(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177068
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20231206BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01M7/02 C
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089766
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】593040391
【氏名又は名称】エミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小澤 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐太朗
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】振動試験台を備える振動発生装置において、振動試験台から軸受に熱が伝達するのを抑制する。
【解決手段】振動を発生させる振動発生部と、前記振動発生部に接続され振動する板状のスリップテーブルと、前記スリップテーブルが振動可能に該スリップテーブルを下方から支持する複数の軸受と、環境試験装置内に収容され、供試品を固定可能な載置面を有する振動試験台と、前記スリップテーブルの上面と前記振動試験台の下面との間に配設され、前記スリップテーブルと前記振動試験台とに一体的に連結し、中空の複数のセルを有する断熱セル構造と、を備える振動発生装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を発生させる振動発生部と、
前記振動発生部に接続され振動する板状のスリップテーブルと、
前記スリップテーブルが振動可能に該スリップテーブルを下方から支持する複数の軸受と、
環境試験装置内に収容され、供試品を固定可能な載置面を有する振動試験台と、
前記スリップテーブルの上面と前記振動試験台の下面との間に配設され、前記スリップテーブルと前記振動試験台とに一体的に連結し、中空の複数のセルを有する断熱セル構造と、を備える振動発生装置。
【請求項2】
前記軸受は、静圧油圧軸受である請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記断熱セル構造の前記セル内部に充填された断熱材、を備える請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記断熱セル構造の前記セルの側壁に、前記セル内部に温調流体を流入させる温調流体入口と、前記セル内部から前記温調流体を流出させる温調流体出口と、が形成され、
前記温調流体入口から前記セル内部に前記温調流体を供給する温調流体供給源を備えた請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記断熱セル構造は、複数の前記セルが並んで形成されるセル列を複数備え、
前記温調流体供給源は、1つの前記セル列における前記温調流体入口から前記温調流体出口までの前記温調流体の流れる方向と、前記1つのセル列の隣に位置する別の前記セル列における前記温調流体入口から前記温調流体出口までの前記温調流体の流れる方向と、が逆方向となるように前記温調流体入口に前記温調流体を供給する請求項4に記載の振動発生装置。
【請求項6】
前記セル列を形成している前記セルの並ぶ方向において、前記温調流体出口と前記温調流体入口とが対向しないように互いにずれて前記側壁に形成された請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項7】
前記温調流体供給源が前記セル内部に供給する前記温調流体の温度を調節する温調流体温度調節ユニットを備える請求項4、5、又は6に記載の振動発生装置。
【請求項8】
前記静圧油圧軸受は、前記スリップテーブルに向かって開口したへこみを備える軸受本体と、該軸受本体の該へこみに配設され、前記スリップテーブルの下面に連結される連結面、及び前記へこみの底面との間に流体膜を形成する摺動下面を備える軸受可動部と、を備え、
前記摺動下面の前記へこみの底面に対する前記流体膜の厚さ方向における変位を測定する変位センサを備える請求項2に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動試験の試験対象物である供試品を所定方向(例えば、水平方向)に加振させて振動させる振動発生装置が知られている(例えば、特許文献1、又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5766844号公報
【特許文献2】特許第3260756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動発生装置においては、特許文献1に開示されているように、スリップテーブルに固定された供試品(例えば、品質調査を依頼するにあたって生産者が提出する被振動試験体)を、スリップテーブルに直接載置した状態で供試品を振動させている。
【0005】
振動発生装置を用いて振動試験を実施する場合には、供試品を所定の環境条件(例えば、温度条件や湿度条件等)を設定可能な環境試験装置内に振動試験台を配設し、該振動試験台の上に供試品を載置した状態で試験を実施する場合がある。この場合には、環境試験装置内の温度は、供試品、及び振動試験台に熱として伝わる。例えば、上記環境条件の一例として、-40℃から+180℃の温度範囲が設定され、該温度範囲で温度が変動する場合がある。
【0006】
振動試験台は、堅牢で比重が小さい金属系の材料が選択される場合が多く、金属の一例としては、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金等がある。そして、該振動試験台は、所定の方向(例えば、水平方向)に加振するため、特許文献1や特許文献2に開示されているように、静圧油圧軸受等に連結して、供試品の荷重を受け止めつつ摺動している。
【0007】
従来、前記環境条件によって、振動試験台の温度が例えば軸受の一例である静圧油圧軸受に伝達されてしまい、静圧油圧軸受が適切に機能しなくなる場合があった。よって、振動試験台を備える振動発生装置においては、振動試験台から静圧油圧軸受に熱が伝達してしまうことを抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本実施形態の振動発生装置は、振動を発生させる振動発生部と、前記振動発生部に接続され振動する板状のスリップテーブルと、前記スリップテーブルが振動可能に該スリップテーブルを下方から支持する複数の軸受と、環境試験装置内に収容され、供試品を固定可能な載置面を有する振動試験台と、前記スリップテーブルの上面と前記振動試験台の下面との間に配設され、前記スリップテーブルと前記振動試験台とに一体的に連結し、中空の複数のセルを有する断熱セル構造と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態の振動発生装置は、供試品を載置する振動試験台とスリップテーブルとの間に中空の複数のセルを有する断熱セル構造を備えることで、振動試験台から軸受(例えば、静圧油圧軸受)に熱が伝達してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】振動発生装置の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図2】振動発生装置の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図3】スリップテーブル、及びスリップテーブル上に配設された断熱セル構造の第一例を示す斜視図である。
