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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177051
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】小型電動車両の運用システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20231206BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231206BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 D
G08G1/123 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089743
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健吾
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB02
2F129BB21
2F129CC07
2F129CC33
2F129DD24
2F129DD38
2F129DD49
2F129DD57
2F129DD70
2F129EE02
2F129EE53
2F129EE62
2F129EE84
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF41
2F129FF68
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH35
5H181AA05
5H181BB04
5H181BB08
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF15
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181MB02
5H181MB03
(57)【要約】
【課題】 無人自動運転による配車、有人自動運転と手動運転を併用して複数の観点から最適経路を提示でき、ユーザーの意向に沿ったナビゲーションおよび自動送迎サービスを提供するうえで有利な小型電動車両の運用システムを提供する。
【解決手段】 通信システムを介して接続中のユーザー通信端末の配車要請に応じて、車両の現在位置からユーザー通信端末と関連したユーザーの乗車位置までの無人走行による第1の移動経路と、前記ユーザーの乗車位置から目的位置までの有人走行による第2の移動経路と、を生成する経路生成部を備え、前記第2の移動経路は、その全区間を自動運転モードで走行する第1の走行パターンと、自動運転モードで走行する区間と手動運転モードで走行する区間を含む少なくとも1つの第2の走行パターンとを含み、ユーザー通信端末に、前記第2の移動経路と、第1の走行パターンおよび第2の走行パターンのそれぞれの走行に要する推定時間を提示する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型電動車両の運用システムであって、
通信システムに接続され、地図データベースを備えた運用サーバーと、
歩道通行可能な小型電動車両からなり、前記運用サーバーに前記通信システムを介して接続可能であり、事前設定された経路に従って走行する自動運転モードと、ユーザーの操作により走行する手動運転モードとを有する車両と、を含み、
前記運用サーバーは、前記通信システムを介して接続中のユーザー通信端末の配車要請に応じて、前記車両の現在位置から前記ユーザー通信端末と関連したユーザーの乗車位置までの無人走行による第1の移動経路と、前記ユーザーの乗車位置から目的位置までの有人走行による第2の移動経路と、を生成する経路生成部を備え、
前記第2の移動経路は、その全区間を自動運転モードで走行する第1の走行パターンと、自動運転モードで走行する区間と手動運転モードで走行する区間を含む少なくとも1つの第2の走行パターンと、を含み、
前記ユーザー通信端末に、前記第2の移動経路と、前記第1の走行パターンおよび前記第2の走行パターンのそれぞれの走行に要する推定時間を提示するように構成されている、小型電動車両の運用システム。
【請求項2】
前記経路生成部による前記第1の移動経路および前記第2の移動経路の生成は、自動運転での走行は歩道の逆行を含まず、手動運転での走行は歩道の逆行を含めて生成され、
前記第2の走行パターンは、前記第1の走行パターンに対して、逆行を含むことで経路長および所要時間が短縮される区間が手動運転区間として含まれる、
請求項1記載の小型電動車両の運用システム。
【請求項3】
前記第1の移動経路の走行に要する推定時間と、前記第2の移動経路における前記第1の走行パターンおよび前記第2の走行パターンのそれぞれの走行に要する推定時間は、無人走行時に対する有人走行時の車両総重量変化を考慮して算出される、
請求項1記載の小型電動車両の運用システム。
【請求項4】
前記経路生成部による前記第1の移動経路および前記第2の移動経路の生成は、自動運転での走行は歩道の逆行を含まず、手動運転での走行は歩道の逆行を含めて生成され、
前記経路生成部は、前記ユーザーが指定した乗車位置または目的位置の変更により、経路長および所要時間が短縮される場合には、前記乗車位置または目的位置の変更を含めた移動経路候補を生成し、前記ユーザー通信端末に、前記移動経路候補とその場合の推定所要時間を含めて提示するように構成されている、
請求項1記載の小型電動車両の運用システム。
【請求項5】
前記運用サーバーは、前記各移動経路に関連した交通情報または気象情報を含む外部情報を取得するインフラ連携部を備え、前記インフラ連携部を介して取得される外部情報に基づく経路変更により所要時間が短縮される場合には、その変更経路を含めた移動経路候補を生成し、前記ユーザー通信端末に、前記移動経路候補とその場合の推定所要時間を含めて提示するように構成されている、請求項1記載の小型電動車両の運用システム。
