(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177055
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】流量調整バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/66 20060101AFI20231206BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20231206BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16K31/66
F16K1/00 A
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089748
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇気
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河本 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】小原 公和
【テーマコード(参考)】
3C081
3H052
3H057
【Fターム(参考)】
3C081AA11
3C081AA13
3C081BA03
3C081BA22
3C081BA25
3C081BA41
3C081BA51
3C081CA32
3C081DA03
3C081EA33
3C081EA41
3H052AA01
3H052BA25
3H052CD01
3H052DA01
3H057AA02
3H057BB07
3H057BB32
3H057CC06
3H057DD21
(57)【要約】
【課題】アクチュエータを構成する材料の許容温度を超えることなく、流量調整レンジを増大できる小型の流量調整弁を提供する。
【解決手段】第1プレート12と第2プレート14に重ね合わされる中間プレート16には、通電により駆動される第1アクチュエータ38と、第2アクチュエータ40とが設けられている。第1アクチュエータ38に第1脊柱60が連結され、第2アクチュエー40に第2脊柱61が連結されている。中間プレート16には、流路出口28の開口面積を変更する第1弁体44Aと、第1弁体44Aに連結されるアーム44Bとを備えた可動弁部材44が設けられている。アーム44Bには、第1脊柱60と第2脊柱61とが互いに向かい合うように接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部、及び第2開口部が形成された第1プレートと、
前記第1プレートと重ね合わせられ前記第1開口部と前記第2開口部と連通する第1流路開口部が形成された中間プレートと、
前記中間プレートに重ね合わせられ、前記第1プレートとで前記第1流路開口部の面外方向の開口部を閉じる第2プレートと、
前記中間プレートに設けられ、前記第1流路開口部に配置され前記第1開口部及び前記第2開口部の少なくとも一方の開口面積を変更する第1弁体と、前記第1弁体から面内方向へ延出するアームと、を備えた可動弁部材と、
前記アームの面内方向の一方側に設けられ、通電により前記アーム側へ移動する第1アクチュエータと、
前記アームの面内方向の他方側に設けられ、通電により前記アーム側へ移動する第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータと前記アームを連結する第1脊柱と、
前記第2アクチュエータと前記アームを連結する第2脊柱と、
を有する流量調整バルブ。
【請求項2】
前記第1脊柱、及び前記第2脊柱は、互いに向かい合うように前記アームに対して傾斜して接続されている、
請求項1に記載の流量調整バルブ。
【請求項3】
前記アームの長手方向と直角な方向に対する前記第1脊柱の長手方向の角度θ、及び前記アームの長手方向と直角な方向に対する前記第2脊柱の長手方向の角度θが、0.5~10°の範囲内に設定されている、
請求項2に記載の流量調整バルブ。
【請求項4】
前記第1脊柱と前記アームとの接続部分、及び前記第2脊柱と前記アームとの接続部分は、前記アームの長手方向に離れている、
請求項1に記載の流量調整バルブ。
【請求項5】
前記第1プレートには、第3開口部、及び第4開口部が形成され、
前記中間プレートには、前記第3開口部と前記第4開口部と連通する第2流路開口部が形成され、
前記アームには、前記第1弁体とは反対側の端部に、前記第3開口部及び前記第4開口部の少なくとも一方の開口面積を変更する第2弁体が設けられている、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の流量調整バルブ。
【請求項6】
前記可動弁部材の移動により、前記第1開口部、及び前記第2開口部の少なくとも一方は開口面積が増加し、前記第3開口部、及び前記第4開口部の少なくとも一方も開口面積が増加する、
請求項5に記載の流量調整バルブ。
【請求項7】
前記可動弁部材の移動により、前記第1開口部、及び前記第2開口部の少なくとも一方は開口面積が増加し、前記第3開口部、及び前記第4開口部の少なくとも一方は開口面積が減少する、
請求項5に記載の流量調整バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流量調整バルブとして、例えば、特許文献1に記載の流量調整バルブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US-A-2014/0374633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流量調整バルブは様々なシステムや製品で重要な役割を果たしており、システムが複雑になるにつれて、流量調整バルブの小型化が必要になってきている。
これを実現する一つの手法がMEMSプロセスでつくられる流量調整バルブであり、一例として特許文献1に記載のバルブが知られている。
【0005】
特許文献1に記載の流量調整バルブは、シリコン部材に電流を流してジュール発熱させ、シリコン部材の熱膨張でバルブを開閉させている。このバルブは従来のモーター等のアクチュエータを用いるバルブと比べて、以下の利点を有している。
(1)従来バルブよりも軽量・小型。
(2)摺動部がないため静音かつ長寿命。
(3)パーツ点数が大幅に少ない。
【0006】
しかしながら、特許文献1の流量調整バルブは、流量調整レンジが小さい、すなわち弁体を備えた可動部の変位量、言い換えれば、弁の開閉量が小さい問題を抱えている。