【
図4】スリップテーブル、及びスリップテーブル上に配設された断熱セル構造の第一例を示す平面図である。
【
図5】スリップテーブルの振動動作をスムーズかつ安定的に実行できるようにスリップテーブルを支持する複数の静圧油圧軸受を説明する平面図である。
【
図6】静圧油圧軸受の構造を説明する斜視図である。
【
図7】静圧油圧軸受の軸受本体と軸受可動部とを説明するための斜視図である。
【
図8】静圧油圧軸受の軸受本体のへこみに形成されたランド及びポケットを説明する斜視図である。
【
図9】軸受可動部の摺動上面とガイド板の下面に配設されたランドとの間に流体膜が形成され、かつ、軸受本体のへこみの底面に配設されたランドと軸受可動部の摺動下面との間に流体膜が形成されている状態を簡略化して示す部分断面図である。
【
図10】スリップテーブル上に配設された断熱セル構造の第二例を示す斜視図である。
【
図11】スリップテーブル上に配設された断熱セル構造の第二例を示す平面図である。
【
図12】スリップテーブル上に配設されセル内部に断熱材が充填された第三例の断熱セル構造を示す平面図である。
【
図13】スリップテーブル上に配設されセルの側壁に結露水を排出する排出口が形成された第四例の断熱セル構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1、
図2を用いて振動発生装置1の例示的かつ模式的な全体を開示する。また、以下の各図では、便宜上、方向(X方向、Y方向、Z方向)が規定されている。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交している。そして、例えば、X方向及びY方向で形成される平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする。
【0012】
図1は、実施形態に係る振動発生装置1の例示的かつ模式的な側面図であり、
図2は、振動発生装置1の例示的かつ模式的な平面図である。本実施形態に係る振動発生装置1は、供試品195を強制的に振動させることにより、振動試験を実施する装置である。即ち、振動発生装置1は、例えば、供試品195を載置し固定した振動試験台50に定盤と平行な方向(水平方向)の振動を付与(加振)する試験を実施する装置である。
【0013】
図1に示されるように、振動発生装置1は、例えば、振動を発生させる振動発生部14に含まれるヨーク16と、スリップテーブル12と連結されるジョイント18と、振動発生部14を支持する基台20と、スリップテーブル12の振動動作をスムーズかつ安定的に実行できるようにスリップテーブル12を下方から非接触で支持し軸受の一例である複数の静圧油圧軸受3(
図5参照)と、スリップテーブル12と、スリップテーブル12の上面12aに一体的に連結される断熱セル構造4と、断熱セル構造4の上面に一体的に連結される振動試験台50と、備えている。なお、実施形態における
図5に示す静圧油圧軸受3で使用する流体は、非圧縮性の流体であり、例えば、油である。また、振動発生装置1が備える軸受は、静圧油圧軸受3に限定されず、軸と軸受の間に潤滑油を供給することで軸と軸受の間に油膜を形成し、軸荷重を油膜力により非接触で支持する円筒油圧軸受(ジャーナル軸受)であってもよい。また、振動発生装置1が備える軸受は、軸、及び軸受箱にそれぞれ取付けられるリング状の内輪、及び外輪の間に玉やころなどの転動体を挿入し、その転がり接触運動によって回転運動の案内をする転がり軸受、又は軸の回転により潤滑剤が軸と軸受の間で形成されるくさび状の隙間に連込まれることで、油膜圧力を発生し、これによって軸の回転と荷重を支える滑り軸受であってもよい。
【0014】
ヨーク16の材料は、例えば、高透磁率で高強度の磁性材料で、例えばSS400等の低炭素鋼を用いることができる。例えば振動発生部14の正面側に配設されたジョイント18の材料は、例えば、アルミニウム合金等の非磁性体で高強度の金属、あるいは例えば、カーボンファイバ等の合成樹脂等を用いることができる。なお、
図1の矢印X1は、振動発生部14によるスリップテーブル12の加振方向(水平方向)を示している。そして、スリップテーブル12は、複数の静圧油圧軸受3(
図5参照)によって矢印X1方向に摺動可能に支持される。
【0015】
ヨーク16には、ヨーク16に静磁場を生成する不図示の励磁コイルと、振動発生用のドライブコイルとが設けられている。ドライブコイルは磁気ギャップ内に配され、ジョイント18と一体的に構成されている。励磁コイルに直流電流を流すことにより、当該励磁コイルを取り巻くヨーク16内に磁気回路(静磁場)が生成される。そして、ドライブコイルに所定周波数の交流電流を流すことにより、上述した磁気ギャップに生成される静磁場とドライブコイルに流れる交流電流との間に力が働く。この力により、ドライブコイルは磁束の方向と直交する方向に振動する。その結果、ジョイント18はドライブコイルに流される交流電流の周波数で振動し、これに伴って、スリップテーブル12上に、断熱セル構造4、及び振動試験台50を介して載置固定された供試品195が矢印X1方向に振動し、振動試験が実施される。
【0016】
図1から
図3に示すスリップテーブル12は、矢印X1方向の振動を発生させる振動発生部14に対してジョイント18を介して着脱可能である。スリップテーブル12は、例えば平面視で、略矩形の板状に形成されており、その4辺のうちの1辺側に、水平方向外側に例えば台形状に突出し根元部分となる連結部120を備えている。
【0017】
図2、
図3に示すように、スリップテーブル12のZ方向(鉛直方向)における上面12a中の連結部120となる領域には、斜め下方に延びる座繰り穴124が複数並べて形成されている。座繰り穴124とジョイント18側の図示しないボルト穴とを接続固定するための図示しないボルトが、座繰り穴124を通って上面12aから連結部120の外側面に進出する。
【0018】
スリップテーブル12は、例えば、剛性が高く比重が小さいアルミニウム合金、又はマグネシウム合金等で形成されており、本実施形態においては、最大で質量約1500kgの供試品195を載置可能となっており、例えば、その厚さが50mmに設定されている。スリップテーブル12の略平坦な上面12aは、
図3、及び
