチスイッチ115に隣接するタッチスイッチとは、タッチスイッチ115の横方向及び縦方向の隣と、斜め方向の隣に位置するタッチスイッチ111、112、113、114、116、117、118である。
【0034】
上述のように、第1閾値(1)だけではタッチスイッチ111~119のうちのいずれか1つでタッチ操作が行われたかどうかを判定することが困難になるおそれがあるため、比較用の判定処理では、第1閾値(1)よりも値が大きい第2閾値(2)を用いる。
【0035】
図4は、
図3(A)、
図3(B)における縦20行×横24列の領域のうちの上から8行目から10行目における静電容量を表す棒グラフを示す図である。タッチスイッチ114の静電容量を白い棒グラフで示し、タッチスイッチ115の静電容量を黒い棒グラフで示す。
図4において、横方向には
図3(A)、
図3(B)における縦20行×横24列の領域のうちの左から1列目から24列目までの静電容量を示す。24列目は、縦20行×横24列の領域のうちの一番右側の列である。
【0036】
また、
図4には、第1閾値(1)に加えて第2閾値(2)を示す。第2閾値(2)は第1閾値(1)よりも高く、比較用の判定処理において、実際にタッチスイッチ111~119で得られる9つの静電容量のうち、第2閾値(2)を超える静電容量が1つのみである場合に、その静電容量が得られるタッチスイッチでタッチ操作が行われていると判定する際に用いられる閾値である。
【0037】
このように、比較用の判定処理では、タッチ操作が行われたタッチスイッチを特定するために、第1閾値(1)に加えて、第1閾値(1)よりも値が大きい第2閾値(2)を用いるが、第2閾値(2)を超える静電容量が得られない場合に問題が生じうる。比較用の判定処理において第2閾値(2)を超える静電容量が1つも存在しない場合に、タッチ操作が行われている1つのタッチスイッチを特定する方法と問題点については、
図6を用いて後述する。
【0038】
8行目では、第2閾値(2)を超える静電容量は得られず、破線の四角で囲む10列目から12列目ではタッチスイッチ114及び115の両方が第1閾値(1)を超えている。
【0039】
9行目では、第2閾値(2)を超える静電容量は得られるが、破線の四角で囲む10列目及び11列目において、タッチスイッチ114及び115の両方が第1閾値(1)を超えているが、両方とも第2閾値(2)を超えていない。
【0040】
10行目では、第2閾値(2)を超える静電容量は得られるが、破線の四角で囲む10列目及び11列目において、タッチスイッチ114及び115の両方が第1閾値(1)を超えているが、両方とも第2閾値(2)を超えていない。
【0041】
図5は、
図3(A)、
図3(B)における縦20行×横24列の領域のうちの上から11行目から13行目における静電容量を表す棒グラフを示す図である。
図5における静電容量の表し方は、
図4における静電容量の表し方と同一である。
【0042】
11行目では、第2閾値(2)を超える静電容量は得られるが、破線の四角で囲む10列目から及び12列目において、タッチスイッチ114及び115の両方が第1閾値(1)を超えているが、両方とも第2閾値(2)を超えていない。
【0043】
12行目では、第2閾値(2)を超える静電容量は得られるが、破線の四角で囲む9列目から及び12列目において、タッチスイッチ114及び115の両方が第1閾値(1)を超えているが、両方とも第2閾値(2)を超えていない。
【0044】
13行目では、第2閾値(2)を超える静電容量は得られず、破線の四角で囲む10列目及び11列目において、タッチスイッチ114及び115の両方が第1閾値(1)を超えているが、両方とも第2閾値(2)を超えていない。
【0045】
図4及び
図5に示すように、第1閾値(1)と、第1閾値(1)よりも値が大きい第2閾値(2)とを用いても、タッチスイッチ114及び115の両方で第2閾値(2)を超える静電容量が得られない場合があり、タッチスイッチ114及び115の境界付近では、いずれでタッチ操作が行われているのかを判定できないグレーゾーンとなる。
【0046】
図6は、比較用の判定処理による判定を説明する図である。
図6(A)~
図6(C)には、簡略化したタッチスイッチ114及び115と、タッチスイッチ114及び115で得られる静電容量とを示す。
【0047】
