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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177069
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/58 20060101AFI20231206BHJP
   E06B 1/64 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E06B1/58
E06B1/64 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089767
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 庸平
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011JA01
2E011JA03
2E011KA02
2E011KC01
2E011KC07
2E011KD02
2E011KF01
2E011KF02
2E011KL00
2E011LB02
2E011LD01
2E011LD07
2E011LD08
2E011LE03
2E011LF04
(57)【要約】
【課題】PC板の開口部に取り付けられ、施工現場で付属部品を容易に取り付けることができるサッシを提供すること。
【解決手段】プレキャストコンクリート板2の開口部に取り付けられるサッシ枠10を備えるサッシ1である。サッシ枠10は、別体の付属部品であるアングル材61、62がドリルネジ64によって表面側に取り付けられる取付片である室内側見付け片114、124を有する。室内側見付け片114、124の裏面には、ドリルネジ64が挿入可能なスペーサ15が取り付けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート板の開口部に取り付けられるサッシ枠を備えるサッシであって、
前記サッシ枠は、別体の付属部品がネジによって表面側に取り付けられる取付片を有し、前記取付片の裏面には、前記ネジが挿入可能なスペーサが取り付けられている
ことを特徴とするサッシ。
【請求項2】
請求項1に記載のサッシにおいて、
前記スペーサは、不燃性を有する材料で構成されている
ことを特徴とするサッシ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサッシにおいて、
前記付属部品は、水切り材、見切り材、またはアングル材である
ことを特徴とするサッシ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のサッシにおいて、
前記サッシ枠は、室内側見付け片および室外側見付け片を備え、
前記取付片は、前記室内側見付け片および前記室外側見付け片の少なくとも一方である
ことを特徴とするサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC(プレキャストコンクリート)板の開口部に固定されるサッシ枠を備えるサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サッシ枠を型枠としてコンクリートを打設し、開口部にサッシ枠が固定されたPC板を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、サッシ枠に加えて額縁も型枠として利用されており、打設されたコンクリートに固定されている。この額縁は、PC板から突出しているため、PC板をビル等の建築物の施工現場に輸送する際に破損する恐れがある。このため、額縁などの付属部品は建築物の施工現場においてサッシ枠に取り付けることが試みられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-209654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サッシ枠の裏側にはコンクリートが充填されているため、サッシ枠に付属部品をねじ止めする場合、サッシ枠の裏側のコンクリート部分にネジ先端が配置される穴を開ける必要がある。すなわち、施工現場において、コンクリートドリルを用いた穴開け作業を行う必要があり、施工作業の手間が増えて作業性が低下するという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、PC板の開口部に取り付けられ、施工現場で付属部品を容易に取り付けることができるサッシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレキャストコンクリート板の開口部に取り付けられるサッシ枠を備えるサッシであって、前記サッシ枠は、別体の付属部品がネジによって表面側に取り付けられる取付片を有し、前記取付片の裏面には、前記ネジが挿入可能なスペーサが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレキャストコンクリート板の開口部に取り付けられ、施工現場で付属部品を容易に取り付けることができるサッシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のサッシを示す縦断面図である。