印加電力を増大させるとシリコン部材の熱膨張が促進されて可動部の大変位が得られるが、シリコン部材には許容温度が存在するため、従来構造の流量調整バブルでは得られる変位量が限られる。言い換えれば、従来構造の流量調整バブルは流量調整レンジが狭く、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、アクチュエータを構成する材料の許容温度を超えることなく、流量調整レンジを増大できる小型の流量調整弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の流量調整バルブは、第1開口部、及び第2開口部が形成された第1プレートと、前記第1プレートと重ね合わせられ前記第1開口部と前記第2開口部と連通する第1流路開口部が形成された中間プレートと、前記中間プレートに重ね合わせられ、前記第1プレートとで前記第1流路開口部の面外方向の開口部を閉じる第2プレートと、前記中間プレートに設けられ、前記第1流路開口部に配置され前記第1開口部及び前記第2開口部の少なくとも一方の開口面積を変更する第1弁体と、前記第1弁体から面内方向へ延出するアームと、を備えた可動弁部材と、前記アームの面内方向の一方側に設けられ、通電により前記アーム側へ移動する第1アクチュエータと、前記アームの面内方向の他方側に設けられ、通電により前記アーム側へ移動する第2アクチュエータと、前記第1アクチュエータと前記アームを連結する第1脊柱と、前記第2アクチュエータと前記アームを連結する第2脊柱と、とを有している。
【0009】
請求項1に記載の流量調整バルブは、第1の開口部、及び第2の開口部の何れか一方から流体を流入させることで、第1弁体の第1流路開口部を通過させて第1の開口部、及び第2の開口部の何れか他方から流体を流出させることができる。そして、中間プレートに設けられた第1弁体を移動することで第1の開口部、及び第2の開口部の少なくとも一方の開口面積を変更することができ、これにより、流量調整バルブで流体の流量を調整することができる。
【0010】
第1弁体を移動する場合には、通電により第1アクチュエータ、及び第2アクチュエータを作動させ、第1脊柱、及び第2脊柱がアーム側に移動すると、第1脊柱、及び第2脊柱に接続された可動弁部材のアームが動かされ、第1弁体が移動する。
【0011】
従来構成では、一つのアクチュエータに対して印加電力を増大させ、変位量を増大させることが考えられるが、材料には許容温度が存在するため、印加電力を増大させて変位量を増大するには限界がある。
請求項1流量調整バルブでは、第1アクチュエータ、及び第2アクチュエータの2つのアクチュエータの動きを用いて可動弁部材を動かすので、アクチュエータ1つ当たりの印加電力を増大させずに第1弁体の変位量を大きくして流量調整レンジを増大することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流量調整バルブにおいて、前記第1脊柱、及び前記第2脊柱は、互いに向かい合うように前記アームに対して傾斜して接続されている。
【0013】
請求項2に記載の流量調整バルブのアームには、第1脊柱、及び第2脊柱が互いに向かい合うように接続されている。また、第1脊柱、及び第2脊柱は、アームに対して傾斜して連結されている。このため、第1脊柱、及び第2脊柱が互いに向き合ってアームに向けて移動すると、第1脊柱、及び第2脊柱が曲げ変形し、可動弁部材がアームの長手方向へ移動する。
請求項2に記載の流量調整バルブでは、アームが長手方向へ移動して、第1弁体が、第1の開口部、及び第2の開口部の少なくとも一方の開口面積を変更する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の流量調整バルブにおいて、前記アームの長手方向と直角な方向に対する前記第1脊柱の長手方向の角度θ、及び前記アームの長手方向と直角な方向に対する前記第2脊柱の長手方向の角度θが、0.5~10°の範囲内に設定されている。
【0015】
請求項3に記載の流量調整バルブでは、アームの長手方向と直角な方向に対する第1脊柱の長手方向の角度θ、及びアームの長手方向と直角な方向に対する第2脊柱の長手方向の角度θを0.5~10°の範囲内に設定することで、第1脊柱、及び第2脊柱を座屈させることなく一方向に湾曲するように曲げ変形させることができる。また、角度θを10°以下とすることで、第1脊柱、及び第2脊柱の移動量に比較して、可動弁部材の移動量を大きくすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の流量調整バルブにおいて、前記第1脊柱と前記アームとの接続部分、及び前記第2脊柱と前記アームとの接続部分は、前記アームの長手方向に離れている。
【0017】
請求項4に記載の流量調整バルブでは、第1脊柱とアームとの接続部分と、第2脊柱とアームとの接続部分とがアームの長手方向に離れているため、互いに向かい合う第1脊柱と第2脊柱とがアームに向けて移動すると、第1脊柱とアームとの接続部分と第2脊柱とアームとの接続部分との中間位置を支点として、アームを回転させることができる。また、該支点の位置を第1弁体から離したり、第1脊柱とアームとの接続部分と、第2脊柱とアームとの接続部分とを離間させつつ、離間距離を短くすることで、テコの原理で、第1アクチュエータと第2アクチュエータの移動量が同じでも、第1弁体の移動量を増大させることができる。
【0018】
さらに、アームを、第1脊柱、及び第2脊柱の何れか一方のみで動かした場合は、第1脊柱、及び第2脊柱の何れか他方とアームとの接続部分を支点としてアームを回転させることはできるが、その回転量は、互いに向かい合う第1脊柱と第2脊柱とがアームに向けて移動させた場合に比較して半減する。言い換えれば、互いに向かい合う第1脊柱と第2脊柱とがアームに向けて移動させることで、一つの脊柱でアームを回転させる場合に比較して、可動弁部材の回転量を略2倍にすることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の流量調整バルブにおいて、前記第1プレートには、第3開口部、及び第4開口部が形成され、前記中間プレートには、前記第3開口部と前記第4開口部と連通する第2流路開口部が形成され、前記アームには、前記第1弁体とは反対側の端部に、前記第3開口部及び前記第4開口部の少なくとも一方の開口面積を変更する第2弁体が設けられている。
【0020】
請求項5に記載の流量調整バルブのアームには、第1弁体とは反対側の端部に、第1プレートに設けた第3開口部、及び第4開口部の少なくとも一方の開口面積を変更する第2弁体が連結されている。このため、アームを動かすことで、第1開口部と第2開口部との間で流量を調整することができると共に、第3開口部と第4開口部との間で流量を調整することができ、一つの流量調整バルブで、2系統の流路の流量を調整することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の流量調整バルブにおいて、前記可動弁部材の移動により、前記第1開口部、及び前記第2開口部の少なくとも一方は開口面積が増加し、前記第3開口部、及び前記第4開口部の少なくとも一方も開口面積が増加する。