図4に示す断熱セル構造4が一体的に連結される連結面となり、スリップテーブル12の略平坦な下面12bは、複数の静圧油圧軸受3が形成する流体膜(油膜)よって支持される摺動面となる。例えば、
図1、
図2に示すスリップテーブル12の周囲には、スリップテーブル12の下面12bから垂れ落ちる静圧油圧軸受3(
図5参照)において流体膜を形成した後の油を受け止める図示しないドレンパンが配設されている。
【0019】
本実施形態における振動発生装置1において、
図5に示す静圧油圧軸受3は、例えば平面視矩形の桶状のケーシング39に収容されている。ケーシング39は、静圧油圧軸受3を複数収容可能な収容室390と、底板391と、底板391の上面4辺からZ方向に立設する4枚の側板392とを備えている。側板392のそれぞれは、ケーシング39の上方に位置付けされる
図1に示すスリップテーブル12と底板391との間に、高さ方向(Z方向)に沿って連続して延設されるとともに、収容室390側方全周を囲繞している。
【0020】
図5に示すように、ケーシング39の底板391の上面には、XY方向に略等間隔を空けて複数の静圧油圧軸受3が固定されている。
図6を用いて静圧油圧軸受3の全体を説明する。アルミニウム合金等で形成される静圧油圧軸受3は、例えば、X方向から見た場合の正面の形が略U字状となり
図1に示すスリップテーブル12に向かってZ方向において開口したへこみ300を備える軸受本体30と、軸受本体30の中央のスリップテーブル12に向かって開口したへこみ300に流体膜(流体軸受)により非接触で摺動可能に配設される軸受可動部32と、スリップテーブル12の振動方向(
図1中矢印X1方向)に軸受可動部32をスムーズかつ矢印X1方向以外の振動(例えば、矢印X1方向と直交する方向の振動等)が発生させることなく安定して案内するためのガイド板34と、を備えている。
【0021】
図7に示す軸受本体30のへこみ300に配設される軸受可動部32は、例えばX方向から見た正面の形が逆さT字状となるブロック体である。軸受可動部32の上面は、中央に一段高くなる段差部320が形成されており、段差部320の上面が
図1に示すスリップテーブル12の下面12bとボルト連結される連結面321となっている。そして、連結面321のY方向両側に一段低く極めて平坦な摺動上面322が位置している。また、軸受可動部32の下面は、極めて平坦な摺動下面323となる。
【0022】
図8に示すように、軸受本体30のへこみ300の底面307には、
図7に示す軸受可動部32の摺動下面323に対向する位置に配置され、軸受本体30に対して給油口306から供給された流体(油)を一時的に貯留するポケット302を複数形成している。即ち、
図8に示す例においては、軸受本体30のへこみ300の底面307には、XY方向に所定間隔を空けて例えば均一高さの4つのランド301が形成され、それぞれのランド301によって包囲された4つのポケット302を形成している。なお、
図8においては、ポケット302とランド301の説明を行うため、軸受本体30の一部を切り取って示している。
【0023】
ポケット302は、流体(油)を一定量蓄えることができる。ランド301の高さ(ポケット302の高さ)は、軸受可動部32の摺動下面323との間に形成したい
図9に示す流体膜Sの厚さに応じて決定することができる。
【0024】
図6に示すように、軸受本体30の左右の上面にそれぞれボルト固定された2枚の平面視矩形のガイド板34の間には、X方向に延在し軸受可動部32の段差部320を収容するガイド溝341が形成されている。軸受本体30は、マニホールドとして機能し、側面に形成された給油口306から内部を通してガイド板34に流体(油)を分配供給できる。また、ガイド板34の上面342には、例えばX方向に間隔を空けて形成される複数の噴出口344が形成されており、
図1に示すスリップテーブル12の下面12bに対して流体(油)を吐出し、下面12bとガイド板34の上面342との間に流体膜(油膜)を形成する。ガイド板34の上面342に形成される油膜は、主にスリップテーブル12の摺動を支持するため流体膜であり、スリップテーブル12側からの荷重をそれほど受けることがない流体膜となる。
【0025】
例えば、ガイド板34の上面342には複数の噴出口344に対して供給された流体(油)を、面状に広げる流体分配溝347が形成されている。例えば四角環状に形成された流体分配溝347は複数の噴出口344に連通しており、油をガイド板34の上面342の広範囲に分配するために形成された溝であり、
図1に示すスリップテーブル12の下面12bとガイド板34の上面342との間に広い油膜を形成する。
【0026】
図8に示すガイド板34の下面348における軸受可動部32(
図7参照)のY方向における左右それぞれの摺動上面322とZ方向において対向する領域には、軸受本体30のランド301及びポケット302と同様のランド345及びポケット346(
図9参照)が形成されている。そして、
図9に示す軸受可動部32の摺動上面322との間に流体膜S(流体軸受)を形成する。軸受可動部32の摺動上面322とガイド板34の下面348との間に形成される流体膜S、及び軸受本体30のへこみ300の底面307と軸受可動部32の摺動下面323との間に形成される流体膜Sにより、スリップテーブル12の振動中においてZ方向上下から荷重が集中する軸受可動部32は、軸受本体30上で非接触で矢印X1方向に摺動可能に支持される。即ち、スリップテーブル12とガイド板34との接触、及びスリップテーブル12が接続された軸受可動部32とガイド板34及び軸受本体30との接触が回避され、スリップテーブル12と軸受可動部32との結合体を、ガイド板34と軸受本体30との結合体に対して、流体軸受けで支持することができる。これによって、
図1に示すスリップテーブル12上に断熱セル構造4を介して一体的に連結された振動試験台50、及び振動試験中の供試品195のビビリ振動や共振により発生する、正規振動方向(矢印X1方向)以外の微振動(クロストーク成分)を減衰させ、精度のよい振動試験を可能とする。
【0027】
図6に示す軸受本体30の外側面には、給油口306が一か所、又は二か所形成されており、
図5に示す隣り合う静圧油圧軸受3のそれぞれの給油口306は、継手及び樹脂チューブ等の連通配管371を介して連通している。例えば、
図5に示すように、X方向に並ぶ複数(例えば4つ)の静圧油圧軸受3を1つの軸受列と認定した場合に、ケーシング39の側板392に最も近い外側の静圧油圧軸受3に一端が連通する連通配管371は、その他端が図示しないケース給油口を介して油リサイクル部36の供給配管364と連通している。そして、ポンプ等を備える油リサイクル部36から供給された流体(油)が、1つの軸受列を構成する複数の静圧油圧軸受3それぞれに順次供給される。例えば、油リサイクル部36による流体(油)の最大吐出圧力は、7MPaであり、実際の吐出圧力は3MPa~3.5MPaである。また、吐出する油の温度は、+15℃~+50℃で、より好ましくは+20℃~+30℃である。また油リサイクル部36が送り出す油の流量は、例えば、40L/min~55L/minである。
【0028】