図6(A)には、指先FTがタッチスイッチ114のうちタッチスイッチ115に近い領域を触れている状態の静電容量を示す。このような指先FTの位置は、指先FTがタッチスイッチ114からタッチスイッチ115に向かって移動する過程で生じうる。タッチスイッチ114の静電容量は第1閾値(1)を超えているが第2閾値(2)未満であり、タッチスイッチ115の静電容量は、タッチスイッチ114の静電容量よりも低いが、第1閾値(1)を超えていて第2閾値(2)未満である。このような場合には、静電容量が時系列的に先に第1閾値(1)を超えたタッチスイッチ114にタッチ操作が行われたと判定される。
【0048】
図6(B)には、指先FTがタッチスイッチ114及び115の両方に触れている状態の静電容量を示す。このような状況は、指先FTがタッチスイッチ114からタッチスイッチ115に向かって移動する過程や、指先FTがタッチスイッチ111又は112の方向、又は、タッチスイッチ117又は118の方向からタッチスイッチ114及び115に向かって移動する過程で生じうる。タッチスイッチ114及び115の静電容量は、ともに第1閾値(1)を超えている。このような場合には、タッチスイッチ114及び115のいずれでタッチ操作が行われているかを判定できない。
【0049】
図6(C)には、指先FTがタッチスイッチ115に触れていて、タッチスイッチ114には触れていない状態の静電容量を示す。 タッチスイッチ114の静電容量は第1閾値(1)を超えているが第2閾値(2)未満であり、タッチスイッチ115の静電容量は第2閾値(2)閾値を超えている。このような場合には、タッチスイッチ115にタッチ操作が行われたと判定される。ただし、このような状況はグローブを嵌めた状態では静電容量が異なる場合があり、個人差によっても静電容量が異なる場合がある。
【0050】
以上のように、2つの第1閾値(1)及び第2閾値(2)による2段階の閾値を用いる比較用の判定処理では、
図6(B)に示すように2つのタッチスイッチの境界に指先FTが位置する場合に、2つのタッチスイッチのいずれでタッチ操作が行われているのかを判定できないという問題がある。この問題は、
図4、
図5におけるタッチスイッチ114及び115の境界付近に示す破線の四角で囲んだ領域内で顕著であり、タッチスイッチ111~119のすべてにおいて、隣接するタッチスイッチとの境界で生じうる問題である。
【0051】
そこで、実施形態の判定部123の判定処理では、このような問題を解決する。以下、
図7乃至
図12を用いて、実施形態の判定部123の判定処理について説明する。実施形態の判定部123の判定処理では、少なくとも3つの閾値(第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3))を用いることによって、タッチ操作が行われているタッチスイッチを特定する。少なくとも3つの閾値のうちの第2閾値(2)及び第3閾値(3)は、複数の比較閾値の一例であり、第1閾値よりも大きく互いに異なる複数の比較閾値の一例である。また、第3閾値(3)は、複数の比較閾値のうちの最大の比較閾値の一例である。なお、第2閾値(2)は、上述した比較用の第2閾値(2)とは異なる。詳細は後述する。
【0052】
図7は、実施形態の静電容量式入力装置100における判定処理で用いる閾値を説明する図である。
図7(A)及び
図7(B)には、タッチスイッチ114及び115に対してタッチ操作を行った場合に、静電容量が第1閾値(1)を超えた領域をグレーにて示す。すなわち、グレーの領域は第1閾値(1)に相当する領域を表す。
【0053】
実施形態における第1閾値(1)は、比較用の判定処理における第1閾値(1)と同様に、グローブを嵌めた手Hの指先FTでタッチ操作を行っても、タッチ操作の有無を判定可能な低い値である。このような第1閾値(1)は、操作体の一例である手H(
図1参照)がタッチスイッチの外縁又は外縁近傍を操作した際に、操作が行われたタッチスイッチで検出される静電容量のカウント値(センサ値の一例)を基準とした値である。
【0054】
タッチスイッチの外縁とは、各タッチスイッチの周囲を囲む縁であり、タッチスイッチの外縁近傍とは、各タッチスイッチの外縁よりも内側及び外側で、外縁における静電容量と同等(例えば差が±10%以下)の静電容量が得られる領域である。このようにして、手Hにグローブを嵌めた状態でもタッチ操作の有無を判定可能にする第1閾値(1)を決めるため、第1閾値(1)に相当する領域は各タッチスイッチの外縁よりも外側にまで及ぶことになる。
【0055】