図2】第1実施形態のサッシを示す横断面図である。
図3】サッシに取り付けられるアンカー部品の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図である。
図4】第1実施形態のサッシが取り付けられたPC板を示す縦断面図である。
図5】第1実施形態のサッシが取り付けられたPC板の要部を示す横断面図である。
図6】第2実施形態のサッシが取り付けられたPC板を示す縦断面図である。
図7】第2実施形態のサッシが取り付けられたPC板の要部を示す横断面図である。
図8】第3実施形態のサッシが取り付けられたPC板を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るサッシ1について図1図5を参照して説明する。なお、各図では、図面を見やすくするため、サッシ1の断面を示すハッチングは省略している。
サッシ1は、図4および図5に示すように、プレキャストコンクリート板(PC板)2の開口部に固定されるものである。
【0010】
サッシ1は、図1および図2に示すように、FIX窓用のサッシであり、サッシ枠10と、ガラス20とを備えて構成される。
サッシ枠10は、上枠11と、下枠12と、左右の縦枠13とを備えて矩形枠状に組まれて構成されている。
上枠11は、見込み片110と、室外側保持片111と、室外側見付け片113と、室内側見付け片114とを備えている。
見込み片110は、ガラス20の上端面に対向する第1見込み片1101と、第1見込み片1101の室内側端部からビスホール部を介して連続する第2見込み片1102とを備える。第1見込み片1101および第2見込み片1102には、押縁14が係合される係合片1104、1105が形成されている。
室外側保持片111は、第1見込み片1101の室外側端縁から下方に延出され、ガラス20の室外側に配置されている。
室外側見付け片113は、室外側保持片111の上端部近傍から室外側に延出され、さらに上方に延出されている。この室外側見付け片113の上端縁から室内側に向かって突片1131が突出されている。
室内側見付け片114は、第2見込み片1102の室内側端縁から上方に延出されている。この室内側見付け片114の上端縁から室外側に向かって突片1141が突出されている。
【0011】
下枠12は、見込み片120と、室外側保持片121と、室内側保持片122と、室外側見付け片123と、室内側見付け片124とを備えている。
見込み片120は、ガラス20の下端面に対向して設けられた水平面部1201と、水平面部1201の室内側端縁から斜め上方に傾斜された傾斜片部1202と、傾斜片部1202の室内側端縁から室内側に延出された延出部1203とを備える。
室外側保持片121は、見込み片120の室外側端縁から上方に延出され、ガラス20の室外側に配置されている。
室内側保持片122は、見込み片120の室内側端縁つまり延出部1203から上方に延出された連結片部1221と、連結片部1221の上端部から室外側に延出された保持片部1222とを備え、保持片部1222は室外側保持片121に対向してガラス20の室内側に配置されている。
【0012】
室外側見付け片123は、見込み片120の水平面部1201の見込み方向中間位置から下方に延出された垂下片部1231と、垂下片部1231の下端から室外側に向かって斜め下方に延出された傾斜片部1232と、傾斜片部1232の室外側端縁から下方に延出された室外面部1233と、室外面部1233の下端から室内側に延出された連結片部1234と、連結片部1234の室内側端縁から下方に延出された固定片部1235とを備えている。
傾斜片部1232の下面にはビスホール部1236が形成され、ビスホール部1236から室内側に向かって突片1237が突出されている。
【0013】
室内側見付け片124は、見込み片120の室内側端縁つまり延出部1203から下方に延出されている。この室内側見付け片124の下端縁から室外側に向かって突片1241が突出されている。
【0014】
各縦枠13は、図2に示すように、左右対称の構造であり、見込み片130と、室外側保持片131と、室外側見付け片133と、室内側見付け片134とを備えている。
見込み片130は、サッシ1の見込み方向に沿って形成され、ガラス20の左右両端面に対向する面には、押縁14が係合される断面L字状の係合片1301、1302が形成されている。
室外側保持片131は、見込み片130の室外側端縁近傍から見付け方向の内周側、つまり対向配置された他の縦枠13側に延出され、ガラス20の室外側に配置されている。
室外側見付け片133は、見込み片130の室外側端縁から外周側に延出されている。この室外側見付け片133の外周端縁から室内側に向かって突片1331が突出されている。
室内側見付け片134は、見込み片130の室内側端縁から外周側に延出されている。この室内側見付け片134の外周端縁から室外側に向かって突片1341が突出されている。