図5に示すように、ケーシング39の底板391の上面の隣り合う静圧油圧軸受3と静圧油圧軸受3との間の領域には、縦横に延在する回収溝393が複数本切り欠かれて形成されている。スリップテーブル12を支持する油膜を静圧油圧軸受3において形成した油は、静圧油圧軸受3からケーシング39の底板391上に流下して、底板391の上面よりも低い位置にある回収溝393にプールされる。そのため、ケーシング39内で静圧油圧軸受3が底板391の上面に溜まった油に浸漬しにくい構造となっている。回収溝393の溝底には、排出口395が形成されており、該排出口395にはドレーンホース等からなる帰還路369が連通している。なお、回収溝393は、全ての静圧油圧軸受3の4辺を囲繞するように、底板391上に格子状に形成されていてもよい。また、例えば、回収溝393の深さは排出口395が形成されている領域が、他の領域よりも深く設定されており、排出口395から排出される油が空気を巻き込んでしまうことを抑制する。
【0029】
ケーシング39の下方(
図5においては説明上横側に図示)には、静圧油圧軸受3に供給する流体(油)を循環させる油リサイクル部36が配設されている。油リサイクル部36は、貯留タンクと、サクションフィルタ、ポンプ、リリーフ弁、及び切替弁等を内部に収容する。貯留タンクは、循環系内を循環する流体としての油を貯留する。サクションフィルタは、循環する油から異物を除去し浄化する。ポンプは、リリーフ弁、切替弁等を通して油を貯留タンクから所定圧力で供給配管364に送出し、ケーシング39内の複数の静圧油圧軸受3に供給する。
【0030】
振動発生装置1は、
図5に模式的に示す油温度等調節ユニット368を備えている。CPU及びメモリ等の記憶素子等を備える油温度等調節ユニット368は、電気的に接続された油リサイクル部36に制御信号を送り、油リサイクル部36が送出する流体(油)の圧力制御、温度制御、及び流量制御を行うことができる。
【0031】
ケーシング39の回収溝393にプールされた油は、油リサイクル部36のポンプが発生する負圧によって吸引され、帰還路369を介して、油リサイクル部36の貯留タンクに戻され、サクションフィルタによる濾過の後、好適な温度に調整され、再度、静圧油圧軸受3に供給され再利用される。
【0032】
本実施形態のように、ケーシング39の底板391に静圧油圧軸受3で使用済みの油をプールする回収溝393が形成されていることで、使用済みの油(流体膜形成後の油)がケーシング39の底板391上に溜まってしまうことが防がれ、静圧油圧軸受3全体が使用済みの油に浸漬してしまうことが抑制される。そのため、使用済みの油の温度やケーシング39の温度の影響を静圧油圧軸受3が受けにくく、静圧油圧軸受3自体の温度が油リサイクル部36から新たに供給される好適な油の温度に近い温度で維持される。したがって、例えば、振動試験の条件によって、油リサイクル部36により振動発生装置1を循環する油の温度が、静圧油圧軸受3に対する供給時と使用後とで変化(例えば、流体膜形成後に上昇)している場合があっても、静圧油圧軸受3は好適な所定の温度の油で流体膜を形成することができる。
【0033】
図1において二点鎖線で簡略化して示す環境試験装置19は、供試品195が使用時に受ける様々な環境条件を装置筐体190内に人口的に作り出すことができ、一例として装置筐体190内部の温度、湿度を制御出来る恒温恒湿室やプレハブ冷蔵庫/冷凍庫等である。そして、装置筐体190の下面には、例えば、振動試験台50を収容可能な図示しない枠孔が形成されている。そして、枠孔から振動試験台50を装置筐体190の内部に収容した状態で、環境試験装置19が振動試験台50に取り付けられている。例えば、該枠孔には、シール部材193(例えば、シリコンゴム)等が配されており、該枠孔と振動試験台50との隙間が生じないようにシーリングされている。装置筐体190内の温度は、例えば約-40℃~約+180℃の範囲で調整可能となっており、シール部材193によって、環境試験装置19内からの熱伝達はほとんどが振動試験台50に限定される。
【0034】
振動試験台50は、例えば、振動試験の対象である供試品195を上面である略平坦な載置面500に固定可能な板状の部材である。本実施形態における振動試験台50は、例えば縦2500mm×横2500mmの平面視矩形に形成されており、従来よりも大面積に設定されている。また、例えば、振動試験台50の厚さは30mmに設定されている。振動試験台50は、例えば、剛性が高く比重が小さいアルミニウム合金、又はマグネシウム合金等で形成されている。
【0035】
図2に示す振動試験台50の載置面500には、供試品195を固定するために、例えば、複数の図示しない固定ネジ穴がマトリックス状に形成されている。図示しない固定ネジ穴を用いて供試品195を直接固定したり、供試品195を治具等を介して固定したりすることができる。なお、振動試験台50における供試品195の固定方法は一例であり、例えば、空気吸引や電磁力等を用いた吸着等で行ってもよい。本実施形態の振動発生装置1では、スリップテーブル12上に断熱セル構造4を一体的に形成し、断熱セル構造4上に振動試験台50を固定した3層の一体型積層構造を備えているため、振動試験台50は、曲げ剛性が高くなっており、従来よりも大面積を実現している。
【0036】
図2に示すように、振動試験台50の載置面500には、前記図示しない固定ネジ穴と水平方向にずらして、例えば、複数の座繰り穴503がマトリックス状に形成されている。座繰り穴503は、振動試験台50を厚さ方向に貫通しており、振動試験台50の下面502を断熱セル構造4の上面に当接させて、断熱セル構造4の対応する図示しないボルト穴と振動試験台50の座繰り穴503とを重ね合わせて、ボルトが上方から座繰り穴503とボルト穴に通されて螺合され、ボルトの頭部が載置面500から突出しないようにする。そして、振動試験台50と断熱セル構造4とが締結されて一体化する。
【0037】
図3、
図4に示す断熱セル構造4(以下、第一例の断熱セル構造4とする)は、例えば、予め断熱セル構造4を形成するための余分厚さを備えるスリップテーブル12を厚さ方向(Z方向)に切り欠くことで、スリップテーブル12と一体的に形成されたものである。断熱セル構造4は、スリップテーブル12の上面12aの連結部120を除いた領域において、X方向に延在する複数の側壁41を備えている。即ち、側壁41がX方向に等間隔を空けてスリップテーブル12の上面12aに立設している。そして、隣り合う側壁41と側壁41との間には、側壁41と一体的に形成された連結壁42が複数形成されている。
【0038】
側壁41の高さと連結壁42の高さとは同一に設定されており、側壁41と連結壁42との連結箇所は一体的に十字状に交差しており、複数の側壁41と複数の連結壁42とによって、スリップテーブル12の上面12aは格子状に区画されて、平面視矩形の複数の断熱空間となるセル43が形成されている。即ち、断熱セル構造4は、複数のセル43を備える中空構造となっている。また、例えば、断熱セル構造4は、振動試験台50と同程度の大きさ、又は少しだけ小さい大きさに設定されている。
【0039】