【請求項6】
前記ユーザー通信端末に提示された走行プランの中から、前記第2の移動経路において前記第2の走行パターンで走行するプランが選択された場合に、手動運転モードで走行する区間で、オペレータの遠隔操作による代理運転または運転支援の利用を提案する機能を有する、請求項1記載の小型電動車両の運用システム。
【請求項7】
前記ユーザー通信端末に提示された走行プランの中から、前記第2の移動経路において前記第2の走行パターンで走行するプランが選択された場合に、前記第2の移動経路の走行時に自動運転モード/手動運転モードの切替をユーザーに案内する機能を有する、
請求項1記載の小型電動車両の運用システム。
【請求項8】
前記地図データベースは、交差点、屈曲部、踏切、出入口を含む交通転換点にそれぞれ設定されたノードと、隣接する交通転換点を結び、歩道、横断歩道、路側帯、路肩を含む通行区分にそれぞれ設定されたリンクと、を含み、前記歩道には、順行リンクと逆行リンクの両方が設定され、路側帯および路肩には順行リンクのみが設定され、前記各リンクには、経路長に応じた移動コストと、勾配、幅員、および、路面状態に応じた副次的な移動コストが設定され、前記各ノードには、リンク接続角度と幅員に応じた副次的な移動コストが設定されており、
前記経路生成部は、前記地図データベースにおいて、前記配車要請に応じて動的に設定される2地点を結ぶ移動経路の中から、走行パターンに従って移動コストの総和が最小となる移動経路を探索する、探索アルゴリズムを備えている、
請求項1~7の何れか一項記載の小型電動車両の運用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道通行可能な小型電動車両であって、自動運転モードと手動運転モードとを有する小型電動車両の運用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シニアカーや電動車椅子などの小型電動車両(パーソナルモビリティ)は、速度や車体サイズなどの規定を満たす場合には法令上歩行者扱いとなり、車道ではなく歩道や路側帯など歩行者の通行区分を走行する。このような小型電動車両において、搭乗者の操作による手動運転に加えて、センサ情報と地図情報および測位手段に取得される位置情報を利用して予め設定された経路に従って走行する自動運転を行えるようにすることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-215699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歩道通行可能な小型電動車両に自動運転機能を有することにより、有人自動運転による自律走行はもちろん、無人自動運転による配車および帰還(回収)が可能になり、自動送迎サービスなどへの利用が見込まれている。しかし、道路構造が標準化された車道を走行する一般車両の場合と異なり、歩道を通行する小型電動車両の場合、自動運転化するうえで様々な課題が存在する。
【0005】
例えば、一般車両の場合は、自動運転・手動運転に関わらず道路の走行車線が確定しているので、自動送迎サービスを提供する場合、乗員の乗車・降車位置が走行車線(左車線)側の道路端に位置するよう経路をプランニングすればよい。しかし、電動車椅子のような歩道通行車両の場合、手動運転であれば搭乗者が道路の左側・右側に隣接する歩道を選択して走行できる。また、歩道のない道路では、道路の右側を走行することが推奨されるものの、これを禁止する法規は存在しない。
【0006】
但し、電動車椅子による自動送迎サービスを提供する場合、走行に関する責任義務はサービス事業者にあり、以下(1)~(4)の移動規制への準拠が求められる。
(1)歩道のある道路は、歩道を通行する(逆走は非推奨)
(2)歩道がなく路側帯がある道路は、右側路側帯を通行する(逆走不可)
(3)歩道も路側帯もない道路は、道路の右端を通行する(逆走不可・左端側へのUターン非推奨)
(4)幅の狭い経路と接続する交差点を右左折する際、切り返し用のスペース・切り返し時間を要する(他者の交通流を阻害する程の時間が必要な狭路での切り返しは非推奨)。
【0007】
また、無人自動運転の場合、物品の配送や集配を行う自動配送ロボットと同様の取り扱いになり、遠隔監視下という条件では電動車椅子ロボットと同様に歩道通行車となる。しかし、周囲の歩行者等の移動への影響を考慮すると、有人走行で非推奨とされている歩道の逆走等については、自動送迎サービスを提供する立場からは採用し難い。
【0008】
したがって、自動運転車椅子のナビゲーションを扱う場合、以下のような課題への対応が求められ、従来の一般車両あるいは手動運転の電動車椅子を前提とした経路プランニング・ナビゲーション手法では最適な移動サービスを提案することが難しい。
(a)他の歩行者等との擦れ違いスペースを考慮する必要がある。
(b)自転車等との擦れ違いスペースを考慮する必要がある。
(c)道路の左側で迎えを待つ利用者を乗せるために、道路左右端に隣接する歩道の両側を経由した経路の回り込み・回り道が必要になる。
(d)バス・車両への乗り換え(バス停・タクシー待機所等)を含み目標地点が道路左端にある場合に、歩道の両側を経由した経路の回り込み・回り道が必要になる。
【0009】
特に、上記(c)(d)にそのまま対応して経路生成した場合、移動区間の回り込み・回り道を行う自動運転車椅子に対して目標地点を目前に素通りするものと誤解した利用者が違和感を覚えたり、利用者(搭乗者)が予定外に自動運転を解除したり、予定外に降車して電動車椅子を乗り捨てしまうことが懸念される。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、無人自動運転による配車、有人自動運転と手動運転を併用して複数の観点から最適経路を提示でき、ユーザーの意向に沿ったナビゲーションおよび自動送迎サービスを提供するうえで有利な小型電動車両の運用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