【0015】
ガラス20は、複層ガラスであり、室外側保持片111、121、131と、押縁14や室内側保持片122との間に、バックアップ材21およびシール材22を介して保持されている。また、ガラス20は、下枠12の見込み片120の上面に配置されたセッティングブロック23に載置されている。
なお、FIX窓のガラス20は、通常、建築物の施工現場等でサッシ1に取り付けられるため、サッシ1の組立工場からの出荷時や後述するPC板の製造工場では取り付けられていない。
一方、サッシがFIX窓ではなく、例えば縦すべり出し窓等のように、サッシ枠と可動障子とを備えるサッシの場合は、可動障子はサッシ枠に取り付けた状態で出荷される。この際、可動障子のハンドルや錠もサッシ枠に取り付けられた状態で出荷される。なお、ハンドルや錠はコンクリート打設時に汚れないように、養生テープで保護した状態で出荷することが好ましい。
【0016】
上枠11、下枠12、縦枠13の室内側見付け片114、124、134の室外面には、後述するコンクリートの打設時にコンクリートが充填されないスペースを確保するスペーサ15が取り付けられている。
スペーサ15は、室内側見付け片114、124、134に室内側からネジをねじ込んだ際に、ネジの先端をねじ込み可能な材料であり、かつ、不燃性の材料で構成され、例えば、ロックウールやグラスウールなどが利用できる。本実施形態では、AES(アルカリアースシリケートウール)製のスペーサ15が用いられている。
ここで、ネジをねじ込み可能な材料とは、室内側見付け片114、124、134に室内側からネジをねじ込んだ際に、室内側見付け片114、124、134から突出するネジ先端がねじ込まれることを阻害しない材料であればよい。
また、不燃性の材料とは、建築基準法において、不燃材料として認められる要件を満たす材料であればよい。
【0017】
各スペーサ15は、上枠11、下枠12、縦枠13の長手方向の全長に亘って設けられている。また、各スペーサ15の断面サイズは、スペーサ15が取り付けられる枠の形状や取付位置などによって設定されている。
これらのスペーサ15は、剥離紙によって保護された粘着面を有し、剥離紙を剥がして粘着面を室内側見付け片114、124、134に押し付けることで取り付けられている。なお、本実施形態では、上枠11および縦枠13に取り付けられるスペーサ15は、突片1141、1341に当接させることで、スペーサ15の見付け方向の位置決めを行っている。また、下枠12に取り付けられるスペーサ15は、見込み片120の傾斜片部1202、延出部1203に当接させることで、スペーサ15の見付け方向の位置決めを行っている。
【0018】
サッシ枠10には、後述するようにサッシ枠10の周囲にコンクリートを打設した際に、コンクリートとの固定強度を向上させるためのアンカー部品30、30Aが取り付けられている。
アンカー部品30は、上枠11および縦枠13に対して複数箇所に取り付けられた金属製のピース材である。例えば、本実施形態では、アンカー部品30は、上枠11に対しては2箇所に取り付けられ、縦枠13に対しては3箇所に取り付けられている。
アンカー部品30Aは、下枠12に対して複数箇所、例えば2箇所に取り付けられた金属製のピース材である。
【0019】
アンカー部品30は、図3にも示すように、上枠11、縦枠13に係止されるアンカー31と、アンカー31に溶接された連結材32と、連結材32にリベット34で回動自在に連結された打込用アンカー33とを備えている。リベット34と打込用アンカー33との間には座金35が配置されている。
アンカー31は、突片1131、1141、1331、1341に係合する一対の係合爪部311と、切り起こし等で折曲された折曲片312とを備える。
連結材32は、L字状に折曲されており、折曲片312に溶接で固定される固定片321と、固定片321に直交する連結片322とを備える。
打込用アンカー33は、L字状に折曲されており、連結片322にリベット34で回動自在に連結された連結片331と、連結片331に直交する定着片332とを備えている。
下枠12に取り付けられるアンカー部品30Aは、下枠12の突片1237、1241の位置に対応する形状のアンカー31Aを用いる点を除き、上枠11、縦枠13に取り付けられるアンカー部品30と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0020】
サッシ1は、サッシの組立工場において組み立てられ、スペーサ15およびアンカー部品30も取り付けられる。このように組み立てられたサッシ1は、プレキャストコンクリート板(以下PC板と略す)の製造工場に出荷される。サッシ1の出荷時に、アンカー31の打込用アンカー33は、図1および図2に示すように、倒された状態に保持されている。
【0021】
PC板の製造工場では、PC板を製造するための型枠にサッシ1のサッシ枠10を取り付ける。この際、サッシ枠10は、PC板の開口部の型枠の一部として用いられ、型枠はサッシ枠10に連続して設けられる。