グローブを嵌めた手Hの指先FTで各タッチスイッチにタッチ操作を行った場合に各タッチスイッチで検出される静電容量は、素手で各タッチスイッチにタッチ操作を行った場合に各タッチスイッチで検出される静電容量よりも小さい。グローブの厚さの分だけタッチスイッチと指先FTとの間の距離が長くなるからである。このため、第1閾値(1)は、素手でタッチ操作を行った場合にタッチ操作の有無を判定可能な閾値よりも小さく、第1閾値(1)に相当する領域は、素手でタッチ操作を行った場合にタッチ操作の有無を判定可能な閾値に相当する領域よりも広い。
【0056】
実施形態の判定部123の判定処理における第2閾値(2)は、比較用の第2閾値(2)と同様に第1閾値(1)よりも大きな値を有するが、タッチスイッチ114及び115については、グレーの領域の内側に破線で示す領域に相当する点が比較用の第2閾値(2)と異なる。すなわち、実施形態の判定部123の判定処理では、第2閾値(2)を超える静電容量が破線で示す領域内で得られるように、第2閾値(2)の値が設定される。第2閾値(2)に相当する破線の領域は、第1閾値(1)に相当するグレーの領域の外縁に近い部分を除いた中心側の領域である。つまり、第2閾値(2)は第1閾値(1)よりも大きい。
【0057】
また、実施形態の判定部123の判定処理における第3閾値(3)は、タッチスイッチ114及び115については、グレーの領域の内側に一点鎖線で示す領域に相当する。すなわち、実施形態の判定部123の判定処理では、第3閾値(3)を超える静電容量が一点鎖線で示す領域内で得られるように、第3閾値(3)の値が設定される。
【0058】
第3閾値(3)に相当する一点鎖線で示す領域は、第2閾値(2)に相当する破線で示す領域に含まれ、破線で示す領域のうちの中心側の領域である。第3閾値(3)を用いて、第2閾値(2)に基づく判定よりも、タッチ操作がより中心で行われていることを判定可能にするために、第3閾値(3)に相当する一点鎖線で示す領域は、第2閾値(2)に相当する破線で示す領域のうちの中心側に位置している。つまり、第3閾値(3)は第2閾値(2)よりも大きい。
【0059】
第3閾値(3)は、手Hや指先FTがタッチスイッチの中心領域を操作した際に、操作が行われたタッチスイッチで検出されるセンサ値を基準とした値である。第3閾値(3)に相当する一点鎖線の領域は、タッチスイッチ114及び115の中心領域の一例である。
【0060】
以上のような3つの第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)を用いる場合に、第2閾値(2)は、第1閾値(1)と第3閾値(3)との間の値として設定してもよい。例えば、第2閾値(2)は、第1閾値(1)と第3閾値(3)との中間値や、第3閾値(3)に所定の百分率の割合を乗じた値として設定してもよい。
【0061】
第1閾値(1)と第3閾値(3)とについては、タッチスイッチの検出感度、タッチスイッチの面積、又は、タッチスイッチと当該タッチスイッチに隣接するタッチスイッチとの距離に基づいて設定すればよい。なお、検出感度とは、あるタッチ操作に対するタッチスイッチの静電容量の大きさで表され、あるタッチ操作に対するタッチスイッチの静電容量が大きければ検出感度が高く、あるタッチ操作に対するタッチスイッチの静電容量が小さければ検出感度が低いことになる。
【0062】
また、
図7(A)、
図7(B)には、タッチスイッチ114及び115についての3つの第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)に相当する領域を示したが、タッチスイッチ111~113、及び、116~119についても同様である。
【0063】
実施形態の判定部123の判定処理では、タッチスイッチ111~119の各々について、少なくとも3つの閾値を用いることによって、タッチ操作が行われているタッチスイッチを特定する。以下では、一例として3つの第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)を用いてタッチ操作が行われたタッチスイッチを特定する判定処理について説明する。
【0064】
図8は、実施形態の判定部123の判定処理による判定を説明する図である。
図8(A)~
図8(C)には、簡略化したタッチスイッチ114乃至116と、タッチスイッチ114乃至116で得られる静電容量とを示す。
【0065】
