(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177066
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】車両用位置判定装置、車両用位置判定システム、位置判定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20231206BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20231206BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20231206BHJP
H04B 17/27 20150101ALI20231206BHJP
H04B 1/3822 20150101ALN20231206BHJP
【FI】
G01S5/14
B60R25/24
E05B49/00 K
H04B17/27
H04B1/3822
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089762
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一朗
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】篠田 卓士
(72)【発明者】
【氏名】中島 和洋
(72)【発明者】
【氏名】神林 良佑
【テーマコード(参考)】
2E250
5J062
5K011
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250DD06
2E250EE10
2E250FF25
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
5J062AA09
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC11
5J062CC18
5J062DD23
5J062EE01
5J062FF01
5K011BA04
5K011JA01
5K011KA14
(57)【要約】
【課題】携帯デバイスの位置を誤判定するおそれを低減可能な車両用位置判定装置、車両用位置判定システム、位置判定方法を提供する。
【解決手段】車両に搭載された複数のUWB通信機はそれぞれスマートECU4からの指示に基づき、携帯デバイスと通信することで、受信強度と、電波の飛行時間に基づく測距値と、を取得してスマートECU4に報告する。スマートECU4には、予め試験によって測定された、距離に応じた受信強度であるモデル値を示すデータが登録されている。スマートECU4は、各UWB通信機から報告される受信強度である強度観測値を、測距値に対応するモデル値と比較することで、UWB通信機6ごとの信頼度を決定する。そして、スマートECU4は信頼度が高いUWB通信機6での測距値を優先的に用いて座標算出処理を実施する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信機(5、6)から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置であって、
前記通信機から前記携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)と、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスからの信号の前記受信強度の観測値である強度観測値を取得する強度取得部(F21)と、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、前記携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得する測距値取得部(F22)と、
前記通信機から取得した前記強度観測値を同一の前記通信機から取得した前記測距値と対応づけられている前記モデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、前記通信機ごとに実施する信頼度評価部(F4)と、
前記信頼度が所定条件を充足する前記通信機を優先的に用いて前記携帯デバイスの位置を判定する位置判定部(F3)と、を備える車両用位置判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用位置判定装置であって、
前記信頼度評価部は、観測されている前記測距値に対応する前記モデル値と前記強度観測値との差が大きいほど前記信頼度を低く設定する車両用位置判定装置。
【請求項3】
車室内に配置された前記通信機である少なくとも1つの室内機(6β)、及び、前記車両の外面部に配置されている前記通信機である複数の室外機(6α)のそれぞれと接続されて使用される、請求項1又は2に記載の車両用位置判定装置であって、
前記信頼度が所定値以上である前記通信機が前記室内機のみである場合には、前記携帯デバイスは車室内に存在すると判定する車両用位置判定装置。
【請求項4】
車室内に配置された前記通信機である少なくとも1つの室内機(6β)、及び、前記車両の外面部に配置されている前記通信機である複数の室外機(6α)のそれぞれと接続されて使用される、請求項1又は2に記載の車両用位置判定装置であって、
前記信頼度が所定値以上である前記通信機が前記室外機のみである場合には、前記携帯デバイスは車外に存在すると判定する車両用位置判定装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両用位置判定装置であって、
前記測距値を前記強度観測値と前記モデル値との差に応じて補正する補正部(F7)を備え、
前記位置判定部は、前記補正部にて補正された前記測距値を用いて、前記携帯デバイスの位置を判定する車両用位置判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用位置判定装置であって、
前記補正部は、前記信頼度が所定値未満の前記通信機の前記測距値に関しては前記差に基づいて補正する一方、前記信頼度が所定値以上の前記通信機の前記測距値は補正しないように構成されている車両用位置判定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用位置判定装置であって、
前記補正部は、
前記強度観測値が前記モデル値よりも所定値以上小さい前記通信機の前記測距値は、前記差に応じた量だけ小さく補正し、
前記強度観測値と前記モデル値よりも大きい前記通信機の前記測距値は補正しない、車両用位置判定装置。
【請求項8】
複数の通信機(6)から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置であって、
前記通信機から前記携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)と、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスからの信号の前記受信強度の観測値である強度観測値を取得する強度取得部(F21)と、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、前記携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得する測距値取得部(F22)と、
前記通信機ごとの前記測距値に基づいて、前記携帯デバイスの位置を判定する位置判定部(F3)と、を備え、
前記位置判定部は、前記通信機ごとの前記測距値に対応する前記モデル値と実際の前記強度観測値との差に基づいて、前記携帯デバイスの座標算出処理に使用する前記通信機を取捨選択する車両用位置判定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用位置判定装置であって、
前記位置判定部は、前記測距値に応じた前記モデル値と前記強度観測値との差が所定値以上となっている前記通信機は前記座標算出処理に使用しない、車両用位置判定装置。
【請求項10】
複数の通信機(5,6)と、
複数の前記通信機から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置と、を含む車両用位置判定システムであって、
複数の前記通信機はそれぞれ、
前記携帯デバイスに向けて応答要求信号を送信してから前記携帯デバイスからの応答信号を受信するまでの時間に応じて定まる、前記携帯デバイスまでの距離を示す測距値を算出することと、
前記測距値及び前記携帯デバイスから送信された信号の受信強度である強度観測値を前記車両用位置判定装置に送信することと、を実施するように構成されており、
前記車両用位置判定装置は、前記通信機から前記携帯デバイスまでの距離に応じた前記受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)を備えてあって、かつ、
各前記通信機から前記測距値と前記強度観測値とを取得することと、
前記通信機から取得した前記強度観測値を同一の前記通信機から取得した前記測距値と対応づけられている前記モデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、前記通信機ごとに実施することと、
前記信頼度が所定条件を充足する前記通信機を優先的に用いて前記携帯デバイスの位置を判定することと、を実施するように構成されている車両用位置判定システム。
【請求項11】
複数の通信機(5、6)が搭載された車両で使用される車両用位置判定装置が実施する位置判定方法であって、
複数の前記通信機のそれぞれから、ユーザによって携帯される携帯デバイス(2)からの信号の受信強度の観測値である強度観測値を取得することと、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、前記携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得することと、
前記通信機から前記携帯デバイスまでの距離に応じた前記受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)から、前記測距値に応じた前記モデル値を読み出すことと、
前記通信機から取得した前記強度観測値を同一の前記通信機から取得した前記測距値と対応づけられている前記モデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、前記通信機ごとに実施することと、