型枠内には、図4および図5に示すように、鉄筋41が配置される。鉄筋41は、主筋42と配力筋43とを備えて構成される。主筋42は、各枠11~13の長手方向に延長された丸棒状の鉄筋である。配力筋43は、主筋42の長手方向に直交する方向に設けられ、複数の主筋42を囲むように巻かれている。この配力筋43は、主筋42の長手方向の複数箇所に間隔を空けて配置される。さらに、主筋42を補強する補強筋を設けてもよい。
また、サッシ枠10に取り付けたアンカー部品30の打込用アンカー33は、出荷時の倒された状態から約90度回動されて立ち上がった状態とされている。この際、打込用アンカー33が鉄筋41に干渉する場合は、打込用アンカー33を回動させて鉄筋41と干渉しない位置に配置する。
このように構成された型枠内にコンクリート40を打設する。この際、室外側見付け片113、123、133と、室内側見付け片114、124、134との間では、スペーサ15部分を除いてコンクリート40が打設される。その後、コンクリート40を養生し、コンクリート40が硬化した後、型枠を取り外すことで、開口部にサッシ1が取り付けられたPC板2が製造される。
【0022】
工場で製造されたPC板2は、ビルなどの建築物の施工現場に運ばれて外壁として設置され、その後、現場において、付属部品や内装材を取り付ける仕上げ作業が行われる。
図4および図5は、仕上げ作業後のPC板2による外壁部分を示す図である。
上枠11および縦枠13の室外側見付け片113、133の室外側には溝部が形成され、この溝部にはバックアップ材51、シール材52が充填されてシールされている。
下枠12の連結片部1234、固定片部1235およびコンクリート40で区画される溝部にもバックアップ材51、シール材52が充填されている。
また、上枠11、下枠12、縦枠13の室内側見付け片114、124、134の室内側にも溝部が形成され、こられの溝部にもバックアップ材51およびシール材52が充填されている。これらのバックアップ材51およびシール材52は、PC板2の製造工場で設けてもよいし、施工現場で設けてもよい。
【0023】
上枠11、下枠12、縦枠13の室内側見付け片114、124、134の室内側には付属部品であるアングル材61、62、63がドリルネジ64でそれぞれ取り付けられている。アングル材61、62、63は、室内側見付け片114、124、134に沿って配置される固定片と、固定片に略直交して設けられた保持片とを備えて略L字状に形成されている。
そして、施工現場においてPC板2を設置後、室内側からアングル材61、62、63の固定片および室内側見付け片114、124、134にドリルネジ64をねじ込んで固定する。この際、ドリルネジ64の先端は、室内側見付け片114、124、134の室外側に突き抜け、スペーサ15に挿入される。すなわち、ドリルネジ64は、コンクリート40が打設されていないスペーサ15部分にねじ込まれるため、コンクリート40に阻害されることなくねじ込むことができる。
したがって、本実施形態では、付属部品であるアングル材61、62、63が取り付けられる取付片は、室内側見付け片114、124、134で構成される。このため、取付片の表面は、室内側見付け片114、124、134の室内面であり、スペーサ15が取り付けられる取付片の裏面は、室内側見付け片114、124、134の室外面である。
【0024】
アングル材61、62、63をドリルネジ64で固定した後、コンクリート40の室内面に断熱材70を貼り付ける。
その後、アングル材61、62、63に額縁材72を係合する。さらに、額縁材72の外周面に沿って内装材74を配置する。
また、サッシ1がFIX窓であれば、ガラス20をサッシ枠10に組み込み、押縁14を取り付け、バックアップ材21、シール材22を充填して仕上げる。
以上によって、図4および図5に示すように、サッシ1が開口部に取り付けられたPC板2による外壁が構成される。
【0025】
[実施形態の効果]
このような本実施形態によれば、サッシ1の室内側見付け片114、124、134の室外面(裏面)にスペーサ15を取り付けたので、付属部品であるアングル材61、62、63をドリルネジ64で固定する際に、ドリルネジ64の先端をスペーサ15にねじ込むことができる。このため、室内側見付け片114、124、134の室外面側にコンクリート40を打設してPC板2を製造した際に、ドリルネジ64のねじ込みがコンクリート40で阻害されることがなく、コンクリートドリルで下穴を形成する必要もないため、施工現場での作業を軽減できる。
また、スペーサ15は、サッシ1の組立時に予め取り付けられており、PC板2の製造工場においてコンクリート40を打設する際の作業工程は従来と同一であるため、PC板2の製造効率が低下することも防止できる。
【0026】
スペーサ15は、上枠11、下枠12、縦枠13の長手方向の略全長に亘って取り付けられているため、ドリルネジ64のねじ込み位置が長手方向に多少ばらついてもドリルネジ64を確実にねじ込むことができ、付属部品であるアングル材61、62、63を確実に固定できる。
また、スペーサ15の断面寸法は、室内側見付け片114、124、134の見付け寸法に応じて設定されているので、ドリルネジ64のねじ込み位置が各枠11~13の見付け方向に多少ばらついてもドリルネジ64を確実にねじ込むことができる。