小型電動車両の運用システムであって、
通信システムに接続され、地図データベースを備えた運用サーバーと、
歩道通行可能な小型電動車両からなり、前記運用サーバーに前記通信システムを介して接続可能であり、事前設定された経路に従って走行する自動運転モードと、ユーザーの操作により走行する手動運転モードとを有する車両と、を含み、
前記運用サーバーは、前記通信システムを介して接続中のユーザー通信端末の配車要請に応じて、前記車両の現在位置から前記ユーザー通信端末と関連したユーザーの乗車位置までの無人走行による第1の移動経路と、前記ユーザーの乗車位置から目的位置までの有人走行による第2の移動経路と、を生成する経路生成部を備え、
前記第2の移動経路は、その全区間を自動運転モードで走行する第1の走行パターンと、自動運転モードで走行する区間と手動運転モードで走行する区間を含む少なくとも1つの第2の走行パターンと、を含み、
前記ユーザー通信端末に、前記第2の移動経路と、前記第1の走行パターンおよび前記第2の走行パターンのそれぞれの走行に要する推定時間を提示するように構成されている、小型電動車両の運用システムにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る小型電動車両の運用システムは、上記のように、無人自動運転、有人自動運転、手動運転のそれぞれに許容される走行形態および通行区分を考慮して、第1の走行パターン(自動運転のみ)、第2の走行パターン(自動運転と手動運転)のそれぞれに最適な移動経路を生成し、自動運転優先、手動運転を含んでも時間短縮優先、省電力優先など、多様な観点から最適経路と所要時間を提示でき、ユーザーの意向に沿ったナビゲーションおよび自動送迎サービスを提供するうえで有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】小型電動車両の運用システムを示すブロック図である。
図2】小型電動車両の制御系統を示すブロック図である。
図3】経路探索の基本概念を説明するための模式図である。
図4】本発明実施形態に係る小型電動車両の運用システムにおける経路生成および移動プラン提示の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明実施形態に係る小型電動車両の運用システムにおける配車および経路走行の流れを示すフローチャートである。
図6】小型電動車両の通行区分にノードとリンクを設定した地図である。
図7】発車地点、乗車地点、降車地点のノードが追加された地図である。
図8】自動運転のみを前提に生成したベース経路を表示した地図である。
図9】手動運転切替を含む代替経路を表示した地図である。
図10】手動運転切替と乗車地点変更を含む代替経路を表示した地図である。
図11】インフラ情報を考慮した変更を含む代替経路を表示した地図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
1.システムの基本構成
図1において、本発明実施形態に係る小型電動車両の運用システムは、少なくとも1つの小型電動車両20(以下、単に車両20という場合もある)と、前記車両20を管理運用するための運用サーバー10と、オペレータ30(オペレーターインターフェース)、および、少なくとも1つのユーザー40(ユーザー通信端末41;クライアント)を含む。以下の説明では、便宜的に各1つの場合のように述べるが、実際の運用では、運用サーバー10には、多数の小型電動車両20(20′)が登録され、その数よりは少ないが複数のオペレータ30が同時接続し、かつ、複数のユーザー端末40が同時接続することが想定されている。
【0016】
運用サーバー10は、通信システム11、車両管理部12、ユーザー管理部14、プランニング部13、地図データベース15、および、インフラ連携部16を備え、少なくとも1つのコンピュータを含むハードウエアとそのコンピュータ上で動作するソフトウェアで構成される。
【0017】
通信システム11は、通信事業者が提供する通信ネットワークに常時接続する固定通信端末として実装され、クライアント(ユーザー端末41)がインターネットや移動体通信網を介して運用サーバー10に接続してデータ通信によりサービスの利用を可能にするとともに、運用サーバー10がインターネットおよび移動体通信網を介して車両20の通信端末21に接続し、車両20のシステムを遠隔的に管理し操作可能にする。
【0018】
車両管理部12は、運用サーバー10が、登録された小型電動車両20(20′)を管理するためのデータベースであり、車両のID、型式情報、所属ステーション、ステータス(満充電待機中、配車準備中、配車中、自動運転中、手動運転中、帰還中、回収待ち、回収中、充電中など)、バッテリー残量(SOC)、バッテリー健全度(SOH)、利用ユーザーID、提示プラン(移動経路)情報、運用履歴などの情報群を個別に格納し、運用サーバー10によって各車両20(20′)を効率的に管理運用できるようにするために設けられている。
【0019】
ユーザー管理部14は、運用サーバー10に接続して登録したユーザー(登録ユーザー;以下、特に記載が無い限り、ユーザーとはこのような登録ユーザーを示す)を管理するためのデータベースであり、ユーザーID、認証情報、登録端末情報、予約情報、利用情報、利用履歴などの情報群を個別に格納し、運用サーバー10によって効率的に管理運用できるようにするために設けられている。
【0020】