図8(A)には、指先FTがタッチスイッチ114に触れているがタッチスイッチ115に近い状態の静電容量を示す。このような指先FTの位置は、指先FTがタッチスイッチ114からタッチスイッチ115に向かって移動する過程で生じうる。タッチスイッチ114の静電容量は第3閾値(3)を超えており、タッチスイッチ115の静電容量は第1閾値(1)を超えていて第2閾値(2)未満であり、タッチスイッチ116の静電容量は第1閾値(1)未満である。このように第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが1つのみの場合には、静電容量が第3閾値(3)を超えたタッチスイッチ114にタッチ操作が行われたと判定される。静電容量が第3閾値(3)を超えたタッチスイッチ114は、第3閾値(3)を超えた静電容量(出力)に対応するタッチスイッチの一例であり、第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが1つのみであることは、第3閾値(3)を超える出力が1つであることの一例である。また、この場合にタッチスイッチ114の静電容量は、1つの出力の一例であり、タッチスイッチ114にタッチ操作が行われたと判定することは、1つの出力を抽出することの一例である。
【0066】
なお、第3閾値(3)は、指先FTが複数のタッチスイッチに跨がっていて、複数のタッチスイッチに触れている状態では、複数のタッチスイッチの静電容量が超えない値に設定すればよい。
【0067】
図8(B)には、指先FTがタッチスイッチ114及び115の両方に触れている状態の静電容量を示す。このような状況は、指先FTがタッチスイッチ114からタッチスイッチ115に向かって移動する過程で生じうる。タッチスイッチ114及び115の静電容量は、ともに第3閾値(3)以下であり第2閾値(2)を超えている。このような場合には、静電容量が時系列的に先に第1閾値(1)を超えたと判断されたタッチスイッチ114にタッチ操作が行われたと判定される。なお、タッチスイッチ114及び115の静電容量が、ともに第3閾値(3)以下であり第2閾値(2)を超えている状態は、複数の比較閾値のうちのいずれかの比較閾値以下の出力が2つある状態の一例であり、タッチスイッチ114及び115の静電容量は、2つの出力の一例である。
【0068】
なお、タッチスイッチ114及び115の静電容量が、ともに第2閾値(2)以下であり第1閾値(1)を超えている場合にも、静電容量が時系列的に先に第1閾値(1)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定すればよい。
【0069】
図8(C)には、指先FTがタッチスイッチ115に触れているがタッチスイッチ114に触れかかっている状態の静電容量を示す。このような指先FTの位置は、指先FTがタッチスイッチ114からタッチスイッチ115に向かって移動する過程で生じうる。タッチスイッチ115の静電容量は第3閾値(3)を超えており、タッチスイッチ114の静電容量は第2閾値(2)を超えていて第3閾値(3)以下であり、タッチスイッチ116の静電容量は第1閾値(1)以下である。このように第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが1つのみの場合には、静電容量が第3閾値(3)を超えたタッチスイッチ115にタッチ操作が行われたと判定される。
【0070】
図8(A)~
図8(C)を用いて説明した判定処理は、判定部123の判定処理の一部である。判定部123は以下の判定処理を行う。
【0071】
判定部123は、第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが1つのみの場合には、静電容量が第3閾値(3)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する。
【0072】
判定部123は、第2閾値(2)を超える静電容量のタッチスイッチが1つのみの場合には、静電容量が第2閾値(2)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する。
【0073】
判定部123は、第1閾値(1)を超える静電容量のタッチスイッチが1つのみの場合には、静電容量が第1閾値(1)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する。
【0074】
また、判定部123は、上記以外の場合で、静電容量が第1閾値(1)を超えたタッチスイッチが複数ある場合には、次のように判定する。
【0075】