スペーサ15は、不燃性材料であるAESで構成されているので、サッシ1が取り付けられたPC板2の防火性能を向上できる。
【0027】
アンカー部品30、30Aは、打込用アンカー33がリベット34で連結材32に対して回動可能に取り付けられているので、鉄筋41と打込用アンカー33が干渉することを容易に回避できる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のサッシ1Bおよびサッシ1Bが取り付けられたPC板2Bについて、図6および図7を参照して説明する。
サッシ1Bは、サッシ枠10の室外面の裏面にスペーサ15Bが追加されている点が第1実施形態のサッシ1と相違し、その他の構成はサッシ1と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、上枠11および縦枠13の室外側見付け片113、133の裏面(室内面)と、下枠12の室外側見付け片123の固定片部1235の裏面(室内面)とには、スペーサ15Bが取り付けられている。なお、固定片部1235は、上下方向の寸法が室外側見付け片113、133に比べて短いため、固定片部1235に取り付けられるスペーサ15Bの上下寸法も、室外側見付け片113、133に取り付けられるスペーサ15Bに比べて短くされている。
【0029】
このようなサッシ1Bは、サッシの組立工場からPC板2Bの製造工場に出荷され、この製造工場において、サッシ1Bの周囲にコンクリート40Bが打設されることで、コンクリート40Bの開口部にサッシ1Bが固定されたPC板2Bが製造される。
このPC板2Bは、ビルなどの建築現場に運ばれて外壁として設置される。建築現場において、上枠11および縦枠13の室外側見付け片113、133には、付属部品であるブラケット85が室外側からドリルネジ64で固定される。各ブラケット85には、付属部品である上見切り材81、縦見切り材83が圧入固定される。
また、下枠12の室外側見付け片123の固定片部1235には、付属部品である水切り材82が室外側からドリルネジ64で固定される。したがって、室外側見付け片113、133、固定片部1235も付属部品が取り付けられる取付片である。
なお、上見切り材81および縦見切り材83にはビスホールが形成されており、このビスホールを利用して上見切り材81、水切り材82、縦見切り材83は四周枠組みされている。このため、水切り材82をドリルネジ64で固定することで、上見切り材81、縦見切り材83をブラケット85にねじ止めしなくても、上見切り材81、縦見切り材83は落下せずにサッシ枠10に取り付けられる。
【0030】
PC板2Bのコンクリート40Bは、付属部品である上見切り材81、水切り材82、縦見切り材83が配置される空間が形成されている。そして、上見切り材81、水切り材82、縦見切り材83と、コンクリート40Bとの間には、バックアップ材51、シール材52が充填されて防水処理が施されている。また、下枠12と水切り材82との間にも、バックアップ材51、シール材52が充填されている。
【0031】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、サッシ1Bは、スペーサ15に加えてスペーサ15Bが設けられているので、サッシ枠10の室外側に付属部品をドリルネジ64で固定する場合に、ドリルネジ64の先端をスペーサ15Bにねじ込むことができ、コンクリート40Bにドリルで穴を加工することなく、付属部品であるブラケット85や水切り材82を確実にかつ容易に取り付けることができる。
スペーサ15Bは、スペーサ15と同様に不燃性材料で構成されているので、防火性能を低下させることがなく、防火窓として提供できる。
ブラケット85を固定するドリルネジ64は、上見切り材81、縦見切り材83で覆われ、水切り材82を固定するドリルネジ64は、バックアップ材51、シール材52で覆われるため、ドリルネジ64がサッシ枠10の室外側に露出せず、意匠性および防水性を向上できる。
【0032】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のサッシ1Cについて、図8を参照して説明する。
サッシ1Cは、コンクリート40Cを打設することで製造されるPC板2Cの開口部に取り付けられる。このPC板2Cは、サッシ1CおよびPC板2Cの各室外面が、ほぼ面一となるつらいち納まりとされている。
このため、サッシ1Cの上枠11Cおよび下枠12Cの断面形状は、サッシ1の上枠11、下枠12とは異なるが、上枠11Cの室内側見付け片114Cと、下枠12Cの室内側見付け片124Cとの裏面つまり室外面にスペーサ15が取り付けられている点は、前記各実施形態と共通する。
上枠11C、下枠12Cには、アンカー部品30Cが取り付けられている。アンカー部品30Cは、上枠11C、下枠12Cの断面形状に合わせて見込み寸法などが設定されているが、基本的な構造はアンカー部品30と同様である。
なお、図示を略すが縦枠にもアンカー部品が取り付けられ、縦枠の室内側見付け片の裏面にはスペーサが取り付けられている。
【0033】