例えば、それぞれの側壁41の上面、及び連結壁42の上面には、振動試験台50のそれぞれの座繰り穴503に対応するボルト穴47が形成されており、振動試験台50は側壁41及び連結壁42の上面で図示しないボルトによって締結固定される。なお、振動試験台50を断熱セル構造4に固定する際に、断熱セル構造4のそれぞれのセル43内が真空雰囲気となるようにしてもよい。また、断熱セル構造4は、底板プレート上に上記のような複数のセル43を形成した断熱プレートが、スリップテーブル12の上面12aにボルトにより着脱可能に取り付けられていてもよい。また、断熱セル構造4は、例えば、振動試験台50よりも熱伝導性が低い金属で形成されていてもよい。
【0040】
本実施形態の振動発生装置1における断熱セル構造4では、セル43は平面視長方形状に形成されており、その長手方向が矢印X1(振動発生部14によるスリップテーブル12の加振方向)と平行なX方向となっている。このように、セル43の長手方向とスリップテーブル12の加振方向とを平行にすると、断熱セル構造4の断熱効率が向上するため好ましいが、セル43の形状は平面視長方形状に限定されるものではなく、平面視正方形状等に形成されていてもよい。
【0041】
断熱セル構造4のセル43の個数は、例えば、振動発生装置1が備える
図5に示す静圧油圧軸受3の個数に対応して適宜な個数に設定される。具体的な一例では、
図3、
図4に示すように、セル43は、X方向に4つ×Y方向に9つで、計36個形成されている。そして、
図4に示す例においては、Y方向において最も外側に位置する2つのセル43のそれぞれの下方にそれぞれ1つの静圧油圧軸受3が位置し、残りの7つのセル43の下方に3つの静圧油圧軸受3が略等間隔を空けて位置づけされている。特に、セル43の中空空間が静圧油圧軸受3の
図6に示す軸受可動部32の摺動上面322及び摺動下面323にZ方向から見て広範囲に重なった状態(対向した状態)となる。なお、
図4においては、
図4の見易さを考慮してY方向に並ぶ一つの列を形成する静圧油圧軸受3のみを図示しているが、X方向においても略同様にセル43の下方に静圧油圧軸受3が位置づけされている。また、セル43を複数備えることで、側壁41及び連結壁42の数が増加するため、断熱セル構造4上に固定される振動試験台50を固定支持できる面積が増えて、振動試験台50の供試品195からの荷重を受けやすい中央領域等が下方に湾曲してしまうことが防がれる。
【0042】
図3、
図4に示す断熱セル構造4の複数のセル43内には、スリップテーブル12の厚さ方向に図示しないボルト挿通孔が貫通形成されている。スリップテーブル12の下面12bを複数の
図5に示す例えば計20個の静圧油圧軸受3のそれぞれの軸受可動部32の連結面321に当接させて、スリップテーブル12を複数の静圧油圧軸受3上に適切に位置合わせする。そして、スリップテーブル12の対応するそれぞれのボルト挿通孔と連結面321のそれぞれのボルト穴326とを重ね合わせて、ボルトが上方から図示しないボルト挿通孔とボルト穴326とに通されて螺合される。これによって、軸受本体30上で流体膜によって摺動可能な軸受可動部32とスリップテーブル12とが連結され一体化する。
【0043】
第一例の断熱セル構造4では、複数のセル43を形成するそれぞれの側壁41には、温度調整用の流体(例えば、エア等の気体又は水等の液体)をセル43内に流入させるための温調流体入口411、及び該温度調整用の流体をセル43内から流出させる温調流体出口412を形成している。。温調流体入口411、及び温調流体出口412は側壁41をY方向に貫通している。そして、一つのセル43の温調流体出口412は、この一つのセル43の隣に位置し
図3に示す温調流体Lの流れる方向において下流側となる別の一つのセル43においては温調流体入口411として機能する。
【0044】
断熱セル構造4内に温度調整用の流体(温調流体L)を流す構成とした場合には、例えば
図1に示す振動試験台50の下面502の数か所、好ましくは下面502のうち静圧油圧軸受3(
図5参照)に対応する領域の数か所に温度センサ509を埋設してもよい。温度センサ509は、例えば、サーミスタ、熱電対、又は測温抵抗体等を備えており、環境試験装置19から熱が伝導される振動試験台50の温度を測定する。
【0045】
また、振動発生装置1は、
図3、
図4に模式的に示す温調流体温度調節ユニット499を備えている。CPU及びメモリ等の記憶素子等を備える温調流体温度調節ユニット499は、電気的に接続された温調流体供給源49に制御信号を送り、温調流体供給源49が送出する温調流体Lの少なくとも温度制御をおこなうことができる。温調流体温度調節ユニット499は、例えば、振動試験台50の下面502に配設された温度センサ509から逐次測定情報が送られてくる。
【0046】
図3、
図4に示すように、Y方向に並ぶ複数(例えば9つ)のセル43を1つのセル列44とする。即ち、第一例の断熱セル構造4は4つのセル列44を備えている。例えば、スリップテーブル12に取り付けられた断熱セル構造4のセル列44のうち、連結部120に最も近いセル列44を一列目のセル列44とする。一列目のセル列44における複数の温調流体入口411及び複数の温調流体出口412は、それぞれの側壁41の略同位置に形成されており、それぞれがY方向において対向している。したがって、温調流体供給源49から供給されて一列目のセル列44を構成する複数のセル43の複数の温調流体入口411及び温調流体出口412を通過する温調流体Lの流れは、上流側(+Y方向側)から下流側(-Y方向側)に向かって直線状になる。
【0047】
断熱セル構造4のセル列44のうち、上記一列目のセル列44の隣に位置する二列目のセル列44の複数の温調流体入口411及び複数の温調流体出口412は、それぞれの側壁41の略同位置に形成されており、それぞれがY方向において対向している。該二列目のセル列44に対して温調流体供給源49から供給される温調流体Lは、上流側を-Y方向側として、-Y方向側から下流側となる+Y方向側に向かって直線状に流される。即ち、一列目のセル列44と二列目のセル列44とでは、温調流体Lの流れる方向がY方向において反対になるように設定される。
【0048】
そして、三列目のセル列44に温調流体供給源49から供給される温調流体Lは、上流側を+Y方向側として、+Y方向側から下流側となる-Y方向側に向かってそれぞれのセル43の温調流体入口411及び温調流体出口412を通過し直線状に流される。また、四列目のセル列44に温調流体供給源49から供給される温調流体Lは、上流側を-Y方向側として、-Y方向側から下流側となる+Y方向側に向かってそれぞれのセル43の温調流体入口411及び温調流体出口412を通過し直線状に流される。このように、第一例の断熱セル構造4では、1つのセル列44における温調流体入口411から温調流体出口412までの温調流体Lの流れる方向と、1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44における温調流体入口411から温調流体出口412までの温調流体Lの流れる方向とが逆方向(左右交互)となるように、温調流体供給源49から温調流体Lが温調流体入口411に供給される。