地図データベース15(地図システム)は、一般的な道路地図に、歩道、路側帯、横断歩道、公園や施設への出入口など、歩行者の通行区分に関するデータを拡充した表示用道路地図データ、地図上の名称などに対応する文字データ、および、幾何学的な経路構造に対応する経路探索用地図データからなるレイヤー構造を有しており、各層のデータは、位置情報(経度緯度座標)によって特定され、関連付けられている。表示用道路地図データは、運用サーバー10の表示画面に地図表示を提供し、地図表示に表示倍率に応じて文字データが重ねて表示される。文字データはテキスト検索にも利用される。
【0021】
経路探索用地図データとしては、例えば、図6に示すように、歩行者の通行区分として指定されている歩道および路側帯が接続する交差点(横断歩道への分岐点)、屈曲点、踏切、施設所在地(出入口)などの交通転換点に設定されたノード(例えば60a,61a,60b,61bなど)と、隣接するノードを結ぶ通行区分に許容される走行形態ごとに設定されたリンク(例えばLa,Lbなど)とを含み、各リンクは始点ノードと終点ノードで一意に方向性が決定されるベクトルデータとして設定される。したがって、手動運転時などに順逆双方向移動が可能となる歩道(例えば50a)については、順方向と逆方向の2本のリンク(La,Lb)が設定される。一方、路側帯(例えば50b)には基本的に順方向のリンク(La)のみが設定される。
【0022】
例えば、図6における交差点63の角付近の拡大図に示されるように、交差点63の角のノード63aには、道路51,52のそれぞれに付設された歩道51a,52aの順逆双方向のリンクと、道路51,52のそれぞれを横断する横断歩道51c,52cのリンクが接続している。なお、図6および後述する図7図11において、各道路は符号50~56で示され、各交差点は符号60~67で示されている。
【0023】
さらに、各リンクには、経路長に応じた移動コストと、路面勾配、幅員、および、路面状態などに応じた副次的な移動コストが設定され、各ノードには、リンク接続角度や幅員(スペース)に応じた副次的な移動コスト(ペナルティスコア)が設定され、それらに基づいて経路検索が実行される。
【0024】
プランニング部13(経路生成部)は、運用サーバー10の表示画面などに入力された出発地点(乗車地点)、目的地(降車地点)など、動的に設定されるノードに基づいて、それらのノードを結ぶ多数の移動経路の中から、最適経路を探索する探索アルゴリズムを備えており、探索された最適経路(および代替経路)に対応する経路表示を行い、ユーザー40によって選択された確定経路(移動プラン)のユーザー管理部14への登録や、配車対象車両20への確定経路の登録を行う機能も有している。
【0025】
インフラ連携部16は、通信システム11を介して、道路管制情報(渋滞・事故・通行止など)、気象情報(降雨、降雪、風速など)、環境情報(スモッグ・公害他)など、外部機関から配信される外部情報を取得し、その有効期間に亘って外部情報を保持/更新し、プランニング部13が経路探索に参照できるようにする。
【0026】
運用サーバー10は、それ自体の設定および運用管理のための入出力装置とは別に、小型電動車両20の遠隔監視と遠隔操作を行うオペレータ30のためのモニター32と遠隔操作部33を備えている。これらは、例えばオペレータ30の管制席にオペレーターインターフェースとして設置され、このような管制席には、オペレータ30が通信システム11を介して対象車両20の通信端末21やユーザー40の通信端末41と交信するための通信端末31も設置されている。
【0027】
モニター32には、オペレータ30の操作に応じて、運用サーバー10の各種設定情報、車両管理部12やユーザー管理部14の登録情報、インフラ連携部16に取得される外部情報などを表示可能である。さらに、モニター32には、地図データベース15により提供される地図、プランニング部13で生成された経路、特に、ユーザー管理部14および配車対象車両20に登録された確定経路(後述する配車経路および帰還経路を含む)とナビゲーションを表示可能であるとともに、対象車両20のカメラ(外界センサ26)の画像(映像)を表示可能である。これにより、オペレータ30は、対象車両20の走行時の前方映像(および周辺映像)をモニター32で確認しながら遠隔操作部33により対象車両20を遠隔操作することができる。
【0028】
ユーザー40の通信端末41は、小型電動車両20のレンタル・オーダー時には固定端末でも構わないが、対象車両20の配車案内や認証のためには、対象車両20の利用時に携行できるモバイル端末が好ましい。なお、小型電動車両20にも、手動運転時などにオペレータ30と音声通話できるように、通信端末21に接続された車載スピーカー/収音マイクを備えており、パスコードの入力装置(テンキーなど)を備えることで、対象車両20の認証は可能であるが、配車前の案内にはモバイル端末が必要となる。
【0029】
2.小型電動車両の基本構成
小型電動車両20は、シニアカーまたは電動車椅子などのパーソナルモビリティ(歩道通行車両)として構成されており、車体には、1つのシートと駆動輪を含む複数の車輪を備え、ユーザー40(搭乗者)が着座した状態で手動運転できるように手動操作部24と駆動輪を駆動するための駆動ユニット27を備えている。
【0030】
手動操作部24は、自動運転中に容易に無効化できるジョイスティックタイプが好適であるが、ハンドルタイプとすることもできる。ハンドルタイプの操舵操作部を備える場合には、ステアバイワイヤの操舵システムとする必要があることに加えて、ハンドル自体が格納または折畳まれるかカウリングで覆われるなど、他の歩行者などによって把持され難いようにすることが好ましい。
【0031】
駆動ユニット27は、従動輪を自在輪(全方位輪)とし左右の駆動輪を左右のモータで個別に駆動する方式として、左右モータの制御により前進後退および左右旋回が行えるようにする電動車椅子タイプとして構成するか、または、左右の駆動輪を1つのモータで駆動して電動パワーステアリング装置により従動輪の操舵を行うシニアカータイプとして構成することもできる。特に限定されないが、前者の場合はジョイスティックタイプの手動操作部との整合性が良く、後者の場合はハンドルタイプの手動操作部との整合性が良い。