前記信頼度が所定条件を充足する前記通信機を優先的に用いて前記携帯デバイスの位置を判定することと、を含む位置判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、携帯デバイスから送信される無線信号の車載通信機での受信状況に基づいて、携帯デバイスの位置を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-2には、車両に搭載されている複数の通信機が携帯デバイスと無線通信することによって、各通信機から携帯デバイスまでの距離を算出し、それら複数の測距値を用いて車両に対する携帯デバイスの位置を判定する構成が開示されている。なお、特許文献1に開示の構成では、通信機と携帯デバイスは、互いにUWB(Ultra Wide Band)通信可能に構成されている。特許文献1において通信機から携帯デバイスまでの距離は、UWB通信で用いられるインパルス信号を通信機送信してから携帯機からの応答信号を受信するまでの時間であるラウンドトリップ時間に基づいて算出される。
【0003】
特許文献3には、複数の受信機における発信機からの信号の受信強度をもとに各受信機から発信機までの距離を算出し、対象物の位置座標を算出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-26996号公報
【特許文献2】特開2020-122727号公報
【特許文献3】特開2021-85660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両のボディは金属製であることが多い。このような車室内及び車両周辺においては、通信機の周りに遮蔽物(例えば金属板)が無い自由空間に比べて受信強度と距離の相関性が低くなる。そのため、特許文献3に開示されているような、受信強度を距離に変換した上で携帯デバイスの位置座標を算出する構成では誤判定が起こりやすい。携帯デバイスの位置を誤判定することを抑制するため、又は、その他の観点から、携帯デバイスの測位演算には、通信機-携帯デバイス間の電波の飛行時間(ToF:Time of Flight)をもとに算出した距離である測距値を用いることが好ましい。
【0006】
しかしながら、携帯デバイスから送信された信号は、車両のボディを構成する金属パネルを回り込んで通信機で受信されることも起こりうる。当然、回り込みによって送受信された無線信号の伝播経路は、実際のデバイス間距離よりも長くなる。故に、ToFを利用した測距値であっても、迂回による測距誤りが生じうる。特に、携帯デバイスが、ボディを構成する金属板を挟んで通信機の反対側となる位置に配置されている場合、上記回り込みによる位置の誤判定は生じやすくなる。なお、上記のデバイス間距離とは、通信機から携帯デバイスまでの直線距離を指す。
【0007】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、携帯デバイスの位置を誤判定するおそれを低減可能な車両用位置判定装置、車両用位置判定システム、位置判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される第1の車両用位置判定装置は、複数の通信機(5、6)から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置であって、通信機から携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)と、複数の通信機のそれぞれから、携帯デバイスからの信号の受信強度の観測値である強度観測値を取得する強度取得部(F21)と、複数の通信機のそれぞれから、携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得する測距値取得部(F22)と、通信機から取得した強度観測値を同一の通信機から取得した測距値と対応づけられているモデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、通信機ごとに実施する信頼度評価部(F4)と、信頼度が所定条件を充足する通信機を優先的に用いて携帯デバイスの位置を判定する位置判定部(F3)と、を備える。
【0009】
回折又は反射によって伝搬する信号は直接的に伝搬する信号に比べて強度が低下する。故に、仮に通信機が携帯デバイスから送信された信号を回折又は反射によって受信している場合、強度観測値とモデル値と間には有意な差が生じることが期待できる。本開示は当該自然法則に着眼して創出されたものであって、上記構成によって算出される信頼度は、通信機が補足している信号が反射波又は回折波である可能性を示すパラメータとして機能する。そして、上記の装置では、信頼度が高い通信機を優先的に用いて携帯デバイスの位置判定を行うため、回折や反射の影響を受けた測距値が位置判定に使用されにくくなり、携帯デバイスの位置を誤判定するおそれを低減できる。
【0010】
また、本開示の第2の車両用位置判定装置は、複数の通信機(6)から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置であって、通信機から携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)と、複数の通信機のそれぞれから、携帯デバイスからの信号の受信強度の観測値である強度観測値を取得する強度取得部(F21)と、複数の通信機のそれぞれから、携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得する測距値取得部(F22)と、通信機ごとの測距値に基づいて、携帯デバイスの位置を判定する位置判定部(F3)と、を備え、位置判定部は、通信機ごとの測距値に対応するモデル値と実際の強度観測値との差に基づいて、携帯デバイスの座標算出処理に使用する通信機を取捨選択する。
【0011】
上記第2の車両用位置判定装置もまた、強度観測値とモデル値の差が大きい通信機は座標算出処理に使用しないように作動しうる。よって、回折や反射の影響を受けた測距値によって携帯デバイスの位置を誤判定するおそれを低減できる。
【0012】
また、本開示の車両用位置判定システムは、複数の通信機(5,6)と、複数の通信機から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置と、を含む車両用位置判定システムであって、複数の通信機はそれぞれ、携帯デバイスに向けて応答要求信号を送信してから携帯デバイスからの応答信号を受信するまでの時間に応じて定まる、携帯デバイスまでの距離を示す測距値を算出することと、測距値及び携帯デバイスから送信された信号の受信強度である強度観測値を車両用位置判定装置に送信することと、を実施するように構成されており、車両用位置判定装置は、通信機から携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)を備えてあって、かつ、各通信機から測距値と強度観測値とを取得することと、通信機から取得した強度観測値を同一の通信機から取得した測距値と対応づけられているモデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、通信機ごとに実施することと、信頼度が所定条件を充足する通信機を優先的に用いて携帯デバイスの位置を判定することと、を実施するように構成されている。
【0013】
上記の車両用位置判定システムは、上記第1の車両用位置判定装置に対応するシステムであって、同様の構成を備える。故に上記の車両用位置判定システムによれば、携帯デバイスの位置を誤判定するおそれを低減可能となる。
【0014】
本開示の位置判定方法は、複数の通信機(5、6)が搭載された車両で使用される車両用位置判定装置が実施する位置判定方法であって、複数の通信機のそれぞれから、ユーザによって携帯される携帯デバイス(2)からの信号の受信強度の観測値である強度観測値を取得することと、複数の通信機のそれぞれから、携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得することと、通信機から携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)から、測距値に応じたモデル値を読み出すことと、通信機から取得した強度観測値を同一の通信機から取得した測距値と対応づけられているモデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、通信機ごとに実施することと、信頼度が所定条件を充足する通信機を優先的に用いて携帯デバイスの位置を判定することと、を含む。
【0015】
上記の位置判定方法は、上記第1の車両用位置判定装置に対応する方法であって、同様の特徴を備える。故に上記の位置判定方法によれば、携帯デバイスの位置を誤判定するおそれを低減可能となる。
【0016】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】アンカーとしてのUWB通信機の搭載位置の一例を示す図である。
【
図3】UWB通信機の構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】ラウンドトリップ時間を説明するための図である。
【
図5】探索処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】信頼度評価処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】位置判定関連処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】滞在エリア判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】信頼度評価処理の他の例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】距離に応じて適用される強度閾値の一例を示す図である。
【
図13】強度低下量に対応する補正量の一例を示す図である。
【
図14】スマートECUの他の構成例を示す図である。
【
図15】アンカー搭載位置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。以下の説明における前後、左右、上下の各方向は、基準方向に関する注釈がない場合には(つまり基本的には)、車両Hvを基準として規定される。以下の説明は、車両Hvが使用される地域の法規及び慣習に適合するように適宜変更して実施可能である。