【0049】
なお、X方向に並ぶ複数のセル43を1つのセル列として、また、連結壁42に温調流体入口411及び温調流体出口412を形成して、X方向において温調流体Lを流すものとしてもよい。そして、Y方向において隣り合う1つのセル列とこの1つのセル列の隣に位置するセル列とで、温調流体Lの流れる方向を逆方向に設定してもよい。
【0050】
例えば、それぞれのセル列44を構成する複数のセル43の中で、Y方向において最も外側に位置するセル43の側壁41に形成された温調流体入口411には、配管及びソレノイドバルブ等を介してポンプ、又はコンプレッサー、及びタンク等を備える上記温調流体供給源49が連通している。
【0051】
例えば、
図3、
図4に示す温調流体供給源49が送出する温調流体Lが、エアである場合には、温調流体供給源49が、Y方向において最も外側に位置するセル43の側壁41に形成された温調流体入口411から、所望の温度に調整したエアをセル43に供給して、順に複数のセル43を通過させ、1つのセル列44の最後のセル43の温調流体出口412から排気ホース等により大気開放してもよい。
【0052】
なお、1つのセル列44を構成する複数のセル43の中で、Y方向において最も外側に位置するセル43の側壁41に形成された温調流体出口412を通過した温調流体L(エア)が、該1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44を構成するセル43の温調流体入口411に流入するようにしてもよい。
【0053】
例えば、温調流体供給源49が送出する温調流体Lが、水等の液体である場合には、温調流体供給源49が、Y方向において最も外側に位置するセル43の側壁41に形成された温調流体入口411から、所望の温度に調整した温調流体L(水)をセル43に供給して、順に複数のセル43を通過させ、1つのセル列44の最後のセル43の温調流体出口412からリターンホース等によって温調流体供給源49に戻し、再び温調流体(水)を温調流体供給源49内で温度調整してから断熱セル構造4のセル43に循環させてもよい。
【0054】
なお、1つのセル列44を構成する複数のセル43の中で、Y方向において最も外側に位置するセル43の側壁41に形成された温調流体出口412を通過した温調流体L(水)が、該1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44を構成するセル43の温調流体入口411に流入するようにしてもよい。
【0055】
振動発生装置1は、第一例の断熱セル構造4に代えて、
図10、
図11に示す第二例の断熱セル構造4Aを備えていてもよい。なお、第二例の断熱セル構造4Aにおいて、
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4と同様の構成については、第一例の断熱セル構造4と同様の符号を付して説明する。断熱セル構造4Aにおいて、温調流体供給源49から供給され、1つのセル列44における
図10、
図11に示す温調流体入口414から温調流体出口415までの温調流体Lの流れる方向と、1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44における温調流体入口414から温調流体出口415までの温調流体Lの流れる方向とが逆方向(左右交互)とする。
【0056】
第二例の断熱セル構造4Aでは、セル列44を形成しているセル43の並ぶ方向(Y方向)において、
図10、
図11に示す温調流体出口415と温調流体入口414とが対向しないように互いにずれて側壁41に形成されている。具体的には、例えば、一つのセル列44を構成するセル43において、温調流体出口415は温調流体入口414に対して最も離れた位置に形成されている。例えば、Y方向において対向する2つの側壁41において、一方の側壁41の平面視長方形のセル43の1角のすぐ横の領域に温調流体入口414が形成されており、これに対して温調流体出口415は、他方の側壁41の平面視長方形のセル43の上記1角の対角のすぐ横の領域に形成されている。このように、それぞれのセル43において、温調流体入口414と温調流体出口415とが対角となるように形成されており、Y方向において対向しないように互いにずれて形成されている。例えば、温調流体入口414が1つのセル43を形成する一方の側壁41のZ方向における最も高い位置に形成されている場合には、温調流体出口415は、他方の側壁41のZ方向における最も低い位置に形成されている。
【0057】
なお、X方向に並ぶ複数のセル43を1つのセル列として、また、連結壁42に温調流体入口414及び温調流体出口415をX方向において対向しないように互いにずらして形成し、X方向において温調流体Lを流すものとしてもよい。そして、X方向において隣り合う1つのセル列とこの1つのセル列の隣に位置するセル列とで、温調流体Lの流れる方向を逆方向にしてもよい。
【0058】
以下に、
図1、
図2に示す振動発生装置1を用いて、環境試験装置19内に収容された振動試験台50上に固定された供試品195を振動させる実験を行う場合について説明する。振動試験台50は、環境試験装置19の装置筐体190内に収容されており、振動試験台50の載置面500には供試品195が例えばボルト固定されている。
【0059】
図1に示すジョイント18が振動発生部14のヨーク16のドライブコイルに流される交流電流の周波数で振動し、これに伴って、スリップテーブル12が矢印X1方向に振動し、かつ、スリップテーブル12上に断熱セル構造4、及び振動試験台50を介して載置固定された供試品195が矢印X1方向に振動し、振動試験が実施される。
【0060】
また、スリップテーブル12が矢印X1方向に振動するのに伴って、先に説明したように
図5~
図6、及び
図9に示す静圧油圧軸受3のガイド板34の上面342上に流体膜(油膜)が形成され、かつ、軸受可動部32の摺動上面322とガイド板34の下面348との間、及び軸受本体30のへこみ300の底面307と軸受可動部32の摺動下面323との間に
図9に示す流体膜Sが形成され、静圧油圧軸受3が
図1に示すスリップテーブル12の下面12bを振動可能に支持する。連結されて一体化したスリップテーブル12、断熱セル構造4、及び振動試験台50には、振動試験により、様々な方向の力のモーメントが発生している。一方、軸受可動部32に連結されたスリップテーブル12は、複数の静圧油圧軸受3が形成する主に
図9に示す流体膜Sによって非接触でZ方向において支持されており、該流体膜Sによってスリップテーブル12には強力な対抗力を発生させることが可能になる。この対抗力は供給する流体(油)の圧力を変えることで所望の大きさに変更することができる。そのため油の圧力を調整することで、供試品195が載置されたスリップテーブル12等の振動方向以外の振動を効果的に抑制することが可能となり、振動試験の精度をさらに向上させることができる。
【0061】