【0022】
請求項6に記載の流量調整バルブでは、第1アクチュエータ、及び第2アクチュエータを作動させて可動弁部材を動かすことで、第1開口部、及び第2開口部の少なくとも一方の開口面積を増加させ、第3開口部、及び第4開口部の少なくとも一方の開口面積も増加させることができる。したがって、第1アクチュエータ、及び第2アクチュエータを作動させることで、第1開口部、及び第2開口部を流れる流体の流量、並びに第3開口部、及び第4開口部を流れる流体の流量を共に増加させることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の流量調整バルブにおいて、前記可動弁部材の移動により、前記第1開口部、及び前記第2開口部の少なくとも一方は開口面積が増加し、前記第3開口部、及び前記第4開口部の少なくとも一方は開口面積が減少する。
【0024】
請求項7に記載の流量調整バルブでは、第1アクチュエータ、及び第2アクチュエータを作動させて可動弁部材を動かすことで、第1開口部、及び第2開口部の少なくとも一方の開口面積を増加させ、第3開口部、及び第4開口部の少なくとも一方の開口面積を減少させることができる。したがって、第1アクチュエータ、及び第2アクチュエータを作動させることで、第1開口部、及び第2開口部を流れる流体の流量を増加させ、第3開口部、及び第4開口部を流れる流体の流量は減少させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明の流量調整弁によれば、アクチュエータを構成する材料の許容温度を超えることなく、流量調整レンジを増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施形態に係る流量調整弁を示す分解斜視図である。
【
図2】(A)は第1の実施形態に係る流量調整弁を示す正面図であり、(B)は第1の実施形態に係る流量調整弁を示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る流量調整弁の中間プレートを示す平面図である。
【
図4】(A),(B)は、可動弁部材が変位する原理を示す説明図である。
【
図5】(A)は、第1の実施形態に係る流量調整弁のアクチュエータ非動作時の第1弁体、第1流体入口、及び第1流体出口を示す平面図であり、(B)は、流量調整弁のアクチュエータ動作時の第1弁体、第1流体入口、及び第1流体出口を示す平面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る流量調整弁を示す分解斜視図である。
【
図7】(A)は第2の実施形態に係る流量調整弁の中間プレートを示す平面図であり、(B)は脊柱の傾斜角度を説明する脊柱付近を示す平面図である。
【
図8】(A),(B)は、可動弁部材が変位する原理を示す説明図である。
【
図9】(A)~(C)は、脊柱が変位した状態を示す説明図である。
【
図10】(A)は、第2の実施形態に係る流量調整弁のアクチュエータ非動作時の第1弁体、第1流体入口、及び第1流体出口を示す平面図であり、(B)は、第2の実施形態に係る流量調整弁のアクチュエータ動作時の第1弁体、第1流体入口、及び第1流体出口を示す平面図である。
【
図11】(A)は、第2の実施形態に係る流量調整弁のアクチュエータ非動作時の第2弁体、第2流体入口、及び第2流体出口を示す平面図であり、(B)は、アクチュエータ動作時の第2弁体、第2流体入口、及び第2流体出口を示す平面図である。
【
図12】(A)は、第3の実施形態に係る流量調整弁のアクチュエータ非動作時の第2弁体、第2流体入口、及び第2流体出口を示す平面図であり、(B)は、アクチュエータ動作時の第2弁体、第2流体入口、及び第2流体出口を示す平面図である。
【
図13】第4の実施形態に係る流量調整弁の中間プレートを示す平面図である。
【
図14】第5の実施形態に係る流量調整弁の中間プレートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1の実施形態]
図1~
図5を用いて、本発明の第1の実施形態に係る流量調整弁10について説明する。
本実施形態の流量調整弁10は、一例として、MEMS(Micro Electro Mechanical System/微小電気機械システム)と呼ばれ、LSIのような半導体製造プロセスやその他の 超微細加工プロセスを利用して立体構造の成型・加工技術などを取り込んで作製された機械的と電気的な機能を併せ持った小型の流量調整弁である。
【0028】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態の流量調整弁10は、第1プレート12、第2プレート14、及び第1プレート12と第2プレート14との間に挟持される中間プレート16とを含んで構成されている。
【0029】
第1プレート12、第2プレート14、及び中間プレート16は、一例として、長方形に形成されている。本実施形態の中間プレート16は、電流が通過するときに加熱および膨張する材料、一例としてシリコン半導体材料等の導電材料で形成されている。また、本実施形態の第1プレート12、及び第2プレート14は、非導電性材料(絶縁材料)で形成されている。
【0030】
なお、図面において、矢印U方向、及び矢印D方向は、第1プレート12、第2プレート14、及び中間プレート16の長手方向を示し、矢印R方向、及び矢印L方向は、第1プレート12、第2プレート14、及び中間プレート16の幅方向を示し、矢印F方向、及び矢印B方向は、第1プレート12、第2プレート14、及び中間プレート16の厚さ方向を示している。
なお、矢印U方向、矢印D方向、矢印R方向、及び矢印L方向は、第1プレート12、第2プレート14、及び中間プレート16の面内方向となる。
【0031】
(第1プレート)
第1プレート12には、矢印U方向側の端縁付近に、第1開口部の一例としての流体入口26、及び第2開口部の一例としての流体出口28が、第1プレート12の幅方向に所定の間隔を開けて形成されている。本実施形態の流体入口26、及び流体出口28は、矢印U方向、及び矢印D方向を長手方向とした長方形の孔である。
【0032】
(第2プレート)
第2プレート14には、矢印L方向側の端縁付近に、矩形孔状の第1電極ポート18、及び第2電極ポート20が、第2プレート14の長手方向に所定の間隔を開けて形成されており、矢印R方向側の端縁付近に、矩形孔状の第3電極ポート22、及び第4電極ポート24が、第2プレート14の長手方向に所定の間隔を開けて形成されている。
第1電極ポート18、第2電極ポート20、第3電極ポート22、及び第4電極ポート24は、矢印R方向、及び矢印L方向を長手方向とした長方形の孔である。