【0019】
<前置き>
図1は、車両用電子キーシステムの概略的な構成の一例を示す図である。
図1に示すように車両用電子キーシステムは、車載システム1と、携帯デバイス2とを含む。車載システム1は、車両Hvに搭載されているシステムである。車載システム1が車両用位置判定システムに相当する。携帯デバイス2は、車両Hvのユーザによって携帯されるデバイスである。
【0020】
車載システム1と携帯デバイス2は、所定の周波数帯の電波を用いて双方向に無線通信を実施するための構成を有している。ここでは一例として車載システム1と携帯デバイス2は、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信を実施可能に構成されている。すなわち、車載システム1と携帯デバイス2は、超広帯域(UWB :Ultra Wide Band)通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ns)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。
【0021】
なお、UWB通信では、IEEE802.15.4zで開示されているように複数のチャネルが利用されうる。例えば車載システム1は、UWB通信の第5チャネルを用いて携帯デバイス2と通信する。もちろん、車載システム1は、第3チャネルや第9チャネルを用いて携帯デバイス2と通信可能に構成されていても良い。第3チャネルとは、4243MHzから4742Mhzまでの周波数帯(中心周波数は4492MHz)を意味する。第5チャネルとは、6489.6MHz(約6.5GHz)±250MHz帯の電波、つまり6240MHzから6739MHzまでの周波数を指す。第9チャネルとは、7738MHzから8237Mhzまでの周波数帯(中心周波数は7987.2MHz)を意味する。なお、IEEE(登録商標)は、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略であって、米国電気電子学会を意味する。
【0022】
また、UWB-IR通信の変調方式としては、オンオフ変調(OOK:On Off Keying)方式やパルス位置変調(PPM:Pulse Position Modulation)方式、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)など、多様なものを採用可能である。なお、オンオフ変調方式はインパルス信号の存在/欠如によって情報(例えば0と1)を表現する方式である。パルス位置変調方式はパルスの発生位置で変調を行う方式である。パルス幅変調方式はパルス幅によって情報を表現する方式である。ここでは一例として車載システム1と携帯デバイス2とのUWB通信はOOK方式によって実施される。
【0023】
UWB通信によるデータ送信は、複数のインパルス信号を用いて実現される。以降ではUWB通信でやり取りされるデータ信号をUWB信号と称する。すなわち、後述する応答要求信号や応答信号といったUWB信号は、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列を意味する。当該UWB信号は、複数のインパルスを含むため、パルス系列信号と呼ぶこともできる。
【0024】
また、車載システム1と携帯デバイス2はそれぞれ、UWB通信以外の第2の近距離通信手段として、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格に準拠した無線通信(以降、BLE通信)を実施可能に構成されている。ここでの近距離通信とは、実質的な通信可能距離が例えば10m又は100m程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した通信を指す。
【0025】
<携帯デバイス2について>
携帯デバイス2は、UWB通信機能及びBLE通信機能を備えた、携帯可能かつ汎用的な情報処理端末である。携帯デバイス2としては、例えば、スマートフォンや、ウェアラブルデバイス等など、多様な通信端末を採用することができる。ウェアラブルデバイスは、ユーザの身体に装着されて使用されるデバイスであって、リストバンド型、腕時計型、指輪型、メガネ型、イヤホン型など、多様な形状のものを採用可能である。
【0026】
携帯デバイス2は、UWB通信部、BLE通信部、及び、デバイス制御部を備える。UWB通信部は、UWB通信を実施するための通信モジュールである。BLE通信部は、BLE通信を実施するための通信モジュールである。
【0027】
デバイス制御部は、例えばプロセッサ、メモリ、ストレージ等を備えた、コンピュータとして構成されている。ストレージには、デバイスID及び、鍵コードが保存されている。デバイスIDは、携帯デバイス2の識別番号である。デバイスIDとしては例えばデバイスアドレスや、UUID(Universally Unique Identifier)などを採用可能である。ここでの鍵コードとは、後述する認証処理で使用されるデータである。鍵コードは、車両Hvにアクセスしようとしている人物がユーザであること、つまり、車両Hvにアクセスしようとしている人物の正当性を証明するためのデータである。鍵コードは暗号キーなどとも呼ばれうる。デバイスID及び鍵コードは、携帯デバイス2毎に異なる。デバイス制御部は、車載システム1との通信接続、及び、認証に係る処理を実施する。
【0028】
本実施形態の携帯デバイス2は、一例としてBLE通信部からアドバタイズ信号を定期的に送信する。アドバタイズ信号は、携帯デバイス2の存在を周囲に通知するための信号であって、送信元情報を含む。また携帯デバイス2は、車載システム1とBLE通信のリンク(コネクション)が確立したことに基づいて、車載システム1とBLEによるデータ通信を実行する。
【0029】
例えば携帯デバイス2は、車載システム1とBLE通信リンクが確立したことに基づいて、認証のための無線通信を実施する。無線認証処理は例えばチャレンジ-レスポンス方式によって実施されうる。その場合、携帯デバイス2は、BLE通信部がチャレンジコードを受信すると、当該チャレンジコードと鍵コードをもとに所定の手順/関数を用いてレスポンスコードを生成し、車載システム1に返送する。
【0030】
また、携帯デバイス2は、UWB通信部が車載システム1から送信されてきた応答要求信号を受信した場合には、応答信号を返送する。より好適な態様として、携帯デバイス2は、応答信号として、送信元情報(例えばデバイスID)を含むUWB信号を返送する。
【0031】
尚、携帯デバイス2は、車両Hvの電子キーとしての専用デバイスであるスマートキーであってもよい。スマートキーは、車両Hvの購入時に、車両Hvとともにオーナに譲渡されるデバイスである。スマートキーは車両Hvの付属物の1つと解することができる。スマートキーは、扁平な直方体型や、扁平な楕円体型(いわゆるフォブタイプ)、カード型など、多様な形状を採用可能である。スマートキーは、車両用携帯機、キーフォブ、キーカード、アクセスキーなどと呼ばれうる。
【0032】
<車載システム1の構成について>
車載システム1は、
図1に示すように、スマートECU4、BLE通信機5、及び複数のUWB通信機6を備える。また、車載システム1は、ドアセンサ11、スタートスイッチ12、電源ECU13、及びボディECU14を備える。部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であって、電子制御装置を意味する。
【0033】
スマートECU4は、BLE通信機5及び複数のUWB通信機6のそれぞれと専用の信号線で接続されている。また、スマートECU4は、ドアセンサ11や、スタートスイッチ12、電源ECU13、ボディECU14などと、車両内ネットワークNwを介して相互通信可能に接続されている。車両内ネットワークNwは、車両Hv内に構築されている通信ネットワークである。車両内ネットワークNwの規格としては、多様な規格を採用可能である。本開示に示す装置同士の接続形態は一例であって、具体的な装置同士の接続態様は適宜変更可能である。
【0034】
スマートECU4は、複数のUWB通信機6のそれぞれでの携帯デバイス2からの信号の受信状況に基づいて、車両Hvに対するデバイス位置を判定し、その判定結果に応じた車両制御を実施するECUである。スマートECU4が車両用位置判定装置に相当する。スマートECU4は、携帯デバイス2から送信されてくるBLE信号又はUWB信号を受信することにより、携帯デバイス2が車外の所定範囲内に存在することを検出し、デバイス位置の判定や認証にかかるシーケンスを実行する。デバイス位置の判定方法等、スマートECU4が備える機能の詳細については別途後述する。
【0035】
当該スマートECU4は、コンピュータを用いて実現されている。すなわち、スマートECU4は、プロセッサ41、メモリ42、ストレージ43、I/O44、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。プロセッサ41はCPU(Central Processing Unit)などの演算コアである。メモリ42は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリである。プロセッサ41は、メモリ42へのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現するための種々の処理を実行する。
【0036】
ストレージ43は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ43には、プロセッサ41によって実行される制御プログラムが格納されている。制御プログラムは、携帯デバイス2の位置を判定するプログラムである位置判定プログラムを含む。プロセッサ41が位置判定プログラムを実行することは、当該制御プログラムに対応する位置判定方法が実行されることに相当する。I/O44は、他装置と通信するための回路モジュールである。
【0037】
ストレージ43には、携帯デバイス2毎のデバイスIDが鍵コードと対応付けられて保存されている。スマートECU4は受信信号に含まれるデバイスIDをもとに、通信相手が携帯デバイス2か未登録のデバイスかを識別可能である。また、ストレージ43には、各UWB通信機6の車両Hvにおける搭載位置を示す通信機設定データが格納されている。各UWB通信機6の搭載位置は、例えば、車両Hvの任意の位置を中心とし、車両Hvの幅方向及び前後方向の両方に平行な2次元座標系である車両座標系上の点として表現されうる。車両座標系を形成するX軸は車幅方向に平行に設定し、Y軸は車両の前後方向に平行に設定可能である。座標系の中心としては、例えば、車体の中心、スマートECU4の取り付け位置など任意の箇所を採用可能である。