上枠11C、下枠12C、縦枠の室内面には、前記実施形態と同様に、アングル材61、62がドリルネジ64で固定されている。また、上枠11C、下枠12C、縦枠とコンクリート40Cとの間にはバックアップ材51、シール材52が充填されて防水処理がされている。
このような第3実施形態によれば、前記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0034】
[変形例]
前記実施形態では、スペーサ15、15Bは不燃性材料で構成されていたが、ネジが挿入可能な材料であり、PC板2、2B、2Cを製造する際に、コンクリートが充填されないスペースを確保できるものであれば、不燃性材料以外で構成されていてもよい。また、スペーサ15、15Bは、各枠11~12の長手方向の全長に亘って配置される長尺部材に限定されず、ピース状の部材で構成し、ドリルネジ64の位置に合わせてそれぞれ配置してもよい。
【0035】
付属部品は、水切り材、見切り材、アングル材に限定されず、PC板に取り付けられたサッシ枠10にネジ止めするものであればよい。
付属部品を取り付ける取付片は、サッシ枠の室内側見付け片および室外側見付け片に限定されず、見込み片などでもよく、表面側に付属部品がネジ止めされ、裏面側にコンクリートが充填される取付片であればよい。
前記実施形態のサッシ1、1B、1Cは、FIX窓用であったが、例えば、縦すべり出し窓や引違い窓等の可動障子を備える様々な窓種のサッシでもよい。また、サッシとしては、段窓用や連窓用のサッシでもよい。
【0036】
アンカー部品30、30A、30Cは、打込用アンカー33をリベット34で連結材32に連結していたが、ボルトやネジで連結してもよく、打込用アンカー33を連結材32に対して回動して鉄筋41との干渉を回避できればよい。また、連結材32を折曲片312に対してリベット、ボルト、ネジ等で連結し、連結材32を各枠11~13の長手方向に沿った回動軸で回動可能に連結してもよい。この場合、連結材32および打込用アンカー33を互いに直交する2方向に回動できるので、鉄筋41との干渉をより容易に回避できる。
【0037】
[発明のまとめ]
本発明は、プレキャストコンクリート板の開口部に取り付けられるサッシ枠を備えるサッシであって、前記サッシ枠は、別体の付属部品がネジによって表面側に取り付けられる取付片を有し、前記取付片の裏面には、前記ネジが挿入可能なスペーサが取り付けられていることを特徴とする。
本発明のサッシによれば、サッシ枠の取付片の裏面にスペーサが取り付けられているので、取付片の裏面側にコンクリートを打設してプレキャストコンクリート板の開口部にサッシ枠を取り付けている場合でも、付属部品を取り付けるネジをスペーサにねじ込むことができる。このため、コンクリートによってネジのねじ込みが阻害されることが無く、コンクリートにドリルで穴を開ける必要が無いため、付属部品を容易に取り付けることができ、施工現場での作業性を向上できる。
【0038】
本発明のサッシにおいて、前記スペーサは、不燃性を有する材料で構成されていることが好ましい。
スペーサが不燃性を有する材料で構成されていれば、サッシおよびサッシが取り付けられたプレキャストコンクリート板の防火性能を向上できる。
【0039】
本発明のサッシにおいて、前記付属部品は、水切り材、見切り材、またはアングル材であることが好ましい。
付属部品である水切り材、見切り材またはアングル材を、施工現場においてネジで容易にサッシ枠に取り付けることができるため、これらの付属部品をPC板の製造工場で予め取り付けておく必要が無く、PC板の輸送時に付属部品が破損することも防止できる。
【0040】
本発明のサッシにおいて、前記サッシ枠は、室内側見付け片および室外側見付け片を備え、前記取付片は、前記室内側見付け片および前記室外側見付け片の少なくとも一方であることが好ましい。
サッシ枠において、プレキャストコンクリート板から露出する室内側見付け片や室外側見付け片に付属部品をネジで容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…サッシ、1B…サッシ、1C…サッシ、2…PC板、2B…PC板、2C…PC板、10…サッシ枠、11…上枠、11C…上枠、12…下枠、12C…下枠、13…縦枠、14…押縁、15…スペーサ、15B…スペーサ、20…ガラス、30…アンカー部品、30A…アンカー部品、30C…アンカー部品、31…アンカー、31A…アンカー、32…連結材、33…打込用アンカー、34…リベット、40…コンクリート、40B…コンクリート、40C…コンクリート、41…鉄筋、51…バックアップ材、52…シール材、61…アングル材、62…アングル材、63…アングル材、64…ドリルネジ、81…上見切り材、82…水切り材、83…縦見切り材、85…ブラケット、113…室外側見付け片、114…室内側見付け片、114C…室内側見付け片、123…室外側見付け片、124…室内側見付け片、124C…室内側見付け片、133…室外側見付け片、134…室内側見付け片。
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図8