【0033】
(中間プレート)
図1、及び
図3に示すように、中間プレート16の矢印F方向側の表面には、第2プレート14の第1電極ポート18と対向する位置に第1電極30が設けられ、第2プレート14の第2電極ポート20と対向する位置に第2電極32が設けられ、第2プレート14の第3電極ポート22と対向する位置に第3電極34が設けられ、第2プレート14の第4電極ポート24と対向する位置に第4電極36が形成されている。
各電極には、図示しない配線が接続され、配線に接続された図示しない電源、及びコントローラから電力が供給される。
【0034】
図3に示すように、中間プレート16において、矢印L方向側に配置された第1電極30と第2電極32との間には、第1アクチュエータ38が設けられており、矢印R方向側に配置された第3電極34と第4電極36との間には、第2アクチュエータ40が形成されている。
【0035】
(可動弁部材)
中間プレート16には、中間プレート16を貫通する平面視で略T字形状の貫通孔42が、矢印U方向側から長手方向中央部に向けて形成されている。この貫通孔42には、平面視で略T字形状の可動弁部材44が配置されている。なお、貫通孔42と可動弁部材44との間には、中間プレート16を貫通する隙間S1が設けられる。
【0036】
貫通孔42は、中間プレート16の幅方向を長手方向とした長方形の弁室部42Aと、弁室部42Aから矢印D方向へ延設されるアーム収容部42Bとを備えている。なお、この弁室部42Aは、本発明の第1流路開口部の一例である。
【0037】
略T字形状の可動弁部材44は、弁室部42Aに配置され矢印R方向、及び矢印L方向に細長く形成された長方形の第1弁体44Aと、アーム収容部42Bに配置され第1弁体44Aと一体的に形成されたアーム44Bとを備えている。第1弁体44Aには、第1弁体44Aの長手方向に沿って細長く形成された開口である長方形の流路46が形成されている。
【0038】
(第1アクチュエータ)
第1アクチュエータ38は、第1電極30の近傍から、第1電極30と第2電極32との中間位置に向けて延設される複数のアクチュエータリブ38aと、第2電極32の近傍から、第1電極30と第2電極32との中間位置に向けて延設される複数のアクチュエータリブ38bとを備えている。
【0039】
アクチュエータリブ38aとアクチュエータリブ38aとの間、及びアクチュエータリブ38bとアクチュエータリブ38bとの間には、各々中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)48が形成されている。
【0040】
第2電極32の周囲には、第2電極32の3方(矢印R方向側、矢印D方向側、及び矢印L方向側)を取り囲む平面視でコ字形状とされたスリット状の隙間(孔)50が形成されている。
【0041】
矢印L方向最外側のアクチュエータリブ38a、及び矢印L方向最外側のアクチュエータリブ38bの矢印L方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)52がアクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bに沿って形成されている。
【0042】
また、矢印R方向最内側のアクチュエータリブ38aの矢印R方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)54がアクチュエータリブ38aに沿って形成されている。
【0043】
また、矢印R方向最内側のアクチュエータリブ38bの矢印R方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)56がアクチュエータリブ38bに沿って形成されている。
【0044】
第2電極32の周囲に形成されたスリット状の隙間50は、矢印L方向側の端部がスリット状の隙間52に連通し、矢印R方向側の端部がスリット状の隙間56に連通している。
【0045】
第1アクチュエータ38の矢印R方向側には、中間プレート16の幅方向に沿って延設される第1脊柱60が配置されている。第1脊柱60の矢印U方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)62が第1脊柱60に沿って形成されており、第1脊柱60の矢印D方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)64が第1脊柱60に沿って形成されている。
【0046】
第1脊柱60の矢印U方向側に配置されるスリット状の隙間62は、矢印L方向側の端部がスリット状の隙間54に連通し、矢印R方向側の端部が可動弁部材44を取り囲む隙間S1に連通している。
【0047】
また、第1脊柱60の矢印D方向側に配置されるスリット状の隙間64は、矢印L方向側の端部がスリット状の隙間56に連通し、矢印R方向側の端部が可動弁部材44を取り囲む隙間S1に連通している。
【0048】
複数のアクチュエータリブ38aの矢印D方向側の端部と、複数のアクチュエータリブ38bの矢印U方向側の端部とは、第1脊柱60に一体的に接続されている。
【0049】
なお、第2電極32の形成されている部分は、平面視で長方形の島状部分66とされている。この島状部分66は、周囲から離間しており、この島状部分66と第1脊柱60とを架け渡すように複数のアクチュエータリブ38bが設けられている。
【0050】
なお、アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bは、電極側よりも第1脊柱60側が矢印R方向側に位置するように、矢印U方向、及び矢印D方向(第1脊柱60と直交する方向)に対して傾斜している。
【0051】
ここで、第1電極30と第2電極32とに電圧を印加すると、アクチュエータリブ38aとアクチュエータリブ38bとに電流が流れる。アクチュエータリブ38aとアクチュエータリブ38bとに電流が流れると、アクチュエータリブ38aとアクチュエータリブ38bとが発熱して膨張し、第1脊柱60を矢印R方向へ変位させる。なお、本実施形態では、第1電極30と第2電極32とに電圧を印加していない状態を、第1アクチュエータ38の非作動状態とし、第1電極30と第2電極32とに電圧を印加した状態を第1アクチュエータ38の動作状態と呼ぶ。
【0052】
(第2アクチュエータ)
次に、第2アクチュエータ40について説明する。なお、第2アクチュエータ40は、第1アクチュエータ38と同様の構成とされ、第1アクチュエータ38を左右反転させた形状とされているが、本実施形態の流量調整弁10では、第2アクチュエータ40が、第1アクチュエータ38よりも矢印D方向側へ変位した位置に形成されている。
【0053】