【0038】
BLE通信機5は、BLE通信を実施するための通信モジュールである。BLE通信機5は、例えばフロントガラスの上端部などに配置されている。なお、BLE通信機5は、スマートECU4に内蔵されていても良い。車両Hvには複数のBLE通信機5が設けられていてもよい。
【0039】
BLE通信機5は、携帯デバイス2から受信したデータや、携帯デバイス2との通信状況に関するデータをスマートECU4に随時送信する。通信状況に関するデータには、例えば通信接続している携帯デバイス2のデバイスIDや、携帯デバイス2からの信号の受信強度(Received Signal Strength Indicator/Indication)などが含まれる。
【0040】
UWB通信機6は、UWB通信を実施するための通信モジュールである。本実施形態の車載システム1は、
図2に示すように、UWB通信機6として、UWB通信機6a~6d、6p~6rを備える。各UWB通信機6の構成や性能は実質的に同一に構成されている。UWB通信機6a~6dは、車両Hvの外面部に配置されたUWB通信機6である。例えばUWB通信機6aは、フロントバンパの右コーナ部に配置されており、UWB通信機6bはフロントバンパの左コーナ部に配置されている。UWB通信機6cは、リアバンパの右コーナ部に配置されており、UWB通信機6dはリアバンパの左コーナ部に配置されている。
【0041】
本開示では、UWB通信機6a~6dといった、車両Hvの外面部に配置されているUWB通信機6を室外機6αとも記載する。外面部とは、車外に面した部分を指し、側面部や前端部、後端部、屋根部を含む。例えば各ピラーの外側面や、ドアパネル、ドアハンドル、バンパ部、サイドシル、サイドミラー、ルーフの縁部、フロントグリルなどが外面部に含まれる。
【0042】
また、UWB通信機6p~6rは、車室内に配置されたUWB通信機6である。UWB通信機6pは、例えばフロントガラスの上端部や、車内天井部の中央部などに配置されている。UWB通信機6qは、車内天井部の右側縁部付近に配置されており、UWB通信機6rは、車内天井部の左側縁部付近に配置されている。
【0043】
各UWB通信機6の動作は、スマートECU4によって制御される。各UWB通信機6は、駆動中、携帯デバイス2からの信号の受信状況を示すデータをスマートECU4に送信する。受信状況には、受信の有無、受信強度、測距値が含まれる。当該UWB通信機6は、主としてデバイス位置の判定のための通信機であって、アンカーあるいは基準局などとも称される。UWB通信機6の詳細は別途後述する。
【0044】
ドアセンサ11は、ユーザが車両Hvのドアを開錠及び施錠するためのセンサである。ドアセンサ11は、タッチセンサであってもよいし、プッシュ式のスイッチであってもよい。ドアセンサ11は、各ドアに設けられている外側ドアハンドルに設けられている。外側ドアハンドルとは、ドアの外側面に設けられた、ドアを開閉するための把持部材を指す。ドアセンサ11は、ユーザにタッチ/押下されたことを示す電気信号をスマートECU4に出力する。ドアセンサ11は、ドアボタンと読み替え可能である。
【0045】
スタートスイッチ12は、ユーザが走行用電源をオン/オフを切り替えるためのプッシュスイッチである。走行用電源は、車両Hvが走行するための電源であって、車両がエンジン車である場合にはイグニッション電源を指す。車両Hvが電動車である場合、走行用電源とはシステムメインリレーを指す。スタートスイッチ12は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号をスマートECU4に出力する。
【0046】
電源ECU13は、車両Hvに搭載された走行用電源のオンオフ状態を制御するECUである。例えば電源ECU13は、例えばスマートECU4からの要求信号に基づき、走行用電源をオフからオンに切り替える。尚、車両Hvがエンジン車である場合には、電源ECU13はスマートECU4からの指示信号に基づきエンジンを始動させる。
【0047】
ボディECU14は、スマートECU4やユーザからの要求に基づいて、ドアロックモータや車載照明設備を制御するECUである。ドアロックモータは、各ドアのロック機構の状態(施錠、開錠)を切り替えるためのモータである。車載照明装置は、ヘッドライトや、車内灯、ウェルカムランプなどである。ボディECU14は、例えばスマートECU4からの要求に基づいて、車両Hvの各ドアに設けられたドアロックモータに所定の制御信号を出力することで各ドアのロック機構を開錠状態から施錠状態に切り替えたり、その逆の制御を実施する。
【0048】
なお、スマートECU4には、上述したセンサ/スイッチ/ECU以外にも、多様なデバイスが直接的に又は間接的に接続される。例えばスマートECU4には、カーテシスイッチや、着座センサ、ブレーキセンサ、シフトポジションセンサなどの出力信号が入力されうる。カーテシスイッチは、ドアの開閉状態を示す信号を出力するスイッチである。着座センサは着座状態を示す信号を出力するセンサであって、例えば座面に配置された圧力センサなどを用いて実現されている。ブレーキセンサはブレーキペダルの踏み込みの有無を示す信号を出力するセンサである。シフトポジションセンサは現在のシフトポジションを示す信号を出力するセンサである。
【0049】
<UWB通信機の構成について>
ここでは各UWB通信機6の構成について説明する。複数のUWB通信機6のそれぞれは、
図3に示すように、アンテナ61、送信部62、受信部63、コントローラ64、及びスイッチ65を備える。アンテナ61は、UWB信号を送受信するためのアンテナである。アンテナ61は例えばUWBの第5チャネルで励振するように構成されている。アンテナ61は、スイッチ65を介して送信部62や受信部63と電気的に接続されている。
【0050】
送信部62は、スマートECU4から入力されたベースバンド信号に対応するUWB信号を生成し、このUWB信号をアンテナ61から電波として放射させる構成である。UWB信号は、インパルス信号の集合/系列である。送信部62は変調回路621など、ベースバンド信号を電気的に処理する回路を含む。また、送信部62は、送信データに対応する電気的なインパルス信号をアンテナ61へ出力する。
【0051】
受信部63は、携帯デバイス2から送信されてくるUWB信号を受信し、電気的に処理する回路モジュールである。受信部63は、復調回路631及び受信強度検出回路632などを含む。受信強度検出回路632は、逐次、受信強度を示す信号をコントローラ64に出力する。
【0052】
コントローラ64は、UWB通信機6の動作を制御する構成である。コントローラ64はたとえばIC(Integrated Circuit)を用いて実現されている。コントローラ64は、受信データをスマートECU4に出力したり、スマートECU4から入力された送信データを送信部62に出力したりする。コントローラ64はスイッチ65の接続状態を切り替える。
【0053】
また、コントローラ64は、RTT計測部641と、報告部642とを含む。RTT計測部641は、送信部62がファストパルス信号を送信してから、受信部63がファストパルスを受信するまでの経過時間であるラウンドトリップ時間(RTT:Round Trip Time)を計測するタイマである。ファストパルスは、送信/受信データを構成する複数のインパルス信号のうち、先頭に位置するインパルス信号である。インパルス信号の送信タイミングは、送信部62から通知されても良いし、コントローラ64が送信部62からアンテナ61に向かう信号線の電圧レベルを監視することで特定してもよい。RTT計測部641は、送信部62によるデータ送信後において、初めて受信強度が所定の検出閾値を超過したタイミングを、ファストパルスの受信タイミングとして採用する。他の態様としてRTT計測部641は、送信データの末尾パルスが送信されてから受信データの末尾パルスを受信するまでの時間をラウンドトリップ時間として計測してもよい。ラウンドトリップ時間の計測方法としては多様な方法が採用可能である。
【0054】
なお、
図4に示すように、ラウンドトリップ時間は、往復分の飛行時間(Tf×2)に、応答要求信号の長さ(Trq)と、携帯デバイス2での応答処理時間(Tn)を加えた時間に相当する。図中のTfは、片道分の飛行時間を示している。図中のTrqは、応答要求信号の長さを示しており、Trsは応答信号の長さを示している。応答処理時間とは、受信信号に対応する応答信号の生成及び出力に要する時間である。片道分の飛行時間は、UWB通信機6から携帯デバイス2までの距離に対応する。当該RTT計測部641は、図示しないクロック発振器から入力されるクロック信号を計数することによって、送信部62がインパルス信号を送信してからの経過時間を測定する。
【0055】
報告部642は、RTT計測部641によって計測されたラウンドトリップ時間に基づいて、測距値を生成する。測距値は、携帯デバイス2までの距離を示すパラメータである。例えば報告部642は、計測されたラウンドトリップ時間から、予め設計されている応答処理時間の想定値と、応答要求信号の長さを減算することにより、往復飛行時間を算出する。そして、往復飛行時間を2で割った値に、電波の飛行時間を乗算した値を測距値として採用する。
【0056】
もちろん、ラウンドトリップ時間から測距値に変換する演算式は、上記例に限らない。ラウンドトリップ時間から測距値への変換処理には、上述した以外の補正処理、例えば受信部63の応答遅延時間などを補正するための処理が含まれていても良い。また、本実施形態では、測距値は距離の次元で表現されるが、他の態様においては、測距値は時間の次元のパラメータであってもよい。例えば測距値は、片道分又は往復分の飛行時間(ToF:Time of Flight)であってもよい。測距値は、ToF関連値と呼ぶこともできる。またラウンドトリップ時間そのものが測距値として使用されても良い。
【0057】
報告部642は、測距値を応答信号の受信強度と対応付けてスマートECU4に報告する構成である。ラウンドトリップ時間とともに報告する受信強度は、ファストパルスのピーク値であってもよいし、応答信号を構成する複数のインパルスごとのピーク値の平均値或いは中央値であってもよい。
【0058】
以上の構成を含むコントローラ64は、スマートECU4からの指示に基づき、起動し探索処理を実施する。1つの探索処理は、