【0032】
小型電動車両20は、ユーザーの操作により走行する手動運転モードに加えて、遠隔監視下で事前設定された経路に従って自律走行する自動運転モードでの運用を可能にするために、図2に示すように、運用サーバー10と通信システム11を介してモバイルデータ通信接続するための通信端末21、経路誘導を行うためのナビゲーション装置22、経路誘導に従って駆動ユニット27を制御する走行制御部23、測位システム25、外界センサ26を備えている。
【0033】
測位システム25としては、GNSS(全地球航法衛星システム)の信号を受信し測位計算により車両の絶対位置を取得するためのGNSS受信機、地磁気を計測して車両の方位を取得するための磁気センサ、車両の姿勢すなわち三次元的傾斜を検知するための慣性センサを備えることが好適であり、これらにより車両の自己位置推定28およびナビゲーション装置22の経路誘導を可能にする。
【0034】
外界センサ26としては、車両の前方および周囲(後方および側方)を撮像するカメラ、および、車両前方の走路構造や障害物を認識するためのLiDAR(レーザースキャナ)を備えることが好適であり、それらの検知情報を組み合わせて自律走行のための走路環境認識および障害認識を可能にする。
【0035】
例えば、カメラの画像から道路上の白線(区分線)や横断歩道などの路面標示が認識され、LiDARの3D点群データから歩道や路側帯の走路構造が認識され、それらの認識情報を総合することで、小型電動車両20の走路および走路上の横方向位置が特定される。また、カメラ画像から信号機や道路交通標識が認識され、走行制御に利用される。なお、既に述べたように、カメラの画像(映像)は、通信端末21を介して運用サーバー10に伝送され、オペレータ30による遠隔監視および遠隔操作に利用される。
【0036】
走行制御部23は、上述した測位システム25による自己位置推定28と、ナビゲーション装置22により与えられる経路と、外界センサ26の検知情報による障害/走路環境認識29に基づいて、自車両20の走路環境および走行状態を認識すると同時に周囲の移動体の動向を予測して干渉の可能性がある場合は減速または一時停止して干渉を回避しながら自律走行すべく駆動ユニット27を制御する。また、走路上に非移動体からなる障害物が検出された場合は、障害物を回避するためのローカル経路を生成し、操舵回避を実行する。
【0037】
3.経路探索
プランニング部13では、経路探索に際して、運用サーバー10に接続したユーザー40の入力情報に基づいて、以下の4か所の基準点が動的なノードとして設定される。
(1)ユーザーが指定した乗車地点
(2)ユーザーが指定した降車地点(目標地点)
(3)乗車地点に基づいて指定される車両ステーション(発車地点)
(4)降車地点に基づいて指定される車両ステーション(発車地点と異なる場合)
ここで、上記(1)(2)が道路地図データ上の既存ノードの中から選択されない場合、指定した地点を通るかまたは隣接するリンク上にノードが追加配置される。
【0038】
各リンクには、経路長に応じた移動コスト(L1)と、路面勾配、幅員、および、路面状態などに応じた副次的な移動コスト(L2)が設定され、各ノードには、幅員もしくはスペース(N1)とリンク接続角度(N2)に応じた副次的な移動コスト(ペナルティスコア)が設定されることは既に述べた。経路探索では、経路長(PL)に応じた移動コスト(L1)が経路探索の主たるコストとなり、他の移動コスト(ペナルティスコア)は、主たるコストを増加方向に調整する副次的なコスト補完指標となる。公知の経路探索手法(Aスター法、ダイクストラ法など)に「コスト補完指標(L2、N1、N2)による主コスト(L1)調整」を組み合わせ、コストの総和が最小となる最適経路を探索することで、より実用的な移動経路を導出できる。
【0039】
例えば、図3において、各リンクの経路長PL(移動距離)に応じた移動コスト(L1)により移動経路を探索すると、ノードN11、N21を通過する経路の経路長の総和が最小となり、ノードN11、N21を通過する経路が最適経路となる。
【0040】
しかし、移動そのものに伴うコスト(L1;経路長、移動時間)以外に、移動中に実際に及ぶ負荷を示す要素(L2)が存在する場合、それをコスト補完指標としてリンクに組み込み、移動コストを調整する。コスト補完指標(L2)には、上記以外にも渋滞情報や道路整備情報など、インフラ連携部16に取得される一時的なコスト(ペナルティスコア)も含み得る。
【0041】
例えば、図3において破線で示される2つのリンクに道路整備情報(Ld1)、渋滞情報(Ld2)が存在する場合、これらのリンクの移動コスト(PL=3、PL=2)が、それぞれ一時的な移動コスト(Ld1,Ld2)により調整される。例えば、Ld1がコスト1.5倍、Ld2が2倍に重み付けされると、ノードN12、N23、N31を通過する経路が最小コストとなる。
【0042】
なお、ノードには、幅員もしくはスペース(N1)やリンク接続角度(N2)などの移動コストの他に、交差点や横断歩道を通行する場合に、信号機を認識し、必要に応じて信号待ちを行い、適正なタイミングで通行する必要があり、これらに起因する移動コストも発生する。踏切の場合は警報機(警報音)や遮断機を認識するコストに加えて、線路の横断に伴うリンクのコストも発生する。
【0043】
また、インフラ連携部16に取得される時間限定的なコスト(ペナルティスコア)をノードに追加することもできる。例えば、図3において破線で示されるノードN21に、交差点渋滞情報(Nd3)がある場合、このノードN21に接続する各リンクの移動コスト(PL=2、PL=3)が、一時的な移動コスト(Nd3)により調整されるようにすることもできる。
【0044】
4.配車請求~プラン確定までの運用フロー