第2アクチュエータ40は、第3電極34の近傍から、第3電極34と第4電極36との中間位置に向けて延設される複数のアクチュエータリブ39aと、第4電極36の近傍から、第3電極34と第4電極36との中間位置に向けて延設される複数のアクチュエータリブ39bとを備えている。
【0054】
アクチュエータリブ39aとアクチュエータリブ39aとの間、及びアクチュエータリブ39bとアクチュエータリブ39bとの間には、各々中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)49が形成されている。
【0055】
第4電極36の周囲には、第4電極36の3方(矢印R方向側、矢印D方向側、及び矢印L方向側)を取り囲む平面視でコ字形状とされたスリット状の隙間(孔)51が形成されている。
【0056】
矢印R方向最外側のアクチュエータリブ39a、及び矢印R方向最外側のアクチュエータリブ39bの矢印R方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)53がアクチュエータリブ39a、及びアクチュエータリブ39bに沿って形成されている。
【0057】
また、矢印L方向最内側のアクチュエータリブ39aの矢印L方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)55がアクチュエータリブ39aに沿って形成されている。
【0058】
また、矢印L方向最内側のアクチュエータリブ39bの矢印L方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)57がアクチュエータリブ38bに沿って形成されている。
【0059】
第4電極36の周囲に形成されたスリット状の隙間51は、矢印R方向側の端部がスリット状の隙間53に連通し、矢印L方向側の端部がスリット状の隙間57に連通している。
【0060】
第2アクチュエータ40の矢印L方向側には、中間プレート16の幅方向に沿って延設される第2脊柱61が配置されている。第2脊柱61の矢印U方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)63が第2脊柱61に沿って形成されており、第2脊柱61の矢印D方向側には、中間プレート16を貫通するスリット状の隙間(孔)65が第2脊柱61に沿って形成されている。
【0061】
第2脊柱61の矢印U方向側に配置されるスリット状の隙間63は、矢印R方向側の端部がスリット状の隙間55に連通し、矢印L方向側の端部が可動弁部材44を取り囲む隙間S1に連通している。
【0062】
また、第2脊柱61の矢印D方向側に配置されるスリット状の隙間65は、矢印R方向側の端部がスリット状の隙間57に連通し、矢印L方向側の端部が可動弁部材44を取り囲む隙間S1に連通している。
【0063】
複数のアクチュエータリブ39aの矢印D方向側の端部と、複数のアクチュエータリブ39bの矢印U方向側の端部とは、第2脊柱61に一体的に接続されている。
【0064】
なお、第4電極36の形成されている部分は、平面視で長方形の島状部分67とされている。この島状部分67は、周囲から離間しており、この島状部分67と第2脊柱61とを架け渡すように複数のアクチュエータリブ39bが設けられている。
【0065】
なお、アクチュエータリブ39a、及びアクチュエータリブ39bは、電極側よりも第2脊柱61側が矢印L方向側に位置するように、矢印U方向、及び矢印D方向(第2脊柱61と直交する方向)に対して傾斜している。
【0066】
ここで、第3電極34と第4電極36とに電圧を印加すると、アクチュエータリブ39aとアクチュエータリブ39bとに電流が流れる。アクチュエータリブ39aとアクチュエータリブ39bとに電流が流れると、アクチュエータリブ39aとアクチュエータリブ39bとが発熱して膨張し、第2脊柱61を矢印L方向へ変位させる。なお、本実施形態では、第3電極34と第4電極36とに電圧を印加していない状態を、第2アクチュエータ40の非作動状態とし、第3電極34と第4電極36とに電圧を印加した状態を第2アクチュエータ40の動作状態と呼ぶ。
【0067】
なお、中間プレート16は、第1アクチュエータ38、第2アクチュエータ40、第1脊柱60、及び可動弁部材44が移動可能となるように、移動可能とする部分以外の部分が、第1プレート12、及び第2プレート14に接合されている。該接合としては、一例として、融合結合、化学結合、または物理的結合(例えば、機械的ファスナ、接着剤など)がある。
【0068】
(作用、効果)
本実施形態の流量調整弁10において、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60を矢印R方向へ変位させ、第2アクチュエータ40側の第2脊柱61を矢印L方向へ変位させることで、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60とアーム44Bとの接続部分と、第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とアーム44Bとの接続部分との中間位置Pを支点として可動弁部材44を図面の矢印CW向へ回転させ(
図4の動作原理図参照)、第1弁体44Aを略矢印R方向へ変位させることができる。
【0069】
図5(A)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時における第1弁体44Aと、第1プレート12の流体入口26、及び流体出口28との位置関係が模式的に示されており、
図5(B)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の動作時における第1弁体44Aと,第1プレート12の流体入口26、及び流体出口28との位置関係が模式的に示されている。
【0070】
図5(A)に示すように、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時では、流体入口26が第1弁体44Aの流路46と繋がっており、流体出口28が第1弁体44Aで塞がれている。
【0071】
一方、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40を動作させ、第1弁体44Aを略矢印R方向へ変位させると、
図5(B)に示すように、流体入口26が第1弁体44Aの流路46とが繋がった状態で、流体出口28の一部(または全て)が第1弁体44Aの流路46と繋がる。これにより、流体入口26から流入させた流体を、流体出口28から流出させることができる。
【0072】
本実施形態の流量調整弁10では、第1電極30、第2電極32、第3電極34、及び第4電極36に印加する電圧を調整してアクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bの伸びを調整して第1脊柱60、及び第2脊柱61の移動量を変更することができる。第1脊柱60、及び第2脊柱61の移動量を変更することで、可動弁部材44の回転角度を変更することができ、流体出口28の開口面積A(