図5に示すように、応答要求信号を送信する工程(S11)と、応答信号の受信を待機する工程(S12)と、受信結果を報告する工程(S13)と、を含む。応答信号を受信できた場合の報告データには、上記の測距値と受信強度とが含まれる。また、応答信号を受信できた場合の報告データには、応答を返してきた携帯デバイス2のデバイスIDが含まれていてもよい。応答要求信号を送信してから所定の応答待機時間経過しても応答信号を受信できなかった場合、報告部642は、携帯デバイス2を発見できなかったことを示すコードを報告データとしてスマートECU4に返送する。上記の報告データは探索結果データと言い換えることができる。
【0059】
なお、送信部62、受信部63、及びスイッチ65の一部又は全部は、コントローラ64としてのICに内蔵されていても良い。つまり、UWB通信機6は、1つのアンテナと、種々の回路機能を有する1つの専用ICとを用いて実現されていても良い。また、UWB通信機6は、送信用のアンテナと受信用のアンテナが別々に設けられていても良い。
【0060】
<スマートECU4の機能について>
スマートECU4は、ストレージ43に保存されているプログラムを実行することにより、
図6に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、スマートECU4は機能部として、車両情報取得部F1、通信機制御部F2、位置判定部F3、信頼度評価部F4、認証部F5、及び車両制御部F6を備える。また、スマートECU4は、強度モデル記憶部M1を備える。
【0061】
強度モデル記憶部M1は、距離強度マップが保存されている記憶媒体である。距離強度マップは、
図7に示すように、UWB通信機6から携帯デバイス2までの距離に応じた受信強度のモデル値を示すデータである。本開示のモデル値とは、UWB通信機6が携帯デバイス2からの直接波を受信した場合の受信強度の見本値(標準値)に相当する。直接波は、反射や回折の影響を受けていない信号を指す。距離強度マップは、UWB通信機6と携帯デバイス2までの間に何もない環境(いわゆる自由空間)での試験結果をもとに設計されている。このようなモデル値は、UWB通信機6が携帯デバイス2からの直接波を受信した場合に、デバイス間距離に応じた受信強度として最も妥当性がある(観測されやすい)値を指す。デバイス間距離とは、UWB通信機6と携帯デバイス2との距離である。なお、距離強度マップは、距離に応じた受信強度のモデル値を示すデータであればよく、テーブルやマップの他、関数、プログラムコードとして表現されていてもよい。1つの距離に対応するモデル値は、複数の測定結果の平均値又は中央値を採用可能である。
【0062】
当該強度モデル記憶部M1は、ストレージ43が備える記憶領域の一部を用いて実現されている。尚、強度モデル記憶部M1は、ストレージ43とは物理的に独立した不揮発性の記憶媒体を用いて実現されていても良い。強度モデル記憶部M1はプロセッサ41によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。
【0063】
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやECU、スイッチなどから、車両Hvの状態、及び、車両Hvに対するユーザの操作を示す種々の車両情報を取得する。車両情報には、例えば走行用電源の状態(オン/オフ)や、各ドアの開閉状態、各ドアの施錠/開錠状態、ドアセンサ11及びスタートスイッチ12へのユーザの操作状態、シフトポジション、ブレーキペダルの踏み込み状態等が含まれる。尚、ドアセンサ11やスタートスイッチ12からの電気信号を取得することは、これらの操作部材に対するユーザ操作を検出することに相当する。車両情報取得部F1は、1つの局面においてドアセンサ11のタッチや、ドアの開閉、スタートスイッチ12の押下などといった、車両Hvに対するユーザの操作を検出する構成に相当する。
【0064】
例えば車両情報取得部F1は、車両内ネットワークNwから入力される種々のデータ/信号に基づいて、開錠操作や、施錠操作、始動操作などを検出する。開錠操作とは、車両Hvを開錠するためのユーザ操作である。例えば車両Hvが施錠された状態におけるドアセンサ11へのタッチ操作が開錠操作に該当しうる。施錠操作とは、車両Hvを施錠するための操作である。例えば車両Hvが開錠されてあって、かつ、走行用電源がオフに設定された状態におけるドアセンサ11へのタッチ操作が施錠操作に該当しうる。始動操作とは、走行用電源をオフからオンに切り替えるための操作である。例えばブレーキペダルが踏み込まれた状態でのスタートスイッチ12の押下が始動操作に該当しうる。なお、車載システム1は、ドア下に検知エリアを形成する赤外線センサの出力信号に基づいて、ユーザの開錠操作を検出するように構成されていても良い。その場合、車両情報取得部F1は、上記赤外線センサから、ユーザが検知エリアに足をかざしたことを示す信号が入力された場合に、施錠操作あるいは開錠操作が行われたと判定しても良い。
【0065】
通信機制御部F2は、BLE通信機5や、UWB通信機6の動作状態を制御する構成である。通信機制御部F2は、位置判定部F3や認証部F5からの要求に基づいて、要求された通信機を節電状態から通常状態に移行させたり、通常状態から節電状態に切り替えたりする。ここでの通常状態とは、携帯デバイス2と通信可能な状態である。また節電状態とは、通常状態に比べて消費電力を低減可能な状態であって、実態的には少なくとも一部の機能が停止している状態を指す。節電状態は、電源がオフに設定されている状態であってもよい。例えば通信機制御部F2は、各UWB通信機6に関しては、走行用電源がオフの間も探索処理実行のために間欠的に通常状態に復帰させる。また通信機制御部F2は、BLE通信機5に関しては、走行用電源がオフである場合、UWB通信機6にて携帯デバイス2からの応答を受信した場合や、認証部F5からの要求があったことに基づいて、通常状態に復帰させる。通信機制御部F2は、走行用電源がオンである間は、各通信機を通常状態を維持させても良い。
【0066】
このような通信機制御部F2は、BLE通信機5やUWB通信機6から、携帯デバイス2との通信状況を示すデータや受信データを取得してメモリ42に保存する処理を実施する。通信状況を示すデータには、探索結果データが含まれる。メモリ42に保存したデータは、位置判定部F3や認証部F5によって適宜参照される。通信機制御部F2が備える強度取得部F21は、各UWB通信機6から受信強度を取得してメモリ42に保存する構成であり、測距値取得部F22は、各UWB通信機6から測距値を取得してメモリ42に保存する構成である。
【0067】
位置判定部F3は、通信機制御部F2及び各UWB通信機6と協働して、携帯デバイス2の位置を判定するモジュールである。位置判定部F3は、デバイス位置として、車両座標系における携帯デバイス2の位置座標であるデバイス位置座標を算出する機能と、携帯デバイス2が存在するエリア(区分)であるデバイス滞在エリアを判定する機能とを備える。位置判定部F3は、種々のセンサからの信号にもとづき、車両Hvの使用にかかる所定のユーザ操作が実施されたことを検知した場合に、各UWB通信機6に順に探索処理を実施させうる。また、位置判定部F3は、車両Hvが駐車されている間、各UWB通信機6に順番に探索処理を実施させる。
【0068】
本開示では、複数のUWB通信機6に順に探索処理を実施させる一連の処理を巡回探索処理と称する。駐車中、位置判定部F3としてのスマートECU4は、所定の休止時間ごとに巡回探索処理を実行させる。休止時間は100ミリ秒や200ミリ秒、500ミリ秒などである。定期的に巡回探索処理を実施することは、各UWB通信機6から応答要求信号を定期的に送信させることに対応する。また、複数のUWB通信機6に順に探索処理を実施させることは、車室内及び車外のUWB通信エリア内に存在する携帯デバイス2を探索することに対応する。
【0069】
なお、駐車中の巡回探索処理では、必ずしもすべてのUWB通信機6に探索処理を実施させる必要はない。例えば複数の室内機6βのうちUWB通信機6qとUWB6rは、巡回探索処理の対象外に設定されていても良い。巡回探索処理で動作させるUWB通信機6の数を絞ることにより、駐車中の消費電力を抑制可能となる。ただし、駐車中の巡回探索処理では、車両Hvに対して何れの方向からユーザが接近しても、当該ユーザの接近を検知可能なように全ての室外機6αに探索処理を実施させることが好ましい。また、開錠操作や施錠操作などのユーザ操作を検知した場合には、巡回探索処理として、すべてのUWB通信機6に探索処理を実施されても良い。
【0070】
位置判定部F3は、次に説明する信頼度評価部F4の評価結果をもとに、デバイス位置座標を算出する処理である座標算出処理に使用するUWB通信機6の組み合わせを変更する。なお、或るUWB通信機6を座標算出処理に使用することは、実態的には、当該UWB通信機6での測距値及び搭載位置座標を座標算出処理に使用することに対応する。例えば、UWB通信機6aを座標算出処理に使用しないことは、UWB通信機6aでの測距値を座標算出処理に使用しないことに相当する。
【0071】
信頼度評価部F4は、UWB通信機6のそれぞれでの携帯デバイス2からの信号の受信状況に基づいて、各UWB通信機6の信頼度を評価する構成である。ここでの信頼度は、UWB通信機6が携帯デバイス2からの直接波を受信できている可能性の高さを示すパラメータである。
【0072】
信頼度評価部F4は、UWB通信機6から報告された受信強度である強度観測値を、距離強度マップに示される距離対応値と比較することによって当該UWB通信機6の信頼度を決定する。距離対応値とは、距離強度マップにおいて、UWB通信機6から報告された測距値と対応付けられている受信強度のモデル値を指す。信頼度評価部F4は、強度観測値と距離対応値との乖離度合い(つまり差)が大きいほど、信頼度を低く評価する。回折(迂回)波や反射波を受信している場合には、直接波を受信している場合に比べて、受信強度が低下するためである。なお、モデル値は、前述の通り、直接波を受信できている場合の受信強度を示す。このような信頼度は、測距値の確からしさを表すパラメータと解することができる。なお、携帯デバイス2ごとに車両Hvに対する相対位置は異なりうるため、同一のUWB通信機6であっても、通信相手、換言すれば、探索対象となる携帯デバイス2ごとに信頼度は異なりうる。
【0073】