判定部123は、すべてのタッチスイッチの静電容量が第3閾値(3)未満であり、第2閾値(2)を超える静電容量のタッチスイッチが複数ある場合には、静電容量が時系列的に最も先に(早く)第2閾値(2)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する。
【0076】
また、すべてのタッチスイッチの静電容量が第2閾値(2)未満であり、第1閾値(1)を超える静電容量のタッチスイッチが複数ある場合には、静電容量が時系列的に最も先に(早く)第1閾値(1)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する。
【0077】
なお、判定部123は、第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが複数ある場合には、静電容量が時系列的に最も先に(早く)第3閾値(3)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する。第3閾値(3)は、指先FTが複数のタッチスイッチに触れている状態では、複数のタッチスイッチの静電容量が超えない値に設定される。しかしながら、例えば複数の指や手のひら等が複数のタッチスイッチに触れることによって、第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが複数あることが有り得る。このため、第3閾値(3)を超える静電容量のタッチスイッチが複数ある場合には、静電容量が時系列的に最も先に(早く)第3閾値(3)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定部123が判定するようにしておけばよい。
【0078】
また、判定部123は、静電容量が第1閾値(1)を超えたタッチスイッチが無い場合には、いずれのタッチスイッチにもタッチ操作が行われていないと判定する。また、ここでは、静電容量が時系列的に最も先に(早く)いずれかの閾値を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定する形態について説明するが、最も後に(遅く)いずれかの閾値を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定してもよい。
【0079】
図9は、判定部123が実行する判定処理を表すフローチャートを示す図である。
図9に示すフローチャートは、実施形態の静電容量式入力方法による処理を表す。判定部123は、静電容量式入力装置100の電源がオンになっている間は、
図9に示すフローのスタートからエンドまでの一連の処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。静電容量式入力装置100の電源がオンにされるのは、一例として静電容量式入力装置100が搭載される車両のイグニッションスイッチがアクセサリーモード又はオンになっているときである。
【0080】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119の静電容量を取得し、静電容量が第1閾値(1)を超えているタッチスイッチがあるかどうかを判定する(ステップS1)。判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119の静電容量と第1閾値(1)とを比較することによってステップS1の処理を行う。ステップS1の処理は、第1の比較の一例であり、ステップS1の処理の結果は、第1の比較における比較結果の一例である。
【0081】
ステップS1において、判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119の静電容量を静電容量検出部122から取得する。静電容量検出部122は、タッチスイッチ111~119を時系列的に1つずつ選択することによって、タッチスイッチ111~119の静電容量を検出する。
【0082】
判定部123は、静電容量が第1閾値(1)を超えているタッチスイッチがある(S1:YES)と判定すると、すべてのタッチスイッチ111~119についての判定部123の判定処理(
図9のフローチャート)における前回の最終判定結果としてのタッチ情報をメモリ124の所定の領域に格納する(ステップS2)。タッチ情報は、
図9のフローチャートにおけるエンド時に、どのタッチスイッチについて、タッチ操作が行われたと判定したかを示す情報である。初回のフローにおいては、前回のフローでの最終判定結果は無いため、タッチ情報は存在しない。すべてのタッチスイッチ111~119についてタッチ操作が行われていないと判定された場合には、タッチ情報は、すべてのタッチスイッチ111~119についてタッチ操作が行われていないことを表す。