次に、本発明に係る運用システムにおけるユーザーの配車請求に応じた経路生成~移動プラン提示の流れについて、図4のフローチャートおよび図7図11の地図を参照しながら説明する
【0045】
先ず、小型電動車両20の利用(自動送迎サービス)を希望するユーザー40が、運用サーバー10に接続して、利用希望日、乗車希望時刻、乗車希望地点、目的地点(降車希望地点)などの予約情報の入力を行う(ステップ100)。
【0046】
ユーザー40の情報入力が完了すると、運用サーバー10は、車両管理部12にアクセスし、ユーザー40の乗車希望地点をサービス提供地域に含む車両ステーション70に登録されている車両20のステータスを照会し、ステータスおよび航続可能距離(充電量)などが適合する車両20を選定する(ステップ110)。
【0047】
それとともに、プランニング部13は、先ず、図7に示すように、経路探索用地図データに、選定された車両ステーション70、ユーザー40の乗車希望地点71、および、目的地点(降車希望地点)72を動的ノード70n,71n,72nとして追加する。これに伴い、これらのノード70n,71n,72nを始点または終点とする動的リンク(図7に太い矢印で示される)もデータに追加される。
【0048】
次いで、上記のように動的ノード(リンク)が追加された経路探索用地図データにおいて、車両ステーション70から乗車希望地点71(71n)まで無人自動運転で走行し、乗車希望地点71(71n)から目的地点72(72n)まで有人自動運転により走行し、さらに、目的地点(降車希望地点)72(72n)から車両ステーション70まで無人自動運転で帰還するものとして最適経路の探索を実行する(ステップ111)。
【0049】
図8には、上記のように自動運転を想定して生成されたベース経路(5,6)がブロック矢印で示されている。このベース経路(5,6)には、車両ステーション70から乗車希望地点71まで無人自動運転で走行する配車経路(5a~5c)、乗車希望地点71から目的地点(降車希望地点)72まで有人自動運転により走行するユーザー移動経路(5d~5m)とともに、目的地点(降車希望地点)72から車両ステーション70まで無人自動運転で走行する帰還経路(6;6a~6h)も含まれている。
【0050】
次に、プランニング部13は、ユーザー移動経路(5d~5m)に関して、ユーザー40が手動運転で走行する場合を考慮して最適経路の探索を実行する(ステップ112)。
【0051】
上述したように、ベース経路(5,6)は、自動運転のみを想定しているため、各歩道における逆方向のリンクは検索対象から除外されている。しかし、ユーザー移動経路(5d~5m)ではユーザー40による手動運転も可能であるため、各歩道における逆方向のリンクも含めて経路探索を行い、自動運転から手動運転に切り替えることで、移動経路が短縮されるなど、移動コストが低減される可能性がある。
【0052】
例えば、図8に示すベース経路5では、交差点66にて道路54を横断して道路55に沿って歩道(順方向リンク5k)を走行し、交差点67にて道路55を横断(リンク5l)し、道路55の反対側の歩道(順方向リンク5m)を走行して目的地72の入口(ノード72n)に到達している。
【0053】
しかし、手動運転で走行する場合を考慮すると、図8の要部拡大図である図9に示されるように、交差点66にて道路54を横断した地点66aで手動運転に切り替え、横断歩道(リンク5p)を横断し、道路55の反対側の歩道(逆方向リンク5q)を走行して目的地72の入口(ノード72n)に到達できる。
【0054】
ユーザー40が手動運転を受け入れ、このような代替経路5X(5p,5q)に変更することで経路短縮(所要時間短縮)が可能である。また、順方向優先でベース経路(5k~5m)を走行することで目的地72を目前に素通りするものと誤解する可能性があるので、ベース経路(5,6)を最適経路として案内する場合には、上記のような回り込みが発生することを事前にユーザーに告知することが好ましい。それにより、代替経路5Xを選択しなかったユーザーが、実際の走行中に違和感を覚えたり、予定外に自動運転を解除したり、降車してしまうような事態を回避できる。
【0055】
次に、ユーザー40の乗車希望地点71(71n)の最小限の変更、すなわち、ノード71nに隣接した無人運転区間(配車経路5a~5c)の1ないし2つのノード(代替ノード)に変更して最適経路の探索を実行する(ステップ113)。
【0056】
乗車希望地点71は、ユーザー40の希望により指定されるが、そうであるがゆえにサービス提供側の事情(車両ステーション70の位置や交通事情など)における最適地点でない可能性もあり、かつ、ユーザー40が明確な理由なく指定する場合もありうる。したがって、乗車地点の少しの変更により、ユーザー40がその分移動するコストを受け入れることで、そのコスト以上のコスト低減、経路短縮(所要時間短縮)が見込める場合もありうる。
【0057】
例えば、図10に示すように、ユーザー40の乗車希望地点71(71n)に隣接した交差点63の角に設定されたノードを代替ノード71n′(代替的乗車地点候補)として最適経路の探索を行うことにより、この地点から直接的に交差点63を横断(リンク5r)する代替経路5Y(5r)が生成される。
【0058】
この代替経路5Yは、ユーザー40にリンク5c1つ分の移動7cを要求するが、このコストをユーザー40が受け入れることにより、ベース経路5において、道路52に沿って歩道(順方向リンク5d)を目的地72から離れる方向に走行し、交差点64にて道路52を横断(リンク5e)し、道路55の反対側の歩道(順方向リンク5m)を走行して交差点63にて道路51を横断(リンク5g)し、再び道路52を横断(リンク5h)する経路における回り込みと、2回の道路横断のコストが削減されるメリットがある。
【0059】
なお、ユーザー40への追加負担は可及的に少ない方が良いことは言うまでもないが、乗車希望地点に隣接した配車経路の状況次第では、乗車地点のさらなる変更によって経路短縮(所要時間短縮)が見込める場合もありうる。