ここでは一例として信頼度を0~2の3段階で表す。信頼度の値が大きいほど、信頼度が高いことを示す。信頼度=2は、携帯デバイス2からの直接波を受信できている場合に対応する。信頼度のレベル2は、高(High)と読み替えることができる。信頼度=1は、携帯デバイス2からの直接波を受信できていない可能性があるレベルである。換言すれば、信頼度=1は、回折波或いは反射波に由来する測距値が算出されている可能性が高い場合に対応する。信頼度のレベル1は、低(Low)と読み替えることができる。信頼度=0は、携帯デバイス2からの信号を受信できていない場合に対応する。信頼度のレベル0は、信頼度が不明或いは無い場合に対応する。
【0074】
例えば信頼度評価部F4は、探索処理の結果をUWB通信機6ごとに受けて実施される。仮に車載システム1のUWB通信エリア内に複数の携帯デバイス2が存在する場合には、携帯デバイス2ごとに信頼度の算出が行われる。ここでは説明を簡素化するため、通信相手となる携帯デバイス2は1つとする。また、以降では処理対象とするUWB通信機6を、他のUWB通信機6との区別のため、評価対象機とも称する。信頼度評価処理は例えば
図8に示すようにステップS21~S26を含む。
【0075】
ステップS21は、評価対象機が携帯デバイス2からの応答を受信できたか否かを判定するステップである。探索処理の結果として、評価対象機が携帯デバイス2からの応答を受信できなかった場合には(S21 NO)、当該UWB通信機6の信頼度を0に設定して本フローを終了する(S22)。なお、本実施形態の位置判定部F3は、信頼度が0のUWB通信機6は、座標算出処理に使用しない。座標算出処理に使用しないUWB通信機6をここでは不使用機とも称する。
【0076】
ステップS23は、強度観測値と距離対応値との一致度(DM)を算出するステップである。一致度(DM)は、強度観測値をPob、距離対応値をPmとすると、例えば下記の演算式(1)を用いて算出可能である。信頼度の評価に使用する強度観測値は、最新の観測値であってもよいし、直近5回分又は10回分の観測値の平均値/中央値であってもよい。
DM=1-|Pob-Pm|/Pm ・・・(1)
【0077】
もちろん、式(1)は一例であって、一致度合いの算出方法としては多様な算出方法を援用可能である。一致度合いは、強度観測値と距離対応値との差が反映されたパラメータであって、これらの差が大きいほど小さくなるように設計されていれば良い。上記式の|Pob-Pm|は、強度観測値と距離対応値の差の絶対値を表す。上記式(1)によれば、強度観測値が距離対応値を超過している場合も、強度観測値が距離対応値を下回っている場合と同様に信頼度を低く設定可能となる。リレーアタックを受けている場合には、測距値が十分に大きい値になるとともに、測距値に対して受信強度自体も大きくなることが予見される。ToFベースの測距値を用いてデバイス位置を判定する構成によれば車両Hvの不正使用を抑制する効果が期待できるが、上記判別式を用いて通信機の信頼度を評価する構成によれば、車両Hvのセキュリティをより一層向上させる効果が期待できる。
【0078】
ステップS24は、ステップS23で算出された一致度合い(DM)が所定の判定閾値(Th_H)を超過しているか否かを判定するステップである。一致度合いが判定閾値よりも大きい場合には、評価対象機の信頼度を2に設定する(S25)。一方、一致度合いが判定閾値以下である場合には、評価対象機の信頼度を1に設定する(S26)。以上のようにして設定されるUWB通信機6ごとの信頼度は、携帯デバイス2の座標算出処理に使用される。
【0079】
ところで、通信機制御部F2は、UWB通信機6を用いた携帯デバイス2の探索の結果として、携帯デバイス2が発見された場合に、BLE通信機5を起動し、携帯デバイス2と通信接続させる。当該構成によれば、BLE通信機5を常に受信待機状態で維持する必要はなくなるため、暗電流を抑制可能となる。もちろん、他の態様として位置判定部F3がBLE通信機5は常に携帯デバイス2からのアドバタイズ信号を受信可能な状態に維持させても良い。
【0080】
認証部F5は、BLE通信機5と連携して、通信相手の正当性、つまり通信相手が真に携帯デバイス2であることを確認(換言すれば認証)する処理を実施する。無線による認証処理自体は、チャレンジ-レスポンス方式など多様な方式を用いて実施されればよい。本実施形態の認証部F5は一例として、チャレンジコードと鍵コードを用いたチャレンジ-レスポンス方式で携帯デバイス2(通信相手)を認証する。すなわち、無線認証処理は、チャレンジコードを携帯デバイス2に送信する工程と、チャレンジコードと通信相手に応じた鍵コードを用いて検証コードを生成する工程と、通信相手から返送されてきたレスポンスコードと検証コードを照合する工程とを含む。認証部F5は、自身が生成した検証コードと受信したレスポンスコードが一致していることに基づいて認証成功と判定する。このような認証処理は、携帯デバイス2側で生成されたレスポンスコードと、スマートECU4が保持又は動的に生成した検証コードとを照合する処理を伴うため、照合処理と言い換えることもできる。携帯デバイス2の認証が成功したということは、車両Hvにアクセスしようとしている人物が正規のユーザであると判定することに相当する。
【0081】
認証部F5は、例えば少なくとも1つのUWB通信機6が携帯デバイス2からの応答信号を受信できた場合に、無線認証処理を実施する。もちろん、認証部F5は、携帯デバイス2との通信接続が確立したことに基づいて無線認証処理を実行しても良い。認証部F5は、BLE通信機5と携帯デバイス2とが通信接続している間、所定の周期で無線認証処理を実施するように構成されていても良い。
【0082】
なお、無線認証はセキュアな通信で実行されることが好ましい。BLE通信によればデータを暗号化して通信可能であるとともに周波数ホッピングが行われるため盗聴すること自体に困難性が伴う。そのような事情から本実施形態のスマートECU4は、位置判定はUWB通信で行う一方、認証のための通信はBLE通信で実施する。もちろん、他の態様においては、認証のための通信も、UWB通信で実施するようにスマートECU4は構成されていても良い。無線認証処理もUWB通信で実施する構成においては、BLE通信機5は省略可能である。
【0083】
車両制御部F6は、車両Hvに対するユーザ操作に反応して、位置判定部F3が特定しているデバイス位置に応じた制御/処理を他のECUと連携して実行する。例えば車両制御部F6は、位置判定部F3によって携帯デバイス2が後述する施開錠エリアEAに存在すると判定されており、かつ、ドアセンサ11がユーザによってタッチされたことを検出した場合には、ボディECU14と協働してドアを施錠又は開錠する。また、車両制御部F6は、位置判定部F3にて携帯デバイス2が車室内に存在すると判定されており、かつ、スタートスイッチ12がユーザによって押下されたことを検出した場合、電源ECU13と連携して走行用電源をオフからオンに切り替える。その他、車両制御部F6は、閉じ込め警告処理などを実施する。閉じ込め警告処理は、施錠操作受付時に車室内に携帯デバイス2が残っていることを検知した場合に、所定の警告音等を出力する車両制御である。
【0084】
<位置判定関連処理について>
ここでは
図9及び
図10に示すフローチャートを用いて、スマートECU4が実施する位置判定関連処理について説明する。位置判定関連処理は、例えば車両Hvが駐車されている状態においては定期的に実施される。スマートECU4は、開錠操作や施錠操作などのユーザ操作をトリガとして位置判定関連処理を実行するように構成されていても良い。位置判定関連処理は一例としてステップS31~S35を含む。各ステップはスマートECU4によって実施される。
【0085】
ステップS31は、各UWB通信機6から順番に探索処理を実施させるステップである。ステップS32は、各UWB通信機6から、探索結果データを取得するステップである。ステップS33以降の処理は、ステップS31の巡回探索処理にて少なくとも1つの携帯デバイス2が発見された場合に実施される。また、ステップS31の探索処理にて複数の携帯デバイス2が発見された場合には、発見された携帯デバイス2のそれぞれに対して以下の処理を実施する。以下における携帯デバイス2とは、いずれもステップS31で発見された、同一の携帯デバイス2を指す。便宜上、ステップS33~S35の処理対象とする携帯デバイス2を対象デバイスとも記載する。
【0086】
ステップS33は、ステップS32で取得したUWB通信機6ごとの探索結果データに基づいて、対象デバイスについてのUWB通信機6ごとの信頼度を決定するステップである。信頼度の算出方法自体は前述のとおりである。
【0087】
ステップS34は、信頼度が高レベル(2)であるUWB通信機6を優先的に用いて3点測位を行うステップである。3点測位とは、3機以上のUWB通信機6での測距値と各BLE通信機5の車両Hvにおける搭載位置を組み合わせることにより、車両Hvに対する対象デバイスの位置座標を算出する処理を指す。3点測位は座標算出処理に対応する。デバイス位置座標は車両座標系などで表現されうる。3点測位は、概念的には、3つの測距円の交点座標を算出することに相当する。測距円とは、UWB通信機6の設置位置を中心とし、観測されている測距値を半径とする円である。車両HvにおけるUWB通信機6の設置位置は既知であるため、3つ以上のUWB通信機6から携帯デバイス2までの距離を取得できれば、連立方程式を解くことによりデバイス位置座標が特定されうる。なお、個々の測距値には誤差が含まれるため、3つ以上の測距円が1点で交わらないことがある。3点測位としての座標算出処理は、複数の測距円からの距離の合計値が最小となる地点を算出する処理であってもよい。
【0088】
なお、位置判定部F3は、高信頼機が4機以上存在する場合には、それら高信頼機のうちの任意の3機のみを用いてデバイス位置座標を算出してもよいし、3機の組み合わせごとに算出結果の重心/平均をデバイス位置座標として採用しても良い。高信頼機とは、信頼度が2(高レベル)のUWB通信機6を指す。信頼度が2であることが所定条件の一例に相当する。つまり、位置判定部F3は、高信頼機が4機以上存在する場合、4機以上の高信頼機を用いてデバイス位置座標を算出してもよい。
【0089】
また、位置判定部F3は、高信頼機が3機未満である場合には、デバイス位置座標は不明と判定してもよい。なお、高信頼機が2つだけ存在する場合、携帯デバイス2が存在しうる候補位置として、2つの円の交点が得られる。高信頼機が2つだけであるケースにおいて位置判定部F3は、2つの交点である第1交点、第2交点のうち、妥当性がある方をデバイス位置座標として採用しても良い。例えば、車両Hvの中心から見て第1交点側に存在する別のUWB通信機6にて携帯デバイス2からの応答が得られておらず、かつ、第2交点側に存在する別のUWB通信機6にて携帯デバイス2からの応答が得られている場合には、第2交点をデバイス位置座標として採用しても良い。上記構成は、信頼度が低レベルのUWB通信機6を不使用機に設定する構成に相当する。また、信頼度は強度観測値とモデル値との差を反映したパラメータであるため、上記構成は、強度観測値とモデル値との差が所定値以上のUWB通信機6を不使用機に設定する構成に相当する。