【0083】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119の静電容量をメモリ124に格納する(ステップS3)。
【0084】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119について、第1閾値(1)を超えている(オン1)、第2閾値(2)を超えている(オン2)、第3閾値(3)を超えている(オン3)、又は、第1閾値(1)以下のタッチスイッチ(オフ)のいずれであるかを判定する(ステップS4)。第2閾値(2)を超えている(オン2)かどうかを判定する処理と、第3閾値(3)を超えている(オン3)かどうかを判定する処理とは、第2の比較の一例であり、これらの処理の結果は、第2の比較における比較結果の一例である。判定部123は、静電容量が第1閾値(1)を超えているとともに第2閾値(2)を超えているタッチスイッチの状態は、オン2であると判定する。判定部123は、静電容量が第2閾値(2)を超えているとともに第3閾値(3)を超えているタッチスイッチの状態は、オン3であると判定する。これにより、静電容量が第1閾値(1)を超えているタッチスイッチについては、オン1、オン2、又はオン3のいずれか1つであると判定される。
【0085】
判定部123は、ステップS4においてオン1、オン2、又はオン3と判定されたスイッチについて、隣接するタッチスイッチとオン1、オン2、オン3の情報とを比較し、タッチ操作が行われたと判定可能なタッチスイッチをすべて特定する(ステップS5)。
【0086】
判定部123は、ステップS5においてタッチ操作が行われたと判定可能であると特定されたタッチスイッチの中に、ステップS2で格納した前回の最終判定結果としてタッチ情報でタッチ操作が行われたと判定されていたタッチスイッチがあるかどうかを判定する(ステップS6)。
【0087】
判定部123は、タッチ操作が行われたと判定されていたタッチスイッチがある(S6:YES)と判定すると、ステップS2で格納した前回の最終判定結果としてのタッチ情報をそのまま出力する(ステップS7)。判定部123は、ステップS7の処理を終えると一連の処理を終了する(エンド)。
【0088】
また、判定部123は、ステップS6において、ステップS2でタッチ操作が行われたと判定されていたタッチスイッチがない(S6:NO)と判定すると、ステップS5で特定されたタッチスイッチのうち、領域(1)~(9)の番号が最も小さいタッチスイッチにタッチ操作が行われたことを表すタッチ情報を出力する(ステップS8)。一例として、
図1に示すように、ステアリングホイール10のスポークを握っている右の手Hの親指でタッチスイッチ111~119を操作する場合に、親指から最も遠いのはタッチスイッチ111であり、最も近いのはタッチスイッチ119であり、タッチスイッチ111~119の順に近くなる。このため、同時に操作があった場合は遠いタッチスイッチに対してタッチ操作が行われたと優先的に判定することとしている。なお、このような判定の順番は一例であり、例えば
図8で説明したように、静電容量が時系列的に最も先に(早く)第1閾値(1)、第2閾値(2)、又は第3閾値(3)を超えたタッチスイッチにタッチ操作が行われたと判定してもよい。
【0089】
なお、判定部123は、ステップS1で静電容量が第1閾値(1)を超えているタッチスイッチがない(S1:NO)と判定した場合は、タッチ操作が行われたタッチスイッチがないことを表すタッチ情報を出力する(ステップS9)。
【0090】
図10は、ステップS4の詳細な処理を示すフローチャートである。
図10に示す処理は、ステップS400~S409を含む。
【0091】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119の判定結果をオフに設定する(ステップS400)。
【0092】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119の中から特定のタッチスイッチを1つ選択する(ステップS401)。ここでは、タッチスイッチ111~119のうちのいずれか1つを特定のタッチスイッチとして選択すればよく、ステップS401~S409の処理を9回繰り返して、タッチスイッチ111~119のすべてを1回ずつ特定のタッチスイッチとして選択するため、一例としてタッチスイッチ111からタッチスイッチ119を順番に選択すればよい。特定のタッチスイッチの出力は、特定出力の一例である。特定のタッチスイッチ以外のタッチスイッチの出力は、特定出力以外の非特定出力の一例である。