【0060】
そこで、上述した1番目の代替ノード71n′を1次代替ノードとしてその場合の移動コストを暫定値として記録し、1次代替ノード71n′に隣接した2次代替ノード(交差点62に隣接したノード)を代替的乗車地点候補として最適経路の探索を行い、その場合の移動コストと、1次代替ノードに係る移動コストの暫定値と比較して、さらなるコスト削減が見込めるか検証する。これらの暫定値には、乗車地点変更に係るユーザーの移動コストも含め、ユーザーに過負担とならないようにすることが好ましい。また、代替ノードの移動距離に閾値を設け、閾値を超過した時点で代替処理を打ち切るようにしても良い。
【0061】
例えば、図10に示す例において、1次代替ノード71n′から2次代替ノード(交差点62に隣接したノード)への変更に、ユーザーへの負担増に比べて、道路横断の削減のような大きなコスト削減は見込めない、または、移動距離が閾値の超過によって1次代替ノード71n′が確定することになる。
【0062】
以上述べたように、自動運転のみを想定したベース経路5,6の生成、手動運転を考慮して代替経路5Xの生成、乗車地点の変更を考慮した代替経路5Yの生成により、ユーザー40に提示すべき移動プラン(ベースプラン、代替プラン)が暫定的に確定した時点で、プランニング部13は、インフラ連携部16を介して取得される外部情報(インフラ情報)を参照し、暫定的に画定した各経路プランに、交通渋滞や気象条件などの障害がないか検証する(ステップ114)。
【0063】
考慮すべきインフラ情報がベース経路5に存在する場合は(ステップ115;NO)、当該インフラ情報を考慮してベース経路5、6を生成し直す。考慮すべきインフラ情報が代替経路5Xのみに存在する場合は、代替経路5Xのみを生成し直し、場合によっては代替経路の提示を含まずに移動プランの提示を行う。
【0064】
例えば、図11は、当日、乗車地点71の近くからユーザー40がユーザー端末41として携帯端末などを使用して配車要請し、移動プランの生成を実行したところ、道路53に交通事故などによる通行止め53Xが発生しているような場合に、ベース経路5、6に代えて、リンク5s、5tおよびリンク6p,6q,6rにより通行止め53Xを迂回する経路5′、6′が生成された場合を示している。
【0065】
考慮すべきインフラ情報がベース経路6(帰還経路)にのみ存在する場合は、再生成した帰還経路6′による車両ステーション70への帰還に係る移動コストと、他のステーションまたは回収地点への移動および回収コストを比較するなどして対処する。帰還経路6、6′はユーザー40に提示されず、オペレータ30等の管理画面にのみ表示される。
【0066】
プランニング部13は、インフラ情報による検証を経て提示すべき移動プラン(ベースプラン、代替プラン)が確定すると(ステップ115;YES)、ユーザー40に移動プラン(ベースプラン、代替プラン)を提示する(ステップ117)。
【0067】
すなわち、以下の各移動プランがユーザーに提示される:
(a)自動運転のみの移動プラン1(ベース経路5)
(b)手動運転への切替を含む移動プラン2(代替経路5X;切替地点)
(c)乗車地点変更を含む移動プラン3(代替経路5Y;変更した乗車地点)
【0068】
これらの移動プランは、例えば、図10または図11に示した管理用地図(経路探索用地図)から、ノードとリンクおよび帰還経路6、6′を非表示にして、表示用道路地図データに移動経路5および代替経路5X,5Yが重ねて表示され、それぞれの移動プランにおける推定所要時間(推定到着時間)などのキャプションが追加された状態でユーザーに提示される。音声による案内を伴っても良い。
【0069】
ユーザー40が何れかの移動プランを選択すると(ステップ118;YES)、ユーザー移動プランが確定し、ユーザー40の登録情報に基づいてオーダーが確定する(ステップ120)。
【0070】
一方、ユーザー40が何れの移動プランも選択しないか、または、キャンセル操作を行った場合は、手続はキャンセルされる(ステップ119)。
【0071】
5.配車~経路走行~自走帰還までの運用フロー
次に、ユーザー40が、代替経路5X,5Yの両方を含む移動プランを選択した場合を想定して、配車および経路走行について、図5のフローチャートおよび図10を参照しながら説明する。
【0072】
ユーザー移動プランが確定し、ユーザー40によるオーダーが確定すると(ステップ120)、運用サーバー10は、配車対象として選定された小型電動車両20(以下、単に対象車両20という)の配車準備に移行する。先ず、運用サーバー10は、通信システム11および通信端末21を介して、対象車両20のナビゲーション装置22に、確定した移動プランのナビゲーションデータやユーザー認証情報などのダウンロードを行う(ステップ121)。
【0073】
対象車両20へのダウンロード(情報登録)が完了し、配車可能な状態になると、利用日の乗車時刻から逆算した発車時刻まで車両ステーション70で待機する(ステップ122)。なお、即時配車要請の場合は、配車準備が完了次第、車両ステーション70から乗車地点(71n′)に向けて発車する。この場合、ユーザー40には、乗車予定時刻として到着予定時刻が通知される。なお、図10には、先述した3つの移動プランが表示されているが、ユーザー40の通信端末41(対象車両20のHMI装置)には確定した移動プラン以外の経路は表示されない。
【0074】
対象車両20は、オペレータ30の監視下で、車両ステーション70から乗車地点(71n′)に向けて、配車経路(リンク5a,5b)を無人自動運転により走行する(ステップ123)。即時配車要請の場合は、この間にユーザー40が本来の乗車希望地点(71n)から変更乗車地点(71n′)に徒歩で移動(7c)する。なお、図示例の変更乗車地点(71n′)は交差点63の角に設定されているが、この場所は他の歩行者などで混雑する可能性があるので、対象車両20は変更乗車地点(71n′)の少し手前で停車し、ウインカを点滅させるなど、ユーザー40に到着を報知する。また、ユーザー40の通信端末41に変更乗車地点(71n′)への対象車両20の到着が通知される。