【0090】
その他、位置判定部F3は、高信頼機が2機以下である場合には、低信頼機を用いて座標算出処理を実施しても良い。低信頼機は、信頼度が1(低)のUWB通信機6を指す。また、位置判定部F3は、信頼度に応じた重みを付けた上で、各UWB通信機6の測距値をもとにデバイス位置座標を算出しても良い。
【0091】
ステップS35は、携帯デバイス2が存在するエリアである滞在エリアを判定するステップである。位置判定部F3は、車室内に存在するのか車外に存在するのかを判定する。また、本実施形態におけるスマートECU4は、車外を、施開錠エリアEAとその他エリアに区分して取り扱う。
【0092】
施開錠エリアEAとは、当該エリア内に携帯デバイス2が存在することに基づいて、車載システム1がドアの施錠や開錠といった所定の車両制御を実行するためのエリアである。例えば、運転席用のドア、助手席用のドア、及びトランクドアのそれぞれに設けられた外側ドアハンドルから所定の作動距離以内となる範囲が施開錠エリアEAに設定されている。施開錠エリアEAは、パッシブエントリエリア或いは近傍エリアと呼ぶこともできる。
【0093】
その他エリアは、車室外であって、施開錠エリアEAの外側に相当する領域である。なお、その他エリアは、遠方エリアと、中間エリアに分けられていても良い。遠方エリアは、例えば車両Hvから6m以上遠方となる領域を指す。中間エリアは、車両Hvから6m以内であって、施開錠エリアEA以外の車室外領域を指す。また、車両Hvが車室(キャビン)とトランクが独立している場合、スマートECU4は車室内とは別に、トランク内に携帯デバイス2が存在するか否かを判定するように構成されていても良い。また、キャビンは、前席エリアと、後席エリアに細分化されていても良い。
【0094】
滞在エリア判定にかかる処理は、
図10に示すようにステップS41~S47を含む。各ステップ
図10に示す矢印に従って実行されうる。
【0095】
ステップS41は、高信頼機が室内機6βだけであるか否かを判定するステップである。位置判定部F3は、高信頼機が室内機6βだけである場合には(S41 YES)、携帯デバイス2は車室内に存在すると判定する(S42)。ステップS42は、高信頼機が室外機6αだけであるか否かを判定するステップである。位置判定部F3は、高信頼機が室外機6αだけである場合には(S43 YES)、携帯デバイス2は車外に存在すると判定する(S44)。
【0096】
ステップS45は、ステップS34にて所定数以上の高信頼機を用いてデバイス位置座標を算出できているか否かを判定するステップである。ここでの所定数は3以上が好ましいが、2や1であってもよい。本実施形態のスマートECU4は、ステップS45として、3機以上の高信頼機を用いてデバイス位置座標を算出できているか否かを判定する。そのようなステップS45は高信頼機が3以上か否かを判定するステップとしてもよい。3機以上の高信頼機を用いてデバイス位置座標を特定できている場合(S45 YES)、位置判定部F3は算出されているデバイス位置座標をもとに滞在エリアを判定する(S46)。
【0097】
ステップS46は、滞在エリアが、車室内、施開錠エリアEA、及びその他エリアのいずれに該当するかを判定するステップである。例えば、ステップS44経由で実行されるステップS46は、携帯デバイス2は車外のうちの施開錠エリアEA内に存在するか否かを特定するステップと解することができる。
【0098】
ここで、第1判定結果と第2判定結果が矛盾した場合、位置判定部F3は、滞在エリアは不明としてステップS31以降の処理を再実行してもよい。第1判定結果とは、ステップS42やステップS44経由で判定された大まかな滞在エリアである。第2判定結果とは、デバイス位置座標をもとに判定された滞在エリアである。また、位置判定部F3は、第1判定結果と第2判定結果が矛盾した場合には、第1判定結果を優先させても良い。3点測位の結果は測距誤差を含みうることを踏まえると、携帯デバイス2が車外と車内の境界付近に存在する場合、第2判定結果は相対的に誤っている可能性が高い。上記構成によれば、測位誤差によって携帯デバイス2が車外に存在するにも関わらず、車内に存在すると誤判定する恐れを低減できる。
【0099】
なお、第1判定結果と第2判定結果が矛盾する場合とは、S42でデバイス滞在エリアは車内と判定されているにも関わらず、3点測位の結果が施開錠エリアEA又はその他エリアを示している場合である。また、第1判定結果と第2判定結果が矛盾する場合とは、S44でデバイス滞在エリアは車外と判定されているにも関わらず、3点測位の結果が車内を示している場合である。
【0100】
本実施形態のS47は、デバイス位置座標を算出できておらず、かつ、高信頼機の組み合わせからも滞在エリアを大別できていない場合の処理である。位置判定部F3は、例えばS47では、デバイス滞在エリアは不明と判定する。なお、S47は、臨時判定アルゴリズムを用いて、デバイス滞在エリアを判定するステップであってもよい。例えば位置判定部F3は、各UWB通信機6での受信強度に基づいてデバイス滞在エリアを仮判定しても良い。具体的には、室内強度代表値が室外強度代表値よりも所定値以上大きいことに基づいてデバイス滞在エリアは車内と判定しても良い。室内強度代表値は、複数の室内機6βでの受信強度を代表的に表すパラメータである。室外強度代表値は、複数の室外機6αでの受信強度を代表的に示すパラメータである。また、位置判定部F3は、室外強度代表値が室内強度代表値よりも所定値以上大きいことに基づいてデバイス滞在エリアは車外と判定しても良い。代表値は、例えば最大値である。代表値は平均値や中央値であってもよい。なお、位置判定部F3は、少なくとも1つの室内機6βでの測距値が所定値(例えば1m)未満であることを条件としてデバイス滞在エリアは車室内と判定するように構成されていることが好ましい。
【0101】
<効果>
上記構成のスマートECU4は、予め測定されたデバイス間距離に応じた受信強度と、実際に測定された受信強度の差に基づいて、UWB通信機6ごとの信頼度を評価する。そして、スマートECU4は、複数のUWB通信機6のなかで、信頼度が高いUWB通信機6での測距値を優先的に用いて、デバイス位置を判定する。当該構成によれば、回り込みや反射の影響を受けているUWB通信機6がデバイス位置の判定に使用されにくくなるため、デバイス位置の判定精度を高めることができる。
【0102】
また、上記の構成ではデバイス位置の判定ごとに、受信強度を取得し、信頼度の評価を更新する。車両Hvに対する携帯デバイス2の位置は随時変動するため、上記構成によれば実際の位置関係に適合したUWB通信機6を用いてデバイス位置を判定可能となる。
【0103】
<変形例(1)>
上述した実施形態では、一致度合いを用いて信頼度を求める態様について例示したが、信頼度の評価方法は適宜変更可能である。例えば
図11に示すように、強度観測値と距離対応値との差である強度乖離度(DP)を算出し(S51)、強度乖離度が強度閾値(Th_D)よりも大きい場合に(S52 YES)、信頼度を高レベルと判定しても良い(S53)。その場合、強度観測値と距離対応値との差(DP)が強度閾値以下である場合に、信頼度を低レベルと判定すれば良い。なお、強度閾値は、
図12に示すように測距値に応じた値が適用されることが好ましい。例えば強度閾値は、測距値が大きくなるほど小さくなるように設計されている。当該評価方法によっても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0104】
<変形例(2)>
位置判定部F3は、UWB通信機6の信頼度を0~100、又は、0.00から1.00までのスコアとして算出しても良い。当該信頼度は、一致度合いの算出式と同様の手法で算出されうる。
【0105】
信頼度がスコアとして算出する構成においても、位置判定部F3は、信頼度が高いUWB通信機6を優先的に用いて座標算出処理を実施する。例えば位置判定部F3は、信頼度が上位3位以内のUWB通信機6を用いて座標算出処理を実施してもよい。もちろん、位置判定部F3は、4つ以上のUWB通信機6を用いて多点測位しても良い。ただし、信頼度があまりにも低いUWB通信機6の測距値を測位に使用すると、かえって測位精度が劣化しうる。故に、位置判定部F3は、スコアとしての信頼度が所定値未満のUWB通信機6は座標算出処理に使用しないように構成されていることが好ましい。信頼度が所定値以上であることが所定条件に相当する。
【0106】
また、UWB通信機6ごとに、信頼度に応じた重み付けを行ってデバイス位置座標を算出しても良い。重み付けによる測位は、例えば測距円同士の交点ごとに、当該測距円を形成するUWB通信機6の信頼度を合算した値を合成信頼度として付与し、合成信頼度の高い交点が集中している部分の重心を求める処理とすることができる。測距円は、UWB通信機6の設置位置を中心、測距値を半径とする円とする。重み付け測位は、複数の測距円の交点のうち、一定の距離以内に存在する交点群に対して、合成信頼度に応じた重み付け平均(加重平均)を行う処理であってもよい。重み付け平均に使用する交点群の抽出は、クラスタリングなどの手法を援用可能である。また、クラスタ重心の算出方法を援用してデバイス位置座標を算出してもよい。
【0107】
<変形例(4)>
位置判定部F3は、
図14に示すように測距値補正部F7を備えていても良い。測距値補正部F7は、強度乖離度に応じて測距値を補正する構成である。位置判定部F3は、測距値補正部F7が補正した測距値を用いて座標算出処理を実施しうる。測距値補正部F7は、距離対応値から強度観測値を減算することで強度低下量を算出する。そして、測距値補正部F7は、強度低下量が大きいほど、測距値を短く補正する。補正による測距値の短縮量と、強度低下量との関係は予め登録されている。例えば、
図13に示すように、強度低下量が大きいほど短縮量は大きくなるように設定されている。
【0108】
強度低下量に応じて測距値を補正する構成においては、信頼度が低いUWB通信機6も座標算出処理に使用しても良い。換言すれば、信頼度が低いUWB通信機6を座標算出処理に使用する場合には、強度低下量に応じて測距値を補正することが好ましい。当該構成によれば、座標算出処理に使用するアンカーの数を増やすことができるため、測位精度の向上効果が期待できる。