【0093】
判定部123は、特定のタッチスイッチの静電容量が第1閾値(1)を超えているかどうかを判定する(ステップS402)。
【0094】
判定部123は、特定のタッチスイッチの静電容量が第1閾値(1)を超えている(S402:YES)と判定した場合は、特定のタッチスイッチの静電容量が第2閾値(2)を超えているかどうかを判定する(ステップS403)。
【0095】
判定部123は、特定のタッチスイッチの静電容量が第2閾値(2)を超えている(S403:YES)と判定した場合は、特定のタッチスイッチの静電容量が第3閾値(3)を超えているかどうかを判定する(ステップS404)。判定部123は、ステップS402~S404の処理を行うことにより、特定のタッチスイッチの静電容量がいずれかの比較閾値を超えているかどうかを判定する。
【0096】
判定部123は、特定のタッチスイッチの静電容量が第3閾値(3)を超えている(S404:YES)と判定した場合は、特定のタッチスイッチの判定結果をオン3に設定する(ステップS405)。
【0097】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119を特定のタッチスイッチとして選択したかどうかを判定する(ステップS406)。
【0098】
判定部123は、すべてのタッチスイッチ111~119を特定のタッチスイッチとして選択していない(S406:NO)と判定すると、フローをステップS401にリターンさせる。新たな特定のタッチスイッチを選択してステップS401からステップS409の処理を繰り返し実行するためである。
【0099】
また、判定部123は、ステップS402において、特定のタッチスイッチの静電容量が第1閾値(1)を超えていない(S402:NO)と判定すると、特定のタッチスイッチの判定結果をオフに設定する(ステップS407)。
【0100】
また、判定部123は、特定のタッチスイッチの静電容量が第2閾値(2)を超えていない(S403:NO)と判定すると、特定のタッチスイッチの判定結果をオン1に設定する(ステップS408)。
【0101】
また、判定部123は、特定のタッチスイッチの静電容量が第3閾値(3)を超えていない(S404:NO)と判定すると、特定のタッチスイッチの判定結果をオン2に設定する(ステップS409)。
【0102】
図11は、ステップS5の詳細な処理を示すフローチャートである。
図11に示す処理は、ステップS500~S509を含む。
【0103】
判定部123は、ステップS4においてオン1、オン2、オン3と判定されたスイッチについて、出力用配列をオフに初期化する(ステップS500)。出力用配列は、メモリ124の領域のうち、ステップS4におけるオン1、オン2、オン3、オフの判定結果を格納する領域とは別に、ステップS5における判定結果を保持する所定の領域に格納されている。
【0104】
判定部123は、ステップS4においてオフと判定されていないタッチスイッチのうちの1つのスイッチを特定のタッチスイッチとして選択する(ステップS501)。
【0105】
判定部123は、特定のタッチスイッチがオン1に設定されているかどうかを判定する(ステップS502)。
【0106】
判定部123は、特定のタッチスイッチがオン1に設定されている(S502:YES)と判定すると、特定のタッチスイッチの隣接するタッチスイッチがオン2又はオン3に設定されているかどうかを判定する(ステップS503)。
【0107】
判定部123は、特定のタッチスイッチに隣接するタッチスイッチがオン2又はオン3に設定されている(S503:YES)と判定すると、特定のタッチスイッチの状態をオフとして出力用配列に追加する(ステップS504)。
【0108】
判定部123は、ステップS4においてオフに設定されていないタッチスイッチをすべて選択したかどうかを判定する(ステップS505)。判定部123は、すべて選択した(S505:YES)と判定すると、フローをステップS6に進行させる。
【0109】
また、判定部123は、ステップS502において、特定のタッチスイッチがオン1に設定されていない(S502:NO)と判定すると、特定のタッチスイッチがオン2に設定されているかどうかを判定する(ステップS506)。