図5(B)参照)を変更して流体の流量を調整することができる。
【0073】
本実施形態の流量調整弁10では、可動弁部材44を回転させる際に、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60と第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とを互いに反対向きに移動させるので、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60、及び第2アクチュエータ40側の第2脊柱61の何れか一方のみを移動させる場合に比較して、可動弁部材44の回転量(回転角度)を約2倍にし、第1弁体44Aの移動量を約2倍にすることができる。
【0074】
第1弁体44Aの移動量を増やすために、電極間に流す電流を増やし、アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bの伸び量を増やすことも考えられるが、発熱量が増加して中間プレート16を構成する材料の耐熱温度を超えてしまう場合がある。
【0075】
しかし、本実施形態の流量調整弁10では、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60と第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とを互いに反対向きに移動させて第1弁体44Aの移動量を増やせる構成としている。このため、電極間に流す電流を増やす必要がなく、材料の許容温度を超えないように第1アクチュエータ38(アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38b)の発熱量を抑制しつつ、第1弁体44Aの移動量を増やすことができ、アクチュエータ一つ当たりの使用電力を増やさずに、流量調整レンジを増大することができる。
【0076】
なお、第1弁体44Aの移動量を増やすために、梃子の原理を用い、可動弁部材44のアーム44Bの長さを増やす必要もないため、流量調整弁10の小型化を図りつつ、流量調整レンジを増大することができる。
【0077】
[第2の実施形態]
次に、
図6~
図11を用いて、本発明の第2の実施形態に係る流量調整弁10について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施形態の流量調整弁10は、
図6に示す第1プレート12、第2プレート14、及び中間プレート16を含んで構成されている。
【0078】
(第1プレート)
図6に示すように、本実施形態の第1プレート12には、矢印U方向側に、第1プレート12の幅方向に沿って延設される第1開口部の一例としての第1流体入口70が形成され、さらに、第1流体入口70の矢印U方向側に第1プレート12の幅方向に沿って延設される第2開口部の一例としての第1流体出口72が形成されている。本実施形態の第1流体入口70、及び第1流体出口72は、長方形の孔である。
【0079】
さらに、本実施形態の第1プレート12には、矢印D方向側に、第1プレート12の幅方向に沿って延設される第3開口部の一例としての第2流体入口74が形成され、さらに、第2流体入口74の矢印D方向側に流量調整弁10の幅方向に沿って延設される第4開口部の一例としての第2流体出口76が形成されている。本実施形態の第2流体入口74、及び第2流体出口76は、長方形の孔である。
【0080】
(中間プレート)
図7に示すように、本実施形態の中間プレート16には、矢印D方向側に弁室部42Cが形成されている。この弁室部42Cは、本発明の第2流路開口部の一例である。
【0081】
本実施形態の可動弁部材44は、第1の実施形態よりも細く形成されたアーム44Bの矢印D方向側の端部に、矢印U方向側の第1弁体44Aよりも長さの短い矩形状の第2弁体44Cが一体的に形成されている。この第2弁体44Cは、弁室部42Cの内部に配置されている。第2弁体44Cには、矩形の開口である流路49が形成されている。
【0082】
本実施形態の中間プレート16では、第2電極32、及び第4電極36が第1電極30、及び第3電極34よりも中間プレート16の幅方向中央側に位置しており、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40が電極の配置に合わせて傾斜している。このため、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60、及び第2アクチュエータ40側の第2脊柱61は、中間プレート16の幅方向中央側の端部が、アクチュエータ側よりも矢印U方向側へ位置するように傾斜している。
【0083】
本実施形態では、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40が、左右対称に配置されており、第1アクチュエータ38と連結された第1脊柱60の端部、及び第2アクチュエータ40と連結された第2脊柱61の端部が、各々アーム44Bの長手方向中間部の同一部位に連結されている。
【0084】
また、本実施形態では、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60、及び第2アクチュエータ40側の第2脊柱61が、各々曲げ変形可能とされている。
【0085】
本実施形態の中間プレート16では、第1脊柱60を曲げ変形させるため(詳細は後述する)、第1脊柱60の矢印U向側に位置するスリット状の隙間62は、アクチュエータ側からアーム44B側に向けて幅広となるように形成されており、曲げ変形した第1脊柱60が隙間62の側壁に接触しないようにその形状が決められている。なお、第2脊柱61の矢印U向側に位置するスリット状の隙間63もアクチュエータ側からアーム44B側に向けて幅広となるように形成されている。
【0086】
本実施形態では、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40が動作し、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60と第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とが互いに向き合う方向に押されると、
図8の動作原理図で示すように、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60、及び第2アクチュエータ40側の第2脊柱61は熱膨張して矢印D方向側が凸となるように湾曲変形し、これにより可動弁部材44が矢印U方向へ移動する。