図1に示す振動試験台50が収容されている環境試験装置19の装置筐体190内の温度は、例えば約-40℃~約+180℃の範囲で変動する。そのため、装置筐体190内の振動試験台50の温度も約-40℃~約+180℃の範囲で伝熱されて変動する。静圧油圧軸受3の適正な油温度は、使用する油の種類に依存するが、例えば、+20℃~+25℃の範囲であり、該範囲で油が所望の粘度となる場合が多い。つまり、上記環境条件の温度(-40℃から+180℃)とは大きな差が存在する。そのため、従来の振動発生装置においては、振動試験台から熱が静圧油圧軸受に伝わり、静圧油圧軸受を構成する流体(油)の温度変化による静圧油圧軸受自体の熱による膨張若しくは収縮が発生し、静圧油圧軸受が適切に機能しない場合があった。これに対して、本実施形態の振動発生装置1では、振動試験台50は、例えば
図3、
図4に示す中空の複数のセル43を有する第一例の断熱セル構造4を間に挟んでスリップテーブル12と連結されているため、複数のセル43が断熱層となり、スリップテーブル12に例えば高温となった振動試験台50の熱が伝達されることを抑制できる。なお、振動発生装置1が備える軸受が、静圧油圧軸受3ではなく、ジャーナル軸受や滑り軸受等の油を使用する軸受である場合にも、断熱セル構造4により振動試験台50から軸受に対する熱の伝達を抑制でき、軸受を適切に機能させることが可能となる。また、振動発生装置1が備える軸受が、転がり軸受等であっても、断熱セル構造4により振動試験台50から軸受に対する熱の伝達を抑制して軸受の膨張を防ぐことができ、軸受を適切に機能させることが可能となる。
【0062】
例えば、本実施形態においては、断熱セル構造4の断熱効率を高めるために、それぞれのセル43に対して、
図3、
図4に示す温調流体供給源49が送出した所定の温度に温調された温調流体Lを供給する。例えば、
図1に示す環境試験装置19内の温度が高くなり、振動試験台50の温度が所定の閾値を超えた場合を想定する。
【0063】
この場合に、例えば、
図1に示す振動試験台50の下面502に取り付けられた温度センサ509が、振動試験台50の温度が所定の閾値を超えたことを測定し、温度センサ509から測定情報が
図3、
図4に示す温調流体温度調節ユニット499に送られる。なお、
図5に示す静圧油圧軸受3には、油温度等調節ユニット368によって各流体膜(油膜)を形成するのに好適な温度に調節された油が油リサイクル部36から供給されている。
【0064】
振動試験台50の温度が所定の閾値を超えたことで、断熱セル構造4の断熱性能を超えて振動試験台50からスリップテーブル12を介して静圧油圧軸受3に熱が仮に伝わると、静圧油圧軸受3において流体膜を形成している油の粘度が下がり、静圧油圧軸受3がスリップテーブル12を支持する適切な流体膜を形成できなくなる可能性がある。
【0065】
そこで、温度センサ509の測定情報を受信した
図3、
図4に示す温調流体温度調節ユニット499は、温調流体供給源49に対して制御信号を送り、温調流体供給源49から断熱セル構造4に供給する温調流体Lの温度を下げる制御を行う。これによって、断熱セル構造4の複数のセル43をより低温の温調流体Lが通過するため、所定の閾値を超えた温度となった振動試験台50から断熱セル構造4、及びスリップテーブル12を介して複数の静圧油圧軸受3側に熱が伝わってしまうことが抑制される。
【0066】
温調流体供給源49から
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4に温調流体Lを供給して、1つのセル列44における温調流体入口411から温調流体出口412までの温調流体Lの流れる方向と、1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44における温調流体入口411から温調流体出口412までの温調流体Lの流れる方向とを逆方向に設定した場合の効果について説明する。
【0067】
例えば、断熱セル構造4に供給する温調流体Lが、1つのセル列44を構成するそれぞれのセル43を通過するごとに変化する温度勾配を持つ場合がある。この場合には、断熱セル構造4上で、1つのセル列44における温調流体入口411から温調流体出口412までの温調流体Lの流れる方向(例えば、+Y方向から-Y方向へ流れる方向)と、1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44における温調流体入口411から温調流体出口412までの温調流体Lの流れる方向(例えば、-Y方向から+Y方向へ流れる方向)とが逆方向となっていることで、1つのセル列44と該1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44とで、温調流体Lの流れる方向における温度勾配が逆向き傾向となる。よって、断熱セル構造4に対する温調流体Lによる温度調整が断熱セル構造4全体で均一化でき、一部の静圧油圧軸受3のみが振動試験台50から熱を受け取って温度上昇してしまうこと等を防ぐことが可能となる。
【0068】
図1に示すスリップテーブル12と振動試験台50との間に、第一例の断熱セル構造4に代えて、
図10、
図11に示す第二例の断熱セル構造4Aを配設した場合について説明する。この場合には、断熱セル構造4A上で、1つのセル列44における温調流体入口414から温調流体出口415までの温調流体Lの流れる方向(例えば、+Y方向から-Y方向へ流れる方向)と、1つのセル列44の隣に位置する別のセル列44における温調流体入口414から温調流体出口415までの温調流体Lの流れる方向(例えば、-Y方向から+Y方向へ流れる方向)とを逆方向としていることで、温調流体Lの流れる方向における温度勾配が逆向き傾向となり、温調流体Lによる温度調整が断熱セル構造4A全体で均一化できる。さらに、各セル43において、温調流体出口415は温調流体入口414に対してY方向において対向しないように互いにずれて側壁41に形成されているため、それぞれのセル43内の温調流体Lの温度をより均一化することができる。即ち、温調流体入口414からセル43内に流入した温調流体Lが、セル43内で最短の距離を流れて温調流体出口415から次のセル43に流れてしまうことを抑制でき、セル43内全域に温調流体Lが広がってから温調流体出口415に到達して次のセル43に流れていく。換言すれば、一つのセル列44全体で温調流体Lの流れを平面視した場合に、温調流体Lの流れがジグザグとなる。そのため、断熱セル構造4Aに対する温調流体Lによる温度調整が断熱セル構造4A全体でさらに均一化できる。よって、複数の静圧油圧軸受3の中で特定の静圧油圧軸受3のみが振動試験台50から熱を受け取って温度上昇してしまうことをさらに抑制できる。
【0069】
振動発生装置1は、
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4に代えて、
図12に示す第三例の断熱セル構造4Bを備えていてもよい。なお、第三例の断熱セル構造4Bにおいて、
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4と同様の構成については、第一例の断熱セル構造4と同様の符号を付して説明する。