【0110】
判定部123は、特定のタッチスイッチがオン2に設定されている(S506:YES)と判定すると、特定のタッチスイッチに隣接するタッチスイッチがオン3に設定されているかどうかを判定する(ステップS507)。
【0111】
判定部123は、特定のタッチスイッチに隣接するタッチスイッチがオン3に設定されている(S507:YES)と判定すると、特定のタッチスイッチの状態をオフとして出力用配列に追加する(ステップS508)。
【0112】
また、判定部123は、ステップS506において、特定のタッチスイッチがオン2に設定されていない(S506:NO)と判定した場合、又は、ステップS507において、特定のタッチスイッチに隣接するタッチスイッチがオン3に設定されていない(S507:NO)と判定した場合には、特定のタッチスイッチの状態をオンとして出力用配列に追加する(ステップS509)。
【0113】
以上により、タッチスイッチ111~119のうちでタッチ操作が行われているタッチスイッチが確定する。
【0114】
図12は、静電容量の分布と第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)との関係を示す図である。
図12には、
図3(A)に示すタッチスイッチ114にタッチ操作を行った場合の静電容量を示す白い棒グラフと、
図3(B)に示すタッチスイッチ115にタッチ操作を行った場合の静電容量を示す黒い棒グラフと、第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)とを示す。
図12に示す白い棒グラフ及び黒い棒グラフは、
図4(B)に示す白い棒グラフ及び黒い棒グラフと同一である。
【0115】
図12に示すように、タッチスイッチ114の横方向における中心部分に相当する5列目から9列目で第3閾値(3)を超える静電容量が得られるとともに、タッチスイッチ115の横方向における中心部分に相当する12列目から15列目で第3閾値(3)を超える静電容量が得られている。また、タッチスイッチ114とタッチスイッチ115の境界に相当する10行目及び11行目については、10行目ではタッチスイッチ114の静電容量は第2閾値(2)を超えているがタッチスイッチ115の静電容量は第2閾値(2)以下であり、11行目ではタッチスイッチ114の静電容量は第2閾値(2)以下であるがタッチスイッチ115の静電容量は第2閾値(2)を超えている。
【0116】
したがって、複数のタッチスイッチのいずれにタッチ操作が行われたかを判定可能な静電容量式入力装置100を提供することができる。静電容量式入力装置100は、閾値を多段階にすることで細かいエリアで検出感度(静電感度)の優劣を比較できるようにしており、この結果、指のスライド動作が行われた場合に円滑に判定することができる。
【0117】
なお、以上では、複数の比較閾値の一例が第2閾値(2)及び第3閾値(3)であり、判定部123が第1閾値(1)、第2閾値(2)、及び第3閾値(3)の3段階の閾値を用いてタッチ操作が行われたタッチスイッチがタッチスイッチ111~119のうちのいずれであるかを判定する形態について説明した。しかしながら、複数の比較閾値の数は3つ以上であってもよい。すなわち、判定部123が4つ以上の閾値を用いてタッチ操作が行われたタッチスイッチがタッチスイッチ111~119のうちのいずれであるかを判定してもよい。
【0118】
また、以上では、操作部110が9つのタッチスイッチ111~119を有する形態について説明したが、操作部110は複数のタッチスイッチを有していればよく、タッチスイッチの数は2つ以上であれば幾つであってもよい。
【0119】
また、以上では、第1閾値(1)が、手Hにグローブを嵌めた状態でもタッチ操作の有無を判定可能な低い値である形態について説明したが、第1閾値(1)は、素手で行われるタッチ操作よりもタッチスイッチの静電容量が小さい場合においてもタッチ操作の有無を検出できる値であればよく、手Hにグローブを嵌めている場合でもタッチ操作の有無を判定可能な低い値に限られるものではない。
【0120】
以上、本発明の例示的な実施形態の静電容量式入力装置、及び、静電容量式入力方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 ステアリングホイール
100 静電容量式入力装置
110 操作部
111~119 タッチスイッチ
120 制御装置
121 主制御部
122 静電容量検出部
123 判定部
124 メモリ