【0087】
さらに、
図9(A)~
図9(C)に基いて、可動弁部材44が第1脊柱60、及び第2脊柱61の長手方向と交差する方向に変位するメカニズムを説明する。
【0088】
(1)リブ状加熱部が変位δを発生する場合。
第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さをLsとする。第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さが変わらないと仮定すると、アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bの変位によって、以下の関係が求まる。
三平方の定理より
[式1]
[式2]
ここではLs>>δを仮定して、δ
2を無視した。
【0089】
第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さLsがアクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bの変位δのN倍だとすると、垂直方向変位量uvは以下の式3で求められる。
[式3]
アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bの変位量が10μm、第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さを2mmとすると、N=200となり、変位量は20倍に増幅される。したがって、第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さを長くすればするほど、取り出せる垂直方向変位量は大きくなる。
ただし、その増幅倍率は第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さの平方根であるため、第1脊柱60、及び第2脊柱61の長さが長くなるにつれて増幅効率は落ちていく。
【0090】
(2)アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bが変位δを発生し、第1脊柱60、及び第2脊柱61も熱膨張する場合(線膨張係数をαとする)。
実際には、アクチュエータリブ38a、及びアクチュエータリブ38bの発熱が第1脊柱60、及び第2脊柱61に熱伝導で伝わるため、第1脊柱60、及び第2脊柱61も熱膨張する。
この条件での垂直方向変位量uv’は以下の式4,5で表される。
[式4]
[式5]
【0091】
脊柱が熱膨張する分だけ、(1)の値よりも変位量が増幅される。uv’はuvと比較して下式6の値を掛けた値になる。
[式6]
【0092】
図10(A)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時における第1弁体44Aと第1プレート12の流体入口70、及び流体出口72との位置関係が模式的に示されており、
図10(B)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の動作時における第1弁体44Aと第1プレート12の流体入口70、及び流体出口72との位置関係が模式的に示されている。
【0093】
また、
図11(A)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時における第2弁体44Cと第1プレート12の第2流体入口74、及び第2流体出口76との位置関係が模式的に示されており、
図11(B)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の動作時における第2弁体44Cと第1プレート12の第2流体入口74、及び第2流体出口76との位置関係が模式的に示されている。
【0094】
第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時では、
図10(A)に示すように、流体入口70が第1弁体44Aの流路46と繋がっており、流体出口28が第1弁体44Aで塞がれている。また、
図11(A)に示すように、第2流体入口74が第2弁体44Cの開口49と繋がっており、第2流体出口76が第1弁体44Cで塞がれている。
【0095】
一方、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40を動作させ、可動弁部材44(第1弁体44A、第2弁体44C)を略矢U方向へ変位させると、
図10(B)に示すように、第1流体入口70が第1弁体44Aの流路46とが繋がった状態で、第1流体出口72の一部(または全て)が第1弁体44Aの流路46と繋がる。これにより、第1流体入口70から流入させた流体を、第1流体出口72から流出させることができる。
【0096】
また、
図11(B)に示すように、第2流体入口74が第2弁体44Cの開口49とが繋がった状態で、第2流体出口76の一部(または全て)が第2弁体44Cの開口49と繋がる。これにより、第2流体入口74から流入させた流体を、第2流体出口76から流出させることができる。
【0097】
本実施形態の流量調整弁10では、第1電極30、第2電極32、第3電極34、及び第4電極36に印加する電圧を調整してアクチュエータリブ38a、アクチュエータリブ38b、アクチュエータリブ39a、及びアクチュエータリブ39bの伸び量を調整すると、第1脊柱60、及び第2脊柱61の移動量が変わる。これにより、可動弁部材44の矢印U方向の変位量が調整され、流体出口72の開口面積A(
図10(B)参照)が調整されて流体出口72から排出される流体の流量が調整されると共に、第2流体出口76の開口面積B(
図11(B)参照)が調整されて第2流体出口76から排出される流体の流量が調整される。なお、本実施形態では、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40を動作させることで、流体出口72から排出される流体の流量、及び第2流体出口76から排出される流体の流量が、増加する方向に調整される。
【0098】
また、本実施形態の流量調整弁10では、
図7(B)に示すアーム44Bの長手方向と直角な方向に対する第1アクチュエータ38側の第1脊柱60の長手方向の角度θ、及び第2アクチュエータ40側の第2脊柱61の角度θを最適な角度とすることで、第1脊柱60、及び第2脊柱61の該移動量に比較して、可動弁部材44の矢印U方向の移動量を大きくする(拡大する)ことができる。角度θは、一例として、0.5~10°の範囲とすることが好ましい。
【0099】
なお、角度θが大きくなり過ぎると、可動弁部材44の矢印U方向の移動量を大きくすること(第1脊柱60、及び第2脊柱61の移動量を拡大すること)ができなくなる。