【0070】
第三例の断熱セル構造4Bは、温調流体を通さずに使用される。そして、例えば、振動試験の条件によって、断熱セル構造4Bの各セル43中に結露が発生しやすい場合があるため、断熱セル構造4Bの各セル43中には、断熱材468が充填されている。断熱材468は、例えば、セル43内においてスリップテーブル12の上面12a、側壁41、連結壁42、及び振動試験台50の下面502(
図1参照)に接触している。断熱材468の一例としては、耐熱性(-60℃~+200℃)を備えたシリコーンスポンジシートや、発泡プラスチックである硬質ウレタンフォーム、又はポリスチレンフォーム等が挙げられる。断熱セル構造4Bでは、このように断熱材468がセル43中に充填されていることで、セル43中の結露の発生を抑制できるともに、断熱セル構造4Bの断熱機能を維持することができる。
【0071】
振動発生装置1は、
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4に代えて、
図13に示す第四例の断熱セル構造4Cを備えていてもよい。なお、第四例の断熱セル構造4Cにおいて、
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4と同様の構成については、第一例の断熱セル構造4と同様の符号を付して説明する。
【0072】
図13に示す断熱セル構造4Cは、各セル43の側壁41及び連結壁42にセル43内部に発生した結露水を排出するための排出口461を貫通形成している。そして、各セル43の排出口461を通過した結露水が、断熱セル構造4Cの外周側から装置外の図示しないドレンパンに排水可能となっている。なお、側壁41又は連結壁42の少なくとも一方のみに排出口461が貫通形成されていてもよい。
【0073】
例えば、振動発生装置1が、
図3、
図4に示す第一例の断熱セル構造4を備えている場合、又は
図10、
図11に示す第二例の断熱セル構造4Aを備えている場合において、温調流体温度調節ユニット499は、温調流体供給源49が供給する温調流体Lのセル43流入時の温度(入口温度)を、静圧油圧軸受3がスリップテーブル12を支持する流体膜を形成する際の油の実験的、経験的、又は理論的に設定された好適な温度に対応するように調節してもよい。
【0074】
例えば、振動発生装置1は、
図7~
図9に示す静圧油圧軸受3の軸受可動部32の摺動下面323の軸受本体30のへこみ300の底面307に対する流体膜Sの厚さ方向(Z方向)における変位を測定する変位センサ60を備えていてもよい。摺動下面323の底面307に対するZ方向における変位とは、換言すれば、摺動下面323と底面307との間に形成される流体膜Sの厚さの変化である。なお、
図9に示すガイド板34の下面348と軸受可動部32の摺動上面322との間に形成される流体膜Sの厚さは、摺動下面323と底面307との間に形成される流体膜Sの厚さと略同一の値になる。
【0075】
変位センサ60は、好ましくは高周波磁界を利用して変位を測定する渦電流式変位センサであるが、静電容量変位センサ、超音波変位センサ、反射型光電センサ等であってもよい。変位センサ60は、例えば、複数、静圧油圧軸受3に対して設置される。例えば、
図5に示す複数の静圧油圧軸受3のケーシング39の四隅に位置する計4つの静圧油圧軸受3に対して設置される。例えば、変位センサ60を静圧油圧軸受3に対して設置する場合には、
図5に示すケーシング39の底板391に変位センサ60に電気的に接続する図示しないセンサケーブルの這わせるための、ケーブル逃げ溝398を形成してもよい。
【0076】
例えば、
図8に示すように、変位センサ60は、軸受本体30のへこみ300に配設された軸受可動部32の摺動下面323にZ方向において対向する箇所に配置される。一例としては、へこみ300の例えば中央の領域に埋設されている。なお、変位センサ60は図示しないカバーによって、油が接触しないようになっている。
【0077】
静圧油圧軸受3のガイド板34の上面342上に流体膜が形成され、かつ、軸受可動部32の摺動上面322とガイド板34の下面348との間、及び軸受本体30のへこみ300の底面307と軸受可動部32の摺動下面323との間に流体膜Sが形成され、静圧油圧軸受3がスリップテーブル12の下面12bを振動可能に支持している状態において、変位センサ60が、例えばへこみ300の底面307を原点高さとして軸受可動部32の摺動下面323のZ方向における変位を測定し、測定情報を例えば
図5に示す油温度等調節ユニット368に逐次送信する。
【0078】
上記変位について測定情報は、軸受可動部32の摺動上面322とガイド板34の下面348との間に形成される流体膜Sの厚さの変化、及び摺動下面323と底面307との間に形成される流体膜Sの厚さの変化の情報と同一視できる。そして、油温度等調節ユニット368は、例えば、軸受可動部32の摺動上面322とガイド板34の下面348との間に形成される流体膜Sの厚さ、及び摺動下面323と底面307との間に形成される流体膜Sの厚さのベストな値(
図9に示す例においては、50μm)と、油リサイクル部36が静圧油圧軸受3に供給する油の温度値との対応表とを記憶している。なお、流体膜Sの厚さのベストな値は、50μmに限定されず、30μm~100μmの間で選択できる。そして、例えば環境試験装置19内で所定の閾値を超えた温度となった振動試験台50から断熱セル構造4、及びスリップテーブル12を介して複数の静圧油圧軸受3側に熱が伝わった場合や、供試品195の重量等の変化があった場合等において、静圧油圧軸受3の形成する流体膜Sの厚さがベストな値からずれてしまうことがないように、
図5に示す油温度等調節ユニット368が、油リサイクル部36に対して制御信号を送り、油リサイクル部36から静圧油圧軸受3に供給する油の温度を補正する制御を行い、静圧油圧軸受3の形成する流体膜Sの厚さがベストな値で維持できるようにする。なお、油の温度補正に加えて、断熱セル構造4に供給する温調流体Lの温度補正を合わせて行ってもよい。
【0079】
本発明に係る振動発生装置の実施形態について説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1:振動発生装置
12:スリップテーブル 120:連結部 124:座繰り穴
14:振動発生部 16:ヨーク 18:ジョイント
19:環境試験装置 190:装置筐体 193:シール部材 195:供試品
20:基台
3:静圧油圧軸受
30:軸受本体 300:へこみ 301:ランド 302:ポケット
32:軸受可動部 321:連結面 323:摺動下面
34:ガイド板 344:噴出口
36:油リサイクル部 368:油温度等調節ユニット 39:ケーシング
4:第一例の断熱セル構造
41:側壁 411:温調流体入口 412:温調流体出口
42:連結壁
43:セル 44:セル列
49:温調流体供給源 499:温調流体温度調節ユニット
4A:第二例の断熱セル構造
4B:第三例の断熱セル構造 468:断熱材
4C:第四例の断熱セル構造 461:排出口
50:振動試験台 509:温度センサ
60:変位センサ