【0109】
なお、測距値補正部F7は、信頼度が所定値未満のUWB通信機6の測距値に関しては上記のように測距値を補正する一方、信頼度が所定値以上であるUWB通信機6の測距値に関しては補正しないように構成されていても良い。信頼度が高い場合には、測距値自体が実際の携帯デバイス2までの距離(つまり真値)と一致している可能性が高く、補正する意義が小さい。信頼度が低いUWB通信機6の測距値のみ、補正して測位に使用する構成によれば、プロセッサ41の負荷を低減しつつ、測位精度を向上させる効果が期待できる。
【0110】
また、測距値補正部F7は、強度観測値が距離対応値よりも所定値以上小さいUWB通信機6の測距値に関しては、上記のように強度低下量に応じた分だけ短く補正する一方、強度観測値が距離対応値よりも大きいUWB通信機6の測距値は補正しなくともよい。強度観測値がモデル値を超過しているということは、回折や反射の影響を受けている可能性は小さい。上記構成によれば、補正が不要な測距値に対して補正処理を施す恐れを低減できる。また、それに伴い、測位精度のさらなる向上効果や、プロセッサ41の処理負荷低減効果が期待できる。なお、強度低下量が所定値以下のUWB通信機6の測距値に関しては、強度低下量に応じた分だけ補正しても良いし、補正をしなくとも良い。
【0111】
<変形例(5)>
以上では信頼度を用いて測位演算に使用するUWB通信機6を取捨選択する構成について述べたが、信頼度を算出する構成、すなわち信頼度評価部F4は任意の要素である。例えば、位置判定部F3は、強度乖離度が所定値以上であるUWB通信機6は、座標算出処理に使用しないように構成されていても良い。また、UWB通信機6は、強度観測値と距離対応値との一致度合いが所定値以下のUWB通信機6は、座標算出処理に使用しないように構成されていても良い。当該構成によっても実施形態と同様の効果を奏しうる。なお、強度乖離度及び一致度合いは信頼度を間接的に示すため、信頼度の概念には、強度乖離度や一致度合いを含めることができる。
【0112】
<変形例(6)>
実施形態で述べた通信機の配置態様は一例であって適宜変更可能である。例えば
図15に示すように、室外機6αは、前端中央部と、右側ドアハンドル、左側ドアハンドル、後端中央部にそれぞれ配置されていてもよい。また、室内機6βは、車内天井部の前端と後端、換言すればフロントガラスの上端部とリアガラスの上端部に配置されていても良い。室外機6αは複数設置されていることが好ましいが、室内機6βの設置態様によっては1つであってもよい。室内機6βも複数設置されていることが好ましいが、室外機6αの設置態様或いはシステムが提供する機能によっては、1つであってもよい。車両Hvが車室(キャビン)とトランクが独立している場合には、車載システム1は、トランク内に配置されたUWB通信機6を備えていても良い。
【0113】
<変形例(7)>
車載システム1と携帯デバイス2との通信規格としては、上述したもの以外にもWi-Fi(登録商標)やEnOcean(登録商標)など、多様なものを採用可能である。Wi-Fi規格としても、IEEE802.11nや、IEEE802.11axなど、多様な規格を採用可能である。
【0114】
<変形例(8)>
以上では位置判定用の通信機(いわゆるアンカー)としてUWB通信機6を用いる構成を述べたが、アンカーは必ずしもUWB通信機6でなくとも良い。アンカーは、複数のBLE通信機5あるいはWi-Fi用の通信機などであっても良い。
【0115】
なお、BLE通信による測距方法としては、RTTを用いる方法と2周波位相差を用いる方法とがある。2周波位相差は、BLE通信機5と携帯デバイス2とが連続波(CW:Continuous Wave)信号を送受信することで特定されるパラメータであって、2つの周波数のそれぞれで観測された送受信位相差の差である。2周波位相差は、周波数の変化による送受信位相差の変位量に対応する。
【0116】
送受信位相差は、単純に位相角とも呼ばれうる。送受信位相差は、例えばBLE通信機5と携帯デバイス2とがCW信号を互いに送受信し合うことで各々が送信信号と受信信号との位相差を検出し、両者で観測された位相差の平均値を求めることで特定可能である。なお、BLE通信機5は、デバイス間での初期位相/ローカル発振器が同期していることを前提として、携帯デバイス2から送信されたCW信号の受信位相をそのまま送受信位相差として採用してもよい。デバイス間での初期位相/ローカル発振器の同期は、例えば所定の同期用信号を送信することで実現されうる。
【0117】
なお、2周波位相差をΔφ、電波の伝搬速度をC(3×10^8m/sec)、2つの周波数の差をΔf、携帯デバイス2までの距離をLとすると、L=C・Δφ/(2πΔf)の関係を有する。ただし、1組の周波数における2周波位相差には、マルチパス等に由来する誤差が含まれうる。また、周波数毎にマルチパスの影響度合いは異なる。そのような事情から、プロセッサ41は、2組以上の2周波位相差、つまり、3以上の周波数での送受信位相差に基づいて測距値を算出することが好ましい。
【0118】
<本開示が適用される車両について>
本開示は、オーナーカーや、シェアカーなど、多様な用途の車両に適用可能である。オーナーカーは個人によって所有される自動車である。車両Hvがオーナーカーである場合のユーザとは、所有者(オーナー)や、その家族などを指す。シェアカーは、貸出サービスに供される車両(いわゆるレンタカー)や、カーシェアリングサービスに供される車両(いわゆるシェアカー)などを指す。車両Hvがシェアカーである場合には、サービスの利用契約等に基づき、一時的に当該車両Hvを利用する権限を有する人物がユーザとなりうる。本開示は、会社組織が保有する社用車や、公的機関が保有する公用車に適用されても良い。車両Hvは複数のユーザによって利用されうる。また、本開示は、道路上を走行する多様な車両に適用可能である。すなわち、本開示は、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等、道路上を走行可能な多様な車両に搭載可能である。原動機付き自転車も二輪自動車に含めることができる。本開示は電動車やエンジン車など、多様な車両に適用可能である。電動車の概念には、電気自動車の他、ハイブリッド車や、燃料電池車も含まれる。
【0119】
<付言(1)>
本開示には以下の技術的思想も含まれる。
[技術的思想1]
複数の通信機(5、6)から受信するデータに基づいて、車両のユーザによって携帯される携帯デバイス(2)の位置を判定する車両用位置判定装置であって、
前記通信機から前記携帯デバイスまでの距離に応じた受信強度のモデル値が登録されている記憶部(M1)と、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスからの信号の前記受信強度の観測値である強度観測値を取得する強度取得部(F21)と、
複数の前記通信機のそれぞれから、前記携帯デバイスまでの電波の飛行時間に応じて定まる、前記携帯デバイスまでの距離を示す測距値を取得する測距値取得部(F22)と、
前記通信機から取得した前記強度観測値を同一の前記通信機から取得した前記測距値と対応づけられている前記モデル値と比較することによって当該通信機の信頼度を決定する処理を、前記通信機ごとに実施する信頼度評価部(F4)と、
前記信頼度が所定条件を充足する前記通信機を優先的に用いて前記携帯デバイスの位置を判定する位置判定部(F3)と、を備える車両用位置判定装置。
[技術的思想2]
技術的思想1に記載の車両用位置判定装置であって、
前記信頼度評価部は、観測されている前記測距値に対応する前記モデル値と前記強度観測値との差が大きいほど前記信頼度を低く設定する車両用位置判定装置。
[技術的思想3]
車室内に配置された前記通信機である少なくとも1つの室内機(6β)、及び、前記車両の外面部に配置されている前記通信機である複数の室外機(6α)のそれぞれと接続されて使用される、技術的思想1又は2に記載の車両用位置判定装置であって、
前記信頼度が所定値以上である前記通信機が前記室内機のみである場合には、前記携帯デバイスは車室内に存在すると判定する車両用位置判定装置。
[技術的思想4]
車室内に配置された前記通信機である少なくとも1つの室内機(6β)、及び、前記車両の外面部に配置されている前記通信機である複数の室外機(6α)のそれぞれと接続されて使用される、技術的思想1から3の何れか1項に記載の車両用位置判定装置であって、
前記信頼度が所定値以上である前記通信機が前記室外機のみである場合には、前記携帯デバイスは車外に存在すると判定する車両用位置判定装置。
[技術的思想5]
技術的思想1から4の何れか1項に記載の車両用位置判定装置であって、
前記測距値を前記強度観測値と前記モデル値との差に応じて補正する補正部(F7)を備え、
前記位置判定部は、前記補正部にて補正された前記測距値を用いて、前記携帯デバイスの位置を判定する車両用位置判定装置。
<付言(2)>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。プロセッサ41は、CPUの他、GPU(Graphics Processing Unit)、DFP(Data Flow Processor)などを用いて実現されていても良い。スマートECU4が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)、IC、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)の何れかを用いて実現されていてもよい。ICの概念には、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)も含まれる。
【0120】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていればよい。プログラムの記録媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を採用可能である。コンピュータをスマートECU4として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 車載システム、2 携帯デバイス、4 スマートECU(車両用位置判定装置)、5 BLE通信機、6 UWB通信機、6α 室外機、6β 室内機、F2 通信機制御部、F21 強度取得部、F22 測距値取得部、F3 位置判定部、F4 信頼度評価部、F5 認証部、F6 車両制御部、F7 測距値補正部、M1 強度モデル記憶部