【0075】
変更乗車地点(71n′)に到着した対象車両20は、ユーザー40による認証待ち状態となり、ユーザー40による認証操作が行われるまで走行機能がロックされる。ユーザー40による認証(ロック解除)が完了すると、対象車両20は発車待ち状態となり、ユーザー40の対象車両20への乗車が完了し(ステップ124)、ユーザー40が対象車両20のHMI装置またはユーザー通信端末41にて発車ボタン操作などの発車操作を行うと、対象車両20は目的地点72に向けた有人自動運転を開始する(ステップ125)。
【0076】
対象車両20は、発進直後に、交差点63にて横断歩道(リンク5r)を横断すべく方向変換し、青色信号を確認して横断歩道(リンク5r)により道路51を横断し、道路51に沿った歩道(リンク5i)を走行し、交差点62の角で右旋回して道路53の路側帯(リンク5j)を走行する。
【0077】
有人走行中も対象車両20の走行状態(走行/停止、位置、SOCなど)は通信システム11(21)を介して運用サーバー10(オペレータ30)によってモニタリングされている。運用サーバー10は、対象車両20の走行位置および時刻を車両管理部12(ユーザー管理部14)に記録する。オペレータ30は、モニター32に表示されるナビゲーション情報、例えば、地図画面上の車両インジケータなどにより対象車両20の位置や状態を確認可能であるとともに、対象車両20やユーザー40の状態をカメラ(外界センサ26)の画像により確認可能である。これにより、走行不能時や、後述する手動運転モードでの走行中に経路を著しく逸脱した場合など、オペレータ30が、対象車両20の通信端末21やユーザー40の通信端末41を介してユーザー40と交信し、必要に応じて、対象車両20の前方映像(および周辺映像)をモニター32で確認しながら、遠隔操作部33により対象車両20を遠隔操作する。
【0078】
移動プランに手動運転への切替が含まれている場合(ステップ126;YES、本実施例はこの場合に該当する)、対象車両20が手動運転への切替地点(交差点66)に接近するなど所定のタイミングで、もうすぐ手動運転への切替地点に到着することが、対象車両20のHMI装置(またはユーザー通信端末41)によりユーザー40に予告される。その後、対象車両20は、交差点66を横断したところで停止し、ユーザー40に手動運転モードへの移行が告知され、対象車両20はユーザー40による操作待ち状態となる。
【0079】
ユーザー40が発車ボタンを操作するなど所定の操作を行うと手動操作部24が動作可能状態となり、ナビゲーション装置22(またはユーザー通信端末41を介したナビゲーション)が開始され、ユーザー40の手動運転モードに移行する(ステップ127)。
【0080】
ユーザー40の手動運転により、対象車両20が交差点66の横断歩道(リンク5p)にて道路55を横断し、右旋回して道路55に沿って歩道(リンク5q)を走行することにより目的地72(ノード72n)に到着することで(ステップ128;YES)、対象車両20の手動運転モードも終了し、ユーザー40が降車を完了すると(ステップ129)、対象車両20は、無人自動運転で帰還経路(6;6a~6h)を走行して車両ステーション70まで帰還する(ステップ130)。
【0081】
なお、手動運転への切替地点(交差点66)への接近が予告された後ないし手動運転モードへの移行が告知された時に、あるいは、手動運転モードに移行した後に、ユーザー40がオペレータ30に自動運転を要請した場合、オペレータ30の遠隔操作による自動運転に移行することもできる。また、移動プラン2の提示段階で、このような遠隔操作による自動運転のオプションを選択できるようにしても良い。
【0082】
以上述べたように、本発明実施形態に係る小型電動車両20の運用システムは、無人自動運転による配車、有人自動運転、手動運転のそれぞれに許容される走行形態および通行区分を考慮して、自動運転のみの場合、手動運転への切替を含む場合のそれぞれに最適な移動経路を生成し、自動運転優先、手動運転を含んでも時間短縮優先、省電力優先など、多様な観点から最適経路と所要時間を提示でき、ユーザーの意向に沿ったナビゲーションおよび自動送迎サービスを提供するうえで有利である。
【0083】
例えば、移動プラン1では自動運転のみを想定して、歩道における逆方向のリンクは除外されているが、移動プラン2では、手動運転への切替を含み得る前提で歩道における逆方向のリンクも含めて経路探索することで、手動運転への切替により経路短縮(所要時間短縮)が可能になる代替経路5X(5p,5q)を含む経路提示が可能になり、さらに、移動プラン3では、乗車地点の僅かな変更により経路短縮(所要時間短縮)が可能になる代替経路5Y(5r)を含む経路提示が可能になり、ユーザーがこれらのオプションを選択することで、ユーザーとサービス提供者の双方に有利なナビゲーションを実施できる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 運用サーバー
11 通信システム
12 車両管理部
13 プランニング部
14 ユーザー管理部
15 地図データベース
16 インフラ連携部
20 小型電動車両(車両、対象車両)
21 通信端末
22 ナビゲーション装置
23 走行制御部
24 手動操作部
25 測位システム
26 外界センサ
27 駆動ユニット
28 自己位置推定
29 障害/走路環境認識
30 オペレータ
31 通信端末
32 モニター
33 遠隔操作部
40 ユーザー
41 通信端末
50~56 道路
60~67 交差点
70 車両ステーション
71 希望乗車地点
72 目的地点(希望降車地点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11