【0100】
[第3の実施形態]
次に、
図12を用いて、本発明の第3の実施形態に係る流量調整弁10について説明する。なお、本実施形態は第2の実施形態の変形例であり、第2の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0101】
図12(A)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時の第2流体入口74、及び第2流体出口76と、第2弁体44Cとの位置関係が示されており、図(B)には、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の動作時の第2流体入口74、及び第2流体出口76と、第2弁体44Cとの位置関係が示されている。
図12(A)、及び
図12(B)に示すように、本実施形態の流量調整弁10では、第2流体入口74、及び第2流体出口76と、第2弁体44Cとの位置関係が第3の実施形態と異なっている。
【0102】
本実施形態の流量調整弁10では、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の非動作時では、
図12(A)に示すように第2流体入口74、及び第2流体出口76が第2弁体44Cで塞がれておらず、解放状態である。一方、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40の動作時では、
図12(B)に示すように、第2流体入口74の一部(または全て)が第2弁体44Cで塞がれて、第2流体入口74の開口面積Cが減少しており、第2流体入口74を流れる流体の流量が制限されるようになっている。
【0103】
即ち、本実施形態の流量調整弁10では、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40が動作すると、弁体44A側では流量が増加する方向となり、第2弁体44C側では流量が制限される方向となり、弁体44A側と第2弁体44C側とでは動作が逆となる。
【0104】
[第4の実施形態]
次に、
図13を用いて、本発明の第4の実施形態に係る流量調整弁10について説明する。なお、本実施形態は第2の実施形態の変形例であり、第2の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0105】
図13に示すように、本実施形態の流量調整弁10では、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60とアーム44Bとの接続部位と、第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とアーム44Bとの接続部位が、アーム44Bの長手方向にズレている。より具体的には、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60とアーム44Bとの接続部位の矢印D方向側に、第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とアーム44Bとの接続部位が位置している。
【0106】
このように、第1アクチュエータ38側の第1脊柱60とアーム44Bとの接続部位の矢印D方向側に、第2アクチュエータ40側の第2脊柱61とアーム44Bとの接続部位が位置していると、第1脊柱60と第2脊柱61とを互いに向かい合う方向に移動させた際に、アーム44Bの長手方向中間部を中心として可動弁部材44が矢印CW方向に回転する。
【0107】
このため、本実施形態の流量調整弁10は、第1アクチュエータ38、及び第2アクチュエータ40を動作させると、可動弁部材44が矢印U方向に移動すると共に、矢印CW方向に回転するので、第2の実施形態の流量調整弁10に比較して、第1弁体44A、及び第2弁体44Cの移動量を増やすことができる。言い換えれば、第2の実施形態で説明した矢印U方向の移動量に、第1の実施形態で説明した矢印CW方向の移動量が追加されるので、第2の実施形態の流量調整弁10に比較して、第1弁体44A、及び第2弁体44Cの移動量を増やすことができる。
これにより、本実施形態の流量調整弁10は、第2の実施形態の流量調整弁10に比較して、流量調整レンジを拡大することができる。
【0108】
[第5の実施形態]
次に、
図14を用いて、本発明の第5の実施形態に係る流量調整弁10について説明する。なお、本実施形態は第3の実施形態の変形例であり、第3の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0109】
第3の実施形態の流量調整弁10の可動弁部材44は、矢印U方向側に第1弁体44Aが設けられ、矢印D方向側に第2弁体44Cが設けられていたが、
図14に示すように、流量調整弁10は、第2弁体44Cが設けられておらず、矢印U方向側のみで流量調整を行う構成となっている。
【0110】
なお、図示を省略するが、流量調整弁10は、矢印D方向側の第2弁体44Cのみが設けられる可動弁部材44を用い、矢印D方向側のみで流量調整を行う構成としてもよい。
【0111】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0112】
上記実施形態では、第1電極30と第2電極32との間に電流を流して第1アクチュエータ38を動作させ、第3電極34と第4電極36との間に電流を流して第2アクチュエータ40を動作させたが、本発明はこれに限らず、第1電極30と第4電極36との間に電流を流すと共に、第2電極32と第3電極34との間に電流を流し、第1アクチュエータ38と第2アクチュエータ40とを同時に動作させることもできる。
この場合、第1脊柱60、及び第2脊柱61にも電流が流れるので第1脊柱60、及び第2脊柱61も発熱し、該発熱により第1脊柱60、及び第2脊柱61も熱膨張する。
【0113】
[付記1]
前記第1脊柱と前記アームとの接続部分、及び前記第2脊柱と前記アームとの接続部分は、前記アームの長手方向に離れている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の流量調整バルブ。
【符号の説明】
【0114】
10 流量調整弁
12 第1プレート
14 第2プレート
16 中間プレート
26 流体入口(第1開口部)
28 流体出口(第2開口部)
38 第1アクチュエータ
38a 第1アクチュエータリブ
38b 第2アクチュエータリブ
40 第2アクチュエータ
42A 弁室部(第1流路開口部)
44 可動弁部材
44A 第1弁体
44B アーム
44C 第2弁体
60 第1脊柱
61 第2脊柱
70 第1流体入口(第1開口部)
72 第1流体出口(第2開口部)
74 第2流体入口(第3開口部)
76 第2流体出口(第4開口部)